NXPの日本市場位置づけと事業戦略

6月5日投稿NXPのFreeMASTERの最後の章で紹介したNXP新CEO)カート・シーヴァーズ(Kurt Sievers)氏へのEE Times Japanインタビュー記事が16日掲載され、NXPの日本市場位置づけと事業戦略が語られました。

  • 日本の自動車関連企業との強固な関係は、一層強める
  • 日本の産業・IoT関連企業との関係は、自動車関連企業と同様、強い関係を構築していく
  • 日本のロボティクス企業とNXPのエッジコンピューティング技術の親和性は良く、ともに成長できる

本ブログの投稿は、MCUソフトウェア開発者向けが多いです。が、今回はNXPビジネスをピックアップします。というのは、多くの開発者が使っているWindows 10の今後を考えるには、Microsoftビジネスを知る必要があるのと同じ理由です。NXPビジネスを知って、MCUの将来を考えます。

以下、2020年5月のNXP semiconductors corporate overview抄訳バージョンを使います。※EE Japan記事もこのNXP資料を使っています。

NXPターゲット4市場

NXPのターゲットは、P8記載のオートモーティブ、インダストリアル&IoT、モバイル、通信インフラストラクチャの4市場です。そして、これらを包括的にサポートする半導体デジタル/アナログ技術である、Sense、Think、Connect、Act全てをNXPは提供中です。

NXPのターゲット4市場(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPのターゲット4市場(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供する半導体デジタル/アナログ技術(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供する半導体デジタル/アナログ技術(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供するフルシステムソリューション(出典:NXP semiconductors corporate overview)
NXPの提供するフルシステムソリューション(出典:NXP semiconductors corporate overview)

NXPの強み

NXPの強みは、ユーザである我々開発者へ、半導体技術をもれなく提供できることだと筆者は思います。この分野は近い将来、セキュア/セキュリティ無しでは存在しえません。ネットワークで繋がり、セキュリティが弱い箇所が一か所でもあれば、全てが使えなくなる危険性があるからです。

例えインタフェースが確立されていても、技術同士を接続すると、上手く動作しないことはよくあります。※俗に相性問題などとWindowsでは言われます。

全技術を他社より先に提供するNXP同志の技術接続は、競合他社間の技術接続より容易、低リスクであることは明らかです。後追いの競合他社は、差別化の特徴を持たないと生き残れず、この特徴が逆に他社との接続障害になることもあります。

P12に記載されたように技術単独では存在意味が弱く、各技術がセキュアに繋がって初めてソリューションとしての市場価値が生まれます。

EE Japan Times記事によると、AI関連技術は、NXPで独自開発を行うとともにM&Aも検討中のようです。このように、選択と集中、差別化戦略ではなく全ての半導体技術を開発し、ユーザである開発者へ提供できることがNXPの強みだと思います。

エッジコンピューティングMCUの将来

PC → スマホ → MCUへとセキュリティや半導体技術をけん引してきたデバイスは変わりつつあります。

COVID-19パンデミックで経済活動が停止したのは、コロナワクチンが無いからです。半導体製品にサイバー攻撃があった時、対応ワクチンや追加のセキュリティがThink主役のMCUへ必要となります。

これらからMCUは、今後さらなるセキュリティ実装やWiFi-6などの新しい無線LAN規格への対応など、より高性能化、低消費電力化へ進むと思います。NXPは台湾TSMCの5nm製造プロセスを次世代自動車用MCUに使う(2020/6/12)ことを明らかにし、実現へ向けてスタートしています。

NXP日本市場位置づけ、事業戦略、開発者の対策

以上のNXP概要を見たうえで、最初に示した日本市場位置づけ、事業戦略を振り返ると、NXPの提供する広範囲な半導体技術を自動車、産業機器、ロボティクスへ適用していくことがより解ると思います。

我々開発者は、NXP製品の第1次利用者です。MCU開発者は、次々に導入される新しい技術を焦ることなく効率的に習得・活用し、開発製品へ応用しましょう。そして、我々の製品利用者(NXP製品の第2次利用者)へ新しい価値を提供できるよう努めましょう。

