Azure RTOSはEclipse ThreadXへ

Azure RTOSはEclipse ThreadXへ
Azure RTOSはEclipse ThreadXへ

Microsoftが、Azure RTOSをEclipse Foundationへ提供しました。Azure RTOSからEclipse ThreadXへ名前を変え、ベンダーニュートラルなオープンソースRTOSへ変わりました(2024年1月9日、MONOist)。

上記記事に筆者は驚きました。Microsoft発表は、昨年11月21日です。発表から約2か月たった現在の業界動向をまとめました。

Microsoft動向

MicrosoftがAzure RTOSを手放した経緯は、前述MONOist記事が詳しく説明しています。ごく簡単にまとめます。

Microsoftは、2019年ExpressLogic社買収で入手したThreadXを、自社クラウドサービス接続用RTOS、Azure RTOSとして育ててきた。しかし、2022年Azure RTOS開発責任者がMicrosoftを退社。結局、2023年Microsoftは、Azure RTOSをEclipse Foundationへ提供。今後、Microsoftは機能安全コストも負担しない。

※機能安全コストとは、厳格な安全やセキュリティ規格を満たすソフトウェアのメンテやサポートコスト。

Eclipse財団動向

MCU統合開発環境のデファクトスタンダード:Eclipse IDEの非営利運営団体がEclipse Foundation。

Eclipse財団は、提供Azure RTOSをEclipse ThreadXと改名。ベンダーニュートラルなオープンソースRTOSとし、一般的に有償の機能安全版も、2024年1月末目途にMIT Licenseで提供準備中。

Eclipse財団は現在Eclipse ThreadX開発者募集中で、Eclipse ThreadXの全コンポーネント(IoT MCUベンダ動向図のTCP/IPスタック等)無償配布になる可能性あり。

MCU RTOS動向

MCU RTOS動向
MCU RTOS動向

Eclipse ThreadX競合ライバルのFreeRTOS、 μT-Kernel状況が下記。特段の対応は現在無し。

FreeRTOS:機能安全版は商用ライセンスSAFERTOSで提供中。FreeRTOSは無償提供中。
μT-Kernel: IEEE標準規格:IEEE2050-2018完全準拠版μT-Kernel 3.0を無償提供中。

IoT MCUベンダ動向

本ブログ掲載IoT MCUベンダで言えば、STマイクロ>ルネサス>NXPの順に、Azure RTOSに積極的でした(FreeRTOSなら真逆)。

そのSTマイクロが、Eclipse ThreadXは、重要な開発環境の一部、とMicrosoft発表内でコメントしています。つまり、STマイクロは、これまでのAzure RTOS同様、Eclipse ThreadXをミドルウェアとして提供すると思います。

現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)
現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)

米市場動向

MicrosoftがAzure RTOSを手放したのは、育成済みAzure RTOSを、今さら保守・運用しなくても、自社クラウドサービスへの影響は少ない、と判断したからかもしれません。

一方、一般向けAI PCに関しては、Windows 11シェア伸び悩む、Windows 12方向性などの記事から、Microsoftは次期Windows+Copilotに注力すると思います。AI Copilotキー追加モバイルCopilotなど、最近は生成AI関連のCopilot発表一色です。

これらCopilot群は、次期AI Windows(Afterword2参照)で使い易く統合されるでしょう。

2024年1月12日、米株式市場も⽣成AI⾰命からより多くの恩恵を受けるMicrosoft時価総額を、アップルを抜き首位復活させました。

Summary:IoT MCU開発者対応

Microsoftが、Azure RTOSを手放し、Eclipse財団が、Eclipse ThreadXと改名、ベンダーニュートラルオープンソースRTOSとしたことを、業界は、冷静かつ好意的に受け止めているようです。

むしろ、AWSならFreeRTOS、AzureならAzure RTOSと2本立てIoT MCU RTOS開発が、Eclipse ThreadXで一本化、機能安全パッケージも無償提供期待の方が大きいのかもしれません。

IoT MCU開発者は、Eclipse ThreadXを含むRTOS動向に注意する必要があります。

Afterword:RTOSチェックポイント

RTOS動向チェックポイント
RTOS動向チェックポイント

MCUにRTOSを使う理由は、クラウド接続ライブラリが必要だからです。

しかし、ライブラリは関数の集合に過ぎないので、ライブラリ利用例、つまりサンプルコードが無いと使えません。ベンダーニュートラルEclipse ThreadXが、AzureとAWS両方の接続サンプルコードを提供するかがチェックポイントです。

また、サンプルコードがあっても、接続の容易さや安定性も確認したいです。評価ボードでのテストやクラウド接続ユーザ数変化、SNSなどで判るでしょう。

Eclipse ThreadXが他RTOSへ与える影響は、少なくないと思います。この辺りは、調査を続けます。

Afterword2:AI Windows12決め手

Win11敗因の1つは、TPM 2.0などのPCハードウェアとWin11アップグレード条件を、100%結び付けたことだと思います。条件を満たさないPCは、Win11アップグレートができずWin10のままです。Win10でも、PC生産性に大差はありませんが…😓。

ハードウェアとアップグレート条件の結び付きを緩くし、例えば、NPU(Neural Processing Unit)搭載最新Core Ultraプロセッサなら、自然言語入力にも対応するAI機能満載Win12、古いCPUなら、従来CUI/GUI 入力のAI Win12など、アップグレード機能/能力差を付けます。

これに近いことは、 既に昨年のWin11 23H2アップデートの段階的機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout、CFR)で実施中です。

AI機能は、PC生産性に直結します。PC買換え需要も喚起できるでしょう。不振Win11と2025年秋Win10サポート終了前に、AI Win12リリースをMicrosoftが急ぐ理由です。

つまり、2024年内にPCハードウェアに応じたAI Win12アップグレートをMicrosoftが提供することが、低下しつつあるWindowsシェア復活の決め手になると思います。


