MCUXpresso IDE 11.4.0 Release

MCUXpresso suite of software and tools
MCUXpresso suite of software and tools

2021年7月15日、NXPの統合開発環境MCUXpresso IDEが、11.3.1から11.4.0へ更新されました。
新たに追加されたAzure RTOS、弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートの新環境での動作確認を示します。

Azure RTOS追加

FreeRTOSに比べ未だ12個と少数ですが、LPCXpresso55S06などCortex-M33コアのAzure RTOS 対応評価ボードとSDK v2.10.0が追加されました。Microsoft AzureのAWS追随が、統合開発環境に現れました(関連投稿:多様化MCU RTOS)。

Azure RTOS Boards
Azure RTOS Boards

これに伴い、IDEのRTOSメニューにAzure RTOSの Message QueuesやSemaphoresなどのViewが追加されました。Azure RTOSデバッグユーザガイトは、MCUXpressoIDE_11.4.0_6224インストールフォルダ内にありますので参照してください。

RTOSメニューに追加のAzure RTOS View
RTOSメニューに追加のAzure RTOS View

FreeRTOSアプリケーションテンプレートの新環境動作確認

Config Toolsもv10.0へ更新されましたので、新IDE更新後、旧11.3.1開発プロジェクトのPinパースペクティブで再度Update Codeのクリックが必要です。Updateクリック後、Develop画面に戻り再ビルドします。(Config Toolsの使い方は、コチラの関連投稿を参照してください)。

MCUXpresso Config ToolsのUpdate Code
MCUXpresso Config ToolsのUpdate Code

再ビルドは正常に終了し、新MCUXpresso IDE 11.4.0とFreeRTOS対応評価ボードLPCXpresso54114で、FreeRTOSアプリケーションテンプレートの動作確認をしました。

FreeRTOSアプリケーションテンプレートと付属資料も、11.4.0対応版へ更新します。

新MCUXpresso IDE 11.4.0で旧プロジェクト動作確認。LPCXpresso54114のSDK更新はなし。
新MCUXpresso IDE 11.4.0で旧プロジェクト動作確認。LPCXpresso54114のSDK更新はなし。

補足1:新旧統合開発環境併存

NXPの統合開発環境は、PC上で新旧環境が同時併存可能です。

環境が併存しますのでストレージ容量は必要です。また、ターゲットボードのSDK改版が無くても再度新IDEへのインストールが必要など手間もかかりますが、新環境構築が安心してできます。但し、新環境下でターゲットプロジェクト開くと、新環境用に変更され旧環境に戻せません。

ターゲットプロジェクトは、新旧環境で別々にすることを忘れないでください。

補足2:STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想状況

FreeRTOSやAzure RTOSなど開発者が対応すべきMCU RTOSは、今後増える傾向です。RTOSが変わっても同じ開発アプリケーションを活用・流用できるのがCMSIS-RTOSメリットです。STM版RTOSアプリケーションは、このCMSIS-RTOSを使って構想中で、この状況を示します(詳細は、STM32RTOS開発3注意点(後編)などを参照してください)。

FreeRTOSとCMSIS-RTOSのセマフォAPI比較
FreeRTOSとCMSIS-RTOSのセマフォAPI比較

上側がFreeRTOSセマフォ送受、下側がCMSIS-RTOSセマフォ送受ソースです。どちらも殆ど同じです。

IDEにContent Assist機能(Ctrl+Space表示のAPI候補一覧)があるので、ソース記述は簡単で、基本的なRTOS手段(上記はタスク同期セマフォ)を理解済みなら、FreeRTOSに比べ情報が少ないCMSIS-RTOS開発でも、当初思ったより障壁は低いと感じています。

CMSIS-RTOSメリット/デメリットを比較して、メリットの大きさを感じた今回のNXP IDE更新でした。STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想は、近日中に投稿予定です。

