RAテンプレート仕組み

ルネサスRAファミリテンプレート(ベアメタル編)を3月末目標に開発中です。サンプルコード活用・流用によるアプリケーション開発が容易なことが、弊社テンプレートの特徴です。このテンプレート仕組みを “少しだけ(!?)” 説明します。

全部説明すると、読者ご自身でテンプレートを開発し、購入者数が減るかもしれないからです😂。

仕組みまとめ

MCU開発者の最初の壁に穴をあけるテンプレート
MCU開発者の最初の壁に穴をあけるテンプレート

テンプレートの仕組みを “少し” しか説明しないので、まとめを最初に示します。

MCUアプリケーション早期開発は、ベンダ提供の公式サンプルコード活用・流用が王道です。しかし、単機能の利用例を判り易く示すことが目的のサンプルコードでは、複数機能の並列実装が困難です。

MCU開発の最初の壁が、この「サンプルコードを、どのように実開発へ利用するか」です。

既に弊社テンプレートの購入者様、または上級者は、この壁を突破し効果的サンプルコード活用アプリケーション開発方法を知っています。Know-how(ノウハウ)です。

サンプルコード利用時の課題は、「無限ループ」です。

この課題に、弊社テンプレートは時分割で対応しました。説明を更に加えると、読者がご自分でテンプレート相当を開発される危険性がありますので、仕組み説明はここまでにします。

以降の章は、サンプルコード課題の具体例を示します。また、この課題が生じる原因、特にRAファミリ開発でFSPサンプルコードが重要である訳を説明、最後にテンプレートのメリットを示します。

RAファミリに限らずプロトタイプ開発や早期アプリケーション開発が目的の弊社テンプレートにご興味がある方は、テンプレートサイトに主要ベンダテンプレートが各1000円で販売中、概要は無料ダウンロード可能です。

※RAファミリテンプレート(ベアメタル編)も1000円予定。FreeRTOS対応アプリケーションテンプレートのみ2000円。RAファミリテンプレートもV2以降でRTOS対応予定。

販売テンプレートには、本稿で説明できない多くの工夫も実装済みです。ダウンロード概要を読んで、自作されるよりも、弊社から是非ご購入ください😌。

サンプルコード課題の具体例

評価ボードテストプログラム構造(FPB-RA6E1の例)
評価ボードテストプログラム構造(FPB-RA6E1の例)

サンプルコードを実開発へ利用する時の課題、具体例を示します。

RAファミリ評価ボードのテストプログラム:TPです(プロジェクト名:quickstart_fpb_re6e1_ep)。電源投入後、搭載LEDが点滅し、SW押下げで点滅間隔が変わり、評価ボードの正常性をテストします。

このTPのuser_main部分を抜粋しました。評価ボードにより多少異なりますが、基本動作は同じです。

LED点滅間隔は、無限ループ内のR_BSP_SoftwareDelay(g_delay)が決めます。このR_BSP_SoftwareDelay処理中は、MCUを独占するため、他の処理はできません(割込み処理は除く)。

MCUの並列処理は、RTOS利用が常套手段ですが、RTOS理解やベアメタル比大きな処理能力とRAMが必要です。

そこで、RTOSを使わずにベアメタルで並列処理をするため、LED点滅を時分割処理し、空き時間に別処理を実行するのが、テンプレートの仕組みです。

テンプレートの仕組み
テンプレートの仕組み

サンプルコード課題の原因

サンプルコードの構造は、基本的な「初期設定」+「無限ループ処理」です(基本のキ:組込み処理参照)。

この構造で、①内蔵周辺回路の初期設定 → ②周辺回路の監視(時間消費も含む)→ ③監視結果の処理実行を行います。②と③を、無限ループ内で繰返します。

①初期設定と③結果処理は、開発アプリケーションへそのまま流用ができます。問題は、結果処理以外の無限ループ内が全て監視(時間消費)になる点です。監視中は、他の処理はありません。

つまり、周辺回路のMCU「専用」利用例という訳です。専用ですから、監視結果の処理実行が有ろうが無かろうが問題はありません。

ところが、1つの無限ループ内へ、単純に別周辺回路の「②監視と③結果処理」を入れると、無限ループは、周辺回路「専用」から「共用」へ変ります。

共用する他の周辺回路の監視結果処理の実行有無に応じて、もう1つの周辺回路の監視結果起動間隔も変わります。起動間隔が変わっても問題ない場合もありますが、多くの場合、問題でこれが課題です。

例えば、ウオッチドックタイマ定時リセットや、前章のLED点滅間隔などです。

共用無限ループ内の別サンプルコード処理有無により、当該サンプルコード処理間隔が変わるという問題は、開発初心者には簡単に解決できない大きな壁:課題です。

FSPサンプルコードが重要な訳

FSP構成とGUI設定の様子
FSP構成とGUI設定の様子

RAファミリ共通のHAL API生成ツールがFSPです。FSPのBoard Support Package (BSP)とHardware Abstraction Layer (HAL)Driversが、評価ボードとRA MCU差を隠蔽し、RAファミリ共通APIをGUIで生成します。

Boardは、評価ボードを指しますが、ユーザ独自開発ボードでも、BSPだけを変更すれば、評価ボードを使って開発したソフトウェアが、そのまま独自開発ボード上でも動作します。

つまり、FSPは、プロトタイピング開発に適したツールです。RAファミリアプリケーションの早期開発ポイントは、FSP活用です。但し、FSPソフトウェア開発者は、知っておくべき作法があります。

例えば、2章で示したGPIO制御前後のR_BSP_PinAccessEnable()やR_BSP_PinAccessDisable()などです。これらは、BSP GPIOレジスタの電圧レベルアクセス制御許可/禁止を設定します。

仮に、R_BSP_PinAccessEnable()をコメントアウトすると、ビルドは成功しますがLEDは点滅しません。ワーニングなどもありませんから、作法を知らないと点滅しない原因は、まったく不明になります。

これらは、GPIOアクセスとセットで知るべき作法です。このような作法は、分厚いFSPユーザマニュアルのどこかに記載されているハズですが、ルネサスエキスパートが提供するサンプルコードからセットで抜き出し、そのまま利用する方が簡単です。

※BSP GPIOアクセスの代わりに、上記許可/禁止追記不要なHAL GPIOアクセスもあります。コレも作法の1つです。

また、ルネサス独自内蔵周辺回路:イベントリンクコントローラのサンプルコードなども、同一MCUコア利用の競合他社差別化に役立つかもしれません。
※イベントリンクコントローラは、MCUを介さずに周辺回路間の連携動作が可能なハードウエア。

マニュアルよりもサンプルコードを読み、評価ボードで試す、“習うより慣れよ” です。

FSPサンプルコードは、このような作法や差別化ヒントが詰まった宝庫です。RAファミリアプリケーション開発には、必読書です。

FSP開発例はコチラ、評価ボードサンプルコードは、コチラの関連投稿も参照ください。

テンプレートメリット

本稿では、しばしば “そのまま” という太字キーワードがでてきます。MCUアプリケーション開発は、ベンダ公式サンプルコードが、そのまま利用・活用する部分と、開発者が “工夫を加える部分” とを、素早く見極める目:Know-howも必要です。

Know-how獲得には、弊社テンプレートとMCU評価ボード+Baseboardが、お役に立てると思います。テンプレートもアプリケーションの1つなので、テンプレートへ追記した豊富な日本語コメントで、そのまま流用している部分と、工夫を加えた部分がソースコード上で確認できるからです。

テンプレートを活用し、アプリケーションをプロトタイピング、次ステップでプロトタイプアプリをチューニングし、完成度を上げます。

プロト目的は、アプリ早期開発、この目的に、ベンダ公式サンプルコード流用・活用と弊社テンプレートを利用します。

既製品の流用・活用・利用は、物足りなく感じる方もいるかもしれません。しかし、弊社テンプレートは、チューニング時、開発者が工夫を追加できる余地がいくらでもあります。アプリ完成度向上には、ご購入者独自の工夫も大切ですので、ご安心ください😁。

