ARM Cortex-M4ベンダと評価ボード(選択失敗談)

本稿は、模索中のCortex-M4評価ボード選択の失敗談です。

初心者・中級者のMCU習得・開発を支援するのが本ブロブの目標です。手段として、個人でも入手性の良い低価格MCU評価ボードを使い、効率良く具体的にポイントを把握できる記事作成を心掛けています。

先日のIoT市場を狙うデュアルコアMCUで、本ブログでこれまで取り上げてきたMCUコア以外にARM Cortex-M4開発経験がIoT要件になる可能性を示しました。そこで、新たにCortex-M4カテゴリをブログに加えたいと考えているのですが、今日現在、適当な評価ボードや開発環境が見つかっておりません。

ARM Cortex-M4カテゴリ

Cortex-M4カテゴリは、急増するIoT開発に対する個人レベルでの先行準備的な位置付けです。

ARM Cortex-M0/M0+/M3コアやルネサスS1/S2/S3コア習得が初級レベルの方は、開発障壁が少し高いかもしれません。なぜなら、Cortex-M4コアの知識ベースはCortex-M0/M0+/M3だからです。この高さ軽減のため、過去のブログ関連投稿をリンク付けします。

中級レベルの方は、Cortex-M4の高いMCU能力を、Cortexコア間のアプリケーション移植やRTOS活用への発展、IoTで高度化するセキュリティ機能の実装などに意識してCortex-M4カテゴリ記事をご覧頂ければ役立つと思います。

32ビットMCUベンダシェアと本ブログカテゴリ

2018年の32ビットMCUベンダシェアが、6月7日投稿InfineonのCypress買収で示されています(下図右側)。

買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)
買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)

上位5ベンダ(Runesas、NXP、STM、Cypress、TI)と、本ブログカテゴリとの関係が下表です。

例えば、NXPのLPCマイコンでCortex-M0+記事であれば、MCUカテゴリはLPCマイコン、32ビットコアカテゴリはCortex-M0+などとカテゴリが重複する場合もあります。ただ、本ブログのカテゴリ記事数(n)がベンダシェアや、Cortexコアの人気傾向を示しており、32ビットMCUベンダシェアともほぼ一致します。

2018年MCU上位5ベンダと本ブログカテゴリの関係
MCUベンダ(シェア順) MCUカテゴリ 32ビットコアカテゴリ
Runesas RL78マイコン なし
NXP LPCマイコン/Kinetisマイコン Cortex-M0/M0+/M3/M23マイコン
STM STM32マイコン Cortex-M0/M0+/M3マイコン
Cypress PSoC/PRoCマイコン Cortex-M0/M0+マイコン
Texas Instruments なし なし

※Cypress+Infineonは買収成立と仮定

ルネサスMCUは16ビットコア(S1/S2/S3)のみ掲載中です。理由は、同社32ビットコアMCU開発環境が、コンパイラ1ライセンス当たり10万円程度と高価で、個人レベルでのライセンス購入が困難なため、本ブログ対象外としたからです。

MCUベンダシェアとカテゴリとを俯瞰すると、Texas Instrument(以下TI)とCortex-M4カテゴリがないことが解ります。※32ビットMCUコアでNon ARM系のRunesasを除くと、事実上Cortexコアのみで、その中で記載が無いメジャーMCUコアがCortex-M4です。

そこで、TIのARM Cortex-M4Fマイコン、MSP432の評価ボードを調査しました。

ARM Cortex-M4F搭載MSP432評価ボード

MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図
MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図

低消費電力MSP432P401R(ARM Cortex-M4F、48MHz、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション、256KB/Flash、64KB/RAM)搭載の評価ボード:SimpleLink™ LaunchPad™です(TIは評価ボードをローンチパッドと呼びます)。Digi-KeyMouser秋月電子(秋月電子は在庫限りRev 1.0 (Black)、2100円)で低価格購入可能です。

他社ARM MCU評価ボードで一般的に用いられるArduinoコネクタ増設ではなく、BoosterPack(ブースタパック)と呼ぶTI独自拡張コネクタでBLEやWi-Fi機能を追加します。また、SimpleLink AcademyトレーニングというWebベースの教材などもあります。

MSP432評価ボード単体では、情報量の多さ、価格ともに魅力的です。Cortex-M4クラスの評価ボードでも、Cortex-M0/M0+/M3プラスアルファの低価格で入手できるのには驚きました。プロトタイプ開発は全てCortex-M4で行い、製品時Cortex-M0/M0+/M3を選択する方法もありだと思います。Cortex-M4とM4Fの違いは、本稿PS:パート2動画で解ります。

MSP432P401Rの開発環境は、TI純正無償Code Composer Studio(CCS)です。但し、無償版CCSはMSP432利用時32KBコードサイズ制限付きです。当面32KBでも十分ですが、制限解除には有償版(サブスクリプション)が必要です。

低価格評価ボードがあるのに開発環境に個人での使用に障害がある事象は、Runesas 32ビットMCUと同じです。

以上から本ブログのCortex-M4カテゴリに、TI:MSP-EXP432P401R Launch Pad を使うのは、有償開発環境の点から断念しました(NXP/STM/Cypressは、無償版でもコードサイズ制限無しです)。

まとめ

2018年32ビットMCUベンダシェアから本ブログ記事を俯瞰した結果、Cortex-M4カテゴリとベンダのTexas Instrumentが欠けていることが解り、ARM Cortex-M4F搭載のTI)MSP432P401R評価ボードMSP-EXP432P401R Launch Pad導入を検討しましたが、無償CCSコードサイズ制限のため採用を見合わせました。

勤めている企業の取引の関係でベンダや開発に使うMCUは、既に決まっていることが多いです。しかし、開発者個人レベルでは、ポケットマネーの範囲内で、ベンダもMCU選択も自由です。

ARM Cortex-M4 MCU開発経験はIoT普及期には必須になる可能性があります。普及期への先行準備、また、仕事以外のMCUを手掛けることによる視野拡大、リスク回避手段に適当なCortex-M4評価ボードを選択し、Cortex-M4カテゴリ投稿を計画しています。初回は、Cortex-M4評価ボード選択の失敗談となりました。

PS:TIサイトに下記MSP432日本語版トレーニング動画(要ログイン)があります。ARM Cortex-M4Fを使ったMSP432の全体像が効率的に把握できます。

タイトル 所要時間
パート 1 : MSP432 概要 09:24
パート 2 : ARM Cortex-M4F コア 08:12
パート 3 : 電源システム 05:25
パート 4 : クロック・システム、メモリ 07:53
パート 5 : デジタル・ペリフェラルとアナログ・ペリフェラル 10:07
パート 6 : セキュリティ 05:15
パート 7 : ソフトウェア 07:29
パート 8 : MSP430 から MSP432 05:06

