Node-REDとGenuino 101

Node-RED

トラ技2016年6月号記載のNode-REDは、強力な開発ツールです。ターゲットは、本ブログのマイコンやシングルボードコンピュータなど全てを含むことができます。但し、あくまでNode-RED動作環境の下での動作が前提です。

つまり、WindowsやLinuxなどのリッチOSアプリの1つがNode-REDで、これを使えば、Raspberry Pi 3とArduino/Genuino 101両方で動作するプログラムが開発できます。マイコンの動作オブジェクトコードは(今のVersion0.13.4版では)出力されません。

今回は、このNode-REDがデバイスに依存せずにプログラミングできる仕組みとprintfデバッグについて考察します。

デバイス非依存性

マイコン開発で苦労する部分は、センサやモータなどの個別制御プログラムです。しかし、この制御プログラムが予めライブラリで提供されていて、しかも、制御する側のデバイス、マイコンかシングルボードコンピュータかもGUIで簡単に選択できれば、苦労はかなり減ります。

残りの部分は、どの順番でどのように個別制御プログラムを動かすかというフローチャートのイメージに近い部分です。このフローチャートに近い部分を、Node-REDでは「flow」と呼び、ブラウザを使ってGUIで開発します。

Node-REDのflow例
Node-REDのflow例

ChromeやFirefoxなどのお馴染みのブラウザが使えますので、Windows であってもiOSでも、Linux:Raspbianであっても開発できます。RaspbianをインストしたRaspberry Pi 3もデフォルトブラウザはEpiphanyですが問題なく動作します。

トラ技6月号のP65の図8:GPIOライブラリnode-red-contrib-gpioとJohnny-Fiveの位置づけが、「デバイス非依存性」を端的に示しています。

図8で示されたライブラリとNode-REDのFlowは、オンラインFlowライブラリで多くのサンプルが公開されており、6月4日時点で778個です。☑nodeがライブラリです。

トラ技では、P66のArduino系ボードの中にArduino/Genuino 101は入っていませんが、Firmateプロトコルスケッチをボードへ書き込めますので記事と同様に動作します。このFirmateもCPUやマイコンボードに依存しないプロトコルなので、対象ボードがFirmateさえサポートすればNode-REDから制御できます。

Arduirno/Genuino 101でFirmateプロトコルスケッチを利用
Arduirno/Genuino 101でFirmateプロトコルスケッチを利用

このように、制御に必要なflowサンプルやnodeライブラリを部品として全てネットからダウンロードでき、この部品の加筆修正も簡単にできるNode-REDは魅力があります。ソフト開発時にハード準備が間に合わないことは良くあることですが、実ハードがなくても代替ハードで動作確認し、最後にGUIでポート番号を変更しさえすれば実ハードでも動作することが可能だからです。

printfデバッグ

Arduino IDEも同様ですが、Node-REDには、本格的なデバッガ機能が(今のところ)ありません。

プログラマがprintf(Node-REDは、デバッグ出力ノードに相当)を使って変数などを一時出力してデバッグすることはできますが、動作を一時停止しRAM内容をダンプしたり、変数を変更後に停止位置から再実行したりすることは簡単にはできません。

printfデバッグは、ダウンロードした部品が完全でバグが無いブラックボックスとして扱える場合には効果的かもしれません。例えば、ハードウエア開発で、74シリーズロジックを組み合わせて開発する場合に、ロジックにバグがあると考える開発者はいません。自ら開発したハードをデバッグする際には、プローブとオシロスコープを使って、ロジック間の信号を読み解きバグ取りをします。このプローブがprintfに相当します。

少し前は、マイコンソフト開発でもprintfデバッグが盛んでした。デバッガは高価だったからです。しかし現在は、シリアルーUSB変換機能と兼用でデバッガ機能を持たせた低価格マイコンボードが多数あります(LPC、Kinetis、Cypressマイコンボードなど弊社利用の評価ボード)。

ソフトウエアもハードウエアのように部品化が進めば、printfデバッグで完成する時代がくるかもしれません。しかし、かなり先の話だと個人的には思います。
個別マイコンボードのデバッガ機能がプラグインで追加できる開発ツールを望んでいます。EclipseベースのIDEは、この要望に最も近いのかもしれません。

