PSoC 4100S CapSenseの使い方(その2)

Cypress PSoC 4 MCU内蔵タッチセンサ:第4世代CapSenseの使い方、2回目は、ハードウェアのタッチ・パッドやスライド・バー基板開発時のガイドラインを示します。と言っても、ソフトウェア開発に最低限必要なパッド仕組みを説明します。読者にソフトウェア開発者が多いからです。ハードウェアのPCBアートワーク担当者向けには、情報リンク先を示しています。

PSoC 4100S CapSenseの使い方(第2回内容)
PSoC 4100S CapSenseの使い方(第2回内容)

参照情報:AN85951 PSoC® 4 CapSense® Design Guide.pdf(日本語版)

タッチUIのメリット

メカニカルなボタンやスイッチでは、チャタリングや経年劣化、水濡れへの対応が必要です。タッチUIは、これらに対して有利です。また、パッド形状の自由度が高いので、スマホで一般的になった直感的なタッチ操作による優れたユーザインタフェース(UI)が実現できます。

これらタッチUIは、指をタッチ・パッドに近づけた時に生じる静電容量の変化をPSoC 4000S/4100S内蔵のCapSenseで検出し実現します。従って、確実に静電容量変化を生むパッドの基板設計が重要です。

タッチ・パッド、スライド・バー設計ガイドライン、AN85951の6.4章

静電容量変化の検出には、自己容量式(self-capacitance)、相互容量式(mutual-capacitance)という2方式があります。各方式の仕組みとパッド例が下図です。

自己容量式(左)と相互容量式(右)の仕組みとパッド例
自己容量式(左)と相互容量式(右)の仕組みとパッド例(出典:AN85951)

自己容量式は、1パッドに1個のGPIOを使います。相互容量式は、1パッドにTxとRxのGPIOペアが必要です。Txは複数ボタンで共有も可能で、自己容量式よりもGPIOを多く使うぶんタッチ検出性能が高くなります。電卓やキーパッドのような12個ボタンでも、下図のように7本のGPIOで実現できます。

マトリックス・ボタンのパッド例
マトリックス・ボタンのパッド例(出典:AN85951)

スライド・バーは、操作入力が増加、または減少する場合に用います。また、タッチ・パッドは、XとYの2次元で指位置を検出する方法で、X/Y各軸にスライド・バーを利用した例と考えれば良いでしょう。

※2019年6月現在、PSoC CreatorのCapSenseスライド・バーは、自己容量式のみをサポートしています。相互容量式は、今後のバージョンでサポート予定だそうです(AN85951、English、04/30/2019、P19)。

自己容量式スライド・バーのパッド例
自己容量式スライド・バーのパッド例(出典:AN85951)

このように、入力操作に応じたパッドを基板上にパターン設計(アートワーク)します。また、タッチ部分の基板保護のため、PCB表面に非導電性のオーバーレイ素材(タッチ表面材)を付けます。

CapSenceハードウエア構造
CapSenceハードウエア構造(出典:AN85951)

詳細なPCBレイアウト・ガイドラインは、前出AN85951の6.4章や、AN64846(日本語版)に記載されています。アートワーク担当者は参照してください(本稿は、ソフトウェア開発者が対象ですので、ガイドライン詳細説明は割愛いたします)。

このガイドラインに沿ってPCBアートワークを行えば、確実に静電容量変化を生むタッチUIパッドが開発できます。

評価ボードのパッド形状理由

本開発で用いる評価ボード、CY8CKIT-145-40XX PSoC 4000S CapSense Prototyping Kitのパッド形状が、なぜこんなカタチになっているか、前章の説明でソフトウェア開発者に理解できたと思います。

PSoC 4000S CapSense Prototyping Kit
タッチ・センサー基板付きで$15と安価なPSoC 4000S CapSense Prototyping Kit

つまり、上側の3パッドは、相互容量式で共有TX(1.3)と左からRX(1.6)、(1.5)、(1.4)の合計4GPIOを使います。下側は自己容量式のスライド・バーで、左から(0.6)、(0.3)、(0.2)、(0.1)、(0.0)の5GPIOを使います。TX(2.6)パターンはありますが、スライド・バーは、ソフトウェアは現在の自己容量式のみ対応です。但しハードウェアは、既に相互容量式に対応済みなのです。

パッド上下のLEDは、指タッチを検出した時に点灯させるインジケータです。また、オーバーレイ素材がパッド基板上に装着済みであることも判ります。

Capsenseパッド基板上のオーバーレイ素材
Capsenseパッド基板上のオーバーレイ素材

ガイドラインに沿って設計済み評価ボードの上側タッチ・パッド、下側スライド・バーの各パッド基板は、簡単に切離しができます。切離したパッド基板を、トラ技付録PSoC 4100S基板へ接続し、PSoC 4100S内蔵CapSenseでも開発したテンプレートを動作させる予定です。

CapSenseの使い方(その2:PCBハードウェア)まとめ

ソフトウェア開発者が最低限知るべきCapSenseのPCBハードウェアの使い方を示しました。

  1. タッチUIは、指をパッドに近づけた時に生じる静電容量変化をCapSenseで検出。このため、確実に静電容量変化を生むPCBハードウェア:パッド設計が重要。
  2. ソフトウェア開発者向けパッドPCB設計ガイドライン要旨を示し、評価ボードパッド形状の理由と、自己容量式(self-capacitance)、相互容量式(mutual-capacitance)のGPIO差を説明。
  3. PSoC 4000S評価ボードのパッド基板を切離し、トラ技付録PSoC 4100S基板と接続。 PSoC 4100SのCapSenseでも開発テンプレートを動作させ、PSoC 4000S/4100S両方対応CapSenseテンプレート化を図る。



