MCU:マイコン,STM32マイコン,Cortex-M0+コア,Cortex-M23コア,Cortex-M4コアARMマイコン,Cortex-M0+,IoTマイコン,Cortex-M4,TrustZone,プロトタイプ,Cortex-M33,STM32U5

STマイクロエレクトロニクス2021年2月25日発表の先端性能と超低消費電力動作両立のSTM32U5を紹介し、STのIoT MCU開発動向をセキュリティ、MCUコア、製造プロセスの観点から分析しました。

先端性能と超低消費電力動作のSTM32U5

STM32U5ベンチマーク(出典:公式ブログ)
STM32U5ベンチマーク(出典:公式ブログ)

公式ブログから抜粋したSTM32U5のベンチマークです。従来の超低消費電力MCU:STM32L0~L4+シリーズと、Cortex-M33コア搭載STM32L5、今回発表のSTM32U5をメモリサイズとパフォーマンスで比較しています。

STM32U5は、従来Cortex-M0+/M3/M4比、Cortex-M33搭載により後述のセキュリティ先端性能と、従来Cortex-M33搭載STM32L5比、230DMIPS/160MHzと大幅向上した超低消費電力動作の両立が判ります。STM32U5の詳細はリンク先を参照ください。

本稿はこの最新STM32U5情報を基に、STのIoT MCU開発動向を、セキュリティ、MCUコア、製造プロセスの3つの観点から分析します。

セキュリティ

STM32マイコンセキュリティ機能一覧(出典:ウェビナー資料)
STM32マイコンセキュリティ機能一覧(出典:ウェビナー資料)

昨年10月27日ウェビナー資料:ARM TrustZone対応マイコンによるIoTセキュリティのP17に示されたSTM32マイコンセキュリティ機能一覧です。セキュリティ先端性能のTrustZoneは、Cortex-M33コアに実装されています。

関連投稿:Cortex-M33とCortex-M0+/M4の差分

今回の超低消費電力STM32U5発表前なのでSTM32L5のみ掲載されていますが、STM32U5もL5と同じセキュリティ機能です。STM32WLは、後述するワイヤレス(LoRaWAN対応)機能強化MCUです。

この表から、後述する最新メインストリーム(汎用)STM32G0/G4も、STM32U5/L5と同じセキュリティ機能を実装済みで、STM32U5との差分はTrustZone、PKA、RSSなど一部であることも判ります。

STM32U5のSTM32L5比大幅に動作周波数向上と低消費電力化が進んだ背景は、セキュリティ機能に対するより高い処理能力と40nm製造プロセスにあることが2月25日発表内容から判ります。

STM32ファミリMCUコア

STM32ファミリMCUコア(出典:STサイトに加筆)
STM32ファミリMCUコア(出典:STサイトに加筆)

STM32ファミリMCUコアは、ハイパフォーマンス/メインストリーム(汎用)/超低消費電力/ワイヤレスの4つにカテゴライズされます。前章のSTM32WLがワイヤレス、STM32U5/L5は超低消費電力です(STM32U5は加筆)。

STM32WLとSTM32WBの詳細は、コチラの関連投稿をご覧ください。

STM32U5と同様、従来の120nmから70nmへ製造プロセスを微細化して性能向上した最新メインストリームが、STM32G0/G4です。

新しいSTM32G0/G4は、従来汎用STM32F0/F1/F3とソフトウェア互換性があり、設計年が新しいにも係わらずデバイス価格は同程度です。従来メインストリームのより高い処理能力と低電力動作の顧客ニーズが反映された結果が、最新メインストリームSTM32G0/G4と言えるでしょう。

製造プロセス

製造プロセスの微細化は、そのままの設計でも動作周波数向上と低電力消費、デバイス価格低減に大きく寄与します。そこで、微細化時には、急変するIoT顧客ニーズを満たす機能や性能を従来デバイスへ盛込んで新デバイスを再設計します。STM32U5やSTM32G0/G4がその例です。

