効果的MCU学習と開発方法

MCU開発者は、常に新しい事柄を学習しつつ、同時に開発成果の出力が求められます。MCU開発者の学習と開発の参考になる2記事を見つけたので紹介します。

  1. ソフトウェア開発者が「学習」について知っておくべき10のこと、2023年12月12日
  2. 時間外労働と生産性低下の意外な関係、2023年12月11日

※英語版は、参照。

MCU学習と開発の参考になる2記事
MCU学習と開発の参考になる2記事

AI要約が望ましいのですが、無いので筆者が要約します。是非、ご自身で読んでください。

参考記事1要約:学習10のこと

人間記憶の仕組み、学習の仕組み、初心者とエキスパートの違いを示し、ソフトウェア開発者が学習を改善するための10個の事柄(#1~#10)解説。

筆者が特に印象に残った内容が、下記。

  1. 多くのコードを読み「理解」が、プログラミング熟練度を向上(#3)
  2. 1日の学習時間は、90分が限度(#5)
  3. 問題・課題のトライ順序を変える(ランダム化)のは解決に効果的(#5)
  4. エキスパートが初心者の目で見られなくなる「エキスパート盲点」は多い(#8)
  5. 休憩や散歩でトライ戦略を再検後、やり直す(#10)

参考記事2要約:意外な関係

欧米と日本、13000従業員の労働時間と生産性の調査結果。開発作業と生産性の関係説明。

印象に残った内容が、下記。

  1. 休憩無し従業員は、燃え尽き症候群の可能性が1.7倍(休憩時間と生産性)
  2. 理想的集中時間は、1日4時間。最長会議時間は、2時間。(仕事に集中できる時間)

know-how をリビルド

英語の「know-how」から来た外来語、日本語カタカナ表記「ノウハウ」は、専門的な知識や技術、手法という意味です。

知的財産の1つのため、日本発の公開例は少ない気がします。しかし、海外発know-howは、有用情報が多数あります。和訳が無くても、Microsoft Word翻訳やブラウザ翻訳を使えば、英文know-howが手軽に日本語化できます。

MCU開発者は、これら know-how活用をお勧めします。

但し、自分なりの解釈や理解を加えることが重要だと思います。これは、参考記事1が示したプログラミング熟練度を向上させるには、多くのコードを読み、その「理解」が大切なことと全く同じです。

つまり、 万人向け know-howをガイドとし、自分の頭で考えて理解する、これが、本当の学習や習得になるからです。ソフトウェア開発者的に言うと、「リビルド」です。

Summary:効果的MCU学習と開発方法

効果的MCU学習と開発には集中と多様性が必要
効果的MCU学習と開発には集中と多様性が必要

know-howの2記事を参考に、筆者がお勧めする効果的なMCU学習と開発方法をまとめます。

MCU開発者には、集中と多様性が必要です。

限られた集中時間(90分~4時間)に最大開発成果を上げるには、回り道のようでも1日の作業時間を、プログラミングとその他作業に分離して作業すべきです。

プログラミングも課題を複数に分け、壁に遭遇した場合には、そこに拘らず別課題プログラミングへ変えるなどが効果的です。課題への集中と、拘らずに変えることができる多様性が、効果的MCU開発になります。

多様性具体例の1つに、MCUベンダのサンプルコードと評価ボード活用があります。

自社ハードウェアが手元にある場合でも、逆にない場合はなおさら、評価ボード上で類似サンプルコードを動かすと、柔軟で多様な開発視点が得られます。これにより、例えば、隠し製品機能などの実装などもありえるでしょう。

その他の作業には、MCU関連の新しい学習なども含みます。

これら作業も、休憩やコーヒーブレイク、散歩などを挟みつつ様々な内容に分割しましょう。気分転換効果が期待できます。隠し製品機能などのアイデアも生まれ易いでしょう。

Afterword:盲点解決:サンプルコードと評価ボード

紹介した2つのKnow-how記事は、ソフトウェア開発者作業時間の科学的分析結果に基づいています。

MCU技術資料は、エキスパート盲点だらけです。内容が判り難いのは、読者のせいではありません。紹介Know-howやAI Copilotなどが、効率的な盲点解決手段を与えるでしょう。