IoTを狙うデュアルコアMCU

CypressのPSoC 6を中心にNXPとSTM、3社のARMディアルコアMCUを調査しました。Cortex-M4とCortex-M0+を使う個人でも低価格で入手できるディアルコアMCUです。ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション、シングルコアMCUソフトウェア開発との違いなどを説明します。

Cortex-A7とCortex-M4を使ったもう1つの超高性能ディアルコアMCUも少しだけ登場します。

ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション

ディアルコアMCUの狙い
ディアルコアMCUの狙い(出典:Cypress Cortex-M4 PSoC 6サイト)

CypressのCortex-M4コアPSoC 6サイトの上図がディアルコアMCUの狙いを示しています。

つまり、「IoT市場獲得には、右側アプリケーションプロセッサからと左側マイクロコントローラ:MCUからの2つのアプローチがあり、MCUアプローチのPSoC 6は、処理能力とセキュリティ強化を低コスト、低電力で実現した」ということです。

PSoC 6は、実現手段としてメインコアにCortex-M4(150MHz)、補助コアにCortex-M0+(100MHz)のディアルコアを採用しています。このCortex-M4+Cortex-M0+の2MCU構成は、NXP:LPC54102STM:STM32WB55RGでも見られます。CypressとSTMは、Cortex-M0+側にBluetooth Low Energy無線通信機能を実装済みです。

PSoC 6は、実装セキュリティに応じてPSoC 62/63シリーズと3種類のPSoC 64シリーズに別れます。PSoC 62/63は、PSoC 6のセキュリティ機能とユーザ独自セキュリティファームウェア(ソフトウェア)を使うデバイス(次章参照)、最上位プレミアムセキュリティのPSoC 64は、標準的なセキュリティ機能を全て含むデバイスです。

一方、アプリケーションプロセッサアプローチは、NXP:iMX 7アプリケーションプロセサのようにスマホやRaspberry Piでも用いられたCortex-A7(800MHz)がメインコアで、Cortex-M4(200MHz)が補助コアです。このアプローチは、ソフトウェア開発規模が大きく評価ボードも高価で個人開発向きとは言いにくいと思います。Cortex-A7自身がマルチコアでOS利用が前提なので更に複雑になります。

まとめると、低コスト低電力で処理能力とセキュリティ強化目的のCortex-M4+Cortex-M0+ディアルコアMCUの狙いは、IoTアプリケーションです。PSoC 63搭載の評価ボード:CY8CPROTO-063-BLEの価格は¥2,289(Digi-Key調べ)で、個人でも手が出せる価格帯です。

ディアルコアMCUのソフトウェア開発

PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)
PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)

Cypress Roadmap: MCU Portfolio、P25から抜き出したPSoC 63のアプリケーションとFeaturesです。具体的なIoTアプリケーションや、実装セキュリティ機能が解ります。
※ご参考までにこのMCU Portfolioには、CapSenseテンプレート開発で用いたPSoC 4000S/4100S仕様も解り易く掲載されています。

同じP25記載のPSoC 63ブロック図です。Cortex-M4とCortex-M0+がメモリ結合されています。

PSoC 63 Line with BLE (Hardware)
PSoC 63 Line with BLE (Hardware)

PSoC 6のソフトウェアは、Cortex-M4とCortex-M0+それぞれのソフトウェアが、2つ同時に別々に動作します。簡単に言うと、各シングルコアMCUソフトウェア同士が、同じデバイス内で動きます。メモリ結合なので、同一メモリアドレス同時アクセスの競合回避手段なども多分あるハズです(←調査不足😌)。

つまり、ディアルコアMCUソフトウェア開発と言っても、従来のCortex-M4やCortex-M0+シングルコアMCUソフトウェア開発の経験やスキルがそのまま活かせるのです。

一方のMCUから見ると、片方のMCUはインテリジェントな周辺回路と同じです。

例えば、Windowsソフトウェア開発なら、1つの機能を複数スレッドに分割し、処理効率を上げるなどのマルチコア対応の工夫が必要です。しかし、Cortex-M4+Cortex-M0+デュアルコアMCUの場合は、シングルコアのソフトウェア開発手法がそのまま使えます。

差分は、「2つのMCUに、どの機能を割振るか」です。

FPU内蔵のCortex-M4は、セキュリティなどの計算処理、高速GPIOアクセスのCortex-M0+は、IO処理やBLEモジュール管理、というのが定番(CypressやSTMのディアルコアMCUにみられる)割振りのようです。

まとめると、ディアルコアMCUソフトウェア開発は、シングルコアMCU開発経験がそのまま活かせます。しかも、別々動作の2コアを持つので、RTOSを使わずに処理分離と本当の並列動作ができます。

また、個人入手可能な評価ボード価格も魅力です。

評価ボード搭載のPSoC 63:CY8C6347BZI-BLD43(116-BGA)は、BGAパッケージなので基板実装は簡単ではありません。しかし、このPSoC 63とBLEアンテナをモジュール化したCYBLE-416045-02(14.0 mm x 18.5 mm x 2.0 mm、43-pad SMT with 36 GPIOs、下図)が評価ボードに実装済みで単体購入も可能です。

また、個人利用の場合には、評価ボードを丸ごと基板実装するのも効果的です。

EZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02
CY8C6347BZI-BLD43搭載のEZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02

ディアルコアMCUへの対処案

ディアルコアMCUの狙いは、巨大なIoT市場です。

各社がディアルコアMCUを発売する理由は、高度化するセキュリティ機能や、どの規格かが不確定な無線通信機能に対して、現状のシングルARMコアMCUでは、処理能力不足が懸念されるためです。
※近距離無線通信の有力候補が、BLEであることは確かです。

ディアルコアMCUならば、たとえ規格が変わっても、その影響を片方のMCU内に止めることもできます。つまり、ソフトウェア資産が無駄にならない訳です。

IoT市場へは、Cortex-M4+Cortex-M0+と、Cortex-A7+Cortex-M4のアプローチがあります。Cortex-M4を用いる点ではどちらも一致しています。FPU内蔵Cortex-M4ソフトウェア開発や経験が、IoT MCUプログラマの必須要件になるかもしれません。

シングルコアMCU開発経験が活かせ、しかもRTOSを使わずに高速並列処理を実現できるディアルコアMCUのソフトウェア/ハードウエア開発を、評価ボードへの僅かな投資で、IoTが爆発的に普及する前から準備・習得するのは、技術者リスク回避の点からも必要だと思います。

