STM32CubeIDE v1.1.0更新と文字化け対策(その2)

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)の統合開発環境:STM32CubeIDEが、v1.1.0に更新され、前投稿:その1では、従来SW4STM32プロジェクトをSTM32CubeIDEインポート時の日本語文字化け対策と、最新STM32MCU開発環境を示しました。

その2では、最新開発環境での文字化けと、開発環境更新リスク、ファームウェア更新へのリスク対応案について示します。

最新開発環境の文字化け

2019年11月時点のSTM32MCU最新開発環境と、IDEのみ従来のSW4STM32を使ったソフトウェア開発環境が下図です。

STM32MCU最新開発環境
STM32MCU最新開発環境

その1で示したSW4STM32プロジェクトインポート時のSTM32CubeIDEソースコード文字化けは、Shift-JISからUTF-8への手動エンコード変換で解決しました。

今回指摘する問題は、最新環境であってもSTM32CubeMX(以下、CubeMX)でコード再生成すると、STM32CubeIDE(以下、CubeIDE)ソースコードに日本語文字化けが発生することです。

このCubeMX起因の文字化けは、新規CubeIDEプロジェクト作成でも発生します。つまり、CubeIDEでプロジェクトを新規作成しmain.cへ日本語コメントを入力、次に生成済みCubeMXプロジェクトファイルを開き初期化コードを生成、CubeIDEへ戻ってmain.cを見ると日本語コメントに文字化けが発生します。
※スタンドアロン版、プラグイン版両方のCubeMXを試し、また、表示フォントもいろいろ変更しましたが、文字化けが発生します。対策がお判りの方は、教えてください😌。

もちろん、英語でコメント記入すれば問題はありません。日本語コメントの場合のみです。

一方、従来IDEのSW4STM32へCubeMX出力の場合には、文字化け無しです。ソースコードへ日本語コメントを追記する筆者のような方は、文字化け発生が解消されるまでは、SW4STM32とCubeIDE併用が良いかもしれません。

開発環境更新リスク

MCU開発ソフトウェア(=アプリケーション)への影響が一番大きいのは、ファームウェア:FW_F0/F1/G0/G4更新です。統合開発環境:CubeIDEやコード生成ツール:CubeMXの更新は、操作性や見た目へ変化を与えますが、アプリケーションそのものへの影響は、少ないです。

MCUアプリケーション開発は、STM32MCUに限らずベンダ提供API:Application Programming Interfaceのユーザ開発アプリケーションによる操作です。ファームウェア更新は、このベンダ提供APIのバグ取りや、新デバイス追加に関連するものが一般的です。開発済みユーザアプリケーションの場合は、デバイスは変わらないので、ファームウェア更新による影響があるのは使用中APIです。

従って、開発したアプリケーションの使用APIが変わらなければ、ファームウェア更新は問題ないハズです。

ところが、稀にファームウェア更新により正常に動作していたAPIにも影響が生じトラブルが発生することがあります。ファームウェア更新には、このリスクがあることも知っておきましょう。
※このリスク対策としてCubeMXは、旧版ファームウェアをRepositoryフォルダへ保存し、いつでも旧版へ戻せる準備をしています。

ベンダAPI、つまりファームウェア互換性には期待しない方が無難です。

理由は、最新ベンダMCU製造プロセス(=ハードウェア)、WindowsなどのパソコンOS、ベースのEclipse IDE、ARM CMSISなどのアプリケーション下層の更新、などなど様々なバージョンアップの組合せ結果が、ベンダAPI更新や刷新となるからです。

ベンダAPI互換が、既存ユーザにとっては理想です。しかし、元々非力なMCU能力を、従来API互換へ使うよりも、むしろファームウェア更新時点で、MCU能力を最も引き出すAPIへ使い、新規ユーザへアピールしたいとベンダが判断してもやむを得ないと思います。
※高性能MPU/GPUでさえAPI互換が無いことがあります。APIとは、そういうものだと割切って、例えAPIが変わっても柔軟に対応できるソフトウェア開発者が求められるのかもしれません。

ファームウェア更新リリースノートに、このAPI互換性の詳細説明を求めるのは、多分無理です。既存ユーザは、開発環境、特にファームウェア更新に関しては、慎重に対処すべきだと思います。

MCUアプリケーションは、開発完了時の開発環境依存度が非常に高いソフトウェアです。

最新デバイスと、最新APIの組合せが、その時点で最も効率的で優れたMCUアプリケーション開発手段と言えます。
※ルネサスのCS+には、アプリケーション開発完了時の開発環境を、一括圧縮保存する便利機能があります。Eclipse IDEにもプラグインで同様の機能を追加できると思います。

ファームウェア更新リスク回避策

筆者が考えるMCUアプリケーション開発に対するファームウェア更新リスクの回避策が、下記です。

MCUアプリケーション開発に対するファームウェア更新リスク
MCUアプリケーション開発に対するファームウェア更新リスク
  1. ユーザ開発アプリケーションが顧客システムで稼働中、しかもバグなどの問題が無い場合は、あえて前章リクスがあるファームウェア更新はしない
  2. アプリケーション開発が進行中の場合は、旧版ファームウェアで開発継続し、完成後に最新版を試す
  3. 開発済みアプリケーションへ機能追加の場合は、開発時ファームウェアで機能追加し、完成後に最新版を試す
  4. 新にアプリケーション開発を始める場合は、APIバグ可能性のより少ない最新ファームウェア開発環境で着手

開発完了から時間が経ったアプリケーション改版時には、開発当時のファームウェア更新への対策時間も加味しスケジュールを作成することをお勧めします。さもないと、肝心のアプリケーション改版前の段階でつまずいてしまいます。

※弊社販売中テンプレートは、テンプレート応用例として、評価ボード実装済みSWやLEDを制御するシンプルテンプレートと、Baseboardで各種機能を追加したBaseboardテンプレートの2つを添付しています。このうちBaseboardテンプレートは機能豊富な代償として、上記ファームウェア更新リスクに出会うことが稀にあります😫。テンプレートなので、本当は原理を解っていただくシンプルテンプレートのみを添付したいのですが、Baseboardテンプレート付きの方が売れるのでやむを得ない状況です😥。

投稿その1、その2と前振りが長くなりました。次回、汎用MCUシェア第2位の販売中STM32FxテンプレートSTM32G0xテンプレートを使って、最新開発環境への移設実例、トラブル対応を示します。