Arduino/Genuino 101用マイコンテンプレート

因みに、Arduino/Genuino 101のIDEは、今のところArduino IDEです。

Intelは、デバッグ機能付きのEclipseベースIDE、Intel® System Studio for MicrocontrollersのQuark™ SE版をアナウンスしていますが、未だにリリースされていません。私は2016年版Eclipse:Neonをベースに使うと思いますので、今少し時間がかかるかもしれません。

従って、Arduino/Genuino 101用のマイコンテンプレートの発売ももう少し後になります。昔ながらのprintfデバッグには、戻りたくないというのも本音です。ご容赦ください。

計算能力とIO速度によるポジショニング・マップ

トラ技2016年6月号は、MPU/SCBデバイスのRaspberry Pi特集号でOSにLinuxのRaspbianを適用し、

  1. IoT開発環境Node-REDによるMCUとMPU/SCBの垣根を超えたブログラミング
  2. PythonによるMPU/SCBのIO制御

などが楽しめる内容です。P45にコンピュータデバイスのポジショニング・マップが記載されています。本ブログの対象デバイスMCUとMPU/SCBの特性差が解りやすいので引用させていただきました。

IoT制御デバイスの固定ページへも同図を追加しました。特性詳細は、このページをご覧ください。

MCU & MPUSBC Poisoning Map
MCU & MPUSBC Poisoning Map(トラ技2016年6月号 P45より)

英語環境のすすめ

ルネサス2015会計年度と第4四半期(2016年1月~3月期)業績の解説記事から、マイコン開発者に英語環境をすすめる理由を示します。

汎用向け売上げ2割減、日本市場比率44%へ減少

2015年半導体シェアは、先のブログのようにNXP1位、ルネサス2位が確定したようですが、解説記事によると「産業・家電」、「OA・ICT」、「汎用製品」の3分野からなる「汎用向けの売上げが2割減、売上げに占める日本比率は、54%から44%へ減少」したそうです。また、「従業員数も設立当初より4割削減」だそうです。

(日本語)ガラパゴス環境の先行き

汎用マイコンを扱う本ブログは、各社開発環境を一覧表で示しています。これを見ると、ルネサス独自開発のCS+以外は全てEclipseベースのIDEです(Arduino IDEは除外)。また、マイコン開発ボードもArduino互換が標準となりつつあります。

つまり、マイコン開発環境のデファクトスタンダードは、「ARMコア+Eclipse+Arduino+英語」です。開発者の情報交換コミュニティも英語です。

デファクトスタンダードが最適とは言いませんが、特に「汎用の分野」では、ガラパゴスよりもスタンダードが良であることは間違いありません。

Apple iPhoneは、圧倒的大多数を市場で占めているのでガラパゴスでも生き残れます。

地震国日本の部品生産工場が停止した際、連動して製品生産も停止する自動車は、他社流用や使いまわしができない専用品を使っているからです。

コスト重視のマイコン制御系もまた自動車のように最終的には製品専用品になるかもしれません。しかし、マイコン開発者は、少なくとも日本語に拘らず「英語の開発環境に慣れていく」必要があると思います。記事から抜粋したルネサス売上高推移の青部分(日本市場比率)が示す今後を予想してみてください。

日本市場比率の推移(解説記事の図に加筆)
日本市場比率の推移(解説記事の図に加筆)

記載IoTデバイス、IDE、テンプレート動作ボード一覧追加

ブログ記載の「IoT制御デバイス」、「マイコンIDE」、「テンプレート動作ボード」が一目で解る表を追加しました。記載IoTデバイスのプルダウンメニューで表示します。

ブログ記載IoTデバイスのプルダウン表示
ブログ記載IoTデバイスのプルダウン表示

これらは、Wordpress固定ページ機能を使っていますので、通常ブログ記事よりも大きな範囲で表示します。

今後、デバイス追加や対象IDEが変化した時、テンプレート動作確認ボードを追加した時は、この表を随時更新していきます。最新のブログ対応状況をチェックする時などにご利用ください。

EclipseベースのマイコンIDE

4月はマイコンIDE関連のブログ記事を3件記載しました。まとめにEclipseベースのマイコンIDEを概説します。

統合開発環境:Integrated Development Environment, IDE

ソフトウエアを開発するには、ソースを記述する「エディタ」、記述ソースをターゲットコードへ変換する「コンパイラ」、コードをターゲットへダウンロードしデバッグする「デバッガ」…など色々なツールが必要です。これらツールをひとまとめにパックしたのが、統合開発環境:IDEです。

