TI)MSP432オープンプラットフォーム開発環境:Energia IDE

Texas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPadを使ってオープンプラットフォーム開発環境:Energia IDEの使い方を示します。Energia IDEは、簡単に言うとマイコン版Arduino IDE。Windows/Mac OS/UnixのマルチOS動作で、TIマイコンMSP430やC32xxなど、7種MCUのLaunchPad評価ボードをサポート中です。

IoT MCUの高度なセキュリティ実装を考えると、MCU開発者でもArduino IDEの使い方を知っておくのは有用だと前回投稿しました。
MSP-EXP432P401R LaunchPadを例にEnergia IDEの使い方を解説します。

Energia IDE

Energia IDEの使い方は、Arduino IDEと同じです。Single Board Computer開発で用いられるArduino IDEと同じ方法でTIマイコンのソフトウェア開発ができます。

Energia IDEインストール手順が以下です(と言っても、解凍だけで動作します)。

  1. Energia Downloadサイトから対応OSバージョンをダウンロードし解凍。Windows版では、解凍先フォルダがEnergia IDEの動作環境ですので、安心して試せます👍。
  2. 解凍先フォルダのenergia.exeクリックでEnergia IDEが起動します。デフォルトボードは、右下表示のMSP-EXP430F5529LPです。

    Energia IDE初期画面
    Energia IDE初期画面
  3. ツール>ボードマネージャでEnergia MSP432 EMT RED boards by Energiaをインストールします。
    ネットワーク環境に依存しますが、この手順2完了に少し時間がかかります。

    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール
    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール

    ※REDは、基板の版数:Rev 2.0 を示します。MSP-EXP432P401R LaunchPadには、BLACK:Rev 1.0もありますので注意してください。詳しくは、User’s Guide:SLAU597Fを参照してください。

  4. ボードマネージャでRED LaunchPad w/ msp432p401r EMT(48MHz)を選択。次に、評価ボードをPCに接続し、ツール>使用シリアルポートを選択(2ポートあってもどちらでも可)。書込装置はmspdebugを選択。
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択

    以上で、MSP-EXP432P401R LaunchPad のEnergia IDE環境セットアップが完了です。

MSP-EXP432P401R LaunchPadのスケッチ動作

  1. スケッチ例>内蔵のスケッチ例から、例えば、Basics>Fadeを選び、マイコンボードに書き込む:➡クリックでコンパイル実行と評価ボードへの書込みが完了し、動作します。スケッチ例とは、サンプルアプリケーションのことです。他にも様々なスケッチ例があり、➡クリックのみで簡単にMSP432P401R評価ボードスケッチ例の動作確認ができます。
    ※ボード書き込み時にエラーが発生する場合は、サイトのGuideからEnergia Driver Packageをダウンロードし、管理者権限でインストールすると解決します。

    スケッチ例:Fadeの実行
    スケッチ例:Fadeの実行

    スケッチ例のソースコードは、上図のように可読性が高く、初期設定:setup()と無限ループ:loop()の2つから構成されています。

現状は、セキュリティ関連のスケッチ例はありません。しかし、セキュリティは、全てのIoT MCUに必須で共通機能ですので、そのうち提供される可能性はあると思います。色々な周辺回路や機能をすぐに動作確認できるスケッチ例は、プロトタイプ開発に有効です。

関連投稿:Arduino IDEスケッチ例のソースコード

Energia IDEプログラミング

サイトのReferenceに、functions/variables/structureの3部構成のAPI説明書があります。各APIをクリックすると、初心者でも解り易い解説とEnergia IDEで試せるサンプルコードがあります。コード中のピン番号は、Pin Mapsで評価ボード毎に示されています。

このプログラミングに関する資料の解り易さが、Energia IDE(=Arduino IDE)の特徴です。デバイスで出来ることを直感的にすぐにプログラミングする情報としては、これら2サイト情報だけで十分です。

Cortex-M4カテゴリにTI)MSP432採用

本ブログのCortex-M4カテゴリへ、MCUとしてTexas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)を追加します。開発環境は、本稿のEnergia IDEとTI純正無償Code Composer Studio(CCS)、3つ目にCCS cloudを使う予定です。CCS  cloudは、次回解説します。

本ブログで、シェア上位5社MCUベンダとその主要MCUを全てカバーできたことになります(関連投稿:ARM Cortex-M4ベンダと評価ボードの2章)。

CMSISを使ってCortex-M4 MCUで開発したソフトウェアは、Cortex-M0/M0+/M3への流用も可能です(関連投稿:NXP MCUXpresso SDKから見るARMコアMCU開発動向)。
プロトタイプ開発は、高性能で開発リクスが少なく、様々なセキュリティ機能を試せるCortex-M4で行い、製品化時にコストメリットを活かすCortex-M0/M0+/M3を使うなどの方法や検討もありえるでしょう。

他のCortex-M4 MCUとしては、NXP)LPC54114(Cortex-M4/M0+)、STM)STM32G473RE(Cortex-M4)、Cypress)PSoC63(Cortex-M4/M0+)などをCortex-M4カテゴリへ追加予定です。

Sony)SPRESENSEオープンプラットフォーム開発環境

2019年9月、Sony)IoT向けMPU:SPRESENSE開発環境は、オープンプラットフォーム:Arduino IDEとSDK:Software Development Kitの2段構えにしたという記事が掲載されました。

オープンプラットフォームArduino IDEとSDKの2段構え開発環境(出典:記事)
オープンプラットフォームArduino IDEとSDKの2段構え開発環境(出典:記事)

本稿は、このオープンプラットフォーム開発環境の目的について、記事内に判り易い説明があったので紹介します。

MPU:Sony)SPRESENSE

Sony版ArduinoボードのSPRESENSEは、ARM Cortex-M4F/156MHzを6個(!)搭載したマルチコアMPUです。Raspberry Pi 4でお馴染みのMPU:Micro Processor UnitやArduinoなどのSingle Board Computerは、オープンプラットフォームと呼ばれ、仕様公開が特徴です。

Cortex-M4Fコア6個から構成されるSPRESENSE(出典:Sonyサイト)
Cortex-M4Fコア6個から構成されるSPRESENSE(出典:Sonyサイト)

最近になってCortex-M4とCortex-M0+のディアルコアが出始めた新世代MCU開発にも参考になる開発環境があるかも(?)と思い記事を読みました。

全コアが同等機能を持つシステムをSMP:Symmetric Multi-Processing、一方、一部コアの機能が異なるのはASMP:Asymmetric Multi-Processingと呼びます。SPRESENSEは、1個のメインコアが全体を管理し、残り5個のサブコアへのメッセージ送信でタスク指示するASMPです。ASMPは、組込みシステムへの最適化などに向いているそうです(関連記事:ASMPのアーキテクチャを学ぶ)。

実装コア数は違いますが、新世代ディアル/マルチコアMCUもアーキテクチャはASMPになると思います。新世代MCU:Micro Controller Unitとアーキテクチャは同じ、MCUも仕様公開されていますので、SPRESENSEと新世代MCUの環境は、同じ(近い)と言えます。

MCUとMPUのデバイス差は、弊社固定ページにもありますのでご覧ください。

オープンプラットフォーム開発環境の目的

記事では、“ArduinoやRaspberry Piなどの「オープンプラットフォームユーザ」は、このデバイスを使ったら、どんな面白い商品を作れるかというチャレンジからベンダー製品を使い始める”とあります。このチャレンジ判断に適しているのが、Arduino IDE開発環境です。

