FRDM-KL25Z GPIOの使い方

5V耐圧GPIOピンが無い3.3V動作FRDM-KL25Zへ、5V LCDをCMOSロジック直結で接続し、その動作確認ソフトウェアを開発中です(CMOSロジック直結は、関連投稿:3.3V MCUと5Vデバイスインタフェースを参照してください)。

開発途中、FRDM-KL25Z搭載MCUのKinetis KL25ファミリに、GPIOの拡張とも言える興味深いFGPIO機能、BME機能を見つけたのでFRDM-KL25Z GPIOの使い方に加え解説します。両機能は、Kinetis KL25の高速化に効果があります。

※FGPIO:Fast GPIO、高速処理でGPIO記述ソースコードからの変更容易。
※BME:Bit Manipulation Engineはレジスタ読書きとビット操作が同時可能なMCU内蔵ハードウェア。コードサイズ削減と高速処理が同時に可能。

FRDM-KL25Z GPIOの使い方

FRDM-KL25ZのGPIO API一覧が下記です。MCUXpresso IDEのソースコード上でgpio_と入力し「Ctrl+スペースキー」を押すと、GPIO_で始まるAPIが一覧表示されます。これが、Content Assist機能です。

MCUXpresso IDEのContent Assistを利用したGPIOの使い方
MCUXpresso IDEのContent Assistを利用したGPIOの使い方

先頭〇がGPIO_API関数、#がdefineで定義したマクロです。GPIO_API本体は、fsl_gpio.hで定義されています。

例えば、GPIO_ClearPinsOutputを選ぶと、残りの変数:GPIO_Type *baseとunit32_t maskを入力すればソースコード上でGPIO_ClearPinsOutput APIの入力完了です。

*baseは、GPIOAやGPIOBなどのポート名、maskは、制御対象ピン以外のマスクです。GPIOBの18番ピンが対象なら、GPIO_ClearPinsOutput(GPIOB, 1<<18)と記述します。

Content Assistの一覧表示リストを見ると、FRDM-KL25ZのGPIO APIに特に変わったAPIはありません。ごく一般的なGPIOの使い方であることが判ります。

GPIOに限らずContent Assistは、APIレファレンスマニュアルを参照するよりAPI選択と変数のソースコード入力が早く便利にできます。もちろん、ユーザが追加定義したマクロでも自動的にリスト表示されます。

FRDM-KL25Z FGPIOの使い方

KL25 Sub-Family Reference Manualの図3-9は、MCUからGPIO Controllerへの経路が、下記2種類あることを示しています。

FGPIOとGPIOアクセスの違い(出展:KL25 Sub-Family Reference Manual)
FGPIOとGPIOアクセスの違い(出展:KL25 Sub-Family Reference Manual)

GPIO:MCUからPeripheral Bridge経由のGPIO Controller制御
FGPIO:MCUからGPIO Controller直接制御(Single-cycle I/Oとも呼ばれる)

特筆すべきは、レジスタ構成がGPIOとFGPIOで全く同じなので、GPIOソースコード記述が、
GPIOB_PTOR = (1<<18);    //  GPIOでFRDM-KL25Zの赤LED:PTB18をトグル
の場合、これをFGPIOへ変える場合は、
FGPIOB_PTOR = (1<<18);  // FGPIOでFRDM-KL25Zの赤LED:PTB18をトグル
とGPIOをFGPIOへ変更すれば済むことです。

※GPIOB_PTOR = (1<<18)は、レジスタ明示記述、同じことをGPIO_APIで記述すれば、GPIO_TogglePinsOutput(GPIOB, 1<<18)となります。どちらもContent Assistが使えます。

但し、2サイクルアクセスGPIOの半分、FGPIOの1サイクルアクセス実効速度を得るには、コンパイラ最適化オプションを、デフォルト最適化なし:None(-O0)から、Optimize (-O1)、または、それ以上にする必要があります。

FRDM-KL25Z BMEの使い方

前章GPIO経路の途中にBMEハードウェアがあります。BMEを使うと、Peripheralsレジスタの読書きとビット操作を同時、つまり、ソースコード記述1個で可能になります。

BMEを使うソースコードは、下記5種類です。

書込み時
・Store Logical AND/OR/XOR (AND/OR/XOR)
・Store Bit Field Insert (BFI)

読込み時
・Load-and-Clear 1 bit (LAC1)
・Load-and-Set 1 bit (LAS1)
・Load Unsigned Bit Filed Extract (UBFX)

アセンブラ記述に似ています。詳細は、KL25 Sub-Family Reference Manualの17章BMEを参照してください。

BMEを使うと、ソースコード記述が減るので、処理時間とコードサイズの両方を軽減でき高速化可能です。

一般的なGPIOソースコードで記述した周辺回路の初期設定や無限ループ内処理をあらためて見直すと、BMEが使える箇所が見つかります。

GPIO、FGPIO、BMEの使い方

最初に1章で示した一般的なGPIO記述でソフトウェアを開発し、最後の高速化手段としてFGPIOやBMEを使うのが良いと思います。理由は、FGPIOは最適化、BMEはソースコード内にレジスタ読書きとビット操作の両方が必要な個所があることが前提だからです。

FGPIOはGPIO記述ソースコードからの変更が容易です。コンパイラデフォルトの最適化なし:None(-O0)でコード変更し、求める高速要件が満たされれば、利用価値は高いでしょう。この場合は、100%の1サイクルアクセス実効速度までは得られませんが、FGPIO高速化ができます。

経験上、最適化利用に筆者は消極的です。様々な副作用もあるからです。

最適化よりも超低消費電力/低コストが特徴のFRDM-KL25Z(Cortex-M0+/48MHz)開発ソフトウェアの再利用が可能で、より高速なFRDM-K64F(Cortex-M4/120MHz)などへMCU変更が可能なら、この方法をお勧めします。

但し、MCU変更ができない時の効果的な高速化手段として、本稿説明のFGPIOとBMEを知っておくことは重要です。

FGPIOやBMEは、低価格で入手性も良いFRDM-KL25Zに初めから実装済みです。Kinetis KL25ファミリMCUの汎用性と高い拡張性を示す良い例だと思います。

旧Freescaleから2013年頃発売と少し古い感もあるMCUですが、十分現役で使えます。

あとがき:3.3V MCUと5V CMOSロジック直結動作確認完了

STM32G0xテンプレートに使用した3.3V動作MCU:STM32G071RBも5V耐圧GPIOピンは持ちません。しかし、CMOSロジック直結で5V LCDを駆動し、安定動作を確認しました。