PSoC 4100S CapSenseの使い方(その1)

CypressのPSoC 4 MCU内蔵のタッチセンサ:最新の第4世代CapSenseの使い方を何回かに分けて投稿します。目標は、従来のメカニカル入力インタフェース:スイッチやボタンに変わる、新しいタッチユーザインタフェース(タッチUI)入力処理専用のテンプレート開発です。

操作性や装置全体の印象に大きな影響を与えるユーザフレンドリーなタッチUIを、低開発リスク、低価格で実現するこのテンプレートは、競合他社との差別化に役立つと思います。

タッチユーザインタフェーステンプレート
タッチユーザインタフェーステンプレート。ボタンからタッチ・ベースへ変化したユーザ入力処理用PSoC MCUと、それ以外の2MCU構成。プロトタイプ開発速度向上とユーザフレンドリーが狙い。

第4世代CapSense特徴(第3世代比)

・タッチ検出性能向上 → 検出感度、反応特性改善
・木材、厚いアクリル材がタッチ表面材でも反応 → デザイン幅広がる
・液量センシング可能 → シャンプー、薬品ボトル液面検出可能
・自己容量方式と相互容量方式の両方対応 → 近接センサが多くても対応可能
・低消費電流化 → センサ毎に6uAから3uAへ半減

出典:静電容量タッチセンサの性能を大幅改善、対応するマイコンを2製品投入

CapSenseデータシート Version 6.0最初のページに、CapSense v6.Xコンポーネント(=コントローラ)は、v2.Xコンポーネント以前との後方互換は無いと明記されています。また、古いコンポーネントや第3世代CapSense利用経験が有る方のために第4世代マイグレーションガイドもあります。

本稿は、最新の第4世代CapSenseを使い、初めてタッチUI開発する方を対象とします。この第4世代CapSense内蔵MCUは、PSoC 4000S、PSoC 4100S(トラ技付録基板実装)、PSoC 4100S PlusとPSoC Analog Coprocessorです(2019年6月現在)。

低価格PSoC 4000SとタッチUI評価ボード

トラ技2019年5月号で紹介された第4世代CapSense内蔵MCUは、PSoC 4100Sです。同じCortex-M0+コアですが、機能を絞ったのがPSoC 4000Sです。両者の主な仕様差を表1に示します。

関連投稿:GWお勧め本:トラ技5月号PSoC 4100S基板付きで販売中

トラ技付録基板PSoC4100S仕様とPSoC 4000Sの主な特徴差
項目 トラ技付録基板PSoC4100S仕様

CY8C4146LQI-S433

PSoC 4000S仕様

CY8C4045AZI-S413

JPY1個価格(Mouser調べ、2019/06 ¥570 ¥453
CPUコア Cortex-M0+、48MHz
メモリ FLASH 64KB 32KB
SRAM 8KB 4KB
シリアル通信ブロック 3個(I2S/SPI/UART/LINに対応) 2個(I2S/SPI/UARTに対応)
ADC 逐次比較型 12ビット分解能、1Msps なし
シングル・スロープ型 10ビット分解能、11.6ksps
GPIO 34 36
DAC 電流出力型 7ビット分解能×2
その他アナログ・ブロック OPアンプ 2個、6MHzGB積、6V/usスルーレート なし
コンパレータ 3個、内2個はスリープ・モード時も動作 2個スリープ・モード時も動作
静電容量式タッチセンサ(CapSense 自動調節機能付き(特許取得済み)
論理演算ブロック スマートI/O 3入力1出力のLUT×8

PSoC 4000Sも第4世代CapSense内蔵MCUです。PSoC 4100SのOPアンプなどのアナログ機能を省いた結果低価格で、仕様からCapSense利用のタッチユーザインタフェース(タッチUI)入力処理専用のMCU向きであることが解ります。

例えば、メカニカルボタンを1個50円とすると、ボタン8個で400円。これをタッチUIで置換えるので同程度の低価格MCUは好適です。PSoC 4000SはPSoC 4100Sに比べ少機能なので、ソフトウェア開発も容易です。初心者向きの開発案件とも言えます。さらに、PSoC 4000S実装済みで、タッチ・パッドとスライド・バーが付属した低価格なタッチUI評価ボード:CY8CKIT-145-40XX PSoC 4000S CapSense Prototyping Kitも用意されています。

PSoC 4000S CapSense Prototyping Kit
タッチ・センサー基板付きで$15と安価なPSoC 4000S CapSense Prototyping Kit

CapSenseの使い方(その1:低開発リスク、低価格のタッチUI実現手段)まとめ

低開発リスク、低価格で第4世代CapSenseを使ったタッチユーザインタフェース(タッチUI)を実現する手段として、PSoC 4000S実装評価ボード:CY8CKIT-145-40XX PSoC 4000S CapSense Prototyping Kitを使い、タッチUI入力処理専用のテンプレート開発を行います。このテンプレートは、トラ技付録PSoC 4100S基板でも同じように動作します。

最初の図のように、様々な装置や別MCUの入力手段として単独利用もできます。また、個人レベルでチョット変わった下図のようなタッチUIモジュールを手軽に開発する時にも役立つと思います。

タッチUIモジュールイメージ(出典:トラ技P53 AIジェスチャ・スティック図を加工)
タッチUIモジュールイメージ(出典:トラ技P53 AIジェスチャ・スティック図を加工)