MCU開発者は、従来デバイスで開発するよりも製造プロセスを微細化した最新デバイスで対応する方が、より簡単に顧客ニーズを満たせる訳です。

関連投稿:開発者向けMCU生産技術の現状

まとめ

セキュリティ、MCUコア、製造プロセスのそれぞれを進化させた最新のIoT MCUデバイスが、次々に発表されます。開発者には、使い慣れた従来デバイスに拘らず、顧客ニーズを反映した最新デバイスでの開発をお勧めします。

また、短時間で最新デバイスを活用し製品化する方法として、最新メインストリーム(汎用)デバイスSTM32G0/G4を使ったプロトタイプ開発もお勧めします。

最新メインストリーム(汎用)プロトタイプ開発イメージ
最新メインストリーム(汎用)プロトタイプ開発イメージ

前章までで示したように最新メインストリームSTM32G0/G4は、他カテゴリデバイスの機能・性能を広くカバーしています。メインストリームプロトタイプ開発資産は、そのまま最新の他カテゴリデバイスへも流用できます。

従って、他カテゴリデバイスの特徴部分(セキュリティ、超低消費電力動作やワイヤレス)のみに注力した差分開発ができ、結果として短期製品化ができる訳です。

ちなみに、プロトタイプ開発に適したSTM32G0テンプレートは、コチラで販売中、FreeRTOS対応のSTM32G4アプリケーションテンプレートは、6E目標に開発中です。

あとがき:文字伝達

ソフトウェア開発者ならソースコード、ハードウェア開発者なら回路図が、最も直接的・正確に技術内容を使える手段です。文字は、記述者の理解を変換して伝える間接的手段です。両者に違い(文字化ノイズ)が生じるのは、やむを得ないと思います。

報ステのTSMCのニュースに頭の抱えてしまった”、“TSMCは日本で何をしようとしているのか“からも分かるように、マスメディアは文字や画像で情報を伝えます。受けての我々開発者は、これらノイズを含むと思われるマスメディア情報を、自分の頭で分析・処理し、理解する必要があります。

と言うわけで本稿も、筆者が文字化ノイズを付けて分析した例です……、という言い訳でした😅。

MCU:マイコン,STM32マイコン,Cortex-M0+コア,Cortex-M4コアアプリケーション,Cortex-M0+,IoTマイコン,Cortex-M4,プロトタイプ,IoTエッジMCU,STM32G4,STM32WB

STマイクロエレクトロニクスの近距離無線通信機能付きSTM32WB(Cortex-M4/64MHz)と、汎用メインストリームSTM32G4(Cortex-M4/170MHz)を比較します。

Bluetoothなどの超省電力無線通信は、IoTデバイスに好適です。無線機能付きSTM32WBのIoTアプリケーション開発方法を調査し、汎用STM32G4を使ったSTM32WBのIoTアプリケーション開発の可能性とメリットを検討しました。

ディアルコアSTM32WBとシングルコアSTM32G4

STM32WBとSTM32G4、どちらもARM Cortex-M4コアを持つMCUです。違いは、STM32WBが、無線処理専用Cortex-M0+コア/32MHz内蔵のディアルコアMCUという点です。

Cortex-M4とM0+コア間のアプリケーションは、プロセス間通信コントローラ(IPCC)によりノンブロックイングで割込み利用のメッセージ交換が可能です。IPCCは、コアをSleep/StopモードからRunモードへ復帰させることもできますので、両コアは別々に低消費電力動作ができます。

STM32WBシリーズの紹介スライドP2から抜粋したSTM32WBとSTM32G4の位置づけが下記です。ワイヤレスマイコンのSTM32WLとSTM32WBの違いは、WLはLoRaWANなど、WBはBluetoothなどのサポート無線規格が異なる点ですが、Cortex-M4とM0+のディアルコア構成は同じです。

STM32WBとSTM32G4の位置づけ(出典:STM32WBの紹介)
STM32WBとSTM32G4の位置づけ(出典:STM32WBの紹介)

無線コプロセッサ:Cortex-M0+コア

STM32WBのCortex-M0+コアは、Bluetooth 5、ZigBee、OpenThreadなど2.4GHz帯無線通信処理専用です。ユーザ(開発者)は、利用する無線規格(BLE⇋ZigBeeなどのブリッジも可能)を選択し、STマイクロエレクトロニクス開発の無線専用ファームウェアをCortex-M0+へダウンロードします。但し、このファームウェアに手を加えることはできません。

