ルネサスE1エミュレータ生産中止予告

2018年12月21日、ルネサス エレクトロニクスのツールニュース2018.12.16号で、使用部品の生産終了のため、E1エミュレータ生産中止が予告されました。来年2019年12月31日が、最終オーダー受付日です。

E1エミュレータ(出典:秋月電子通商)
E1エミュレータ(出典:秋月電子通商、12,600円で販売中)

E1代替エミュレータ

E1エミュレータの代替は、E2またはE2エミュレータLiteです。ターゲットボードとの接続は、同じく14ピンコネクタですのでそのまま使えます。
但し、R8Cは、E1を継続使用、RH850は、E2へ変える必要があります。

ルネサスMCUとエミュレータ対応表(2018年12月現在)
対象マイコン E1 E2 E2 Lite
RL78ファミリ(本ブログ掲載) 対応中 対応中 対応中
RXファミリ 対応中 対応中 対応中
R8Cファミリ 対応中 非対応 非対応
RH850ファミリ 対応中 対応中 非対応

本ブログを始めた頃のR8C開発時代、IDE Hewに使っていたE1エミュレータが、あと1年で生産中止になるとは、私も年を取ったということです。

但し、稼働中のR8Cシステムメインテナンスなどに、ソフトウェア書き換え用として14ピンコネクタ以外のUARTなどを準備していれば別ですが、E1エミュレータは必須ですので、注意してください。

また、新たにRL78開発環境の構築を考えている方は、E1エミュレータではなくE2エミュレータLite(秋月電子:7,980円)の購入をお勧めします。

ルネサスCS+ V8.00.00更新

2018年11月27日、ルネサスエレクトロニクス(以下ルネサス)のIDE(統合開発環境)CS+が、V7からV8.00.00にメジャー更新されました。主な変更内容は、11月27日発売の第3世代RX(RXv3)MCUへの対応です。

CS+ V8.00.00無償評価版

CS+は、RL78、RX、RH850、V850、78K0R、78K0のMCU開発に使います。無償評価版は、以下のROM容量制限があります。

無償評価版のROM容量制限
RL78、78K0R、78K0R 64Kバイト以内
RX 128Kバイト以内
RH850 256Kバイト以内

同じくルネサス無償提供EclipseベースIDEのe2 studioは、この容量制限がありません。

しかし、e2 studioにはコンパイラがパッケージされていませんので、各MCU対応のCS+と同じ無償コンパイラをインストールして使用します。その結果、コンパイルできるROM容量は、CS+無償評価版と同じになります。
※CS+もe2 studioも容量制限を外すには、コンパイラ有償ライセンスが必要です。しかし、個人レベルでの購入は、高額出費を覚悟してください。

CS+もe2 studioも機能的には同じです。Eclipse IDEを使った経験が有る方や、世界標準指向ならe2 studio、それ以外は、IDE全機能が1パッケージ提供で、チュートリアル付き、更新方法も簡単なCS+が便利です。

第3世代RXv3の第一弾はモータ制御製品

第3世代RX(RXv3)MCU
第3世代RX(RXv3)MCU(出典:ルネサスサイト)

ルネサス独自開発の32ビットRXv1/RXv2 MCUに対する命令セットの上位互換、5.8 CoreMark/MHzへの性能向上などが特徴の第3世代RXv3製品化第1弾は、モータ制御に適したRX66T(ROM256Kバイト~1Mバイト)です。

RXの性能を活かしたソフトウェアを開発するには、CS+無償評価版では128KバイトROM容量制限があるため力不足です。残念です。

ルネサス買収懸念とリスクヘッジ

11月24日のビジネスジャーナルに、ルネサスの買収に対する懸念記事が掲載されました。本ブログでも10月1日にルネサスのIDT買収の複数懸念記事は紹介しましたが、今回は、インターシル買収と現状のルネサス経営への懸念という点で異なります。