「MCUユーザ」は、“ベンダー製品を手に取るとき、既にユースケースが決まっていて、MCUラインナップの中でユースケースにフィットするメモリサイズや処理性能デバイスを選ぶ”のだそうです。コスト最重視の従来MCU製品では、当然の選択方法です。

つまり、誰でも簡単に「デバイスを使って得られるサービスや機能にフォーカス」したのがArduino IDEで、どのように作ったか、その性能などを明らかにする一般的なIDEとは、その目的が異なるのです。

どうしても処理ソースコードや使用メモリ量などの(HowやWhere、Why)に目が行く筆者とは、オープンプラットフォームユーザの視点(What)が違うことが記事から理解できました。

例えば、マルチコアのサンプルアプリケーション実行は、Arduino IDEを使えば、開発環境セットアップに25分、プログラム実行に5分、合わせて作業時間30分で完成するそうです(関連記事より)。

デバイスで出来ることを、「すぐに試し判る」のがオープンプラットフォーム:Arduino IDEの目的です。

IoT MCUセキュリティ実装判断にArduino IDE環境

記事を読んだ後、IoT MCUのセキュリティ実装に関して、Arduino IDE(的)環境が適すと思いました。

セキュリティ機能は、セキュリティ専門家が開発したソースコード(ライブラリ)に対して、実装担当のMCU開発者が工夫をこらす余地はありません(頑張ってコード改良や開発しても、時間の無駄になる可能性大です)。

要は、目的のセキュリティ機能が、使用予定のIoT MCUへ実装できるか、将来追加の可能性があるセキュリティ実装に対して余力/余裕はあるか、が判れば十分です。

これを判断するには、Arduino IDEと同じような開発環境が適すと思います。IoT MCUへのセキュリティ実装や機能更新は、必須になりつつあります(前回投稿参照)。苦労して開発したIoT MCUであっても、セキュリティ機能が実装できなければ、全く役立たなくなるのです。

従って、多くのセキュリティライブラリから目的の機能を選び、簡単にIoT MCUへ実装し、動作確認できるArduino IDE(的)開発環境にも、これからのMCU開発者は慣れていることが必要だと思います。

TI)MSP432P401R評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPad

Texas Instrument)MCU:MSP432P401R(ARM Cortex-M4F、48MHz、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション、256KB/Flash、64KB/RAM)搭載の評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPad™は、TI純正無償IDE:CCSコードサイズ制限のため、Cortex-M4カテゴリデバイスとして採用失敗したと投稿しました。

しかし、MSP-EXP432P401R LaunchPadの開発環境には、Arduino IDEによく似たEnergia IDEもあります。このEnergia IDEの詳細や、MSP-EXP432P401R LaunchPad™での使い方が分かりましたら投稿します。

Energia IDE(出典:Energiaサイト)
Energia IDE(出典:Energiaサイト)

P.S.:2019/3Q発売予定のPSoC 4000S/4100S専用タッチUIテンプレート開発も遅れが発生しており、上述MSP432P401RのCortex-M4カテゴリ採用失敗等々…トラブル続きです。猛暑でPC(と筆者)の調子が悪いのが、諸悪の根源だと思います😭。
本稿のEnergia IDEが、MSP432P401R採用失敗の挽回策になれば嬉しいのですが、暫くEnergia IDEを使ってから判断したいと考えています。

総務省:2020年4月以降IoT機器アップデート機能義務化予定

総務省は、電気通信事業法を改正し、2020年4月以降「IoT機器アップデート機能義務化を予定」しているそうです(日経ビジネス2019年9月6日有料会員限定記事、“モノのインターネットに死角あり 狙われるIoT機器”より)。

本稿は、普通のMCU開発者が知るべき最低限のIoT MCUセキュリティ対策をまとめてみたいと思います。

IoT MCUセキュリティ

記事には、“歴史の浅いIoT機器は、開発者とユーザ双方にセキュリティ意識が欠如している“、”開発者は、便利で魅力的な機能搭載を優先し、セキュリティ配慮は2の次”とあります。確かにそうゆう見方はあります。

しかし、サイバー攻撃やセキュリティ関連ニュースが溢れる昨今、開発者/ユーザともに無関心ではないハズです。むしろ、現状のMCU能力では、セキィリティ強化が無理な側面を十分知った上で妥協している(目を瞑っている)のが事実だと思います。

セキィリティ関連記事は、その性質上、英語の省略用語を多用し、漏れがない細かい説明が多いので、全体を把握したい普通のMCU開発者には、解りにくいと筆者は考えています。

そこで、全体把握ができるMCUセキュリティのまとめ作成にトライしたのが次章です。

サイバー攻撃対策

MCUセキュリティ機能は、サイバー攻撃を防ぐための対策です。サイバー攻撃には、以下3種類があります。

  1. ウイルス感染
  2. 通信傍受
  3. 通信データ改ざん

2)通信傍受対策には、暗号化が効果的です。暗号化処理には、データをやり取りする相手との間に鍵が必要で、共通鍵と公開鍵の2方式があります。共通鍵は、処理負荷が公開鍵に比べ小さく、公開鍵は、鍵を公開する分、処理負荷が大きくなる特徴があります。

3)通信データ改ざん検出には、ハッシュ関数(=要約関数)を使います。ハッシュ関数に送信データを与えて得た値をハッシュ(=要約値)と言います。送信データにハッシュを追加し、受信側でハッシュ再計算、送受ハッシュ一致時がデータ改ざん無しと判定します。

2)と3)は、データ通信が発生するIoT MCUセキィリティ機能です。暗号化、ハッシュ関数は、新サイバー攻撃に対し、次々に新しい防御方式が提案される鉾と盾の関係です。MCU外付けセキュリティデバイス(例えばNXPのEdgeLock SE050など)によるハードウエア策もあります。

PCやスマホのようなウイルス対策ソフト導入が困難なMCUでは、1)のウイルス感染対策に、MCUソフトウェアのアップデートで対応します。総務省は、IoT機器にアップデート機能とID、パスワード変更を促す機能を義務付ける予定です。
※開発者自身で溢れるウイルス状況を常時監視し、ソフトウェア対応するかは不明です。

従来のMCUソフトウェアアップデートは、UART経由やIDE接続で行ってきました。しかし、ネットワーク経由(OTA)やアクセス保護のしっかりしたソフトウェア書換えなどを、1)のアップデートは想定しています。

以上、ごく簡単ですが、MCUセキュリティ対策をまとめました。

総務省の「IoT機器アップデート機能義務化」が、具体的にどのようになるかは不明です。ただ、無線機器の技適規制などを考えると、技術ハードルは、かなりの高さになることが予想できます。

サイバー攻撃対策のIoT MCUセキュリティ
サイバー攻撃対策のIoT MCUセキュリティ

ディアルコアや超高性能汎用MCUの背景

簡単にまとめたMCUセキィリティ対策を、IoT機器へ実装するのは、簡単ではありません。

実現アプローチとしては2つあります。

1つ目は、ディアルコアMCU(例えばNXPのLPC54114、関連投稿:ARM Cortex-M4とM0+アプリケーションコード互換)や、超高性能な汎用MCU(例えばSTMのSTM32G4、関連投稿:STM32G0x専用テンプレート発売1章)が各ベンダから発売中です。