次回から、タッチUIのメリット、ハードウエアのタッチUI基板ポイント、CapSense制御ソフトウェアの構造、開発ツールPSoC Creatorの設定方法など、CapSenseの具体的な使い方を、主にソフトウェア開発者向けに判り易く説明していきます。

InfineonがCypress買収で合意

2019年6月3日)、独)Infineonは、米)Cypress買収で合意と発表しました(出典:EE Times記事、InfineonがCypress買収へ、約1.1兆円で

Infineon+Cypressが成立すると、車載半導体ではオランダ)NXPを超え世界シェア1位となります。但し、QualcommのNXP買収断念のように、米国当局の承認が成立のガキとなります(出典:EE Times記事、”InfineonのCypress買収は“弱点の克服”を狙う一手“)。

Infineon+Cypressは補完関係

本ブログ対象のCypress MCUは、IoTエッジMCUで優れた製品を持ち、現在パワー半導体シェア1位、車載シェア2位のInfineon製品との重複が極めて少ない補完関係です。買収が成立すれば、車載シェアは、現在首位NXPを抜きトップになるそうです。

記事中に、本ブログ掲載MCU各社の製品特徴を表す図があります。

MCU各社の製品特徴(出典:EE Times記事)
MCU各社の製品特徴(出典:EE Times記事)

MCUコアが同じでも、MCU単体でシステム動作はできません。自動車会社は、周辺部品も含めたトータルでの接続性や、システム構築能力をMCU各社に求めます。Infineon+Cypressはこの点で他社比、優れているというのがこの表の意味です。

買収成立後の車載と32ビットMCUの半導体シェア変動を示すのが下図です。

買収成立時の車載半導体と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)
買収成立時の車載半導体と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)

車載は1位へ、32ビットMCUは4位へと、それぞれ上位ビッグ5に入ります。シェア確保は、半導体会社が生き残るには必須で、Infineon、Cypress双方に買収メリットがあります。

買収完了は、2019年末から2020年初めを予定しています。但し、米国当局が買収を認めるかがカギだと記事は解説しています。

Cypress特許取得PSoC 4100S CapSenseで他社差別化

ADAS(Advanced driver-assistance systems)など高度化する自動車制御に限らず、IoT端末でもMCU単体でのシステム構築は困難です。しかし、一方で、他社とのアナログ差別化技術を用いてMCUシェア拡大と確保を狙う動きも出てきました。

STマイクロエレクトロニクスは、汎用MCUでありながら、より多くのセンサとユーザ機能を実現する先進的アナログ・ペリフェラル搭載のSTM32G4シリーズを発表しました。また、ルネサスエレクトロニクスも、高精度アナログフロントエンド搭載32ビットマイコンRX23E-Aを発表しました。

本件のCypressも、他社アナログ差別化技術という点では長けていると思います。

例えば、前投稿のトラ技記載PSoC 4100Sは、低価格であっても、他社MCUに無いOPアンプや論理演算ブロックが実装済みです。特に、特許取得済みで多くのスマホで採用実績のある検出精度の高い静電容量式タッチ・センス・コントローラ内蔵は特筆すべき点です。

トラ技付属基板PSoC 4100S仕様(出典:トラ技2019年5月号P116、アナログ差別化技術が下線付き)
項目 内容
CPUコア Cortex-M0+、48MHz
メモリ フラッシュ:ROM 64KB
SRAM 8KB
シリアル通信ブロック 3個(I2S/SPI/UART/LINに対応)
ADC 逐次比較型 12ビット分解能、1Msps
シングル・スロープ型 10ビット分解能、11.6ksps
DAC 電流出力型 7ビット分解能×2
その他アナログ・ブロック OPアンプ 2個、6MHzGB積、6V/usスルーレート
コンパレータ 3個、内2個はスリープ・モード時も動作
静電容量式タッチ・センサ(CapSense 自動調節機能付き(特許取得済み)
論理演算ブロック スマートI/O 3入力1出力のLUT×8

タッチユーザインタフェーステンプレート構想

スマホの普及で、あらゆるユーザインタフェース(UI)がボタンから、タッチ・ベースへと変わりました。IoT端末でも同様です。

タッチユーザインタフェーステンプレート
タッチユーザインタフェーステンプレート。ボタンからタッチ・ベースへ変化したユーザ入力処理用PSoC MCUと、それ以外の2MCU構成。プロトタイプ開発速度向上とユーザフレンドリー入力処理が狙い。

このタッチUIへPSoC 4シリーズ特許技術CapSenceを応用し入力処理をテンプレート化、その他の新規開発や複雑な制御は別MCUへ分離した2MCU構成でプロトタイプ開発すると、開発速度が上がり、かつタッチUIも備えたユーザフレンドリーなIoT端末が期待できると思います(勿論、このタッチUIテンプレートにはトラ技付属基板も利用するつもりです)。

GWお勧め本:トラ技5月号PSoC 4100S基板付きで販売中

トランジスタ技術2019年5月号が、サイプレス・セミコンダクター(以下サイプレス)のPSoC 4100S搭載基板付きで1,180円(税込)で販売中です。平成最後のトラ技で、PSoC 4と統合開発環境PSoC Creatorの良さが判る雑誌が、安価に入手できます。

ゴールデンウイークの読物に、MCUソフトウェア開発者だけでなくハードウェア開発者へもお勧めです。

トランジスタ技術平成31年5月号PSoC関連目次
トランジスタ技術平成31年5月号PSoC関連目次(※説明のため着色しています。出典:トランジスタ技術)

