ルネサスE1エミュレータ生産中止予告

2018年12月21日、ルネサス エレクトロニクスのツールニュース2018.12.16号で、使用部品の生産終了のため、E1エミュレータ生産中止が予告されました。来年2019年12月31日が、最終オーダー受付日です。

E1エミュレータ(出典:秋月電子通商)
E1エミュレータ(出典:秋月電子通商、12,600円で販売中)

E1代替エミュレータ

E1エミュレータの代替は、E2またはE2エミュレータLiteです。ターゲットボードとの接続は、同じく14ピンコネクタですのでそのまま使えます。
但し、R8Cは、E1を継続使用、RH850は、E2へ変える必要があります。

ルネサスMCUとエミュレータ対応表(2018年12月現在)
対象マイコン E1 E2 E2 Lite
RL78ファミリ(本ブログ掲載) 対応中 対応中 対応中
RXファミリ 対応中 対応中 対応中
R8Cファミリ 対応中 非対応 非対応
RH850ファミリ 対応中 対応中 非対応

本ブログを始めた頃のR8C開発時代、IDE Hewに使っていたE1エミュレータが、あと1年で生産中止になるとは、私も年を取ったということです。

但し、稼働中のR8Cシステムメインテナンスなどに、ソフトウェア書き換え用として14ピンコネクタ以外のUARTなどを準備していれば別ですが、E1エミュレータは必須ですので、注意してください。

また、新たにRL78開発環境の構築を考えている方は、E1エミュレータではなくE2エミュレータLite(秋月電子:7,980円)の購入をお勧めします。

ルネサスCS+ V8.00.00更新

2018年11月27日、ルネサスエレクトロニクス(以下ルネサス)のIDE(統合開発環境)CS+が、V7からV8.00.00にメジャー更新されました。主な変更内容は、11月27日発売の第3世代RX(RXv3)MCUへの対応です。

CS+ V8.00.00無償評価版

CS+は、RL78、RX、RH850、V850、78K0R、78K0のMCU開発に使います。無償評価版は、以下のROM容量制限があります。

無償評価版のROM容量制限
RL78、78K0R、78K0R 64Kバイト以内
RX 128Kバイト以内
RH850 256Kバイト以内

同じくルネサス無償提供EclipseベースIDEのe2 studioは、この容量制限がありません。

しかし、e2 studioにはコンパイラがパッケージされていませんので、各MCU対応のCS+と同じ無償コンパイラをインストールして使用します。その結果、コンパイルできるROM容量は、CS+無償評価版と同じになります。
※CS+もe2 studioも容量制限を外すには、コンパイラ有償ライセンスが必要です。しかし、個人レベルでの購入は、高額出費を覚悟してください。

CS+もe2 studioも機能的には同じです。Eclipse IDEを使った経験が有る方や、世界標準指向ならe2 studio、それ以外は、IDE全機能が1パッケージ提供で、チュートリアル付き、更新方法も簡単なCS+が便利です。

第3世代RXv3の第一弾はモータ制御製品

第3世代RX(RXv3)MCU
第3世代RX(RXv3)MCU(出典:ルネサスサイト)

ルネサス独自開発の32ビットRXv1/RXv2 MCUに対する命令セットの上位互換、5.8 CoreMark/MHzへの性能向上などが特徴の第3世代RXv3製品化第1弾は、モータ制御に適したRX66T(ROM256Kバイト~1Mバイト)です。

RXの性能を活かしたソフトウェアを開発するには、CS+無償評価版では128KバイトROM容量制限があるため力不足です。残念です。

ルネサス買収懸念とリスクヘッジ

11月24日のビジネスジャーナルに、ルネサスの買収に対する懸念記事が掲載されました。本ブログでも10月1日にルネサスのIDT買収の複数懸念記事は紹介しましたが、今回は、インターシル買収と現状のルネサス経営への懸念という点で異なります。

ゴーン容疑者が崖っぷちの日産を復活させたように、経営陣の舵取りは、その会社のみならずルネサスMCUの使用者(我々)の技術人生にも影響を与えます。

車のエンジン ≒ MCU、エンジンの気筒数 ≒ MCUビット数、車所有者 ≒ エンドユーザに割当てると、我々が開発するソフトウェア、ハードウェアの最終利用者は、装置を使うエンドユーザです。このエンドユーザが気にするのは、燃費(消費電力)や安全性(セキュリティ)、トータルコスト等で、どのMCUを使って開発するかを気にするエンドユーザは、殆どいないと思います。

ルネサスCS+のようにROM容量制限がある無償IDEや、MCU毎に専用デバッガが別途必要でArduinoコネクタを持たない評価ボード、これらは他のMCUベンダーのそれらと比べると少数派、日本独自仕様です。