組込み開発 基本のキ:RTOS vs. ベアメタル

RTOS vs. BareMetal
RTOS vs. BareMetal

2022年最初の投稿は、RTOSとベアメタルを比較します。RTOSを使わないベアメタルMCU開発者が多いと思いますので、RTOS開発メリット/デメリットをベアメタル側から評価、RTOSデバッグツール紹介とベアメタル開発の意味を考えました。

RTOS目的

Flexible Software Package構成
Flexible Software Package構成

ルネサスRAファミリのFlexible Software Package構成です。左上Azure RTOSやFreeRTOSの中に、ConnectivityやUSBがあります。これらMCU共有資源を管理するシステムソフトウェアがOSで、PCのWindowsやMac、Linuxと機能的には同じです。

Real-Time性が必要な組込み用OSをRTOSと呼び、FreeRTOSやAzure RTOSが代表的です。これは、IoT MCU接続先が、Amazon Web Services(AWS)クラウドならばFreeRTOSライブラリ、Microsoft AzureクラウドならAzure RTOSライブラリ(図のConnectivity)利用が前提だからです。

※2021年のIoTクラウドシェアは、コチラの関連投稿からAWS>Azure>GCPの順です。

RAファミリに限らず、クラウド接続のIoT MCUは、これらRTOSライブラリを使ったRTOS開発になります。

RTOSメリット/デメリット

例えば、ベアメタルでUSB制御を自作する場合は、USB 2.0/3.0などの種類や速度に応じた作り分けが必要です。ライブラリがあるRTOSなら、USBポートへの入出力記述だけで利用可能です。RTOSが共有資源ハードウェア差を吸収し、アプリケーションが使い易いAPIを提供するからです。

RTOSの資源管理とは、MCUコア/Flash/RAM/周辺回路/セキュリティなどの共有資源を、アプリケーション側から隠蔽(≒ブラックボックス化)すること、とも言えます。

RTOSアプリケーションは、複数タスク(スレッドと呼ぶ場合もあり)から構成され、タスク間の優先制御もRTOSが行います。開発者は、単体処理タスクを複数開発し、それらを組み合わせてアプリケーションを構成します。RTOSアプリケーション例が下図、灰色が開発部分、コチラが関連投稿です。

Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB'S Blog)
Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB’S Blog)

RTOS利用メリット/デメリットをまとめます。

メリットは、

・RTOSライブラリ利用により共有資源活用タスク開発が容易
・移植性の高いタスク、RTOSアプリケーション開発が可能
・多人数開発に向いている

デメリットは、

・複数タスク分割や優先順位設定など、ベアメタルと異なる作り方が必要
・共有資源、特にRAM使用量がタスク数に応じて増える
・RTOS自身にもバグの可能性がある

簡単に言うと、RTOSとベアメタルは、「開発作法が異なり」ます。

ソフトウェア開発者は、RTOS利用と引換えに、自己流ベアメタル作法を、RTOS作法へ変えることが求められます。RTOS作法は、標準的なので多人数での共同開発が可能です。もちろん、ベアメタルよりもオーバーヘッドは増えます。このため、RTOS利用に相応しい十分なMCUコア能力も必要です。

RTOSタスク開発 vs. ベアメタルアプリケーション開発

最も効果的なRTOS作法の習得は、評価ボードを使って実際にRTOSタスク開発をすることです。弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、この例です。

それでも、RTOSタスク開発作法を文章で記述すると、以下のようになります。

開発対象がアプリケーションからタスク(スレッド)へ変わることが、ベアメタルとの一番の違いです。Windowsタスクバーにあるフィルダ表示や、ペイントなどと同様、タスクは、単機能の小さいアプリケーションとも言えます。

このタスクを複数開発し、複数タスクを使ってRTOSアプリケーションを開発します。タスクには、それぞれ優先順位があり、他のタスクとの相対順位で実行タスクがRTOSにより決まります。タスクの状態遷移が、RTOSへの備え:第2回、タスク管理で示した下図です。

FreeRTOS Task States
FreeRTOS Task States

ベアメタルアプリケーションとは異なり、優先順位に応じてタスクが実行(Running)され、その実行も、定期的に実行可能状態(Ready)や待ち状態(Suspended)、停止状態(Blocked)へRTOSが変えます。これは、リアルタイムかつマルチタスク処理が、RTOSの役目だからです。遷移間隔などは、RTOS動作パラメタが決めます。

ベアメタル開発は、開発者が記述した通りに処理が実行されますが、RTOS開発のタスク実行は、RTOS任せです。RTOS開発難易度の上がる点が、ここです。

一般的なIoT MCUは、シングルコアですので、実行タスク数は1個、多くの他タスクは、Not Running(super state)状態です。RTOSがタスクを実行/停止/復活させるため、スタックやRAM使用量が急増します。

これら文章を、頭の中だけで理解できる開発者は、天才でしょう。やはり、実際にRTOSタスクを開発し、頭の中と実動作の一致/不一致、タスク優先順位やRTOS動作パラメタ変更結果の評価を繰返すことで、RTOS理解ができると凡人筆者は思います。

ベアメタル開発者が手早くRTOSを理解するには、既にデバッグ済みの複数RTOSタスク活用が便利で、FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、この要求を満たしています。概要は、リンク先から無料ダウンロードできます。

文章でまとめたFreeRTOS解説が、コチラの弊社専用ページにあります。また、本ブログ検索窓にFreeRTOSと入力すると、タスク開発例などが参照できます。

RTOSデバッグツール

percepio tracealyzer
percepio tracealyzer

さて、RTOS作法に則ってタスク開発し、RTOS動作パラメタも適切に設定しても、思ったように開発タスクが動作しない時は、ブラックボックスRTOS自身のバグを疑う開発者も多いでしょう。RTOSのバグ可能性もありえます。

この疑問に対して強力にRTOS動作を解析できるFreeRTOSデバッグツールがあります。資料が無料でダウンロードできますので、紹介します。

※このツールを使うまでもなく、弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、正常動作を確認済みです。

まとめ:RTOS vs. ベアメタル

IoT MCUのクラウド接続 → 接続クラウド先のRTOSライブラリ必要 → RTOSライブラリ利用のRTOS開発が必要、という関係です。

RTOS開発は、ベアメタルと開発作法が異なる複数タスク開発です。タスクは、優先順位に応じてRTOSがMCU処理を割当てます。また、MCU共有資源がRTOSアプリケーションから隠蔽されるため、移植性が高く多人数での大規模開発にも向いています。

一方で、RTOSオーバーヘッドのため、ベアメタルよりも高いMCU能力が必要です。

シングルコアMCUでは、RTOSとベアメタルのハイブリッド開発は困難です。開発者がRTOSを利用するなら、慣れたベアメタル開発から、RTOSタスク開発への移行が必要です。

ベアメタル開発経験者が、効果的にRTOSタスク開発を習得するには、評価ボードと複数RTOSタスクが実装済みの弊社RTOSアプリケーションテンプレートの活用をお勧めします。

ベアメタル開発意味

RTOSのタスク処理待ち(セマフォ/Queue)を使うと、ベアメタルよりも排他/同期制御が簡単に記述できます。それでも、全てのMCU開発がRTOSへ移行することは無いと思います。様々なセンサデータをAD変換するエッジMCUは、ベアメタル開発、エッジMCUを複数個束ねクラウドへ接続するIoT MCUは、RTOS開発などがその例です。