訂正:STM32G071RBには5V耐圧ピンがあります。お詫びして訂正いたします

ソフトウェア開発中の3.3V動作FRDM-KL25Zと5V LCDのCMOSロジック直結も、同様に問題なく動作するハズです。


3.3V MCUと5Vデバイスインタフェース

3.3V動作MCUに、5V動作デバイスを接続するインタフェースとして、

  1. 3.3V MCUの5V耐圧ピンで、5Vデバイス(例えばLCD)と接続
  2. MCUに5V耐圧ピンがない時は、間にレベルシフタを入れる

弊社投稿:MCUの5V耐圧ピンの要旨でした。本稿は、さらに2つ選択肢を追加し、4インタフェースを評価しました。

4インタフェース特徴と評価結果

3.3V MCUと5Vデバイス接続4インタフェースの特徴と評価結果
インタフェース 特徴 評価
1 MCU 5V耐圧ピン ピン数が足りれば追加コストなく信頼性も高い Good
2 レベルシフタ挿入 I2C/SPI接続でトラブル報告多く信頼性は低い Poor
3 CMOSロジック直結 開発MCUソフトウェアの動作確認に使える Average
4 バス・スイッチ挿入 高速性・信頼性ともに高くMCU低消費電力動作に理想的 Excellent

レベルシフタ挿入

入手性の良い秋月電子)8ビット双方向レベルシフタ:FXMA108の使用例を調べると、I2C接続時には期待通りの動作をしない情報がネット上に多数あります。原因は、アクティブデバイスFXMA108の双方向判定のようです。

I2C専用レベルシフタ:PCA9306使用例もありますが、MCUポート用途に応じてレベルシフタを使い分けるのは、コスト高を招きます。

CMOSロジック直結

3.3V MCUと5V動作デバイス直結(出展:5V系・3.3V系信号レベル変換掲載図を加工)
3.3V MCUと5V動作デバイス直結(出展:5V系・3.3V系信号レベル変換掲載図を加工)

コチラの投稿:5V系・3.3V系信号レベル変換を参照すると、3.3V系と5V系の間にレベルシフタなどのアクティブLSIデバイス挿入は不要、5Vデバイス出力から電流制限抵抗を入れれば3.3V MCU入力へ直結、MCU出力はそのまま5Vデバイス入力へ直結可能です。

直結は、アマチュア電子工作レベルのCMOSデバイス同士の接続でノイズ・マージンは減る、という但し書き付きですが、次章バス・スイッチのアプリケーション回路図と比べても遜色は少ないと思います。

MCU入力側には、5V CMOSセンサ、出力側には、5V LCD等の表示デバイス接続を想定します。このCMOSロジック直結を利用すると、3.3V動作MCU評価ボードと5Vデバイス間の接続に手間が少なく、開発するMCUソフトウェアの動作確認には好都合です。

もちろん、MCU評価ボードと5Vデバイス間の配線を短くツイストするなどのマージン減少対策は必要です(配線ツイスト効果は、コチラの弊社関連投稿を参照してください)。

バス・スイッチ挿入

SN74CB3T3245の代表的なアプリケーション(出展:SN74CB3T3245データシート)
SN74CB3T3245の代表的なアプリケーション(出展:SN74CB3T3245データシート)

前章の5V系・3.3V系信号レベル変換投稿で推薦されている2.5Vおよび3.3V、8ビットバス・スイッチ(5V耐圧付き):SN74CB3T3245をインタフェースに使う方法は、伝搬遅延がゼロに近く、双方向パッシブデバイスのためノイズにも強いなど、3.3V低電力動作MCUと5V動作デバイスのインタフェースとして理想的です。

※SN74CB3T3245は、ハードウェア開発で良く用いられるCMOSデバイスの双方向3ステートバッファ:SN74HC245を、より低電圧動作で高速化し5V耐圧も付加した高速CMOSデバイスです。Vcc=2.5Vなら、5V/3.3V入力から2.5V出力へのレベルシフトも可能です。

※付録に、動作電圧が異なるデバイス間の相互接続基礎知識を示しました。

3.3V MCUの5Vデバイス接続インタフェース評価

3.3V動作MCUに、5V動作デバイスを接続する4インタフェースを示しました。

  1. MCUの5V耐圧ピンで接続
  2. MCUと5Vデバイス間に、レベルシフタ挿入
  3. CMOSデバイス同士なら直結可能
  4. MCUと5Vデバイス間に、5V耐圧3V/2.5Vバス・スイッチ挿入

4インタフェース評価は、以下の実績、動作確認に基づいています。

1は、5V耐圧ピンありMCUの弊社テンプレートで、既に多くの動作実績があります。

2のレベルシフタ追加は、I2C接続の不具合情報がネットに多数ありますので、弊社確認は省きます。

3のCMOSデバイス直結は、開発中の3.3V MCU動作5V耐圧ピンなしのFRDM-KL25Zテンプレートソフトウェアで、5V LCDを接続し動作確認します。

4のバス・スイッチ挿入は、TIから数個サンプル入手が以前は簡単にできたのですが、現在は購入が必要です。SN74CB3T3245価格が100円以下と安いだけに送料が無視できず、何かのついでに購入予定です。それまで動作確認は保留します。ただ、データシートを見ると、3.3V MCUと5Vデバイス双方向接続インタフェースには理想的だと思います。

3と4どちらも、確認結果が判明次第、本ブログでお知らせします。

付録:デバイス相互接続の基礎知識

相互接続判定のロジック概要(出展:TIロジック・ガイドP4に加筆)
相互接続判定のロジック概要(出展:TIロジック・ガイドP4に加筆)

TI)ロジック・ガイドから、動作電圧が異なるデバイス間の相互接続判定方法(Judgement)とその結果(Results)を抜粋したのが上図です。

結果は、例えば5V CMOSデバイス同士ならYes=直結、3.3V LVTTL/2.5V CMOS/1.8V CMOSへはVOHはVIHより高く、VOLはVILより低いので、低圧入力側にVIHトレランス(耐圧)があればYes*=直結可能を示しています。

表から、5V CMOSデバイスのD(出力)は、全デバイスのR(入力)へ直結、またはVIH 耐圧で直結できるなど、広い適用範囲が判ります。センサの多くが5V CMOSデバイスでも、3.3V動作MCUとの間にSN74CB3T3245を入れさえすれば、簡単に高信頼インタフェースが実現できる理由です。