ARM Cortex-M4プロトタイプテンプレート構想

弊社は、ARM Cortex-M4コア使用のLPC5410x(NXP)、STM32G4(STM)、PSoC 6(Cypress)、MSP432(TI)各社のMCUテンプレート開発を目指しています。本稿は、各社共通のCortex-M4プロトタイプテンプレート開発指針を示します。

MCUプロトタイプ開発ステップ

MCUプロトタイプ開発と製品化へのステップ、支援ツール
MCUプロトタイプ開発と製品化へのステップ、支援ツール

プロトタイプからMCU製品開発へのステップが上図です。

  1. IDEと評価ボードを準備、利用MCUの開発環境構築
  2. サンプルプロジェクトを利用し、MCUや内蔵周辺回路の特徴・使い方を具体的に理解
  3. 製品処理に近いサンプルプロジェクトなどを活用し、評価ボード上でプロトタイプ開発
  4. プロトタイプへ保守点検などの製品化処理を追加、製品時ベアメタルかRTOS利用かを評価
  5. ステップ04評価結果でA:ベアメタル製品開発、または、B:RTOS製品開発へ発展

更に製品化へは様々なステップも必要ですが、プロトタイプ開発に絞るとこのステップになります。

Cortex-M4プロトタイプテンプレート

弊社Cortex-M4プロトタイプテンプレートは、ステップを効率的に上るための開発支援ツールです。

販売中の弊社テンプレートと同様、複数サンプルプロジェクトや開発した処理を、RTOSを使わずに時分割で起動するマルチタスク機能を備えています。
※時分割起動マルチタスク機能:ステップ03と04の課題は、複数サンプルプロジェクトや製品化に必要となる様々な処理を、どうやって1つに組込むか(?)ということです。RTOSを利用すれば解決します。しかし、RTOS利用のためだけに別途知識や理解が必要で、RTOS活用までの階段差が非常に高いという欠点があります。弊社テンプレートは、時分割で複数処理を起動し、初心者でも仕組みが理解できる低い階段差でマルチタスク機能を実現します。詳細は、コチラなどをご覧ください。

販売中の従来テンプレートとCortex-M4プロトタイプテンプレートの違いが、以下です。

  1. ステップ05以降の製品開発へも、ステップ01で構築したプロトタイプ環境をそのまま使える
  2. 下位Cortex-M0/M0+/M3ソフトウェアに対して、Cortex-M4プロトタイプ開発資産が流用できる

Cortex-M4の高性能を、プロトタイプ開発マージン(後述)に使うとこれらの違いが生じます。

Cortex-M4コアMCUの特徴

ARM Cortex-M4は、Cortex-M0/M0+/M3とバイナリ互換です。

簡単に言うと、Cortex-Mコア開発元ARM社が推進するCMSISに則って開発したCortex-M4ソースコードやライブラリは、再コンパイルすればCortex-M0/M0+/M3へ流用・活用ができます。
※CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standard関連投稿は、コチラの2章などを参照してください。

Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

図から、Cortex-M4バイナリの全ては、下位Cortex-M0/M0+/M3に含まれてはいません。従って、効率的な処理やセキュリティ対策必須の高速演算を行うには、Cortex-M4が最適なのは言うまでもありません。

Cortex-M4を使ったMCUは、Cortex-M0/M0+/M3 MCUに比べ動作クロックが高速で内蔵Flash/RAM容量も大きいため、ベアメタル利用だけでなく、RTOS利用も可能です。

Cortex-M4がプロトタイプ開発に最適な理由:大マージン

Cortex-M4のMCUでプロトタイプ開発すれば、製品化時に必要となる処理や保守点検処理などの実装も「余裕」を持ってできます。
※製品出荷テストプログラム、自動販売機待機中のLEDデモンストレーション点灯などが製品化処理具体例です。

筆者は、このような製品化処理を、おおよそプロトタイプ処理と同程度と見積もります。つまり、製品のFlash/RAM量は、プロトタイプ時の2倍必要になります。

仮に「余裕」がありすぎオーバースペックの場合には、開発したCortex-M4プロトタイプ処理(=開発ソフトウェア資産)を、そのまま下位Cortex-M0/M0+/M3コアMCUへ流用が可能です。

一方、処理が複雑で多い場合には、RTOSで解決できるか否かの評価もCortex-M4プロトタイプなら可能です。更にIoT製品では、セキュリティ関連の(先が見えない)処理や計算量増加にも対応しなければなりません。

安全側評価なら敢えて下位Cortex-Mコアを選ばずに、Cortex-M4をそのまま製品にも使えば、処理増加にも耐えらます。

つまり、プロトタイプ開発には、初めから容量や性能の足かせが無く、製品化移行時の開発リスクも少ない高速高性能・大容量のCortex-M4 MCUが最適なのです。

製品時の処理能力やFlash/RAM量を、Cortex-M4プロトタイプで見積もった後に、製品化にステップアップすれば、適正な製品制御Cortex-Mコアを選択できます。開発ソフトウェア資産の流用性、過負荷耐力、RTOS製品開発評価ができる高性能を兼ね備えたのが、Cortex-M4を使ったプロトタイプ開発です。

問題は、価格です。

各社のCortex-M4評価ボード価格は、Cortex-M0/M0+/M3評価ボードと大差ありません。STM32MCUの評価ボード:Nucleo32シリーズは、Cortex-Mコアが異なっても同額です。プロトタイプ開発マージンを考慮すると、たとえ評価ボードに多少の価格差があったとしても十分納得がいきます。

Cortex-M4デバイス単体価格は、Cortex-M0/M0+/M3よりは高価です。しかし、製品原価全体に占めるCortex-M4デバイス価格比は低いでしょう。IoT製品では、今後増大するセキュリティ対策や計算量増加などを考慮すると、Cortex-M4デバイスを使うメリットは大きいと思います。

Cortex-M4プロトタイプテンプレート開発指針(NXP、STM、Cypress、TI共通)

Cortex-M4の特徴を活かし、下位Cortex-M0/M0+/M3間での開発ソフトウェア資産流用を考慮したCortex-M4プロトタイプテンプレート開発指針です。

  1. Cortex-M0/M0+/M3/M4各コアに用いるテンプレート本体の共通化
  2. プロトタイプ開発ソフトウェア資産流用性を高めるCMSISソフトウェアでの開発
  3. 製品化時ベアメタルかRTOS利用かを評価のため、Cortex-M4最高速動作のプロトタイプ開発

現在CMSISへの対応は、各社足並みが揃っているとは言えません。もしも完全にCMSISへ対応した場合は、異なるベンダ間でも開発アプリケーション互換が実現するからです。ARMコア市場が「攻めに強く、守りに弱い」ゆえんです。そういう状況でも、各社ともCMSISへのソフトウェア対応を進行中です。
※Cortex-M33コアには、CMSISに反して、ベンダ独自のカスタム命令追加の動きも見られます。