一方、自ら気づき難い開発者のソフトウェア盲点やバグ解決手段が、サンプルコードと評価ボードです。

サンプルコードと評価ボードは開発者自身のソフトウェア盲点を浮き彫りにする
サンプルコードと評価ボードは開発者自身のソフトウェア盲点を浮き彫りにする

確実に動作するサンプルコードと評価ボードは、自分のソフトウェア盲点を浮き彫りにします。また、頭の中だけでなく、具体的なソフトウェア動作を目視することで、楽しく開発が続けられます。

MCU攻略の秘訣は、多様性を忘れず、楽しく、面白く開発に集中(集中時間はタイマ等で管理)、学習することだと思います。


PSoC 4100S CapSenseの使い方(その2)

Cypress PSoC 4 MCU内蔵タッチセンサ:第4世代CapSenseの使い方、2回目は、ハードウェアのタッチ・パッドやスライド・バー基板開発時のガイドラインを示します。と言っても、ソフトウェア開発に最低限必要なパッド仕組みを説明します。読者にソフトウェア開発者が多いからです。ハードウェアのPCBアートワーク担当者向けには、情報リンク先を示しています。

PSoC 4100S CapSenseの使い方(第2回内容)
PSoC 4100S CapSenseの使い方(第2回内容)

参照情報:AN85951 PSoC® 4 CapSense® Design Guide.pdf(日本語版)

タッチUIのメリット

メカニカルなボタンやスイッチでは、チャタリングや経年劣化、水濡れへの対応が必要です。タッチUIは、これらに対して有利です。また、パッド形状の自由度が高いので、スマホで一般的になった直感的なタッチ操作による優れたユーザインタフェース(UI)が実現できます。

これらタッチUIは、指をタッチ・パッドに近づけた時に生じる静電容量の変化をPSoC 4000S/4100S内蔵のCapSenseで検出し実現します。従って、確実に静電容量変化を生むパッドの基板設計が重要です。

タッチ・パッド、スライド・バー設計ガイドライン、AN85951の6.4章

静電容量変化の検出には、自己容量式(self-capacitance)、相互容量式(mutual-capacitance)という2方式があります。各方式の仕組みとパッド例が下図です。

自己容量式(左)と相互容量式(右)の仕組みとパッド例
自己容量式(左)と相互容量式(右)の仕組みとパッド例(出典:AN85951)

自己容量式は、1パッドに1個のGPIOを使います。相互容量式は、1パッドにTxとRxのGPIOペアが必要です。Txは複数ボタンで共有も可能で、自己容量式よりもGPIOを多く使うぶんタッチ検出性能が高くなります。電卓やキーパッドのような12個ボタンでも、下図のように7本のGPIOで実現できます。

マトリックス・ボタンのパッド例
マトリックス・ボタンのパッド例(出典:AN85951)

スライド・バーは、操作入力が増加、または減少する場合に用います。また、タッチ・パッドは、XとYの2次元で指位置を検出する方法で、X/Y各軸にスライド・バーを利用した例と考えれば良いでしょう。

※2019年6月現在、PSoC CreatorのCapSenseスライド・バーは、自己容量式のみをサポートしています。相互容量式は、今後のバージョンでサポート予定だそうです(AN85951、English、04/30/2019、P19)。

自己容量式スライド・バーのパッド例
自己容量式スライド・バーのパッド例(出典:AN85951)

このように、入力操作に応じたパッドを基板上にパターン設計(アートワーク)します。また、タッチ部分の基板保護のため、PCB表面に非導電性のオーバーレイ素材(タッチ表面材)を付けます。

CapSenceハードウエア構造
CapSenceハードウエア構造(出典:AN85951)

詳細なPCBレイアウト・ガイドラインは、前出AN85951の6.4章や、AN64846(日本語版)に記載されています。アートワーク担当者は参照してください(本稿は、ソフトウェア開発者が対象ですので、ガイドライン詳細説明は割愛いたします)。

このガイドラインに沿ってPCBアートワークを行えば、確実に静電容量変化を生むタッチUIパッドが開発できます。

評価ボードのパッド形状理由

本開発で用いる評価ボード、CY8CKIT-145-40XX PSoC 4000S CapSense Prototyping Kitのパッド形状が、なぜこんなカタチになっているか、前章の説明でソフトウェア開発者に理解できたと思います。