言い換えれば、Cortex-M0+側の無線処理はSTの動作保証付きで、ファームウェアバージョンアップなどのメインテナンスは必要ですが、ユーザ変更などは不必要、ブラックボックスとして扱える訳です。

つまり、見た目はディアルコアですが、STM32WBのCortex-M0+は無線コプロセサで、外付け無線モジュールと同等です。従って、ユーザが開発するSTM32WBのIoTアプリケーションは、シングルコアのSTM32G4と同じ手法で開発が可能です。

Bluetooth 5(BLE含む)とサンプルプログラム

STM32WBの無線規格は、Bluetooth5やZigBeeなど複数プロトコルをサポートしています。このうち、IoTセンサの少量データ収集アプリケーションに好適なBluetooth5とBLEの詳細は、Bluetooth Low Energyプロトコルの基礎知識に説明があります。BLEを利用するIoTセンサ・アプリケーションを開発する場合には、最低限必要となる知識です。

STM32WBには、開発環境STM32CubeWBP-NUCLEO-WB55評価ボードで動作する様々なBLEサンプルプログラムがあります。サンプルプログラムの解析やこれらを応用したIoTアプリケーション開発時、BLE基礎知識が役立ちます。

また、P-NUCLEO-WB55評価ボードとスマートフォンをBLE接続し動作するサンプルプログラムもあります。

FSU: Firmware Upgrade Services

ディアルコアSTM32WBのCortex-M4アプリケーション開発時は、Cortex-M0+ファームウェアも同時にFlashへ書込みます。この点が、シングルコアSTM32G4開発と異なる部分です。

このFlash書込みには、STM32CubeProgrammmerのコマンドライトツール(CLI)で提供されるFSU:Firmware Upgrade Servicesを使います(動画説明はコチラを参照してください)。

簡単に言うと、Cortex-M4とCortex-M0+でメモリ共有中のFlashへ、ユーザ開発Cortex-M4アプリケーションを書込む時に、同時に通信Cortex-M0+ファームウェアも更新する仕組みで、手順さえ守れば通常のSTM32CubeIDEを使ったシングルコアSTM32G4のFlash書込み同様簡単です。

Flash書込み後は、STM32G4と同じ方法でアプリケーションデバッグを行います。

無線通信機能付きディアルコアSTM32WBと汎用シングルコアSTM32G4比較結果

P-NUCLEO-WB55とNUCLEO-G474RE
STM32WB評価ボードP-NUCLEO-WB55(左)とSTM32G4評価ボードNUCLEO-G474RE(右)

本稿で示したSTM32WB関連情報は、昨年末に行われたSTマイクロエレクトロニクス日本語ウェビナー資料から抜粋したもので、STM32マイコン体験実習(Bluetooth®編)でオリジナル動画とスライドが公開中です。また、STM32WBトレーニング資料Cortex-M4トレーニング資料も参考にしました。

前章までで、無線通信機能付きディアルコアSTM32WBと汎用シングルコアSTM32G4を比較し、下記を得ました。

  • ディアルコアSTM32WBのCortex-M0+側は、通信コプロセサでブラックボックとして扱える。
  • 例えば、IoTセンサデータ収集などのCortex-M4側IoTアプリケーションを、HAL(Hardware Abstraction Layer)APIで開発すれば、通信部分は異なるがデータ収集部分はSTM32WBとSTM32G4で共通開発できる。
  • STM32WBとSTM32G4で異なる点は、評価ボードへのFlashプログラミングだが、手順は簡単。
  • STM32WBのFlashプログラミングで用いたSTM32CubeProgrammerは、STM32G4のRoot of Trustで用いたもので、STM32WBでもSTM32G4と同様のRoot if Trustを実現できる。

HAL APIはコチラの関連投稿などを、STM32G4のRoot of Trustはコチラの関連投稿を参照してください。

STM32WBのIoTアプリケーションを汎用STM32G4で開発

最初の図に示したCortex-M4動作最高周波数の64MHzと170MHz、デバイスFlash/RAM容量差に注意すれば、STM32WBのIoTアプリケーションを汎用STM32G4で開発することは、可能でメリットもあると思います。