弊社ブログ掲載MCU中、筆者が最も好きなMCUが、Cortex-M0のPSoC 4シリーズです。MCU技術、サイプレスサイト掲載情報量と質、どれも競合他社より優れていると思います。但し、中級者以上の方には受けが良くても、初心者や初めてサイプレスサイトを訪れる方が解り易いかは疑問です。

ネット並みの手軽さはありませんが、紙媒体のトラ技は、セキュリティ不安や無駄な広告が無く、図表が多く2色で色分けされた文章は、CQ出版社構成済みです。PSoC 4やサイプレスが初めての方でも、短時間で重要箇所を読み・理解するのも簡単です。

ここからは、トラ技を入手した方を前提に、(少々差し出がましいのですが)PSoC 4やPSoC Creatorに解説を加えます。本ブログ対象の、「個人でも低価格で入手性が良いMCUにPSoC 4が該当」するからです。

PSoC 4と4000Sシリーズ

PSoCファミリラインナップがP60コラムにあります。PSoC 4の位置づけが良く解ります。このPSoC 4(Cortex-M0コア)に旧富士通のFM0+買収で得たCortex-M0+コアを採用し、世代改良したのがPSoC 4000Sシリーズです。S付きがCortex-M0+、無しがCortex-M0です。

PSoC 4000Sシリーズのラインナップが下図です。

PSoC 4000シリーズ分類
PSoC 4000シリーズ分類(出典:Cypress Semiconductorメールの一部抜粋)

メール画面切取り画像のためDigi-keyやMouserリンクは無効ですが、PSoC 4000Sシリーズは低価格で入手性も良いMCUであることが解ります。

Entry Level PSoC 4000Sのアナログ機能強化版であるPSoC 4100S:CY8C4146LQI-S433/Flash:64K/RAM:8K搭載基板がトラ技に付属しています。ブレッドボードなどで動作可能です(特設P115~に詳しい説明あり)。

PSoC 4100Sのトラ技採用理由は、第1部の(重い)処理内容や第2部のハイエンドPSoC 5LP(P104コラム参照)へのガイドがし易いからだと思います。

個人的には、先ずEntry LevelのPSoC 4000Sを使って、PSoCの良さをもっと手軽に読者に認知させた方が良いと感じました。4000Sと4100Sの差分は、内蔵アナログ・コンポーネントとその数だからです(MCU提供サイプレスの思惑もあるかもしれませんが…)。
※内蔵アナログ・コンポーネント解説は、特設P143~に詳しく説明されています。

PSoC Creator

PSoC Creatorは、EclipseベースIDEですが、他社IDEと異なります。使い勝手は、トラ技記事にあるように痒い所に手が届くように良くできたIDEです。モニタ1台ではなく、複数の高解像度モニタを使いたくなります。

簡単に言うと、MCUハードウェア開発者でも使える回路図機能とソフトウェア開発機能を全て盛り込んだ環境です。
※特設P129~のPSoC Creator操作マニュアルに詳しく説明されています。

PSoC Creator操作画面
PSoC Creator操作画面

筆者がPSoC 4000SとPSoC Creatorを勧める具体的理由が下記です。

MCUハードウェア開発者向け:自分で開発したハードウェアのテストプログラムを、できるだけ簡単に自作したいが、ソフトウェア開発技術を習得する時間が無い。

MCUソフトウェア開発者向け:制御ハードウェアの詳細を、データシートを読むよりも効率良く理解したい。ハードウェア担当者に直接聞くのも面倒だ。

これらの方々は、是非PSoC Creatorを試してください。ハード/ソフトの垣根がなく、自分が知りたいことをPSoC Creatorだけで調査でき、求める出力をCreateできるのがPSoC Creatorです。

PSoC Creatorを使うと、ハードウェア・ソフトウェア共に既存資産の活用と組み合わせでMCU開発するのが便利で効率的なのが良く解ります。ハードウェア的に言うとコンポーネント活用、ソフトウェア的に言うとAPI活用です。

PSoCの場合、外付けセンサー接続時にあると便利なアンプやコンパレータなどのアナログディスクリート回路や、AND/OR/NOTデジタルディスクリート回路などもMCU内蔵です。システム完成時の実装部品数が削減できます。

さらに、PSoC 4000Sには、タッチ・センサー制御に強いCapSenseも内蔵で、細かな調整もPSoC Creatorでできます。

一度使ってみれば、PSoC CreatorがPSoCの魅力を引き出すというトラ技解説が良く解ります。

PSoC 4000SとPSoC6テンプレート開発の可能性

弊社のPSoC 4/PSoC 4 BLE/PRoCテンプレートは、Cortex-M0対応で2015年発売当時は最新でした。

しかし、トラ技付属のPSoC 4100S搭載基板を活用できるテンプレートや、Entry Level第4世代PSoC 4000Sを使った新テンプレートも開発したくなりました。Cortex-M0+採用による低電力・高効率化が気になります。

例えば、PSoC 4000S CapSense Prototyping Kit($15)で新テンプレートを開発すると、タッチ・センサー機能も低価格で直にプロトタイプ開発ができそうです。更に高性能で低価格なPSoC 6ファミリ(Cortex-M4/M0+デュアルコア)にも興味があります。

PSoC 4000S CapSense Prototyping Kit
タッチ・センサー基板付きで$15と安価なPSoC 4000S CapSense Prototyping Kit

PSoC 6続報

MONOist組み込み開発ニュースに、PSoC 6と他社製品との性能、消費電力の比較が掲載されています(出典:「業界最小」の消費電力でセキュリティも、サイプレスがIoT向け「PSoC」を投入)。

