速報 Windows10 Homeで各社マイコンIDE起動確認

Windows10 Home
Windows10 Home
Wnidows10で動作中の各社マイコンIDE
Wnidows10で動作中の各社マイコンIDE

7月29日から配布開始されたWindows10 Homeで、ルネサスCS+、NXP LPCXpresso、フリースケールKDSの各社マイコンIDE起動を確認しました。

予約後、順次Windows10へのUpdateが開始されています。私のノートPC:Windows8.1無印64bit版が、無事Windows10 HomeへとUpdateされました。早速、各社のマイコンIDEを起動しましたが、問題なく動作しています。今のところ。

Windows8の時と比べると、問題が少ない感じがします。他の開発PC:Windows 7 UltimateとWindows8.1 Proは、Updateを遅らせ様子をみる予定でしたが、この感じだと全てUpdateしても良さそうです。

Windows10 HomeはUpdateをコントロールできない

Windows10 Homeは、Windows自身のUpdateタイミングをユーザがコントロールできません。コントロールパネルにWindows Updateが無いのです。意識しなくても自動的に常に最新Windowsが使える反面、更新による既存アプリの動作トラブルリスクもはらんでいます。

リスク回避には、Windows10 Pro以上の版に備わるUpdateタイミングコントロールが必要です。しかし、結局、最新OSで正常に動くことがWindowsアプリには要求されるでしょう。Windows10アプリ開発は、これまで以上に大変そうだと感じるのは私だけでしょうか? 各社のIDE開発担当者の負担は、増える一方です。

EclipseベースのIDEが増えつつあるのは、こうした背景があるのかもしれません。ルネサスのCS+は、独自開発の使い易いIDEですが、Eclipseベースのe2 Studioも視野に入れる必要があるかもしれません。

RL78開発、CC-RL化の薦め

ルネサスサポート情報

2015年7月17日のルネサスポート情報Vol.252を観ると、RL78ソフト開発は、CC-RLコンパイラへの切換えが必要なことが判ります。

今回リリースのRL78アプリケーションノートは、CS+はもちろん、Eclipseベースのe2 StudioもCC-RLコンパイラを使ったもので占められているからです。

アプリ&サンプルコードの状況

RL78/G13に絞ったアプリ&サンプルコード検索結果を、発行日降順に示します。新しいものは、どれもCC-RLコンパイラ版です。内容は、どれもCA78K0Rコンパイラのリメイク版ですので、プロジェクトファイルにCA78K0Rは含まれていません。

アプリケーション&サンプルコード検索
アプリケーション&サンプルコード検索

CA78K0Rコンパイラへの拘りは禁物

ソフト開発者には、気になるコンパイラですが、ソフト利用者(顧客)は、同じ機能ならコンパイラがCC-RLでもCA78K0Rでも構いません。例え顧客側で開発ソフト/アプリをメンテする場合でも、IDEとコンパイラが対(ペア)で最新版に対応できれば、問題なしの場合が殆どです。

開発アプリと開発環境(IDE/コンパイラ)をセットでメンテする場合に役立つのが、CS+のプロジェクトと開発ツールをパックして保存(K)です。しかし、今年のようにWindowsが更新されたりすると、旧環境では、環境自身の動作リスクも生じます。そこで、開発アプリのみを活かして、環境は最新版への対応を求める顧客が多いのです。

プロジェクトと開発ツールをパックして保存
プロジェクトと開発ツールをパックして保存

現状はCA78K0Rリメイク版でも、今後の新規サンプルは、CC-RL版のみリリースということも想定されます。開発者は、今のうちにCC-RLへ慣れておくことが重要です。また、初心者ならば、初めからCC-RLのみのRL78習得も良いでしょう。

顧客にとって重要なのは、開発したアプリそのものです。先々のメンテも考慮すると、CA78K0Rよりも息が長そうなCC-RL記述でアプリを開発する方が良いと思います。

RL78/G1xテンプレートの対応

ちなみに、弊社RL78/G1xテンプレートのCC-RL版は、CC-RL記述のみでソース作成しておりますが、過渡期なのでCA78K0R記述も混在できるようCS+のオプション設定しております。詳しくは、コチラを参照ください。設定オプションを「いいえ」にすれば、CC-RL記述のみのコンパイルも成功します。