効果的MCU学習と開発方法

MCU開発者は、常に新しい事柄を学習しつつ、同時に開発成果の出力が求められます。MCU開発者の学習と開発の参考になる2記事を見つけたので紹介します。

  1. ソフトウェア開発者が「学習」について知っておくべき10のこと、2023年12月12日
  2. 時間外労働と生産性低下の意外な関係、2023年12月11日

※英語版は、参照。

MCU学習と開発の参考になる2記事
MCU学習と開発の参考になる2記事

AI要約が望ましいのですが、無いので筆者が要約します。是非、ご自身で読んでください。

参考記事1要約:学習10のこと

人間記憶の仕組み、学習の仕組み、初心者とエキスパートの違いを示し、ソフトウェア開発者が学習を改善するための10個の事柄(#1~#10)解説。

筆者が特に印象に残った内容が、下記。

  1. 多くのコードを読み「理解」が、プログラミング熟練度を向上(#3)
  2. 1日の学習時間は、90分が限度(#5)
  3. 問題・課題のトライ順序を変える(ランダム化)のは解決に効果的(#5)
  4. エキスパートが初心者の目で見られなくなる「エキスパート盲点」は多い(#8)
  5. 休憩や散歩でトライ戦略を再検後、やり直す(#10)

参考記事2要約:意外な関係

欧米と日本、13000従業員の労働時間と生産性の調査結果。開発作業と生産性の関係説明。

印象に残った内容が、下記。

  1. 休憩無し従業員は、燃え尽き症候群の可能性が1.7倍(休憩時間と生産性)
  2. 理想的集中時間は、1日4時間。最長会議時間は、2時間。(仕事に集中できる時間)

know-how をリビルド

英語の「know-how」から来た外来語、日本語カタカナ表記「ノウハウ」は、専門的な知識や技術、手法という意味です。

知的財産の1つのため、日本発の公開例は少ない気がします。しかし、海外発know-howは、有用情報が多数あります。和訳が無くても、Microsoft Word翻訳やブラウザ翻訳を使えば、英文know-howが手軽に日本語化できます。

MCU開発者は、これら know-how活用をお勧めします。

但し、自分なりの解釈や理解を加えることが重要だと思います。これは、参考記事1が示したプログラミング熟練度を向上させるには、多くのコードを読み、その「理解」が大切なことと全く同じです。

つまり、 万人向け know-howをガイドとし、自分の頭で考えて理解する、これが、本当の学習や習得になるからです。ソフトウェア開発者的に言うと、「リビルド」です。

Summary:効果的MCU学習と開発方法

効果的MCU学習と開発には集中と多様性が必要
効果的MCU学習と開発には集中と多様性が必要

know-howの2記事を参考に、筆者がお勧めする効果的なMCU学習と開発方法をまとめます。

MCU開発者には、集中と多様性が必要です。

限られた集中時間(90分~4時間)に最大開発成果を上げるには、回り道のようでも1日の作業時間を、プログラミングとその他作業に分離して作業すべきです。

プログラミングも課題を複数に分け、壁に遭遇した場合には、そこに拘らず別課題プログラミングへ変えるなどが効果的です。課題への集中と、拘らずに変えることができる多様性が、効果的MCU開発になります。

多様性具体例の1つに、MCUベンダのサンプルコードと評価ボード活用があります。

自社ハードウェアが手元にある場合でも、逆にない場合はなおさら、評価ボード上で類似サンプルコードを動かすと、柔軟で多様な開発視点が得られます。これにより、例えば、隠し製品機能などの実装などもありえるでしょう。

その他の作業には、MCU関連の新しい学習なども含みます。

これら作業も、休憩やコーヒーブレイク、散歩などを挟みつつ様々な内容に分割しましょう。気分転換効果が期待できます。隠し製品機能などのアイデアも生まれ易いでしょう。

Afterword:盲点解決:サンプルコードと評価ボード

紹介した2つのKnow-how記事は、ソフトウェア開発者作業時間の科学的分析結果に基づいています。

MCU技術資料は、エキスパート盲点だらけです。内容が判り難いのは、読者のせいではありません。紹介Know-howやAI Copilotなどが、効率的な盲点解決手段を与えるでしょう。

一方、自ら気づき難い開発者のソフトウェア盲点やバグ解決手段が、サンプルコードと評価ボードです。

サンプルコードと評価ボードは開発者自身のソフトウェア盲点を浮き彫りにする
サンプルコードと評価ボードは開発者自身のソフトウェア盲点を浮き彫りにする

確実に動作するサンプルコードと評価ボードは、自分のソフトウェア盲点を浮き彫りにします。また、頭の中だけでなく、具体的なソフトウェア動作を目視することで、楽しく開発が続けられます。

MCU攻略の秘訣は、多様性を忘れず、楽しく、面白く開発に集中(集中時間はタイマ等で管理)、学習することだと思います。


RTOSアプリケーションIoT MCU能力推定

RTOSアプリケーションのIoT MCUにはどの程度のハードウェア能力が必要か?
この答を IEEE標準RTOS のμT-Kernelプログラミングコンテスト対象評価ボードから考察しました。

RTOSコンテスト評価ボード
RTOSコンテスト評価ボード

RTOSコンテスト対象評価ボード

MCUベンダ大手4社:インフィニティ、STマイクロ、NXP、ルネサス協賛のRTOSプログラミングコンテストが開催中です。RTOSは、IoT MCU世界標準のμT-Kernel 3.0利用がコンテスト条件です(関連投稿:前投稿)。

但し4社評価ボードは、μT-Kernel以外にもFreeRTOSやAzure RTOSでも動作可能です。そこで、これら評価ボードスペックを分析すると、RTOSアプリケーションのIoT MCUに、どの程度のMCUハードウェア能力が必要か、その目安が判ると思います。

コンテスト対象評価ボードは、ベンダ4社評価ボードと英BBC開発micro:bit、合わせて5種です。

インフィニティ:KIT_XMC72_EVK
STマイクロ:Nucleo_H723ZG
NXP:MCX N94x評価ボード(1月4日現在Coming Soon)
ルネサス:EK-RA8M1
BBC:micro:bit

評価ボードMCUコアとROM/RAM量

各評価ボードは、どれもARM Cortex-M系コアを用いています。

インフィニティとSTマイクロは、ハイパフォーマンスMCU Cortex-M7、NXPは、Trust Zone搭載MCU Cortex-M33、ルネサスは、AI/ML性能向上のArm Helium搭載MCU Cortex-M85、BBC開発micro:bitは、ベーシックなMCU Cortex-M4です。

評価ボードのCortex-Mコアと最高動作速度、ROM/RAM量が下表です。

ベンダ Cortex-Mコア/速度 ROM(KB) RAM(KB)
インフィニティ M7/350MHz 8192 1024
STマイクロ M7/550MHz 1024 564
NXP M33/150MHz 1024 1024
ルネサス M85/480MHz 2049 1024
BBC M4/64MHz 512 128