PSoC 4000S CapSense Prototyping Kit
タッチ・センサー基板付きで$15と安価なPSoC 4000S CapSense Prototyping Kit

つまり、上側の3パッドは、相互容量式で共有TX(1.3)と左からRX(1.6)、(1.5)、(1.4)の合計4GPIOを使います。下側は自己容量式のスライド・バーで、左から(0.6)、(0.3)、(0.2)、(0.1)、(0.0)の5GPIOを使います。TX(2.6)パターンはありますが、スライド・バーは、ソフトウェアは現在の自己容量式のみ対応です。但しハードウェアは、既に相互容量式に対応済みなのです。

パッド上下のLEDは、指タッチを検出した時に点灯させるインジケータです。また、オーバーレイ素材がパッド基板上に装着済みであることも判ります。

Capsenseパッド基板上のオーバーレイ素材
Capsenseパッド基板上のオーバーレイ素材

ガイドラインに沿って設計済み評価ボードの上側タッチ・パッド、下側スライド・バーの各パッド基板は、簡単に切離しができます。切離したパッド基板を、トラ技付録PSoC 4100S基板へ接続し、PSoC 4100S内蔵CapSenseでも開発したテンプレートを動作させる予定です。

CapSenseの使い方(その2:PCBハードウェア)まとめ

ソフトウェア開発者が最低限知るべきCapSenseのPCBハードウェアの使い方を示しました。

  1. タッチUIは、指をパッドに近づけた時に生じる静電容量変化をCapSenseで検出。このため、確実に静電容量変化を生むPCBハードウェア:パッド設計が重要。
  2. ソフトウェア開発者向けパッドPCB設計ガイドライン要旨を示し、評価ボードパッド形状の理由と、自己容量式(self-capacitance)、相互容量式(mutual-capacitance)のGPIO差を説明。
  3. PSoC 4000S評価ボードのパッド基板を切離し、トラ技付録PSoC 4100S基板と接続。 PSoC 4100SのCapSenseでも開発テンプレートを動作させ、PSoC 4000S/4100S両方対応CapSenseテンプレート化を図る。

Edge MCU評価ボード要件と検索方法

前稿で示したEdge MCUテンプレート構想を具体化します。MCU動作だけでなく、IoTサービス例を、開発者個人が、低価格かつ簡単に示すことを目的とするこの新しい「Edge MCUテンプレート」は、弊社が従来から販売してきた「汎用MCUテンプレート」のアプローチとは少し異なります。

それは、テンプレート出力がMCU動作だけでなくIoTサービスも含めるからです。たとえEdge MCUであっても普通のデバイスです。ベンダーは、その評価ボードでEdge MCUの特性を活かしたIoTサービスを示す場合が多いです。
従って、Edge MCUテンプレートのポイントは、いかに上手くIoTサービスを示すベンダー評価ボードを選べるかに掛かっています。

本稿は、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件と、これら要件を満たす評価ボード検索方法を示します。

Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードの3要件

以下3要件を、Edge MCUテンプレートに用いるEdge MCU評価ボードと考えます。

  • R1. 低価格、入手先豊富なEdge MCU評価ボード <¥3,000
  • R2. 最新Edge MCU使用(2018年後半の新しいIoTトレンドに沿って開発されたEdge MCUであること)
  • R3. 何らかのIoTサービス例を簡単に示せる

要件(Requirements)を満たさない場合は、どの項目がNGかが解れば、開発者や場合によってはOKの場合もあります。¥3,000が低価格かは懐具合次第ですし、開発年度が新しいか古いか、何らかのIoTサービスなど、全て主観です。

ただ主観であっても、Edge MCU評価ボード選択にあたりR1~R3の要件があると、採否が簡単になります。仮に、最新Edge MCUでは無いが、低価格でIoTサービスも示せる評価ボードがあった場合には、「R2_NG」だが採用するなどの特例も取れます。そこで次に、この3要件を満たすEdge MCU評価ボードを効率的に選ぶ方法を示します。

3要件を満たすEdge MCU評価ボード検索方法

最新Edge MCUで、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードを選ぶには、Mouserの新製品(メーカー別)ページが便利です。DigiKeyやチップワンストップにも同様ページがありますが、サムネイル写真と概要付きなのでMouserが最も使いやすいと思います。