これら新世代MCU発売の背景は、従来MCU処理に加え、法制化の可能性もあるセキュリティ処理実装には、MCU処理能力向上が必須なためです。

ワールドワイドにIoT機器は繋がります。日本国内に限った話ではなく、地球規模のIoT MCUセキュリティ実装に対し、ディアルコアや超高性能汎用MCUなどの新世代MCUでIoT機器を実現するアプローチです。

2つ目が、セキュリティ機能が実装し易いMPU(例えばRaspberry Pi 4など)と、各種センサー処理が得意なMCU(旧世代MCUでも可能)のハイブリッド構成でIoT機器を実現するアプローチです。

MCUXpresso IDE v11をLPC845 Breakout boardで試す

まとめ

NXPのMCUXpresso IDE v11.0.0 [Build 2516] [2019-06-05]を使い、LPC845の評価ボードLPC845 Breakout boardの動作を確認し、サンプルプロジェクト赤LED点滅を緑LEDへ簡単に変更できる、SDK:Software Development Kitメリットを示しました。

LPCOpenライブラリなどを使った旧IDEに比べ、SDKを使うMCUXpresso IDE v11は、より早く簡単にソフトウェア開発が可能です。また、IDE更新とSDK更新が別々なため、常に最新ドライバ、BSP:Board Support Packageでの開発ができます。これもSDKメリットの1つです。

SDKは、ソフトウェア開発速度を上げる専用ライブラリ集です。MCUXpresso IDE v11のSDKを習得し、効率的なソフトウェア開発に慣れる必要があります。
これには、実際に評価ボード専用SDKを作成し、サンプルプロジェクトへ変更/修正を加え、SDKメリットを実感するのが早道です。本稿で用いたLPC845 Breakout boardは、SDK習得に好適です。

LPC8xxをアップグレートしたLPC845(64KB Flash、16KB RAM)評価ボード:LPC845 Breakout boardは、タッチパッド+デバッガ付きで低価格(¥697)、少サイズ(65x18mm)です。このサイズならそのまま装置へ実装も容易です。現場での短時間制御系アップデートや修理交換などに応用できます。

LPC845 Breakout board

LPC845 Breakout board
LPC845 Breakout board(出典:LPC84X MCU TECHNICAL OVERVIEWへ加筆)

LPC8xxシリーズは、アップグレートしたLPC84xとコストダウンしたLPC80xの2方向へ発展しました(関連投稿:NFCを使うLPC8N04のOTA)。LPC845評価ボード:LPC845 Breakout board (Cortex-M0+/30MHz)を入手しましたので、最新のLPCXpresso IDE v11を使って動作確認します。

LPCXpresso IDE v11.0.0 [2019-06-05]

最新LPCXpresso IDEは、v11.0.0 [2019-06-05]です。旧IDEからSDK:Software Develipment Kit追加、Pin設定方法が変わりました。既に旧IDEを使い慣れた方は、SDK活用の新LPCXpresso IDE v11に少し驚きを感じると思います。

LPCXpresso IDE v11ダウンロードとインストール

LPCXpresso IDE v11のダウンロードとインストールは、普通のPCアプリケーションと同じです。旧IDEではインストール後、アクティベーション手順が必要でしたが、v11は不要です。

また、デフォルトではプログラム/workspace共に専用フォルダ:MCUXpressoIDE_11.0.0_2516へ展開されます。つまり、旧IDEと共存します。ストレージ使用量は多くなりますが、共存するので安心して新旧IDEを試すことができます。

インストール後、Help>Check for Updatesを実行しIDEの更新有無を確認します。

また、最初のMCUXpresso IDE v11起動時にセキュリティソフトが警告を出すことがあります。お使いのセキュリティソフトに応じて対応してください(筆者Windows 10 Pro 1903のAvastは警告を出しましたので、例外追加で対応しました)。

LPCXprsso IDE v11インストール起動画面
LPCXprsso IDE v11インストール後、最初の起動画面

SDK Builder

SDKは、周辺回路ドライバ、サンプルプロジェクト、評価ボードサポートパッケージ:BSPなどを含む開発支援ツールです(SDKユーザガイドはコチラ)。インストールしたMCUXpresso IDEとは別に、ネット上のSDK BuilderでLPC845 Breakout board専用SDKを作成します(要ログイン)。

SDK BuilderのSelect Development Boardをクリックし、LPC845BREKOUTを選択します。後は、Build MCUXpresso SDKをクリックすると、作成したSDKの圧縮ファイル:SDK_2.6.0_LPC845BREAKOUT.zipがダウンロードされます(2.6.0は版数)。
※評価ボードによっては、Amazon-FreeRTOS、Azure IoTなどのミドルウェアもSDKへ追加可能です。

SDK設定

ダウンロードしたSDK圧縮ファイルを、LPCXpresso IDEのInstalled SDKsビューへドラッグ&ドロップするだけでSDK設定は完了です。

LPC845 Breakout boardの赤LED点滅動作

SDKにはLPC845 Breakout boardの赤LED点滅させる、いわゆるLチカサンプルプロジェクトがあります。このLチカソフトで評価ボードの動作確認をします。

IDEのQuickstart Panelビュー、Import SDK example(s)…をクリックします。Lpc845breakoutを選択後Nextをクリックします。Examplesのdemo_appsを開くとled_blinkyが現れます。これがLチカサンプルです。

Led_blinkyに☑を入れFinishをクリックすると、workspace内にlpc845breakouty_led_blinkyプロジェクトが展開されます。

LPC845 Breakout boardのLED点滅サンプルプロジェクトのインポート
LPC845 Breakout boardのLED点滅サンプルプロジェクトのインポート

何も変更せずに、Quickstart PanelビューのBuildをクリックするとコンパイルが成功します。評価ボードをPCと接続しDebugのクリックでCMSIS-DAPプローブを自動認識し、デバッグモード画面へ変わります。

後は実行などで赤LEDが1秒毎に点滅する動作が確認できます。

SDKサンプルプロジェクトそのものの動作確認は、以上のように簡単です。SDKのメリットは、プロジェクト変更や機能追加が簡単にできることです。例を次に示します。

LPC845 Breakout boardの赤→緑LED点滅の変更

赤LEDへの制御を緑LEDへ変更するには、IDEをDevelop画面からPin画面へ切替えます。切替は、Open Pinsクリック、またはIDE右上のデバイスアイコンのクリックどちらでもOKです。

LED_LED点滅からGREEN_LED点滅変更のPin画面
LED_LED点滅からGREEN_LED点滅変更のPin画面

Pin画面は、プロジェクト使用中のピン名、周辺回路などがハイライト表示されます。

lpc845breakouty_led_blinkyプロジェクトの場合は、PIO1_2とGPIOで、IdentifierにLED_REDとあります。Identifireは、ソースコード中で使えるマクロです。LED_GREENやLED_BLUEが既にあるのも解ります。このように評価ボード実装済みのハードウエアが、あらかじめSDKで定義済みです。

赤LED→緑LED変更は、Pin11のLED_GREENに☑を入れ、表示されるPIO1_0選択肢からデフォルトのGPIO,PIO_1_0を選びます。次にUpdate CodeをクリックすればPin画面の変更がソースコードへ反映されます。