LPCXpresso54114 150MHz動作設定方法

MCUコア動作速度設定は、一般的にプログラミングの冒頭、main関数の各種初期設定よりも前で行い方法は2つあります。

LPCXpresso54114の150MHz動作
LPCXpresso54114の150MHz動作

1つがソフトウェアで明示的にコア速度を設定する方法(左側の橙下線)、もう1つがConfig ToolsでGUIを使って設定する方法(右側の橙囲い)です。ソフトウェア設定方法は、代表的な設定値のみがAPIで提供され、GUI利用方法は、細かな速度設定や周辺回路毎へのクロック供給設定ができるなど柔軟性があります。

弊社は、アプリケーション開発後の低消費電力チューニング時にもソースコード不変で柔軟性メリットがあるConfig ToolsのGUI利用方法を推薦します。

現状の開発ツールでは、コア速度がデフォルト96MHzですので、これを150MHzへ変える方法を示します。

開発ツール

前稿最後に示したLPCXpresso54114最新データシートで発見(!)したCortex-M4コア最大動作周波数150MHzは、最新SDKの新規プロジェクト作成時でも旧データシート記載の100MHz(=96MHz)のままです。

そこで、2021年4月2日投稿の新規FreeRTOSプロジェクト作成方法のStep1~Step5に、本稿の動作クロック150MHz化をStep6として追加します。

本稿で示す開発ツールは、本日時点の最新版で以下です。

・MCUXpresso IDE v11.3.1 [Build 5262] [2021-04-02]
・LPCXpresso54114 SDK Version 2.9.0
・LPC5411x データシートRev. 2.6

これを示した理由は、今後の開発ツール更新によりデフォルト動作クロック値が150MHzへ変わる可能性もあるからです。

Config Tools利用MCU動作速度150MHz設定

新規プロジェクト作成直後のConfig Tools Clocks Diagramが下図です。コア速度のSystem clockは96MHzです。150MHzへの変更手順が以下です。

SDK新規プロジェクト作成直後のClock Diagram
SDK新規プロジェクト作成直後のClock Diagram

1. PLL Modeを、Fractional/Spread spectrumからNormalへ変更。
2. クロック選択肢をクリックすると、下図のように供給クロックのルート変更ができます。最初に示したクロックルートになるよう各選択肢やPLL設定を変更し、System clockを150MHzにします。

クロック選択肢をクリックして供給クロックルート変更
クロック選択肢をクリックして供給クロックルート変更

3. Config ToolsのUpdate Codeをクリックし、GUI変更結果をソースコードへ反映させます。

※全般的なConfig Toolsの使い方は、コチラの関連投稿を参照ください。

初期設定後に下記のようなソースコードを追加しておくと、コア動作クロックが設定値に変わったか確認ができます。

コア動作クロック速度を示すソースコード
コア動作クロック速度を示すソースコード

Config Tools MCUコア速度設定メリット

例えば、初期設定したusart通信速度115200bpsやMRT:マルチレートタイマ満了時間は、コア速度を変えたとしても不変です。各ドライバ内で、コアから独立した速度/満了時間設定を行うからです(※厳密には、設定誤差などが多少変わります)。

MCUの中で消費電力が最も大きいコアの動作速度を下げるのは、アプリケーション開発後の低電力動作チューニングに最も効果があります(※アプリケーション開発中にコア速度を下げるのは、より厳しい動作条件で開発することに相当しますのでお勧めしません)。

ソフトウェアで直接コア速度を記述した場合、この低電力化検討時に記述変更が必要になります。しかも、代表的な速度のみ設定可能なため、変更幅が大きくなる欠点があります。

一方、本稿で示したConfig Toolsによるコア速度設定の場合は、ソフトウェア設定に比べ細かな設定が可能で、記述ソフトウェアも不変です。更に、周辺回路動作も個別に制御できるため、コアだけでなく電力消費が大きい周辺回路の特定などにも役立ちます。