BBC開発micro:bitは、他に比べスペックが劣っています。
これは、μT-Kernel 3.0学習教材用でコスト最優先のためと思います。

ベンダ4社評価ボードは、RTOSコンテスト参加ハードウェアなので、どれも汎用RTOSアプリケーション開発ができるハズです。コンテストエントリー時に、応募者が第3希望まで評価ボードを選べます。

IDEはRTOSもベアメタルも同じ

ベンダ4社は、ベアメタル開発用の統合開発環境:IDEを利用し、FreeRTOSやAzure RTOS開発環境を提供中です。

例えば、STマイクロは、ベアメタル開発で使うSTM32CubeIDEに、ミドルウェアのAzure RTOS開発ツールを追加し、Azure RTOS開発環境を、ユーザ自身で構築します(関連投稿:STM32 Azure RTOS開発ツール拡充

現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)
現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)

コンテストは、μT-Kernel 3.0 RTOS開発です。筆者は、μT-Kernel 3.0をベンダ4社評価ボード上で動作させる作業、いわゆるポーティング処理は、把握していません。

しかし、本稿主題は、RTOS IoT MCUに必要なハードウェア能力の推定です。従って、評価ボードへのμT-Kernel 3.0ポーティングは、無視します。

一方、micro:bitは、μT-Kernel 3.0で動作するEclipse IDEが提供されます。従って、どなたでも直ぐにmicro:bit上でμT-Kernelを動かすことができます。この点も、教育用に適しています。

RTOS IoT MCUハードウェア能力推定

最初の表に戻り、RTOS IoT MCUに必要なハードウェア能力を推定します。

ベンダ Cortex-Mコア/速度 ROM(KB) RAM(KB)
インフィニティ M7/350MHz 8192 1024
STマイクロ M7/550MHz 1024 564
NXP M33/150MHz 1024 1024
ルネサス M85/480MHz 2049 1024
BBC M4/64MHz 512 128

先ず、MCUコア能力は、micro:bitスペックから最低でもCortex-M4以上、RTOSアプリケーションを実用的に開発するには、Flash ROMは1024KB以上が必要そうです。教育用micro:bitの512KBは、排除しました。

また、RTOSは、動作タスク数に比例し使用スタック量が急増します。これは、RTOSが実行タスクを別タスクへ切替える毎に、実行タスク変数やレジスタ等の状態をスタックにプッシュするためです。タスク再実行の際には、RTOSがスタックからポップし、実行前タスク状態へ戻します。

RTOSスタック動作(出展:ウィキペディア)
RTOSスタック動作(出展:ウィキペディア)

仮に、このRTOSポップ/プッシュに対してスタック量が不足した場合は、再現し難いバグになります。このバグを避けるには、必要十分な量のスタック領域が、RAM上に必要となります。スタック量を見積もるツールは、各社のIDEに付属しています。

表から、RTOSアプリケーション開発には、RAMは、最低でも512KB、安全側評価なら1024KB程度が必要そうです。

Summary:RTOS IoT MCUハードウェア能力

RTOSアプリケーションが動作するIoT MCUに必要なハードウェア能力を、μT-Kernelプログラミングコンテスト対象評価ボードから考察した目安が下記です。

MCUコア:ARM Cortex-M4以上、Flash ROM 1024KB以上、RAM 512KB以上

RTOSアプリケーション開発時には、MCUデバイスコストと発展性の検討が必要です。

機能拡張や横展開が期待できるRTOSアプリケーションなら、IDE付属スタック見積ツールを活用し、RAMに余裕があるデバイスが、効率的で安全な開発ができそうです。

Afterword:2024年もよろしくお願いします

日本時間の毎週金曜日、MCU話題を中心に、その開発環境のWindowsや比較対象にMPU/SBCなども混ぜながら、IoT MCU開発お役立ち情報を投稿します。

「開発スピードと成果」この2つを強く求められるのが、MCUに限らず開発者の宿命です。

激変MCU環境で背反するこの2つを両立する手段の1つが、MCUテンプレートだと筆者は考えています。開発初期立上げをスムースにし、全体像の視点を持ちつつ個々の機能追加もできるからです。
RTOS MCU開発も同様だと思います。

但し、全て自作するベアメタル開発と異なり、RTOSと協調動作するのがRTOS MCU開発です。RTOSを活かすMCUタスク作成や本稿のMCUハードウェア能力を、弊社RTOSテンプレートへ反映したいと考えております。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

FreeRTOS version 11.0.0は、マルチコアMCU動作が可能になりました。


μT-Kernelプログラミングコンテスト

μT-Kernalプログラミングコンテスト(出典:TRONフォーラム)
μT-Kernalプログラミングコンテスト(出典:TRONフォーラム)

2023年12月11日から、インフィニティ、STマイクロ、NXP、ルネサス、4社協賛のμT-Kernelプログラミングコンテストが開催されます。

IoT MCU世界標準RTOSのμT-Kernelを用いたアプリ、ミドルウェア、開発環境/ツールの3部門で競い、対象は国内外技術者と学生、賞金総額500万円、1次審査合格者には評価ボードが無償提供されます。

Summary:エントリ:12月11日~2024年2月29日、提出:2024年3月11日~6月30日

コンテスト詳細は、12月7日、東京ミッドタウンホールの2023 TRON Symposiumで発表されます。

賞金総額500万円のコンテスト応募期間は、2023年12月11日から2024年2月29日。1次審査合格者は、内容に応じて評価ボードが無償提供され、応募プログラムの提出期限は、2024年3月11日~6月30日です。

世界標準MCU RTOS:μT-Kernel 3.0

クラウドへ接続するIoT MCUは、RTOSが必須です。FreeRTOSやAzure RTOSが有名です。

μT-KernelもIoT MCU RTOSの1つです。μT-KernelのIEEE標準規格:IEEE2050-2018完全準拠版がμT-Kernel 3.0です。つまり、μT-Kernel 3.0は、世界標準IoT MCU RTOSです。

さらに、μT-Kernel 3.0は、GitHub公開のオープンソースソフトウェアで、協賛MCUベンダ各社のBSP(ボードサポートパッケージ)もあり、RTOS開発が容易になりました。

※評価ボード毎に異なるBSPにより、ユーザ開発アプリのハードウェア依存性を無くすことがBSPの目的。STマイクロ例が下図(説明投稿はコチラ)。

BSPとMCU Firmwareによりハードウェア依存性が無いHAL APIsが提供
BSPとMCU Firmwareによりハードウェア依存性が無いHAL APIsが提供