関連投稿:MCU評価ボード2018

もちろん、多数派、世界標準に合わせた環境やMCUを提供することが最上ではありません。しかし、ルネサスの場合、本稿のような独自MCUを新開発する一方で、多数派標準と同じ土俵のARM Cortex-M系Synergy MCUなども提供中です。ルネサスの中に潤沢なリソースがあれば別ですが、これまた日本独自の働き方改革が叫ばれる時期、選択と集中ができていないと感じるのです。

技術者リスクヘッジ
技術者リスクヘッジ

ルネサスが技術的に優れていても、ガラパゴス携帯のようにならないことを祈りつつ、技術者個々人でリスクヘッジ(リスク回避)を考えることも大切だと思わせる記事内容です。

関連投稿:ルネサスの買収に対する懸念記事、技術者個人のリクス分散必要性の章

SLA (Software license Agreement)

STマイクロエレクトロニクス(以下STM)のSTM32マイコン マンスリー・アップデート2018年8月 P4のコラムに、ソースコード生成ツールSTM32CubeMXのSLA(Software license Agreement)変更が記載されています。

SLAとは

SLAは、ソフトウェア利用(または使用)許諾契約(きょだくけいやく)のことです。ウィキペディアに詳しい説明があります。

コラム記載の新しいライセンスが、SLA0048 – Rev 4 – March 2018です。この新ライセンス中にSTM32CubeMXで検索してもヒットしませんし、法律文言の英文解釈能力も持ち合わせていませんので、コラムをそのまま抜粋します。

「マイコンに書き込まれた状態であれば著作権表示などは不要だが、それ以外の状態であればソースコード、バイナリいずれも著作権表示などは必要」になりました。

STM32CubeMXでHALを使ってソースコードを生成すると、ソースコードの最上部に下記コメントや、その他の部分にも自動的にコメントが挿入されます。

STM32CubeMX生成ソースコード
STM32CubeMX生成ソースコード(STM32Fxマイコンテンプレートの例)

要するに、新SLAは、これらSTマイクロエレクトロニクス提供ツールSTM32CubeMXが自動挿入したコメントを、我々開発者は、勝手に削除してはいけない、と言っているのだと思います。

IDE付属ソースコード生成ツール

マイコンのソースコード生成ツールは、STM32CubeMX以外にも、各社のIDE(統合開発環境)に付属しており、

  • ルネサスエレクトロニクス:コード生成
  • NXPセミコンダクターズ:SDK、Processor Expert
  • サイプレス・セミコンダクター:Generate Application

などがあります(固定ページのAPI生成RADツール参照)。これらツールが自動生成するソースコードには、開発者が解りやすいように多くのコメントが付いています。

殆どのIDE付属エディタは、最上部の著作権関連コメントを畳んで表示することが可能ですし、これらコメントは、コンパイル後、つまりマイコンに書き込まれる状態では削除されますので、普段は注意を払わない開発者が殆どだと思います。

これらコメントも、STM32CubeMXと同様、各社のSLA違反になる可能性がありますので、生成ソースコードでのコメント削除はせず、オリジナル出力のまま使うことをお勧めします。

マイコンテンプレート

弊社販売中のマイコンテンプレートも、上記コード生成ツールのソースコード出力は、そのまま使っております。

マイコンテンプレートの版権は、ご購入者様個人に帰属します。但し、テンプレートそのものの転売、配布はご遠慮ください。お願いいたします。🙏

2017年アナログICメーカー売上高ランキング

2017年のアナログICメーカー売上高トップ10が、5月2日EE Times Japanで発表されました。

2017年アナログICメーカー売上高ランキング(出典:記事)
2017年アナログICメーカー売上高ランキング(出典:記事)

アナログ市場全体の成長率は10%、そのうちの上位10社のみで59%ものシェアを占めます。唯一マイナス成長となったNXPは、昨年汎用ロジック/ディスクリート事業をNexperiaへ売却したためです。

MCUメーカーのアナログICシェア

2017年アナログIC売上高シェア
2017年アナログIC売上高シェア。ブログ掲載中のMCU各社もランクインしている。

本ブログで扱っているMCUベンダのSTMicroelectronics(シェア5%)、NXP Semiconductors(4%)、ルネサスエレクトロニクス(2%)などもこのトップ10に入っています。一方Cypress Semiconductors のMCU PSoC 4などは、コンパレータやアンプなどのアナログ機能が他社MCUよりも充実していますが、売上高トップ10には入っていません。ADCやDACなどのアナログ単体ICの範疇にPSoC 4が入らないためかもしれません。

これらMCU各社をハイライトして、2017年アナログIC売上高シェアをグラフにしました。Texas InstrumentsもMCUを販売していますが、ブログの対象外ですので外しています。

IoTでは、とりわけMCUのフロントエンドにアナログ機能が必要です。好調なアナログ市場の伸びに伴って、アナログ機能をMCUに搭載したデバイスが発表される可能性があると思います。