Mouser新製品ページ
Mouser新製品(メーカー別)ページ。メーカーロゴクリックで集計される。カテゴリ別や週別でも選べて便利。

例えば、STマイクロエレクトロニクス(以下STM)をクリックすると、「発売日順」にサムネイルと商品名、概要が列挙されます。この中から、Edge MCUテンプレートに使えそうな評価ボードの商品詳細を読み、3要件で採否を判断すれば良いという訳です。

STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果
STマイクロエレクトロニクスの発売日順検索結果。写真、製品名、概要が判る。

守備範囲が広いSTM32G0投稿で示したNucleo-G071RB(¥1,203)もこの方法で上位ページ、つまり新商品順に表示されるので、直に探せます。
※年始には1ページ目上部に示されたNucleo-G071RBが、2ページ目下部に示されました。STMは他ベンダー比、新製品が多いのにも驚かされます!
※このようにベンダー毎の新製品数、評価ボード搭載デバイスの単体価格なども簡単に分かる点がマウザー新製品ページの利点です。

NXP、サイプレス、ルネサスとベンダーを変えて上記検索をすれば、R1~R3要件を満たすEdge MCU評価ボードが簡単に見つかります。

ルネサスは投稿時3要件を満たすEdge MCU評価ボードなし

残念ながらベンダーをルネサスで検索しても、2月末時点では価格要件:R1を満たすEdge MCU評価ボードが見つかりません。

例えば、RL78ファミリのロードマップ投稿で示したRL78/G11評価ボードYQB-R5F1057A-TB(¥3,961…!)やYRPBRL78G11(¥6,437)※秋月電子でも¥4,320は、ともに¥3,000を超えます。

また、低価格がセールスポイントのRX評価ボードTarget Board for RX130/231/65NでもR1を満たしません。

つまり、ルネサスEdge MCU評価ボードは、他ベンダー比、どれも価格高めです。企業レベルでの購入なら問題ないでしょう。しかし、これら価格は、実装部品から推測しても“個人開発者は顧客として眼中に無いのでは(!?)”、とも疑われるコスパだと思います。

※東洋経済Online2月19日に、ルネサス急ブレーキのしかかる1兆円買収記事が掲載されています。ルネサスを応援したいのですが、Edge MCU評価ボード入手も含め、手を出しにくい状況です。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由

ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例
ArduinoコネクタコンパチブルMCU評価ボード例

本稿は、Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由を、少し丁寧に説明します。上図は、Arduinoコネクタレベルでコンパチブル(=置換え可能)なSTマイクロエレクトロニクス、サイプレス・セミコンダクター、NXPセミコンダクターズ各社のMCU評価ボードを示しています。

Arduinoコネクタ

イタリア発で「オープンソースハードウェア概念」の発端となったArduino(アルデュイーノ、もしくはアルドゥイーノ)。その制御系とArduinoシールドと呼ばれる被制御系ボード間の物理インタフェースがArduinoコネクタ(右下)です。
I2C(SCL/SDA)/ADEF(アナログ基準電位)/DIGITAL(PWM兼用)/ IOREF(IO基準電位)/RESET/POWER/ANALOG INのピン配置が決まっています。

Arduinoコネクタのおかげで、制御系とシールドに分離して開発でき、それぞれをArduinoコネクタで接続すれば、Arduinoボードシステムが完成します。

Wikipediaによると、2013年には制御系とシールド、公式非公式合わせて140万台ものArduinoボードが販売されていて、安価にプロトタイプシステム構築が可能となっています。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1:市販安価シールド資産が使える

既にこれだけの数のシールドが販売中ですので、MCU開発にそのまま流用や小変更で使えるシールドもあります。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その1が、この既製品で安価なシールド資産が使えるからです。使用部品選定やアートワークパターンなども十分に練られた既製品が入手できるのです。しかもこれらは殆どの場合、オープンソースハードウェアなので詳細が開示済みです。

シールドは縦方向に段重ね(スタッカブル)できますので、複数段を重ね機能増加も可能です。

ハードウエア基板を0から動作するレベルにまでもっていくのは、時間もコストも掛かります。市販シールドを利用したプロトタイプ開発が可能なことが、MCU評価ボードにArduinoコネクタを持つ理由です。