本稿で示したCortex-M4プロトタイプテンプレートと異なり、弊社販売中のCortex-M0/M0+/M3テンプレートは、テンプレート利用コアで最適解を与えます。そのため、RTOS利用時や、製品化処理、セキュリティ対策などの処理が増えた時には、元々のコア処理性能や内蔵Flash/RAMに余裕が少ないため、適用デバイスでの製品化に対して、開発を続けにくい状況が発生することもありえます。

この点、Cortex-M4プロトタイプテンプレートなら、プロトタイプで構築した同じ開発環境で、RTOSも含めた製品開発へも余裕を持って対応できます。同時に、プロトタイプ開発資産の流用や活用により、Cortex-M0/M0+/M3ソフトウェア生産性も高めることができます(一石二鳥)。

ATM Cortex-M4テンプレートと開発資産流用性
ATM Cortex-M4テンプレートと開発資産流用性

弊社Cortex-M4プロトタイプテンプレートの発売時期、RTOSへの具体的対応方法などは、未定です。本ブログで各社毎の開発状況をお知らせする予定です。

あとがき:初心者や個人利用は、Cortex-M4テンプレートが最適

ソフトウェア開発初心者にCortex-M4プロトタイプテンプレート利用は、難しい(=階段を上るのが困難)と考える方がいるかもしれません。筆者は、全く逆、むしろ初心者、個人利用に最適だと思います。

理由は、Cortex-M0/M0+/M3/M4と上位になるほどコア設計が新しく、処理性能も上がるからです。初心者が、あまり上手くないコード記述をしても、コア性能が高いため問題なく処理できてしまいます。詳細は、ARM Communityの“An overview of the ARM Cortex-M processor family and comparison”などが参考になります。

ごく簡単に言うと、自動車エンジンが、Cortex-Mコアに相当すると考えてください。

小排気量なCortex-M0より、大排気量のCortex-M4の方が、楽に運転でき、しかも、運転に最低限必要なハンドルやアクセル、ブレーキ操作は全く同じです。車(=評価ボード)の価格が同じなら、殆どの方が、余裕のある大排気量のCortex-M4を選択するでしょう。

しかも、Cortex-M4評価ボード操作の技(=開発ソフトウェア資産)は、Cortex-M0/M0+/M3へも流用できます。経済的に厳しい個人利用のプロトタイプ開発環境としては、流用範囲の広いCortex-M4 MCUテンプレートが最適と言えます。

弊社Cortex-M4プロトタイプテンプレートは、つまずき易い階段を、楽に効率的に上るための開発支援ツールです。ご期待ください。

ルネサスARM Cortex-Mコアマイコン:RAファミリ発表

2019年10月8日、ルネサスエレクトロニクス(以下ルネサス)が、ARM Cortex-M4/M23搭載のRAファミリを発表しました。ARMコアMCU市場へ、遅ればせながら(!?)参入したRAファミリの特徴、競合他社と比較評価しました。

Runesas RAファミリ(出典:ルネサス)
Runesas RAファミリに加筆(出典:ルネサス)

RAファミリの特徴

「攻めやすく、守りにくい」、これがARMコアMCU市場だと思います。先行する競合他社は、NXP、STM、Cypress、TIなどです。

後発ルネサスが選択したARMコアは、Cortex-Mコア最高性能のCortex-M4と、低消費電力+セキュリティ重視のCortex-M23/M33(M4はRA8でマルチコア化、M33予定)です。

同じARMコアの先行他社へ攻め込むには、他社比魅力的な内蔵周辺回路が必要です。上図の静電容量タッチセンサ、アナログなどがこれに相当するはずです。Cypress特許の静電容量タッチセンサ:CapSenseとの性能比較が楽しみです。
※CapSenseの特徴は、コチラの投稿などを参照してください。

RAファミリのターゲット市場は、産業機器、ビルオートメーション、セキュリティ、メータ、家電などで、車載を除く次世代IoTエッジデバイスです。

RAファミリの市場(出典:RAファミリパンフレット)
RAファミリの市場(出典:RAファミリパンフレット)

セキュリティニーズが高いIoTエッジMCUでは、Cortex-M3クラスでも性能不足が懸念されます。シングルコアなら最低でもCortex-M4、セキュリティ強化Cortex-M23/33のRAファミリのコア選択は、理解できます。

RAファミリとRunesas Synergyの違い

ルネサスは、これまでRunesas Synergy™としてARMコアMCUを販売してきました。このRunesas SynergyとRAファミリの違いが、10月8日MONOistの“ルネサスがArmマイコンで本気出す、「RAファミリ」を発売”記事に説明されています。

筆者は、Runesas Synergy™は、ルネサスがアプリケーション開発を手伝う形式で、個人レベルでの開発には金額的に手を出しにくいMCU、一方、RAファミリは、競合他社と同様CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardに則った形式でユーザがアプリケーション開発できるMCUと理解しています。
※CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardは、コチラの2章などを参照してください。

これで弊社も、競合他社と同じ土俵でルネサスARMコアMCUを使える可能性がでてきました。

RAファミリの開発環境

RAファミリの開発環境(出典:RAファミリパンフレット)
RAファミリの開発環境(出典:RAファミリパンフレット)

RAファミリパンフレットによると、IDEは、e2 studio(CS+はありません)、エミュレータは、Segger J-Linkまたは、E2エミュレータ Liteです。

例えば、Cortex-M4/48MHz/Flash:256KB/RAM:32KBの評価ボード:EK-RA4M1の概要が下記です。

EK-RA4M1 MCU 評価キット
EK-RA4M1 MCU 評価キット

Mouserで¥4,539で購入可能です。他社同様オンボードエミュレータですが、Arduinoコネクタを持っていません。価格も、後発なのに他社比、高い気がします😥。

RAファミリと競合他社比較

Cortex-Mコア、内蔵周辺回路、開発環境、評価ボード、日本語技術資料の5点から、ルネサスRAファミリを、競合他社ARMコアMCUと3段階(A/B/C)評価しました。

Cortex-Mコア=A、内蔵周辺回路=A、開発環境=B、評価ボード=C、日本語技術資料=C → 総合評価=B

総合評価Bは、普通レベルということです。個別評価結果が下記です。

Cortex-M4とM23/33コア選択や、タッチセンサ等の内蔵周辺回路は、後発なので当然ルネサスの市場調査結果によるものと思われ、A評価としました。IoTエッジMCUでは、これらコアや周辺回路が必須だと筆者も思います。
※コアと周辺回路は、現在、弊社注力中のCortex-M4コアテンプレート開発とCypress)PSoC 4 CapSenseテンプレート(開発中)に傾向が一致しています。