PSoC 6の目標

「ある程度のシステム制御ができる性能+低消費電力+セキュリティ、これらの同時実現」というPSoC 6の目標のために採用された40nmプロセス技術とデュアルARMコアにより、PSoC 6の他社比、優れた性能が解ります。

PSoC 6 Comparison Table1
PSoC 6 Comparison Table1(記事より)
PSoC 6 Comparison Table 2
PSoC 6 Comparison Table 2(記事より)

青字が性能同等、または、より優れた項目を示しています。PSoC 4でも採用中の高性能CapSenseやアナログコンポーネント、多くのGPIO数、そして100MHz動作のCortex-M0+、ピーク時257DMIPSなど、弊社ブログ対象の従来MCUの性能枠を大きく超えるものです。

1MB ROM、288KB RAM、8KB キャッシュの意味

ディアルコアで、1MB ROM、288KB RAM、8KB キャッシュものリソースを持つPSoC 6制御には、RTOSが必要になると思います。MCU開発も、よいよOS必須時代になるのでしょうか?

PSoC Creator News and InformationにNew FreeRTOS on PSoC 4 port が掲載されています(PSoC Creator 4.0のStart Pageからもアクセス可能)。弊社マイコンテンプレートで使ったCY8CKIT-042 評価ボードへも適用できそうです。ARMコアなので、mbed OS 5も気にはなりますが、FreeRTOSですので、RTOSへの備え記事が、理解に有効に活用できるでしょう。

弊社自作FreeRTOSサンプルソフト状況

RTOSへの備え記事は、LPCXpresso 824-MAXを使ってFreeRTOSサンプルソフトを自作しています(Lチカ、Q-通信、セマフォ同期、ミューティックス排他制御の4種)。

この自作サンプルを横展開してLPCXpresso 812/812-MAX、LPCXpresso 1114/5へ適用する予定でした。しかし、LPCXpresso 824-MAXで動作するサンプル(勿論GPIOとLPCOpenライブラリのみ変更)が、Lチカを除いて他の評価ボードでは動作確認ができないのが現状です。

原因が(僅か数十行の)自作サンプルにあるのか、それとも、それ以外かの見極めも、結構大変です。FreeRTOSもv9では、スタティックなセマフォ、ミューティックス割付ができるなど改良が進んでいるのでデバッグには良さそうですが、現状のv8は未だ非対応です。

LPCXpresso 824-MAX版だけでもFreeRTOSサンプルソフトを無償リリースするか、それとも、当初の予定どおり全評価ボード対応として問題解決後リリースするか3月末を目途に検討中です。

Bluetooth 5.0対応のIoT向けマイコンPSoC 6発表

3月14日のEE Times Japanに“Cypress、低消費でより強固なセキュリティ実現”という記事が掲載されました。この記事から、2017/4Q(10月~12月)量産予定のCypressの新しいIoT MCU、PSoC 6の特徴をまとめました。

PSoC 6の特徴

  • Cortex-M4+Cortex-M0+ のデュアルARMコア
  • プロセス技術にウルトラローパワー40nm SONOS採用(従来は130nm)した結果、Cortex-M0+:15uA/MHz、Cortex-M4:22uA/MHz、ローパワーモード動作電圧:1.1V、ウルトラローパワーモード動作電圧:0.9Vを実現。消費電流は、下表参照。
PSoC 6 Current consumption
PSoC 6 Current consumption(記事より)
  • ハードウエアでのセキュア データストレージ機能を備えたTEE : Trust Execution Environment実装
  • 暗号化アルゴリズム:楕円曲線暗号(ECC)、AES(Advanced Encryption Standard)、ハッシュ(SHA-1/2/3)ハードウエア実装
  • Bluetooth Low Energy 5.0対応
  • 評価ボード:PRoC 6 BLE Pioneer Kit(CY8CKIT-062-BLE)は75米ドル。
    弊社マイコンテンプレート使用中のPRoC 4 BLE Pioneer Kit (CY8CKIT-042-BLE)は49米ドルです、ディアルコアを考慮するとお買い得?

ハードによるセキュリティ機能はIoT MCUに必須

IoTマイコンにARMコアを使う場合、新しいCortex-M23/33コアによるアプローチと、従来コアにTEEなどのセキュリティ機能を付加したアプローチの2つがありそうです。CypressのPSoC 6は、後者です。

いずれも、ハッキングやウイルス対策に、ハードによるセキュリティ対策は必須です。私個人の感触では、どの程度の処理を MCUで行うかにもよりますが、たとえ専用セキュリティハードを追加したとしても、Cortex-M0/M0+/M23クラスの処理能力では、IoT通信制御だけでも重すぎるのではないかと思います。

そこで、より能力の高いCortex-M33やCortex-M3、M4を使うか、M0クラスとのディアルコア化も解として有力かもしれません(コア性能差は、コチラを参照、Cortex-Mxの特徴はコチラを参照)。

PSoC 6はBluetooth 5.0とデュアルコアでしたが、IoT通信規格の決定だけでなく、MCUアーキテクチャ、これら両方の観察がIoT MCU選択に必要になりそうです。

2016年マイコン業界と超速開発

2016年マイコン業界

Qualcomm ← NXP ← Freescale、買収先の企業へ矢印を付けるとこのようになります。
QualcommはSnapdragonなどのスマホチップセットを供給する半導体ベンダーです。車載を得意とするNXPの社名は残りそうですが、買収後のNXP/旧FreescaleのCortex-M系マイコンラインアップは気になります。
さらに、Windows 10がこのQualcommのSoCで動作するというニュースは、IoT向けPCやスマホにMicrosoftが参入し、数多くある無線規格の収束を早めるかもしれません。

