ルネサスARM Cortex-Mコアマイコン:RAファミリ発表

2019年10月8日、ルネサスエレクトロニクス(以下ルネサス)が、ARM Cortex-M4/M23搭載のRAファミリを発表しました。ARMコアMCU市場へ、遅ればせながら(!?)参入したRAファミリの特徴、競合他社と比較評価しました。

Runesas RAファミリ(出典:ルネサス)
Runesas RAファミリに加筆(出典:ルネサス)

RAファミリの特徴

「攻めやすく、守りにくい」、これがARMコアMCU市場だと思います。先行する競合他社は、NXP、STM、Cypress、TIなどです。

後発ルネサスが選択したARMコアは、Cortex-Mコア最高性能のCortex-M4と、低消費電力+セキュリティ重視のCortex-M23/M33(M4はRA8でマルチコア化、M33予定)です。

同じARMコアの先行他社へ攻め込むには、他社比魅力的な内蔵周辺回路が必要です。上図の静電容量タッチセンサ、アナログなどがこれに相当するはずです。Cypress特許の静電容量タッチセンサ:CapSenseとの性能比較が楽しみです。
※CapSenseの特徴は、コチラの投稿などを参照してください。

RAファミリのターゲット市場は、産業機器、ビルオートメーション、セキュリティ、メータ、家電などで、車載を除く次世代IoTエッジデバイスです。

RAファミリの市場(出典:RAファミリパンフレット)
RAファミリの市場(出典:RAファミリパンフレット)

セキュリティニーズが高いIoTエッジMCUでは、Cortex-M3クラスでも性能不足が懸念されます。シングルコアなら最低でもCortex-M4、セキュリティ強化Cortex-M23/33のRAファミリのコア選択は、理解できます。

RAファミリとRunesas Synergyの違い

ルネサスは、これまでRunesas Synergy™としてARMコアMCUを販売してきました。このRunesas SynergyとRAファミリの違いが、10月8日MONOistの“ルネサスがArmマイコンで本気出す、「RAファミリ」を発売”記事に説明されています。

筆者は、Runesas Synergy™は、ルネサスがアプリケーション開発を手伝う形式で、個人レベルでの開発には金額的に手を出しにくいMCU、一方、RAファミリは、競合他社と同様CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardに則った形式でユーザがアプリケーション開発できるMCUと理解しています。
※CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardは、コチラの2章などを参照してください。

これで弊社も、競合他社と同じ土俵でルネサスARMコアMCUを使える可能性がでてきました。

RAファミリの開発環境

RAファミリの開発環境(出典:RAファミリパンフレット)
RAファミリの開発環境(出典:RAファミリパンフレット)

RAファミリパンフレットによると、IDEは、e2 studio(CS+はありません)、エミュレータは、Segger J-Linkまたは、E2エミュレータ Liteです。

例えば、Cortex-M4/48MHz/Flash:256KB/RAM:32KBの評価ボード:EK-RA4M1の概要が下記です。

EK-RA4M1 MCU 評価キット
EK-RA4M1 MCU 評価キット

Mouserで¥4,539で購入可能です。他社同様オンボードエミュレータですが、Arduinoコネクタを持っていません。価格も、後発なのに他社比、高い気がします😥。

RAファミリと競合他社比較

Cortex-Mコア、内蔵周辺回路、開発環境、評価ボード、日本語技術資料の5点から、ルネサスRAファミリを、競合他社ARMコアMCUと3段階(A/B/C)評価しました。

Cortex-Mコア=A、内蔵周辺回路=A、開発環境=B、評価ボード=C、日本語技術資料=C → 総合評価=B

総合評価Bは、普通レベルということです。個別評価結果が下記です。

Cortex-M4とM23/33コア選択や、タッチセンサ等の内蔵周辺回路は、後発なので当然ルネサスの市場調査結果によるものと思われ、A評価としました。IoTエッジMCUでは、これらコアや周辺回路が必須だと筆者も思います。
※コアと周辺回路は、現在、弊社注力中のCortex-M4コアテンプレート開発とCypress)PSoC 4 CapSenseテンプレート(開発中)に傾向が一致しています。

開発環境は、多機能すぎるe2 studioなのでBです(A評価は、NXP)MCUXpressoTI)CCS Cloud)。

評価ボードは、Arduinoコネクタなしで高価なためCです(A評価は、NXP)LPCXpressoやSTM)Nucleo32)。

日本企業のルネサスですが、RAファミリ動画などは英語です。重要技術資料も英語が多く、日本語資料はC評価です(A評価は、STM)。
※ソフトウェア開発者が、日本語資料にこだわること自体、時代錯誤、時代遅れかもしれません。しかし、イタリア+フランス企業のSTM日本語翻訳資料は、内容、和訳ともに優秀です。ルネサス技術資料は、これらと比べると低評価と言わざるを得ません。

総合評価Bですので、評価ボード:EK-RA4M1入手は、ペンディングとします。ルネサスRAマイコンを、本ブログへ追加した場合、ブログカテゴリと目標とする生産物は、下図になります。

また、2番目に示したターゲット市場図から、従来MCU とIoTエッジMCUとの境界が、Cortex-M3コアの可能性が見えてきました。この境界も追加しました。

ブログカテゴリと生産物(従来MCUとIoT MCU境界追加)
ブログカテゴリと生産物(従来MCUとIoT MCU境界追加)

筆者は、従来MCUは、IoTエッジのさらに外側、つまりIoT MCUのフロントエンドで機能し、Cortex-M4ソフトウェアの一部流用や活用により生産性が高く、しかも、エッジのカスタムニーズへも柔軟に対応するMCUへ発展すると思います。ARM Cortex-Mxコア間は、ソフトウェア流用が可能です(次回、詳細説明予定)。