開発環境は、多機能すぎるe2 studioなのでBです(A評価は、NXP)MCUXpressoTI)CCS Cloud)。

評価ボードは、Arduinoコネクタなしで高価なためCです(A評価は、NXP)LPCXpressoやSTM)Nucleo32)。

日本企業のルネサスですが、RAファミリ動画などは英語です。重要技術資料も英語が多く、日本語資料はC評価です(A評価は、STM)。
※ソフトウェア開発者が、日本語資料にこだわること自体、時代錯誤、時代遅れかもしれません。しかし、イタリア+フランス企業のSTM日本語翻訳資料は、内容、和訳ともに優秀です。ルネサス技術資料は、これらと比べると低評価と言わざるを得ません。

総合評価Bですので、評価ボード:EK-RA4M1入手は、ペンディングとします。ルネサスRAマイコンを、本ブログへ追加した場合、ブログカテゴリと目標とする生産物は、下図になります。

また、2番目に示したターゲット市場図から、従来MCU とIoTエッジMCUとの境界が、Cortex-M3コアの可能性が見えてきました。この境界も追加しました。

ブログカテゴリと生産物(従来MCUとIoT MCU境界追加)
ブログカテゴリと生産物(従来MCUとIoT MCU境界追加)

筆者は、従来MCUは、IoTエッジのさらに外側、つまりIoT MCUのフロントエンドで機能し、Cortex-M4ソフトウェアの一部流用や活用により生産性が高く、しかも、エッジのカスタムニーズへも柔軟に対応するMCUへ発展すると思います。ARM Cortex-Mxコア間は、ソフトウェア流用が可能です(次回、詳細説明予定)。

ルネサスは、インターシルやIDT買収でMCUアナログフロントエンドを強化したはずです。しかし、新発売RAファミリに、これら買収技術は見当たらず、期待のSynergy効果も具体的には不明です(内蔵周辺回路の静電容量タッチセンサ、アナログに見えると期待)。

残念ながら現時点では、筆者には、RAファミリが魅力的なARMコアIoTエッジMCUとは思えません。今後に期待します。

ARM Cortex-M4とM0+アプリケーションコード互換

NXP MCUXpresso SDK利用を利用すると、LPC845 Breakout board用に開発した1秒赤LED点滅アプリケーションコードが、そのままFRDM-KL25Zへ流用できることを前回投稿で示しました。ただ、どちらも同じARM Cortex-M0+コアのMCU評価ボードなので、読者インパクトは少なかったかもしれません。

そこで、LPC845 Breakout board(Cortex-M0+/30MHzコア)のLED点滅アプリケーションコードが、そのままCortex-M4/100MHzコアのLPCXpreosso54114へ流用できることを示します。異なるARMコア間でのアプリケーションコード互換の話です。

ARMコアバイナリ互換

Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

ARMコアのバイナリ上位互換を示す図です(関連投稿:Cortex-M0/M0+/M3比較とコア選択の2章)。このバイナリコード包含関係は、Cortex-M0バイナリコードならCortex-M4でも動作することを示しています。

但し、この包含関係を理解していても、Cortex-M0バイナリコードをそのままCortex-M4へ流用する開発者はいないと思います。

ARMコアアプリケーションコード互換

Cortex-Mxのアプリケーションコード互換性
Cortex-Mxのアプリケーションコード互換性

MCUXpresso IDEのARMコアアプリケーションコード互換を示す図です。左がLPC845 Breakout board(Cortex-M0+/30MHzコア)の1秒赤LED点滅アプリケーションコード、右がCortex-M4/100MHzコアのLPCXpreosso54114の1秒赤LED点滅アプリケーションコードです。

コード差は、L59:LPCXpreosso54114評価ボード動作クロック設定:48MHz動作のみです。例えば、96MHzなどの他の動作周波数へ設定することも可能です。コード上で動作周波数を明示的に表示するために異なりましたが、機能的には両者同じコードと言えます(L59をマクロで書き換えれば、同一コード記述もできます)。

図下のInstalled SDK Versionが、どちらも2019-06-14で一致していることも重要です。Versionが異なると、例えばGPIOのAPIが異なることがあるからです。各SDKリリースノートでAPI差の有無確認ができます。※LPCXpreosso54114 SDKのMCUXpresso IDE設定方法は、コチラの投稿の5/6章を参考にしてください。

1秒赤LED点滅という簡単なアプリケーションですが、Cortex-M0+とCortex-M4の異なるARMコア間でコード互換性があることが解ります。

動作周波数の隠蔽とIO割付

評価ボード動作周波数が異なれば、無限ループ回転速度も異なります。従って、互換性を持たせるコード内に、無限ループ内の回転数でLED点滅させるような処理記述はできません。コードに時間要素は組込めないのです。

1秒点滅の場合は、L77:SysTick_DelayTicks()でループ回転数をカウントし、1秒遅延を処理しています。これにより、GPIO_PortToggle()が時間要素なしとなり、異なる動作周波数のARMコアでもアプリケーションコード移植性を実現しています。

SysTick_DelayTick()と1ms割込みによりカウントダウンする処理コードが下記です。ここも、割込みを利用することでコード移植性を実現しています。

動作周波数隠蔽によるARMコアアプリケーションコード移植性の実現
動作周波数隠蔽によるARMコアアプリケーションコード移植性の実現

左のLPC845 Breakout boardと、右のLPCXpreosso54114のコード差は、L16:赤LEDのIO割付のみです。評価ボード毎に異なるIO割付となるのは、やむを得ないでしょう。L12からL16のDefinition箇所を、別ファイル(例えばIODefine.hやUserDefine.h)として抽出すれば、同一コード記述も可能です。

ARMコアアプリケーションコード互換メリット

以上のように、ARMコアアプリケーションコード互換を目的にした記述や工夫も必要です。しかし、一旦互換コードを開発しておけば、開発資産として他のARMコア利用時にも使えます。その結果、開発速度/効率が高まります。

IoT MCUは、センサ入力やLED出力などのメイン処理以外にも、日々変化するセキュリティ処理への対応は、必須です。メイン処理が出来上がった後での、セキュリティ処理追加という手順です。

セキュリティ対策は、セキュリティライブラリ等の使用だけでなく、いつどのようにライブラリを活用するか、その時のMCU負荷がメイン処理へ及ぼす影響等、検討が必要な事柄が多くあります。