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由その2:MCU性能評価に使える

シールドを使ってハードウエアが用意されれば、後はソフトウェアです。

図のようにシールドは、複数ベンダーのMCU評価ボードに使えますし、同一ベンダー内の異なるMCUの性能評価にも使えます。

例えば、最も重要な処理に必要なシールドと、その制御ソフトウェアのみをプロトタイプ開発し、MCU性能が重要処理に十分か否かの評価を行います。この評価結果で、コストパフォーマンスに優れたMCU選択が可能となります。

場合によっては、ピンコンパチブル性を利用して他ベンダーのMCU選択も可能です。Cortex-M系MCUはどれも似通ってはいますが、例えば、サイプレスのPSoCシリーズはアナログブロントエンド機能内蔵など、各ベンダーでそれぞれ特徴があります。これらMCU特徴を活かした開発で競合他社との差別化もできます。

MCU評価ボードプロトタイプ開発スピードを上げるマイコンテンプレート

その1もその2もポイントは、プロトタイプ開発のスピードです。効率的に、しかも精度良くプロトタイプ構築し評価するには、MCU製品で使用頻度が高いLCD出力やアナログポテンショメータ入力、LED出力などの単機能シールドを複数使うよりも、これら機能実装済みの汎用Baseboardを使う方が、より低コストにプロトタイプハードウエアの構築ができます。

関連投稿:CY8CKIT-042とCY8CKIT-042-BLEへの機能追加、サンプルソフトが直に試せるマイコン開発環境の章

弊社マイコンテンプレートは、Baseboard動作に必要なソフトウェアをBaseboardテンプレートで提供済みです。開発要件に必要なシールドを見つけ、シールド単体でMCU性能評価を行い、さらにBaseboard実装機能を付加すれば、MCU製品完成形により近いプロトタイプシステムでの評価も可能です。

MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート
MCUプロトタイプ開発をスピードアップさせるマイコンテンプレート

マイコンテンプレートは、MCU評価ボードプロトタイプ開発の「速さ」をより早めます。

MCU評価ボード、IDE、開発ツール、ベンダーが変わってもテンプレート本体は不変

テンプレート本体、具体的にはアプリケーションのLauncher機能は、MCU評価ボード、IDE、コード生成ツールなどの開発ツール、ベンダー各社には依存しません。つまり、単純なC言語でできています。

従いまして、開発ツールやIDEが時代により変化・更新しても、テンプレート本体は変わりません。ご購入頂いた弊社マイコンテンプレートの付属説明資料は、発売当時の環境をベースに解説しております。しかし、最新版のIDEやコード生成ツールに更新されても、このテンプレート本体は不変ですので、安心してお使いください。

まとめ

Arduinoコネクタを持つMCU評価ボードが多い理由は、市販安価シールド資産を活用し、MCU性能評価へも活用すれば、MCUプロトタイプ開発が効率的かつ容易になるからです。プロトタイプ開発スピードをさらに上げるためマイコンテンプレートが役立つことも示しました。

マイコンは種類が多く、どのベンダーの何を使って開発すれば良いかというご質問を時々頂きます。お好きなベンダーのArduinoコネクタを持つMCU評価ボードを使ってプロトタイプ開発することをお勧めしています。制御系ベンダー差は、Arduinoコネクタで消えます。先ずは着手、あえて言えば被制御系の開発着手が先決です。

マイコン評価ボード2018

マイコン装置を開発する時、ベンダ提供のマイコン評価ボードは重要です。良いハードウェア、良いソフトウェアは、評価ボードをレファンレンスとして活用した結果生まれるからです。

今回は、ARMコア対Non ARMコアという視点で最新マイコン評価ボードを分析します。掲載マイコン評価ボードは下記です(価格は、調査時点の参考値)。

デバッガの2機能

ベンダ評価ボードには、デバッガ付属とデバッガ無しの2タイプがあります。デバッガは、

  1. デバッグ機能:ソースコードのダウンロード、ソースコード実行とブレークを行う
  2. トレース機能:プログラムカウンタ実行履歴を記録する

の2機能を提供します。

トレース機能は、プログラムカウンタ遷移を記録し、ハード/ソフトの微妙なタイミングで発生するバグ取りなどに威力を発揮します。が、本ブログで扱うマイコンでは利用頻度が低く、サポートされない場合もありますので、デバッグ機能に絞って話を進めます。