前提条件として、HAL API開発であること、STM32WBのIoTアプリケーション用Flash/RAM容量が、無線通信コプロセサCortex-M0+が使っても十分残ること、無線通信の代用としてUSARTなどの有線通信を使うこと、などです。FreeRTOS利用が良い場合があるかもしれません。

無線コプロセサCortex-M0+使用容量は、かなり少なく(ウェビナーでは使用量が公表されましたが数値未取得)Cortex-M4 IoTアプリケーション用空き容量は十分あります。また、汎用STM32G4の方が高速動作のため開発制約条件も緩いです。無線では、通信断時のエラー処理検討が必要ですが、有線ですのでエラー処理なしで本来の通信処理は開発可能です。

つまり、STM32WBの無線通信エラー処理以外は、ほぼ全て汎用STM32G4で代用開発が可能です。

Cortex-M4クラスMCUは、どれも高速で大容量Flash/RAMを実装し高いポテンシャルを持っています。つまり、IoTプロトタイプ開発とその評価には、最適なデバイスです。

汎用STM32G4で代用開発済みアプリケーションをSTM32WB/STM32WLへ移植し、IoTプロトタイプ開発をスピードアップするメリットは、差分開発、つまりIoT特有機能の差分を開発ができることです。

ある程度MCU開発経験を持つ開発者が、従来MCU開発では少なかった無線通信や高度なIoTセキュリティなどのIoTアプリケーション特有の重点ポイントに注力でき、即座にIoTプロトタイプ開発(代用開発含む)とそれを評価するツールとなること、これが弊社Cortex-M4テンプレートの目標です。

評価の結果、仮にMCUやIoTセンサ、無線機能の再選択が必要となっても、開発部分の多くが次に即座に流用できるソフトウェア資産となるには、汎用STM32G4によるIoTプロトタイプ開発が有効だと思います。

具体的には、従来テンプレートとは「対象者レベルと目的を変える」ことを検討中です。

  • 従来Cortex-M0/M0+/M3テンプレートは、対象者が初心者/中級レベル開発者で、MCU基本動作(Simpleテンプレート)とADC/LCD動作(IoT汎用Baseboardテンプレート)を提供し、基本的なMCU理解と開発が目的のテンプレート
  • Cortex-M4テンプレートは、対象者が中級レベル以上の開発者で、MCU基本動作などは省き、IoTプロトタイプ開発高速化が目的のテンプレート

本稿説明がすんなりとご理解頂ければ、中級レベル以上の開発者、Cortex-M4テンプレート対象者だと思います。

Cortex-M4テンプレートの対象レベルと目的
Cortex-M4テンプレートの対象レベルと目的

News

2021年1月12日、STM32CubeとMicrosoftのAzure RTOSが統合、STM32マイコン開発環境で協力というニュースが発表されました。STのCortex-M4テンプレートは、FreeRTOSとAzure RTOSの両方が必要かもしれません。

STブログに、上記の詳細情報があります。

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ノイズや静電気によるMCU誤動作に関する興味深い記事がEDN Japanに連載されました。

どのノイズ対策が最も効果的か? EMS対策を比較【準備編】、2019年10月30日
最も効果的なノイズ対策判明!  EMS対策を比較【実験編】、2019年11月29日

EMS:(ElectroMagnetic Susceptibility:電磁耐性)とは、ノイズが多い環境でも製品が正常に動作する能力です。

MCUプロトタイプ開発時にも利用すべきEMS対策が掲載されていますので、本稿でまとめます。また、ノイズや静電気によるMCU誤動作を防ぐ手段としてWDT:Watch Dog Timerも説明します。

実験方法と評価結果

記事は、インパルスノイズシュミレータで生成したノイズを、EMS対策有り/無しのMCU実験ボードに加え、LED点滅動作の異常を目視確認し、その時点のノイズレベルでEMS対策効果を評価します。

評価結果が、11月29日記事の図5に示されています。

結果から、費用対効果が最も高いEMS対策は、MCU実験ボードの入力線をなるべく短く撚線にすることです。EMS対策用のコンデンサやチョークコイルは、仕様やパーツ選定で効果が左右されると注意しています。