ルネサスは、インターシルやIDT買収でMCUアナログフロントエンドを強化したはずです。しかし、新発売RAファミリに、これら買収技術は見当たらず、期待のSynergy効果も具体的には不明です(内蔵周辺回路の静電容量タッチセンサ、アナログに見えると期待)。

残念ながら現時点では、筆者には、RAファミリが魅力的なARMコアIoTエッジMCUとは思えません。今後に期待します。


汎用MCUシェア20%超、第2位はSTM32MCU

シェア2位に躍り出たSTの汎用マイコン事業戦略”が、EE Times Japanに掲載されました。本稿は、この記事を要約し、記事記載のMCU 4ニーズの1つ、セキュリティ強化マイコン:STM32H7の暗号鍵利用によるソフトウェア更新方法(ST公式ブログ10月8日投稿)を示します。

STM32MCUは、汎用MCU世界市場シェア20%超の第2位へ

2019年9月、東京都内でSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)による記者会見が開かれ、そのレポートがEE Times Japan記事内容です。ARM Cortex-Mコア採用のSTM32MCUが、2018年には汎用MCU世界市場シェア20%を超え第2位になった要因分析、今後のSTM汎用MCU事業方針が会見内容です。

汎用STM32MCUの世界シェア推移(出典:STM)
汎用STM32MCUの世界シェア推移(出典:STM)

車載用を除くMCUが汎用MCUです。本ブログも、この汎用MCUを対象としており、上図推移は重要なデータです。

以下、マイクロコントローラ&デジタルICグループマイクロコントローラ製品事業部グローバル・マーケティング・ディレクタ)Daniel Colonna氏の記者会見談話を中心に記事要約を示します。

STM32MCUシェア続伸要因

STM競合他社は買収や統合で成長しているが、STMは独自でシェア2位を実現。要因は、民生機器だけに集中せず、産業機器などのインダストリアル分野(=マスマーケット)に主眼を置き製品開発を行ってきたこと。マスマーケットターゲット事業方針は今後も変えず、シェア30%を目指す。

インダストリアル分野の4MCUニーズとSTM対応

演算性能の強化(STM32MP1/STM32H7)、より高度なAI実現(STM32CubeMXのAI機能拡張パッケージ)、多様な接続技術への対応(STM32WB)、セキュリティ強化(STM32Trust)の4点がインダストリアル分野MCUのニーズとそのSTMの対応(カッコ内)。

インダストリアル分野汎用MCUの4ニーズ(出典:STM)
インダストリアル分野汎用MCUの4ニーズ(出典:STM)

より広範囲なマスマーケット獲得策

モノクロからカラーLEDへ置換え(TouchGFX)、8ビットなどから32ビットMCUへ置換え(STM32G0シリーズ)で、より広範囲マスマーケットでのSTM32MCU浸透を図る。

以上が記者会見記事の要約です。

汎用MCU第2位となったSTM32MCU評価ボードは、入手性が良く安価です。コードサイズ制限なしの無償開発環境(STM32CubeIDE /SW4STM32/STM32CubeMX)も使い勝手に優れています。また、厳選された日本語技術資料も活用でき、初級/中級レベルのMCU開発者に最適だと筆者も思います。

この特徴を持つSTM32MCUに対して、弊社はSTM32G0x専用テンプレートSTM32Fx汎用テンプレートを販売中です。今後は、STM32G4テンプレートも開発を予定しています。

これまでNon ARM汎用MCU1位であったRunesasも、ARMコア他社対応か(?)ついに2019年10月8日、Cortex-MコアMCU販売を開始しました。これについては、別途投稿します。

セキュリティ強化STM32H7のソフトウェア更新

インダストリアル分野4MCUニーズのうち、演算性能とセキュリティ強化を満たすのが、STM32H7(Cortex-M7/480MHz、Cortex-M4/240MHzのデュアルコア)です。筆者個人は、MCUというよりむしろMPUに属す気がします。STMも、STM32MCU(下記右)に対して、STM32マイクロプロセッサ(下記左)と区別しています。但し、名称は違っても、そこに用いる技術は同一のはずです。

STM32MCUとSTM32マイクロプロセッサ(出典:STM)
STM32MCUとSTM32マイクロプロセッサ(出典:STM)

丁度最初に示した10月8日のSTM公式ブログに、セキュリティ強化STM32H7のファームウェア書換え手順図を見つけました。関連投稿:総務省:2020年4月以降IoT機器アップデート機能義務化予定の2章で示した3種サイバー攻撃へのウイルス感染対策です。

STM32H7ソフトウェア更新時のSFI、HSM(出典:STM)
STM32H7ソフトウェア更新時のSFI、HSM(出典:STM)

ハードウェア暗号化エンジンを持つSTM32H7は、図右上のSFI:Secure Firmware Installで暗号化、STM32G0やSTM32G4等は、図右下のSMI:Secure Module Installで暗号化し、更新ソフトウェアを準備します。どちらも、セキュリティ認証情報を含むHSM:ST Hardware Secure Module smart cardで鍵を受渡し復号化、ソフトウェア書換えを行います。

我々が開発するMCUソフトウェアの更新頻度は、PCに比べれば低いはずです。しかし、その頻度は、ウイルスの数に比例しますので、サイバー攻撃が増えればその度にこの書換えで対応することを考えると憂鬱になります。
※書換え失敗やワクチン投入による通常処理への配慮も必要で、Windows 10のようにユーザ任せの無責任な対応はMCUソフトウェアでは論外なため、開発者負担は増すばかりです😫。

TI)CCS Cloud IDE

Texas InstrumentsのIDE:Code Composer Studioのクラウド版が、CCS Cloud IDEです。PCインストールの従来CCS Desktop IDE、CCS Cloud IDE、前回投稿Energia IDEの3 IDE比較が下記です。

CCS DesktopとCCS Cloud、Energia IDE比較(出典:TIサイト)
CCS DesktopとCCS Cloud、Energia IDE比較(出典:TIサイト)