NXPのFreescale買収、株主承認取得

NXPによるFreescaleの買収に進展があり、7月2日株主承認が得られました。後は、規制当局の承認を得て、予定通り今年の終わりまでに完了するようです。

気になる両社のCortex-M0/M0+マイコンの今後については、未だ不明確です。
個人的には、統合開発環境IDEは、NXPのLPCXpresso、Rapid Application Development : RADツールは、FreescaleのProcessor Expertが好みなので、折衷的なIDEができると嬉しいです。両社同じEclipseベースIDEですが、異なります。

ルネサスの新マイコン:Renesas Synergy MCUも、EclipseベースIDE(E2Studio?)でARM Cortex-M0+/M3/M4コアと予想しています。この新マイコンの詳細発表は2015年4Qで、NXP買収完了とほぼ同じタイミングです。

RL78/G10テンプレート開発最終回:RL78/G1xテンプレートVer5発売

QB-R5F10Y16-TBボードで動作中のTinyテンプレート

ROM/RAM=2KB/256Bまたは4KB/512BのRL78/G10

売れ筋RL78/G10マイコン2種
売れ筋RL78/G10マイコン2種

2015年6月現在、入手性が良く低価格なRL78/G10マイコン、2品種を示します。

RL78/G13やRL78/G14と比較すると、ROM/RAMがかなり小さくIOピン数も少ないことが判ります。データフラッシュはありません。10ピンのR5F10Y16(最初の写真)は、2015年6月現在、Star Productです。

そこで、S2/S3コア用RL78/G13やG14のRL78/G1xテンプレートを、S1コアRL78/G10向けに改良し、21%小さいサイズのTinyテンプレートを開発、S2/S3コア版テンプレートにS1コアもカバーするRL78/G1xテンプレートVer5として発売します。テンプレートは、全てC言語です。

Tinyテンプレート

ROM/RAMが小さいRL78/G10では、テンプレート自身もサイズが小さい方が適します。
S2/S3コアのテンプレート機能から、重複機能を削除したS1コア向けのTinyテンプレート概要を示します。ROM/RAM数値は、テンプレートのみのサイズです。ROMは、PROGRAM SECTIONのサイズ(Tips参照)です。

テンプレート実装機能 S2/S3コア向けテンプレート
ROM/RAM
使用量=439/8バイト
S1コア向けTinyテンプレート
ROM/RAM
使用量=345/6バイト
周辺機能のStartAPI起動 実装 実装
ドライバ関数起動 実装 実装
アプリ関数起動 実装 削除
HALT起動 実装 実装
メイン暴走監視 実装 削除
周期割込み暴走監視 実装 削除
WDTリセット 実装 実装
マニュアルリセット 実装 実装

 

Tinyテンプレートは、アプリ/ドライバを区別せず全てドライバ関数起動で起動し、アプリ関数起動は削除しました。また、アプリ暴走監視や周期割込み暴走監視も、WDT満了でカバーできるので削除しました。

このTinyテンプレートは、S1コア専用ではなく、従来テンプレートの代わりにS2/S3コアのRL78/G13やG14へ使うことも可能です。むしろ実装機能を整理した結果、より解り易いテンプレートになりました。このTinyテンプレートCソースを読んだ後に従来テンプレートCソースを読むと、テンプレート理解が容易になります。

RL78-S1/S2/S3全コア対応RL78/G1xテンプレートVer5発売

RL78/G1xテンプレートにこのTinyテンプレートを追加し、RL78/G1xテンプレートVer5として発売します。ご購入方法は、コチラをご覧ください。Ver5は、RL78-S1/S2/S3コア全てに対応したRL78/G1xテンプレートになりました。

QB-R5F10Y16-TBボードで動作中のTinyテンプレート(1秒毎にLED点滅、SW1押下げでトグル動作)
QB-R5F10Y16-TBボードで動作中のTinyテンプレート(1秒毎にLED点滅、SW1押下げでトグル動作)

RL78/G1xテンプレートご購入者様で、無償Ver. UP権をお持ちの方へは、本日より10日以内にVer5をメール発送いたします。メール発送まで、しばらくお待ちください。