汎用STM32FxテンプレートのSTM32G0x使用法

LL APIを利用するSTM32G0x「専用テンプレート」開発は、3月からの投稿で一応目安が付きました。
※投稿下欄タグ:専用テンプレートをクリックすると本稿を含め関連投稿が読めます。

これらの投稿で販売中の汎用STM32Fxテンプレートは、HAL APIを使っているので別STM32MCU、例えばG0シリーズMCUのSTM32G071RBなどへの使用・移植も簡単であることを何度か書いてきました。

そこで、この「汎用テンプレート」のSTM32G071RBへの使用法を説明します。

STM32Fxテンプレートは、図1に示すようにF0シリーズMCUのSTM32F072RBと、F1シリーズMCUのSTM32F103RB両方で動作確認済みです。本稿は、このSTM32FxテンプレートをSTM32G0へポーティングします。

汎用STM32Fxテンプレートのソフトウェアアークテクチャ
汎用STM32Fxテンプレートのソフトウェアアークテクチャ

汎用STM32FxテンプレートのSTM32G0x使用法まとめ

  • HAL APIはSTM32MCUで共通なので、HAL API利用アプリケーション(この場合はテンプレート、STM32Fx Template)は、STM32デバイスが変わってもそのまま使える
  • HAL APIより下層のソフトウェアは、STM32CubeMXを使って自動生成
  • STM開発環境にMCU移植機能が無い現状では、移植デバイス先のSTM32CubeMX設定さえ間違わなければ、HAL APIより上層アプリケーションの使用・移植は、簡単

汎用STM32Fxテンプレートを購入検討中の方、または既にSTM32Fxテンプレートをお持ちの方は、HAL API利用STM32Fxテンプレートの別デバイス移植性が優れていることが本稿でご理解頂けると思います。

汎用STM32F0シンプルテンプレートのSTM32G071RB移植手順

手順1.SW4STM32で、F0SimpleTemplateプロジェクト名をG0SimpleTemplateへリネームコピー

手順2.STM32CubeMXで、評価ボードNucleo-G071RBプロジェクトを新規作成し、F0SimpleTemplate.icoと同じ変更を加え、手順1でリネームしたG0SimpleTemplate.icoへ上書き保存後、コード生成

手順3.SW4STM32で、G0SimpleTemplateのmain.cとUserDefine.hなど数か所を変更&コンパイル

手順4.STM32G071RB評価ボードNucleo-G071RBで、移植シンプルテンプレート動作確認

文章で書くと手順1~4のように量が多くなります。しかし、HAL APIはSTM32MCUで共通、デバイスが変わってもHAL API利用アプリケーションをそのまま使うために、下層の構築にSTM32CubeMXを使うだけです。HAL APIアプリケーション移植は簡単です。

手順詳細を説明します。

手順1:SW4STM32で、F0SimpleTemplateプロジェクトをG0SimpleTemplateへリネームコピー

F0SimpleTemplateをコピー、同じワークスペースへペーストする時にG0SimpleTemplateへリネームします。

F0SimpleTemplateをG0SimpleTempleteへリネームコピー
F0SimpleTemplateをG0SimpleTempleteへリネームコピー

G0SimpleTemplateフォルダ内のF0SimpleTemplate.iocをG0SimpleTemplate.iocへF2:リネームします。
※手順1の目的は、F0SimpleTemplateソースコードのユーザ追記部分を、丸ごとG0SimpleTemplateで流用するためです。

手順2:STM32CubeMXで、Nucleo-G071RB新規作成とコード生成

現状のSTM32CubeMXには、MCUデバイス間の移植機能がありません。そこで、F0SimpleTemplate.iocファイルを見ながら、新規作成Nucleo-G071RBの周辺回路を手動で同じ設定にします。

先ずG0SimpleTemplete.iocファイルを新規作成し、手順1でリネームしたG0SimpleTemplete.iocへ上書き保存します。その後、STM32CubeMXの2重起動を活かしF0SimpleTemplate.iocを見ながらG0SimpleTemplete.ioc周辺回路を同じ設定にします。最後に、全ての周辺回路をHAL APIでコード生成します。

STM32CubeMXのNucleo-G071RB設定
STM32CubeMXのNucleo-G071RB設定

※Connectivityは、F0SimpleTemplateに合わせてUSART2、Clock Configurationは、HCLK Max.の64MHz、Timerは、F0SimpleTemplateのTIM3機能に近いTIM7を使いました。

手順3:SW4STM32で、main.cとuserdefine.hの数か所を修正&コンパイル

どのようなアプリケーションソフトでも、デバイス依存の箇所があります。F0SimpleTemplateも同様です。これらは手動で変更・修正するとビルドが成功します。変更・修正箇所が下記です。

  • HALライブラリとBSP(Board Support Package)変更
    stm32f0xx_hal.h→stm32g0xx_hal_conf.h、stm32f0xx_nucleo.h→stm32g0xx_nucleo.h(UserDefine.h)
  • BSPはRepository\STM32Cube_FW_G0_V1.2.0\Drivers\BSP\STM32G0xx_Nucleoのstm32g0xx_nucleo.c/hをSrc/Incへコピー
  • TIM3の代わりにTIM7を使ったので、htim3→htim7(main.c)
  • G0SimpleTemplateに無関係ファイル削除(stm32f0xx_nucleo.c/h, system_stm32f0xx.c)

手順4:評価ボードNucleo-G071RBで動作確認

F0SimpleTemplateをG0SimpleTempletaへ流用したVitrual COMポート画面
F0SimpleTemplateをG0SimpleTempletaへ流用したVitrual COMポート画面

※表示メッセージは、STM32G0xデバイス対応に変更しています。

あとがき

繰返しますが、文章で書くと移植手順は長く複雑に感じます(特に手順3)。しかし、ソフトウェアアーキテクチャ図1が理解済みならHAL API利用アプリケーションの別デバイスへの移植は簡単です。手順3内容は、デバイスが変われば当然必要となる事柄です。

HAL API利用アプリケーションの最大メリットは、MCU移植が容易なことです。つまり、HAL APIアプリケーションは、「STM32MCUデバイス非依存」とも言えます。

現状では、このメリットを活かす開発環境が不備なだけです。不備分は手動で補い、STM32F0/F1アプリケーションをSTM32G0アプリケーションへ移植する方法を示しました。

近い将来、STM開発環境にMCUデバイス移植機能が提供されると筆者は思います。

お知らせ:LL APIを利用するLL APIのSTM32G0x「専用」テンプレートの販売時には、本稿のHAL API利用「汎用」G0SimpleTemplateも添付し、専用と汎用の両方を1パッケージで販売する予定です。