MCU開発の基本は、やはりRTOS無しの「ベアメタル開発」です。

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

ベアメタル開発スキルを基にRTOSを利用してこそ、RTOSメリットを活かしたタスクやアプリケーション開発ができます。共有資源ブラックボック化、多人数開発のReal-Time OSは、「ベアメタル開発の補完」が起源です。

PC OSとは全く逆のこの生い立ちを理解していないと、効果的なRTOS利用はできません。近年MCU性能向上は著しいのですが、向上分をRTOSだけに振り分けられる程余裕はなく、IoTセキュリティなどへも配分する必要があります。

この難しい配分やRTOS起因トラブルを解決するのが、ベアメタル開発スキルです。弊社マイコンテンプレートは、主要ベンダのベアメタル開発テンプレートも販売中、概要ダウンロード可能です。

組込み開発 基本のキ:バックナンバー

2022年最初の投稿に、筆者にしては長文すぎる(!?)のRTOS vs. ベアメタルを投稿したのは、今年以降、RTOS開発が急速に普及する可能性があるからです。

クラウド接続からRTOS必要性を示しましたが、セキュリティなど高度化・大規模化するIoT MCU開発には、移植性の高さや多人数開発のRTOSメリットが効いてきます。

また、半導体不足が落ち着けば、RTOS向き高性能MCUの新しいデバイスが、各ベンダから一気に発売される可能性もあります。スマホ → 車載 → IoT MCUが、半導体製造トレンドです。

※現状のMCUコア関連投稿が下記です。
Cortex-M33とCortex-M0+/M4の差分
Cortex-M0からCortex-M0+変化
Cortex-M0/M0+/M3比較とコア選択

IoT MCU開発が複雑化、高度化すればする程、前章のベアメタル開発や、組込み開発の基礎技術:基本のキの把握が、開発者にとって益々重要になります。

組込み開発、基本のキ:バックナンバーを示します。年頭、基本を再確認するのはいかがでしょう?
組込み開発 基本のキ:組込み処理
組込み開発 基本のキ:IoT MCUセキュリティ



クラウドベースMCU開発(個人編)

クラウドベースMCU開発お役立ちリンク
クラウドベースMCU開発お役立ちリンク

ARMが、2021年10月19日、IoT関連製品の開発期間を平均5年から最大2年間短縮できるクラウドベース開発環境「Arm Total Solution for IoT」発表という記事(EE Times Japan)は、以下の点で興味深いです。

・IoT製品化に平均5年もかかるのか?

・ハードウェア完成を待ちソフトウェア開発着手するのか?

但し、クラウドがMCU開発に効果的で、GitHubなどのクラウドリンクが今後増えることは、疑う余地がありません。そこで、すきま時間に個人レベルで役立つクラウドMCUリンクを3点示します。

すきま時間お役立ちクラウドMCU開発リンク

クリエイティブなMCUハードウェア/ソフトウェア開発中は、集中時間と空間が必要です。COVID-19の影響で、開発場所や通勤環境に変化はあるものの、ちょっとした待ち時間や出先での2~3分程度のすきま時間は相変わらず存在します。

個人レベルのIoT MCU開発支援が目的の弊社は、このような短いすきま時間にスマホやタブレットを使って、MCU情報を収集、閲覧するのに便利なリンクを紹介します。

すきま時間にMCU関連情報を閲覧することにより、集中時間に凝り固まった開発視点を新たな視点に変える、最新情報を収集するなどが目的です。

STマイクロMCU技術ノート

STマイクロMCU技術ノートの一部(PDF内容は濃く全てのMCU開発で役立つTips満載)
STマイクロMCU技術ノートの一部(PDF内容は濃く全てのMCU開発で役立つTips満載)

STマイクロのSTM32/STM8シリーズ別に検索できる日本語MCU開発Tips満載リンクです。ログインが必須ですが、わずか数ページで説明されたダウンロードPDF内容は濃く、STユーザに限らず全てのMCU開発者に役立つTipsが得られます。

EDN Japan Q&Aで学ぶマイコン講座

EDN Japan Q&Aで学ぶマイコン講座の一部
EDN Japan Q&Aで学ぶマイコン講座の一部

EDN JapanのMCU情報リンクです。Q&Aで学ぶマイコン講座は、最初の1ページでMCU初心者、中級者からの質問に対する回答要点が示されています。2ページ以降で回答詳細を説明するスタイルですので、短時間での内容把握に適しています。

Digi-Keyブログ

Digi-Keyブログの一部(日本語タイトルは翻訳された記事を示す)
Digi-Keyブログの一部(日本語タイトルは翻訳された記事を示す)

日本語タイトルで日本語へ翻訳されたブログ記事が判るリンクです。大手サプライヤーの英語ブログですのでMCUだけでなく、幅広いデバイス情報が得られます。すきま時間でも読めるように記事は短く纏まっています。最新MCU情報やハードウェア開発者向け情報が多いのも特徴です。

IoT製品とプロトタイプ開発

EE Timesの2021年10月8日、半導体製品ライフサイクルの長さと製造中止対策の記事に、20年前、1990年代の事業分野別の製品開発リードタイムとライフサイクル変化が示されています。

事業分野別の開発リードタイムと製品のライフサイクル変化(出展:記事)
事業分野別の開発リードタイムと製品のライフサイクル変化(出展:記事)

1998年の値ですが、重電機器を除く製品開発時間(リードタイム)が2.3年以内という数値は、現在でも納得できます(0.5年程度のプロトタイプ開発時間は含んでいない実開発時間だと思います)。

MCUベンダ各社は、10年間のMCU供給保証を毎年更新します。つまり、2021年更新ならば、2031年迄の10年間は販売MCUの供給を保証するということです。

但し、セキュリティが重視されるIoT製品では、最新セキュリティハード/ソフト内蔵IoT MCUによる製品化をエンドユーザは望みます。SoC:System on a Chipによる製造プロセス進化により、IoT関連製品の開発期間は、再開発も含めると1998年よりも更に短くなる可能性もあります。

前章リンク情報を活用し、最新セキュリティ内蔵MCU状況、セキュリティ機能のOTA更新可能性、開発製品がエンドユーザのセキュリティニーズと開発コストを満たすか、などを個人でも常時把握・評価し、万一、開発製品の成功見込みが少なくなった場合には、MCU見直しなども必要でしょう。

IoTセキュリティのライフサイクルは変動的で、かつ、IoT製品の市場獲得に支配的です。短い開発時間中であっても、状況に応じてMCUを変更することは、製品の成功と失敗に直結します。

弊社MCUテンプレートを使ったプロトタイプ開発は、このような激変IoT製品開発のMCU評価に適しています。制御系MCUと被制御系を分離、低コスト、少ない手間でプロトタイプを早期に開発し、プロトタイプ実機によりIoT製品のMCU評価、適正判断ができるからです。

もちろん、最初に示したバーチャルなArm Total Solution for IoTとの併用も有効です。セキュリティ重視IoT製品開発の成功には、IoT MCU選択と開発期間の短さがポイントです。

RA4E1 Fast Prototype BoardのFreeRTOS使い方

RA4E1 Fast Prototype BoardへFreeRTOSを適用
RA4E1 Fast Prototype BoardへFreeRTOSを適用

RAファミリ評価ボードRA4E1 Fast Prototype Board (Cortex-M33/100MHz、Flash/512KB、RAM/128KB)(以降FPB)の、スイッチS1でLED2を点灯するFreeRTOS適用例を示します。RAファミリビギナーズガイド9章記載のEK-RA6M4評価キットを使った処理内容と同じです。

e2 studio 2021-10は、Project>Change Deviceで対象MCUデバイス変更機能がありますが動作しません。そこで、ガイド掲載のEK-RA6M4を手動でRA4E1へ変更し、FPBでFreeRTOSのセマフォを利用し、S1押下げ割込みとLED2トグル点灯を同期させるFreeRTOSサンプルコードを示します。