 * * *

RL78/G10 Tips

RL78マイコンで唯一のS1コア:RL78/G10は、S2/S3コアのRL78/G13やG14と異なり8ビットマイコンです。ルネサスは、コア差をあまり強調しませんが、いくつかの差が生じますのでこれに関するTipsを示します。

S1コア用スタートアップ

S1コアのスタートアップは、RAM全体を区別せずに全て0で初期化します(ハードウエアマニュアル8.2.9)。

RL78/G10のCS+ for CCは、cg_srcフォルダを自動生成

CS+の生成ファイル
CS+の生成ファイル

フォルダ構成は、RL78/G10時のみ他のRL78/G13やG14と異なります。

セクションサイズ

前回ブログのCC-RLリンクオプションプロパティで設定したセクション合計サイズ出力と、ROM/RAMの関係を示します。

  • RAMDATA SECTION:16進数 Byte(s)…RAM使用量
  • ROMDATA SECTION:16進数 Byte(s)…ベクタテーブルなどのROM使用量(固定配置)
  • PROGRAM SECTION:16進数 Byte(s)…作成プログラムのROM使用量(コード生成分含む)

ROMDATA SECTIONは、0hからCEh番地にデバッグ・モニタ領域10バイトを加えた、0hからD7h番地の範囲に固定配置されます。プログラムで使えるROMは、この固定領域216バイトを引いた残り分です。

従って、RAMDATA  SECTION ≦ 0x100/200 (256/512)Byte、 PROGRAM SECTION ≦ 0x728/F28 (1832/3880) Byteが必須条件です。

RL78コンパイラコーステキスト(CC-RL対応)改版

RL78コンパイラコーステキストRev.1.00(CC-RLコンパイラ対応)が、Rev.1.01へ改版されました(2015年6月25日のルセサスサポート情報 Vol.249より)。

旧版との差

目次を比較すると、第3章 効率アップ手法の3.4~3.8のみが増えたように見えますが、そのほかにも全章にわたって多くの細かい修正があります。

新旧CC-RLコンパイラテキスト比較
新旧CC-RLコンパイラテキスト比較

PDF比較ツール

こんな時は、2つのPDFを比較し、異なる個所をハイライト表示してくれるフリーウエア:DiffPDFが便利です。

マニュアル自動生成ツール

マニュアルやテキスト作成は、その対象者選びがポイントです。

RL78コンパイラコーステキストは、全ての対象者向けの教科書ですから、間違いは許されないでしょう。CC-RLコンパイラは、適宜改版されるでしょうから、テキストが追い付くのも大変です。マニュアル自動生成ツール???が実現できると助かるのでしょうが…。

RL78/G10テンプレート開発2回目:サンプルソフト問題

前回、初心者が起こしがちなRL78/G10ソフト開発時の2つのつまずき

  • 第1つまずき:CS+設定パラメタの多さ
  • 第2つまずき:サンプルソフトが実務ソフトにそのまま使えないこと

を示し、第1の対策に、パラメタ設定を示しました。今回は、第2つまずき具体例と、弊社テンプレートの対策を示します。

R01AN2668JJ0100をC言語へ

サンプルソフトは、RL78/G10初期設定CC-RL R01AN2668JJ0100(アセンブラ記述)を、C言語で書直したものを使います。2015年6月時点で、適当なC言語サンプルソフトが見当たらないからです。

ルネサス提供サンプルソフト R01AN2668JJ0100
ルネサス提供サンプルソフト R01AN2668JJ0100

処理概要を示します。

初期設定(アプリノートより抜粋)
初期設定(アプリノートより抜粋)

前回作成したソースコードは、メイン処理に何も追加していないものに相当します。これに、アプリケーションノートPage23の図4.5 メイン処理フローチャートに沿ってC言語でSW入力とLED出力処理を追加したものが下記です。

C言語書直しのメイン処理
C言語書直しのメイン処理

Cソース追加後、コンパイル:F7 → ボードダウンロード:F6 → 実行:F5を行いQB-R5F10Y16-TBボードで動作させてください。アセンブラ記述と同じSWを押すとLED1(黄)が点灯し、離すと消灯の動作がボードで確認できます。