※LL APIとHAL APIの差を把握したい方は、STM32CubeMXのLow-Layer API利用法(2)を参照ください。

速報:STM32CubeIDE

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)公式ブログで、中国で開かれたSTM32 SummitにおいてSW4STM32とTrueSTUDIO、STM32CubeMXを統合した新しい統合開発環境:STM32CubeIDEを発表しました。

STM公式ブログ:STM32CubeIDE Makes a Massive Appearance in China。STM32CubeIDEは、既にSTMサイトよりダウンロード可能です。

STM32CubeIDE(出典:STMサイト)
STM32CubeIDE(出典:STMサイト)

STM32CubeIDEの主な特徴

  • EclipseベースIDE
  • マルチOS対応(Windows、Linux、macOS)
  • SW4STM32とTrueSTUDIOプロジェクトのインポート機能

STM32CubeIDE

早速STM32CubeIDEをインストールしてみました。所感は、STMが買収したAtollic® のTrueSTUDIOというよりむしろ、SW4STM32へSTM32CubeMXをプラグインしたような画面です。

STM32CubeIDE画面
STM32CubeIDE画面。SW4STM32へSTM32CubeMXをプラグインした画面に近い。

STM32CubeIDE v1.0.0は、最新版STM32CubeMX v5.2.0とSTM32G0 FW v1.2.0/STM32F0 FW v1.10.0 /STM32F1 FW v1.7.0など開発に必要となるツールもパッケージとしてインストールできます。従来の個別インストールとツールアップデートが面倒だと感じる方には、朗報になるでしょう。

現在STM32G0x専用テンプレート開発は、SW4STM32で継続中です。しかし、販売時にはこのSW32CubeIDEでリリースする方が、SW4STM32からのマイグレーションガイドUM2579も付属済みですので良いかもしれません。

マイグレーション操作は簡単です。販売中のSTM32Fxテンプレートへもこのマイグレーションで対応できると思います。

STM32MCU開発環境の場合、IDE、STM32CubeMX、デバイス毎のFW、これら3つのバージョンがともに最新でないと、上手く動作しないことや不具合発生はありえます(例えば、STM32CubeMX v5.1.0では最新のSTM32G0 FW v1.2.0がインストールできないなど)。

STM32CubeIDEの出現で、バージョン管理が容易になれば良いと思います。以上、速報をお伝えしました。
動画がコチラで見られます。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (2)

STM32G0x専用テンプレートで使うSTM32CubeMXのLL API利用法第2回は、LL APIとHAL APIの違いを説明します。
専用テンプレートはLL、汎用テンプレートはHALを使う理由がお判りになると思います。

LL(Low-Layer)とHAL(Hardware Abstraction Layer)相対比較

第1回で示したLL API関連資料一覧のUM2319の最初のページに、LLとHALの定義が示されています。

・LL:HALよりもハードウェアに近く、高速で軽量なエキスパート向けレイヤー
・HAL:ハードウェア抽象化で、STM32MCU間で最大限の移植性を保証するレイヤー

MCUハードウェアに依存するLLは、高速・軽量ですが移植性が低いので、LL APIを利用するソフトウェア(=アプリケーション)はそのMCU専用になります。一方、HALはMCU移植性が高いため、HAL API利用アプリケーションはSTM32MCU間で汎用的に使えます。

HALの方が現代的で少ないユーザ記述でアプリケーション開発ができ、さらに汎用なので開発労力が無駄にならない利点があります。しかし、HALが隠蔽している制御の分Flash(ROM)やRAM容量が必要で、LLに比べ低速です。モーター制御など高速処理が必要な部分にはLLの方が向いているかもしれません。

以前の投稿STM32CubeMXの使い方で示した、HAL APIとLL API相対比較表を再掲します。

HALとLL比較(出典:STM32 Embedded Software Overvire)
HALとLL比較(※説明のため着色しています。出典:STM32 Embedded Software Overvire)

専用テンプレートと汎用テンプレート

LL APIの利点は、ハードウェア性能を活かし少ない容量で高性能アプリケーション開発ができる点です。これは、小Flashで高性能なSTM32G0xデバイスに最適と言えるでしょう。

現状はSTM32G0xが「単独デバイス」でSTM32F0/F1両方のMCU性能をカバーしているので「専用テンプレートが最適」だと言えます。しかし、「STM32G0xシリーズに更に高性能なSTM32G1xデバイス」が発売されれば、移植性が高いHALでSTM32G0xソフトウェア開発を行う方が良くなる可能性はあります。

但しこの場合には、HAL API利用の販売中汎用STM32FxテンプレートをSTM32G0xデバイスへ適用すれば済みます。汎用性を示すこの適用例は、近く投稿する予定です。

特定ハードウェア性能を活かす専用アプリケーションが、少ないROM/RAM容量でも開発できるLL APIメリットを示すデバイス例としてSTM32G0xを選び、専用テンプレートを開発中です。

LL APIとHAL APIのアプリケーションサイズ実例比較

LL API利用時、容量がHAL APIに比べどの程度小さくなるかを実例で示します。

これも前の投稿STM32CubeMXの使い方で示したように、一般的にはLLの方がHAL比60~80%小さくなると言われます。

実例に評価ボードNucle-G071RBに処理は何もせず、64MHz動作のみをLL APIとHAL APIだけを変えてビルドした結果が下記です(SW4STM32 v2.8.1、STM32CubeMX v5.1.0、STM32G0 v1.1.0)。

  text data bss 使用容量 容量比(%)
LL API 3120 12 1564 4696 59
HAL API 9680 20 1708 11408 100

LL API利用の方が 59%小さく実現できることが判ります。

LL APIとHAL API混合利用時の注意点

AN5110には、LLとHAL両方を混在させた公式サンプルプロジェクトのExamples_MIXがNucleo-G071RBでも9例と少ないながら掲載されています。

LLとHAL混在利用の公式サンプルプロジェクト(出典:AN5110)
LLとHAL混在利用の公式サンプルプロジェクト(出典:AN5110)

LLとHALを混在利用時は、色々な注意点があります。UM2319の5章に詳細がありますが、一部抜粋します。

・同じ周辺回路をHALとLLで混在制御するのは避ける
・LLはHALがハンドルしているレジスタを上書きすることがあるので注意

また、UM2303の2章にLLとHALの示すアーキテクチャが示されています。

STM32CubeG0 Firmware Architecture(出典:UM2303)
STM32CubeG0 Firmware Architecture(※説明のため着色しています。出典:UM2303)

つまり、上層HALが下層LLを利用する場合がある訳です。LLは、HALがどのように周辺回路を制御しているかを知ることなく直接ハードウェアレジスタにアクセスします。混在時はレジスタ競合などの詳細な注意がAPI利用者側で必要です。