このコードを使い、前稿よりも具体的にFPBとFlexible Software Package(以降FSP)の使い方、今回は使わないTrustZoneのメリットを示すのが、本稿の目的です。

RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)のRTOSとTrustZone

IoT MCUをクラウド接続するには、RTOSが必要です。AWS(Amazon Web Services )接続にはFreeRTOSライブラリ、Microsoft Azure接続にはAzure RTOSライブラリの利用が前提だからです。

また、クラウド接続には、TrustZoneなどハードウェアによるセキュリティ対策も要求されますので、RTOSとTrustZoneは、IoT MCUの必須2技術です。

ハードウエアセキュリティは、開発後、簡単に追加することが困難です。今回はTrustZone未使用ですが、IoTプロトタイプ開発にTrustZone内蔵Cortex-M33を用いるのは、例え未使用でも製品セキュリティ処理の具体的検討ができるなど、IoTセキュリティを開発初期から考慮した設計となるからです。

これが使わないTrustZoneのメリットです(TrustZone使用例も、いずれ投稿予定)。

本稿は、先ずFreeRTOSをFPBへ適用します。FreeRTOS新規プロジェクト作成、API生成ツールFSP設定、FSP生成ファイルへのタスク追記の順に説明します。

Step1:FreeRTOS新規プロジェクト作成

最新版e2 studio(2021-10)の新規FreeRTOSプロジェクトは、File>New>C/C++Projectとクリックし、①~⑥の手順で作成します。

FreeRTOS新規プロジェクト作成
FreeRTOS新規プロジェクト作成

②プロジェクト名は、任意です。③Boardは、PFB-RA4E1を選択します。

④TrustZone未使用時のプロジェクトを、“Flat”と呼びます。これは、TrustZone使用時、セキュアと非セキュアの2プロジェクト並存が必要となりメモリ領域を分割することに対する、平坦なメモリ使い方に起因していると思います。

※メモリ領域分割は、PCハードディスクのパーティション分割をイメージして頂ければ判り易いでしょう。例えサイバー攻撃を受けても、物理的に侵入できないメモリ領域を作り、ここへ最重要情報やソフトウェアを保存する訳です。

⑤FreeRTOSを選択します。ベアメタル(No RTOS)とAzure RTOSも選択可能です。⑥Minimalを選択し、FinishクリックでFreeRTOS(TrustZone未使用)新規プロジェクトが完成です。

各選択肢を変えると、前稿で説明した多種類の新規プロジェクトが作成できることが解ります。

Step2:Flexible Software Package(FSP)設定

Flexible Software Package (FSP)設定
Flexible Software Package (FSP)設定

新規プロジェクト作成のFinishクリックで、FSPパースペクティブオープンを聞いてきますので、開きます。

①プロジェクトSummaryが表示されます。Stacksタブを選択、②New Stackをクリックし、External IRQ Driver on r_icuを選択します。新しい外部割込みドライバがStackに追加され、③プロパティが表示されます。

FPBのユーザスイッチS1は、P205(IRQ1)に接続済みです。そこで、③プロパティのirq0をirq1、TriggerをFalling、Digital FilteringをEnable、Callbackをexternal_irq1_callbackに変更します。

次にセマフォ追加のため、④ObjectsのNew Objectsをクリックし、Binary Semaphoreを選択します。⑤プロパティSymbolをg_s1_semaphoreに変更します。

RA4E1 Fast Prototype BoardのSW1 P205(IRQ1)の確認
RA4E1 Fast Prototype BoardのSW1 P205(IRQ1)の確認

最後に、⑥pinsタブをクリックし、ユーザスイッチS1:P205(IRQ1)とIOピン割当てをGUIで確認します。

以上でFSP設定は完了です。Generate Project Contentをクリックすると、APIや割込みコールバック関数、関連ファイルが自動生成されます。

Step3:FSP生成ファイルへタスク追記

FreeRTOSセマフォ同期処理
FreeRTOSセマフォ同期処理

FSPが生成したファイル:led_thread_entry.cに上記コードを追加します。このコードは、LED初期化と無限ループ処理から構成されます。RAビギナーズガイド掲載のirq10をirq1へ変更したLEDタスクです。

コールバック関数external_irq1_callbackは、Developer AssistanceのLED Threadを開くと一番下に割込みコールバック関数が生成済みですので、これをドラッグ&ドロップして追加します。

LEDタスク追加後、ビルドしFSBへダウンロード、デバッガ起動後、再開を2回クリックして実行中の様子が上図です。FSBのS1クリックでLED2がトグル点灯します。

FreeRTOS Queueサンプルコード

前章は、RAファミリビギナーズガイド9章のEK-RA6M4評価キットFreeRTOSセマフォサンプルコードを、RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)へ流用したコードです。変更箇所は、irq10をirq1へ変えただけです。

FSPには、FreeRTOS Queueサンプルコード:freertos_fpb_ra4e1_epも付属しています。これら2つのサンプルコードを理解すれば、セマフォとQueueを使う基本的なFreeRTOSソフトウェア開発が可能です。

FreeRTOS待合せ手段としては、セマフォ/Queue以外にもMutexやイベントグループなどの手段もあります。弊社ではFreeRTOS基礎固めを目的として、Hardware Independent FreeRTOS Exampleを応用したセマフォ/Queue活用のFreeRTOSテンプレート化を目指しています。RA/REテンプレートもこの方針で開発する予定です。

この方針で開発したNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、コチラから概要がダウンロード可能です。

まとめ

RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)へ、RAファミリビギナーズガイド掲載FreeRTOSサンプルコードを流用し、ユーザスイッチS1とLED2点灯をセマフォで同期させました。

FreeRTOS新規プロジェクト作成、Flexible Software Package(FSP)設定、FSP生成ファイルへのタスク追記の具体的操作手順を示しました。

ガイド9章には、更に詳細な説明がありますので、参考になります。例えば、スイッチ割込み優先度12を利用する理由、systick優先度15が予約済みであるなどです。

TrustZoneは未使用ですが、プロトタイプ開発初期からIoTセキュリティを考慮した設計ができるメリットがあります。

FSP付属Queueサンプルコードと本セマフォコードを使ってFreeRTOS基礎固め目的のRA/REテンプレート開発を進めます。

RA4E1 Fast Prototype Boardの使い方

前稿のRAファミリ評価ボードRA4E1 Fast Prototype Board(以降FPB)を入手、RA/REテンプレート検討に着手しました。

FPB開発に用いるルネサスIDE:e2 studio(以降e2)とAPI生成ツール:Flexible Software Package(以降FSP)は、NXPやSTマイクロなどのEclipseベースIDEの利用者が?に思う箇所があると思います。

ルネサスIDE:CS+ユーザでも、同様にこの?を感じると思いますので、対策と評価ボードFPBの使い方を示します。

RA4E1 Fast Prototype Boardとe2 studio
RA4E1 Fast Prototype Boardとe2 studio

e² studio

Eclipse IDEをベースとしたRAファミリ統合開発環境:IDEが、e2、API生成ツールが、FSPです。

e2は、ARMコアを含む全てのルネサスMCU開発用の新世代IDEで、古くからあるRL78ファミリやRXファミリなどのルネサス独自コア専用統合開発環境CS+の後継IDEとして登場しました。但し、CS+は、現在でもRL78/RXファミリ開発に使えます。

e2は、MCUファミリ毎にコンパイラを切替えることにより、全ルネサスMCUの共通IDEとして動作します。MCUファミリのコンパイラは、普通1種類です。ところが、RAファミリには、GNUとARM Compiler V6の2種類が用意されており、どちらも無償です。

GNUとARM Compiler V6?

e2インストール時、デフォルトでインストールされるコンパイラは、GNUです。ARM Compiler V6は、後から追加インストールが必要です。最初の?は、両コンパイラの“違いは何か”です。

次章で示すFSPやTrustZone利用に差が生じるのであれば、問題です。

ルネサス資料を探しましたが、結局、コンパイラ差は分かりません。最近では殆ど行わないアセンブラデバッグが無ければ、コンパイラはどちらでも構いませんので、デフォルトGNUで当面はOKとします。

Flexible Software Package (FSP)?