HTML版マンスリー・アップデートの見かた

図1 PDF版からHTML版へ変わったSTM32マイコン マンスリー・アップデート
図1 PDF版からHTML版へ変わったSTM32マイコン マンスリー・アップデート

STマイクロエレクトロニクスのSTM32マイコン マンスリー・アップデートがPDF版からHTML版に変わって3ヶ月経過しました。新しいHTML版の掲載フォーマットもほぼ固まったと思いますので、両者の比較結果を示します。

PDF版は、紙(Book)の置換えであるため、掲載文書内容と全体との関係、掲載ページも解りやすかったのに対し、ハイパーリンクのHTML版では、モバイルデバイスへ最適化したため、「コンテンツ重視の掲載へ変わった」、これが結論です。HTML版で見逃しがちな全体像との関係を明らかにするため、リンク集を別途作成しました。

※STマイクロエレクトロニクスの日本語MCU技術資料は、弊社ブログ掲載MCUベンダ中、最も優れています。STM以外のMCU開発中の方にも役立つ情報が、リンク集から得られると思います。

HTML版STM32マイコン マンスリー・アップデートの大項目タイトル

PDF版からHTML版へ変わったSTM32マイコン マンスリー・アップデートのタイトル比較
PDF版からHTML版へ変わったSTM32マイコン マンスリー・アップデートのタイトル比較

HTML版とPDF版のSTM32マイコン マンスリー・アップデート大項目タイトル(図1の赤囲いこみ部分)を比較すると、HTML版はPDF版よりも具体的内容を示すタイトルに変わっています。

実は、PDF版も大項目以下の中項目、小項目タイトルは、HTML版と同じでした。PCで読む(見る)ことが前提のPDF版は、一度に読めるページや範囲もスマホに比べ広く、目的記事への移動も簡単なため、更新内容の構造(大項目>中項目>小項目)が解りやすい掲載が可能でした。

一方、スマホで読む(見る)ことが前提のHTML版は、構造よりもそのタイトルを一目見ただけで読んでもらえる工夫が必要なうえ、表示はスマホの縦長連続ページのため移動に制約があり、コンテンツ重視のタイトル掲載に変わったのだと思います。

HTML版はコンテンツフィルタリングに適す

移動中やチョットした空き時間にスマホで情報をチェックすることは、COVID-19以前はよくありました。膨大なアップデート情報コンテンツが有用か無用かを瞬時に判断し、後で有用情報のみにアクセスすることで能率は向上します。

これは、コンテンツフィルタリングです。

HTML版は、フィルタリングに適す構成を簡単に作成可能です。要不要判断に最低限必須なタイトルとその概要を掲載し、「詳細はコチラ」でリンク先へジャンプする形式です。

フィルタリング結果をスマホへ上手く覚えさせておけば、より効率的です。

PDF版はスマホで操作しにくい

PDF版の内容の一部切取り(コンテンツ加工)や広範囲なコピー(コンテンツ抽出)は、スマホでは操作しにくく、結局全部保存か、または捨てる結果となります。PCならば、必要情報のみの加工・抽出・保存は簡単なのですが…😥。

つまり、スマホなどのモバイルデバイスとの相性が良いのがHTML版、PCと相性が良いPDF版とは掲載内容表現のしかたが異なる訳です。

従来の月刊PDF版は、その月の変更情報のみを抽出掲載し、しかも全体へもリンク表示するなど、読者(情報の受け手)寄りの手間がかかる編集でした。HTML版は、STマイクロエレクトロニクス(情報の送り手)が強調したいコンテンツに重きを置いた編集となっています。

HTML版の全体像リンク集

在宅勤務の増加に伴い、モバイルとPCの両デバイスを併用して能率を上げたいところですが、現状のHTML版では、難しいと思います。※全体像が判る従来のPDF相当が参照できるリンクが追加されれば別ですが、これには編集に二度手間がかかります。

そこで、月刊HTML版で見逃しがちな全体像との関係を明らかにするリンク集を、お節介ながら作成しました😅。

リンク内容 補足
マンスリー・アップデートバックナンバー HTML版:2020年6月号以降
PDF版:2017年1月号~2020年5月号
日本語MCU技術ノート Cortex-Mコア横断的な周辺回路Tips
日本語MCU開発のヒント
日本語トレーニング資料 Cortex-Mコア毎のセミナープレゼン資料
STM32マイコン開発環境 STM32CubeIDE/MXなどのダウンロードリンク
STM32マイコンファームウェア Cortex-Mコア毎のファームウェアダウンロードリンク
セミナー・イベント・キャンペーン セミナー開催予定/終了、キャンペーン一覧
Q&Aで学ぶマイコン講座 初心者向けMCU技術解説記事

あとがき

STM32マイコン マンスリー・アップデートに限らず殆どのアップデート情報は、モバイルファーストへ向けた「コンテンツタイトル+数行の概要+詳細はコチラ」の形式です。

全体像も見つつHTML版が強調する詳細コンテンツを理解・整理・記憶したい方には、多少効率が落ちるかもしれませんが本稿リンク集が役立つと思います。

繰返しになりますが、STマイクロエレクトロニクスの日本語MCU資料は、他社MCU開発中の方でも参考になる情報満載で、質・量ともに優れています。開発に行き詰まりが生じた時など、ベンダの壁を越えて参照すると、打開策が見つかるかもしれません。

アフターCOVID-19では、MCU開発のしかたも変わりそうです。丁度、ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)で自動車ソフトウェア開発が激変したように、エッジMCU開発も、IoTセキュリティ絡みで、より効率的で複雑な処理をこなせるように変化すると思います。

MCU開発の情報収集と生産性向上、両方にお役に立てば幸いです。

Cortex-M0からCortex-M0+変化

前稿で示したNXP MCUラインナップ図には、ARM Cortex-M0/M0+両方のコアが掲載中でした。しかし、最新版MCUXpresso IDEのコア選択ダイアログには、Cortex-M0選択肢がありません。

MCUXpresso IDEのコア選択ダイアログ
MCUXpresso IDEのコア選択ダイアログ

そこで、Cortex-M0+とCortex-M0の違いを調べた結果、新規MCU開発にNXPのCortex-M0コアを使う必然性は低いという結論に達しました。本稿は、その根拠を示します。

