TI.comの新しい購入機能

米)半導体大手テキサスインスツルメンツのサイト:TI.comに追加された新しい製品購入機能を紹介します。

TIは、アナログICやDSP(Digital Signal Processor) 、本ブログ掲載の低電力動作Cortex-M4マイコンMSP432など多くの半導体デバイスや製品を開発・販売しています。ただ、競合他社と比べると、従来は個人調達に便利な通販のDigiKeyやMouserの取扱いTI製品品揃えが少ない傾向がありました。新しいTi.com購入機能は、これを改善できます。

TI.comの新しい購入機能

DigiKeyやMouserと同じように、TI.comで直接TI製品やデバイスを購入できます。違いは、TI製品のみを扱う点。もちろん価格は多少違いますが、品揃えは豊富です。下図のように、試作から生産に至るまで調達できます。

TI.comの新しい購入機能(出典:myTI newsletter)
TI.comの新しい購入機能(出典:myTI newsletter)

他社MCUベンダサイトのカートは、DigiKeyやMouserなどの外部通販へのリンクが一般的です。TIは、一律配送などのサービスも含めてTI自らが通販を行うという点が他社と異なる新しい機能です。

最大30個までという制限は設けていますが、個人購入や試作レベルの調達なら十分利用できます。通販会社にとっては脅威でしょう。TIは、手数料を通販会社に払うよりも、全製品の通販を自社で行う方法を選択したのだと思います。

MSP432デバイス品揃え豊富、低価格

本ブログ掲載の低電力動作MSP432評価ボード:MSP-EXP432P401R(ARM Cortex-M4F/48MHz、256KB/Flash、64KB/RAM、浮動小数点ユニット、DSPアクセラレーション)も、もちろんTI.comから購入できます。

さらに、評価ボードでの開発後、実機で利用するFlash/RAM容量が異なる様々なMSP432デバイスも購入できます。

評価ボード:MSP-EXP432P401Rは、CCS Cloud IDEやArduino IDEに似たEnergia IDEが使えるなど、他社MCU開発にないユニークなソフトウェア開発環境が特徴です。

CCS DesktopとCCS Cloud、Energia IDE比較(出典:TIサイト)
CCS DesktopとCCS Cloud、Energia IDE比較(出典:TIサイト)

※Energia IDEの詳細は、関連投稿:MSP432オープンプラットフォーム開発環境を参照してください。
※CCS Cloud IDEの使い方は、関連投稿:CCS Cloud IDEを参照してください。

Energia IDEは初めてソフトウェアを開発する方に、CCS Cloud IDEはいつでも何処でも場所を選ばずにブサウザだけでソフトウェアを開発したい方に向いています。

また、パンデミック表明となったCOVID-19収束宣言がWHOからでるまでは当分の間、在宅勤務やMCU開発の自己研鑽時間、または数人でのテレワークMCU開発などの機会も増えるでしょう。これらにもCCS Cloud IDEは、活用できると思います。

評価ボードを使ったプロトタイプ開発は、最終的に実機で使うMCUデバイスの選択が的確にできます。つまり、実機でよりFlash/RAM容量が必要になるか、それともより低価格デバイスで製品や製品改良などにも十分賄えるかなど、製品実装MCUの選択が、プロトタイプ結果に基づいて具体的にできる訳です。

新しいTI.com購入機能は、MSP432デバイスの品揃えが豊富です。プロトタイプ開発の選択結果を反映した実機MCUデバイス調達が、直接Ti.comから低価格で可能です。通販DigiKeyやMouserの代替になりえます。

TI)MSP432オープンプラットフォーム開発環境:Energia IDE

Texas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)評価ボード:MSP-EXP432P401R LaunchPadを使ってオープンプラットフォーム開発環境:Energia IDEの使い方を示します。Energia IDEは、簡単に言うとマイコン版Arduino IDE。Windows/Mac OS/UnixのマルチOS動作で、TIマイコンMSP430やC32xxなど、7種MCUのLaunchPad評価ボードをサポート中です。

IoT MCUの高度なセキュリティ実装を考えると、MCU開発者でもArduino IDEの使い方を知っておくのは有用だと前回投稿しました。
MSP-EXP432P401R LaunchPadを例にEnergia IDEの使い方を解説します。

Energia IDE

Energia IDEの使い方は、Arduino IDEと同じです。Single Board Computer開発で用いられるArduino IDEと同じ方法でTIマイコンのソフトウェア開発ができます。