各社が独自コアマイコンを供給していた頃は、各社各様のデバッガが必要でした。しかし現在は、ARMコアマイコンとNon ARMコアマイコンの2つに大別できます。

ARMコアマイコンの評価ボード

ARMコア評価ボードは、ARM CMSIS規定のSWD:Serial Wire Debugというデバッグインタフェースでコアに接続します。SWDを使うと、他社ARMコアとも接続できます。このため、評価ボードのデバッガ部分と対象マイコンを切り離し、デバッガ単独でも使えるように工夫したものもあります。

ARMコア評価ボードの多くは、対象マイコンにSWDインターフェイスのデバッガが付属しています。これは、対象マイコンが変わってもデバッガは全く同じものが使えるので、量産効果の結果、デバッガ付き評価ボードでも比較的安価に提供できるからです。

CY8CKIT-146
SWDデバッガ付属評価ボードCY8CKIT-146 (出典:CY8CKIT-146 PSoC® 4200DS Prototyping Kit Guide)

また、統合開発環境:IDEもEclipseベースを採用すれば、実行やブレークのデバッガ操作方法も同じになり、例え異なるベンダのARMコアでも同じようにデバッグできるので開発者にも好評です。

以上が、マイコンのデファクトスタンダードとなったARMコアとEclipseベースIDEを多くのベンダが採用する理由の1つです。

Non ARMコアマイコンの評価ボード

一方、Non ARMコアマイコン評価ボードは、本来コア毎に異なるデバッガが必要です。そこで、評価ボードには対象マイコンのみを実装し、その購入価格は安くして、別途デバッガを用意する方法が多数派です。

機能的には同じでもコア毎に異なるデバッガは、サポートするコアによりデバッガ価格が様々です。例えば、ルネサスのE1デバッガは、RL78、RX、RH850、V850の4コアカバーで12600円ですが、RL78とRXコアのサポートに限定したE2 Liteデバッガなら、7980円で購入できます(2018年3月の秋月電子価格)。

RL78/G11評価ボードとE1
RL78/G11評価ボードとE1

ルネサスもE1/E2 Liteデバッガ付きのRX用低価格評価ボード2980円を2018年3月に発表しました(マルツエレック価格)。

E1、E2 Liteデバッガ付きRX評価ボード
E1、E2 Liteデバッガ付きRX評価ボード (出典:Runesasサイト)

※RX評価ボードは、無償CコンパイラROM容量制限(≦128KB)に注意が必要です。入手性は良いので容量制限を撤廃してほしいです。

個人でマイコン開発環境を整える時は、購入価格は重要な要素です。マイコンがARMコアかNon ARMコアか、デバッガ搭載かなどにより、評価ボード価格がこのように異なります。

標準インターフェイスを持つマイコン評価ボードの狙い:プロトタイピング開発

最近の傾向として評価ボードの機能拡張に、Arduinoコネクタのシールド基板を利用するものが多くなりました。様々な機能のシールド基板とその専用ライブラリが、安く入手できることが背景にあります。

ARMコア、Arduinoコネクタ、EclipseベースIDEなどの標準的インターフェイスを持つマイコン評価ボードの狙いは、色々なマイコン装置の開発を、低価格で早期に着手することです。既存で低価格なハード/ソフト資産の入手性が良いのが後押しします。

中心となるマイコン評価ボードへ、機能に応じたシールド基板を実装し、早期にデバッグしてプロトタイピング開発し製品化が目指せます。

CY8CKIT-046
Arduinoコネクタを2個持つCY8CKIT-046、緑線がArduinoコネクタ (出典:CY8CKIT-046 Qiuck Start Guide)

ルネサスもEclipseベースのIDE:e2Studioを提供中ですが、これは世界中のEclipse IDEに慣れた開発者が、ルネサスマイコンを開発する時に違和感を少なくするのが主な狙いだと思います。Non ARMルネサスマイコン開発の不利な点を、少しでも補う方策だと推測します。

関連する過去のマイコン評価ボード投稿

あとがき

ルネサス最新汎用マイコンRL78/G11は気になります。従来のRL78/G1xに比べアナログ機能を大幅に強化し、ローパワーと4μsの高速ウェイクアップを実現しています(詳細情報は、コチラ)。開発資料の多くがe2Studioで、CS+ではありません。Non ARMコアなので他社ARM比、特に優れたマイコンの可能性もあります。