ARM Cortex-M0+とCortex-M0の差

弊社関連投稿:Cortex-M0/M0+/M3比較とコア選択や、ARMコア利用メリットの評価ARM MCU変化の背景をまとめ、ARMコアの発表年順に示したのが下表です。※M4の発表年は間違っているかもしれませんが、市場に出回ったCortex-Mxコアの順番は下表で正しいハズです😌。

ARM Cortex-Mx性能、発表年
Cortex-Mコア 性能 (MIPS @ MHz) ARM発表年 MCUモデル
Cortex-M3 1.25 2004 旧メインストリーム
Cortex-M0 0.9 2009 ローコスト
Cortex-M0+ 0.95 2011 ローパワー
Cortex-M4 1.25 2012頃 デジタル信号処理新メインストリーム

要するに、Cortex-M0+やCortex-M4は、Cortex-M0やCortex-M3をベースに市場ニーズに即した変更を加えた新しいARMコアだと言うことです。本稿では、特にCortex-M0+とM0の違いに注目します。

Cortex-M0+には、表の差以外にも高速IOアクセス、高速パイプライン、低消費動作モードなどCortex-M0には無い数々の特徴がありますが、Cortex-M0よりも高性能(0.9→0.95MIPS@MHz)で、シリコンチップ高速化にも好都合です。

つまり、新規開発にCortex-M0+の代わりに敢えてCortex-M0コアを用いる理由は、見当たらない訳です。

NXPの新しい統合開発環境MCUXpresso IDEのSDKのコア選択肢に、Cortex-M0が無いのは、上記が理由だと思います。※ローコストに関しては、コア単体の相対評価はできても、使用数量でかなり変動するためMCUコスト絶対評価を難しくしています。

NXP MCUXpresso SDK対応評価ボード数

最新MCUXpresso IDE v11.1.1のSDKで対応中の評価ボード数を一覧にしました。例えば、Cortex-M33コアなら下図のように7個です。

MCUXpresso SDK対応評価ボード数(Cortex-M33の場合)
MCUXpresso SDK対応評価ボード数(Cortex-M33の場合)
MCUXpresso SDK対応評価ボード数比較(2020-07)
MCUXpresso SDK対応評価ボード数比較(2020-07)

評価ボードは、プロトタイプ開発には必須で、その評価ボードで動作するSDK(Software Development Kit)があればソフトウェア開発効率は向上します。Cortex-Mxコア間のソフトウェア移植性は高く、同じコアのソフトウェアであれば、異なる評価ボードへの移植もさらに容易です。

つまり、評価ボード数が多いCortex-M0+やCortex-M4が、現在最もCortex-Mxコアソフトウェア開発効率が高いことを示しています。また、Cortex-M3コア選択肢がない理由も、Cortex-M0コアがない理由と同じと推測します。

本当の並列処理が要求されるマルチコア開発なら、Cortex-M0+とM4のペア、または、IoTセキュリティを強化したCortex-M33コアx2であることも判ります。※Cortex-M33は、2016年ARM発表のセキュリティ強化コアです。

新規ARM Cortex-Mxソフトウェア開発は、Cortex-M0+コアまたはCortex-M4コア利用に収束してきたと思います。
※Cortex-M33コアは、従来コアに無いIoT向けセキュアゾーンなどが新規機能追加されていますので除外しています。

弊社テンプレート開発方針

前稿のNXP MCUラインナップからCortex-M0とCortex-M3を除き、現状SDK提供中のARM Cortex-Mxコアラインナップをまとめると下図になります。※Cortex-M33は未掲載です。

Software Development Kit開発から見たNXP MCUラインナップ
Software Development Kit開発から見たNXP MCUラインナップ

弊社もCortex-M0+、Cortex-M4、Cortex-M33コア向けのテンプレート開発を進める方針です。

NXP MCUラインナップ

NXPは、今から約4年前の2015年12月末にFreeSacleを買収し、FreeSacleのKinetisマイコン(750品種)とNXPのLPCマイコン(350品種)は、NXP 1社から供給されるようになりました。また、別々であった統合開発環境も、新しいMCUXpresso IDEが両MCU対応となり、SDK:Software Development Kitを使ってMCUソフトウェアを開発する方法に統一されました。

本稿は、NXPのCortex-MコアMCU:LPC/Kinetisのラインナップと、新しいMCUXpresso IDE、SDK対応状況をまとめました。

NXP MCUラインナップ

NXP MCUラインナップ(出典:LPC MICROCONTROLLERS 2017-01-04)
NXP MCUラインナップ(出典:LPC MICROCONTROLLERS 2017-01-04)

上図から、おおむね青色のLPCが汎用MCU、橙色のKenitesが特定アプリケーション用途MCUに分類できそうです。

この特定用途とは、例えばKinetis Eシリーズならば、昨今3.3V以下で動作するMCUコアが多いなか、白物家電や産業用途向けに、過酷な電気ノイズ環境下でも高い信頼性と堅牢性(Robust)を維持できる5V動作Cortex-M0+コアMCUを指します(NXPサイトにはCortex-M4コア版もあります)。

Kinetis Eシリーズのコア動作電圧は、2.7~5Vです。関連投稿:MCUの5V耐圧ピンで示したピン毎の5V耐性がMCUコアに備わっており、更に耐ノイズ性も高められているため、タッチパネル操作や多くの5Vデバイス制御に対して使いやすいCortex-M0+/M4シリーズと言えます。

5V動作でタッチパネル付きのKenites KE02 40MHz評価ボード(出典:NXPサイト)
5V動作でタッチパネル付きのKenites KE02 40MHz評価ボード(出典:NXPサイト)

LPC/Kinetis MCUのMCUXpresso IDE、SDK対応

新しくなった統合開発環境MCUXpresso IDEのLPC/ Kenites対応表が、NXP Communityに掲載中です。

この表は毎年更新され、NXPから供給中の全MCU/Application ProcessorのMCUXpresso IDE、SDK対応状況と対応予定まで解るとても役立つ資料です。この表のProduct Familyにフィルタをかけ、Recommended Software欄とMCUXpresso Software and Tools欄を抜粋したのが下表です。

MCUXpresso Supported Devices Table (May 2020より抜粋)
MCUXpresso Supported Devices Table (May 2020より抜粋)

Kenites KE02: 40MHzは、弊社Kinetis Eテンプレートで使ったKinetis Eシリーズマイコンです。2015年のテンプレート開発当時は、旧FreeSacleから供給され、統合開発環境もKinetis Design Studio:KDSとAPI生成ツール:Processor Expertを使いました。現在は、MCUXpresso IDEとSDKへ変わっています。