サンプルソフトに処理追加

このサンプルソフトに、さらに別処理を追加することを考えます。例えば、圧電サウンダを1秒毎にピッと鳴らすなどです。実務ソフトでは、良くある事柄です。

QB-R5F10Y16-TBボードに圧電サウンダを追加するのは面倒ですので、代りにボードのLED1を1秒毎に点滅させる処理を追加します。もちろん、実装したSWとLED1点灯サンプルソフト処理は、そのままで追加します。

LEDを1秒毎に点滅させるフローチャートは、下記です。問題は、実装済みサンプルソフトに、これをどうやって追加するかです。

追加LED点滅処理
追加LED点滅処理

サンプルソフト問題点:処理追加が困難

マイコンで複数の処理を行う方法、それは「時分割処理」です。オペレーティングシステム:OSを使ったとしても、この時分割処理の手法は同じです。
ある時間は処理1を、別のある時間は処理2を、別けて実行するのが時分割処理です。この分割を、早く細かく行うことで処理を仮想的に並列実行します。イメージとしては、こんな具合です。

マイコンの時分割メイン処理イメージ
時分割メイン処理イメージ

サンプルソフトは、「1つのサンプル処理」を説明するためのソフトです。従って、別処理追加の必要がありません。これが、サンプルソフトが時分割処理を持たない理由です。
サンプルソフトが実務ソフトとしてそのまま使えない理由も、この処理追加の概念が無いからです。
実務ソフトは処理が複数あり、かつ、処理の追加/削除が発生するので、処理の独立性や、追加/削除が容易なことが求められます。

実務ソフトの骨組マイコンテンプレート

マイコンテンプレートは、この時分割処理と、処理独立、追加/削除が容易となる仕組みを持っています。
テンプレートに組込んだフローチャートは下図になります。青がテンプレートです。

マイコンテンプレートのメインフローチャート
テンプレートのメインフローチャート

テンプレートでは、サンプルソフトのSW入力とLED出力も時分割起動します。これは、SWチャタリング対策を行うためです。この対策後のSW状態をSW1_RAMへ保存し、LED出力は、このSW1_RAM値でON/OFF制御します。
SW1_RAMを使うことで、処理独立性が高まります。例えば、LED点灯の代わりに、ブザー音出力などの追加/変更も簡単になります。出力側を変更しても、SW入力側の処理は変わりません。

複数処理と処理独立性を提供する実務ソフトの骨組がテンプレートです。
例えると、パソコンのランチャーソフトに近いです。ランチャーは起動のみですが、テンプレートは、さらにランチされたアプリケーション同志がRAM経由で情報をやり取りすると思ってください。

テンプレート応用例:シンプルテンプレート

簡単なテンプレートの応用例として、ここで示したSWとLEDの実務ソフトをシンプルテンプレートと名付けRL78/G1xテンプレートに添付します。
※シンプルテンプレートは、全ての弊社テンプレートに添付しており、各マイコン対応のCPUボードでハード追加なしに動作します。

テンプレートを使えば、第2のつまずきも回避できます。サンプルソフトを見つけ、テンプレートへ必要部分の処理を肉付けし、RAMを処理間に使えば、拡張や変更に対応できる実務ソフトが完成です。

テンプレートを使ったアプリケーションの開発方法は、コチラのページにも詳しくまとめていますので参考にして下さい。

* * *

RL78/G10テンプレート開発の2回目は、サンプルソフト問題対策としてテンプレートの仕組みを示しました。
次回は、小ピンマイコンRL78/G10特有の問題、RL78/G13やG14と比較するとROM/RAMが少ないことへのテンプレート対処を示します。

RL78/G10テンプレート開発 1回目:テンプレート利点

数回に分けて、RL78/G10テンプレート開発の経緯を、「初心者向け」に示します。あえて初心者向けとしたのは、テンプレートを開発・販売してきて、初心者~中級者向けに作ったテンプレート付属資料が、初心者の方には、多少解りにくい箇所があったことの反省に基づいています。

1回目は、RL78/G10とCC-RLコンパイラのC言語ソフト開発で、CS+ for CC設定とユーザ処理を何も追加していない時のソースコード、QB-R5F10Y16-TBボード動作を示します。