Nucleo-G071RB 利用時LLとHAL混在利用は、Examples_MIXの9例を除いては避けた方が良さそうです。
BSP(Board Support Package)も、同じ理由でSTM32G0x専用テンプレートには使いません。

※以上は、同一周辺回路でLLとHALを混在利用する場合の注意点です。
※では、周辺回路が異なれば混在は問題ないのでしょうか? 例えば、I2CはHAL、GPIOはLLの場合などです。この場合でも、HALがLLを利用することを考慮すると、アプリケーションレベルでの安全側評価では混在は避け、LLまたはHALに統一して利用する方が無難だと思います。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (2):LL APIとHAL APIの違いまとめ

STM32G0x専用テンプレートは、HAL APIとの混在利用は避け、LL APIのみで開発します。

従って、STM32G0xデバイス専用のアプリケーションとなります。
汎用テンプレートSTM32Fxテンプレートは、HAL APIを使っていますので、STM32MCUで汎用的に使えるアプリケーションです。
※このSTM32Fxテンプレート汎用性を示すため、STM32G0xデバイスへこの汎用テンプレートを適用した例を示す予定です。

LLとHAL混在アプリケーション開発は、レジスタアクセス競合などの詳細注意が、API利用アプリケーション側で必要です。
公式サンプルプロジェクトExamples_MIXで示されたやむを得ない場合を除いては、避けた方が無難です。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (1)

STM32G0x専用テンプレートで使うSTM32CubeMXのLL(Low-Layer) API利用法を3回に分けて投稿します。

第1回:LL API初期化処理(本稿)
第2回:LL APIとHAL APIの違い
第3回:STM32CubeMXのLL API利用時注意点と第1回~第3回全体まとめ

第1回は、LL API初期化処理です。組込みソフトウェアは、初期化処理と無限ループ内処理の2つから構成され、LL APIでも汎用テンプレートで使ったHAL(Hardware Abstraction Layer)APIでもこの2構成は同じです。

LLとHALに関するSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)資料は数多くあります。ただSTMは、STM32ソフトウェア開発は、基本的に「HAL API利用を推薦」していると思います。MCUハードウェア差を隠蔽でき、開発ソフトウェア移植性にも優れているからです。また、STM32CubeMXで生成する関数もHAL APIがデフォルトです。

STM32G0xシリーズLL API関連ソフトウェア資料一覧

筆者がそう考えるからかもしれませんが、STM32G0xシリーズのLL API関連資料は、投稿時点では未だ少ない状況で、リストアップすると表1の4個程度です。近くより小ピン小容量のSTM32G0xがリリースされますので、もっと多くなると期待しています。
※5番目のSTM32Cube ファームウエア テクニカル・プレゼンテーションにはLL API関連はありませんが、BSPやUSB制御をSTM32G0x専用テンプレートでも使う可能性を考慮して追加しました。

高性能ハードウェアを活かしコードサイズもHALより小さいSTM32G0x専用LL API関連資料4+1個の範囲でその利用法をまとめます。

表1 STM32G0xシリーズLL API関連ソフトウェア資料一覧(2019年3 月末)
資料名 概要
AN5110 STM32CubeMXで生成可能なSTM32G0公式サンプルプロジェクトの一覧表。HAL APIのみ、LL APIのみ、HALとLL混在などに区分けされたアプリケーションノート。
UM2303 STM32CubeMXを使いSTM32G0ソフトウェア開発着手時のユーザマニュアル
UM2319 STM32G0のHAL APIとLL APIユーザマニュアル
STM32Cube G0 Firmware Package STM32G0公式サンプルプロジェクト概要を示すオンライントレーニング資料
STM32Cube ファームウエア テクニカル・プレゼンテーション STM32シリーズSTM32CubeMXのHAL/BSP/ミドルウェア/USBライブラリの日本語解説書

STM32CubeMX LL API利用法の習得アプローチ

表1の概要を読むと、実践的にはAN5110のLL APIのみのサンプルプロジェクトとUM2303、万全を期すにはUM2319のLL API解説章の理解が必要です。

そこでLL API利用法は、実践的アプローチから着手し、不明な点やレファレンスが必要な時にUM2319を参照することにします。

STM32G0のLL API利用例:AN5110のExamples_LL

STM32G0x専用テンプレート動作確認評価ボードは、Nucleo-G071RBです。Nucleo-G071RBは、AN5110のExamples_LLで示されたLL API利用サンプルプロジェクト数が75個と掲載ボード中最も多いので前章アプローチに最適です。

これら多くのLL APIサンプルプロジェクトから、2つのGPIOプロジェクトに着目します。この2プロジェクトは、どちらも評価ボード実装済みLD4を250ms毎に点滅させます。

GPIOサンプルプロジェクト差
2つのGPIOサンプルプロジェクト差(※説明のため着色しています)

MXアイコンが付いているGPIO_InfiniteLedToggling_Initは、STM32CubeMXで生成可能、GPIO_InfiniteLedTogglingは生成不可です。その差は、Descriptionによると初期化処理(Initialization FunctionとUnitary Service Function)です。両者ソースコードの初期化処理を下図に示します。

GPIO_InfiniteLedToggling_InitとGPIO_InfiniteLedTogglingの初期化処理の差
GPIO_InfiniteLedToggling_Init(左)とGPIO_InfiniteLedToggling(右)の初期化処理の差

MX_GPIO_Init()が、STM32CubeMX生成可能プロジェクト、Configure_GPIO()が、生成不可プロジェクトの初期化処理です。

つまり、
・MX_GPIO_Init()=Initialization Function (generated by STM32CubeMX)
・Configure_GPIO()=Unitary Service Function (generated by User or by Peripheral Library)
です。※()内は、筆者が追記。

MX_GPIO_Init()は、STM32CubeMXが生成した初期化処理で、MX_が接頭語として付いていることからLLとHAL混在時でも使える関数です。一方、Configure_GPIO()は、MX_GPIO_Init()と同じ機能ながら少ないソースコードで記述できています。

その結果、Configure_GPIO()の方が、MX_GPIO_Init()よりも高性能で小サイズとなります(初期化処理以外は、どちらも同じ)。

MX_GPIO_Init()は、付属オリジナルSTM32CubeMXプロジェクトに変更を加えた時にでも中身はSTM32CubeMXが自動生成する関数で置換えられるだけで、MX_GPIO_Init()はそのまま残ります。一方、Configure_GPIO()は中身のユーザ修正が必要です。