ゴーン容疑者が崖っぷちの日産を復活させたように、経営陣の舵取りは、その会社のみならずルネサスMCUの使用者(我々)の技術人生にも影響を与えます。

車のエンジン ≒ MCU、エンジンの気筒数 ≒ MCUビット数、車所有者 ≒ エンドユーザに割当てると、我々が開発するソフトウェア、ハードウェアの最終利用者は、装置を使うエンドユーザです。このエンドユーザが気にするのは、燃費(消費電力)や安全性(セキュリティ)、トータルコスト等で、どのMCUを使って開発するかを気にするエンドユーザは、殆どいないと思います。

ルネサスCS+のようにROM容量制限がある無償IDEや、MCU毎に専用デバッガが別途必要でArduinoコネクタを持たない評価ボード、これらは他のMCUベンダーのそれらと比べると少数派、日本独自仕様です。

関連投稿:MCU評価ボード2018

もちろん、多数派、世界標準に合わせた環境やMCUを提供することが最上ではありません。しかし、ルネサスの場合、本稿のような独自MCUを新開発する一方で、多数派標準と同じ土俵のARM Cortex-M系Synergy MCUなども提供中です。ルネサスの中に潤沢なリソースがあれば別ですが、これまた日本独自の働き方改革が叫ばれる時期、選択と集中ができていないと感じるのです。

技術者リスクヘッジ
技術者リスクヘッジ

ルネサスが技術的に優れていても、ガラパゴス携帯のようにならないことを祈りつつ、技術者個々人でリスクヘッジ(リスク回避)を考えることも大切だと思わせる記事内容です。

関連投稿:ルネサスの買収に対する懸念記事、技術者個人のリクス分散必要性の章

MCU統合開発環境の後方互換性検証

MCU統合開発環境は、後方互換が重要です。数年前に開発したプロジェクトを改良・改版する際には、最新の開発環境(IDE)でも開発当時と同じ動作が求められるからです。

ベンダー各社もこの点に留意してIDE改版を行っているハズです。ただ、リリースノートにも具体的な互換性説明などは見当たりません。そこで、MCU最新IDEの後方互換性を検証します。

本稿は、ルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)の最新IDE:CS+に、弊社2015年開発のRL78/G1xテンプレートプロジェクトを適用し、発生するメッセージなどを示し、開発当時と同じ動作をするかを確認します。もちろん、これはあくまでも一例にすぎませんが、開発中にIDE更新に遭遇した際などの安心材料になれば幸いです。

ルネサス統合開発環境CS+

2018年9月最新ルネサスIDE CS+は、Ver.: V7.00.00(2018/07/20リリース)です。CS+は、業界標準のEclipseベースIDEではなくルネサス独自開発のIDEです。

好都合なことにWindows 10 1803をクリーンインストールしたので、まっさらなWindows 10へ最新CS+をインストールした条件で検証ができます(1803クリーンインストール顛末はコチラを参照)。

CS+ダウンロードサイトでカテゴリ:無償評価版を選び、分割ダウンロードか一括、CS+ for CCかCS+ for CA,CX のどれかのパッケージをダウンロード後、実行すれば必要なツール全てがWindowsへインストールされます。

統合開発環境CS+パッケージ
統合開発環境CS+パッケージ(一括ダウンロードの例)

関連投稿:CS+ for CCとCS+ for CA,CXの違い

既存プロジェクトを新しいCS+で開いた時のメッセージ

以下CS+ for CCの例で示しますが、CS+ for CA,CXでも同じです。

既存のプロジェクトを開く
既存のプロジェクトを開く。BB-RL78G13-64.mtpjをクリック。

CS+ for CCを起動し、既存のプロジェクトを開くでRL78/G1xテンプレートプロジェクトのCC-RLを選択すると、最初に警告メッセージが表示され、出力パネルにその内容、プロジェクト開発当時と新しいCS+での「プロジェクトの差分情報」が表示されます。

既存プロジェクトを開いた時に表示されるメッセージとその内容
既存プロジェクトを開いた時に表示されるメッセージとその内容

※“プロジェクト差分情報”は、新規CS+をインストールした時だけでなく、プロジェクト開発中にCS+更新に遭遇した際にも表示されます。

黒字の “デバイス・ファイルが更新……”は、CS+がサポートするMCUデバイスが増えたために発生します。あまり気にする必要はありません。

青字の “プロジェクト差分情報”は、新しいCS+を用いた結果、既存プロジェクトに生じた差分、影響のことです。

例えば、CS+のCC-RLコンパイラが改良・改版され、開発当時のコンパイル・オプションには無かった [間接参照を1バイト単位で行う] 選択肢が発生し、これに関しては、「いいえ」を選択したことなどが解ります。