少しでも早くメイン処理を仕上げ、これら検討項目へ時間配分することがIoT MCU開発者には要求されます。この検討時間稼ぎのためにも、ARMコアアプリケーションコードの開発資産化は必須でしょう。

※プロトタイプ開発は、初めから厳しい条件で開発するよりも、最速のCortex-M4で行い、全体完成後Cortex-M0+/M3などへアプリケーションコードを移植するコストダウンアプローチも名案だと思います。

P.S.:2019年9月4日、MCUXpresso IDEがv11.0.1へ更新されました。旧MCUXpresso IDE v11.0.0 [2516]利用中の方は、Help>Check for Updatesではv11.0.1へ更新されません。新にMCUXpresso IDE v11.0.1 [2563]のインストールが必要です。新MCUXpresso IDEインストール方法は、コチラの4章を参照ください。

ARM Cortex-M4ベンダと評価ボード(選択失敗談)

本稿は、模索中のCortex-M4評価ボード選択の失敗談です。

初心者・中級者のMCU習得・開発を支援するのが本ブロブの目標です。手段として、個人でも入手性の良い低価格MCU評価ボードを使い、効率良く具体的にポイントを把握できる記事作成を心掛けています。

先日のIoT市場を狙うデュアルコアMCUで、本ブログでこれまで取り上げてきたMCUコア以外にARM Cortex-M4開発経験がIoT要件になる可能性を示しました。そこで、新たにCortex-M4カテゴリをブログに加えたいと考えているのですが、今日現在、適当な評価ボードや開発環境が見つかっておりません。

ARM Cortex-M4カテゴリ

Cortex-M4カテゴリは、急増するIoT開発に対する個人レベルでの先行準備的な位置付けです。

ARM Cortex-M0/M0+/M3コアやルネサスS1/S2/S3コア習得が初級レベルの方は、開発障壁が少し高いかもしれません。なぜなら、Cortex-M4コアの知識ベースはCortex-M0/M0+/M3だからです。この高さ軽減のため、過去のブログ関連投稿をリンク付けします。

中級レベルの方は、Cortex-M4の高いMCU能力を、Cortexコア間のアプリケーション移植やRTOS活用への発展、IoTで高度化するセキュリティ機能の実装などに意識してCortex-M4カテゴリ記事をご覧頂ければ役立つと思います。

32ビットMCUベンダシェアと本ブログカテゴリ

2018年の32ビットMCUベンダシェアが、6月7日投稿InfineonのCypress買収で示されています(下図右側)。

買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)
買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)

上位5ベンダ(Runesas、NXP、STM、Cypress、TI)と、本ブログカテゴリとの関係が下表です。

例えば、NXPのLPCマイコンでCortex-M0+記事であれば、MCUカテゴリはLPCマイコン、32ビットコアカテゴリはCortex-M0+などとカテゴリが重複する場合もあります。ただ、本ブログのカテゴリ記事数(n)がベンダシェアや、Cortexコアの人気傾向を示しており、32ビットMCUベンダシェアともほぼ一致します。

2018年MCU上位5ベンダと本ブログカテゴリの関係
MCUベンダ(シェア順) MCUカテゴリ 32ビットコアカテゴリ
Runesas RL78マイコン なし
NXP LPCマイコン/Kinetisマイコン Cortex-M0/M0+/M3/M23マイコン
STM STM32マイコン Cortex-M0/M0+/M3マイコン
Cypress PSoC/PRoCマイコン Cortex-M0/M0+マイコン
Texas Instruments なし なし

※Cypress+Infineonは買収成立と仮定

ルネサスMCUは16ビットコア(S1/S2/S3)のみ掲載中です。理由は、同社32ビットコアMCU開発環境が、コンパイラ1ライセンス当たり10万円程度と高価で、個人レベルでのライセンス購入が困難なため、本ブログ対象外としたからです。

MCUベンダシェアとカテゴリとを俯瞰すると、Texas Instrument(以下TI)とCortex-M4カテゴリがないことが解ります。※32ビットMCUコアでNon ARM系のRunesasを除くと、事実上Cortexコアのみで、その中で記載が無いメジャーMCUコアがCortex-M4です。

そこで、TIのARM Cortex-M4Fマイコン、MSP432の評価ボードを調査しました。

ARM Cortex-M4F搭載MSP432評価ボード

MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図
MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図

低消費電力MSP432P401R(ARM Cortex-M4F、48MHz、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション、256KB/Flash、64KB/RAM)搭載の評価ボード:SimpleLink™ LaunchPad™です(TIは評価ボードをローンチパッドと呼びます)。Digi-KeyMouser秋月電子(秋月電子は在庫限りRev 1.0 (Black)、2100円)で低価格購入可能です。

他社ARM MCU評価ボードで一般的に用いられるArduinoコネクタ増設ではなく、BoosterPack(ブースタパック)と呼ぶTI独自拡張コネクタでBLEやWi-Fi機能を追加します。また、SimpleLink AcademyトレーニングというWebベースの教材などもあります。

MSP432評価ボード単体では、情報量の多さ、価格ともに魅力的です。Cortex-M4クラスの評価ボードでも、Cortex-M0/M0+/M3プラスアルファの低価格で入手できるのには驚きました。プロトタイプ開発は全てCortex-M4で行い、製品時Cortex-M0/M0+/M3を選択する方法もありだと思います。Cortex-M4とM4Fの違いは、本稿PS:パート2動画で解ります。

MSP432P401Rの開発環境は、TI純正無償Code Composer Studio(CCS)です。但し、無償版CCSはMSP432利用時32KBコードサイズ制限付きです。当面32KBでも十分ですが、制限解除には有償版(サブスクリプション)が必要です。

低価格評価ボードがあるのに開発環境に個人での使用に障害がある事象は、Runesas 32ビットMCUと同じです。

以上から本ブログのCortex-M4カテゴリに、TI:MSP-EXP432P401R LaunchPad を使うのは、有償開発環境の点から断念しました(NXP/STM/Cypressは、無償版でもコードサイズ制限無しです)。

まとめ

2018年32ビットMCUベンダシェアから本ブログ記事を俯瞰した結果、Cortex-M4カテゴリとベンダのTexas Instrumentが欠けていることが解り、ARM Cortex-M4F搭載のTI)MSP432P401R評価ボードMSP-EXP432P401R LaunchPad導入を検討しましたが、無償CCSコードサイズ制限のため採用を見合わせました。

勤めている企業の取引の関係でベンダや開発に使うMCUは、既に決まっていることが多いです。しかし、開発者個人レベルでは、ポケットマネーの範囲内で、ベンダもMCU選択も自由です。