結局、STM32CubeMXで生成可能なGPIO_InfiniteLedToggling_Iniプロジェクトは、ユーザが何らかの変更を加えても初期化処理をSTM32CubeMX任せにでき、無限ループ内にある変更処理に集中できる訳です。

STM32G0xのLL API利用法 (1):初期化処理まとめ

・初期化処理生成はSTM32CubeMXを使う方法と、高性能小サイズなユーザ自作方法の2つがある
・STM32CubeMX生成の初期化処理関数名は、HAL API混在時でも使用可能なMX_が接頭語
・STM32CubeMXを使うとプロジェクト変更時、無限ループ内処理のみに集中できる

STM32CubeMXは、LL APIまたはHAL APIの利用切替えが周辺回路毎に設定可能です。そこで、たとえLL APIのみ利用するプロジェクトでも、初期化処理関数の接頭語には、後々の周辺回路のHAL利用・変更・追加などに備えてML_を付けるのだと推測します。

LL API利用時、初期化処理をSTM32CubeMX任せにすると、ユーザ自作よりも多少サイズが犠牲になります。但しその差は、着目したプロジェクトGPIO_InfiniteLedToggling_Init:2808B、GPIO_InfiniteLedToggling:2604Bと微々(7.3%減)たるものです(SW4STM32 v2.8.1、STM32CubeMX v5.1.0、STM32G0 v1.1.0)。

公式サンプルプロジェクト応用が簡単にできることを考慮すると、その差を十分補える効果があります。

STM32G0x専用テンプレートのLL  API初期化処理方針

以上のことから、LL APIを利用するSTM32G0x専用テンプレートの初期化処理は、STM32CubeMX任せにします。

勿論、STM32G0x専用テンプレート用STM32CubeMXプロジェクトも添付いたしますので専用テンプレート応用・流用は簡単となります(汎用STM32Fxテンプレートは、既にテンプレート用STM32CubeMXプロジェクト添付済みです)。

訂正のお知らせ:STM32CubeMX 5.1.0でSTM32G0 1.1.0公式サンプルプロジェクト生成可能

前投稿で2019年3月末時点ではSTM32G0 V1.1.0の公式サンプルプロジェクト内の付属STM32CubeMX全プロジェクトファイルが未完成と書きましたが、一部改善されました。
つまり、公式サンプルプロジェクトExamples_LLがSTM32CubeMXで生成可能になりました。

お詫びして😔、訂正いたします。

STM32CubeMXは、起動毎に更新チェックやインストール済みのMCUパッケージを自動更新します。STM32G0 1.1.0のままプロジェクトファイルからの生成が可能に変わりましたので、STM32CubeMX本体が更新されたと思うのですが、版数はVersion 5.1.0のままで変わりません(何回か起動を繰返すと正常化するのかもしれません😅、同じ症状の方はお試しを…)。

なんにせよ、STM32G0x専用テンプレートで使うSTM32CubeMXのLL(Low-Layer) API開発には朗報に変わりありません。めでたしめでたしです。

朗報:STM32G0公式サンプルプロジェクトがSTM32CubeMXで生成可能

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)の新MCU:STM32G0xシリーズだからこそできた快挙です。AN5110 – Rev 3 – February 2019で、STM32G0公式サンプルプロジェクトが、付属STM32CubeMXプロジェクトファイル(拡張子.ioc)で生成できるようになりました(Table 1のMXアイコン部分)。

AN5110のTable 1
AN5110掲載のTable 1(一部抜粋)

従来サンプルプロジェクトとSTM32G0サンプルプロジェクト比較

例えば、従来のSTM32F0公式サンプルプロジェクトは、エキスパート自作のもの(多分、むかしの標準ペリフェラルライブラリ利用)でした。STM32ソフトウェア開発は、今はSTM32CubeMXコード生成出力へユーザコードを追加する方式です。

従って、従来サンプルソースコードを利用するには、エキスパート作成の必要部分を解読後カットし、STM32CubeMXで生成した自分のソースコードへペーストして流用してきました。

AN5110は、この公式サンプルプロジェクトが、付属STM32CubeMXで直接生成できることを示しています。サンプルプロジェクト流用・活用が、これまで以上に簡単・便利になります。従来のソースコードカット&ペーストから、付属STM32CubeMX変更と生成コードへユーザコードを追加すれば済むからです。

STM32ソフトウェア開発の最重要ツール:STM32CubeMX活用に即した方法がAN5110と言えます。

2019年3月末時点では付属STM32CubeMXプロジェクトファイル未完成

重要なのは、ここからです。

3月末時点では、公式サンプルプロジェクト内のSTM32CubeMXプロジェクトファイルが未完成です。例えば、Table 1一番上のNucleo-G071RBのADC_AnalogWatchdogプロジェクト付属STM32CubeMXプロジェクトファイルを開いた様子が下図です。

ADC_AnalogWatchdogの.ico
図1 ADC_AnalogWatchdogサンプルプロジェクト付属STM32CubeMXプロジェクトファイルの.iocを開いた様子

このままコード生成してもADC_AnalogWatchdogサンプルプロジェクトはできません😴。

ADC_AnalogWatchdogプロジェクトだけではなく、全ての公式サンプルプロジェクトで同様です。

つまり、現時点では、残念ながら公式サンプルプロジェクト内の付属STM32CubeMXプロジェクトファイルは未完成です。公式サンプルプロジェクトの素:STM32G0 1.1.0改版を待たねば、AN5110は実現しません。
前投稿で書いたようにSTM32G0 1.1.0(2019/02/26)は、STMに買収されたAtollic TrueSTUDIOへも未対応でした(図1にTrueSTUDIOフォルダが無いことからも判る)。

新しいMCU発売にはありがちですが、開発に一番重要なツール完成には、開発元ベンダーであっても年単位の時間が必要です(AN5110 Revision historyより)。

STM32CubeMXを使って公式サンプルプロジェクトを生成するAN5110の方向性は、正しいと思います。
新MCU:STM32G0シリーズSTM32G0だけでなく、他の既存MCU:STM32F0/F1シリーズSTM32F0/F1などもこの方向の対応を期待します。

まとめ

以上のように、STM32G0x専用テンプレート開発環境は整いつつありますが、少し待ってから、具体的には、STM32CubeMXへインストールするSTM32G0xシリーズMCUパッケージ、STM32G0 V1.1.0改版を待ってから先へ進めた方が良さそうです。