CCS Cloud IDEの特徴

CCS Cloud IDEの動作環境は、ブラウザと専用アドオンだけです。CCS Cloud IDE単独で、コンパイル/プログラム/デバッグが可能です。

特筆すべきは、CCS Desktop IDEとEnergia IDE両方のプロジェクトをインポートできることです。つまり、いつでもどこででも、CCS DesktopプロジェクトやEnergia IDEスケッチ例を、CCS Cloud IDEを使ってプログラミングやデバッグができるのです。

働き方改革や仕事効率化に対する具体的方策の1つにこのCCS Cloud IDEが役立ちます。移動中や空き時間に、職場で引っかかったデバッグ内容やプログラミングに、新しい解決策やヒントを発見することは良くあります。CCS Cloud IDEを使えば、スマホやタブレットでヒントをスグに試せるのです。

CCS Cloud IDEの使い方

TI Cloud Development Environmentへアクセスします。左側に表示されるCloud Agentは、ターゲット評価ボードの接続を検出し、Resource Explorerで当該サンプルプロジェクトを表示してくれる便利な機能を提供します。ブラウザには、TICloudAgent Bridgeというアドオンを追加します。

TI Cloud Agent
TI Cloud Agent

9月26日投稿で用いたMSP-EXP432P401R LaunchPad 評価ボード(Cortex-M4F/48MHz、256KB/Flash、64KB/RAM)とEnergia IDEのFadeスケッチ例でCCS Cloud IDEの使い方を示します。

Cloud Agentとブラウザアドオンを追加後、MSP-EXP432P401R LaunchPadをPCへ接続すると、Cloud Agent が、1-Device Detectedへ変わります。Resource Explorerをクリックすると、CCS Desktop IDEとEnergia IDEで提供中のMSP-EXP432P401R LaunchPadサンプルプロジェクトや資料が参照できます。

MSP-EXP432P401R Device Detected
MSP-EXP432P401R Device Detected

Resource ExploreでEnergia IDEのFadeスケッチ例を選択した例が下図です。

Resource Explorer
Resource Explorer

Import to IDEクリックでFadeスケッチのソースコードがCCS Cloud IDEへ取り込まれます。Runクリックでコンパイル後、MSP-EXP432P401R LaunchPad評価ボードへダウンロードされ、Fade動作確認ができます。Energia IDEではできないBreakpoint設定などもCCS Cloud IDEでは可能です。

CCS Cloud IDEで実行中のFadeスケッチ例
CCS Cloud IDEで実行中のFadeスケッチ例

CCS Cloud IDEの活用

CCS Cloud IDEの使い方をEnergia IDEのFadeスケッチ例で示しました。CCS Desktop IDEの場合でも同じです。Import to IDE時のソースコードが、CCS Desktop IDEのサンプルプロジェクトへ変わるだけです。

一旦プロジェクトを取り込んでしまえば、CCS Cloud IDEの動作環境は完成です。次回からは、ログインのみでクラウドMCUプログラミングができます。

クラウドベースのCCS Cloud IDEは、比較表で示したように機能的にはEnergia IDEとCCS Desktopの中間です。MCUソフトウェア開発初心者が、Energia IDEで評価ボードサービスや周辺回路の動作確認後、次にデバッグへステップアップする場合に、CCS Cloud IDEは好適な環境です。

また、中級レベル開発者でも、通常のデバッグやコーティングなら、より高機能なCCS Desktop IDEを使うまでもなく、下図に抜粋したCCS Cloud IDEの使用頻度が高いタブとコマンドだけで十分プログラミングできるのも解ります。

CCS Cloud IDEから抜粋したタブとコマンド
CCS Cloud IDEから抜粋したタブとコマンド

CCS Cloud IDEが、ターゲットMCUソフトウェア開発に、十分なコンパイル/プログラム/デバッグ能力を持つクラウドMCU IDEであることがご理解頂けたと思います。

MSP-EXP432P401R LaunchPadの目的

MSP-EXP432P401R LaunchPadは、本稿で示したように、TIのCCS Desktop IDE、CCS Cloud IDE、Energia IDEの3 IDEを使ってソフトウェア開発ができます。

開発ソフトウェアは、MSP432テンプレートです。本ブログカテゴリと、その生産物の関係が下図です。

MCUカテゴリーと生産物
MCUカテゴリーと生産物

MSP432テンプレートを開発するために選んだ、個人でも入手性が良く低価格な評価ボードが、MSP-EXP432P401R LaunchPadです。

既に各1000円(税込)販売中のテンプレートは、コチラをご覧ください。テンプレートのメリットやアプリケーション開発手順なども記載中です。

P.S.:ついでにカテゴリ:LibreOfficeの生産物が下図です。こちらは、無償です。

LibreOfficeカテゴリーと生産物
LibreOfficeカテゴリーと生産物

LibreOffice Fresh 6.3.2更新

LibreOffice最新版/安定版と呼んでいたパッケージ名を、Fresh/Stillへ変更しました。“Fresh/still”は、公式ブログでは以前から使われていた名称で、今後は本ブログもこのFresh/Stillを使います。

9月26日、LibreOffice Fresh版が6.3.2へ更新されました。Still版は、6.2.7のままです。

LibreOffice版数(2019年9月29日現在)
パッケージ 想定ユーザ 2019/9/26版数
Fresh 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 6.3.1 → 6.3.2
Still ビジネス組織、法人企業、慎重なユーザ向け 6.2.7 (更新なし)

更新方法

LibreOffice Fresh版は、ヘルプ(H)>更新の確認(C)…の自動更新ができません。公式ダウンロードサイトから、32/64ビットを選択後6.3.2をダウンロードし、PCで実行すれば旧版に上書きインストールされます。

LibreOffice Fresh 6.3.2更新方法
LibreOffice Fresh 6.3.2更新方法

関連投稿

LibreOfficeに関する弊社関連投稿がありますのでご覧ください。また、右側カテゴリで、LibreOfficeをクリックすると、LibreOfficeに関する全投稿がご覧いただけます。

