ARM Cortex-M0搭載のLPC111xテンプレート発売で、同一ベンダNXPでのARMコアCortex-M0+からCortex-M0へのテンプレート移植が完了しました。そこで、NXP ARMコアマイコン利用のメリット/デメリットについて、数回に分けて示します。
NXP Cortex-M0+マイコンのテンプレート移植
同一ベンダのCortex-M0/M0+ソフトの差
一言で言うと、NXP Cortex-M0/M0+のソフト差は、殆どありません。ルネサスのRL78/G13(S2コア)とRL78/G14(S3コア)と同じ程度と言えば、RL78/G1xユーザには判っていただけるでしょう。
差がある箇所(概要)
アナログ入力は、コンパレータとADCで内蔵周辺回路が異なるため、制御ソフトは異なります。
一方、内蔵周辺回路名が同じでも、後発のLPC820では異なるものがあります。LPC820のGPIOクリアレジスタがそれで、LPC1114にはありません。これは、ソフト記述がより簡単になるように専用レジスタが追加されたと推測します。
また、テンプレートではLPCOpenライブラリの版数が異なるため、I2C関連のAPIも異なります。これは、版数が同じになれば、同一APIになると思います。敢えて、異なるAPIにする意味はないためです。対策に変換関数を自作すれば済むことですが、一方に合わせずに素のAPIをそれぞれのテンプレートに使いました。
これら差分箇所は、次回以降、詳細に示していきます。
一致する箇所
マイコンコア制御、つまりCMSISライブラリに相当する部分については、APIレベルで一致します。従って、Cortex-M0+とCortex-M0のARMコア差はソフトでは見えなくなります。
主観評価
半導体は、ムーアの法則にしたがって、微細加工とハード集積化が進みます。マイコン半導体ベンダは、市場が、動作電圧や、周辺回路などのハード互換性要求が強いため、これまではこのムーア則を、主としてハード低価格化、利益増加へ使っていたと思います。
しかし、徐々にソフト開発の要求も、この法則へ適用しつつある気がします。例えば、LPC820のGPIOクリアレジスタ追加や、ROMライブラリ追加などがそれです。これらハード追加により、従来ソフトがそのままでは使えませんが、同じ機能を、より高速、かつ簡単なソフト記述でできます。
ARM Cortex-M0+のLPC8xxシリーズは、Cortex-M0のLPC111xシリーズよりも後発であるため、これらの恩恵を受けて、より効率的なソフト開発ができます。また、従来Cortex-M0ソフト資産を活かしてM0+へ移植する際も、少ない手間でポーティングできるでしょう。
ARMコア利用メリットは、後発ハードの性能向上、既存ソフト資産の継承のし易さ、これら両者がもたらす「確実な処理能力の向上」にあると思います。機種が異なるマイコンへのソフト移植は、処理能力が本当に向上するか否かは、実際に開発完了するまでは「賭けの要素」もありました。
しかし、少なくともARMコアを使う限り、この「掛けのリスク」がかなり減るということを、今回のテンプレート移植は、M0+からM0という時間を逆に遡る方向でしたが、実感しました。
本記事は、同一ベンダNXPのARMコア利用のメリットを概観しました。デメリットに相当する差分の詳細は、次回以降に示します。また、別ベンダで同一ARMコアのテンプレート移植例として、freescaleのKinetis Eシリーズ/Cortex-M0+で評価します。