Energia IDEインストール手順が以下です(と言っても、解凍だけで動作します)。

  1. Energia Downloadサイトから対応OSバージョンをダウンロードし解凍。Windows版では、解凍先フォルダがEnergia IDEの動作環境ですので、安心して試せます👍。
  2. 解凍先フォルダのenergia.exeクリックでEnergia IDEが起動します。デフォルトボードは、右下表示のMSP-EXP430F5529LPです。

    Energia IDE初期画面
    Energia IDE初期画面
  3. ツール>ボードマネージャでEnergia MSP432 EMT RED boards by Energiaをインストールします。
    ネットワーク環境に依存しますが、この手順2完了に少し時間がかかります。

    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール
    ボードマネジャ:Energia MSP432 EMT RED boards by Egergia追加インストール

    ※REDは、基板の版数:Rev 2.0 を示します。MSP-EXP432P401R LaunchPadには、BLACK:Rev 1.0もありますので注意してください。詳しくは、User’s Guide:SLAU597Fを参照してください。

  4. ボードマネージャでRED LaunchPad w/ msp432p401r EMT(48MHz)を選択。次に、評価ボードをPCに接続し、ツール>使用シリアルポートを選択(2ポートあってもどちらでも可)。書込装置はmspdebugを選択。
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択
    ボードマネージャ:RED LaunchPad MSP432P401R選択

    以上で、MSP-EXP432P401R LaunchPad のEnergia IDE環境セットアップが完了です。

MSP-EXP432P401R LaunchPadのスケッチ動作

  1. スケッチ例>内蔵のスケッチ例から、例えば、Basics>Fadeを選び、マイコンボードに書き込む:➡クリックでコンパイル実行と評価ボードへの書込みが完了し、動作します。スケッチ例とは、サンプルアプリケーションのことです。他にも様々なスケッチ例があり、➡クリックのみで簡単にMSP432P401R評価ボードスケッチ例の動作確認ができます。
    ※ボード書き込み時にエラーが発生する場合は、サイトのGuideからEnergia Driver Packageをダウンロードし、管理者権限でインストールすると解決します。

    スケッチ例:Fadeの実行
    スケッチ例:Fadeの実行

    スケッチ例のソースコードは、上図のように可読性が高く、初期設定:setup()と無限ループ:loop()の2つから構成されています。

現状は、セキュリティ関連のスケッチ例はありません。しかし、セキュリティは、全てのIoT MCUに必須で共通機能ですので、そのうち提供される可能性はあると思います。色々な周辺回路や機能をすぐに動作確認できるスケッチ例は、プロトタイプ開発に有効です。

関連投稿:Arduino IDEスケッチ例のソースコード

Energia IDEプログラミング

サイトのReferenceに、functions/variables/structureの3部構成のAPI説明書があります。各APIをクリックすると、初心者でも解り易い解説とEnergia IDEで試せるサンプルコードがあります。コード中のピン番号は、Pin Mapsで評価ボード毎に示されています。

このプログラミングに関する資料の解り易さが、Energia IDE(=Arduino IDE)の特徴です。デバイスで出来ることを直感的にすぐにプログラミングする情報としては、これら2サイト情報だけで十分です。

Cortex-M4カテゴリにTI)MSP432採用

本ブログのCortex-M4カテゴリへ、MCUとしてTexas Instruments)MSP432(Cortex-M4F/48MHz)を追加します。開発環境は、本稿のEnergia IDEとTI純正無償Code Composer Studio(CCS)、3つ目にCCS cloudを使う予定です。CCS  cloudは、次回解説します。

本ブログで、シェア上位5社MCUベンダとその主要MCUを全てカバーできたことになります(関連投稿:ARM Cortex-M4ベンダと評価ボードの2章)。

CMSISを使ってCortex-M4 MCUで開発したソフトウェアは、Cortex-M0/M0+/M3への流用も可能です(関連投稿:NXP MCUXpresso SDKから見るARMコアMCU開発動向)。
プロトタイプ開発は、高性能で開発リクスが少なく、様々なセキュリティ機能を試せるCortex-M4で行い、製品化時にコストメリットを活かすCortex-M0/M0+/M3を使うなどの方法や検討もありえるでしょう。

他のCortex-M4 MCUとしては、NXP)LPC54114(Cortex-M4/M0+)、STM)STM32G473RE(Cortex-M4)、Cypress)PSoC63(Cortex-M4/M0+)などをCortex-M4カテゴリへ追加予定です。