LPC1100は、古くからあるNXP汎用MCUで、弊社LPC110xテンプレートも提供中です。LPC1100は、MCUXpresso IDEで開発はできますがSDK対応予定は無く(Not Planned)、従来のLPC Open開発が推薦されています。

また、Kinetis KL05: 48MHzは、MCUXpresso IDEとSDK対応予定が無く、旧FreeSacleのKDS開発を推薦しています。

Not Planned 推測

MCUXpresso Software and Tools欄のNot Plannedの意味を考えます。

いずれのMCUも発売後10年~15年程度の安定供給をNXPが保証するため、直ぐにDiscontinueになることはありません。しかし、FreeSacle とNXPの2社統合で当然ながらダブって供給されるMCU品種もある訳で、供給側にとっては1品種へマージしたいでしょう。

この対象は、旧2社それぞれの汎用品種が多く該当すると思われ、その結果が表に現れたと考えます。

つまり、LPC1100やKinetis KL05は、恐らくダブった品種で、新しいMCU開発環境は使わずにそのまま旧開発環境で継続開発ができますが、近い将来Discontinueの可能性が高いと思います。Not Plannedは、これを暗示的に示していると推測します。

もちろん、新発売MCUや生き残った品種は、どれもMCUXpresso IDEとSDKに対応済み(Available)です。最初のMCUラインナップ図を振り返ると、多くのKinetisシリーズは、特殊用途MCU:Application Specific Familiesとして生き残り、Kinetis K/Lシリーズは、汎用MCU:General Purpose Families内で生き残ったのだと思います。

但し、生き残った品種でもデバイスによってはDiscontinueの可能性があり、個別デバイスの確認は、Community掲載表を参照した方が良いでしょう。

弊社マイコンテンプレート対応

主に汎用MCU向けの弊社マイコンテンプレートも、(推測した)NXPと同様の対応にしたいと考えています。つまり、Kinetis Eテンプレートは、最新開発環境MCUXpresso IDEとSDK利用版へ改版、LPC110xテンプレートは、販売中止といたします。

Kinetis E テンプレート改版は、直ぐに着手いたします。Kinetis Eテンプレートご購入者様で購入後1年未満の方は、この改版版を無償提供いたしますのでお待ちください。

LPC110xテンプレートは、1年以上新規ご購入者様がいらっしゃりませんので、無償アップグレード対象者様はございません。既にLPC110xテンプレートご購入者様には、申し訳ございません。別テンプレート50%割引購入特典のご利用をお待ちしております。

Ripple20

前投稿の2~3章で記載した、半導体製品へのサイバー攻撃があり無対策の場合、全製品が使えなくなる実例が発生しそうです。

数億台ものIoT機器や産業制御機器に実装済みのTreck社提供TCP/IPライブラリに「Ripple20」という名の脆弱性(最大値10の危険度評価9~10)が発見され、対策にはライブラリアップデートが必要ですが、できない場合は機器をネットワークから切り離すことが最低限必要になりそうです。
※TCP/IPライブラリは、有線/無線LANプロトコル実装用ソフトウェアライブラリです。

この脆弱性がハッカーに悪用されると、プリンタなどの機器からでも情報が外部流出します。Ripple20は、IoT MCUにセキュア・ファームウェア更新やOTA:Over-The-Air実装を要件とする先例になるかもしれません。

MCUのセキュア・ファームウェア更新は、関連投稿:STM32G0/G4のRoot of Trustをご覧いただくと面倒な更新方法、2面メモリ必要性などがお判り頂けると思います。OTAも関連投稿:Amazon、IoTマイコンへFreeRTOS提供の2章に簡単ですが記載しております。

IoT MCUへ、ソフトウェアだけでなくCortex-Mコアにも更なるセキュリティ対応の影響を与えそうなRipple20です。

NXPの日本市場位置づけと事業戦略

6月5日投稿NXPのFreeMASTERの最後の章で紹介したNXP新CEO)カート・シーヴァーズ(Kurt Sievers)氏へのEE Times Japanインタビュー記事が16日掲載され、NXPの日本市場位置づけと事業戦略が語られました。

  • 日本の自動車関連企業との強固な関係は、一層強める
  • 日本の産業・IoT関連企業との関係は、自動車関連企業と同様、強い関係を構築していく
  • 日本のロボティクス企業とNXPのエッジコンピューティング技術の親和性は良く、ともに成長できる

本ブログの投稿は、MCUソフトウェア開発者向けが多いです。が、今回はNXPビジネスをピックアップします。というのは、多くの開発者が使っているWindows 10の今後を考えるには、Microsoftビジネスを知る必要があるのと同じ理由です。NXPビジネスを知って、MCUの将来を考えます。

以下、2020年5月のNXP semiconductors corporate overview抄訳バージョンを使います。※EE Japan記事もこのNXP資料を使っています。

NXPターゲット4市場

NXPのターゲットは、P8記載のオートモーティブ、インダストリアル&IoT、モバイル、通信インフラストラクチャの4市場です。そして、これらを包括的にサポートする半導体デジタル/アナログ技術である、Sense、Think、Connect、Act全てをNXPは提供中です。

NXPのターゲット4市場(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPのターゲット4市場(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供する半導体デジタル/アナログ技術(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供する半導体デジタル/アナログ技術(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供するフルシステムソリューション(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供するフルシステムソリューション(出典:NXP semiconductors corporate overview)

NXPの強み

NXPの強みは、ユーザである我々開発者へ、半導体技術をもれなく提供できることだと筆者は思います。この分野は近い将来、セキュア/セキュリティ無しでは存在しえません。ネットワークで繋がり、セキュリティが弱い箇所が一か所でもあれば、全てが使えなくなる危険性があるからです。

例えインタフェースが確立されていても、技術同士を接続すると、上手く動作しないことはよくあります。※俗に相性問題などとWindowsでは言われます。

全技術を他社より先に提供するNXP同志の技術接続は、競合他社間の技術接続より容易、低リスクであることは明らかです。後追いの競合他社は、差別化の特徴を持たないと生き残れず、この特徴が逆に他社との接続障害になることもあります。

P12に記載されたように技術単独では存在意味が弱く、各技術がセキュアに繋がって初めてソリューションとしての市場価値が生まれます。

EE Japan Times記事によると、AI関連技術は、NXPで独自開発を行うとともにM&Aも検討中のようです。このように、選択と集中、差別化戦略ではなく全ての半導体技術を開発し、ユーザである開発者へ提供できることがNXPの強みだと思います。