これらの選択は、基本的に既存プロジェクトに影響が無い(少ない)方をデフォルトとしてCS+が選びます。このデフォルト選択が、CS+の後方互換を実現している鍵です。

後方互換の検証:プロジェクトビルド成功と評価ボードの動作確認

そのままビルド(B)>ビルド・プロジェクト(B)を実行すると、サブプロジェクトを含め全プロジェクトがリビルドされます。出力パネル青字は警告:Warring、赤字はエラー:Errorを示します。

全プロジェクトビルド結果
全プロジェクトビルド結果

出力パネルに赤字が出るのは問題ですが、青字内容に問題がなければ、新規CS+でもプロジェクトが正常にビルドできたことを示します。

そこで、ターゲット評価ボードへビルド出力をダウンロード、既存プロジェクト開発当時の動作確認ができ、最新CS+で後方互換が検証できました。

CS+の便利機能

ルネサスCS+には、プロジェクトと開発ツールをパックして保存する便利な機能があります。

CS+の便利機能
CS+の便利機能。プロジェクト開発時の環境を丸ごとそのまま保存できる。

この開発ツールとは、使用中の統合開発環境のことで、文字通りプロジェクトとCS+、デバイス・ファイル情報などのプロジェクト開発時の環境を丸ごとそのまま保存し、復元もできます。
但し、当然OS:Windowsまでは保存しなので、年2回の大規模OS更新やWindows 7サービス終了などには開発者自ら対応する必要があります。

後方互換とプロジェクト開発方針

IDEの後方互換は、開発者にとっては当然のことです。ただし、改良・改版された最新コンパイラ性能を、既存プロジェクトで最大限引き出しているかは疑問を持つ方もいるでしょう。個人的には、この点について以下のように考えます。

  • プロジェクト開発時、使用する統合開発環境のコンパイル・オプションは、最適化も含めてデフォルト設定で開発。
  • サイズ優先や速度優先の設定は、開発の最終段階で必要性がある時にのみ最小限設定し、その設定をソースに明記。

例えば、弊社マイコンテンプレートは、1つを除いて全て上記方針で開発しています。除いた1点とは、NXPのLPC8xxテンプレートのLPC810(ROM 4KB/RAM 1KB)の小ROMデバイスの1段最適化のみです。テンプレート(ひな形)の性質上、いろいろなプロジェクトへの適応性が高いのもこの方針の理由です。また、デフォルト設定と最小限設定なので、結果的に最新統合開発環境への後方互換も取りやすいと言えます。

経験上、コンパイル・オプションを操作して開発したトリッキーなプロジェクトは、設計段階(MCU選択やプログラム構成)の失敗だと考えています。個人的には、デフォルト設定で十分余裕(50%程度)がある設計がお勧めです。これを確かめるためにも、プロトタイプ開発は重要だというのが私の考えです。

MCU統合開発環境、後方互換のまとめ

MCU統合開発環境(IDE)とWindows環境の年間メジャー更新スケジュールは下図です(2018年7月9日投稿の再掲)。

主要開発環境の年間更新スケジュール
主要開発環境の年間更新スケジュール

プロジェクト開発中にこれら更新に遭遇することは少なくないでしょう。本稿は、ルネサスCS+を例に最新IDEの後方互換性を確認しました。EclipseベースのIDEでも同様です。まとめると、

  • IDE更新後、最初に既存プロジェクトを開く時の差分情報で、プロジェクトに生じた差分、影響を分析し、後方互換を検証
  • コンパイル・オプションはデフォルト設定が、更新された統合開発環境の後方互換を取りやすい

ことを示しました。

組込み開発環境(IDE)更新と留意点

開発環境、特にマイコンソフトウェアの統合開発環境(IDE)は、Eclipseベースが主流です。Eclipseは、年1回6月にメジャー更新され、2018年はPhoton(光子)がリリースされました。本投稿は、開発環境の更新時期と留意点、対策などを示します。