つまり、Config Toolsコア速度設定方法は、より効果的できめ細かいMCU低電力動作チューニングが可能でメリットが大きいと言えます。

評価ボード消費電流測定方法

評価ボードLPCXpresso54114には、0Ωチップ抵抗:JS11の取外しが必要ですが、消費電流測定用の端子:JP4が用意されています。これを使うと、前章で示したコア速度変更や周辺回路を動作停止した時の実消費電流が測れます(測定誤差ガイドラインもデータシートFig. 5に掲載中)。

LPCXpresso54114消費電流計測回路
LPCXpresso54114消費電流計測回路

あとがき

LPC5411x データシートRev. 2.6は、コア速度96MHzまでのCoreMark消費電力しか記載されておらず、しかも、96MHz以降急激な上昇傾向があるなど、気になる点もあります。

CoreMark power consumption
CoreMark power consumption

現在のSDK新規作成プロジェクトがデフォルト96MHzなのは、この辺りが妥当なクロック速度のせいかもしれません。今後のデータシート改版で状況を見たいと思います。

但し、開発中のCortex-M4 LPCXpresso54114向けFreeRTOSアプリケーションテンプレートは最高動作周波数の150MHz動作、比較用ベアメタルアプリケーションも150MHzで開発します。

FRDM-KL25Z VCOMの使い方

FRDM-KL25ZのUARTとPC を、USB経由のVCOM:Virtual COM port接続する方法を説明します。

FRDM-KL25ZのUARTとVCOM接続中のTera Term画面
FRDM-KL25ZのUARTとVCOM接続中のTera Term画面

VCOM:Virtual COM port

MCU評価ボードとPC間は、USBで接続されており、このUSB経由でターゲットMCUのプログラミングやデバッグを行います。前稿説明のJ-TAGハードウェアデバッガの代わりが、評価ボード付属デバッガで、FRDM-KL25Zの場合は、OpenSDAと呼びます。

本ブログ掲載の評価ボード付属デバッガが下表です。ベンダ毎に付属デバッガの呼び名は異なりますが、どれも機能的には同じです(Renesasは、別途E2 Lite/E2ハードウェアデバッガで機能提供します)。

ベンダ毎に呼び名が異なる評価ボード付属デバッガ
ベンダ 評価ボード付属デバッガ 評価ボード例 MCU – PC間通信
NXP OpenSDA/CMSIS-DAP FRDM-KL25Z/LPCXpresso54114 UART
STM ST-Link STM32G071RB UART
Cypress KitProg CY8CKIT-145 UARTとI2C
TI XDS110-ET MSP-EXP432P401R LaunchPad UART
Renesas なし(E2 Lite/E2必須) BlueBoard-RL78G13-64 UART

評価ボード付属デバッガには、ターゲットMCUのプログラミング/デバッグ機能に加え、MCUのUARTとPCのUSB間を橋渡し(=接続)する機能があります。これをVCOM:Virtual COM port接続といい、Tera Termなどのシリアル通信ソフトウェアをPCにインストールすれば、いとも簡単にMCUの UART通信ソフトウェア送受信の動作確認ができます。

※Tera Termの代わりにMCUXpresso IDEプリインストールのSerial Terminalも使えます。

MCUXpresso IDEのTerminalによるTera Termの代用
MCUXpresso IDEのTerminalによるTera Termの代用

UART:Universal Asynchronous Receiver/Transmitter

UARTは、最重要MCU周辺回路です。

古くから装置組込み済みMCUの再プログラミング手段としてUARTは利用されてきました。最新IoT MCUでも、セキュア・ブート、セキュア・ファームウェア更新に使える手段はUARTのみです(関連投稿:STM32G0/G4のRoot of Trustなどを参照してください)。

さらに、MCUXpresso SDKの評価ボード新規プロジェクト作成時でも、最初からActiveな周辺回路はUART0だけです(※UARTの“0”に注意してください)。ボード実装済みのLEDさえ初期値はInactiveです。つまり、UARTを動作させないMCUは無いと言えるでしょう。

UARTソフトウェアの動作確認には、送・受信機能を持つため通信相手が必要で、VCOM接続によりPCが通信相手になるため、最重要周辺回路:UARTソフトウェアの動作確認ができる訳です。