ARM Cortex-M4 MCU開発経験はIoT普及期には必須になる可能性があります。普及期への先行準備、また、仕事以外のMCUを手掛けることによる視野拡大、リスク回避手段に適当なCortex-M4評価ボードを選択し、Cortex-M4カテゴリ投稿を計画しています。初回は、Cortex-M4評価ボード選択の失敗談となりました。

PS:TIサイトに下記MSP432日本語版トレーニング動画(要ログイン)があります。ARM Cortex-M4Fを使ったMSP432の全体像が効率的に把握できます。

タイトル 所要時間
パート 1 : MSP432 概要 09:24
パート 2 : ARM Cortex-M4F コア 08:12
パート 3 : 電源システム 05:25
パート 4 : クロック・システム、メモリ 07:53
パート 5 : デジタル・ペリフェラルとアナログ・ペリフェラル 10:07
パート 6 : セキュリティ 05:15
パート 7 : ソフトウェア 07:29
パート 8 : MSP430 から MSP432 05:06

STLINK-V3とは

2019年7月23日STM公式ブログでSTLINK-V3デバッグ/プローブが発表されました。

STLINK-V3は、従来からのST-LINK/V2-1の性能向上と機能追加をしたSTM32/STM8マイコン用の新しいデバッグ/プログラミングインタフェースです。

左側の最新STM32G474(Cortex-M4、512KB Flash)評価ボードはSTLINK-V3、LL API専用テンプレートで使った右側STM32G071(Cortex-M0+、128KB Flash)評価ボードはST-LINK/V2-1インタフェースを使っています。

STLINK-V3とST-LINK/V2-1
STLINK-V3とST-LINK/V2-1を使う評価ボード例

両インタフェースの主な相違点、いつどのような時にSTLINK-V3を使うのかを説明します。

STLINK-V3/SET、STLINK-V3/MINI

STLINK-V3デバッガ/プログラマは、3種類のボードから構成されます。

STLINK-V3SET基本ボード:MB1441と機能拡張ボード:MB1440、これらボードを収納するケース、基板むき出しのSTLINK-V3MINIです。STLINK-V3MINIは3Dプリンタレファレンスファイルを使ってユーザ独自ケースが作成可能です。

STLINK-V3SETは、MB1441とMB1440、ケース込みで$35、STLINK-V3MINIは、$9.75で販売中です。

STLINK-V3SETとSTLINK-MINI(出典:STM公式ブログ)
STLINK-V3SETとSTLINK-MINI(出典:STM公式ブログ)

STLINK-V3とST-LINK/V2-1の主な相違点

STLINK-V3とST-LINK/V2-1の主な相違点
仕様 STLINK-V3 ST-LINK/V2-1
USBスピード 480 Mbps(理論値) 12M bps
Drag & Dropブログラミング 可能 可能
Single Wire Debug(SWD サポート サポート
JTAG サポート なし
Bridge SPI サポート(MB1440) なし
Bridge I2C サポート(MB1440) なし
Bridge CAN サポート(MB1440) なし
Bridge GPIOs サポート(MB1440) なし
STDC14 サポート(VCP付き) なし

※VCP:Virtual COM Port

PC接続のUSB速度が最大480Mbpsと高速となり、STM32G474のような512KBもの大容量Flashでも高速に書込みが可能です。

また、機能拡張ボード:MB1440では、従来からあるUARTブリッジ機能に加え、SPI/I2C/CAN/GPIOのブリッジ機能も使え、PC上で各インタフェースのデバッグ等に活かせます。

STLINK-V3ターゲット接続インタフェース:STDC14

これらSTLINK-V3SET/MINIボードの基本機能(SWD、JTAG、Virtual COM Port)とターゲットMCUボードを繋ぐ仕様がSTDC14です(ハーフピッチ14ピンケーブル)。

STDC14 (STM32 JTAG/SWD and Virtual COM Port)
STDC14 (STM32 JTAG/SWD and Virtual COM Port)

STDC14コネクタをターゲットMCUボードに実装しておけば、STLINK-V3SETかSTLINK-V3MINIを使ってターゲットMCUのデバッグやプログラミングがST-LINK/V2-1よりも高速、効率的にできます。

VCP:Virtual COM Port

従来のST-LINK/V2-1でもVirtual COM Portは使えました。例えば、STM32G071評価ボードでは、ST-LINK/V2-1のVCP機能を使ってSTM32G071RBのLPUART1とPCとを接続し、評価ボードに追加配線なしでSTM32G071RB動作確認や操作ができています。

ST-LINK/V2-1のVCP利用例
ST-LINK/V2-1のVCPを利用し評価ボードとPC接続した例

PC上でTera Termなどのターミナルソフトを使えば簡単手軽にターゲットMCU動作確認ができるVCPが、新しいSTLINK-V3接続インタフェースSTDC14に含まれるので、VCPの重要性は益々高まると思います。

IoTを狙うデュアルコアMCU

CypressのPSoC 6を中心にNXPとSTM、3社のARMディアルコアMCUを調査しました。Cortex-M4とCortex-M0+を使う個人でも低価格で入手できるディアルコアMCUです。ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション、シングルコアMCUソフトウェア開発との違いなどを説明します。

Cortex-A7とCortex-M4を使ったもう1つの超高性能ディアルコアMCUも少しだけ登場します。

ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション

ディアルコアMCUの狙い
ディアルコアMCUの狙い(出典:Cypress Cortex-M4 PSoC 6サイト)

CypressのCortex-M4コアPSoC 6サイトの上図がディアルコアMCUの狙いを示しています。

つまり、「IoT市場獲得には、右側アプリケーションプロセッサからと左側マイクロコントローラ:MCUからの2つのアプローチがあり、MCUアプローチのPSoC 6は、処理能力とセキュリティ強化を低コスト、低電力で実現した」ということです。

PSoC 6は、実現手段としてメインコアにCortex-M4(150MHz)、補助コアにCortex-M0+(100MHz)のディアルコアを採用しています。このCortex-M4+Cortex-M0+の2MCU構成は、NXP:LPC54102STM:STM32WB55RGでも見られます。CypressとSTMは、Cortex-M0+側にBluetooth Low Energy無線通信機能を実装済みです。

PSoC 6は、実装セキュリティに応じてPSoC 62/63シリーズと3種類のPSoC 64シリーズに別れます。PSoC 62/63は、PSoC 6のセキュリティ機能とユーザ独自セキュリティファームウェア(ソフトウェア)を使うデバイス(次章参照)、最上位プレミアムセキュリティのPSoC 64は、標準的なセキュリティ機能を全て含むデバイスです。