先ず2017年3月、開発環境LPCXpressoとKinetis Design Studioが新しいMCUXpressoに統合されます。また、先日発表の2017ロードマップによると、スイッチマトリクスを持つLPC8xxシリーズが充実します。QualcommとのシナジーによりIoT無線規格のIoTマイコン発売が期待できます。

一方、RunesasもSynergyで遅ればせながらARM Cortex-Mマイコン開発に乗り出し、従来からある独自コアを持つRL78の16ビットマイコンやIDE:CS+は肩身が狭くなった気がします。既存マーケットにはRL78、IoTにはSynergyのCortex-M23/M33という住み分けを意識したかのようです。

Cypressは、Spansion買収によりCortex-M0+コアを入手し、PSoC4へ適用し始めました。アナログ技術が豊富なPSoC4/PRoC/PSoC4 BLEマイコンが更に強化されました。私はCortex-M0/M0+開発では、最も使いやすいIDE:PSoC CreatorとPSoC4/PRoC/PSoC4 BLEの組合せがピカ一だと評価しています。Cortex-M23のラインアップ追加が待ち遠しいです。

※上記は、下記個人レベルで準備できる「入手性が良く、低コストマイコン」の選択基準に合致する半導体ベンダーに限定して分析しております。

超速開発環境

顧客が許容するマイコンソフト/ハード開発時間は、ますます短くなります。
顧客側の技術理解レベルが追い付かないのも原因の1つですが、状況変化が激しいので即開発し、市場でのフィードバック、改良などを繰り返しながら製品化が必要なことが大きな要因です。

短い開発時間は、マイコン開発者にプレッシャーや焦りを生じさせます。しかし、焦りは禁物です。
良い成果物を効率的に出力できるワザ、これがマイコン開発者には必要です。

このワザ習得には、時間を気にせずに没頭できる環境、例えば自宅などで、新しいマイコンや現状マイコンを、身銭を使うので低コストで、しかも短時間で習得できる方法が必要です。
技術は、食べ物と同じで自分で習得(食べ物なら消化)してこそ身に付きます。食べ過ぎて消化不良になるのを避ける手段/方法があります。

この習得方法が超速開発環境、マイコン評価ボード(=スターターキット)+拡張ボード(=mbed-Xpresso Baseboard)+そして弊社マイコンテンプレートです。

マイコンテンプレート(税込1000円)は、懇切丁寧な添付資料や多くの(冗長な!?)コメントをソースに付加しています。従って、初心者が陥りがちな初期トラブルを避けることができ、ベンダー提供のサンプルソフトを活用したマルチタスクで、評価ボードと拡張ボードを動かせます。
ソフト担当者は、マイコンを自分で動かせれば、安心して厳しい状況でも開発できます。

また、基板開発時に問題となるアートワーク(配線引き回し)に配慮したIO割付を実ボードで検証できるので、基板化障壁も下がります。
ハードのみの担当者であっても、この超速開発環境はマイコン回りのベンダー推薦配線チェック、アートワークに適したIO割付をソフト開発者へ提案、基板テストプログラム開発時などにも役立ちます。

*  *  *

販売中のマイコンテンプレート5種
販売中のマイコンテンプレート5種

「入手性が良く、低コストマイコン」という基準で、現在5種マイコンをピックアップし、そのマイコンテンプレートを開発/販売することで、超速開発をサポートするのが本サイトの目的です。ご要望により新たなマイコンを追加する可能性もあります。

サイトに対するご意見、ご要望、追加マイコンなどお気軽にinfo@happytech.jpへお寄せください。

本年もありがとうございました。来年も引き続き弊社サイト、どうぞよろしくお願い申し上げます。

効率的マイコン習得の評価ボード

“学問に王道なし”とは言いつくされた諺です。しかし効率的にマイコンを習得する1番の方法は、ベンダー評価ボードを使うことだと私は思います。理由は、価格と確実動作、サンプルソフトの多さです。複雑な内容を理解、習得するには、文章説明だけでは限界があります。マイコンは、1つでも設定を間違うと、動作しない状態になるのも理由です。

ところが、このベンダー評価ボードも数多くあり、どれが良いか初めての開発者には分かり難い面も多いでしょう。そこで、個人的に最も好きなCypressマイコンの評価ボードを例に、評価ボードを分類し、特徴を解説します。

Cypressマイコンが好きな理由

ルネサス)RL78/G1x、NXP)LPC8xx/LPX111x、Kinetis L/Kと比較して、私がCypress)PSoC/PRoCが好きな理由は、ハード的にはアナログ/デジタル両方の機能が豊富な点、ソフト的にはIDEのPSoC Creatorが使いやすい点です。
また、Cypressサイトも他社より情報が豊富で充実しています。豊富なだけでなく、きちんと整理、分類されているので、検索も容易です。内容が良く解った技術者がサイトを構築すると、このようになると思います。

4種類のCypressマイコン評価ボート

そんなCypressマイコンの評価ボードは、4種類に分類されます。他社サイトでは、評価ボードが一覧で表示されることが多いのですが、最初にこのような分類が無いと混乱します。

4 Evaluation Board Types
4 Evaluation Board Types
Cypressの4種類の評価ボード比較
評価ボード分類 特徴 個人的解釈
Prototyping Kits 超低価格 単独で動作させるには十分だが、サンプルソフトテストには、外付けLEDやハードウエア追加が必要で、その手間暇がかかる。
Pioneer Kits 低価格 サンプルソフトテストに十分な外付けハードも一緒にした評価ボード。さらにArduinoコネクタ実装なので、拡張性も高い。
Arduino Shields Arduinoのシールド Arduinoコネクタ実装の拡張機能基板で、最近のマイコン開発にはArduinoコネクタがデファクトスタンダードになりつつある。
Partner Kits 高機能 高機能/高性能マイコンを評価するためのボード。