EE Japan Times記事に記載はありませんが、残念ながら日本市場の相対的地位は、低下しつつあります。また、パンデミック再来に備え、開発者個人のスキルアップや自己トレーニング重要性も再認識されたと思います。より広く・早い開発技術の習得が、MCU開発者には必要となるでしょう。

Windows 10の将来

市場に溢れるWindows 10情報は、トラブル対策のものが殆どで、MicrosoftのOSビジネス情報は見当たりません。ただ、ここ数年のWindows 10状況は、最終PC利用者の価値を高めるというよりも、Windowsブロガへの記事ネタを増やすことに役立っています。

このWindows現状を、Microsoftがどのように回復するのか知りたいです。ビジネスなので、利益なしの解はありません。しかし、安心してWindows 10が使えないなら、PCのOSは、安定感のあるiOSやLinuxへ変わるかもしれません。

アプリケーションのマルチプラットフォーム化や、WindowsアプリケーションでもiOSやLinux上でそのまま動作する環境も整いつつあります。折しも、32ビットPC OSは、2020年で終焉を迎えようとしています。ハードウェア起因ならまだしも、ソフトウェア、特にOS起因の生産性低下は、許されないと思います。

モダンPCとPINコード

本稿が2019年最後の投稿です。

前稿Windows 10 2PCトラブルにもめげず、2020年1月6日発売のCypress PSoC CapSenseテンプレートに向けて急ピッチで開発を進めてます。本稿は、Windows 10トラブルで気になったモダンPCと、公開鍵暗号方式PINコードを紹介します。

モダンPC

創造性と生産性を上げるのがモダンPCで、Windows 10とOffice 365がその要素のようです。

Windows 7サポート終了2020年1月14日を前に、MicrosoftはモダンPCへの移行を呼びかけています(Windows 7稼働予測グラフ有り)。今でもネットカフェで稼働中の多くのWindows 7 PCは、果たして安定性・メンテナンス性に問題あるモダンPCへ移行するのでしょうか?

Windows 7並みの信頼性が無ければ、宣伝文句は良くてもPCのOSとしては、どうかな?と個人的には思います。
2023年までのWindows 7有償再延長サポートも選択肢としてあるので、7を使い続け、開発者よりも一般エンドユーザを重視する次期Windows Xに期待する声も少なくないかもしれません。

筆者は最新OSの最重要機能は、セキュリティだと思います。

OS最重要機能はセキュリティ(出典:Pixabay)
OS最重要機能はセキュリティ(出典:Pixabay)

Windows 10付属セキュリティツールだけで安心しているエンドユーザが、どれ程いるかは解りません。しかし、多くのネットカフェが設定するWindows 7+市販セキュリティソフトとのOSセキュリティ能力差が、どれ程あるかも不明です。

2020年以降のWindows 7稼働予測と、モダンPCへの移行状況が、Microsoftの思惑通りになるか気になります。

PINコード

Windows 10インストールで新たに要求されるPIN(Personal Identification Number)コードは、個人識別番号のことです。普通、数字4桁です。

PINコードは、IDとパスワードの代わりに登場してきたセキュリティ用語で、筆者の理解では、PINコードが公開鍵暗号方式、パスワードは秘密鍵暗号方式です。PINコードとパスワードの解り易い違いは、コチラのP1図です。

通信中の鍵が公開鍵なので、秘密鍵パスワードよりも安全で、公開鍵とペアの秘密鍵は、デバイス(Windows 10/MCUなど)内部保存、開発コストや運用コストが低く、強固なセキュリティが実現できるそうです。ペア秘密鍵がデバイス内なので、なりすまし対策にもなります。

PIN、FIDO(ファイドと読む)で検索すると様々な情報が得られます。iPhoneは少し違うようですが、AndroidスマホではPINコードが標準になりつつあるようです。

筆者のWindows 10は、前投稿トラブル回復直後のため、テンプレート開発以外は、今のところあまり手出し(調査)したくない心境です。簡単、安心、低コスト、セキュリティ強固なPINコードなら、MCUへも実装できるかもしれません。

…以上のように今年最後の本稿は、あいまいな推量となりました。
安心してPCが使えるまでは、最高プライオリティ:CapSenseテンプレート開発を優先したいからです。すいません😌。

本年も本ブログをご覧いただき、まことにありがとうございました。
皆さま、よいお年をお迎えください(Ladies and gentlemen, I wish you a happy New Year)。