この改版までの待ち時間は、STM32G0x専用テンプレート開発で使うLL(Low-Layer)APIの習得に充てます。

TrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール方法、STM32G0xとSTM32F0xの差異

STM32G0x専用テンプレートのIDE:TrueSTUDIOを使った開発環境構築手順も、汎用STM32Fxテンプレートのそれと同じです。

本稿はSTM32G0x専用テンプレート開発用IDE TrueSTUDIOとスタンドアロン版STM32CubeMXのインストール方法を示し、インストールしたSTM32CubeMXを使って同じ汎用MCUでもSTM32G0xとSTM32F0xのどこが違うかを具体的にまとめます。

STM32G0x専用テンプレートIDE:TrueSTUDIOを使った開発環境構築手順

2017年5月投稿のSW4STM32のIDE構築手順が左側、これがTrueSTUDIOに変わると右側になります。

表1 TrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール手順とSW4STM32構築時の比較
手順 SW4STM32で構築(2017年5月) TrueSTUDIOで構築(本稿)
1 SW4STM32インストールとUpdate TrueSTUDIOインストールとUpdate
2 STM32CubeMXプラグインとUpdate STM32CubeMXスタンドアロン版とUpdate
3 評価ボードMCUコアのライブラリダウンロード STM32G0パッケージのダウンロード
4 ライブラリのファイル構成確認 同左(しかし、当面見合わせ)
5 評価ボードデモソフト説明と構築環境の動作検証 同左(しかし、当面見合わせ)

差分はIDEと、STM32CubeMXスタンドアロン版をインストールする点、評価ボードがNucleo-F072RBからNucleo-G071RBに変わったので、STM32CubeMXへダウンロードするMCUパッケージにSTM32G0を加える点です。

前半で手順1~5の簡単な説明、後半は、インストールしたSTM32CubeMXを使って同じ汎用MCUグループのSTM32G0xとSTM32F0xが、電源ピン数やデフォルト使用周辺回路が異なることを示します。

手順1 TrueSTUDIOインストールとUpdate

Atollic TrueSTUDIO for STM32 9.3.0(2019/2/22リリース)は、atollicサイトからダウンロードボタンのクリックで入手できます。以後、Windows版で説明します。

ダウンロード後、インストーラを実行すると言語選択ダイアログが現れます。日本語を選択するとインストール後のTrueSTUDIOメニューも自動的に日本語化されます。
インストール後、ヘルプ(H)>更新の検査、をクリックしTrueSTUDIO を最新状態にします。

※TrueSTUDIOインストール検討中の方は、手順4を読んだ後に再検討してください。

手順2 STM32CubeMXスタンドアロン版とUpdate

コード生成ツールSTM32CubeMX V5.1.0は、SW4STM32と今回インストールするTrueSTUDIOの両方で使います。そこで、各IDEのプラグインではなく、スタンドアロン版としてインストールします。インストール方法は、UM1718 Rev28の3.2を参照してください。
インストール後、Help>Check for Updates、をクリックしSTM32CubeMXを最新状態にします。

※UM1718は、チュートリアルも豊富でSTM32CubeMXの重要マニュアルです。全356ページと分量は多いのですが、読む章を選択するなどして目を通すことをお勧めします。

スタンドアロン版はSTM32CubeMX更新が簡単で、1つのSTM32CubeMXで両方のIDEに生成ファイルを出力する時に便利です。

手順3 評価ボードMCUコアのライブラリダウンロード

評価ボードNucleo-G071RBのMCUコアは、Cortex-M0+です。STM32Fxと同じMainstream(≒汎用)MCUですが、新世代の汎用MCUです。
関連投稿:STM32G0x専用Edge MCUテンプレート開発

STM32CubeMXのHelp>Manage embedded software packagesでSTM32G0を選択し、最新版Package1.1.0をインストールします。

STM32G0インストール
STM32G0 MCU Packegae 1.1.0のインストール

手順4 ライブラリのファイル構成確認

STM32CubeMXは優れものソフトウェアで、IDEプラグインからスタンドアロン版へ途中変更してもデフォルトRepositoryディレクトリ(C:\Users\ユーザ名\STM32Cube\Repository)を変えなければ、プラグイン版Packagesの各MCUパッケージがスタンドアロン版へそのまま引き継がれます。

ただし今回のSTM32G0は、ライブラリファイル構成がSTM32F0/F1をインストールした時と一部異なります。

Repository/STM32Cube_FW_G0_V1.1.0\Projects\NUCLEO-G071RB\Templatesフォルダ内にTrueSTUDIOフォルダが無いのです(EWARM/MDK-ARM/SW4STM32は以前と同様有るが、UM1718にもTrueSTUDIO説明無し)。

残念ながら、手順3でインストールしたSTM32G0は、TrueSTUDIOへ生成コードを現状は出力できないようです😴。

SW4STM32の必然性
TrueSTUDIOではなくSW4STM32の必然性を示す結果となった

という訳で、手順4と5以降は、STM32G0がTrueSTUDIOへ対応した後に検証を行います。Communityによると次版のSTM32G0で対応予定だそうです。

STM32G0x専用テンプレート開発IDEに、SW4STM32からSTM買収後のAtollic TrueSTUDIOへの変更必要性を示すつもりが、今現在は、SW4STM32の使用を続ける必然性を示す結果となりました😴。

STM32CubeMXを使ったSTM32G0xとSTM32F0xの差異まとめ

TrueSTUDIOへ生成コードを出力しなければSTM32CubeMXに問題はないので、(個人的にはマルチOS対応SW4STM32が好きですし……気を取り直して…)、STM32CubeMXを使いSTM32G0xとSTM32F0xの違いをまとめます。

STM32G0xもSTM32F0xも共にMainstream、つまり、汎用MCUに属します。しかし、STM32CubeMXを使うと、評価ボード実装の同じ64ピンパッケージでも、電源ピン数やデフォルト利用の周辺回路が異なることが良く判ります。

Nucleo-G071RBとNucleo-F072RB差異
Nucleo-G071RB(左)とNucleo-F072RB(右)の利用ピン差異

Tips:STM32G0 1.1.0では、評価ボードNucleo-G071RB使用中のLD4(PA5)とB1(PC13)がPinout & Configurationに表示されません。その理由は不明ですが、手動で追加設定する必要があり上左図は設定済みのものを示しています。ちなみに、上右図Nucleo-F072RBは、LD2とB1がデフォルトで表示されます。

電源ピン(VDD/VSS)数

STM32G0xは、黄色で示された電源ピン(VDD/VSS)が1組、一方STM32F0xは4組あります。STM32G0xのCortex-M0+コアと70nmプロセスの結果、電力供給1組でも十分動作します。

不要になった電源ピンは、GPIOに変更し同じ64ピンパッケージでもSTM32F0xよりも多くの外部制御が可能です。

パッケージのピン配置

STM32G0xシリーズのパッケージピン配置が下図です。将来リリース予定の4パッケージピン配置は一貫しています。これにより、基板アートワークや周辺部品の配置も一貫した設計計画が立てられます。