FRDM-KL25ZのVCOM接続方法

前置きが長くなりました。本章から評価ボード:FRDM-KL25Z をOpenSDA経由でVCOM接続する方法を説明します。

結論から言うと、FRDM-KL25ZのVCOM接続には評価ボードに2配線追加が必要です。2配線を追加しTera Termを使ったUART送受信中の画面が写真1です。

  • J1-2とJ2-20配線・・・・・・・UART0_TX:PTA1とUART1_TX:PTE0接続
  • J1-1とJ2-18配線・・・・・・・UART0_RX:PTA2とUART1_RX:PTE1接続

FRDM-KL25Z関連資料は不親切で、この必須配線が分かりにくいので順を追って説明します。が、配線さえ追加すれば、全てのSDK UARTサンプルプロジェクトが正常動作しますので、急ぐ方は、まとめ章へスキップしてください。

MCUXpresso SDK UARTサンプルプロジェクトと回路図

FRDM-KL25ZのMCUXpresso SDK UARTサンプルプロジェクトは、どれもUART0ではなくUART1を使った処理例です。readme.txtには、“USB to Com Converter:USB2COM”をJ2-20/18と配線せよと記載されています。もちろん、別途USB to Com Converterを用意し、このとおり接続すればサンプル動作確認ができるでしょう。

しかし、OpenSDAにUSB to Com Converter と同じVCOM機能が備わっているのにこれを使わない手はありません。

そこで、FRDM-KL25Z回路図Rev.EのSheet 3を見ると、OpenSDAとMCUはUART0で接続済みで、R5とR6でUART1とも並列接続済みなのが判ります。本来ならUSB to Com Converterが無くてもそのままUART1サンプルプロジェクトが動作するハズです。

試しに、サンプルプロジェクトのUART1をUART0へ変更すると、コンパイル時に妙なワーニングが発生しますが、VCOM接続でUART0が動作します(UART0からUART1への変更にはMCUXpresso Config Toolsの使い方を参照してください)。つまり、UART0とOpenSDAは、回路図どおり接続済みな訳です。

R5とR6は実装されていますが、この代わり追加したのが2配線です。

その結果、UART1で全てのサンプルプロジェクトが正常動作します。また、UART0で発生した妙なワーニングもありません。

つまり、SDK付属UART1サンプルプロジェクトの正常動作には、J1-2とJ2-20、J1-1とJ2-18の2配線が必要です。この時UART0は、並列接続を避けるためInactiveにします。

※サンプルプロジェクトは、元々UART0がInactiveです。新規プロジェクト作成の時は、デフォルトActiveなUART0をInactive、UART1をActiveへ変更すると、サンプルプロジェクトがそのまま流用できます。

※評価ボード回路図最新版がRev.Eです。FRDM-KL25Z評価ボード裏側にシールが貼ってあり、回路図版数Rev.Eと一致、R5とR6も実装済みですが正常動作には追加配線が必要でした。回路図と実評価ボードの版数には、留意してください。

まとめ、新開発汎用Kinetis Lテンプレート

UARTとVCOM接続の重要性を示し、FRDM-KL25Z評価ボードで、VCOM接続を使ってMCUXpresso SDK UART1サンプルプロジェクトを正常動作させるには、評価ボードへ2配線を追加する使い方、各種注意点を説明しました。

このFRDM-KL25Z(Cortex-M0+/48MHz、General Purpose = Main Stream)を使って開発中の汎用Kinetis Lテンプレートは、新規プロジェクト作成時のデフォルトActiveなUART0をUART1へ変更済みで、本稿で示したような開発つまずきを回避する各種情報なども添付します。

写真1は、最も簡単なテンプレート応用例のVCOM動作で、評価ボードの赤/緑/青LEDやタッチスライダ、低消費電力動作のKinetis Lソフトウェアを簡単に開発できるテンプレートです。