LED_RED点滅からLED_GREEN点滅へのピン変更
LED_RED点滅からLED_GREEN点滅へのピン変更

ソースコード表示のDevelop画面へ切替えるには、右上のDevelopアイコンをクリックし、L16をコメントアウト、代わりにL17の追記で赤→緑LED点滅への変更完了です。ビルドして緑LED点滅動作を確認してください。

LED_RED点滅からLED_GREEN点滅へのソースコード変更
LED_RED点滅からLED_GREEN点滅へのソースコード変更

このようにサンプルプロジェクトの変更は、SDKに評価ボード実装ハードウエアが定義済みなので、ボード回路図を確認せずにすぐにできます(回路図を確認すれば万全ですが…😅)。

さて、緑LED点滅動作が確認できた後にソースコードへ下記3か所の変更を加えてください。

BSPを使った赤LEDの点滅
BSPを使った赤LEDの点滅

これは、board.hで定義済みのBSPを使った赤LED点滅へのソースコード変更です。追記したLED_RED_INIT(0)とLED_RED_TOGGLE()は、board.hに記述があります。L80:GPIO_PortToggle()よりもL81:LED_RED_TOGGLE()の方が、ソースコード可読性が高いことが解ります。

BSPは、評価ボードで使用頻度が高い関数やマクロを定義します。BSP活用でソースコード可読性が高まりケアレスミスも減ります。BSPは、SDK作成時に生成されます。

LPC845 Breakout boardのSDK活用例を示しました。SDKメリットも実感できたと思います。

LPCOpenライブラリを使ったLPC8xxテンプレートも、新しいSDK対応へUpgradeする必要があるかもしれません。SDKは、新しい評価ボードから対応中なので、残念ながら少し待つ必要があるかもしれませんが…😅。

ARM Cortex-M4ベンダと評価ボード(選択失敗談)

本稿は、模索中のCortex-M4評価ボード選択の失敗談です。

初心者・中級者のMCU習得・開発を支援するのが本ブロブの目標です。手段として、個人でも入手性の良い低価格MCU評価ボードを使い、効率良く具体的にポイントを把握できる記事作成を心掛けています。

先日のIoT市場を狙うデュアルコアMCUで、本ブログでこれまで取り上げてきたMCUコア以外にARM Cortex-M4開発経験がIoT要件になる可能性を示しました。そこで、新たにCortex-M4カテゴリをブログに加えたいと考えているのですが、今日現在、適当な評価ボードや開発環境が見つかっておりません。

ARM Cortex-M4カテゴリ

Cortex-M4カテゴリは、急増するIoT開発に対する個人レベルでの先行準備的な位置付けです。

ARM Cortex-M0/M0+/M3コアやルネサスS1/S2/S3コア習得が初級レベルの方は、開発障壁が少し高いかもしれません。なぜなら、Cortex-M4コアの知識ベースはCortex-M0/M0+/M3だからです。この高さ軽減のため、過去のブログ関連投稿をリンク付けします。

中級レベルの方は、Cortex-M4の高いMCU能力を、Cortexコア間のアプリケーション移植やRTOS活用への発展、IoTで高度化するセキュリティ機能の実装などに意識してCortex-M4カテゴリ記事をご覧頂ければ役立つと思います。

32ビットMCUベンダシェアと本ブログカテゴリ

2018年の32ビットMCUベンダシェアが、6月7日投稿InfineonのCypress買収で示されています(下図右側)。

買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)
買収成立時の自動車と32ビットMCUシェア(出典:EE Times記事)

上位5ベンダ(Runesas、NXP、STM、Cypress、TI)と、本ブログカテゴリとの関係が下表です。

例えば、NXPのLPCマイコンでCortex-M0+記事であれば、MCUカテゴリはLPCマイコン、32ビットコアカテゴリはCortex-M0+などとカテゴリが重複する場合もあります。ただ、本ブログのカテゴリ記事数(n)がベンダシェアや、Cortexコアの人気傾向を示しており、32ビットMCUベンダシェアともほぼ一致します。

2018年MCU上位5ベンダと本ブログカテゴリの関係
MCUベンダ(シェア順) MCUカテゴリ 32ビットコアカテゴリ
Runesas RL78マイコン なし
NXP LPCマイコン/Kinetisマイコン Cortex-M0/M0+/M3/M23マイコン
STM STM32マイコン Cortex-M0/M0+/M3マイコン
Cypress PSoC/PRoCマイコン Cortex-M0/M0+マイコン
Texas Instruments なし なし

※Cypress+Infineonは買収成立と仮定

ルネサスMCUは16ビットコア(S1/S2/S3)のみ掲載中です。理由は、同社32ビットコアMCU開発環境が、コンパイラ1ライセンス当たり10万円程度と高価で、個人レベルでのライセンス購入が困難なため、本ブログ対象外としたからです。

MCUベンダシェアとカテゴリとを俯瞰すると、Texas Instrument(以下TI)とCortex-M4カテゴリがないことが解ります。※32ビットMCUコアでNon ARM系のRunesasを除くと、事実上Cortexコアのみで、その中で記載が無いメジャーMCUコアがCortex-M4です。

そこで、TIのARM Cortex-M4Fマイコン、MSP432の評価ボードを調査しました。

ARM Cortex-M4F搭載MSP432評価ボード

MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図
MSP-EXP432P401R LaunchPad Kitとブロック図

低消費電力MSP432P401R(ARM Cortex-M4F、48MHz、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション、256KB/Flash、64KB/RAM)搭載の評価ボード:SimpleLink™ LaunchPad™です(TIは評価ボードをローンチパッドと呼びます)。Digi-KeyMouser秋月電子(秋月電子は在庫限りRev 1.0 (Black)、2100円)で低価格購入可能です。

他社ARM MCU評価ボードで一般的に用いられるArduinoコネクタ増設ではなく、BoosterPack(ブースタパック)と呼ぶTI独自拡張コネクタでBLEやWi-Fi機能を追加します。また、SimpleLink AcademyトレーニングというWebベースの教材などもあります。

MSP432評価ボード単体では、情報量の多さ、価格ともに魅力的です。Cortex-M4クラスの評価ボードでも、Cortex-M0/M0+/M3プラスアルファの低価格で入手できるのには驚きました。プロトタイプ開発は全てCortex-M4で行い、製品時Cortex-M0/M0+/M3を選択する方法もありだと思います。Cortex-M4とM4Fの違いは、本稿PS:パート2動画で解ります。

MSP432P401Rの開発環境は、TI純正無償Code Composer Studio(CCS)です。但し、無償版CCSはMSP432利用時32KBコードサイズ制限付きです。当面32KBでも十分ですが、制限解除には有償版(サブスクリプション)が必要です。

低価格評価ボードがあるのに開発環境に個人での使用に障害がある事象は、Runesas 32ビットMCUと同じです。

以上から本ブログのCortex-M4カテゴリに、TI:MSP-EXP432P401R LaunchPad を使うのは、有償開発環境の点から断念しました(NXP/STM/Cypressは、無償版でもコードサイズ制限無しです)。

まとめ

2018年32ビットMCUベンダシェアから本ブログ記事を俯瞰した結果、Cortex-M4カテゴリとベンダのTexas Instrumentが欠けていることが解り、ARM Cortex-M4F搭載のTI)MSP432P401R評価ボードMSP-EXP432P401R LaunchPad導入を検討しましたが、無償CCSコードサイズ制限のため採用を見合わせました。