RAファミリ専用のAPI生成ツールが、FSPです。動画:Generating Your First RA FSP Project(8:25)で使い方が分かります。

Flexible Software Package構成
Flexible Software Package構成

簡単に説明すると、スタックと呼ぶ開発プロジェクトで使用するHALドライバやRTOSなどのミドルウェアパタメタをGUIで設定後、e2のGenerate Project Contentをクリックすると、Developer Assistance内に全てのAPIが自動生成され、その中から使用するAPIを、ユーザ自身でソースコード任意場所にドラッグ&ドロップする使い方です。

ソースコード任意場所にAPIを配置できるのは、親切とは言えません。NXPやSTマイクロのコード生成ツールでも、API追加箇所にコメント付きのソースコードが生成されます。しかし、FSPは、ソースコード上のどこにでもAPIを設置できます。

API使用順序、設置場所、パラメタの意味が予め解ってないと、適切なコーディングは困難でしょう。後述する多くの公式サンプルコード(スタック利用例)がありますので、これらを参考に習得する必要があります。

hal_entry.c?

e2 studioのra_genとsrcフォルダ
e2 studioのra_genとsrcフォルダ

Generate Project Contentのクリックで生成されるのがAPI本体、つまり、ra_genフォルダ内のmain.cを含むスタックのドライバ関数群です。ra_genフォルダは、FSPが生成するコードの格納場所です。

これらとは別のsrcフォルダ内に見慣れないhal_entry.cファイルがあります。srcフォルダは、ユーザが追加するコードの格納場所です。

FPB出荷時にインストール済みのquickstart_fpb_ra4e1_epプロジェクトを読むと、main.c→hal_entry.c→user_main.cとコールされ、結局、user_main.cに一般的なIDEでユーザが追記する初期設定と無限ループを記述するのが、FSPでのユーザソースコード記述作法のようです。

※一般的なIDEでユーザが追記する初期設定と無限ループについては、基本のキ3章まとめを参照してください。

quickstart_fpb_ra4e1_epのuser_main処理
quickstart_fpb_ra4e1_epのuser_main処理

readme.txt?

公式サンプルコードをe2へインポート後、readme.txtでサンプル動作内容やFPB追加配線の必要性が分かります。バグだと思いますがe2(2021-07)は、サンプルコード付属readme.txtがプロジェクト内へインポートされません。

筆者は、手動でインポートしました。例えば、sci_uart_fpb_ra4e1_epプロジェクトは、追加配線無しではTera Term動作確認ができませんので、readme.txtを読み、追加配線が必須です。

RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)の使い方

IoT MCUの機能と消費電力を最適化したRAファミリのRA4E1グループ評価ボード:RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)の特徴は、以下2点です。

  • TrustZone
  • 低電力動作(Sleep > Snooze > Software Standby > Deep Software Standby)
RA4E1ブロック図
RA4E1ブロック図

TrustZoneの使い方は、RAファミリビギナーズガイドの11章が参考になります。

FreeRTOS利用を含むサンプルコードはコチラ、低電力動作サンプルコードはコチラからダウンロードできます。前章のquickstart_fpb_ra4e1_epやsci_uart_fpb_ra4e1_epプロジェクトは、初めのサンプルコード内にあります。

RTOSは、IoT接続先クラウドに応じてFreeRTOSかAzure RTOSの2種から選択可能です。また、通常の低電力動作:Sleepに加え、SnoozeやDeep Software Standbyなど超低電力動作モードも備えています。

プロジェクトは、ベアメタルまたはRTOS、TrustZone利用または非利用、の各選択肢がありますので4種類、FreeRTOSかAzureの選択を加えると、合計6種類の新規プロジェクト作成方法が可能です。

つまり、IoT MCUエッジ開発で必要となる様々なプロジェクト開発に、FPBだけで対応可能です。応用範囲の広い評価ボードで、IoTプロトタイプ開発に適しています。サンプルコード内容も豊富です。

まとめ

ユーザ視点からのベンダ各社がEclipse IDEをベースIDEに使うメリットは、IDEインタフェースがEclipseに似てくるので、ベンダが変わっても同じIDE操作性が得られることです。各社IDEで異なる部分は、周辺回路設定やAPI/コード自動生成の部分に限られるのが一般的です。

これら部分に加え、RAファミリ開発に使うe2 studioとFlexible Software Package は、無償コンパイラ選択、生成APIのソース追加方法、hal_entry.cなど、一般的なEclipseベースIDE利用者にとって?が生じる箇所が多数ありました。

ルネサス資料は多いのですが、肝心の?ポイントが解りにくいとも感じました。RAファミリ開発着手時は、これらに対し慣れが必要かもしれません。そこで、備忘録として本稿を作成しました。

なお、同じく前稿で示したREファミリについては、非常に良くまとまったREマイコンの使い方がルネサスサイトより入手できます。

RA4E1 Fast Prototype Board(Cortex-M33/100MHz、Flash/512KB、RAM/128KB)は、低価格で入手性もよくTrustZoneやRTOS、低電力動作など、幅広い知識や技術が要求されるIoT MCU開発の素材として優れています

現状RAファミリ資料の纏まりは、REファミリと比べると今一歩ですが、改善されると思います。開発に必要となる技術レベルが少し高いのですが、e2 studioとFlexible Software Package (FSP)、RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)と豊富なサンプルコードを使ったIoT MCU開発は、好奇心を満たすIoT MCU習得へ向けたお勧めの開発環境と評価ボードと言えるでしょう。

弊社ブログは、RA/REテンプレート開発を目指し、継続して関連情報を投稿します。

Windows 11アップグレード可能通知:FYI

Windows 11を実行できます
Windows 11を実行できます

10月5日リリースWindows 11アップグレード可能通知が弊社PCへ届きました。今月リリースWindows 10 21H2で運用し、1年程度の11評価結果を見てアップグレードを予定しております。ご参考まで。

組込み開発 基本のキ:組込み処理

IoT MCUソフトウェア/ハードウェア開発者向け基本のキ、今回は、組込み処理の「ポーリング」、「割込み」、「低消費電力動作」とMCU開発の秘訣(コツ)を示します。ベアメタル開発でもRTOS開発でもこれらは同じです。これら基本を知ると、サンプルコードの読み方、利用法も解ります。

ポーリング と 割込み

「ポーリング」とは、無限ループを周る度に例えばSWが押されたかどうかのフラグ相当をポーリング(polling)し、フラグが立ったら、その処理を実行することです。

ポーリング
ポーリング

「割込み」は、割込み発生時に周辺回路が自動で呼出すISR(Interrupt Service Routine)を開発します。

ISRは、出来るだけ軽く(小さく)することが重要です。別周辺回路の割込みもできるだけ取込むためです。そこでISRでは、周辺回路が割込み発生時に立てた割込み発生フラグをリセット、このフラグとは別の割込み処理待ちフラグを立ててコード化するのが常套手段です。

この割込み処理待ちフラグを無限ループでポーリング、ブラグが立っていれば実際の割込み処理を実行します。

つまり、割込み処理の前段階にISRがあり、ポーリングのフラグ相当が割込み処理待ちフラグに変るだけ、結局、ポーリングに帰着します。

割込み
割込み

ベアメタル開発でもRTOS開発でも上記は同じです。RTOS時は、タスク間のセマフォ/Queueによる処理待ちが差分として追加されます(これら以外にも処理待ちはありますが、セマフォ/Queueで当面賄えます)。