電源ピンはどのパッケージでも1組で、左辺中央です。

STM32G0xシリーズパッケージピン配置(出典:STM32G0 and CubeMX Webinar)
STM32G0xシリーズのパッケージピン配置(出典:STM32G0 and CubeMX Webinar)

デフォルト利用周辺回路

STM32G0xのConnectivity(通信処理)は、デフォルトでLPUART1(Low Power UART、Stopモードからの再起動可)ですが、STM32F0xはUSARTです。STM32G0xもUSARTを実装していますが、低電力動作に適したLPUARTを推薦しているためと思います。

LPUARTとUSARTの差異(出典:STM32G0オンライントレーニング)
LPUARTとUSARTの差異(出典:STM32G0オンライントレーニング)

その他の差異

これら以外にも、STM32G0xは、USB Type-C™ Power Delivery controllerや2.5MspsのADC、メモリープロテクションなどIoT Edge MCU向きの周辺回路を実装済みです。

また、Nucleo-G071RB評価ボードのUSBはMicro-Bコネクタ、Nucleo-F072RBはMini-Bコネクタです。

USB Micro-BとMini-Bコネクタ(出典:ウィキペディア)
USB Micro-BとMini-Bコネクタ(出典:ウィキペディア)

まとめ

STM32G0x専用テンプレート開発に使うTrueSTUDIOとSTM32CubeMXインストール方法を示し、そのSTM32CubeMXを使ってSTM32G0xとSTM32F0xの差異を示しました。

STM32CubeMXは2重起動可能です。STM32G0xとSTM32F0xそれぞれのSTM32CubeMXプロジェクトファイルを同時に開いて比べると、各デバイスのデータシートで比べるより差異が早く良く判ります。

STM32G0x専用テンプレート開発IDEには、当面、筆者が好きなSW4STM32が適していることも判りました。

STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰

STM32G0x専用テンプレートの開発着手にあたり、汎用STM32Fxテンプレート開発から2017年9月のテンプレート発売までをざっと振り返り、今回の専用開発との差分になりそうな箇所を示しSTM32G0x専用テンプレート開発全体像を俯瞰、力を入れる投稿予定を示します。

汎用STM32Fxテンプレート開発History

汎用STM32Fxテンプレート開発時の主な投稿と内容
年月日 投稿タイトル 主な内容
2017年5 STM32マイコンIDE構築 SW4STM32の構築
2017年6 STM32CubeMXの使い方 HAL APIの選定理由と利用法
STM32CubeMX生成ファイルのユーザ追記箇所 HAL利用時のユーザ追記箇所
2017年8 評価ボードの利用ピン指針 Baseboardとの接続指針
2017年9 STM32Fxテンプレート発売 汎用STM32Fxテンプレート発売

2017年5月当時は、4種ある無償IDEの中からマルチOS(Windows/MacOS/Linux)対応、仏/AC6社のSW4STM32を使いました。2017年末、無償IDE TrueSTUDIO提供のスウェーデン/Atollic社がSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)に買収され、公式にはTrueSTUDIOがSTM32マイコンの純正無償IDEに昇格(!?)したようです😅。

関連投稿:STM32のStep-by-Step Guideの、気になる点1:TrueSTUDIO参照

STM32G0x専用テンプレート開発IDE:TrueSTUDIO

そこで、STM32G0x専用テンプレート開発には、TrueSTUDIO無償版(Windows/Linux対応、MacOSなし)を使います。現在SW4STM32を使っている方にも判り易いようにTrueSTUDIOとの差分を説明する予定です。

但し、筆者はSW4STM32利用中の開発者が、あえてTrueSTUDIOに変更する必要は、今のところ少ないと考えています。ソフトウェア開発の主役は、STM純正コード生成ツールSTM32CubeMXだからです。最新STM32CubeMXを使えば、IDE差は少ないと今は思っています。

勿論、TrueSTUDIOの買収昇格時点でBetterなのは当然だと思います。専用テンプレート開発を通じBetterよりもSW4STM32からTrueSTUDIOへ変更するMust条件が判れば、本ブログでお知らせします。

Tips:STMの日本語資料強化の一環なのか、TrueSTUDIOはEclipseベースIDEなのにインストーラは日本語対応、メニューも日本語になっています(下図参照)。但し、C\ユーザ名\Atollic\TrueSTUDIO for STM32 9.3.0\Manuals\Generalにある重要マニュアル5種は全て英文です。例えば、SW4STM32プロジェクトのTrueSTUDIOインポート方法や注意点は、User GuideのP75~に英文で詳しく説明されています。

日本語対応のTrueSTUDIOメニュー
日本語対応のTrueSTUDIOメニュー

STM32CubeMX:LL API(Application Programing Interface)利用

STM32G0x専用テンプレートは、汎用STM32Fxテンプレート開発で使ったHAL(Hardware Abstraction Layer)APIに変わりLL(Low Layer)APIを使います。LL利用により、STM32CubeMX生成ファイルの初期化コードやユーザ追記箇所がHALとは異なります。LL APIの利用は、専用テンプレートの肝ですので、ブログで詳しく説明します。

IoTサービス例:2.5Msps12ビットADC必須+α

汎用STM32Fxテンプレートは、Baseboardと評価ボードを接続し、基本動作完成形のBaseboardテンプレートを開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、Arduinoコネクタに何らかのIoTサービスを示すシールドを接続する予定です。しかし、最悪の場合、汎用と同じBaseboard接続にする可能性もあります。

ただし、特に2.5Mspsの12ビットADCは、3タイプある全STM32G0xデバイスに実装済みで、IoTサービス必須機能ですので、このADCを活かしたIoTサービスは実装必須にします。その他のIoTサービスに関しては、今後決めます。

2.5Msps12ビットADC (RM0444より)
2.5Msps12ビットADC (出典:RM0444)

STM32G0x専用テンプレート発売:2019/3Q~

汎用STM32Fxテンプレートは、5か月の期間で開発しました。STM32G0x専用テンプレートは、HALよりもLL API利用難易度が高いことを考慮すると、最低でも同じ開発期間が必要だと思います。

STM32G0x専用テンプレート開発全体像俯瞰の結果

以上、STM32G0x専用テンプレート開発の全体像を俯瞰しました。
SW4STM32からTrueSTUDIO IDEへの変更必要性、STM32CubeMX のLL API利用法、全STM32G0xデバイス実装済みでIoTサービス必須機能2.5Msps12ビットADC使用法、これらを読者の方々が理解できよう力を入れて投稿記事を作成します。