協賛4社:STマイクロ、NXP、ルネサス、インフィニティ

μT-Kernelプログラミングコンテスト協賛4社の評価ボードは、上記BSPが提供中です。2023 TRON Symposium会場で、各社評価ボードでμT-Kernel 3.0動作のIoT MCU実機デモが開催されるでしょう。

大手MCUベンダ4社のμT-Kernel 3.0への力の入れ方やRTOS開発のし易さが、実際に評価ボードで判ると思います。

μT-Kernel 3.0学習教材

micro:bit は、入力、出力、センサー、無線通信機能が搭載済み学習ボード(出典:micro bitサイト)
micro:bit は、入力、出力、センサー、無線通信機能が搭載済み学習ボード(出典:micro bitサイト)

英BBC開発の教育向けMCU、micro:bit上で動くリアルタイムOSマイクロ学習キットが販売中です。キットと言っても、入力センサ/スイッチ/LED搭載済みのmicro:bitとPCをUSB接続するだけでRTOS動作します。

RTOSにμT-Kernel 3.0を使用し、タスク動作をビジュアル表示できるタスクトレーサやμT-Kernel日本語解説資料付きです。μT-Kernel 3.0のスケジューリングやセマフォが、ご自分のペースで学習できます。

Afterword:今年最後の投稿、次回1月5日予定

寒暖差のせいか、このごろ体調不調です。流行中のインフルエンザかもしれません。かなり早いのですが、本稿を今年最後の投稿にしたいと思います。次回は、2024年1月5日(金)投稿予定です。

今年も本ブログをご覧いただき、ありがとうございました。皆様、よいお年をお迎えください🤞。


Microsoft 365の2種ユーザインタフェース

Microsoft 365が、2種類のユーザインタフェース(UI)を持つことが判りましたのでレポートします。

メインストリームサービスが今年10月10日に終了したOffice 2019代替アプリとして、Windows 11 23H2クリーンインストのついでにインストしたサブスクアプリOffice 365。OfficeからMicrosoft365アプリ入替作業は、前稿のAfterwordに示しました。

今回は、Microsoft 365をローカルで使う場合と、クラウドで使う場合のUIの違いについて速報します。

ローカル/クラウドで異なるMicrosoft 365ユーザインタフェース

Microsoft 365は、ローカル動作のデスクトップアプリUIと、ブラウザ経由クラウド動作のクラウドアプリUIの異なる2種UIを持ちます。

Microsoft 365 WordデスクトップアプリUIとOffice 2019 Word UI(Office 2019削除のため2021で代用)
Microsoft 365 WordデスクトップアプリUIとOffice 2019 Word UI(Office 2019削除のため2021で代用)
Microsoft 365 WordクラウドアプリUIと無償Officeオンライン Word UI(クリップボードや挿入タブに機能差が見られる)
Microsoft 365 WordクラウドアプリUIと無償Officeオンライン Word UI(クリップボードや挿入タブに機能差が見られる)

365 Wordを例に説明します。デスクトップアプリWordは、見た目/操作/機能ともにOffice 2019 Wordと同じ、クラウドアプリWordは、見た目は無料オンラインWordに近いです。

つまり、Microsoft 365は、使う場所により同じWord文書でも編集UIが異なる訳です。

見た目が無料オンラインに近いクラウドアプリWordは、編集機能的にはデスクトップアプリと同じです。※現時点のMicrosoft 365状況に基づく。

無料オンラインWordは、一部編集機能を削除したOffice 2019/2021サブ機能版です。従って、本格的な文書編集は困難、出先での閲覧程度に筆者は使っていました。

しかし、Microsoft 365クラウドアプリは、デスクトップと同じフル編集機能を備えます。出先での文書編集などにも十分使えます。

但し、生産性を大きく左右するUIがデスクトップアプリと異なるのは、玉に傷ですが…。

無料オンラインOfficeはMicrosoft 365のティザー広告

ティザー広告とは、商品の断片的な情報・機能だけを公開し、ユーザ興味を引くことが目的のプロモーション手法です。新車広告によく用いられます。

次期カムリとして公開されたティザー写真(出典:トヨタ)
次期カムリとして公開されたティザー写真(出典:トヨタ)

無料オンラインOfficeは、Microsoft 365のティザー広告だと思います。無料版でも最低限の文書編集はできますが、通常利用には向いていません。

無料オンラインOfficeの機能不足やストレージ容量不足を感じるユーザは、サブスクMicrosoft 365へ移行すると解決します。

Microsoft 365クラウドアプリUIが、無料オンラインOfficeに似ているのは、この移行をスムーズにするためだと思います。

Summary:Microsoft 365の2種UIとAI生成カスタムリボン

Microsoft 365には、Office 2019/2021と同じUIを持つローカルデスクトップアプリと、無料オンラインOfficeに似たUIを持つクラウドアプリの2種類があります。どちらのアプリも編集機能は同等です。

デスクトップとクラウドでUIが異なるのは、無料オンライン版からクラウドアプリへの移行をスムーズにするためや、Edge/Chrome/Firefoxなど様々なブラウザ経由アクセスのため、だと思います。

UIは異なりますが機能的には同じです。Office文書編集は、外出中でもデスクトップと同じようにクラウド上でも可能です。ローカル文書とクラウドOneDrive文書を常時同期に設定すれば、作成文書の保存・編集が場所やデバイスによらず可能になります。

1TBもの大容量OneDriveを、Microsoft 365が提供するのも、ローカルとの常時同期のためだと思います。文書に加え、様々な素材もOneDriveへ保存可能です。※大容量同期には高速ネットPC接続も必須。

現在UIが異なるのは残念です。話題のAIにより、使用頻度に応じたカスタムリボンを生成し、デスクトップ/クラウド共通UIとして追加、統一化できると、生産性が高く場所/デバイス依存性も無いMicrosoft 365になり嬉しいです。

Afterword:LibreOffice Community(最新版)7.6.3更新

Windows/Mac/Linuxマルチプラットフォーム動作で、Microsoft文書形式はもちろん、ISO標準ODF:Open Document Format形式サポートの無償文書作成ツール、LibreOffice Community(最新版)が7.6.3へ更新されました。

マルチプラットフォーム+ODF形式&Microsoft形式サポート+無料が、LibreOffice特徴です(関連投稿: Windows代替PCのLinux動作が嬉しいLibreOffice)。