LibreOffice Fresh 6.3系とStill 6.2系の機能差
LibreOffice FreshとMicrosoft Office 2019/365の機能差
LibreOffice Writerの無料テンプレートの4章(テンプレートは、版数が変わっても使えます)
LibreOffice Drawの無料テンプレートの4章(テンプレートは、版数が変わっても使えます)

TI)MSP432オープンプラットフォーム開発環境:Energia IDE

Texas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPadを使ってオープンプラットフォーム開発環境:Energia IDEの使い方を示します。Energia IDEは、簡単に言うとマイコン版Arduino IDE。Windows/Mac OS/UnixのマルチOS動作で、TIマイコンMSP430やC32xxなど、7種MCUのLaunchPad評価ボードをサポート中です。

IoT MCUの高度なセキュリティ実装を考えると、MCU開発者でもArduino IDEの使い方を知っておくのは有用だと前回投稿しました。
MSP-EXP432P401R LaunchPadを例にEnergia IDEの使い方を解説します。

Energia IDE

Energia IDEの使い方は、Arduino IDEと同じです。Single Board Computer開発で用いられるArduino IDEと同じ方法でTIマイコンのソフトウェア開発ができます。

Energia IDEインストール手順が以下です(と言っても、解凍だけで動作します)。

  1. Energia Downloadサイトから対応OSバージョンをダウンロードし解凍。Windows版では、解凍先フォルダがEnergia IDEの動作環境ですので、安心して試せます👍。
  2. 解凍先フォルダのenergia.exeクリックでEnergia IDEが起動します。デフォルトボードは、右下表示のMSP-EXP430F5529LPです。

    Energia IDE初期画面
    Energia IDE初期画面
  3. ツール>ボードマネージャでEnergia MSP432 EMT RED boards by Energiaをインストールします。
    ネットワーク環境に依存しますが、この手順2完了に少し時間がかかります。

    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール
    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール

    ※REDは、基板の版数:Rev 2.0 を示します。MSP-EXP432P401R LaunchPadには、BLACK:Rev 1.0もありますので注意してください。詳しくは、User’s Guide:SLAU597Fを参照してください。

  4. ボードマネージャでRED LaunchPad w/ msp432p401r EMT(48MHz)を選択。次に、評価ボードをPCに接続し、ツール>使用シリアルポートを選択(2ポートあってもどちらでも可)。書込装置はmspdebugを選択。
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択

    以上で、MSP-EXP432P401R LaunchPad のEnergia IDE環境セットアップが完了です。

MSP-EXP432P401R LaunchPadのスケッチ動作

  1. スケッチ例>内蔵のスケッチ例から、例えば、Basics>Fadeを選び、マイコンボードに書き込む:➡クリックでコンパイル実行と評価ボードへの書込みが完了し、動作します。スケッチ例とは、サンプルアプリケーションのことです。他にも様々なスケッチ例があり、➡クリックのみで簡単にMSP432P401R評価ボードスケッチ例の動作確認ができます。
    ※ボード書き込み時にエラーが発生する場合は、サイトのGuideからEnergia Driver Packageをダウンロードし、管理者権限でインストールすると解決します。

    スケッチ例:Fadeの実行
    スケッチ例:Fadeの実行

    スケッチ例のソースコードは、上図のように可読性が高く、初期設定:setup()と無限ループ:loop()の2つから構成されています。

現状は、セキュリティ関連のスケッチ例はありません。しかし、セキュリティは、全てのIoT MCUに必須で共通機能ですので、そのうち提供される可能性はあると思います。色々な周辺回路や機能をすぐに動作確認できるスケッチ例は、プロトタイプ開発に有効です。

関連投稿:Arduino IDEスケッチ例のソースコード

Energia IDEプログラミング

サイトのReferenceに、functions/variables/structureの3部構成のAPI説明書があります。各APIをクリックすると、初心者でも解り易い解説とEnergia IDEで試せるサンプルコードがあります。コード中のピン番号は、Pin Mapsで評価ボード毎に示されています。

このプログラミングに関する資料の解り易さが、Energia IDE(=Arduino IDE)の特徴です。デバイスで出来ることを直感的にすぐにプログラミングする情報としては、これら2サイト情報だけで十分です。

Cortex-M4カテゴリにTI)MSP432採用

本ブログのCortex-M4カテゴリへ、MCUとしてTexas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)を追加します。開発環境は、本稿のEnergia IDEとTI純正無償Code Composer Studio(CCS)、3つ目にCCS cloudを使う予定です。CCS  cloudは、次回解説します。

本ブログで、シェア上位5社MCUベンダとその主要MCUを全てカバーできたことになります(関連投稿:ARM Cortex-M4ベンダと評価ボードの2章)。

CMSISを使ってCortex-M4 MCUで開発したソフトウェアは、Cortex-M0/M0+/M3への流用も可能です(関連投稿:NXP MCUXpresso SDKから見るARMコアMCU開発動向)。
プロトタイプ開発は、高性能で開発リクスが少なく、様々なセキュリティ機能を試せるCortex-M4で行い、製品化時にコストメリットを活かすCortex-M0/M0+/M3を使うなどの方法や検討もありえるでしょう。

他のCortex-M4 MCUとしては、NXP)LPC54114(Cortex-M4/M0+)、STM)STM32G473RE(Cortex-M4)、Cypress)PSoC63(Cortex-M4/M0+)などをCortex-M4カテゴリへ追加予定です。

Sony)SPRESENSEオープンプラットフォーム開発環境

2019年9月、Sony)IoT向けMPU:SPRESENSE開発環境は、オープンプラットフォーム:Arduino IDEとSDK:Software Development Kitの2段構えにしたという記事が掲載されました。