Eclipse

Eclipse(「イクリプス」または「エクリプス」)は、IBMによって開発された統合開発環境の一つ。高機能ながらオープンソースであり、Javaをはじめとするいくつかの言語に対応(Wikipediaより抜粋)。

オープンソース、OS非依存、多言語対応、プラグインによる機能追加などの特徴を持つEclipseは、マイコン開発のみならず様々な「ソフト開発環境のフレームワーク」として世界中に普及しています。

V4.5が現在の最新版で、コードネームはMars(火星)。今後のリリース予定が下表です。

eclipse schedule (Wikipediaより抜粋)
バージョン リリース日 コードネーム コードネームの由来
4.4 2014/06/25 Luna 月を意味。
4.5 2015/06/24 Mars 火星を意味。
4.6 2016/06予定 Neon 元素の一つ、ネオンを意味。
4.7 2017/06予定 Oxygen 元素の一つ、酸素を意味。

多様性と差別化、OS非依存

多種多様なマイコンをベンダ各社は供給中です。

EclipseベースのIDEは、フレームワークはそのままで、自社の多様なマイコン毎に異なる「APIコード生成ツール」や「コンパイラ」の、その部分のみをプラグインで追加/交換できますので、マイコンベンダにとって好都合です。

さらに、他社との差別化機能になるプラグインの開発に労力を集中できます。APIコード生成ツールでは、NXP(旧Freescale)のProcessor ExpertやCypressのGenerate Application、ルネサスのコード生成などがその例です。

MCUコアがARM Cortex-M0/M0+で同じでもマイコンの周辺回路は各社異なります。この異なる周辺回路を活かすAPIコード生成ツールとその使いやすさが差別化ポイントです。

また、WindowsやiOSへも使えるOS非依存性も開発者に歓迎されています。

e2 studioの例

以上のことを知ったうえでEclipseベースのIDEの1つルネサスのe2 studioのソフトウエア構成図を見ると、内容がよく理解できます。

e2 studio plugin
e2 studio plugin(ルネサスe2 studio説明より抜粋)

マイコンIDEの主流はEclipseベースのIDEですが、マイコンIDE早期習得のコツ、ポイントのページで示したように、IDEで本質的に差が生じるのは「マイコン機種依存のAPI生成ツール」とした根拠をここでは示しました。

CS+ V4、e2 studio V5へ更新

ルネサスツールニュース2016年4月16日号でIDEのCS+がV4、e2 studioがV5の更新が発表されました。
更新は、通常手順で問題ありません。しかしCS+は、セキュリティソフトAvastとの相性問題か、脅威検出が発生しました。

更新方法

CS+は、アップデートマネジャの起動で更新されます。但し、ラピッドスタート有効時は、一旦CS+を終了しアップデートマネジャ単独での処理が必要です。

e2 studio V5(Eclipse 4.5:Marsベース)は、V5のインストーラをダウンロードし、新規インストールが必要です。前版からは、V5へ更新できません。

これはEclipseベースのIDEでは周知のことで他社、例えば旧FreescaleのKinetis Design Studioも同様でした。

更新結果

CS+は、Windows 8サポートが終了し、Windows 10または8.1利用が必須となりました。
また、CS+起動時にMy Runesasへのログインダイアログが表示されるようになりました。ログインすると、同意確認ダイアログが表示されます。Windows 10の情報収集と同じような機能だと思います。

MyRunesas Login and Confirmation
MyRunesasログインと同意確認

気持ちが悪い人は、CS+起動後にヘルプ>プライバシー設定(Y)…で同意の変更が可能です。

Privacy Setting
プライバシー設定変更

e2 studioは、V5インストーラ起動後、アップグレードか別フォルダへのインストかを選択し実行します。追加ソフトウエアで、CC-RLコンパイラやKPIT GNU RL78コンパイラが選択インスト可能です。

e2 studio v5 setup
e2 studio v5セットアップ

更新完了で下図となります。

e2 studio v5
e2 studio v5

AvastとCS+の相性

旧CS+では生じなかったセキュリティソフトAvastから脅威検出が発生しました。この現象は、過去のCS+更新時にも生じた経験があります。

Avast Block Report
Avastがブロックした脅威

今回は、「スキャンから除外するリストに追加」で対処しました。Avast以外のセキュリティソフトでも発生する可能性がありますので、参考にしてください。

e2 studio所感

e2 studioをCS+の代わりにRL78/G1xマイコン開発で使う必要性は、「今のところ無い」と思います。

「なれ」の問題もありますが、コード生成ツールや、デバッガの基本的な使い方などは、CS+と同じであることが理由です。敢えて差分を示すと、今回のツール更新方法やCコンパイラが選択できること、デバッガ接続方法などです。
また、他社と比べベースとなったEclipse IDE更新が数か月遅れなのも気になります。