Windows/Mac+Microsoft形式&ODF形式サポート+Microsoft Account&OneDrive+サブスクが特徴のMicrosoft 365とLibreOfficeの対比が、今後楽しみです。


Windows 11クリーンインストメモ

Windows 11 22H2をWin11 23H2へアップグレートしたところ、エクスプローラが動作しません。様々な対策でも治りません。結局、Win11 23H2のクリーンインストールで解決しました。

本クリーンインストールで得た情報をメモとして残します。

Summary:Win 11 23H2クリーンインストールメモ

・Win11 23H2クリーンインストは、Win11付属回復ツール、または、Rufusツールを使う2方法あり。

・回復ツールは、個人ファイル保持、アプリ&設定&個人ファイル全削除の2オプションあり。
・回復ツールのWin本体は、クラウド経由ダウンロード、または、PC内から回復。
・回復ツールは、まっさらでクリーンなWindowsを回復。
・クリーンWindowsは、MicrosoftオンラインアカウントとOneDrive利用が前提。
・ネット接続速度が遅い、または、OneDrive同期を使わないユーザには不向き。

・Rufusツールは、Win11アップグレードと同じ方法でクリーンインスト。
・Rufusツールは、個人ファイル保持、アプリ&個人ファイル保持、アプリ&個人ファイル全削除の3オプション。
・クリーンインストのみの回復ツールに対し、Rufusはクリーンインストや既存アプリを残しOS再インスト可能。
・既存アプリを残す場合は、OSトラブル継続の可能性も残る。
・クリーンインスト中のWindowsユーザエクスペリエンスは、アップグレートと同じ要件設定可能。

・Win11 23H2クリーンインスト時間は、回復/Rufusどちらの方法でも丸1日程度必要。
・インスト中は、PCモニタ前から離れ難いので、文庫分などを片手に気長に処理終了を待つ心がけ必要。

筆者は、Rufusツールで個人ファイルのみ保持し、Win11 23H2クリーンインストを行いました。エクスプローラ非動作が治り、現在、安定動作しています。

3年ぶりのWindowsクリーンインストール

弊社は4台のWin11 PCを所有しています。エクスプローラ非動作PCは、2020年Win 10から使ってきました。Win10時代は、何回かOSクリーンインストールをしました。しかし、Win11にアップグレード後は、他の3PCを含めクリーンインストは不要でした。振り返ると3年ぶりのWindowsクリーンインストです。

3PCは、問題なくWin11 23H2へアップグレードし安定動作中です。問題のPCと他PCの搭載アプリケーションは、同じです。原因は、よく言われる相性でしょうか? 相性起因ならクリーンインストしか手は無いことは、過去の経験上知っています。

そこで、ネット上の様々なエクスプローラ非動作対策を試しました。例えば、CCleanerを使う、エクスプローラ非動作レジストリを手動で動作時へ戻す…などなどです。が、結局Microsoftサイト記載のシンプルな対処方法の3番目、Windows再インストに帰着しました😭。

Microsoftサイトのエクスプローラ非動作対処
Microsoftサイトのエクスプローラ非動作対処

Win11 23H2クリーンインストール2方法

Win11 23H2クリーンインストは、Windows付属回復ツールを使う方法とRufusを使う方法の2つあります。お勧めは、Rufus方法です。先ずは、MicrosoftサイトのWindows付属回復ツールの方法を説明します。

Win11付属回復ツールのクリーンインスト

付属回復ツールは、Windowsキー+Iキーで表示されるダイアログの、システム>回復で行います。更に回復は、「個人用ファイルのみ保持」と、「個人用ファイル&アプリ&設定の全てを削除」の2オプションがあります。

Win本体のクリーンインストは、両オプションともクラウド経由ダウンロード、または、動作PCローカルから行う選択肢があります。

Win付属回復ツールは既存アプリや設定は削除
Win付属回復ツールは既存アプリや設定は削除

クラウド経由は、ネット接続速度が遅い場合、Win本体ダウンロードに時間が掛かります。PCローカルから行う方法は、ローカルシステムに損傷などが無いことが絶対条件です。

どの方法でも付属回復ツールは、「既存アプリやOS設定は削除」します。従って、まっさらでクリーンなWindowsが回復します。

また、クリーンインスト後、最初のWin11 23H2起動時に、個人用ファイルとOneDrive同期を自動的に開始します。ネット接続速度が遅い場合、これは問題です。個人用ファイルを削除した場合はもちろん、残した場合でも同期完了までに時間が掛かるからです。

付属回復ツールは、MicrosoftオンラインアカウントとOneDrive利用が前提です。Microsoft推薦Windowsの使い方で、ネット接続速度も速いユーザには適した方法です。

Rufusツールのクリーンインスト

お勧めのRufusを使うクリーンインスト方法は、Win11 23H2アップグレード方法と同じです。

違いは、旧22H2からRufus作成のSetup.exeを実行するか、または、問題発生の23H2からSetup.exeを実行するかのみです。前者がアップグレート、後者がクリーンインストです。

つまり、Rufusは、ダウンロード済みWindowsを、ユーザ設定に基づいてPCへインストするだけです。旧バージョンへ実行すればアップグレート、既存バージョンへ実行すればクリーンインストツールになる訳です。

但し、本PCはエクスプローラが動作しませんので、Windowsキー+Rキーでファイル名指定実行ダイアログを表示し、Rufus作成Setup.exeを参照実行しました。

Rufusの方法は、「個人データのみ保持=アプリは削除」、「アプリ&個人データともに削除」、「アプリ&個人データともに保持」の3オプションがあります。初めの2オプションは、付属回復ツールと同じ、最後がRufus独特のオプションです。

付属回復ツールと同様、まっさらなWindowsにするには、アプリ削除が必要です。

しかし、既存アプリ全ての再インストは手間と時間が掛かります。従って、トラブル原因アプリが明確な場合には、そのアプリのみをクリーンインスト前に手動で削除し、その後、アプリ&個人データ保持で再インストすることもできます。

このように、クリーンインスト自由度が高いことがRufusお勧めの理由です。

付属回復ツールがOS完全クリーンインストのみを行うのに対し、Rufusツールは既存アプリも残しつつOS再インストもできる訳です。従って、トラブル継続の可能性も残りますが、その分アプリ再インスト手間は減ります。