テンプレートご購入者様は、ブログを参照済みですから、この初心者内容をご理解頂いた上で、付属資料をご覧になれば、解りにくさが解消されると思います。最終回後には、RL78/G10が加わったRL78/G1xテンプレートを発売しますので、ご検討いただければ幸いです。

中級以上の方々にとってもお役立てばうれしいのですが、蛇足になる可能性が大です…_| ̄|〇。

RL78/G10特徴

RL78/G10は、ルネサススタープロダクトで入手性も良く、低価格高性能な汎用マイコンです。小ROM/RAMで10/16ピン構成、ADCやUARTなど内蔵回路も少ないので把握し易いでしょう。評価ボードも安く、RL78マイコンに興味がある方やIoTセンサマイコンなどに適しています。

開発環境CS+ for CC設定

RL78/G10をCS+のCC-RLコンパイラを使い、QB-R5F10Y16-TBボードとE1使用時のCS+設定を示します。
この組合せが、最も標準的な開発環境です。

RL78/G10開発環境
RL78/G10開発環境
  1. CS+ for CCのスタート(S)を押して、新規R5F10Y(10pin)プロジェクトを作成し、デバッグツールからE1を選択します。最初に、E1のプロパティを矢印に設定します。

    RL78/G10プロジェクト作成とデバッグ・ツール設定
    RL78/G10プロジェクト作成とデバッグ・ツール設定
  2. CC-RL(ビルド・ツール)のプロパティを矢印に設定します。CC-RL V1.01.00時です。改版で変わる可能性もあります。

    RL78/G10ビルド・ツール設定
    RL78/G10ビルド・ツール設定
  3. コード生成の周辺機能>共通/クロックを選択し、端子割当て、クロック設定、オンチップ・デバッグ、リセット要因設定を矢印に設定します。RL78/G10の標準的な設定です。

    RL78/G10共通/クロック設定
    RL78/G10共通/クロック設定
  4. ウオッチドックタイマとセレクタブル・パワーオン・リセットを矢印に設定します。E1でデバッグする時の設定です。

    RL78/G10ウオッチドックとセレクタブル・リセット設定
    RL78/G10ウオッチドックとセレクタブル・リセット設定
  5. 使用QB-R5F10Y16-TBボードに合わせてポート機能を矢印に設定します。

    RL78/G10ポート設定
    RL78/G10ポート設定

ここまでの設定後、「コード生成する」をクリック → ビルド:F7 → ボードダウンロード:F6 → Run:F5してください。
何も処理を追加していませんので、QB-R5F10Y16-TBはPOWER LED(赤)のみが点灯し、ソースコードの無限ループが実行され続けます。

RL78/G10の無限ループ処理
RL78/G10の無限ループ処理

マイコンソフト開発とは、この無限ループに必要な処理を追記することです。ユーザ処理を何も追加していない開発環境を動かすだけで多くの設定が必要なことが判ります。

マイコンテンプレートの利点

マイコンソフト開発には、2つの要素が必要です。1つが、ソフトそのものの開発能力。もう1つが、開発環境IDE:Integrated Development Environmentの設定能力です(RL78/G10の場合は、上記CS+ for CC)。

ソフト開発能力は、アプリ構成や処理手順などを開発するもので、マイコン機種の依存性はありません。一方、開発環境は、マイコン機種やコンパイラ、デバッグツールなどにより様々に異なります。

初心者やマイコン機種変更時に手間取るのは、むしろこの開発環境設定の方です。ソフト開発に早く着手したい時に設定に手間取ると、せっかくのアイデアやひらめきも、スタートでつまずいてしまいます。

環境設定は、デフォルト設定で動くか、またはダイアログなどを使って簡単に設定、できれば自動的に整うのが理想です。しかし現状のIDEは、多くのプロパティ=パラメタで全ての設定に対応する方式のため、簡易ダイアログは使えず、結果、パラメタ設定を1つでも間違うと不具合が生じます。