MCUプロトタイプ開発時のお勧めEMS対策

MCUプロトタイプ開発は、ベンダ提供のMCU評価ボードに、各種センサ・SWなどの入力、LCD・LEDなどの出力を追加し、制御ソフトウェアを開発します。入出力の追加は、Arduinoなどのコネクタ経由と配線の場合があります。言わばバラック建て評価システムなので、ノイズや静電気に対して敏感です。

このMCUプロトタイプ開発時のお勧めEMS対策が下記です。

1.配線で接続する場合は、特に入力信号/GNDのペア線を、手でねじり撚線化(Twisted pair)だけで高いEMS効果があります。

身近な例はLANケーブルで、色付き信号線と白色GNDの4組Twisted pairが束ねられています。このTwisted pairのおかげで、様々な外来ノイズを防ぎLANの信号伝達ができる訳です。

信号とGNDの4組Twisted pairを束ねノイズ対策をするLANケーブル
信号とGNDの4組Twisted pairを束ねノイズ対策をするLANケーブル

2.センサからのアナログ入力信号には、ソフトウェアによる平均化でノイズ対策ができます。

アナログ信号には、ノイズが含まれています。MCU内蔵ADCでアナログ信号をデジタル化、複数回のADC平均値を計算すればノイズ成分はキャンセルできます。平均回数やADC周期を検討する時、入力アナログ信号が撚線と平行線では、2倍以上(図5の2.54倍より)のノイズ差が生じるので重要なファクターです。従って、撚線で検討しましょう。
平均回数やADC周期は、パラメタ設定できるソフトウェア作りがお勧めです。

3.SWからの入力には、チャタリング対策が必須です。数ミリ秒周期でSW入力をスキャンし、複数回の入力一致でSW値とするなどをお勧めします。
※弊社販売中のMCUテンプレートには、上記ADCとSWのEMS対策を組込み済みです。

4.EMS対策のコンデンサやチョークコイルなどの受動部品パーツ選定には、ベンダ評価ボードの部品表(BOM:Bill Of Matrix)が役立ちます。BOMには、動作実績と信頼性がある部品メーカー名、型番、仕様が記載されています。

ベンダMCU評価ボードは、開発ノウハウ満載でMCUハードウェア開発の手本(=ソフトウェアで言えばサンプルコード)です。

特に、新発売MCUをプロトタイプ開発に使う場合や、MCU電源入力ピンとコンデンサの物理配置は、BOM利用に加え、部品配置やパターン設計も、MCU評価ボードを参考書として活用することをお勧めします。
※PCB設計に役立つ評価ボードデザイン資料は、ベンダサイトに公開されています。

MCU誤動作防止の最終手段WDT

EMS対策は、誤動作の予防対策です。EMS対策をしても残念ながら発生するノイズや静電気によるMCU誤動作は、システムレベルで防ぐ必要があります。その手段が、MCU内蔵WDTです。

WDTは、ソフトウェアで起動とリセットのみが可能な、いわば時限爆弾です。WDTを一旦起動すると、ソフトウェアで定期的にリセットしない限りハードウェアがシステムリセットを発生します。従って、ソフトウェアも再起動になります。

時限爆弾を爆発(=システムリセット)させないためには、ソフトウェアは、WDTをリセットし続ける必要があります。つまり、定期的なWDTリセットが、ソフトウェアの正常動作状態なのです。

ノイズや静電気でMCU動作停止、または処理位置が異常になった時は、この定期WDTリセットが無くなるため、時限爆弾が爆発、少なくとも異常状態継続からは復帰できます。

このようにWDTはMCU誤動作を防ぐ最後の安全対策です。重要機能ですので、プロトタイプ開発でもWDTを実装し、動作確認も行いましょう。

※デバッグ中でもWDTは動作します。デバッグ時にWDT起動を止めるのを忘れると、ブレークポイントで停止後、システムリセットが発生するのでデバッグになりません。注意しましょう!