オープンプラットフォームArduino IDEとSDKの2段構え開発環境(出典:記事)
オープンプラットフォームArduino IDEとSDKの2段構え開発環境(出典:記事)

本稿は、このオープンプラットフォーム開発環境の目的について、記事内に判り易い説明があったので紹介します。

MPU:Sony)SPRESENSE

Sony版ArduinoボードのSPRESENSEは、ARM Cortex-M4F/156MHzを6個(!)搭載したマルチコアMPUです。Raspberry Pi 4でお馴染みのMPU:Micro Processor UnitやArduinoなどのSingle Board Computerは、オープンプラットフォームと呼ばれ、仕様公開が特徴です。

Cortex-M4Fコア6個から構成されるSPRESENSE(出典:Sonyサイト)
Cortex-M4Fコア6個から構成されるSPRESENSE(出典:Sonyサイト)

最近になってCortex-M4とCortex-M0+のディアルコアが出始めた新世代MCU開発にも参考になる開発環境があるかも(?)と思い記事を読みました。

全コアが同等機能を持つシステムをSMP:Symmetric Multi-Processing、一方、一部コアの機能が異なるのはASMP:Asymmetric Multi-Processingと呼びます。SPRESENSEは、1個のメインコアが全体を管理し、残り5個のサブコアへのメッセージ送信でタスク指示するASMPです。ASMPは、組込みシステムへの最適化などに向いているそうです(関連記事:ASMPのアーキテクチャを学ぶ)。

実装コア数は違いますが、新世代ディアル/マルチコアMCUもアーキテクチャはASMPになると思います。新世代MCU:Micro Controller Unitとアーキテクチャは同じ、MCUも仕様公開されていますので、SPRESENSEと新世代MCUの環境は、同じ(近い)と言えます。

MCUとMPUのデバイス差は、弊社固定ページにもありますのでご覧ください。

オープンプラットフォーム開発環境の目的

記事では、“ArduinoやRaspberry Piなどの「オープンプラットフォームユーザ」は、このデバイスを使ったら、どんな面白い商品を作れるかというチャレンジからベンダー製品を使い始める”とあります。このチャレンジ判断に適しているのが、Arduino IDE開発環境です。

「MCUユーザ」は、“ベンダー製品を手に取るとき、既にユースケースが決まっていて、MCUラインナップの中でユースケースにフィットするメモリサイズや処理性能デバイスを選ぶ”のだそうです。コスト最重視の従来MCU製品では、当然の選択方法です。

つまり、誰でも簡単に「デバイスを使って得られるサービスや機能にフォーカス」したのがArduino IDEで、どのように作ったか、その性能などを明らかにする一般的なIDEとは、その目的が異なるのです。

どうしても処理ソースコードや使用メモリ量などの(HowやWhere、Why)に目が行く筆者とは、オープンプラットフォームユーザの視点(What)が違うことが記事から理解できました。

例えば、マルチコアのサンプルアプリケーション実行は、Arduino IDEを使えば、開発環境セットアップに25分、プログラム実行に5分、合わせて作業時間30分で完成するそうです(関連記事より)。

デバイスで出来ることを、「すぐに試し判る」のがオープンプラットフォーム:Arduino IDEの目的です。

IoT MCUセキュリティ実装判断にArduino IDE環境

記事を読んだ後、IoT MCUのセキュリティ実装に関して、Arduino IDE(的)環境が適すと思いました。

セキュリティ機能は、セキュリティ専門家が開発したソースコード(ライブラリ)に対して、実装担当のMCU開発者が工夫をこらす余地はありません(頑張ってコード改良や開発しても、時間の無駄になる可能性大です)。

要は、目的のセキュリティ機能が、使用予定のIoT MCUへ実装できるか、将来追加の可能性があるセキュリティ実装に対して余力/余裕はあるか、が判れば十分です。

これを判断するには、Arduino IDEと同じような開発環境が適すと思います。IoT MCUへのセキュリティ実装や機能更新は、必須になりつつあります(前回投稿参照)。苦労して開発したIoT MCUであっても、セキュリティ機能が実装できなければ、全く役立たなくなるのです。

従って、多くのセキュリティライブラリから目的の機能を選び、簡単にIoT MCUへ実装し、動作確認できるArduino IDE(的)開発環境にも、これからのMCU開発者は慣れていることが必要だと思います。

TI)MSP432P401R評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPad

Texas Instrument)MCU:MSP432P401R(ARM Cortex-M4F、48MHz、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション、256KB/Flash、64KB/RAM)搭載の評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPad™は、TI純正無償IDE:CCSコードサイズ制限のため、Cortex-M4カテゴリデバイスとして採用失敗したと投稿しました。

しかし、MSP-EXP432P401R LaunchPadの開発環境には、Arduino IDEによく似たEnergia IDEもあります。このEnergia IDEの詳細や、MSP-EXP432P401R LaunchPad™での使い方が分かりましたら投稿します。

Energia IDE(出典:Energiaサイト)
Energia IDE(出典:Energiaサイト)

P.S.:2019/3Q発売予定のPSoC 4000S/4100S専用タッチUIテンプレート開発も遅れが発生しており、上述MSP432P401RのCortex-M4カテゴリ採用失敗等々…トラブル続きです。猛暑でPC(と筆者)の調子が悪いのが、諸悪の根源だと思います😭。
本稿のEnergia IDEが、MSP432P401R採用失敗の挽回策になれば嬉しいのですが、暫くEnergia IDEを使ってから判断したいと考えています。

総務省:2020年4月以降IoT機器アップデート機能義務化予定

総務省は、電気通信事業法を改正し、2020年4月以降「IoT機器アップデート機能義務化を予定」しているそうです(日経ビジネス2019年9月6日有料会員限定記事、“モノのインターネットに死角あり 狙われるIoT機器”より)。