また、ネット接続速度が速いカフェなどで別途Win 11 23H2ダウンロードを行えば、Rufusツールの事前準備は済みますので、付属回復ツールに比べ作業時間が短くなります。Windowsユーザエクスペリエンスも、アップグレード要件回避と同じ設定が使えます。

Rufus 4.3のアップグレード要件回避ダイアログ
Rufus 4.3のアップグレード要件回避ダイアログ

クリーンインストールお役立ちツール

その他、Win11クリーンインスト時に役立つツールを紹介します。

PGLST:既存インストのアプリリスト作成ツール。Win10用だが、Win11でも動作。クリーンインスト後、アプリを再インストする際に役立つ。

Refreflect_home(無償版):SSD/HDDクローン作製ツール。無償期間中でも、他クローンツールにはできない容量減少クローンもできる。クリーンインスト前SSD/HDDは保持し、別SSD/HDDでクリーンインストオプションを試すなどの際に役立つ。

ExploerPatch:Win11タスクバーを、Win10同様の左右サイド配置や透明化も可能にするツール。Win11 23H2でもWin10タスクバー復活が出来るのは嬉しい。但し、OSトラブル確率も高まるらしい。また、タスクバー右サイド配置は、Win 11 Copilotの動作と重なり煩わしい。お勧めはしないが嬉しいツール。

Afterword:ついでにOffice 2019からMicrosoft 365へアプリ変更

アプリクリーンインストのついでに、2023年10月10日にメインストリーム終了のOffice 2019を、年額払いサブスクリプション型Microsoft 365へ替えました。1TBもの巨大クラウドストレージが使えます。

文書作成アプリを、買い切り型Office 2019/2021からサブスクリプション型Microsoft 365へ変えるユーザは、今後増えると思います。そこで、Office 2019からMicrosoft 365へのアプリ変更作業をメモに残します。

・Microsoft 365インスト前に、Office 2019アプリ完全削除必須。専用ツールをMicrosoft用意。
・完全削除ツールは、同時にVisio 2019もPCから削除。個人Officeファイルは残る。
・削除後、新にMicrosoft 365(Word/Excel/PowerPoint/Outlook/OneNote)をPCへインスト。
・現在のMicrosoft 365のWord/Excelは、Office 2019のWord/Excelと見た目、操作同じ。
・個人Office 2019ファイルのMicrosoft 365読込み問題なし。
・Microsoft 365クラウドアプリに筆者がよく使うVisioあり。その他多くのクラウドアプリあり。

Microsoft 365アプリ一覧
Microsoft 365アプリ一覧

・Microsoft 365個人ファイル保存先は、ローカル、クラウドストレージ、両方可能。同期も可能。
・Microsoft 365本体ダウンロードは、直ぐに終わると表示されるが、高速ネット必要。

今後PCには、少なくとも100Mbps以上のネット接続は必要と感じたWin11クリーンインストでした。


ベアメタルかRTOS開発か?

弊社MCUテンプレートご購入者様から、ベアメタルかRTOS、どちらの開発が良いかについてご質問がありました。
ご質問者同意を得ましたので、筆者回答を一部修正、抜粋して示します。

Summary:クラウド接続=RTOS開発、スタンドアロン=ベアメタル開発

RTOS vs. BareMetal
RTOS vs. BareMetal

AWSやAzure RTOSなどのクラウドへ接続するMCUは、RTOS(FreeRTOS/Azure RTOS)開発が必須です。クラウド接続やセキュリティ確保に、専用RTOSライブラリ利用が必要だからです。また、大規模、複数開発者の場合も、RTOS開発が向いています。

スタンドアロン動作のMCUは、ベアメタル開発をお勧めします。MCU動作を全て開発者で管理・制御できるからです。

ベンダ提供サンプルコードとMCU評価ボードを活用すると、ベアメタル/RTOSどちらの開発でも、高品質・短期間で製品のプロトタイプ開発ができます。弊社MCUテンプレートは、サンプルコード活用プロトタイプ開発に適しています。

クラウド接続MCU:割込みベースRTOSタスク開発

AWS (Amazon Web Services)やAzure (Microsoft Azure Cloud Services)へ接続するMCUは、クラウド接続用に、FreeRTOSやAzure RTOS接続ライブラリの利用が前提条件です。また、高度なセキュリティ対策が求められますので、クラウド側提供セキュリティライブラリを使うことも求められます。

従って、クラウド接続MCUは、必然的にRTOS開発となります。

通信やセキュリティ以外の処理は、タクス(スレッドとも言うが、以下タスクと略)の開発が、ユーザ開発内容です。

タスクは、移植性が高い単位に機能分割し、割込みベースで作成します。複数タスクの割込み処理や優先順位を管理・処理するのが、RTOSの役目です。

RTOSが優先順位に基づいて個々のタスクをMCUに割当てることで、複数タスクの並列処理が進みます。シングルコアMCUの場合、一度に実行するタスクは1個です。従って、タスクは時分割処理です。分割タイミングが短く、しかも優先順位に基づいたタスク処理ですので、複数タスクが並列処理しているように見えます。

タスクは、別タスクのことを考慮せず独立性、移植性高く開発可能です。その代償として、RTOSが複数タスク間優先制御を行うセマフォ/ミューテックス/イベントフラグなど、また、タスク間通信を行うメッセージバッファ/メールボックスなどのRTOS独自機能を、開発タスクに組込む必要があります。

関連投稿:RTOS習得

移植性や独立性が高い開発済タスクは、ベアメタル比、ソフトウェア資産として他プロジェクトへもそのまま使えるメリットがあります。また、ソフトウェア規模が大きく、複数開発者で共同開発する時も、機能完全分離RTOS開発の方が優れると言われます。

スタンドアロンMCU:ポーリングベースベアメタル開発

RTOSが行う周辺回路の割込み処理や優先制御を、全てユーザが行うのがベアメタル開発です。

但し、デバッグや処理開発のし易さを考慮すると、ポーリングベース開発をお勧めします。

つまり、周辺回路の割込みフラグを、一旦、割込み処理待ちフラグへ置換え、この割込み処理待ちフラグをポーリングすることで処理を実行する方法です。割込み処理待ちフラグは、RAMへ展開されますので、開発処理もRAMフラグで制御でき、割込みを直接扱うよりも単体デバッグが容易になります。

ベアメタル開発は、単体デバッグ済みの複数処理を、MCU全体で上手く実行する制御部分も必要です。弊社ベアメタルMCUテンプレート英語版MCUテンプレートは、この制御部分を提供します。