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LL API利用のSTM32G0x専用テンプレートを、2019年6月1日発売開始します。

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)2018年12月新発売のSTM32G0xデバイスは、高性能・低電力なCortex-M0+と70nm新プロセス動作速度向上により、STM32G0x単独で従来汎用STM32F0/F1をカバーする性能と超低電力動作、低価格が特徴です。

このSTM32G0x専用LL (Low-Layer) API利用テンプレートが、今回1,000円(税込)で発売するSTM32G0x専用テンプレートです。

※従来から販売中のSTM32Fxテンプレートは、HAL API利用の汎用テンプレートです。

STM32G4シリーズ追加、全5種となったSTM32 Mainstream MCUs

2019年5月28日、超高性能汎用STM32G4xが発表されました。これでSTM汎用MCUは全5種となりました。一覧が下図です。

STM32汎用MCUラインナップ
STM32汎用MCUラインナップ(出典:STM32 Mainsterm MCUsに加筆)

STM32G0x専用テンプレートは、軽量・高速・エキスパート向きLL APIを利用します。STM32G0x性能をフル発揮するアプリケーションのプロトタイプ開発に最適です。

※STM32G0xや専用テンプレートの本ブログ関連投稿は、下欄タグ🏷:STM32G0x、または、専用テンプレートをクリックしてください。

STM32G0x専用テンプレート適用例2種、API比較評価用2種

LL APIとHAL APIの比較評価のため、汎用テンプレートをSTM32G0xへポーティングしたHAL APIテンプレートも添付します。同一アプリケーションでのLLとHALのリソース使用量、ユーザ記述量、API可読性などを具体的に評価・分析できます。全て評価ボード:Nucleo-G071RB上で動作確認済みです。

STM32G0x専用テンプレート適用例
STM32G0x専用テンプレート適用例

SimpleTemplateは、最も簡単なテンプレート適用例で、基本的なSTM32G071RB周辺回路とテンプレート動作が理解できます。AdcTemplateは、全STM32G0xシリーズ共通周辺回路:2.5Msps 12ビットADC制御をSimpleTemplateに追加し、全てのSTM32G0xプロトタイプ開発の起点となるテンプレートです。

SimpleTemplate、AdcTemplateともにLL APIを利用したSTM32G0x専用テンプレートと、汎用テンプレートをSTM32G0xへポーティングしたHAL APIテンプレートを提供します。

STM32G0x専用テンプレート適用例は、評価ボードのGPIOやLED、LPUART通信など必須の複数STM公式サンプルプロジェクトが実装済みで、すぐにプロトタイプ開発着手ができるLL API利用アプリケーションプロジェクトです。

※HAL版はAPI比較評価用です。2019年5月末時点のコード生成ツールSTM32CubeMX(v5.2.1)とSTM32G0 FW(v1.2.0)は、LL APIでのみSTM32G0x性能をフルに引き出すことができます。

※STM32MCU間でアプリケーション移植・流用性を最大限に保証するHAL APIを利用したソフトウェア開発を希望される方は、STM32Fxテンプレートの購入をご検討ください。

付属説明資料でLL APIアプリケーション開発着手時の障害解消

STM32G0x専用テンプレート付属説明資料のもくじを示します。

STM32G0x専用テンプレート付属説明資料もくじ
STM32G0x専用テンプレート付属説明資料もくじ

説明資料P1~P3は、STM32G0x専用テンプレートサイトから無料ダウンロード可能です。全14ページの詳細な説明により、LL APIが理解でき、STM32G0xデバイス専用アプリケーションのプロトタイプ開発着手時の様々な障害を取り除き、スピード開発するのに専用テンプレートは最適です。

STM32G0x専用テンプレートは、コチラの手順でご購入可能です。よろしくお願いいたします。

*  *  *

STM32CubeMX v5.2.1改版時の注意点

2019年5月24日、STM32CubeMXがv5.2.1へ改版されました。インストール時の注意点を示します。

STM32CubeMX v5.2.1改版
STM32CubeMX v5.2.1改版

STM32CubeMX v5.2.1ダウンロードは、Install Nowクリックのみです。但しダウンロード後、一旦STM32CubeMXを終了し、再起動時は、下記のように管理者と してインストールを実行する必要がありますので注意してください。

STM32CubeMX v5.2.1.Update
STM32CubeMX v5.2.1.Update。インストールは管理者として実行する必要がある。

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デバイスが多く選択に迷う方も多いマイコン:MCU。周辺ハードウェアも異なるので、最初のMCUコア選択を誤ると、最悪の場合、開発のし直しなどに繋がることもあります。