主要開発環境の更新時期

主要開発環境の更新スケジュール
主要開発環境の更新スケジュール。Windows起動不能トラブルなどはいつでも起こりうる!。

主要開発環境の、メジャー更新時期を一覧にしました。1開発期間が3カ月~6カ月とすると、なにがしかの更新に出会うことは確実です。期間中は開発者なら、できれば環境更新などのトラブルの種を避けたいのが願いですが、現状は難しい状況です。

更新トラブルを避ける対策

これらの各種更新による色々なトラブルを避ける最も簡単な方法は、更新を一時的にせよ停止/延期することです。Windows更新を停止/延期するには、コチラに方法が示されています。

EclipseベースのIDEやルネサスCS+の場合には、更新通知があっても、開発者が許可しない限り自動的に更新しないので、Windowsに比べ安心です。但し、開発中の案件が直面しているバグや問題が、更新で解決される場合もありますので、直面問題が開発環境起因かどうかの判断が重要です。

また、Windowsは、SSD/HDDの故障などにより、いとも簡単に起動不能になります。これら更新トラブルや起動不能に対処するには、メイン開発環境とは別に、もう1つ別のバックアップ開発環境があるのが理想的です。

但し、この場合でも、メイン開発環境とバックアップ開発環境のデータ同期に注意を払わないと、折角のバックアップ環境もムダになります。

※弊社開発環境もWindows起動不能に陥り、自動修復やbootrecコマンドで「全く楽しくない修復」を試みていますが、未だ解決していません。

EclipseベースIDEの日本語化

EclipseベースIDEで日本語化を望む場合には、Pleiades(プレアデス)というプラグインが使える可能性があります。個人的には、開発時に使うコマンドやボタンはF5やF8など決まっているので、英語版でも問題は無いと思っていますが、気になる方は、バックアップ環境で試すのも一案でしょう。

2018マイコンベンダ最新ニュース

弊社マイコンテンプレートで扱っております主要マイコンベンダ、NXP、ルネサス、STマイクロエレクトロニクス、Cypress各社の2018最新ニュースとRTOS関連ニュースの中から、ブログ対象MCU関連の情報をピックアップしました。

NXP

MCUXpresso IDEの新バージョン10.1.1_606がリリースされました。また、LPC8xx向けのLPCOpenライブラリv3.02もリリースされましたが、リリースノートを見てもv3.01のバグ解消は未処理のようです。

そのためか、MCUXpresso IDE v10.1.1付属LPCOpenライブラリもv2.19のままで、v3.02添付はありません。近いうちにv3.02の動作を調査する予定です。

ルネサス

インターシル社と完全統合した新生ルネサス誕生(2018年1月1日)。アナログ関連で高いスキルを持つ旧インターシル技術がRL78マイコンへも導入されそうな気配があります。Cortex-M0/M0+コアとの競争に生き残るには、汎用RL78マイコンのアナログ強化、センサ内蔵が方策なのでしょう。

但し、開発環境CS+の先行きには不安要素もあります。6月末提供予定のe2 studioのAI利用無償プラグインはRL78もカバーされますが、果たしてCS+でも同機能がサポートされるのかが気掛かりです。

e2 studio新プラグイン
e2 studio新プラグイン(記事より)

STマイクロエレクトロニクス

既にEWARM、MDK-ARM、TrueSTUDIO、SW4STM32の4種IDEをSTM32マイコン向けに提供中のSTMが、TrueSTUDIOの開発元スウェーデンのAtollic社を買収しました。

現状のEclipseベースTrueSTUDIO無償版もコードサイズ制限はなく、弊社使用中のSW4STM32無償版サイズ制限なしと機能的には同じです。このTrueSTUDIOとSW4STM32を比較し、なぜAtollicを買収したのかを探りたいと思います。

Cypress

最新マイコン評価ボードで紹介しましたCY8CKIT-062-BLE PSoC 6 BLE Pioneer Kitが、サイプレスサイトからも購入できるようになりました。また、サンプルソフト(Code Examples)も豊富に提供されています。