サンプルコード活用プロトタイプ開発

サンプルコード活用プロトタイプ開発
サンプルコード活用プロトタイプ開発

RTOSはタスク、ベアメタルは周辺回路制御のソフトウェア開発が必要です。

但し、ベンダは、周辺回路制御の参考となるソフトウェアを、サンプルコードとしてMCU評価ボードと共に提供します。サンプルコードは、ベンダ専門家が開発した評価ボード動作確認済み高品質コードですので、これをユーザが利用しない手はありません。

現在サンプルコードは、ベアメタル用のものが殆どです。しかし、RTOSタスク開発へも応用できます。サンプルを上手く利用することで、0から開発するよりも、短時間でソフトウェア開発ができます。

また、評価ボードMCU周りの部品配置やアートワーク配線は、処理性能過不足時のMCU交換や耐ノイズ性が高いハードウェア開発の参考書になります。

MCU開発を高品質・短期間で行うには、サンプルコードとMCU評価ボードを活用し、製品プロトタイプ開発がお勧めです。プロトタイプから製品へフィードバックをかければ、より良い製品化が可能です。

Afterword:ベアメタル開発からRTOSへステップアップ

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

Windowsアプリ開発時は、Windows APIの利用は当たり前です。多くの解説書もあります。

IoT MCU開発時も、FreeRTOSやAzure RTOSが当然になると思います。ただMCU開発には解説書が少なく、その理解には基礎知識が必要です。基礎がグラつくと、その上の積み重ねは非常に困難です。

MCU開発の基礎は、ベアメタル開発です。IoT普及でRTOS MCU開発も増えます。IoTに向けてRTOSを勉強しようと考える方も多いと思います。その場合は、ベアメタル開発の何をRTOSが代行し、何が得られ、何を失うか、RTOSオーバーヘッドはどの程度かを考えながら学習すると、より効率的にRTOS習得ができます。

例えば、RTOS開発には、セマフォやミューテックスなどのベアメタル開発に無い多くのRTOS機能を新に学ぶ必要があります。しかし、よく使う機能は少数です。ご自分のベアメタル手法を代行するRTOS機能から学び始め、それでも足りない機能はRTOS側に用意されていますので、順次増やしながらタスクを開発して行くと良いと思います。

ソフトウェア開発は、AI Copilot出現で激変への過渡期です。数年後には、ライブラリ組み換え作業などへ開発が変わり、不足がちなMCU開発解説もAIが代行してくれるかもしれません。

そんな全能AI過渡期でも、ご自分自身で獲得した基礎の重要性は、変わらないと筆者は考えます。


Windows 11 23H2アップグレードまとめ

Windows 11 23H2アップグレード通知
Windows 11 23H2アップグレード通知

弊社Windows 11 22H2に、23H2アップグレード通知が届きましたので23H2へ自動更新しました。別のWin11 22H2は、手動で23H2へアップグレートを行いました。

Win11 22H2から23H2へのアップグレードをまとめ、23H2特徴のAI Copilot評価、Windowsの今と今後を分析します。

Summary:Win11 23H2アップグレード2方法

日本時間2023年11月1日、一般提供開始Windows 11 23H2のアップグレード方法は2つあります。

1つが、上図Windows Updateに届く23H2アップグレード通知を待って「自動」で行う方法、もう1つが、MicrosoftサイトからWin11 23H2ディスクイメージ(6.15 GB)をダウンロードし、「手動」で23H2へアップグレードする方法です。

自動方法は、通知後、ダウンロードとインストールをクリックすると、数分で23H2アップグレードが完了します。これは、9月末の更新プログラム(KB5031455)がPCへインストール済みのためです。

既に配布済み更新プログラムの有効化が、ダウンロードとインストールのクリックですので、アップグレードは数分であっけなく終わります。また、従来アップグレードのWindows.oldフォルダも作りません!

但し、23H2アップグレード通知が届くのは、アップグレード要件など様々なチェックをバックグラウンドで行った結果です。従って、いつアップグレード通知が届くか不明な点が欠点です。

一方、手動方法は、Win11 23H2ディスクイメージダウンロードに時間が掛かる欠点があります。しかし、利用者の都合が良い時に、アップグレードを開始できる点、Rufusを使うと自己責任でいくつかのアップグレード要件を回避できるなどの利点があります。

Rufus 4.3のアップグレード要件回避ダイアログ
Rufus 4.3のアップグレード要件回避ダイアログ

弊社は、Win11 23H2へアップグレードを自動、手動の2方法で行い、どちらも成功しました。※万一のトラブルに備えて事前バックアップは忘れずに!

手動方法の詳細は、コチラを参照ください。

Win11 23H2のAI Copilot

Win11 23H2は、22H2比、150以上もの新機能が搭載されました。但し、これら新機能は、制御された段階的機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout、CFR)の対象です。簡単に言うと、使える新機能は、PC毎に異なります。

新機能のAI Copilotは、注目度が高く、アップグレードした弊社PCでその実力を試しました。結果は、現時点ではAI回答は未熟だと思います。Microsoft 365とOffice 2019の例で示します。

AI Copilot質問:Microsoft 365はOffice 2019を読み込めますか?

メインストリーム終了Office 2019の代替アプリとして、Microsoft 365を検討中の方は多いと思います。

そこで、Microsoft 365とOffice 2019の互換性、同時インストールの可否などをAI Copilotへ質問しました。

Win11 23H2のAI Copilotは、Win+C、またはタスクバーのCopilotクリックで起動します。すると、右サイドにポップアップ領域が現れ、ここにAIへの質問と回答が、スマホアプリケーションのように表示されます。

縦長エリアに、関連クラウド情報を集め、要約文の形式で回答しています。

AI Copilot質問:Microsoft 365とOffice 2019互換性
AI Copilot質問:Microsoft 365とOffice 2019互換性

ブラウザで別途検索するよりも、効率的に回答が得られる点は、評価できます。また、Microsoft 365とOffice 2019の同時PCインストールについて言及している点も気が利いています。

しかし、Office 2019を使用中で、Microsoft 365を追加インストールする背景を想定していない点は残念です。

AIは、学習経験を経て徐々に賢くなります。半年後、1年後に同じ質問をした時の、回答が楽しみです。

Windowsの今と今後

筆者はWin11 23H2の役目を、Win 10からの決別、Win11の1年延命、Win12のAI Copilot学習教育、これらだと推測します(Win12は、2024年秋発売見込み)。

つまり、Win11 22H2へ、Win12のAI機能を、プレビュー的に追加したのがWin11 23H2です。

仮に、Win11 23H2のAI機能を使わない場合は、22H2と何ら変わらず、メインストリーム期間が1年延びただけです。Win11 23H2が、22H2の小変更版と当初言われたこと、自動アップグレードではWindows.oldフォルダを作らないこととも合致します。

※Windows.oldは、アップグレード前Windowsに戻すための巨大自動生成フォルダ。手動方法は生成。

Windows 11 22H2とWindows 11 23H2のOSビルド番号差は少ない!
Windows 11 22H2とWindows 11 23H2のOSビルド番号差は少ない!