最近のルネサスサンプルコードは、CS+とe2 studioの両プロジェクトが一緒に提供されます。狙いはe2 studioの普及だと思います。

汎用のIDEであるEclipseになれるという目的でe2 studioを使うのは良いかもしれませんが、ルネサスMCU専用のIDEであるCS+よりも使いやすいとは言えません。

いずれにせよ、e2 studioは、要観察を続ける予定です。

マイコンIDE更新

扱うMCUデバイスの追加、WindowsやiOSなどのOS変更、Eclipseそのものの変更、バグ修正など様々な要因によりマイコン開発環境:IDEの更新は発生します。今回は、マイコンIDE更新について解説します。

更新通知と更新理由

マイコンアプリケーションソフト開発中ならば、リスクが増える可能性もあるIDE更新は避けたいものです。
このため「開発者が更新をするか否かを選択」できるのがマイコンIDEの特徴です。Windowsと大きく異なる点ですね。

更新判断には、「更新が発生」したか、「更新の理由」は何か、この2つを知る必要があります。この情報をIDEのWelcome画面のWebリンクで教えてくれるのがEclipseベースのIDEです。NXPのLPCXpressoの例を示します。

LPCXpresso Welcome page
LPCXpresso Welcome page

赤矢印のリンク先をみると、最新版IDEと、変更内容などが解ります。使用中のIDEと版数が異なる場合には、この内容を読んで更新判断ができます。新旧LPCXpressoは、緑囲いで示した版数毎に別フォルダへインストールされるので、IDE更新リスクがフォルダ内に閉じ込められるので安心です。

また、NXPに買収された旧FreescaleのKinetis Design Studio: KDSの例が下図です。Welcome画面に加え、Help>Check for Updatesで更新確認と新版インストールまでバックグラウンドで可能です。この機能は、LPCXpressoにはありません。

Kinetis Design Studio Check for Updates
Kinetis Design Studio Check for Updates

但し、私の環境では、ベースとなるEclipseのメジャー更新が関係しているのかもしれませんが、KDS V3.1からV3.2への更新ができませんでした。V3.2更新は、別途インストーラで可能です。やはりIDE更新確認ツールがあっても、時々サイトでIDEの最新版確認は、必要だと思いました。

また、CypressのPSoC Creatorは、Update Managerツールで更新確認とインストールができます。旧版はアーカイブ保存されるので、万一最新版にトラブルが発生しても安心です。

Cypress Update Manager
Cypress Update Manager

以上3社のマイコンIDEは、どれもEclipseベースのIDEですが、更新方法や旧版の扱いは各社異なります。

一方、ルネサス独自仕様のIDE:CS+もアップデート・マネジャーツールで更新します。独自仕様なので、細かい更新内容確認や、一部選択更新なども可能です。ツール・ニュースなどで更新、バグ情報を知らせてくれるのも役立ちます。
また、更新前に、「開発ツールをパックして保存(K)…」を実行すると、更新トラブル対策も可能です。

Runesus CS+ Packing tool
Runesus CS+ Packing Tool

マイコンIDE更新を安全にするには

マイコンIDEの更新トラブル回避には、OS起因でない場合は、旧版のIDEへ戻せることが必要です。また、Eclipseのメジャー更新時などは、操作方法が変わることもあるので注意が必要です。
開発案件のキリが良い時期に更新するのが安全策でしょう。

マイコンIDE開発経験を活かすには

弊社マイコンテンプレートで使用中の各社IDE特徴を示します。マイコンIDEは、Eclipseベースに集約されつつあるようです。今回は、同じベースでもIDEの更新方法が異なることを示しました。

これは、EclipseベースのIDEを使う時に覚えておくと役立つのが、各社共通のエディタやデバッグなどのコア機能であることを暗示しています。他社IDE使用時に、この経験が活かせるからです。

MCU IDE Comparison
マイコンIDE比較

マイコンIDE習得のコツやTipsは、コチラのページにもまとめています。参考にしてください。

CS+のCS78K0Rコンパイラ消える?