お勧めは、Pioneer Kitsです。この分類の評価ボードなら、サンプルソフトをそのままダウンロードして動作確認ができる上、Arduinoシールドを使って自分なりの拡張機能もテストできます。使用するMCUのPioneer Kitsを探して開発に着手すれば良い理由を以下に示します。

マイコン初心者トラブルの回避

経験からマイコン初心者がトラブル箇所で多いのが、MCU初期設定、IDE操作ミスです。いずれも、ユーザーマニュアルの初めの方に記述されていますが、読み間違いや勘違いにより発生します。
その結果、マイコンを思った通りに動かせず、最初の段階でつまずいてしまします。これがアセリを誘発し、さらに悪循環を生みます。チョットした事ですが、一度生じた先入観は簡単には元に戻りません。

Pioneer Kits評価ボード+サンプルソフトで確実にマイコンを動作させると、上記のミスはかなり防げます。とりあえず取説どおりに設定し、サンプルソフトが動けば、嬉しいしアセリは生じません。その後でMCUユーザーマニュアルを読めば、冷静に設定内容も理解できます。

MCUユーザーマニュアルは、文章だけで説明するが役目です。しかし、動く評価ボードを実際に操作しながら内容を理解すると、自分の勘違いやミスにすぐに気が付きます。本当に些細なミスであっても、アセリが有るのと無いのでは、雲泥の差です。

サンプルソフトソースからポイントをつかむ

サンプルソフトは、マイコン開発のバイブルです。しかし付属の説明文章は、細かい内容や、開発のポイントは記載していません。開発で重要となるこの部分は、サンプルソフトのソースから、開発者自らが獲得するのが一番良いと思います。サンプルソフトの読み方は、コチラにも記述しています。“木を見て森を見ず”にならないようにしましょう。

動作ソフトへ変更を加え経験を積む

いろいろなサンプルソフトを動かしていると、ここを変更すればもっと良いのではないか?と思う箇所も発見します。そんな時は、変更を加えトライできます。もしNGなら、その原因が解ります。NG:失敗も経験です。効率的に経験を積むことができる、これがPioneer Kits評価ボードです。

超低価格のPrototyping Kitsでも外付けハードを追加すれば、Pioneer Kitsと同様のことができます。但し、追加の手間がかかります。ハード追加時にミスが発生するとソフト開発は先へ進みません。電子工作習得やハード開発の経験を積む意味では良いのですが、ここは割り切ってソフト開発に適したPioneer Kitsを選ぶのが得策です。

まとめ

マイコンテンプレートも数年前は、Prototyping Kits的な評価ボードを使って販売した経験があります。この時は、ご購入者様からは、ハードウエアを追加したが動ないというご相談を多数頂きました。トラブル原因は、UARTのTX/RX配線ミスなどで解決しましたが、動かないとご購入者様もストレスが溜まります。

そこで、ハード追加が不要なPioneer Kits相当の評価ボードで販売すると、不動作トラブルは無くなりました。簡単に動作することが、初期段階では重要である証左と言えます。

販売中のマイコンテンプレートは、全てPioneer Kits評価ボード相当を動作ボードに選定しています。是非、お試しになり、効率的にマイコンを習得してください。

※一部、配線のみ追加するBaseboardを使って機能拡張しています。配線のみですのでハード追加に比べミス確率は低いです。Baseboardでの機能拡張については、コチラなどを参照ください。

Atom新規開発中止とPSoCアナログ特化製品追加

IntelがAtomプロセサの新規開発を中止すると発表しました。
Cypressは、アナログ制御に特化したPSoC 4ベース新製品投入を発表しました。
所感を記載します。

Atom新規開発中止

Surface 3やEdisonなどの既存Atomを使った製品の今後も怪しくなってきますね。Galileoは Pentiumを使ったSoC: System on Chipなのでとりあえず安心ですが…。

少品種大量生産が 半導体メーカーのビジネスモデルなので、マッチしない製品群は、開発停止というユーザにとっては避けてほしいオプションが常に付きまといます。

マイコン開発者にとって、「代替品が可能なデバイス」に魅力を感じるのは、この最悪オプションのためです。

これはIntelの話でしたが、日本メーカー競争力と継続性強化のための方策についてコチラに興味深い記事があります。

PSoCアナログ特化新製品追加

一方Cypressは、Spansion買収で得たCortex-M0+ライセンスを使ったPSoC 4に、オペアンプやコンパレータ、アナログ・マルチプレクサなどのアナログに特化したプログラマブルアナログブロックを統合したPSoC Analog Coprocessor(Cy8C4Axx)新製品を追加しました。

コプロセサ化により、センサの変更を、ホストプロセサソフトへ及ぼさずに短時間でプロトタイピング開発できるメリットがあります。

PSoC Analog Coprocessor Merit
PSoC Analog Coprocessor Merit(記事より抜粋)

モーション、照度、湿度、近接センサ、サーミスタなど搭載の評価ボードCY8CKIT-048を使うと、アナログ・フロント・エンド(AFE)がPSoC Creatorで開発できるので、一般的に40時間かかる方法と比べ4時間で開発できるそうです。「1週間のスケジュールを、半日でできる!」、夢のようです。