本稿は、STマイクロエレクトロニクスのSTM32マイコンマンスリー・アップデート10月号P8のトレーニング資料、STM32L0(Cortex-M0+)掲載のARM Cortex-M0/M0+/M3の比較資料を使ってMCUコア選択方法についての私案を示します。

STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料

各種STM32MCU(Cortex-Mx)毎の非常に良くできた日本語のテクニカルスライド資料が入手できます。例えばSTM32L0(Cortex-M0+)は194ページあり、1ページ3分で説明したとしても、約10時間かかる量です。他のMCU(Cortex-Mx)資料も同様です。

開発に使うMCUが決まっている場合には、当該資料に目を通しておくと、データシート読むよりも解りやすいと思います。しかし、Cortex-Mxコア差を理解していない場合や、開発機器の将来的な機能拡張や横展開等を考慮すると、どのMCU(Cortex-Mx)を現状開発に使うかは重要検討項目です。

ここで紹介するSTM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料には、Cortex-M0+特徴説明のため、通常データシートには記載が無いCortex-M0やCortex-M3との違いも記載されています。

そこで、STMマイコンのみでなく一般的なARMコアのMCU選択に重要な情報としても使えるこの重要情報ページを資料から抜き出しました。

Cortex-M0/M0+/M3比較

バイナリ上位互換性

Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

先ず、P22のCortex-Mプロセッサのバイナリ互換性です。この図は、Cortex-Mxコアの命令セットが、xが大きくなる方向には、上位互換であることを示しています(ただし再コンパイル推薦)。逆に、xが小さくなる方向は、再コーディングが必要です。

つまり、Cortex-M0ソースコードは、M0+/M3/M4へも使えるのです。Cortex-Mxで拡張された命令セットの特徴を一言で示したのが、四角で囲まれた文章です(Cortex-M3なら、“高度なデータ処理、ビットフィールドマニピュレーション”)。
さらに、STM32MCU内臓周辺ハードウェアは、各シリーズで完全互換なので、同じ周辺ハードウェア制御ソースコードはそのまま使えます。

もちろんxが大きくなるにつれコア性能も向上します。しかし、よりCortex-Mx(x=+/3/4)らしい性能を引き出するなら、この四角文章のコーディングに力点を置けば、それに即した命令が用意されているので筋が良い性能向上が期待できる訳です。

超低電力動作Cortex-M0+、39%高性能Cortex-M3

P22ではCortex-M0とM0+の違いが解りません。そこで、P19のCortex-M0/0+/3機能セット比較を見るとCortex-M0+が、Cortex-M0とCortex-M3の良いとこ取り、中間的なことが解ります。また、Cortex-M3が、M0比39%高性能だということも解ります。

Cortex-M0_M0+_M3セット比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0_M0+_M3セット比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

具体的なCortex-M0+とCortex-M0との差は、P20が解りやすいです。Cortex-M0+は、性能向上より30%もの低消費動作を重視しています。また、1サイクルの高速GPIOも特徴です。Cortex-M0+は、M0の性能を活かしつつより既存8/16ビットMCU市場の置換えにチューニングしたからです。

Cortex-M0とCortex-M0+の比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+の比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

さらにP21には、低電力化に寄与した2段になったパイプラインも示されています。Cortex-M0/M0+は、今年初めから話題になっている投機的実行機能の脆弱性もありません。

Cortex-M0とCortex-M0+のブランチ動作(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+のブランチ動作(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

関連投稿:Cortex-Mシリーズは、投機的実行機能の脆弱性はセーフ

共通動作モード:Sleep

Cortex-M0とCortex-M0+の低消費電力モード(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+の低消費電力モード(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

低電力化は、Cortex-M0+で追加された様々な動作モードで実現します。この一覧がP70です。つまり、Cortex-M0+らしさは、M0にない動作モード、LP RUNやLP sleep (Regulator in LP mode)で実現できるのです。

逆に、SleepやSTANBYの動作モードは、Cortex-M0/M0+で共通です。さらに、Cortex-M3でも、アーキテクチャが異なるので数値は異なりますが、SleepとSTANBY動作モードはM0/M0+と共通です。