本稿は、普通のMCU開発者が知るべき最低限のIoT MCUセキュリティ対策をまとめてみたいと思います。

IoT MCUセキュリティ

記事には、“歴史の浅いIoT機器は、開発者とユーザ双方にセキュリティ意識が欠如している“、”開発者は、便利で魅力的な機能搭載を優先し、セキュリティ配慮は2の次”とあります。確かにそうゆう見方はあります。

しかし、サイバー攻撃やセキュリティ関連ニュースが溢れる昨今、開発者/ユーザともに無関心ではないハズです。むしろ、現状のMCU能力では、セキィリティ強化が無理な側面を十分知った上で妥協している(目を瞑っている)のが事実だと思います。

セキィリティ関連記事は、その性質上、英語の省略用語を多用し、漏れがない細かい説明が多いので、全体を把握したい普通のMCU開発者には、解りにくいと筆者は考えています。

そこで、全体把握ができるMCUセキュリティのまとめ作成にトライしたのが次章です。

サイバー攻撃対策

MCUセキュリティ機能は、サイバー攻撃を防ぐための対策です。サイバー攻撃には、以下3種類があります。

  1. ウイルス感染
  2. 通信傍受
  3. 通信データ改ざん

2)通信傍受対策には、暗号化が効果的です。暗号化処理には、データをやり取りする相手との間に鍵が必要で、共通鍵と公開鍵の2方式があります。共通鍵は、処理負荷が公開鍵に比べ小さく、公開鍵は、鍵を公開する分、処理負荷が大きくなる特徴があります。

3)通信データ改ざん検出には、ハッシュ関数(=要約関数)を使います。ハッシュ関数に送信データを与えて得た値をハッシュ(=要約値)と言います。送信データにハッシュを追加し、受信側でハッシュ再計算、送受ハッシュ一致時がデータ改ざん無しと判定します。

2)と3)は、データ通信が発生するIoT MCUセキィリティ機能です。暗号化、ハッシュ関数は、新サイバー攻撃に対し、次々に新しい防御方式が提案される鉾と盾の関係です。MCU外付けセキュリティデバイス(例えばNXPのEdgeLock SE050など)によるハードウエア策もあります。

PCやスマホのようなウイルス対策ソフト導入が困難なMCUでは、1)のウイルス感染対策に、MCUソフトウェアのアップデートで対応します。総務省は、IoT機器にアップデート機能とID、パスワード変更を促す機能を義務付ける予定です。
※開発者自身で溢れるウイルス状況を常時監視し、ソフトウェア対応するかは不明です。

従来のMCUソフトウェアアップデートは、UART経由やIDE接続で行ってきました。しかし、ネットワーク経由(OTA)やアクセス保護のしっかりしたソフトウェア書換えなどを、1)のアップデートは想定しています。

以上、ごく簡単ですが、MCUセキュリティ対策をまとめました。

総務省の「IoT機器アップデート機能義務化」が、具体的にどのようになるかは不明です。ただ、無線機器の技適規制などを考えると、技術ハードルは、かなりの高さになることが予想できます。

サイバー攻撃対策のIoT MCUセキュリティ
サイバー攻撃対策のIoT MCUセキュリティ

ディアルコアや超高性能汎用MCUの背景

簡単にまとめたMCUセキィリティ対策を、IoT機器へ実装するのは、簡単ではありません。

実現アプローチとしては2つあります。

1つ目は、ディアルコアMCU(例えばNXPのLPC54114、関連投稿:ARM Cortex-M4とM0+アプリケーションコード互換)や、超高性能な汎用MCU(例えばSTMのSTM32G4、関連投稿:STM32G0x専用テンプレート発売1章)が各ベンダから発売中です。

これら新世代MCU発売の背景は、従来MCU処理に加え、法制化の可能性もあるセキュリティ処理実装には、MCU処理能力向上が必須なためです。

ワールドワイドにIoT機器は繋がります。日本国内に限った話ではなく、地球規模のIoT MCUセキュリティ実装に対し、ディアルコアや超高性能汎用MCUなどの新世代MCUでIoT機器を実現するアプローチです。

2つ目が、セキュリティ機能が実装し易いMPU(例えばRaspberry Pi 4など)と、各種センサー処理が得意なMCU(旧世代MCUでも可能)のハイブリッド構成でIoT機器を実現するアプローチです。

LibreOfficeセキュリティ重視更新とPotable版

通常LibreOffice更新間隔は、最新版が1か月、安定版は3か月です。今回、最新版/安定版ともに前回8月メジャー更新から1か月後の9月5日、バグ対応とセキュリティ重視の更新が発表されました。
※更新内容は、発表を参照してください。旧版からの設定など特に変更する必要はないと思います。

LibreOffice版数(2019年9月11日現在)
パッケージ 想定ユーザ 2019/9/5版数
最新版(stable) 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 6.3.0 → 6.3.1
安定版(stable) ビジネス組織、法人企業、慎重なユーザ向け 6.2.6 → 6.2.7

更新方法

旧版でヘルプ(H)>更新の確認(C)…をクリックすると、下記ダイアログが表示されます。

LibreOffice 6.3.0の更新ダイアログ
LibreOffice 6.3.0の更新ダイアログ

自動更新できないため、公式ダウンロードサイトから手動で最新版/安定版のダウンロードとインストールが必要です。ダウンロード(D)クリックで、公式サイトへジャンプします。

LibreOffice Potable版は自動更新可能

USBメモリにインストールするLibreOffice Potable版は、自動更新が可能です。

PCにLibreOfficeをインストールせず使ってみたい方、Officeのように自動更新を希望する方は、Windowsのみ対応中のLibreOffice Potable版をUSBメモリにインストールします。Potable版は、PC版更新から数日遅れで自動的に更新を検出し、常に最新のLibreOffice(最新版/安定版)が利用可能です。

LibreOffice Potable版インストール方法

1) PotableApps.comからマルチ言語/プラットフォーム対応のアプリランチャーをダウンロードし、USBメモリへインストールします(無償、日本語版あり)。