E-ink液晶を使ったArduinoシールドは、汎用性が高そうなので興味を惹かれます。

RTOS

mbed OS 5の新しいバージョンMbed OS 5.7.2 がリリースされました。Amazon FreeRTOSなど、MCU用RTOSの普及も2018年のトレンドになりそうです。

まとめ

2017年の半導体ベンダランキング(速報値)が発表されました。NXPは第10位(前年9位)です。2016年MCUランキングは、NXP>ルネサス>STM>Cypressの順でした。NXPとルネサスがMCUシェアの1/3を占めるのは、今年も変わらないかもしれません。

例年に比べ2018年はMCU各社の動きが早いように感じます。EVや自動運転、コネクテッドカーがMCU開発の動きに拍車をかけているのは間違いと思います。

新たな動向としては、ソフトウエア開発環境の整備です。数億、数十億個とも言われるIoTマイコン時代では、現状のようにオーダーメイドでのソフト開発では時間が掛かりすぎます。より高速で効率的なソフトウエア開発ツールやライブラリ活用術が求められるような気がします。

Runesas RL78開発者に読んでほしい記事

Runesas RL78開発者の方々へ読んでほしい記事、「ARMコアの普及:前後編」を紹介します。

記事概要

ARMコア普及の背景、理由、MCUベンダーメリット、開発者メリットなどが解り易く記載されています。

Runesas RL78開発者の方々は、日々忙しい開発スケジュールに追われ、課題解決のために情報収集などを行っていると思います。RL78情報は、日本語資料やかふぇルネによるコニュニティーサポートも充実しているので、日本人開発者にとってRL78は便利です。

但し、別MCUの状況を知ることも大切です。RL78は優れたMCUです。しかし、良いMCUや技術が生き残るかは、全く別問題です。開発者は、現状に拘らず、バックアップ技術も習得しておくことが大切です。

このバックアップ技術の候補を考えるうえで、上記記事は示唆に富んだ方向性を示してくれると思います。


CS+ V6更新後のウイルス対策ソフトAvastとの相性問題

先日RunesasのCS+がV6に更新されました。弊社マイコンテンプレート動作を、この最新CS+で確認しました。

但し、動作確認終了後、約1時間した後に、ウイルス対策ソフトAvast 17.5.2303から下記ワーニングが発生しました。CS+は、既に動作終了しています。

CS+とAvast相性問題
CS+とAvast相性問題

動作終了したCS+が原因だと気が付かずに、うっかり動作を阻止すると、CS+の今後の動作に支障が発生する可能性もありますので、私は、除外リストへCS+の当該処理を加えました(以前も同様のワーニング発生で同じ対処でトラブル回避しました)。

同じようなワーニングが発生した場合には、 参考にしてください。

CS+のスマート・ユーティリティ(スマート・ブラウザー編)

2017年1月にCS+パッケージバージョンV5.00.00  [05 Dec 2016]がリリースされました。確かバージョンV4から追加された3種のスマート・ユーティリティのうち、スマート・ブラウザーを説明します。

スマート・ユーティリティ
スマート・ユーティリティ

スマート・ブラウザー

組込マイコン:MCU開発を上手く効率的にする手法は、今風に言うと“サンプルソフトファースト”です。

分厚いユーザーズ・マニュアルを、初心者が読んでも眠くなるだけで時間のムダです。開発事案に近い例や使用する周辺回路が記載されたサンプルソフト=アプリケーション・ノートを先ず読んで、不明な箇所をユーザーズ・マニュアルの目次から拾い読みすれば十分です。

この開発例や周辺回路のサンプルソフトを見つけるのに便利なのが、CS+に追加されたスマート・ブラウザーです。

スマート・ブラウザー
スマート・ブラウザー

アプリケーション・ノートタブを選び、タイトルや機能で並び替えするとクイックにサンプルソフトが選定できます。ルネサスサイトでもアプリノート検索はできますが、CS+のスマート・ブラウザーの方が使い易く検索も高速です。

アプリノートは、ユーザーズ・マニュアルと比べると、一般的に内容をサラッと記述します。詳しくくどく書くこともできますが、読まれることを重視するとこの書き方になるのだと思います。サンプルソフトの読み方は、コチラも参照してください。