勤めている企業の取引の関係でベンダや開発に使うMCUは、既に決まっていることが多いです。しかし、開発者個人レベルでは、ポケットマネーの範囲内で、ベンダもMCU選択も自由です。

ARM Cortex-M4 MCU開発経験はIoT普及期には必須になる可能性があります。普及期への先行準備、また、仕事以外のMCUを手掛けることによる視野拡大、リスク回避手段に適当なCortex-M4評価ボードを選択し、Cortex-M4カテゴリ投稿を計画しています。初回は、Cortex-M4評価ボード選択の失敗談となりました。

PS:TIサイトに下記MSP432日本語版トレーニング動画(要ログイン)があります。ARM Cortex-M4Fを使ったMSP432の全体像が効率的に把握できます。

タイトル 所要時間
パート 1 : MSP432 概要 09:24
パート 2 : ARM Cortex-M4F コア 08:12
パート 3 : 電源システム 05:25
パート 4 : クロック・システム、メモリ 07:53
パート 5 : デジタル・ペリフェラルとアナログ・ペリフェラル 10:07
パート 6 : セキュリティ 05:15
パート 7 : ソフトウェア 07:29
パート 8 : MSP430 から MSP432 05:06

IoTを狙うデュアルコアMCU

CypressのPSoC 6を中心にNXPとSTM、3社のARMディアルコアMCUを調査しました。Cortex-M4とCortex-M0+を使う個人でも低価格で入手できるディアルコアMCUです。ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション、シングルコアMCUソフトウェア開発との違いなどを説明します。

Cortex-A7とCortex-M4を使ったもう1つの超高性能ディアルコアMCUも少しだけ登場します。

ディアルコアMCUの狙い、アプリケーション

ディアルコアMCUの狙い
ディアルコアMCUの狙い(出典:Cypress Cortex-M4 PSoC 6サイト)

CypressのCortex-M4コアPSoC 6サイトの上図がディアルコアMCUの狙いを示しています。

つまり、「IoT市場獲得には、右側アプリケーションプロセッサからと左側マイクロコントローラ:MCUからの2つのアプローチがあり、MCUアプローチのPSoC 6は、処理能力とセキュリティ強化を低コスト、低電力で実現した」ということです。

PSoC 6は、実現手段としてメインコアにCortex-M4(150MHz)、補助コアにCortex-M0+(100MHz)のディアルコアを採用しています。このCortex-M4+Cortex-M0+の2MCU構成は、NXP:LPC54102STM:STM32WB55RGでも見られます。CypressとSTMは、Cortex-M0+側にBluetooth Low Energy無線通信機能を実装済みです。

PSoC 6は、実装セキュリティに応じてPSoC 62/63シリーズと3種類のPSoC 64シリーズに別れます。PSoC 62/63は、PSoC 6のセキュリティ機能とユーザ独自セキュリティファームウェア(ソフトウェア)を使うデバイス(次章参照)、最上位プレミアムセキュリティのPSoC 64は、標準的なセキュリティ機能を全て含むデバイスです。

一方、アプリケーションプロセッサアプローチは、NXP:iMX 7アプリケーションプロセサのようにスマホやRaspberry Piでも用いられたCortex-A7(800MHz)がメインコアで、Cortex-M4(200MHz)が補助コアです。このアプローチは、ソフトウェア開発規模が大きく評価ボードも高価で個人開発向きとは言いにくいと思います。Cortex-A7自身がマルチコアでOS利用が前提なので更に複雑になります。

まとめると、低コスト低電力で処理能力とセキュリティ強化目的のCortex-M4+Cortex-M0+ディアルコアMCUの狙いは、IoTアプリケーションです。PSoC 63搭載の評価ボード:CY8CPROTO-063-BLEの価格は¥2,289(Digi-Key調べ)で、個人でも手が出せる価格帯です。

ディアルコアMCUのソフトウェア開発

PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)
PSoC 63 Line with BLE (Applications and Freatures)

Cypress Roadmap: MCU Portfolio、P25から抜き出したPSoC 63のアプリケーションとFeaturesです。具体的なIoTアプリケーションや、実装セキュリティ機能が解ります。
※ご参考までにこのMCU Portfolioには、CapSenseテンプレート開発で用いたPSoC 4000S/4100S仕様も解り易く掲載されています。

同じP25記載のPSoC 63ブロック図です。Cortex-M4とCortex-M0+がメモリ結合されています。

PSoC 63 Line with BLE (Hardware)
PSoC 63 Line with BLE (Hardware)

PSoC 6のソフトウェアは、Cortex-M4とCortex-M0+それぞれのソフトウェアが、2つ同時に別々に動作します。簡単に言うと、各シングルコアMCUソフトウェア同士が、同じデバイス内で動きます。メモリ結合なので、同一メモリアドレス同時アクセスの競合回避手段なども多分あるハズです(←調査不足😌)。

つまり、ディアルコアMCUソフトウェア開発と言っても、従来のCortex-M4やCortex-M0+シングルコアMCUソフトウェア開発の経験やスキルがそのまま活かせるのです。

一方のMCUから見ると、片方のMCUはインテリジェントな周辺回路と同じです。

例えば、Windowsソフトウェア開発なら、1つの機能を複数スレッドに分割し、処理効率を上げるなどのマルチコア対応の工夫が必要です。しかし、Cortex-M4+Cortex-M0+デュアルコアMCUの場合は、シングルコアのソフトウェア開発手法がそのまま使えます。

差分は、「2つのMCUに、どの機能を割振るか」です。

FPU内蔵のCortex-M4は、セキュリティなどの計算処理、高速GPIOアクセスのCortex-M0+は、IO処理やBLEモジュール管理、というのが定番(CypressやSTMのディアルコアMCUにみられる)割振りのようです。

まとめると、ディアルコアMCUソフトウェア開発は、シングルコアMCU開発経験がそのまま活かせます。しかも、別々動作の2コアを持つので、RTOSを使わずに処理分離と本当の並列動作ができます。

また、個人入手可能な評価ボード価格も魅力です。

評価ボード搭載のPSoC 63:CY8C6347BZI-BLD43(116-BGA)は、BGAパッケージなので基板実装は簡単ではありません。しかし、このPSoC 63とBLEアンテナをモジュール化したCYBLE-416045-02(14.0 mm x 18.5 mm x 2.0 mm、43-pad SMT with 36 GPIOs、下図)が評価ボードに実装済みで単体購入も可能です。

また、個人利用の場合には、評価ボードを丸ごと基板実装するのも効果的です。

EZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02
CY8C6347BZI-BLD43搭載のEZ-BLE Creator Modules CYBLE-416045-02

ディアルコアMCUへの対処案

ディアルコアMCUの狙いは、巨大なIoT市場です。

各社がディアルコアMCUを発売する理由は、高度化するセキュリティ機能や、どの規格かが不確定な無線通信機能に対して、現状のシングルARMコアMCUでは、処理能力不足が懸念されるためです。
※近距離無線通信の有力候補が、BLEであることは確かです。

ディアルコアMCUならば、たとえ規格が変わっても、その影響を片方のMCU内に止めることもできます。つまり、ソフトウェア資産が無駄にならない訳です。

IoT市場へは、Cortex-M4+Cortex-M0+と、Cortex-A7+Cortex-M4のアプローチがあります。Cortex-M4を用いる点ではどちらも一致しています。FPU内蔵Cortex-M4ソフトウェア開発や経験が、IoT MCUプログラマの必須要件になるかもしれません。