ここまでのまとめ:Cortex-M0/M0+/M3の特徴

Cortex-M0/M0+/M3の特徴・違いを一言で示したのが、下表です(関連投稿より抜粋)。

各コアの特徴は、MCUアーキテクチャや命令セットから生じます。但し、M0/M0+/M3でバイナリ上位互換性があるので、全コアで共通の動作モードがあることも理解できたと思います。

ARM Cortex-Mx機種 一言で表すと…
Cortex-M0+

超低消費電力ハイパフォーマンスマイコン

Cortex-M0

低消費電力マイコン

Cortex-M3

汎用マイコン

Cortex-M4

デジタル信号制御アプリケーション用マイコン

関連投稿:ARMコア利用メリットの評価

MCUコア選択方法

  1. Cortex-M0またはCortex-M0+コアでプロトタイプ開発を行い、性能不足が懸念されるならCortex-M3コア、さらなる消費電力低下を狙うならCortex-M0+コアを実開発で選択。
    プロトタイプ開発に用いるソースコードは、そのまま実開発にも使えるように、全コアで共通の動作モードで開発。
  2. 早期にプロトタイプ開発を実開発に近い形で作成するために、弊社マイコンテンプレートを利用。

1.は、本稿で示した内容を基に示したMCUコア選択指針です。低消費電力がトレンドですので、プロトタイプ開発の段階から超低消費電力のCortex-M0+を使うのも良いと思います。しかし、初めから超低消費動作モードを使うのでなく、全コアで共通動作モードでの開発をお勧めします。

理由は、万一Cortex-M0+で性能不足が懸念される時にCortex-M3へも使えるソースコードにするためです。プロトタイプ開発の段階では、ソースコードの実開発流用性と実開発の評価を目的にすべきです。チューニングは、実開発段階で行えばリクスも少なくなるでしょう。

2.は、プロトタイプ開発実現手段の提案です。マイコンテンプレートは、複数のサンプルソフトを結合して1つにできます。実開発に使える(近い)サンプルソフトさえ見つけられれば、それらをバラック的にまとめて動作確認できるのです。これにより、当該コアのプロトタイプ評価が早期にできます。

また、マイコンテンプレートで使用したSTM32評価ボードは、ボードレベルでピンコンパチなのでCortex-M0/M0+/M3への変更も簡単です。

関連投稿:マイコンテンプレートを使ったアプリケーション開発手順

MCUコア選択の注意事項:重要度評価

ARMコア向けの弊社マイコンテンプレートは、全てCortex-M0/M0+/M3共通の動作モードで開発しています。
その理由は、テンプレートという性質・性格もありますが、本稿で示した他のARMコアへのソースコード流用性が高いからです。試しに開発したソースコードであっても、無駄にはならないのです。

最後に、P184、P185に示されたCortex-M0(STM32F0)とCortex-M3(STM32L1)、Cortex-M0+(STM32L0)のADCの差分を示します。

Cortex-M0/M0+/M3のADC比較1(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較1(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較2(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較2(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

STM32MCU内臓周辺ハードウェアは、各シリーズで完全互換と先に言いましたが、スペックを細かく見るとこのように異なります。

このハードウェア差を吸収するのが、STM32CubeMXで提供されるHAL(Hardware Abstraction Layer)です。つまり、STMマイコンを使うには、コア選択も重要ですが、STM32CubeMX活用も同じように重要だということです。もちろん、STM32FxマイコンテンプレートもSTM32CubeMXを使っています。

ARMコアは、バイナリ上位互換ができる優れたMCUコアです。MCUベンダーは、同じARMコアを採用していますが、自社のMCU周辺ハードウェアレベルにまで上位互換やその高性能を発揮できるような様々な工夫・ツールを提供しています。

開発MCUを選択する時には、コア選択以外にも多くの選択肢があり迷うこともあるでしょう。多くの場合、Core-M0/M0+/M3などの汎用MCUコアでプロトタイプ開発を行えば、各選択肢の重要度評価もできます。スペックだけで闇雲に選択するよりも、実務的・工学的な方法だと思います。