ルネサスツールニュース2016年4月1日号で、CcnvCA78K0Rが発表されました。

これは、RL78の統合開発環境CS+のCA78K0RコンパイラCソースを、CC-RLコンパイラCソースへ変換するツールです。58ページからなるユーザーズマニュアルも公開中です。

コンパイラ一本化への布石

統合開発環境:IDEのコンパイラが2本あるのは、使う側、提供する側双方にとってメリットはありません。

まして、CC-RLが性能では優れているので、CA78K0Rを使い続けるのは既に顧客へ提供済みのCソースを使うからでしょう。

本ツールは、そんなCソースをCC-RL Cソースへ変換します。CA78K0Rコンパイラは、半導体デバイスでは良くあるディスコン(discontinue)にして、CC-RLコンパイラへ一本化するための布石だと思います。

IDE

ルネサスは、統合開発環境IDEも独自開発のCS+と、ワールドワイドで一般的なEclipseベースのe2 studio、さらにRenesas Synergy™ 開発環境(ISDE)やHewなども提供中です。

要は、デバイス開発に使いやすいIDEが良いのですが、誰とどのように開発するか等の条件によりルネサスは、様々な解を提供しているのです。Synergyは別物としても、何種類も提供するのは大変でしょう。他ベンダがEclipseベースで一本化されているのとは、対照的です。

ベースとなるのがEclipseでも、各社IDEのAPI関数を生成するツールは全く異なります。ルネサスのAPI生成ツールが慣れもあって使いやすいので、この特徴を活かした発展を望んでいます。

マイコンIDEを早く効果的に習得するコツは、コチラのページにまとめています。

Arduino/Genuino 101

前記事紹介の国内名称Genuino 101こと「Arduino/Genuino 101マイコンテンプレート」の開発に着手します。Arduino IDEのLチカサンプルの問題点を指摘し、マイコンテンプレートがどのように解決するかを示します。

Arduino/Genuino 101開発ボード

Bluetooth LEに6軸加速度センサも内蔵した32MHz動作インテルCurie、ROM/RAM=192KB/24KBのMCUが実装されたArduino開発ボード、これがArduino/Genuino 101です。

Quark SEコアにSoC: System on a ChipしMCU単体ROM/RAMは、384KB/80KBですが、開発環境Arduino IDEが使う残りがユーザプログラマブル領域で192KB/24KBとなります。実にROM50%、RAM70%をIDEが使う!というものですが、その理由は後で考察します。

データシートFAQによると、2016年3月にIntel® IQ Softwareというパッケージでサンプルアプリケーションや専用RTOSなども提供するそうですが、現時点でリリースされていません。

Arduino IDE

Intel IQ Softwareリリースまでは、無償のArduino IDEを使います。最新版1.6.9をダウンロードしインストール、さらにArduino/Genuino 101動作のためIntel Curie Boards by IntelをボードマネジャでインストするとArduino IDEが使えます。

Arduino IDEは、スケッチエディタ、コンパイラ、開発ボードへのダウンロード(何故かArduinoではアップロードと呼ぶ)ができますが、デバッグ機能はありません。

Arduino/Genuino 101ボードとPCを接続し、ボードマネジャーでArduino/Genuino101、接続したシリアルポート番号を設定すれば準備完了です。ファイル>スケッチの例>01.Basics>Blinkを選択して➡アイコン: “マイコンボードに書き込む” をクリックすると、緑LEDが1秒毎に点滅の、いわゆるLチカ動作が確認できます。

Arduino IDE Setting for Arduino 101
Arduino IDE Setting for Arduino 101

スケッチ

「スケッチ」とはArduino IDEプログラム言語の名称で、ソフトウェア開発に不慣れなアーティストでも簡単にプログラミングできるように工夫された「簡易/変則? C言語」と個人的には理解しています。
「絵を簡単にスケッチする」からその名が来ているかもしれません。ヘルプ>「このソフトの使い方について」クリックで、スケッチが説明されます。ランゲージレファレンスも参考になります。

スケッチ重要事項をまとめます。

  • 2関数、setup();初期設定と、loop();無限ループで全体処理を構成
  • IDEでオレンジ表示の既成API関数と、if then else 等の基本的C言語で処理ロジックを作成

Arduino IDEが、使用する開発ボードに応じたAPI関数を全て用意することや、簡易C記述を可能とする仕掛け、これがROM/RAMをIDEが多量に使用する原因だと思います。しかし残りが192KB/24KBならユーザ領域としては、十分で問題はありませんが…。