シングルコアMCU開発経験が活かせ、しかもRTOSを使わずに高速並列処理を実現できるディアルコアMCUのソフトウェア/ハードウエア開発を、評価ボードへの僅かな投資で、IoTが爆発的に普及する前から準備・習得するのは、技術者リスク回避の点からも必要だと思います。

汎用STM32FxテンプレートのSTM32G0x使用法

LL APIを利用するSTM32G0x「専用テンプレート」開発は、3月からの投稿で一応目安が付きました。
※投稿下欄タグ:専用テンプレートをクリックすると本稿を含め関連投稿が読めます。

これらの投稿で販売中の汎用STM32Fxテンプレートは、HAL APIを使っているので別STM32MCU、例えばG0シリーズMCUのSTM32G071RBなどへの使用・移植も簡単であることを何度か書いてきました。

そこで、この「汎用テンプレート」のSTM32G071RBへの使用法を説明します。

STM32Fxテンプレートは、図1に示すようにF0シリーズMCUのSTM32F072RBと、F1シリーズMCUのSTM32F103RB両方で動作確認済みです。本稿は、このSTM32FxテンプレートをSTM32G0へポーティングします。

汎用STM32Fxテンプレートのソフトウェアアークテクチャ
汎用STM32Fxテンプレートのソフトウェアアークテクチャ

汎用STM32FxテンプレートのSTM32G0x使用法まとめ

  • HAL APIはSTM32MCUで共通なので、HAL API利用アプリケーション(この場合はテンプレート、STM32Fx Template)は、STM32デバイスが変わってもそのまま使える
  • HAL APIより下層のソフトウェアは、STM32CubeMXを使って自動生成
  • STM開発環境にMCU移植機能が無い現状では、移植デバイス先のSTM32CubeMX設定さえ間違わなければ、HAL APIより上層アプリケーションの使用・移植は、簡単

汎用STM32Fxテンプレートを購入検討中の方、または既にSTM32Fxテンプレートをお持ちの方は、HAL API利用STM32Fxテンプレートの別デバイス移植性が優れていることが本稿でご理解頂けると思います。

汎用STM32F0シンプルテンプレートのSTM32G071RB移植手順

手順1.SW4STM32で、F0SimpleTemplateプロジェクト名をG0SimpleTemplateへリネームコピー

手順2.STM32CubeMXで、評価ボードNucleo-G071RBプロジェクトを新規作成し、F0SimpleTemplate.icoと同じ変更を加え、手順1でリネームしたG0SimpleTemplate.icoへ上書き保存後、コード生成

手順3.SW4STM32で、G0SimpleTemplateのmain.cとUserDefine.hなど数か所を変更&コンパイル

手順4.STM32G071RB評価ボードNucleo-G071RBで、移植シンプルテンプレート動作確認

文章で書くと手順1~4のように量が多くなります。しかし、HAL APIはSTM32MCUで共通、デバイスが変わってもHAL API利用アプリケーションをそのまま使うために、下層の構築にSTM32CubeMXを使うだけです。HAL APIアプリケーション移植は簡単です。

手順詳細を説明します。

手順1:SW4STM32で、F0SimpleTemplateプロジェクトをG0SimpleTemplateへリネームコピー

F0SimpleTemplateをコピー、同じワークスペースへペーストする時にG0SimpleTemplateへリネームします。

F0SimpleTemplateをG0SimpleTempleteへリネームコピー
F0SimpleTemplateをG0SimpleTempleteへリネームコピー

G0SimpleTemplateフォルダ内のF0SimpleTemplate.iocをG0SimpleTemplate.iocへF2:リネームします。
※手順1の目的は、F0SimpleTemplateソースコードのユーザ追記部分を、丸ごとG0SimpleTemplateで流用するためです。

手順2:STM32CubeMXで、Nucleo-G071RB新規作成とコード生成

現状のSTM32CubeMXには、MCUデバイス間の移植機能がありません。そこで、F0SimpleTemplate.iocファイルを見ながら、新規作成Nucleo-G071RBの周辺回路を手動で同じ設定にします。

先ずG0SimpleTemplete.iocファイルを新規作成し、手順1でリネームしたG0SimpleTemplete.iocへ上書き保存します。その後、STM32CubeMXの2重起動を活かしF0SimpleTemplate.iocを見ながらG0SimpleTemplete.ioc周辺回路を同じ設定にします。最後に、全ての周辺回路をHAL APIでコード生成します。

STM32CubeMXのNucleo-G071RB設定
STM32CubeMXのNucleo-G071RB設定

※Connectivityは、F0SimpleTemplateに合わせてUSART2、Clock Configurationは、HCLK Max.の64MHz、Timerは、F0SimpleTemplateのTIM3機能に近いTIM7を使いました。

手順3:SW4STM32で、main.cとuserdefine.hの数か所を修正&コンパイル

どのようなアプリケーションソフトでも、デバイス依存の箇所があります。F0SimpleTemplateも同様です。これらは手動で変更・修正するとビルドが成功します。変更・修正箇所が下記です。

  • HALライブラリとBSP(Board Support Package)変更
    stm32f0xx_hal.h→stm32g0xx_hal_conf.h、stm32f0xx_nucleo.h→stm32g0xx_nucleo.h(UserDefine.h)
  • BSPはRepository\STM32Cube_FW_G0_V1.2.0\Drivers\BSP\STM32G0xx_Nucleoのstm32g0xx_nucleo.c/hをSrc/Incへコピー
  • TIM3の代わりにTIM7を使ったので、htim3→htim7(main.c)
  • G0SimpleTemplateに無関係ファイル削除(stm32f0xx_nucleo.c/h, system_stm32f0xx.c)

手順4:評価ボードNucleo-G071RBで動作確認

F0SimpleTemplateをG0SimpleTempletaへ流用したVitrual COMポート画面
F0SimpleTemplateをG0SimpleTempletaへ流用したVitrual COMポート画面

※表示メッセージは、STM32G0xデバイス対応に変更しています。

あとがき

繰返しますが、文章で書くと移植手順は長く複雑に感じます(特に手順3)。しかし、ソフトウェアアーキテクチャ図1が理解済みならHAL API利用アプリケーションの別デバイスへの移植は簡単です。手順3内容は、デバイスが変われば当然必要となる事柄です。

HAL API利用アプリケーションの最大メリットは、MCU移植が容易なことです。つまり、HAL APIアプリケーションは、「STM32MCUデバイス非依存」とも言えます。

現状では、このメリットを活かす開発環境が不備なだけです。不備分は手動で補い、STM32F0/F1アプリケーションをSTM32G0アプリケーションへ移植する方法を示しました。

近い将来、STM開発環境にMCUデバイス移植機能が提供されると筆者は思います。

お知らせ:LL APIを利用するLL APIのSTM32G0x「専用」テンプレートの販売時には、本稿のHAL API利用「汎用」G0SimpleTemplateも添付し、専用と汎用の両方を1パッケージで販売する予定です。

※LL APIとHAL APIの差を把握したい方は、STM32CubeMXのLow-Layer API利用法(2)を参照ください。

速報:STM32CubeIDE

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)公式ブログで、中国で開かれたSTM32 SummitにおいてSW4STM32とTrueSTUDIO、STM32CubeMXを統合した新しい統合開発環境:STM32CubeIDEを発表しました。