一方、アプリケーションプロセッサアプローチは、NXP:iMX 7アプリケーションプロセサのようにスマホやRaspberry Piでも用いられたCortex-A7(800MHz)がメインコアで、Cortex-M4(200MHz)が補助コアです。このアプローチは、ソフトウェア開発規模が大きく評価ボードも高価で個人開発向きとは言いにくいと思います。Cortex-A7自身がマルチコアでOS利用が前提なので更に複雑になります。

まとめると、低コスト低電力で処理能力とセキュリティ強化目的のCortex-M4+Cortex-M0+ディアルコアMCUの狙いは、IoTアプリケーションです。PSoC 63搭載の評価ボード:CY8CPROTO-063-BLEの価格は¥2,289(Digi-Key調べ)で、個人でも手が出せる価格帯です。

ディアルコアMCUのソフトウェア開発

PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)
PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)

Cypress Roadmap: MCU Portfolio、P25から抜き出したPSoC 63のアプリケーションとFeaturesです。具体的なIoTアプリケーションや、実装セキュリティ機能が解ります。
※ご参考までにこのMCU Portfolioには、CapSenseテンプレート開発で用いたPSoC 4000S/4100S仕様も解り易く掲載されています。

同じP25記載のPSoC 63ブロック図です。Cortex-M4とCortex-M0+がメモリ結合されています。

PSoC 63 Line with BLE (Hardware)
PSoC 63 Line with BLE (Hardware)

PSoC 6のソフトウェアは、Cortex-M4とCortex-M0+それぞれのソフトウェアが、2つ同時に別々に動作します。簡単に言うと、各シングルコアMCUソフトウェア同士が、同じデバイス内で動きます。メモリ結合なので、同一メモリアドレス同時アクセスの競合回避手段なども多分あるハズです(←調査不足😌)。

つまり、ディアルコアMCUソフトウェア開発と言っても、従来のCortex-M4やCortex-M0+シングルコアMCUソフトウェア開発の経験やスキルがそのまま活かせるのです。

一方のMCUから見ると、片方のMCUはインテリジェントな周辺回路と同じです。

例えば、Windowsソフトウェア開発なら、1つの機能を複数スレッドに分割し、処理効率を上げるなどのマルチコア対応の工夫が必要です。しかし、Cortex-M4+Cortex-M0+デュアルコアMCUの場合は、シングルコアのソフトウェア開発手法がそのまま使えます。

差分は、「2つのMCUに、どの機能を割振るか」です。

FPU内蔵のCortex-M4は、セキュリティなどの計算処理、高速GPIOアクセスのCortex-M0+は、IO処理やBLEモジュール管理、というのが定番(CypressやSTMのディアルコアMCUにみられる)割振りのようです。

まとめると、ディアルコアMCUソフトウェア開発は、シングルコアMCU開発経験がそのまま活かせます。しかも、別々動作の2コアを持つので、RTOSを使わずに処理分離と本当の並列動作ができます。

また、個人入手可能な評価ボード価格も魅力です。

評価ボード搭載のPSoC 63:CY8C6347BZI-BLD43(116-BGA)は、BGAパッケージなので基板実装は簡単ではありません。しかし、このPSoC 63とBLEアンテナをモジュール化したCYBLE-416045-02(14.0 mm x 18.5 mm x 2.0 mm、43-pad SMT with 36 GPIOs、下図)が評価ボードに実装済みで単体購入も可能です。

また、個人利用の場合には、評価ボードを丸ごと基板実装するのも効果的です。

EZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02
CY8C6347BZI-BLD43搭載のEZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02

ディアルコアMCUへの対処案

ディアルコアMCUの狙いは、巨大なIoT市場です。

各社がディアルコアMCUを発売する理由は、高度化するセキュリティ機能や、どの規格かが不確定な無線通信機能に対して、現状のシングルARMコアMCUでは、処理能力不足が懸念されるためです。
※近距離無線通信の有力候補が、BLEであることは確かです。

ディアルコアMCUならば、たとえ規格が変わっても、その影響を片方のMCU内に止めることもできます。つまり、ソフトウェア資産が無駄にならない訳です。

IoT市場へは、Cortex-M4+Cortex-M0+と、Cortex-A7+Cortex-M4のアプローチがあります。Cortex-M4を用いる点ではどちらも一致しています。FPU内蔵Cortex-M4ソフトウェア開発や経験が、IoT MCUプログラマの必須要件になるかもしれません。

シングルコアMCU開発経験が活かせ、しかもRTOSを使わずに高速並列処理を実現できるディアルコアMCUのソフトウェア/ハードウエア開発を、評価ボードへの僅かな投資で、IoTが爆発的に普及する前から準備・習得するのは、技術者リスク回避の点からも必要だと思います。

IoTマイコンとセキュリティ

NXPは、2018年3月2日Bluetooth 5/Thread/Zigbee 3.0サポートのコンシューマ/産業IoT向けセキュリティ強化ARMディアルコア(M4とM0+)搭載のKinetis K32W0x MCUを発表しました。

Kinetis K32W0x Block Diagram
Kinetis K32W0x Block Diagram

この新製品は、以前投稿したCypressのPSoC 6:Cortex-M4とCortex-M0+のディアルコア、セキュリティ強化、BLE 5サポートのCypress PSoC 6によく似た製品です。

Cypressに続きNXPもARMディアルコアを採用したことで、強固なセキュリティが必須のIoTマイコンは、シングルコアよりもディアルコア搭載が標準になりそうです。IoTマイコンのセキュリティ関連情報を調査し対処方法を検討します。

PSoC Creator 4.2

PSoC 6搭載評価ボードCY8CKIT-062-BLEPSoC Creator動画では、デュアルコアのIDEでの扱い方やデバッグ方法などがいまいち不明でしたが、最新版PSoC Creator 4.2(2018年2月13日)で正式にPSoC 6がサポートされました。コアにより別々のフォルダにソースコードを作成し、デバッガはどちらかの一方のコアに接続します。

Cypress PSoC Creator 4.2 for PSoC 6 (Source, Creator Release Notes)
Cypress PSoC Creator 4.2 for PSoC 6 (Source, Creator Release Notes)

各コアの役割や機能配分が明確でないと、シングルコアよりもデバッグが大変になりそうです。

色々なセキュリティ強化方法

今年初めから騒がれた投機実行機能の脆弱性起因の対策は、まだ収束していません。Cortex-M系コアはこの脆弱性に関してはセーフでしたが、後追いが宿命のセキュリティ対策には終わりがありません。組込みマイコンにも、常時アップデートができるOTA:Over The Air更新機能が必須になるかもしれません。