STM新汎用MCU STM32G0

2018年12月4日、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)の公式ブログで新汎用MCU STM32G0、Cortex-M0+/64MHzを発表しました。以下の特徴があります。
※汎用=メインストリームと本稿では考えます。

新汎用STM32G0、Cortex-M0+/64MHz、メインストリーム90nmの特徴

STM32メインストリームMCU
STM32メインストリームMCU:STM32FxとSTM32G0の違い(出典:STM32 Mainstream)
  • 「メインストリーム初の90nmプロセスMCU」:従来メインストリームSTM32F0は180nmプロセス
  • 「ハイブリッド」:STM32L4(90nmプロセス)の低消費電力とSTM32F0のメインストリームの両方をハイブリッド
  • 「モアIO」:64ピンパッケージSTM32F071比較でIOピン9本増加、48ピンでもIOピン7本増加
  • 「単一電源供給」:PCBパターン設計が容易
  • 「セキュリティハード内蔵/非内蔵」:128/256ビットAES、セキュアブート、乱数発生器、Memory Protection Unit (MPU)
  • 「USB-C」: IPによりUSB-Type-C可能
  • NUCLEO-G071RB board」:低価格評価ボード提供中、「STM32G081B-EVAL board」:$382
STM32G0ラインナップ (出典:STM公式ブログ)
供給中の3種製品とSTM32G0ラインナップ (出典:STM公式ブログ)
STM32G0 Product Lines(出典:STM32G0 Serie Presentation)
STM32G0 Product Linesから3種製品の違いが解る(出典:STM32G0 Series Presentation)

STM32G0オンライントレーニング

データシートよりも解りやすいSTM32G0オンライントレーニング資料が多数あります(要ログイン)。

例えば、以下のような興味深い情報が得られます。各数ページの英文スライド形式ですので、STM32G0以外のMCUを使用中の方でも、チョットした空き時間に読めます。

  • STM32G0 Series Presentation:内蔵ハードウェアによりValue/Access/Access & Encryptionの3種製品特徴
  • ARM Cortex-M0+ (Core):Cortex-M0とM0+の差、Memory Protection Unit 説明
  • Safety:安全基準とその実現方法
  • Random Number Generator (RNG):アナログノイズに基づいた32ビット乱数発生
  • STM32G0 Boards:NUCLEO-G071RB board解説

STM32CubeMX V5.0.0

STM32G0のコード生成は、STM32CubeMX V5.0.0からサポートされました。

V4までと同じSW4STM32、TrueSTUDIO、両方のIDEで使えます。STM32CubeMX V5が提供するMCUファームパッケージで、本ブログ関連を抜粋したのが下表です。

STM32CubeMX V5.0.0提供MCUファームウェア版数
対象MCU firmware(評価ボード、STM32G0ボード暫定) 最新Version
STM32F1(STM32F103RB、Cortex-M3/64MHz V1.7.0
STM32F0(STM32F072RB、Cortex-M0/48MHz V1.9.0
STM32G0(V5で新設、STM32G071RB、Cortex-M0+/64MHz V1.0.0

STM32Fxテンプレートでも使用中のHAL(Hardware Abstraction Layer)ライブラリでコード生成すれば、STM32F1、STM32F0とSTM32G0間で、流用/応用が容易なソフトウェア開発ができると思います。

まとめ

新発売のSTM32G0は、90nmプロセス初のメインストリーム汎用MCUです。一般的に製造プロセスを微細化すれば、動作クロックが高速になり電力消費も低下します。さらに、STM32G0は、Cortex-M0より性能が向上したCortex-M0+コアの採用により、Cortex-M3のSTM32F1クラスに並ぶ高性能と超低消費電力動作をハイブリッドした新汎用MCUと言えます。

周辺回路では、IoTで懸念されるセキュリティ対策をハードウェアで実施、IOピン数増加、PCB化容易、USB-Type Cインタフェース提供など、各種IoTエッジMCU要求を満たす十分な魅力を持つMCUです。

競合するライバルMCUは、Cortex-M0+のNXP S32K116/S32K118(2018/7発売)などが考えられます。

関連投稿:NXP新汎用MCU S32K1