3.3V動作新Baseboard

Cortex-M0+のKinetis Lは1.71Vから3.6 V動作で、従来弊社が扱ってきた5V Baseboard接続への5V耐圧端子が残念ながらありません。100MHzクラスで3.3V動作のCortex-M4テンプレート開発なども考慮すると、3.3V/1.8V動作用の新しいBaseboardを探し、テンプレート応用例に適用させたいと考えております。

MCUXpresso Config Toolsの使い方

前稿に続きMCUXpresso SDKベースのMCUソフトウェア開発に欠かせないMCUXpresso Config Toolsの使い方を説明します。SDKサンプルプログラムに少しでも変更を加える時には、Config Toolsが必要になります。

MCUXpresso IDEクイックスタートパネルのConfig Tools
MCUXpresso IDEクイックスタートパネルのConfig Tools

Config ToolsとSDK

MCUXpresso IDEのSDKサンプルプロジェクトは、そのままコンパイルして評価ボードで即動作可能です。ユーザが変更を加える箇所は、sourceフォルダ内に限られています。sourceフォルダ以外は、ライブラリフォルダです(詳細は、前稿を参照してください)。

Config Toolsは、このSDKライブラリに変更を加えるツールです。

SDKサンプルプロジェクトは、MCU内蔵周辺回路の動作例ですが、逆に言うと、「その周辺回路しか動作させない例」です。低電力動作が必須のMCUでは、しごく当然のこのソフトウェア作法、つまり無用な回路は動作させない方針で開発されています。

ところが、SDKサンプルプロジェクトにユーザが変更を加える場合、サンプルプロジェクトで動作中の回路以外の周辺回路動作を新たに加える時があります。

この時には、MCUXpresso Config Tools>>をクリックし、MCU内蔵の眠っている(=Inactive)周辺回路の目を覚ます(=Activate)必要があります。

周辺回路をActivateした結果、サンプルプロジェクトのSDKライブラリに対して、相応の変更をConfig Toolsが自動生成(上書き)します。これが、Config ToolsとSDKの関係です。

Config Toolsの使い方

具体的にFRDM-KL25Z(Cortex-M0+/48MHz、General Purpose)評価ボードのSDKサンプルプロジェクト:gpio_led_outputを例に、Config Toolsの使い方を説明します。このサンプルプロジェクトは、いわゆるLチカサンプルで、評価ボード上の赤LEDを点滅させます。

ここでは、赤LEDの代わりに緑/青LEDを点滅させる変更をユーザが加えると想定します。

※他のサンプルプロジェクトも、殆ど赤LED(BOARD_RED_LED)1個のみを動作させますので、この緑/青LED変更方法は、多くのサンプルプロジェクトにも流用できます。

MCUXpresso SDKのgpio_led_outputソースコード(一部抜粋)
MCUXpresso SDKのgpio_led_outputソースコード(一部抜粋)

先ずConfig Toolsを使わずにL40とL41のRED_LEDをGREEN_LEDへ変更後、Buildします。その後、DebugでFRDM-KL25Z評価ボードを動作させても緑LEDは点滅しません。もちろん、ブレークポイントをL92に設定して動作は確認済みです。

LEDが点滅しない理由は、評価ボードの緑/青LEDに接続済みのgpioピンが、Inactiveだからです。

対策にMCUXpresso Config Toolsをクリックすると、Develop画面がPins画面へ変わります。

MCUXpresso Config Toolsクリックで現れるPin画面
MCUXpresso Config Toolsクリックで現れるPin画面

Routed Pinsタブ①に、GPIOB:LED_REDがリストアップされています。このリストは、Activate済みの全ピンを示します。

そこで、Peripheral Signalsタブ②で緑/青LEDのGPIOB、19とGPIOD、1に✅を入れると、リストに両ピンが加わります。Identifierは、LED_GREENとLED_BLUEにします。

MCUXpresso Config ToolsでActivateした緑と青LEDのgpioピン
MCUXpresso Config ToolsでActivateした緑と青LEDのgpioピン

この状態で、「緑色」のUpdate Codeボタン③をクリックすると、Update Filesダイアログが開き、上書き対象のSDKライブラリが一覧表示されます。この場合は、ライブラリ:board>pin_mux.c/hとboard>clock_config.c/hが上書き更新されます。