アプリノートの次に登場するのがユーザーズ・マニュアルです。こちらは、丁寧に記述されていますので、アプリノートの不明点を明確にし、その箇所を読めば時間節約ができます。近頃の開発は、1からディスクリートで着手する(≒オートクチュール)よりも、既にある既成品を上手く組み合わせて早期に開発する方(≒プレタポルテ)が好ましいと思います。これは、ハード/ソフトともに言えることです。

いかに既製品、この場合はアプリノートを見つけ、それを破綻なく組み合わせて顧客へ提供するのも1つの開発技術です。

複数アプリノートを簡単に組み合わせるマイコンテンプレート

1つのアプリノート流用で開発完了することは、稀です。大抵は、複数のアプリノートの部分利用、応用が必要となります。アプリノートは、内容をサラッと記述するために、初期設定+無限ループの2構成が殆どです。複数アプリを流用するには、アプリノート記載の無限ループ内処理の取り込み方が問題です。

そこで登場するのが弊社マイコンテンプレートです。マイコンテンプレートは、1個の無限ループ内に複数の時分割アプリランチャーを備えています。そこで、このランチャーに必要となるアプリノート処理を組み込めば、簡単に複数アプリノート処理をテンプレートで起動できます。しかも、低電力動作SleepやHaltの機能も追加しています。

マイコンテンプレートの詳細は、コチラを参照してください。

MCU開発は、開発完了が見極め難い性質があります。なるべく早く1次開発物を顧客に見せ、そのうえで2次開発へと進む段階を追った開発、いわゆるプロトタイピング開発もこの性質対応の1方策です。
このプロトタイピング開発の際には、是非マイコンテンプレートを活用し早期に、しかも拡張性や応用性もある開発物提供に役立ててください。

RL78消費電流シミュレータ解説ガイド

2016年9月の記事で、ルネサスRL78消費電流シミュレータのキャンペーンを紹介しました。2016年12月にこのシミュレータの解説ガイトがリリースされましたので、紹介します。

2種類の消費電流シミュレータ

解説ガイトから抜粋の2種類の消費電流シミュレータ比較結果を示します(本家サイト全検索も綺麗な表が見つかりませんので、低解像度はご勘弁を)。

Current Simulator Comparison
消費電流シミュレータの比較(記事より)

比較表上側:消費電源計算ツールが9月で紹介したWebシミュレータです。弊社9月記事で懸念したシミュレータの精度は、あくまで参考値だそうです。低消費電力が売りのRL78/G10、G13、G14、G1Dで対応品種が多く、Webで手軽に使えるツールなので、どの程度の参考になるかをもう少し具体的に、技術的に示してほしいです。

もう1つの実測値の±10%程度の精度がでるシミュレータ:比較表下側は、RL78/G10とG13に対応中で、e2 studioのプラグインで機能提供するものです。将来的には、こちらもクラウド対応にする計画があるとガイドに記載されています。シミュレータで10%誤差なら、結果に十分説得力があります。

CS+で使える消費電流シミュレータは?

気になるのは、この2番目のツールが、RL78/G1x開発では圧倒的に使い易いIDE CS+を差し置いて、e2 studioでのみ提供中である点です。ルネサスはe2 studioへIDEを一元化したいのでしょうか? それとも、CS+よりもe2 studioユーザが多い(あくまで推測ですが、その)結果が反映されたのでしょうか? CS+ユーザの私には非常に気になりました。

速報:Windows10 1607のマイコンIDE動作確認

Windows 10 Anniversary Update、Red Stone 1(RS1)のリリースが8月2日実施されました。

弊社マイコンテンプレート使用中のマイコンIDEを、このWindows 10 RS1、1607で動作確認しましたのでお知らせします。

IDEは、全て8月3日時点最新版です。マイコンテンプレートソフトのコンパイルと評価ボードへのダウンロード動作を確認しました。

マイコンIDEの詳細はコチラ、評価ボードはコチラに一覧表を掲載しております。

※Windows10 1511で動作していたものは、今のところ1607でも問題なく動作します。
※Windows 7時代に購入した評価ボードは、一部Windows 10で動作しない場合があります。この場合は、ボードドライバ(USBドライバ)の更新で動作するようになります。