エッジコンピューティングMCUの将来

PC → スマホ → MCUへとセキュリティや半導体技術をけん引してきたデバイスは変わりつつあります。

COVID-19パンデミックで経済活動が停止したのは、コロナワクチンが無いからです。半導体製品にサイバー攻撃があった時、対応ワクチンや追加のセキュリティがThink主役のMCUへ必要となります。

これらからMCUは、今後さらなるセキュリティ実装やWiFi-6などの新しい無線LAN規格への対応など、より高性能化、低消費電力化へ進むと思います。NXPは台湾TSMCの5nm製造プロセスを次世代自動車用MCUに使う(2020/6/12)ことを明らかにし、実現へ向けてスタートしています。

NXP日本市場位置づけ、事業戦略、開発者の対策

以上のNXP概要を見たうえで、最初に示した日本市場位置づけ、事業戦略を振り返ると、NXPの提供する広範囲な半導体技術を自動車、産業機器、ロボティクスへ適用していくことがより解ると思います。

我々開発者は、NXP製品の第1次利用者です。MCU開発者は、次々に導入される新しい技術を焦ることなく効率的に習得・活用し、開発製品へ応用しましょう。そして、我々の製品利用者(NXP製品の第2次利用者)へ新しい価値を提供できるよう努めましょう。

EE Japan Times記事に記載はありませんが、残念ながら日本市場の相対的地位は、低下しつつあります。また、パンデミック再来に備え、開発者個人のスキルアップや自己トレーニング重要性も再認識されたと思います。より広く・早い開発技術の習得が、MCU開発者には必要となるでしょう。

Windows 10の将来

市場に溢れるWindows 10情報は、トラブル対策のものが殆どで、MicrosoftのOSビジネス情報は見当たりません。ただ、ここ数年のWindows 10状況は、最終PC利用者の価値を高めるというよりも、Windowsブロガへの記事ネタを増やすことに役立っています。

このWindows現状を、Microsoftがどのように回復するのか知りたいです。ビジネスなので、利益なしの解はありません。しかし、安心してWindows 10が使えないなら、PCのOSは、安定感のあるiOSやLinuxへ変わるかもしれません。

アプリケーションのマルチプラットフォーム化や、WindowsアプリケーションでもiOSやLinux上でそのまま動作する環境も整いつつあります。折しも、32ビットPC OSは、2020年で終焉を迎えようとしています。ハードウェア起因ならまだしも、ソフトウェア、特にOS起因の生産性低下は、許されないと思います。

MCUの5V耐圧ピン

弊社FreeRTOS習得ページで使う評価ボード:LPCXpresso54114(Cortex-M4/100MHz、256KB Flash、192KB RAM)は、FreeRTOSだけでなく、Mbed OSZephyr OSなどオープンソース組込みRTOSにも対応しています。多くの情報がありRTOSを学ぶには適した評価ボードだと思います。

LPCXpresso54114 Board power diagram(出典:UM10973に加筆)
LPCXpresso54114 Board power diagram(出典:UM10973に加筆)

さて、このLPCXpresso54114の電圧ブロック図が上図です。MCUはデフォルト3.3V動作、低電力動作用に1.8Vも選択可能です。一方、Arduinoコネクタへは、常時5Vが供給されます。

本稿は、このMCU動作電圧とArduinoコネクタに接続するセンサなどの動作電圧が異なっても制御できる仕組みを、ソフトウェア開発者向けに説明します。

MCU動作電圧

高速化や低電力化の市場要求に沿うようにMCU動作電圧は、3.3V → 3.0V → 2.4V → 1.8Vと低下しつつあります。同時にMCUに接続するセンサやLCDなどの被制御デバイスも、低電圧化しています。しかし、多くの被制御デバイスは、未だに5V動作が多く、しかも低電圧デバイスに比べ安価です。

例えば、5V動作HD44780コンパチブルLCDは1個500円、同じ仕様で3.3V動作版になると1個550円などです。※弊社マイコンテンプレートに使用中のmbed-Xpresso Baseboardには、5V HD44780コンパチブルLCDが搭載されています。

レベルシフタ

異なる動作電圧デバイス間の最も基本的な接続が、間にレベルシフタを入れる方法です。

TI)TXS0108E:8ビットレベルシフタモジュールの例で示します。低圧A側が1.8V、高圧B側が3.3Vの動作図です。A側のH/L電圧(赤)が、B側のH/L電圧(緑)へ変換されます(双方向なので、B側からA側への変換も可能です)。

8ビットレベルシフタTXS0108Eのアプリケーション動作(出典:TI:TXS0108Eデータシート)
8ビットレベルシフタTXS0108Eのアプリケーション動作(出典:TI:TXS0108Eデータシート)

レベルシフタ利用時には、電圧レベルの変換だけでなく、データレート(スピード)も重要です。十分なデータレートがあれば、1.8VのH/L波形は、そのまま3.3VのH/L波形へ変換されますが、データレートが遅いと波形が崩れ、送り側のH/L信号が受け側へ正確に伝わりません。

例えば、LCD制御は、複数のLCDコマンドをMCUからLCDへ送信して行われます。データレートが遅い場合には、コマンドが正しく伝わらず制御ができなくなります。

MCUの5V耐圧ピン:5V Tolerant MCU Pad

LPCXpresso54114のGPIOピンには、5V耐圧という属性があります。PIO0_0の[2]が5V耐圧を示しています。

LPCLPCXpresso54114の5V耐圧属性(出典:5411xデータシート)
LPCLPCXpresso54114の5V耐圧属性(出典:5411xデータシート)

5V耐圧を簡単に説明すると、「動作電圧が3.3/1.8V MCUのPIO0_0に、5Vデバイスをレベルシフタは使わずに直接接続しても、H/L信号がデバイスへ送受信できる」ということです。または、「PIO0_0に、1ビットの5Vレベルシフタ内蔵」と解釈しても良いと思います。

※ハードウェア担当者からはクレームが来そうな説明ですが、ソフトウェア開発者向けの簡単説明です。クレームの内容は、ソフトウェア担当の同僚へ解説してください😌。

全てのGPIOピンが5V耐圧では無い点には、注意が必要です。但し、ArduinoコネクタのGPIOピンは、5V耐圧を持つものが多いハズです。接続先デバイスが5V動作の可能性があるからです。