STM公式ブログ:STM32CubeIDE Makes a Massive Appearance in China。STM32CubeIDEは、既にSTMサイトよりダウンロード可能です。

STM32CubeIDE(出典:STMサイト)
STM32CubeIDE(出典:STMサイト)

STM32CubeIDEの主な特徴

  • EclipseベースIDE
  • マルチOS対応(Windows、Linux、macOS)
  • SW4STM32とTrueSTUDIOプロジェクトのインポート機能

STM32CubeIDE

早速STM32CubeIDEをインストールしてみました。所感は、STMが買収したAtollic® のTrueSTUDIOというよりむしろ、SW4STM32へSTM32CubeMXをプラグインしたような画面です。

STM32CubeIDE画面
STM32CubeIDE画面。SW4STM32へSTM32CubeMXをプラグインした画面に近い。

STM32CubeIDE v1.0.0は、最新版STM32CubeMX v5.2.0とSTM32G0 FW v1.2.0/STM32F0 FW v1.10.0 /STM32F1 FW v1.7.0など開発に必要となるツールもパッケージとしてインストールできます。従来の個別インストールとツールアップデートが面倒だと感じる方には、朗報になるでしょう。

現在STM32G0x専用テンプレート開発は、SW4STM32で継続中です。しかし、販売時にはこのSW32CubeIDEでリリースする方が、SW4STM32からのマイグレーションガイドUM2579も付属済みですので良いかもしれません。

マイグレーション操作は簡単です。販売中のSTM32Fxテンプレートへもこのマイグレーションで対応できると思います。

STM32MCU開発環境の場合、IDE、STM32CubeMX、デバイス毎のFW、これら3つのバージョンがともに最新でないと、上手く動作しないことや不具合発生はありえます(例えば、STM32CubeMX v5.1.0では最新のSTM32G0 FW v1.2.0がインストールできないなど)。

STM32CubeIDEの出現で、バージョン管理が容易になれば良いと思います。以上、速報をお伝えしました。
動画がコチラで見られます。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (2)

STM32G0x専用テンプレートで使うSTM32CubeMXのLL API利用法第2回は、LL APIとHAL APIの違いを説明します。
専用テンプレートはLL、汎用テンプレートはHALを使う理由がお判りになると思います。

LL(Low-Layer)とHAL(Hardware Abstraction Layer)相対比較

第1回で示したLL API関連資料一覧のUM2319の最初のページに、LLとHALの定義が示されています。

・LL:HALよりもハードウェアに近く、高速で軽量なエキスパート向けレイヤー
・HAL:ハードウェア抽象化で、STM32MCU間で最大限の移植性を保証するレイヤー

MCUハードウェアに依存するLLは、高速・軽量ですが移植性が低いので、LL APIを利用するソフトウェア(=アプリケーション)はそのMCU専用になります。一方、HALはMCU移植性が高いため、HAL API利用アプリケーションはSTM32MCU間で汎用的に使えます。

HALの方が現代的で少ないユーザ記述でアプリケーション開発ができ、さらに汎用なので開発労力が無駄にならない利点があります。しかし、HALが隠蔽している制御の分Flash(ROM)やRAM容量が必要で、LLに比べ低速です。モーター制御など高速処理が必要な部分にはLLの方が向いているかもしれません。

以前の投稿STM32CubeMXの使い方で示した、HAL APIとLL API相対比較表を再掲します。

HALとLL比較(出典:STM32 Embedded Software Overvire)
HALとLL比較(※説明のため着色しています。出典:STM32 Embedded Software Overvire)

専用テンプレートと汎用テンプレート

LL APIの利点は、ハードウェア性能を活かし少ない容量で高性能アプリケーション開発ができる点です。これは、小Flashで高性能なSTM32G0xデバイスに最適と言えるでしょう。

現状はSTM32G0xが「単独デバイス」でSTM32F0/F1両方のMCU性能をカバーしているので「専用テンプレートが最適」だと言えます。しかし、「STM32G0xシリーズに更に高性能なSTM32G1xデバイス」が発売されれば、移植性が高いHALでSTM32G0xソフトウェア開発を行う方が良くなる可能性はあります。

但しこの場合には、HAL API利用の販売中汎用STM32FxテンプレートをSTM32G0xデバイスへ適用すれば済みます。汎用性を示すこの適用例は、近く投稿する予定です。

特定ハードウェア性能を活かす専用アプリケーションが、少ないROM/RAM容量でも開発できるLL APIメリットを示すデバイス例としてSTM32G0xを選び、専用テンプレートを開発中です。

LL APIとHAL APIのアプリケーションサイズ実例比較

LL API利用時、容量がHAL APIに比べどの程度小さくなるかを実例で示します。

これも前の投稿STM32CubeMXの使い方で示したように、一般的にはLLの方がHAL比60~80%小さくなると言われます。

実例に評価ボードNucle-G071RBに処理は何もせず、64MHz動作のみをLL APIとHAL APIだけを変えてビルドした結果が下記です(SW4STM32 v2.8.1、STM32CubeMX v5.1.0、STM32G0 v1.1.0)。

  text data bss 使用容量 容量比(%)
LL API 3120 12 1564 4696 59
HAL API 9680 20 1708 11408 100

LL API利用の方が 59%小さく実現できることが判ります。

LL APIとHAL API混合利用時の注意点

AN5110には、LLとHAL両方を混在させた公式サンプルプロジェクトのExamples_MIXがNucleo-G071RBでも9例と少ないながら掲載されています。

LLとHAL混在利用の公式サンプルプロジェクト(出典:AN5110)
LLとHAL混在利用の公式サンプルプロジェクト(出典:AN5110)

LLとHALを混在利用時は、色々な注意点があります。UM2319の5章に詳細がありますが、一部抜粋します。

・同じ周辺回路をHALとLLで混在制御するのは避ける
・LLはHALがハンドルしているレジスタを上書きすることがあるので注意

また、UM2303の2章にLLとHALの示すアーキテクチャが示されています。

STM32CubeG0 Firmware Architecture(出典:UM2303)
STM32CubeG0 Firmware Architecture(※説明のため着色しています。出典:UM2303)

つまり、上層HALが下層LLを利用する場合がある訳です。LLは、HALがどのように周辺回路を制御しているかを知ることなく直接ハードウェアレジスタにアクセスします。混在時はレジスタ競合などの詳細な注意がAPI利用者側で必要です。

Nucleo-G071RB 利用時LLとHAL混在利用は、Examples_MIXの9例を除いては避けた方が良さそうです。
BSP(Board Support Package)も、同じ理由でSTM32G0x専用テンプレートには使いません。

※以上は、同一周辺回路でLLとHALを混在利用する場合の注意点です。
※では、周辺回路が異なれば混在は問題ないのでしょうか? 例えば、I2CはHAL、GPIOはLLの場合などです。この場合でも、HALがLLを利用することを考慮すると、アプリケーションレベルでの安全側評価では混在は避け、LLまたはHALに統一して利用する方が無難だと思います。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (2):LL APIとHAL APIの違いまとめ

STM32G0x専用テンプレートは、HAL APIとの混在利用は避け、LL APIのみで開発します。

従って、STM32G0xデバイス専用のアプリケーションとなります。
汎用テンプレートSTM32Fxテンプレートは、HAL APIを使っていますので、STM32MCUで汎用的に使えるアプリケーションです。
※このSTM32Fxテンプレート汎用性を示すため、STM32G0xデバイスへこの汎用テンプレートを適用した例を示す予定です。