2) インストール後、起動パネルのアプリの管理>もっとアプリケーションを入手する…>カテゴリ順、クリックで下記ダイアログが表示されます。

最新版LibreOffice Potable 6.3.1と安定版LibreOffice Potable 6.2.6 (Still)のダウンロード
最新版LibreOffice Potable 6.3.1と安定版LibreOffice Potable 6.2.6 (Still)のダウンロード

オフィスカテゴリのLibreOfficeに☑を入れると最新版LibreOffice Potable版6.3.1が、LibreOffice Stillの☑を入れると安定版LibreOffice Potable版6.2.6がUSBメモリへインストールされます。

3) アプリランチャーは、起動時にLibreOffice更新を確認し、更新時は自動的にアップデートします(USBメモリなので、更新に多少処理時間が掛かりますが、再インストールの手間は省けます)。

アプリランチャーには、LibreOffice Potable版以外にも、下図に示すように主要ブラウザ、GIMPなど多くのインストールできるアプリケーションがあります。出先のPCでLibreOffice利用や、Office文書編集などに重宝します。

PotableApps.comへインストールできるアプリケーション
PotableApps.comへインストールできるアプリケーション

ARM Cortex-M4とM0+アプリケーションコード互換

NXP MCUXpresso SDK利用を利用すると、LPC845 Breakout board用に開発した1秒赤LED点滅アプリケーションコードが、そのままFRDM-KL25Zへ流用できることを前回投稿で示しました。ただ、どちらも同じARM Cortex-M0+コアのMCU評価ボードなので、読者インパクトは少なかったかもしれません。

そこで、LPC845 Breakout board(Cortex-M0+/30MHzコア)のLED点滅アプリケーションコードが、そのままCortex-M4/100MHzコアのLPCXpreosso54114へ流用できることを示します。異なるARMコア間でのアプリケーションコード互換の話です。

ARMコアバイナリ互換

Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

ARMコアのバイナリ上位互換を示す図です(関連投稿:Cortex-M0/M0+/M3比較とコア選択の2章)。このバイナリコード包含関係は、Cortex-M0バイナリコードならCortex-M4でも動作することを示しています。

但し、この包含関係を理解していても、Cortex-M0バイナリコードをそのままCortex-M4へ流用する開発者はいないと思います。

ARMコアアプリケーションコード互換

Cortex-Mxのアプリケーションコード互換性
Cortex-Mxのアプリケーションコード互換性

MCUXpresso IDEのARMコアアプリケーションコード互換を示す図です。左がLPC845 Breakout board(Cortex-M0+/30MHzコア)の1秒赤LED点滅アプリケーションコード、右がCortex-M4/100MHzコアのLPCXpreosso54114の1秒赤LED点滅アプリケーションコードです。

コード差は、L59:LPCXpreosso54114評価ボード動作クロック設定:48MHz動作のみです。例えば、96MHzなどの他の動作周波数へ設定することも可能です。コード上で動作周波数を明示的に表示するために異なりましたが、機能的には両者同じコードと言えます(L59をマクロで書き換えれば、同一コード記述もできます)。

図下のInstalled SDK Versionが、どちらも2019-06-14で一致していることも重要です。Versionが異なると、例えばGPIOのAPIが異なることがあるからです。各SDKリリースノートでAPI差の有無確認ができます。※LPCXpreosso54114 SDKのMCUXpresso IDE設定方法は、コチラの投稿の5/6章を参考にしてください。

1秒赤LED点滅という簡単なアプリケーションですが、Cortex-M0+とCortex-M4の異なるARMコア間でコード互換性があることが解ります。

動作周波数の隠蔽とIO割付

評価ボード動作周波数が異なれば、無限ループ回転速度も異なります。従って、互換性を持たせるコード内に、無限ループ内の回転数でLED点滅させるような処理記述はできません。コードに時間要素は組込めないのです。

1秒点滅の場合は、L77:SysTick_DelayTicks()でループ回転数をカウントし、1秒遅延を処理しています。これにより、GPIO_PortToggle()が時間要素なしとなり、異なる動作周波数のARMコアでもアプリケーションコード移植性を実現しています。

SysTick_DelayTick()と1ms割込みによりカウントダウンする処理コードが下記です。ここも、割込みを利用することでコード移植性を実現しています。

動作周波数隠蔽によるARMコアアプリケーションコード移植性の実現
動作周波数隠蔽によるARMコアアプリケーションコード移植性の実現

左のLPC845 Breakout boardと、右のLPCXpreosso54114のコード差は、L16:赤LEDのIO割付のみです。評価ボード毎に異なるIO割付となるのは、やむを得ないでしょう。L12からL16のDefinition箇所を、別ファイル(例えばIODefine.hやUserDefine.h)として抽出すれば、同一コード記述も可能です。

ARMコアアプリケーションコード互換メリット

以上のように、ARMコアアプリケーションコード互換を目的にした記述や工夫も必要です。しかし、一旦互換コードを開発しておけば、開発資産として他のARMコア利用時にも使えます。その結果、開発速度/効率が高まります。

IoT MCUは、センサ入力やLED出力などのメイン処理以外にも、日々変化するセキュリティ処理への対応は、必須です。メイン処理が出来上がった後での、セキュリティ処理追加という手順です。

セキュリティ対策は、セキュリティライブラリ等の使用だけでなく、いつどのようにライブラリを活用するか、その時のMCU負荷がメイン処理へ及ぼす影響等、検討が必要な事柄が多くあります。

少しでも早くメイン処理を仕上げ、これら検討項目へ時間配分することがIoT MCU開発者には要求されます。この検討時間稼ぎのためにも、ARMコアアプリケーションコードの開発資産化は必須でしょう。

※プロトタイプ開発は、初めから厳しい条件で開発するよりも、最速のCortex-M4で行い、全体完成後Cortex-M0+/M3などへアプリケーションコードを移植するコストダウンアプローチも名案だと思います。