また、I2C/SPIバスで接続するデバイスもあります。この場合でも、MCU側のI2C/SPI電圧レベルとデバイス側のI2C/SPI電圧レベルが異なる場合には、レベルシフタが必要です。MCU側I2C/SPIポートに5V耐圧属性がある場合には、GPIO同様直接接続も可能です。

I2Cバスは、SDA/SCLの2本制御(SPIなら3本)でGPIOに比べMCU使用ピン数が少ないメリットがあります。しかし、その代わりに通信速度が400KHzなど高速になるのでデータレートへの注意が必要です。

LPCXpresso54114以外にも5V耐圧ピンを持つMCUは、各社から発売中です。ちなみに、マイコンテンプレート適用のMCUは、6本の5V耐圧GPIOを使ってmbed-Xpresso Baseboard搭載5V LCDを直接制御しています。

mbed-Xpresso Baseboard搭載5V HD44780コンパチLCDの3.3V STM32G071RB直接制御例
mbed-Xpresso Baseboard搭載5V HD44780コンパチLCDの3.3V STM32G071RB直接制御例

5V耐圧MCUデータシート確認方法

MCUのGPIOやI2C/SPIを使って外部センサやLCDなどのデバイスを制御する場合、下記項目を確認する必要があります。

  1. MCU動作電圧と被制御デバイス動作電圧は同じか?
  2. MCU動作電圧と被制御デバイス動作電圧が異なる場合、外付けレベルシフタを用いるか、またはMCU内蔵5V耐圧ピンを用いるか?
  3. MCU内蔵5V耐圧GPIOやI2C/SPIを利用する場合、そのデータレートは、制御に十分高速か?

5V耐圧ピンは、使用するMCU毎に仕様が異なります。MCUデータシートは、英語版なら「tolerant」、日本語版なら「耐圧」で検索すると内容確認が素早くできます👍。

MCU動作電圧と接続デバイス動作電圧が異なっても、MCUのH/L信号が被制御デバイスへ正しく伝わればデバイスを制御できます。

MCU動作電圧に合わせたデバイス選定やレベルシフタ追加ならば話は簡単ですが、トータルコストや将来の拡張性などを検討し、5V耐圧ピンの活用も良いと思います。

NXPのFreeMASTER

FreeMASTERは、NXP組込みMCUのアプリケーションのリアルタイム変数モニタと、モニタデータの可視化ツールです。関連投稿:STマイクロエレクトロニクスのSTM32CubeMoniterとほぼ同じ機能を提供します。

NXP資料FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview を使ってFreeMASTERの特徴を示します。

FreeMASTERとIDEデバッガ機能差

FreeMASTERと、開発者が普段使うIDEデバッガとの差が一目で解る図がP13にあります。

FreeMASTERとデバッガの違い(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)
FreeMASTERとデバッガの違い(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)

両者の機能境界が、ソースコードのデバッグ機能です。IDE(MCUXpresso IDE)でも変数ロギングやグラフ化機能はありますが、プログラム開発者向けの最低機能に絞ったものです(limited functionality)。

これに対し、FreeMASTERは、msec分解能のグラフ化と、μsec分解能のデータ取得が可能です。更に取得データを利用し、Field-tune parametersやRemote controlなど多くの機能を持つツールです。データの取得は、MCU実装のUARTやUSB、SWD経由です。

FreeMASTERを使うと、外付け制御パネルの代替やGUIアプリケーションとしても活用できます。例えば、下図のようなモータ制御パネルが、PC上でFreeMASTERソフトウェアのみで実現できる訳です。

FreeMASTERを使ったモータ制御パネル例(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)
FreeMASTERを使ったモータ制御パネル例(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)

 FreeMASTER構成

Windows PCにおけるFreeMASTER構成がP20です。詳細は、P21~25に示されています。Linux PCでの構成は、P26に示したFreeMASTER Liteが使われます。

FreeMASTER Windows PC構成(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)
FreeMASTER Windows PC構成(出典:FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview)

MCU開発トレンド:ビジュアル化と脱Windows

組込みアプリケーションのビジュアル化は、最近のMCU開発トレンドです。

MCU本体の性能を使わずに変数データを取出し、そのデータを高性能PCとプラグイン機能を利用し、データ可視化やリモート制御を実現します。本稿で紹介したNXPのFreeMASTERやSTのSTM32CubeMoniterがこのトレンドをけん引する技術です。

また、オープンソースLinux PCへのMCU開発環境移行や各社IDEマルチプラットフォーム化、つまり脱Windowsもトレンドの1つです。

上級開発者向けというイメージが強かったLinux PCですが、一般ユーザへも普及し始めました(Wikipediaより)。筆者も昨年から、MCU開発Main-PCのWindows 10とは別に、Backup-PCにLinux Mintを新規インストールし試用中です。

半年間の試用では、OSインストール、大型/定期更新、セキュリティに関してもLinux Mintの方が、Windows 10より安定感があります。

もはや現状のWindows 10では、信頼性があったWindows 7のレベルにはならない気がします。

既存Windows 10に手を加えるよりも、新OSを開発するほうが、早道で、安心してPCを利用したい一般ユーザ要求も同時に満たせるのではないでしょうか? 商業的理由は、セキュリティ対応強化とすれば、内容不明ながら大多数の納得も得られるでしょう。※あくまで、ソフトウェア開発経験者個人の見解です。

NXP新CEO Kurt Sievers氏

2020年5月28日、蘭)NXPのCEOがリチャード・L・クレマー(Richard L. Clemmer)氏から、カート・シーヴァーズ(Kurt Sievers)氏への交代発表がありました。こちらのEE Times記事に新CEOカート・シーヴァーズ氏の経歴や、米中貿易摩擦下でのNXP中国分析などが示されています。

欧州MCUベンダNXPのアフターCOVID-19への布石、さすがに早いです。

STM32CubeMonitor

STマイクロエレクトロニクスのSTM32MCU純正開発環境STM32Cubeツールファミリに新に追加されたSTM32CubeMonitorを解説します。

STM32CubeMonitor特徴1:変数リアルタイムモニタ

STM32MCUアプリケーション開発フローと、純正開発環境STM32Cubeツールファミリ:STM32CubeMX、STM32CubeIDE、STM32CubeProgrammer、 STM32CubeMonitorの機能配分が下図です(以下、各ツールの頭に付くSTM32は省略して記述します)。