低消費電力動作

無限ループをそのまま連続で回し続けると消費電力が増加します。そこで、間欠的にループを回し、ループを回さない時間は、最も電力を消費するMCUを停止するのが「低消費電力動作」です。

低消費電力動作
低消費電力動作

例えば1秒毎に1回ループを回すなど、低電力化を図りつつループ連続回しの時と大差なく処理する、つまり、どの程度間欠動作させるかが開発者の腕の見せ所です。

まとめ:ポーリング、割込み、低消費電力動作の3Tipsと開発秘訣

IoT MCUで開発するのは、MCUを含む周辺回路の初期設定と、無限ループ内の処理です。

初期設定とは、内蔵周辺回路を動作させるための設定です。周辺回路は、初期設定が終わると直に動作を開始します。そこでMCUは、動作中の周辺回路を監視し、必要に応じて処理を行います。このMCU監視が、無限ループ内の処理です。「組込み処理の中身」は、このように初期設定とループ内処理の2種類です。

初期設定の前にRAMクリアなどのスタートアップ処理もありますが、ここはIDEが自動生成し、通常、開発者が手を加えることは殆どありません。

初期設定は、サンプルコードの初期設定をそのまま流用する部分です。サンプルコードに使用例がない特殊(!?)な周辺回路の使い方をする時は、データシートやユーザマニュアルの当該周辺回路部分を熟読すればコード化できます。

次の開発部分が、無限ループ内です。ループ内処理をまとめた本稿の3Tipsが下記です

  1. 無限ループ内は、「ポーリング」か「割込み」のどちらか
  2. 割込みは、ISRで「割込み発生フラグ」を「割込み処理待ちフラグ」へ事前変換しポーリングへ帰着
  3. 無限ループの間欠動作と、間欠中のMCU停止が、「低消費電力動作」
組込み処理の3Tips、ポーリング、割込み、低消費電力動作
組込み処理の3Tips、ポーリング、割込み、低消費電力動作

組込み処理の中身とこれら3Tipsを知らずに組込み開発を始めるは、非効率です。中身と3Tipsを習得するには、紆余曲折、結構な時間と実務(失敗)経験が必要だからです。

例を挙げると、技術背景が少ない初心者にとっては、関連情報が多いため消化不良を起こします。また、初心者でなくても、開発自由度が高い(≒無いに等しい)ので、開発を上手く収束させには、Tipsやコツが必要になるなどです。

全てを網羅的に記述しているデータシートやユーザマニュアルは、既にこれらコツや技術背景を習得済みの中級者以上には役立ちますが、それ以外の人が読んでも実質の理解はできません。いきなり六法全書を読んで弁護士をする様なものです😂。

MCU開発の秘訣(コツ)は、先ず、3Tipsを基にプロトタイプを開発し、次に、実際に動作するプロトタイプを使って、開発自由度の高さを活かし動作チューニングすることです。

実働プロトタイプがあれば、データシート実質理解も進みますし、チューニング結果で変な動作になっても元のプロトタイプへ戻れますので、安心して色々な試行錯誤ができ、開発者スキルアップも容易です。

サンプルコード利用法

主要MCUベンダは、多くのサンプルコードを提供中です。

サンプルコードの目的は、“1つ”の周辺回路の基本動作を解り易く示すことです。基本動作は、初期設定と無限ループ内の2つに分けて読みます。無限ループ内は、Tips1/2から処理内容が理解できます。割込みの時は、ISRがあります。

初期設定は、開発に使う使用例と同じかどうかを添付コメントなどから判断します。使用例が同じ、または、近いなら、そのままコピーして流用します。内容を理解したい時は、”その周辺回路のデータシートのみ”を読めば十分です。

もちろん、サンプルコード無限ループ内のポーリング/割込み処理もそのままコピーして流用可能です。

但し、サンプルコードは、一般的にTips3:低消費電力動作への配慮がありません。また、サンプルコードを、“複数”集めて動作させる作り方ではありません。1周辺回路の動作コードを、シンプルに解り易く示すためです。

弊社マイコンテンプレートは、複数サンプルコードを利用する仕組みを予め持っています。また、無限ループの間欠動作と停止MCUを復帰させる仕組みも、テンプレートへ組込み済みです。

テンプレートのサンプルコード利用法
テンプレートのサンプルコード利用法

つまり、初めから複数サンプルコードの活用・流用が即座に出来るようテンプレート化、主要ベンダの汎用MCUに対応し、適用例と詳しい説明資料付き(一部ダウンロード可)で販売中です(ベアメタル開発用:1000円、RTOS開発用:2000円、テンプレート一覧と価格はコチラ)。

本稿3Tipsを知っていれば、サンプルコードを分析しながら読むことができ、必要に応じて各部分を自分のソフトウェアや弊社テンプレートへ組込むことも可能です。

プロトタイプ開発に最適なのが、弊社テンプレートです。テンプレートを使って早期にプロトタイプ開発を実現すれば、開発者の効率的スキルアップ、要求仕様に対するMCU性能過不足なども明らかとなり、お役に立てると思います。

テンプレートご購入、お待ちしております。

MCUXpresso IDE 11.4.0 Release

MCUXpresso suite of software and tools
MCUXpresso suite of software and tools

2021年7月15日、NXPの統合開発環境MCUXpresso IDEが、11.3.1から11.4.0へ更新されました。
新たに追加されたAzure RTOS、弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートの新環境での動作確認を示します。

Azure RTOS追加

FreeRTOSに比べ未だ12個と少数ですが、LPCXpresso55S06などCortex-M33コアのAzure RTOS 対応評価ボードとSDK v2.10.0が追加されました。Microsoft AzureのAWS追随が、統合開発環境に現れました(関連投稿:多様化MCU RTOS)。

Azure RTOS Boards
Azure RTOS Boards

これに伴い、IDEのRTOSメニューにAzure RTOSの Message QueuesやSemaphoresなどのViewが追加されました。Azure RTOSデバッグユーザガイトは、MCUXpressoIDE_11.4.0_6224インストールフォルダ内にありますので参照してください。

RTOSメニューに追加のAzure RTOS View
RTOSメニューに追加のAzure RTOS View

FreeRTOSアプリケーションテンプレートの新環境動作確認

Config Toolsもv10.0へ更新されましたので、新IDE更新後、旧11.3.1開発プロジェクトのPinパースペクティブで再度Update Codeのクリックが必要です。Updateクリック後、Develop画面に戻り再ビルドします。(Config Toolsの使い方は、コチラの関連投稿を参照してください)。

MCUXpresso Config ToolsのUpdate Code
MCUXpresso Config ToolsのUpdate Code

再ビルドは正常に終了し、新MCUXpresso IDE 11.4.0とFreeRTOS対応評価ボードLPCXpresso54114で、FreeRTOSアプリケーションテンプレートの動作確認をしました。

FreeRTOSアプリケーションテンプレートと付属資料も、11.4.0対応版へ更新します。

新MCUXpresso IDE 11.4.0で旧プロジェクト動作確認。LPCXpresso54114のSDK更新はなし。
新MCUXpresso IDE 11.4.0で旧プロジェクト動作確認。LPCXpresso54114のSDK更新はなし。

補足1:新旧統合開発環境併存

NXPの統合開発環境は、PC上で新旧環境が同時併存可能です。

環境が併存しますのでストレージ容量は必要です。また、ターゲットボードのSDK改版が無くても再度新IDEへのインストールが必要など手間もかかりますが、新環境構築が安心してできます。但し、新環境下でターゲットプロジェクト開くと、新環境用に変更され旧環境に戻せません。