無線通信規格の変更容易なコプロセサ化

評価ボードにはArduinoシールドコネクタも実装済みなので、Raspberry Pi 3などのIoTコンピュータ:MPU/SBCに直接搭載も可能でしょう。

また、対ホストプロセサ通信には、UARTが使えます。ここにUART over BLEやUART over Threadの適用が予想できます。

MCUとMPU/SBC間の無線通信規格が流動的な現状では、このアナログコプロセサ機能配分も適していると思います。CY8CKIT-042搭載のBLE 4.1がBLE 4.2に簡単に変更できたように、無線規格変更に対して柔軟に対応できるからです。

解説:マイコン評価ボード

マイコン開発には、各社が低価格で提供している評価ボードは必須です。
弊社マイコンテンプレートも、各ベンダの評価ボードで開発しています。この評価ボードを解説します。

採算度外視の低価格、高信頼ハードウエア

ソフト開発者に「確実に動くハードウエア」を「低価格」で提供する、これが評価ボードです。

マイコン開発には、「専用」のソフトウエアと「専用」のハードウエアの両方が必要です。そして片方のデバッグには、もう片方にバグが無いことが必須です。つまり、ソフトデバッグには、バグなしのハードが必須なのです。そこで、バグなしで確実に動作する「汎用」ハード、これが各ベンダ提供の評価ボードです。

但し、専用ハードがいずれ開発されるので、汎用の評価ボードは低価格とならざるをえない運命です。高ければ誰も買ってくれないからです。しかし開発者にとっては、以下のように優れた教材と言えます。

  1. ソフト開発者が、専用ハードが出来上がる前にソフトデバッグ可能な環境を自由に構築できる
  2. ハード開発者が、そのまま専用ハードにも使える高信頼ハード設計を学べる
  3. マイコン初心~中級者が、ベンダ標準のデバッグ技術で低価格な開発環境を使って自習できる
  4. 評価ボードは、各ベンダフォーラムで多くの情報が記載されており、適用サンプルソフトも多い

ターゲットMCU、デバッグインタフェース、拡張コネクタの3構成

評価ボードは、ターゲットMCU、デバッグインタフェース、拡張コネクタの3つから構成されます。

NXPの評価ボード:LPCXpresso LPC812とルネサスのRL78G13-Stick、CypressのCY8CKIT-042 の例を示します。

LPCXpresso LPC812構成
NXP LPCXpresso LPC812構成
RL78G13-Stick構成
Runesus RL78G13-Stick構成
CY8CKIT-042構成
Cypress CY8CKIT-042構成

ターゲットMCU

ターゲットMCUとは、開発MCUそのものの部分です。残りのデバッグインタフェースと拡張コネクタは、ターゲットMCUが異なっても同一です。

拡張コネクタ

最近はArduino用シールドコネクタを拡張コネクタに用いる評価ボードが多いです。これは、市販Arduinoシールドの種類が増えたため、上手く探せれば汎用の評価ボードに複数のArduinoシールドを拡張コネクタで接続し、専用ハードに近い、いわば「疑似専用ハード」を市販品のみで作れます。ボード単位のハード部品化がもたらした結果と言えます。

個人的には、シールドよりも、mbed – Xpresso Baseboardの方がより低コストで疑似専用ハード実現ができると思っています(こちらに詳しく記載しました)。

デバッグインタフェース

デバッグインタフェースは、IDEデバッグ機能を使うために必要な部分で、ターゲットMCUのシリアル入出力とパソコンUSBを変換する機能もここに含みます。この機能専用のマイコンが実装されることが多くなりました。このマイコンでデバッガ機能も代行するので、別途デバッガを購入せずにソフトデバッグが可能です。

MCUがARM Cortex-M0/M0+の場合には、ARM標準のCMSIS-DAPでMPUコアをデバッグできるインタフェースも実装されます。CMSIS-DAPはこちらの記事も参照してください。

CMSIS-DAPは、ターゲットMCUとデバッグインタフェースを切り離した後に、ソフトデバッグする時、別途ARM専用デバッガが必要ですが使えます。このように、1つの評価ボードで複数のデバッグ方法が使えるのも特徴です。

ARM系コアの場合は、ベンダ評価ボードもほぼ同じ構成で、ARM専用デバッガを1台持っていれば、ベンダ各社の評価ボードをまたがっても使えるのがメリットです。マイコン開発のデファクトスタンダートになりつつあります。

一方、デバッグインタフェースをE1コネクタでしか持たないルネサスのCPUボードをデバッグする際は、別途E1デバッガを接続しないとデバッグができません。この点は、Cortex-M0/M0+コアのMCUと比べるとコスト的に劣ると言えるでしょう。

Runesus QB-R5F104LE-TB構成
Runesus QB-R5F104LE-TB構成

デバッガ機能なしの統合開発環境:IDEの背景

シールドなどのボード単位の部品化が進んだ結果、専用ハードは、もはや既存ハードを組み合わせて、その小型化のみを行う設計、つまり専用基板化が主な開発内容と言えるかもしれません。

同様に、ソフト開発もベンダが、多くのライブラリを提供することで、専用ソフトをライブラリの組合せで完成できるレベルを目指しているようです。IDEにデバッガ機能がないArduino IDEなどは、この現れのような気がします。

ハードとソフトのオープンソース

ハード版オープンソースとしてArduinoシールドコネクタを持つ既成基板は、増えつつあります。

オープンソースを活用したソフト開発は、Unix系では当たり前です。この流れがマイコンソフトへも徐々に浸透する可能性を感じています。この場合、ハードの専用基板化開発に相当するのは、RTOS適用や弊社のマイコンテンプレートになるかもしれません。