STM純正 4 Software Development Toolsと機能(出典:STMサイト)
STM純正 4 Software Development Toolsと機能(出典:STMサイト)

この1~4段階の開発フローを繰返すことでアプリケーション完成度が上がります。CubeMX、CubeIDE、CubeProgrammerの機能には重複部分がありますが、Monitoring機能を持つのは、CubeMonitorだけです。

通常のMCU開発は、CubeMXがビルトインされた4段階全てをカバーする統合開発環境:CubeIDEを使えば事足ります(CubeMXビルトインCubeIDEの詳細は、関連投稿の3章をご覧ください)。

CubeProgrammerは、MCUオプションバイト設定などCubeIDEではできないBinary Programmingの+α機能を提供します。例えば、STM32G0/G4のRoot of Trust(3)の投稿で示したSBSFU書込みや消去などがこの機能に相当します。

CubeIDEでも、デバッガ上でアプリケーションの変数モニタは可能です。しかし、あくまでDebugging MCUの(開発者向け)変数モニタです。CubeMonitorは、アプリケーションを通常動作させたまま、変数をリアルタイム(ライブ)モニタができる点が、CubeIDEとは異なるMonitoring機能です。

STM32CubeMonitor特徴2:データ可視化

リアルタイムで取得したデータは、下図のようにPCダッシュボードに予め準備済みのChartや円グラフにして可視化することができます。しかも、これら表示が、PCだけでなく、スマホやタブレットへも出力可能です。

STM32CubeMonitorのデータ可視化(出典:DB4151)
STM32CubeMonitorのデータ可視化(出典:DB4151)

つまり、CubeMonitorを使えば、開発したアプリケーションのライブ動作を、あまり手間をかけずにビジュアル化し、エンドユーザの顧客が解るように見せることができる訳です。これが、一押しの特徴です。

文章で説明するよりも、コチラの動画を見ていただくと一目瞭然です。

組込みアプリケーションのビジュアル化

組込みアプリケーション開発も、自動車のADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)のおかげでビジュアル化がトレンドです。

組込みアプリケーションのビジュアル化
組込みアプリケーションのビジュアル化

もちろん、超高性能MCUやデュアルコアMCUで実現するアプローチが本流です。が、本稿で示した2020年3月発表のCubeMonitorを使えば、産業用MCUでも案外簡単にビジュアル表示出力が可能になりそうです。

組込みアプリケーションは、MCUで結構大変な処理を行っていても、外(顧客)からは単にMCUデバイスしか見えません。CubeMonitorで処理データを可視化するだけでも、複雑さや大変さを顧客へ示すツールにもなります。

欧州MCUベンダ事情

2020年4月7日、独)Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジー)が、米)Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)の買収に必要となる規制当局の承認を得たと発表しました(EE Times Japan記事)。同じEE Timesの3月9日記事では、米国が、国家安全保障上リスクのため買収を阻止し、破断の可能性も示唆していましたが、結局、買収成立のようです。

本稿は、MCU開発者向けに欧州MCUベンダ動向と、コロナ・エフェクト記事をピックアップし、MCU開発者のリクス分散必要性を示します。

CypressとInfineon

CypressとInfineon
CypressとInfineon

本ブログ掲載中のCypressは、ARM Cortex-M0/M0+/M4コアと、タッチセンサ:CapSenseやオペアンプ等の独自アナログコンポーネントを1パッケージ化したPSoCマイコンが特徴です。
※本ブログ検索窓に‘CapSense’を入力するとCapSenseコンポーネント利用の関連投稿がご覧いただけます。また、CapSense利用の弊社PSoC4000S/4100S/4100PSテンプレートも販売中です。

同業のNXPやSTMが、Eclipse IDEをベースとした標準的なARMコアマイコン開発環境をユーザへ提供するのに対し、Cypressは、独自コンポーネントの特徴を活かす開発環境PSoC Creatorを提供し、洗練された高度なMCU制御技術と、解り易い資料を提供できる会社という印象を持っています。

PSoC Creatorは、ソフトウェアだけでなくハードウェア関係者にも活用して頂きたいツールで、これ1つで殆ど全てのPSoC関連リンクへ簡単にアクセスできます。ツール更新方法もEclipseベースのIDEより優れています。

このCypressを買収したInfineonは、独)シーメンスから分離・独立し、自動車用や産業用など様々な分野へパワー半導体の供給を主力とする製造、販売会社です(ウィキペディアより)。

Infineonの狙い

2019年6月10日EE Times のインフィニオンの狙いは「日本市場攻略」記事によると、主力のパワー半導体の豊富な品揃えに加え、Cypressの制御技術を獲得することで、日本半導体ベンダへ大きなインパクトを与え、日本市場攻略が、インフィニオンの狙いだそうです。

追記:買収完了で2019年売上高ランキングで見るとInfineinとCypress合わせて、7位TIと8位STMの間に入ることになるそうです(EE Times、2020年4月17日)。

コロナ・エフェクト

STM、ARM、日本の動向
STM、ARM、日本の動向

Cypress買収は、COVID-19前のビジネス戦略結果です。

欧州MCU各ベンダが、COVID-19パンデミック後どう変化するかは解りません。現時点での動きが下記です。

仏伊)STマイクロエレクトロニクスは、フランス生産工場出勤者を縮小、イタリアは製造継続と発表しました。また、独)Infineon工場は、全て稼働中です(EE Times、2020年4月1日)。

英)ARMは、Arm Development Studio Gold Edition評価ライセンスの有効期間を延長、MDK Professional Edition評価ライセンスのCOVID-19対策プロジェクト1年間ライセンススポンサー提供など、在宅勤務ライセンスを提供中です(ARMメールサービス)。

日本政府は、緊急事態宣言時でも半導体工場を事業継続可能に指定しました(EE Times、2020年4月10日)。

MCU開発者

コロナ・エフェクト
コロナ・エフェクト

欧州/米/アジアのMCUベンダにCOVID-19が与える影響は、数年前のように再びMCUベンダ間のM&Aが盛んになるのか? それとも現状で落ち着くのか? オープンアーキテクチャRISC-Vが勢力を伸ばすか? 今のところ、全く不透明です。

しかし、我々MCU開発者へもテレワーク化や開発MCU変更などの影響が必ず及びます。変わるところ、変わらないところを個人レベルでも見極め、今のうちに準備しリスク分散対策の必要があると思います。

筆者お気に入りのCypressらしさが、今回の買収で変わらないことを願っております。