Windows 10 1607動作確認マイコンIDE
マイコンIDE(ベンダ名) Windows 10 1607動作確認バージョン
CS+ for CC(ルネサス) V4.00.00 [15 Mar 2016]
e2 studio(ルネサス) Version: 5.1.0.022
LPCXpresso(NXP v8.2.0 [Build 647] [2016-07-18]
Kinetis Design Studio(NXP Version: 3.2.0
PSoC Creator(Cypress PSoC Creator  3.3 CP3 (3.3.0.9604)
Arduino IDE(Intel 1.6.10 Hourly Build 2016/07/26

 

マイコンIDE更新

扱うMCUデバイスの追加、WindowsやiOSなどのOS変更、Eclipseそのものの変更、バグ修正など様々な要因によりマイコン開発環境:IDEの更新は発生します。今回は、マイコンIDE更新について解説します。

更新通知と更新理由

マイコンアプリケーションソフト開発中ならば、リスクが増える可能性もあるIDE更新は避けたいものです。
このため「開発者が更新をするか否かを選択」できるのがマイコンIDEの特徴です。Windowsと大きく異なる点ですね。

更新判断には、「更新が発生」したか、「更新の理由」は何か、この2つを知る必要があります。この情報をIDEのWelcome画面のWebリンクで教えてくれるのがEclipseベースのIDEです。NXPのLPCXpressoの例を示します。

LPCXpresso Welcome page
LPCXpresso Welcome page

赤矢印のリンク先をみると、最新版IDEと、変更内容などが解ります。使用中のIDEと版数が異なる場合には、この内容を読んで更新判断ができます。新旧LPCXpressoは、緑囲いで示した版数毎に別フォルダへインストールされるので、IDE更新リスクがフォルダ内に閉じ込められるので安心です。

また、NXPに買収された旧FreescaleのKinetis Design Studio: KDSの例が下図です。Welcome画面に加え、Help>Check for Updatesで更新確認と新版インストールまでバックグラウンドで可能です。この機能は、LPCXpressoにはありません。

Kinetis Design Studio Check for Updates
Kinetis Design Studio Check for Updates

但し、私の環境では、ベースとなるEclipseのメジャー更新が関係しているのかもしれませんが、KDS V3.1からV3.2への更新ができませんでした。V3.2更新は、別途インストーラで可能です。やはりIDE更新確認ツールがあっても、時々サイトでIDEの最新版確認は、必要だと思いました。

また、CypressのPSoC Creatorは、Update Managerツールで更新確認とインストールができます。旧版はアーカイブ保存されるので、万一最新版にトラブルが発生しても安心です。

Cypress Update Manager
Cypress Update Manager

以上3社のマイコンIDEは、どれもEclipseベースのIDEですが、更新方法や旧版の扱いは各社異なります。

一方、ルネサス独自仕様のIDE:CS+もアップデート・マネジャーツールで更新します。独自仕様なので、細かい更新内容確認や、一部選択更新なども可能です。ツール・ニュースなどで更新、バグ情報を知らせてくれるのも役立ちます。
また、更新前に、「開発ツールをパックして保存(K)…」を実行すると、更新トラブル対策も可能です。

Runesus CS+ Packing tool
Runesus CS+ Packing Tool

マイコンIDE更新を安全にするには

マイコンIDEの更新トラブル回避には、OS起因でない場合は、旧版のIDEへ戻せることが必要です。また、Eclipseのメジャー更新時などは、操作方法が変わることもあるので注意が必要です。
開発案件のキリが良い時期に更新するのが安全策でしょう。

マイコンIDE開発経験を活かすには

弊社マイコンテンプレートで使用中の各社IDE特徴を示します。マイコンIDEは、Eclipseベースに集約されつつあるようです。今回は、同じベースでもIDEの更新方法が異なることを示しました。

これは、EclipseベースのIDEを使う時に覚えておくと役立つのが、各社共通のエディタやデバッグなどのコア機能であることを暗示しています。他社IDE使用時に、この経験が活かせるからです。

MCU IDE Comparison
マイコンIDE比較

マイコンIDE習得のコツやTipsは、コチラのページにもまとめています。参考にしてください。