マイコン理解が深まると、環境設定も自然にできるようになります。これは、卵と鶏の関係と同じです。どちらも必要ですが、理解に手間取って開発が遅れるよりは、早く成果物ソフトを得たいと思うのは当然です。
CS+ for CC設定の多くは決まり文句ですが、マニュアルをリードして初心者がこれを一発で設定できるかは疑問です。多くの場合は、つまずいてしまうでしょう。

サンプルソフトを使うと、最初のつまずきが多少解消されますが、複数の処理を組合せる実務ソフトには、サンプルソフトはそのままでは使えません。これが、第2のつまずきの原因です。

マイコンテンプレートは、これらの対策に、開発環境設定のパラメタが済みで、複数処理が並列実行できる実務ソフトの骨組を提供します。この骨組に、サンプルソフト流用や自作ソフトを肉付けすれば、成果物が出来上がります。テンプレートには、複数の肉付けを簡単に追加できる工夫が初めから備わっています。従って、つまずくことなく、ソフトそのものの開発に労力を割くことができる、これがテンプレートの利点です。

* * *

誤解を恐れずに言うと、「ソフト開発に必要な理解項目 開発環境のパラメタ設定に必要な理解項目」、です。ソフト開発をしていけば、自然に理解項目が増えていきますが、最初は少ないでしょう。
ボードも含めた開発環境があるのなら、ボードを使ってデバッグしながら徐々に理解項目を増やせば良いのです。ところが、開発環境を初めて動かすのに結構な理解項目が必要なこと、これが、マイコン開発の敷居を高くしている原因です。

ソフトの開発能力と、開発環境の設定能力は、(多少は関係しますが)別です。開発環境は、慣れの問題です。EclipseベースIDEは、この問題を解決する1方法です。弊社マイコンテンプレートは、RL78/G1x以外にも3種のマイコン対応テンプレートを提供中です。ご検討ください。

RL78/G10でCC-RL使用時のTips

RL78-S1コアのRL78/G10をRL78/G1xテンプレートに追加すべく開発中です。CC-RLとRL78/G10開発時にのみ発生する問題の対処方法を示します。

デバッグ・モニタ領域設定

RL78/G10開発時のデバッグ・モニタ領域設定
RL78/G10開発時のデバッグ・モニタ領域設定

CC-RLコンパイラを使ったRL78/G10開発時のみ、デバッグ・モニタ領域設定をハイにする必要があります。これをデフォルトのイイエとすると、ダウンロード時、下記エラーが発生します。

エラー(E0204001) : ダウンロードに失敗しました。
オンチップ・デバッグで使用する予約領域への書き込みはできません。

CA78K0Rの場合や、RL78/G13やRL78/G14でCC-RLを使う場合は、デフォルトのイイエのままでビルド&デバッグ・ツールへダウンロード(B) F6が可能です。

RL78-S3コアにアナログ機能強化RL78/G1F追加

モータ制御をFeatureとするRL78-S3コアに、RL78/G14上位互換でアナログ機能を強化したRL78/G1Fが追加されました。

RL78/G1Gとの差

DCブラシレスモータ制御に最適なマイコンとして先に登場したS3コアRL78/G1Gとの周辺回路差が、赤囲みで示されています。

RL78/G1FとG1Gの機能差(G1F資料より抜粋)
RL78/G1FとG1Gの機能差(G1F資料より抜粋)

強化アナログ機能

RL78/G1F強化アナログ機能(G1F資料より抜粋)
RL78/G1F強化アナログ機能(G1F資料より抜粋)

増幅率をソフト制御できる3.0V/μs以上の高スルーレートPGA: Programmable Gain Amplifierや、RL78/G14ではROM96kB以上でしか搭載されなかった8ビットD/Aコンバータに加え、0.07us高速コンパレータも内蔵しています。

RL78/G1Fパッケージ
RL78/G1Fパッケージ

パッケージは、64ピン以下で64/32kBのROMです。前回掲載のスタープロダクトG14は、比較的大きなROMのものでしたが、このサイズならCS+無償版で開発可能です。従って、RL78/G1xテンプレートも使えます。

モータ制御マイコン選択チャート

RL78/G1Fが登場した結果、ルネサスのモータ制御マイコン選択チャートは下図になりました。G1Gとの価格差が気になります。

モータ制御マイコン選択チャート(G1F資料より抜粋)
モータ制御マイコン選択チャート(G1F資料より抜粋)