MCUXpresso Config Toolsが生成(上書き)するファイル一覧
MCUXpresso Config Toolsが生成(上書き)するファイル一覧

ダイアログのOKクリックで最終的にSDKライブラリへ変更が加わり、自動的にDevelop画面に戻ります。上書きされるライブラリのソースコードは、Pins画面上のCode Previewタブ④でも更新前に確認ができます。

戻ったDevelop画面で、RED_LEDをGREENやBLUE_LEDへ変更し、Build を再実行、Debugすると、今度は評価ボードの緑/青LEDが点滅します。

Config Toolsが、緑/青LED接続のgpioピンをActivateしたSDKライブラリに上書き更新したからです。

このようにSDKサンプルプロジェクトは、必須周辺回路とクロックルートのみをActivateした例で、その周辺回路単体でのMCU消費電力も判ります。この時のクロック周波数は、MCU最高動作周波数です。周波数を下げることで消費電力も減らせますが、その分ソフトウェア開発の難易度は上がります。

機能的には似た周辺回路がある場合や、特に電力消費が大きい回路を比較・最適化し、MCUトータル消費を改善する手段としてもサンプルプロジェクトは利用できます。

MCU電力低減方法は、SDK/Config Toolsデフォルトの最高周波数でソフトウェアを開発し、次に周波数を下げるアプローチが適すと言えるでしょう。

Config ToolsのUpdate Code

SDKサンプルプロジェクトに何も変更を加えずに、Config Toolsをクリックしても、Update Codeボタンが「緑色」になる場合があります。Update Codeボタンの灰色は、上書きするSDKライブラリが無いことを示します。この場合は、変更を加えていないので、本来「灰色」のハズです。

これは、元々のSDKライブラリが手動生成、または旧Config Toolsで生成していて、IDE付属の最新Config Toolsの上書き版と(機能的には同じでも)異なる場合があるからです。例えば、ライブラリコメントが変わる場合などが相当します。

気になる方は、SDKサンプルプロジェクトを最初にIDEへImport後、直にConfig Toolsを起動し、Update Codeを一度実行しておけば、次回からユーザ変更が無ければ、灰色でボタン表示されます。

新規プロジェクトのConfig Tools

Config Toolsの使い方に本稿では、SDKサンプルプロジェクトのLチカサンプル点滅LED変更を例にしました。この使い方は、MCUXpresso IDEで新規プロジェクト作成時でも同じです。

新規プロジェクト作成時、初めからMCU内蔵周辺回路のSDKドライバを全て実装したとしても、消費(浪費)されるリソースはFlash/RAM容量のみです。周辺回路やクロックルートのほとんどは、Inactiveが初期値で、ActivateはUART0程度です。

そこで、IDE新規プロジェクト作成後、先ずConfig Toolsで使用予定の周辺回路やクロックルートをActivateし、それらに対応したSDKライブラリをUpdate Codeで上書き更新、最後にユーザ処理を記述するという順番になります。

MCUXpresso IDEソフトウェア開発要点

NXPのMCUXpresso IDEは、SDKベースのMCUソフトウェア開発を行います。

SDKには、多くのサンプルプロジェクトがあり、これらを上手く活用すると、効率的で汎用的なMCUソフトウェア開発が可能です。

SDKサンプルプロジェクトは、対象周辺回路とクロックルートのみを動作させる基本に忠実な作法で開発しているため、ユーザがプロジェクトへ変更を加える時、新たな周辺回路のActivateが必要な場合があります。

Config Toolsは、MCU全内蔵回路とクロックルートを、GUIで簡単にActivate/Inactive変更ができ、その結果として、更新の必要があるSDKサンプルプロジェクトのライブラリを上書き更新します。

NXPのMCUソフトウェア開発は、MCUXpresso IDEに備わったSDKとConfig Tools両方の活用が必須で、前稿と本稿の2回に分けてその使い方を説明しました。