P.S.:2019年9月4日、MCUXpresso IDEがv11.0.1へ更新されました。旧MCUXpresso IDE v11.0.0 [2516]利用中の方は、Help>Check for Updatesではv11.0.1へ更新されません。新にMCUXpresso IDE v11.0.1 [2563]のインストールが必要です。新MCUXpresso IDEインストール方法は、コチラの4章を参照ください。

NXP MCUXpresso SDKから見るARMコアMCU開発動向

NXP最新IDE:MCUXpresso v11が、SDK:Software Development Kitを使ってMCUソフトウェア開発をすることは、前回投稿で示しました。MCUXpresso SDKがサポートする評価ボード一覧が、SDKユーザガイド最新版:Rev.10、06/2019付録Bにあり、旧Freescale評価ボード:FRDMが多いですが、NXPの新しい評価ボードも追加されつつあります。

オランダ)NXPが、米)Freescaleを買収完了したのは2015年12月です。

本稿は、旧FreescaleとNXP MCU両対応のMCUXpresso SDKから、ARMコアMCU開発動向を調査し対策を示しました。

MCUXpresso SDK

MCUXpresso SDK Laysers(出典:Getting Started with MCUXpresso SDK, Rev. 10_06_2019)
MCUXpresso SDK Laysers(出典:Getting Started with MCUXpresso SDK, Rev. 10_06_2019)

ユーザガイド記載のMCUXpresso SDK層構成です。ユーザが開発するのはApplication Code。このApplication Code以外は、評価ボード:MCU Hardwareと、SDKで提供されます。色付き部分:Middleware、Board Support、FreeRTOS、Peripheral Drivers、CMSIS-CORE…がSDKの中身です。

もちろんMCU性能に応じて、初めからFreeRTOSやMiddlewareが無いSDKもあります。例えば、前回のLPC845 Breakout board SDKリリースノートを見ると、Board Support(前回投稿BSPのこと)とPeripheral Drivers(Author: Freescale)、CMSIS-CORE(Author: ARM)だけが提供中です。

CMSIS:セムシイス

CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standardは、リリースノートでAuthor: ARMが示すようにMCUコア開発元ARM作成の規格で、MCUハードウェアを上位層から隠蔽します(関連投稿:mbed OS 5.4.0のLチカ動作、LPCXpresso824-MAXで確認の3章)。

Peripheral DriversやBoard Supportは、 このCMSIS層のおかげでMCUハードウェアに依存しないAPIを、ユーザ開発Application Codeへ提供できる訳です。例えば、下記旧Freescale評価ボード:FRDM-KL25Z用SDKのboard.h記述:赤LED初期設定とトグルマクロ関数は、前回投稿で示したLPC845 Breakout boardと同じです。

FRDM-KL25Z用SDK_SDK_2.2_FRDM-KL25Zのboard.h
FRDM-KL25Z用SDK_SDK_2.2_FRDM-KL25Zのboard.h

従って、LPC845 Breakout boardで開発したアプリケーションコードを、そのままFRDM-KL25Zへも流用できます。

つまり、「SDK利用によりARMコアアプリケーションコードが汎用化」したのです。

同一アプリケーションコードでFreescaleとNXP評価ボード動作の意味

旧FreescaleとNXPのMCU評価ボードが同じアプリケーションコードで動作するのは、どちらもARMコアMCUでCMSIS層付きSDKなので、開発ユーザから見れば当然です。

しかし、従来は同じARMコアであってもApplication CodeはMCUベンダ毎に異なり、ベンダが異なれば常に1から開発していました。NXPでさえ、SDKを使った今回の同一コード動作に、Freescaleを買収後、約3.5年かかっています。
※Freescale 旧IDE:Kinetis Design Studioや、NXP 旧IDE:MCUXpresso IDE v11以前に慣れた開発者は、CMSIS付きSDKの新IDE:MCUXpresso IDE v11に違和感があるかもしれません。というのは、新IDEは、どちらの旧IDEとも異なるからです。

もちろんCMSIS利用はメリットだけでなく、デメリットもあるハズです。例えば、他社と差別化するベンダ独自Peripheral性能を極限まで引出すには、直接Hardwareを制御した方がより効率的です。STマイクロエレクトロニクスのSTM32G0x MCUのLL:Low Layer APIなどにその動向が見られます(関連投稿:STM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発)。

しかし、CMSIS利用SDKを使ったアプリケーションコード開発は、ARMコア間のアプリケーションコードやベンダ間をも跨ぐ移植性、開発速度の速さ、ソースコード可読性などの点からユーザメリット大と言えます。
※ベンダを跨ぐ移植性とは、FreescaleとNXPのMCUで同一アプリケーションが動作することを意味します。FreescaleはNXPに買収されたので、実はベンダを跨いでいませんが、CMSIS層があればアプリケーションコード移植可能な実例と思ってください。

ARM MCUコアソフトウェアの開発動向と対策

現在MCUコアは、多数派のARMコアベンダと、少数派のNon ARMコアベンダの2グループに分かれています。

多数派ARMコアベンダは、NXPのMCUXpresso SDKに見られるようにCMSIS層利用アプリケーションコード開発、既存アプリケーション資産流用、差別化Peripheral開発に力点を置くと思います。目的は、より早く、より簡単な環境提供によるソフトウェア開発効率/速度の向上です。

我々ユーザは、この環境変化に応じたアプリケーションコード汎用化手法と、もう一方の差別化機能の性能発揮手法を臨機応変、かつ、それらを混同せず、時には組み合わせて開発する必要があると思います。

P.S.:弊社テンプレートで言えば、アプリケーションコード汎用化手法が、STM32Fxテンプレート他の汎用テンプレート、一方の差別化機能の性能発揮手法が、STM32G0x専用テンプレートです。