RL78/G14とピンコンパチなので、G1Fの入手性が良ければ、汎用G14スタープロダクトR5F104BCAFPの代わり、またはQB-R5F104LEーTBに載せ替えて使いたいです。IoT向けの少ピンマイコンとしても有用と思うからです。

RL78/G1x名称

G1Fが加わり、ルネサスRL78汎用G1xマイコンも10/12/13/14/1A/1C/1D/1E/1F/1Gとラインアップが増えています。名称とFeatureが一致しないのが悩ましいところです。汎用ベースで少しASSP的な色付けありと考えれば良いのでしょうか?
今後G2x、G3xと開発されるでしょうから、ますます判りにくくなりそうです。

RL78マイコンテンプレートの今後

CC-RLコンパイラを使ったRL78マイコンサンプルソフトの公開が始まりました。そこで、RL78マイコンの現状を俯瞰し、今後のRL78テンプレートの方向性を検討します。

スタープロダクト

2015年5月のルネサススタープロダクトからRL78マイコンのみを取出し、CPUコア分類を追加したのが下表です。

Group P/N Package ROM RAM Flash Feature CPUコア
RL78/G10 R5F10Y16ASP 10-LSSOP 225mil 0.65p 2KB 256B Low-Pin Count S1
RL78/G12 R5F1026AASP 20-LSSOP 225mil 0.65p 16KB 2KB 1.5KB Low-Pin Count S2
R5F1027AANA 24-HWQFN 4mm 0.50p 16KB 2KB 1.5KB Low-pin Count
RL78/G13 R5F100ACASP 30-LSSOP 300mil 0.65p 32KB 4KB 2KB General
R5F100GEAFB 48-LFQFP 7mm 0.50p 64KB 4KB 4KB General
R5F100LEAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 64KB 4KB 4KB General
R5F100LGAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 128KB 8KB 12KB General
R5F100MJAFB 80-LFQFP 12mm 0.50p 256KB 8KB 20KB General
R5F100PJAFB 100-LFQFP 14mm 0.50p 256KB 8KB 20KB General
RL78/G14 R5F104BCAFP 32-LFQFP 7mm 0.80p 32KB 4KB 4KB Motor Control S3
R5F104FFAFP 44-LFQFP 10mm 0.80p 96KB 8KB 12KB Motor Control
R5F104LGAFA 64-LFQFP 12mm 0.65p 128KB 8KB 16KB Motor Control
R5F104PJAFB 100-LQFP 14mm 0.50p 256KB 8KB 24KB Motor Control
RL78/L13 R5F10WLGAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 128KB 4KB 8KB LCD S2
R5F10WMGAFB 80-LFQFP 12mm 0.50p 128KB 4KB 8KB LCD

RL78マイコンロードマップ

RL78マイコンロードマップに、スタープロダクトGroupと、S1コア、S3コアを追記しました。これら以外は、全てS2コアです。CPUコア差は、表1-1です。

RL78マイコンロードマップとCPUコア差
RL78マイコンロードマップとCPUコア差

これらから、RL78マイコン状況を俯瞰した結果が下記です。

  • スタープロダクト:☆は、汎用G1xに集中。小ピン小ROMのG10は、発売後すぐにスター化。
  • RL78マイコンは、殆どS2コア。S1コアは、G10のみ。S3コアは、G14とG1Gの2Groupのみだが、G14がスター化。
  • 業績回復の2015年は、ASSPマイコンを発売。アプリ機能内蔵がスター化のポイントか?

RL78/G1xテンプレートのカバー範囲拡大

現状RL78/G1xテンプレートは、汎用S2/S3コアをカバーしています。が、S1が外れています。

いまさら8ビット?と思うかもしれませんが、CC-RLコンパイラでS1コアも性能向上します。さらにS1コアのRL78/G10は、低価格で入手性も良い(秋月電子で☆R5F10Y16ASPが60円、R5F10Y47ASPが100円)ので、IoTマイコンセンサにも向いています。

このRL78/G10のような小ピンマイコンは、ROM/RAM容量も小さいので、今後RL78/G1xテンプレートにもこれら対応に工夫を加え、カバーしたいと考えています。