Windows更新でも失敗があることを考えると、このOTA機能はリスクが高く、マイコン処理能力や導入コストもかなり必要です。

一方Maximは、セキュア認証専用ICを1ドル未満で提供することを発表しました。言わばMCU固有の指紋を使うことで安価にセキュリティ強化が可能です。評価キットも用意されています。

NXPもA71CHで同様のICと開発キットを用意しています。

少し古い資料ですが2012年11月発表の、“つながる時代のセキュリティ、チップと組み込みOSの連携で守る”を読むと、セキュアブート、効率的な暗号化、仮想化を使ったデータ保護サブシステムをセキュアに分離する技術など、半導体チップで提供されるセキュリティ機能を最大限に活用すべきだとの指針が示されています。

MCUセキュリティ対策の費用対効果

2年から数年でハードウェアが更新される個人情報満載のスマホやユーザ自身がセキュリティ対策を行うパソコンと、組込みマイコン:MCUのセキュリティ対策は、守るべき情報内容、管理運営方法が大きく異なります。

IoTマイコンのソフトウェアやハードウェア開発能力だけでなく、導入するセキュリティ対策の費用対効果を見極めるスキルも必要になりそうです。本命がハッカー次第で変わるなど、セキュリティは厄介で面倒な技術です。

評価ボードから読む最新マイコン技術動向

最新マイコンの評価ボードから、IoT向けMCU技術動向を考察します。参考にしたのは2017年後半開発の下記2種評価ボードです。

つい最近、2ボードはWebinarで解説されており充実内容でした。興味がある方は、上記リンクから探せばOn Demandでも見られると思います。英語ですが非常に参考になります。

CY8CKIT-062-BLE
CY8CKIT-062-BLE

私は、「ベンダ製評価ボードは、ハード/ソフト両方の早期開発レファレンスとすべきだ」と何度か説明してきました。この認識に基づき最新評価ボードから今後のIoT MCU技術動向を抽出したのが下記です。

リッチ表示、タッチパッド、大容量ストレージ、IoT無線通信、FreeRTOS

IoTマイコンには、以下5項目が現状MCU技術に加わると思います。

IoT MCU技術動向(2017年11月)
追加技術 概要
リッチ表示出力 2×16文字程度のLCD表示から、128×160ドットカラーTFTディスプレイなどよりリッチ表示が可能な出力。
タッチパッド入力 従来タクトスイッチから、タッチパッドなどのより柔軟なユーザインタフェース入力。
大容量ストレージ 小容量EEPROM or RAMから、ロギングデータ等の保存も可能なSDカードなどの大容量ストレージ。
IoT無線通信 UART/SCIから、IoTプロトコルに応じた間欠動作で低電力志向の無線通信。
FreeRTOS ベアメタル開発から、複雑なリアルタイム処理実現のためのRTOS開発。

※IoT通信は様々なプロトコルが乱立状態ですが、BLE/Thread両方サポートに集約されそうな気配です。
※RTOSもCMSIS_RTOS/mbed OS 5/FreeRTOSと様々ですが、FreeRTOS利用例が多いです。

5項目全てが追加される訳ではなく、現状MCUにIoT通信処理のみを追加したコスト重視IoT MCUと、全て追加した高機能IoT MCUの2タイプに分かれそうです。

2タイプのIoTエンド端末

IoT MCUで開発するデバイスを、ここではIoTエンド端末と呼びます。端末の方がイメージし易いからです。コスト重視IoT MCUは、低価格IoTエンド端末へ、高機能IoT MCUは、IoTの申し子となる高機能IoTエンド端末へ搭載されます。

IoT端末の多くはこの低価格タイプになると思います。

ADCなど従来MCUのアナログ入力にセンサを接続し、IoT通信でクラウドへセンサデータを定期的に送信します。低電力処理重視のためリッチ表示などは不要で、数年~10年程度はバッテリー動作可能です。

IoT通信機能は現状未実装ですが、ルネサスエレクトロニクスのOktoberfestコースターなどが実例です。通信機能搭載で、店員のスマホから飲み物の有無や温度が解るなどの使い方が想定できます。

Oktoberfestコースター
Oktoberfestコースター

つまり、IoTクラウドの5感センシング(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)が主機能で、クラウド処理結果やユーザへのアクション指示は、スマホなどの別端末が行うのがこのタイプです。

*  *  *

高機能IoTエンド端末は、低価格端末機能に加え、リッチ表示ディスプレイでユーザに端末やクラウド解析結果なども表示可能で、ユーザが状況に応じて判断するためのタッチパッド入力なども備わっています。

端末データをローカルなSDカードなどのストレージへ蓄積し、一括してクラウド送信することや、ディスプレイ表示を状況に応じて変更するための画像データをローカル保存することもなどもできます。

IoT普及時の高機能端末がこれで、言わば簡易スマホ機能も備えた端末と言えます。最新評価ボードは、このタイプの開発レファレンスに使えるように設計されています。

実時間で複雑な並列動作が要求されるので、RTOS(FreeRTOS)が用いられます。

NXPのSwiss Army Knife Multi toolなどが実例です。

Swiss Army Knife Multi tool Block Diagram
Swiss Army Knife Multi tool Block Diagram

まとめ

最新MCU評価ボードから、現状MCUへの技術追加(強化)5項目を抽出しました。追加項目により低価格IoT MCUと高機能IoT MCUの2つに分け、IoTエンド端末イメージを示しました。

現状MCUにIoT無線通信を追加した低価格IoTエンド端末は、IoTセンサとして機能し通信プロトコルが確定すれば、現状技術でも実現性は高そうです。

簡易スマホ機能も備えた高機能IoTエンド端末は、新技術(IoT無線通信、FreeRTOS)や、従来MCUであまり使われなかったリッチ表示出力、パッチパッド入力、大容量ストレージ技術が強化されそうです。

リッチ表示出力や大容量ストレージには、高速大容量向きのSerial Peripheral Interface:SPIバス接続が有力です。センサ接続には、従来同様低速なInter Integrated Circuit:I2Cバスを使い続けるでしょう。

タッチパッド入力は、ベンダ提供の独自ライブラリを利用する形態になります。ベンダ毎にセンス能力やウエット耐性などに性能差が生じる可能性があります。

IoT通信処理とRTOSは、様々な仕様が混在中ですが、BLEとThread両用、FreeRTOSに収束しそうな気配があります。