LLとHAL混在アプリケーション開発は、レジスタアクセス競合などの詳細注意が、API利用アプリケーション側で必要です。
公式サンプルプロジェクトExamples_MIXで示されたやむを得ない場合を除いては、避けた方が無難です。

STM32CubeMXのLow-Layer API利用法 (1)

STM32G0x専用テンプレートで使うSTM32CubeMXのLL(Low-Layer) API利用法を3回に分けて投稿します。

第1回:LL API初期化処理(本稿)
第2回:LL APIとHAL APIの違い
第3回:STM32CubeMXのLL API利用時注意点と第1回~第3回全体まとめ

第1回は、LL API初期化処理です。組込みソフトウェアは、初期化処理と無限ループ内処理の2つから構成され、LL APIでも汎用テンプレートで使ったHAL(Hardware Abstraction Layer)APIでもこの2構成は同じです。

LLとHALに関するSTマイクロエレクトロニクス(以下STM)資料は数多くあります。ただSTMは、STM32ソフトウェア開発は、基本的に「HAL API利用を推薦」していると思います。MCUハードウェア差を隠蔽でき、開発ソフトウェア移植性にも優れているからです。また、STM32CubeMXで生成する関数もHAL APIがデフォルトです。

STM32G0xシリーズLL API関連ソフトウェア資料一覧

筆者がそう考えるからかもしれませんが、STM32G0xシリーズのLL API関連資料は、投稿時点では未だ少ない状況で、リストアップすると表1の4個程度です。近くより小ピン小容量のSTM32G0xがリリースされますので、もっと多くなると期待しています。
※5番目のSTM32Cube ファームウエア テクニカル・プレゼンテーションにはLL API関連はありませんが、BSPやUSB制御をSTM32G0x専用テンプレートでも使う可能性を考慮して追加しました。

高性能ハードウェアを活かしコードサイズもHALより小さいSTM32G0x専用LL API関連資料4+1個の範囲でその利用法をまとめます。

表1 STM32G0xシリーズLL API関連ソフトウェア資料一覧(2019年3 月末)
資料名 概要
AN5110 STM32CubeMXで生成可能なSTM32G0公式サンプルプロジェクトの一覧表。HAL APIのみ、LL APIのみ、HALとLL混在などに区分けされたアプリケーションノート。
UM2303 STM32CubeMXを使いSTM32G0ソフトウェア開発着手時のユーザマニュアル
UM2319 STM32G0のHAL APIとLL APIユーザマニュアル
STM32Cube G0 Firmware Package STM32G0公式サンプルプロジェクト概要を示すオンライントレーニング資料
STM32Cube ファームウエア テクニカル・プレゼンテーション STM32シリーズSTM32CubeMXのHAL/BSP/ミドルウェア/USBライブラリの日本語解説書

STM32CubeMX LL API利用法の習得アプローチ

表1の概要を読むと、実践的にはAN5110のLL APIのみのサンプルプロジェクトとUM2303、万全を期すにはUM2319のLL API解説章の理解が必要です。

そこでLL API利用法は、実践的アプローチから着手し、不明な点やレファレンスが必要な時にUM2319を参照することにします。

STM32G0のLL API利用例:AN5110のExamples_LL

STM32G0x専用テンプレート動作確認評価ボードは、Nucleo-G071RBです。Nucleo-G071RBは、AN5110のExamples_LLで示されたLL API利用サンプルプロジェクト数が75個と掲載ボード中最も多いので前章アプローチに最適です。

これら多くのLL APIサンプルプロジェクトから、2つのGPIOプロジェクトに着目します。この2プロジェクトは、どちらも評価ボード実装済みLD4を250ms毎に点滅させます。

GPIOサンプルプロジェクト差
2つのGPIOサンプルプロジェクト差(※説明のため着色しています)

MXアイコンが付いているGPIO_InfiniteLedToggling_Initは、STM32CubeMXで生成可能、GPIO_InfiniteLedTogglingは生成不可です。その差は、Descriptionによると初期化処理(Initialization FunctionとUnitary Service Function)です。両者ソースコードの初期化処理を下図に示します。

GPIO_InfiniteLedToggling_InitとGPIO_InfiniteLedTogglingの初期化処理の差
GPIO_InfiniteLedToggling_Init(左)とGPIO_InfiniteLedToggling(右)の初期化処理の差

MX_GPIO_Init()が、STM32CubeMX生成可能プロジェクト、Configure_GPIO()が、生成不可プロジェクトの初期化処理です。

つまり、
・MX_GPIO_Init()=Initialization Function (generated by STM32CubeMX)
・Configure_GPIO()=Unitary Service Function (generated by User or by Peripheral Library)
です。※()内は、筆者が追記。

MX_GPIO_Init()は、STM32CubeMXが生成した初期化処理で、MX_が接頭語として付いていることからLLとHAL混在時でも使える関数です。一方、Configure_GPIO()は、MX_GPIO_Init()と同じ機能ながら少ないソースコードで記述できています。

その結果、Configure_GPIO()の方が、MX_GPIO_Init()よりも高性能で小サイズとなります(初期化処理以外は、どちらも同じ)。

MX_GPIO_Init()は、付属オリジナルSTM32CubeMXプロジェクトに変更を加えた時にでも中身はSTM32CubeMXが自動生成する関数で置換えられるだけで、MX_GPIO_Init()はそのまま残ります。一方、Configure_GPIO()は中身のユーザ修正が必要です。

結局、STM32CubeMXで生成可能なGPIO_InfiniteLedToggling_Iniプロジェクトは、ユーザが何らかの変更を加えても初期化処理をSTM32CubeMX任せにでき、無限ループ内にある変更処理に集中できる訳です。

STM32G0xのLL API利用法 (1):初期化処理まとめ

・初期化処理生成はSTM32CubeMXを使う方法と、高性能小サイズなユーザ自作方法の2つがある
・STM32CubeMX生成の初期化処理関数名は、HAL API混在時でも使用可能なMX_が接頭語
・STM32CubeMXを使うとプロジェクト変更時、無限ループ内処理のみに集中できる

STM32CubeMXは、LL APIまたはHAL APIの利用切替えが周辺回路毎に設定可能です。そこで、たとえLL APIのみ利用するプロジェクトでも、初期化処理関数の接頭語には、後々の周辺回路のHAL利用・変更・追加などに備えてML_を付けるのだと推測します。

LL API利用時、初期化処理をSTM32CubeMX任せにすると、ユーザ自作よりも多少サイズが犠牲になります。但しその差は、着目したプロジェクトGPIO_InfiniteLedToggling_Init:2808B、GPIO_InfiniteLedToggling:2604Bと微々(7.3%減)たるものです(SW4STM32 v2.8.1、STM32CubeMX v5.1.0、STM32G0 v1.1.0)。

公式サンプルプロジェクト応用が簡単にできることを考慮すると、その差を十分補える効果があります。

STM32G0x専用テンプレートのLL  API初期化処理方針

以上のことから、LL APIを利用するSTM32G0x専用テンプレートの初期化処理は、STM32CubeMX任せにします。

勿論、STM32G0x専用テンプレート用STM32CubeMXプロジェクトも添付いたしますので専用テンプレート応用・流用は簡単となります(汎用STM32Fxテンプレートは、既にテンプレート用STM32CubeMXプロジェクト添付済みです)。