Lチカサンプル問題点

Lチカサンプル、Blinkのスケッチソースが下記です。delay(1000)を使って1秒毎の点滅処理を行っています。点滅間隔変更は、delayパラメタ1000を変えれば良いことが解ります。但し、delay処理中は、他の動作はできません。マルチタスク処理は困難です。

Blink source
Blink source

そこで登場するのが、ファイル>スケッチの例>02.Digital>BlinkWithoutDelayです。

BlinkWithoutDelay source
BlinkWithoutDelay source

今度は、delayを使いませんので52行の1秒経過を判断してLEDをトグル点滅させます。トグル点滅以外のループ時間は、他動作が可能ですが、これにも問題があります。

Curieなどが活躍するIoTマイコンは、省電力動作が必須です。制御対象のセンサやGPIOデータ処理は、IoTマイコンにとっては遅い処理で、この遅い処理完了を待つ間は、MCUを省電力動作させバッテリや電力消費を抑えるのです。1つ1つのマイコン消費電力は小さくても、数億個のマイコンが動作するIoTの世界では、低電力動作は無視できません。

結局、BlinkWithoutDealyの方法も、無限ループが回りっぱなしで省電力動作向きではありません。

マイコンテンプレート

ユーザ処理を時分割で起動するのがマイコンテンプレートです。

起動したユーザ処理終了後や、起動処理が無い時は、自動的に省電力動作となります。組込みRTOS:Real Time Operating Systemにも同様な機能がありますが、RTOSほど複雑でなく、サイズ自体も小さいのが特徴です。詳しくは、マイコンテンプレートのサイトのテンプレート利用Tipsなどを参照してください。

既に5種のマイコンにテンプレートを販売中です。開発するのは、Arduino/Genuino 101開発ボード対応のマイコンテンプレートです。進捗状況などについて、本ブログに記載するつもりです。

先に示したIntel IQ Softwareがリリースされれば、RTOSも含まれていますので、そちらの方が良いと思う開発者の方も多いと思います。しかし、RTOSを使いこなすのは簡単ではありません(RTOS関連記事も参照)。
また、Windowsがそうであるように、OS自体の動作が不明で、さらにバグがある可能性も否定できません。

個人や小人数で開発するような規模のプログラムには、マイコンテンプレートは中身の動作が全て開発者に見え、カスタマイズも可能なので向いていると思います。

* * *

※弊社マイコンテンプレートサイトのページ選択をタブメニューに変更しました。従来よりも記事表示エリアが大きくなり、より見やすくなっております。
※ブラウザのキャッシュなどで表示がおかしい場合には、F5:再表示すると修正されます。お勧めのブラウザは、Firefoxです。

IoTコアにIntel入ってる

Intel製IoTマイコンコアのCurie 32MHzを搭載した開発ボード「Genuino 101」が4880円で発売されました。

Genuino 101
Genuino 101

Arduino UNO互換でArduino IDEが使え、右下のBluetooth LEアンテナ実装でROM/RAM=196KB/24KBです。

インテルのIoTコアデバイス

インテルは、先にIoT向けコンピュータEdisonを発表済みで、これを使った開発ボードも販売中です。
つまり、マイコンとIoTコンピュータ両方のデバイスを供給し、かつ、入手性も良い開発キットを提供できる半導体ベンダがインテルとなりました。

私が想定しているIoTデバイスの構成は下図です。

IoT Devices
IoT Devices

マイコンとIoTコンピュータ間は、Bluetooth LE:BLE通信です(理由はこちらの記事)。

BLEの複雑なプロトコルスタックから、たとえBluetooth認証マークが付いていても複数ベンダが混在する空間で、MCUとMPU/SBC間の無線BLE通信が上手く行くかは、やってみないと判りません。杞憂ですが、同一ベンダ同士でのみ安定に通信できる可能性もあります。

そうなると、パソコンCPUのデファクトスタンダードがインテルであるように、IoTコアも「インテル入ってる」つまり、インテル独占状態になるかもしれません。自社デバイス生産能力も持っているインテルですので供給価格の安さも含めて他ベンダには脅威でしょう。やはり杞憂ですね…(^_^;)。

本ブログのIoTデバイス

Curieマイコンも本ブログの対象とする必要がありそうです。
こちらの固定ページに、対象デバイスの特徴などを簡単に列記しておりますので合わせてご覧ください。