ターゲットプロジェクトは、新旧環境で別々にすることを忘れないでください。

補足2:STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想状況

FreeRTOSやAzure RTOSなど開発者が対応すべきMCU RTOSは、今後増える傾向です。RTOSが変わっても同じ開発アプリケーションを活用・流用できるのがCMSIS-RTOSメリットです。STM版RTOSアプリケーションは、このCMSIS-RTOSを使って構想中で、この状況を示します(詳細は、STM32RTOS開発3注意点(後編)などを参照してください)。

FreeRTOSとCMSIS-RTOSのセマフォAPI比較
FreeRTOSとCMSIS-RTOSのセマフォAPI比較

上側がFreeRTOSセマフォ送受、下側がCMSIS-RTOSセマフォ送受ソースです。どちらも殆ど同じです。

IDEにContent Assist機能(Ctrl+Space表示のAPI候補一覧)があるので、ソース記述は簡単で、基本的なRTOS手段(上記はタスク同期セマフォ)を理解済みなら、FreeRTOSに比べ情報が少ないCMSIS-RTOS開発でも、当初思ったより障壁は低いと感じています。

CMSIS-RTOSメリット/デメリットを比較して、メリットの大きさを感じた今回のNXP IDE更新でした。STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想は、近日中に投稿予定です。

FreeRTOSアプリケーションテンプレート発売

FreeRTOSアプリケーションテンプレート動作中
FreeRTOSアプリケーションテンプレート動作中

ARM Cortex-M4コア動作のFreeRTOSアプリケーションテンプレート第一弾、NXP)LPCXpresso54114対応版(税込2000円)を本日より発売します。概要、要点、FreeRTOSアプリケーションテンプレートとは、に関する説明資料は、コチラから無料ダウンロードできますのでご覧ください。

開発背景

IoT MCUのクラウド接続には、AWSならAmazon FreeRTOS、Microsoft AzureならAzure RTOSなどのRTOSが必要です。クラウド側からは、1つのRTOSライブラリを使って様々なMCUハードウェアを接続するための手段、これがRTOSです。

一方、IoT MCU側からは、接続先サービスに応じたRTOSライブラリ利用に加え、従来のベアメタル開発からRTOS上でのアプリケーション開発へ発展する必要もあります。IoT化に伴うこのような変化に対し、開発者個人が手間なく対応するためのツール、これが弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートです。

MCU RTOS多様化対策のFreeRTOSアプリケーションテンプレート
MCU RTOS多様化対策のFreeRTOSアプリケーションテンプレート

目的

FreeRTOSアプリケーションテンプレートの目的は、「RTOS基礎固め」と「FreeRTOSプロトタイプ開発のスタートプロジェクトとなること」の2点です。

RTOS開発は、ベアメタル開発とは異なります。

RTOS Kernelが、開発した処理(タスクやThread)と他タスクの優先順位により、処理実行/待機を決めます。開発タスク単体の流用性は高まりますが、タスク間同期や通信に、セマフォやQueueなどのRTOS独特の手段が必要です。

IoTにより全てのモノ(MCU)がクラウドへ接続する時代の基盤は、RTOSです。

ベアメタル開発経験者が、このRTOSの早期基礎固め、Kernelと自身で開発したタスクの並列処理を理解するには、個々にRTOS手段を説明するサンプルソフトよりも、具体的なRTOSアプリケーションの方が実践的で役立ちます。

RTOSアプリケーションがあれば、優先順位を変えた時のタスク動作変化や、その他経験に基づいたRTOS実務開発で知りたい事柄を手間なく試し、新たな知見・見識を得られるからです。これらは、サンプルソフトや、説明文から得ることは困難で、実際のRTOSアプリケーションで開発者自身が試行するのがベストです。

そこで、各FreeRTOS手段を説明した弊社MCU RTOS習得ページを理解した次の段階として、最初の図に示したプロトタイプ開発着手に必須となるADC/LCD/SW/LED/VCOM処理を、NXP)LPCXpresso54114(Cortex-M4/150MHz、Flash/256KB、RAM/192KB)とBaseboard、Arduinoプロトタイプシールドに実装し、動作確認済みRTOSプロジェクトが、FreeRTOSアプリケーションテンプレートです。

FreeRTOS Application Template (NXP Version)
FreeRTOS Application Template (NXP Version)

※上記プロジェクトは、クラウド接続は行っておりません。RTOS基礎固めとFreeRTOSプロトタイプ開発に適すことが目的ですので、クラウド接続RTOSライブラリは未実装です。

FreeRTOSを選んだのは、現在MCU RTOSシェア1位だからです(関連投稿はコチラ)。RTOS手段は、各RTOS共通技術であるSemaphoreとQueueの2つを用いております。LPCXpresso54114のFlashやRAM使用量にはまだ十分余裕がありますので、より高度なミューテックスやイベントグループなどの手段を適用するのも容易です。

特徴

本テンプレートには、上記FreeRTOSプロジェクトと同じ動作確認済みのベアメタル開発プロジェクトも添付しております。これは、ベアメタル開発に慣れた方が、FreeRTOSとベアメタルの差分をより明確に理解し、比較や評価をするためです(比較・評価は、ご購入者ご自身で行って頂きます)。

本テンプレート付属説明資料は、主にベアメタル開発者視点から見たFreeRTOSプロジェクトを解説しており、ベアメタルプロジェクトに関する説明は、ソースコードを読めばご理解頂けるとして省略しております。

従って、FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、ベアメタル開発経験者を対象といたします。ベアメタル初心者の方は、先ずは各MCUベンダCortex-M0+/M3コア対応の従来マイコンテンプレートをご購入ください。従来テンプレート付属説明資料には、ベアメタル動作の詳しい説明が付いています。

※本テンプレートのベアメタルプロジェクトは、従来テンプレートCortex-M0+/M3コアをCortex-M4コア対応へ発展させたものです。ベアメタルプロトタイプ開発着手時に適すプロジェクトです。

FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、ベアメタル開発経験者が、手間なく直にRTOSとベアメタルの差を理解・実感し、かつ、IoT基盤RTOSの効率的な基礎固めができるツールです。

なお、既に従来マイコンテンプレートご購入者様は、50%OFF特典があり、税込1000円にて本FreeRTOSアプリケーションテンプレートをご購入頂けます。弊社での確認ミスを防ぐため、ご購入時に従来テンプレート購入者様である旨、お知らせください。

勿論、従来テンプレートとFreeRTOSアプリケーションテンプレートの同時購入でも、この特典は適用されます。

まとめと今後

ベアメタル開発経験者が、IoT MCUクラウド接続に必要となるRTOSの効率的な基礎固め、FreeRTOSプロトタイプ開発着手プロジェクトとして使えることを目的に、NXP)LPCXpresso54114、Baseboard、Arduinoプロトタイプシールドを使ったFreeRTOSアプリケーションテンプレートを発売しました。

本テンプレートは、Amazon FreeRTOSのHardware Independent FreeRTOS Exampleを原本としています。第1弾はNXP)LPCXpresso54114へ適用しましたが、今後、STマイクロエレクトロニクス)STM32G4やCypress)PSoC 6など他社Cortex-M4コアの対応版も開発予定です。

組込みMCU開発お勧めブログ

組込み開発全般に参考となる英語ブログを紹介します。特にRTOS関連記事は、内容が濃く纏まっていて、実践開発時の示唆に富んでいます。

JACOB's Blog
JACOB’s Blog

RTOSカテゴリー

組込み開発コンサルティングも行うBeningo Embedded社は、高信頼の組込みシステム構築と低コスト・短時間での製品市場投入を目標としています。この目標に沿って、複雑な組込み開発概念を、シンプルに解り易く解説しているのが、同社ブログです。

特に、RTOSカテゴリーは、FreeRTOS開発方法を整理する時、参考になります。最新RTOSの3投稿をリストアップしたのが下記です。

2021年5月4日、A Simple, Scalable RTOS Initialization Design Pattern
2020年11月19日、3 Common Challenges Facing RTOS Application Developers
2020年10月29日、5 Tips for Developing an RTOS Application Software Architecture

Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB'S Blog)
Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB’S Blog)

開発中の弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、「ベアメタル開発経験者が、FreeRTOS基礎固めと、基本的FreeRTOSアプリケーション着手時のテンプレートに使えること」が目的です。従って、必ずしも上記お勧めブログ指針に沿ったものではなく、むしろ、ベアメタル開発者視点でFreeRTOSを説明しています。

弊社テンプレートを活用し、FreeRTOSを理解・習得した後には、より実践的なRTOS開発者視点で効率的にアプリケーションを開発したいと思う方もいるでしょう。もちろん、弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートからスタートすることを弊社は推薦しています。

しかし、Windows上でアプリケーション開発する時は、初めからWindows作法やGUIを前提として着手するように、RTOS上でMCUアプリケーションを開発する時も、従来のベアメタル開発に固執せず、RTOSオリエンテッドな手法で着手するのも1方法です(ベアメタル経験が少ないWindows/Linux世代には、親和性が高い方法かもしれません)。

推薦ブログは、この要望を満たすRTOS手法が豊富に掲載されています。

また、上記RTOS関連3ブログを(掲載図を「見るだけでも良い」ので)読んで、ピンとこなければ、RTOS理解不足であると自己判断、つまり、リトマス試験紙としても活用できます。

問題整理と再構築能力

ベアメタル開発経験者が、RTOSを使ってMCUアプリケーション開発をするには、従来のBareMetal/Serial or Sequential動作からRTOS/Parallel動作へ、考え方を変えなければなりません。弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、この考え方を変えるための橋渡しに最適なツールです。

橋を渡りきった場所が、RTOSの世界です。RTOS環境での組込み開発問題を整理し、シンプルに解決策を示すには、知識や経験だけでなく、問題再構築能力が必要です。JACOB’S Blogをご覧ください。RTOSに限らず組込み関連全般の卓越した問題再構築能力は、掲載図を見るだけでも良く解りますよ😄。

FreeRTOSアプリケーションのQueueデータ送受信

FreeRTOSアプリケーションテンプレートのQueue利用タスク間データ送受信を説明します。これは、テンプレートのベースとしたMCUXpresso SDK付属FreeRTOSサンプルプロジェクトfreertos_generic解説の後半に相当します。

FreeRTOSアプリケーションテンプレートのベースプロジェクト(まとめ図参照)は、本稿で全て説明済みとなります。下記1~3が、関連投稿です。1~3の順にお読み頂くと、内容が解り易いと思います

  1. FreeRTOSアプリケーションテンプレート構想
  2. FreeRTOS新規プロジェクト作成からアプリケーションテンプレートまで
  3. テンプレートベース:freertos_generic前半(ソフトウェアタイマ関連)

freertos_genericのQueueによるデータ送受信

freertos_genericのQによるデータ送受信
freertos_genericのQによるデータ送受信

FreeRTOSでは、送信タスクと受信タスクの2つに分離しデータ送受信処理を開発します。

送信タスクは、自分の都合の良いタイミングで、いつでもデータ送信を始めます。受信タスクは、いつ始まるか判らないデータ送信に対し、常時受信できるように待機中です。但し、受信タスクの受信開始タイミングは、その他のタスク優先度により変動します。

この受信開始変動があっても送信データを取りこぼし無く受信するために、送受タスク間で一時データを格納するFIFOバッファが必要で、これがQueue(以下Q)です。マルチタスクによる副作用と言えます。

もちろん、データ溢れが生じないようQには複数データを蓄える深さも必要です。受信タスクは、データのQ完了イベントで、FreeRTOSが受信開始を起動します。また、送信タスクよりも、受信タスクの方が優先度が高いのは、Qデータ溢れ防止策です。

1データ長、データ送信タイミング、その他のタスク数やその優先度にも影響されるQの深さは、十分な検討が必要です。

freertos_genericでは、Qの深さを1データ、送信タスク優先度を1、受信タスク優先度を2とし、データを100固定値にして1バイトデータ長の送受信を行い、送信開始タイミングは、vTaskDelayUntil(後述)で作成しています。その他のタスクが、freertos_generic前半で説明したソフトウェアタイマタスク、この優先度が4です。

同一優先度のタスクが無く、他のタスク数もタイマタスク1個で高優先、1バイトデータ長のため、深さ1のQでも送受信データは溢れません。

少ないタスク数と同一優先度無しのシンプルなサンプルプロジェクトですが、簡単に説明しても上記のように長くなります。

ベアメタル開発経験者であれば、RTOS個々の文章説明(=Serial or Sequential動作)は、理解できます。しかし、RTOSによりシングルコアMCUであっても各タスクが時分割Parallel動作しますので、途端に解り難くなります。

BareMetal/SerialからRTOS/Parallelへ、従来の設計手法をステップアップする必要がありそうです。

vTaskDelayUntil対vTaskDelay

vTaskDelayUntilとvTaskDelay比較
vTaskDelayUntilとvTaskDelay比較

freertos_genericは、データ送信タイミングの作成に、他のサンプルでよく見かける待ち処理:vTaskDelayではなく、vTaskDelayUntilを使っている点に注意が必要です。

vTaskDelayは、指定待ち「時間」後、RTOSにより優先度に応じて次処理が実行されます。ゆえに、高優先の他タスクやその状況により、次処理実行までの待ち時間が変動します。

vTaskDelayUntilは、指定待ち「周期」後、次処理が実行されます。仮に2周期よりも長い待ちが発生した時は、次処理はスキップされます。つまり、vTaskDelayよりもデータ送信の(スキップも含めると)定間隔、周期性に優れています。

サンプルプロジェクトの場合、Qの深さが最小の1のため、vTaskDelayUntilの方が、Q溢れ対策として効果があります。vTaskDelayだと、変動を考慮し、より深いQが必要になりそうです。但し、vTaskDelayUntilのRAM使用量は、vTaskDelayよりも増えます。

つまり、vTaskDelayUntil 利用か、それとも、vTaskDelayとQの深さ利用か、どちらにRAM資源を割当てる方が、よりQ溢れ対策として効果的か、これが検討ポイントの1つです。freertos_genericでは、前者を選択した、と筆者は解釈しました。

参考資料:Kernel > API Reference > Task ControlのvTaskDelayUntilとvTaskDelay

本稿まとめとFreeRTOSアプリケーションテンプレート目的

FreeRTOSアプリケーションテンプレートのQ利用タスク間データ送受信を説明しました。Qにより、送信タスクと受信タスクを分離して開発できますが、Qの深さは、送受タスク以外の他タスク優先度など多くの要因にも関係するため、設計に注意が必要です。

FreeRTOS利用メリットは、ベアメタル開発に比べ、独立性や流用性が高いタスク開発ができることです。反面、優先度に応じたマルチタスク環境では、ベアメタル開発には無かったスキルも必要になります。

本稿説明のSDK付属FreeRTOSサンプルプロジェクトfreertos_genericをベースにした、Cortex-M4コア最高速150MHz動作LPCXpresso54114対応のFreeRTOSアプリケーションテンプレートは、6E目標に開発中です。

FreeRTOS Application Template (NXP Version)
FreeRTOS Application Template (NXP Version)

同じ動作のアプリケーションを、FreeRTOSとベアメタル、それぞれで開発した2つのプロジェクトを添付します。

FreeRTOSアプリケーションテンプレートの目的は、FreeRTOS特有スキルを、ベアメタルと比較し、具体的に理解・習得すること、基本的なFreeRTOSアプリケーション開発テンプレート(=スタートプロジェクト)としても使えること、の2点です。

なお現行のLPCXpresso54114開発SDKツールデフォルトコア速度100MHzを150MHz動作へ変える方法は、前稿を参照してください。