精度良いAI回答には、AIそのものの学習が必要です。Win11 23H2のAIをプレビューとした訳は、このAI学習、調査が主目的だからです。

どのような質問を一般ユーザがAIへ行うか、どのように回答するとユーザが満足するか、AIに適すユーザインタフェースはどのようなものか、などなど本格的AI Copilot実装には様々なAI自身の学習とユーザ調査が不可欠です。

Win11は、Microsoftが最後のWindowsと言っていたWin10とコア共通の中途半端OSと言われ続けてきました。Win11が不人気なのも、この中途半端さが原因です。Microsoftは、2024年新発売AI Win12を中途半端と言われない本格版にしたいのでしょう。

※Win10/11は、CUI/GUIが基本操作の古いタイプのOSです。

新しいAI機能を持つWin12は、AI処理に高性能CPUや高速ネットワーク接続が必要になるかもしれません。古いタイプのOSと異なるAI Win12の要件抽出が、Win11 23H2の役目です。そして実質Win11の最終版になると思います。

Win11 23H2は、150以上あるCFR機能をメインストリーム期間の2年間で小出しにしつつ、AIとユーザレスポンスを基に、古いタイプのOSと抜本的に異なる新しいAI Windows 12へ発展すると分析します。


RA用FSP v5.0.0 e2 studio 2023-10リリース

2023年10月28日、RA用FSP v5.0.0同梱e2 studio 2023-10がGitHubからリリースされました。FSP、e2 studioどちらも最新版です。また、10月16日に18年ぶりにバージョン5となったMCU開発必須ツール:Tera Term 5.0も、GitHubにあります。

本稿は、これらソフトウェアダウンロード先(=repository)のGitHubについて説明します。

また、GitHub公開の最新FSP v5.0.0、e2 studio 2023-10、Tera Term 5.0を使った評価ボード動作例も示します。

※今週金曜は、休日(文化の日)のため、木曜に先行投稿しています。

GitHub主要3機能

GitのWebサービス版がGitHubです。※Hubは、集約点という意味。

Gitは、Linux上で「複数ソフトウェア開発者」向けの支援ツールです。複数開発者が、1つのプロジェクトを、別々の場所・作業時間で共同開発する時に便利な機能を提供します。

Gitの主要機能が、フォーク、プルリクエスト、マージの3つです。

フォーク(=派生)は、レポジトリソースコードを派生利用し、別ソフトウェアを開発する際に、オリジナルコード所有者へ通知する機能です。

プルリクエストは、レポジトリソースコードの変更を、プロジェクト開発者へ通知、マージは、プルリクエストを受けた開発者が、変更を承認するか否かの通知機能です。承認時は、変更コードがプロジェクトへマージ(=統合)されます。

Linuxツールですので、CUI(キャラクタ ユーザ インタフェース)です。複数開発者が、地球上の離れた場所・作業時間であっても、ソフトウェア開発が上手くできる仕組みをGitが持つことが判ります。

また、ソースコードをレビューするコミュニティもあります。質の高いコード作成に役立つそうです。このコミュニティに、AI活用が最近話題です。AIを使わない時と比べ、開発速度57%、タスク完遂率27%上昇など驚きの効果が報告されています。

これらGit機能を、クラウドで提供するのが、GitHubです。2023年のユーザ数は、1億人突破だそうです(Wikipediaより)。

参考資料:GitHubとは? Digital Business Sherpa (2023-08-02)

GitHubソフトウェア公開機能

GitHubのもう1つの機能が、ソフトウェア公開です。この例が、最初に示したRA用FSP v5.0.0同梱e2 studio 2023-10やTera Term 5のリリースです。

exeファイルが直接ダウンロードできます。zipファイルダウンロードが主流のWindowsと異なる点です。

最新版RA用FSP 5.0.0 with e2 studio 2023-10のGitHubレポジトリ
最新版RA用FSP 5.0.0 with e2 studio 2023-10のGitHubレポジトリ

Latestアイコンが最新版を示します。Release Notes内にダウンロードリンク、下方にあるAssetsが、実際の公開ファイルを示します。

Summary:ワールドワイド開発標準ツールGitHub

筆者は、 パーティションもない大部屋で近隣同僚と、または、1人でソフトウェア開発をしてきました。Git主要3機能は、口頭で同僚へ伝えるか、1人開発時は不要でしたので、実際にGitHub活用経験はありません。

しかし、ワールドワイドやリモートワークでの複数人ソフトウェア開発時は、GitHubが標準ツールです。普段はソフトウェアダウンロード先としてGitHubを利用している開発者も、その仕組みを知っていると今後役立つと思います。

Afterword:RA用FSP 5.0.0 with e2 studio 2023-10 & Tera Term 5動作

GitHub公開のRA用FSP v5.0.0、e2 studio 2023-10とTera Term 5を使ったFPB-RA6E1評価ボード動作例です。接続は、コチラの投稿と同じです。

RA用FSP 5.0.0 with e2 studio 2023-10とTera Term 5.0動作例
RA用FSP 5.0.0 with e2 studio 2023-10とTera Term 5.0動作例

インストールダイアログに従っていれば、従来版からのアップグレードも問題ありません。

RA用FSP v5.0.0同梱e2 studio 2023-10リリースが、他のルネサスMCUファミリのFSP v5.0.0やe2 studio 2023-10リリースより遅れるのは、 RA専用FSP同梱e2 studioのGitHubマージ作業のためと思います。

※ルネサス他MCUファミリは、FSP、e2 studioそれぞれ個別リリース。

リリースが遅れても、RAファミリ統合開発環境を、だれでも簡単に構築できるメリットを優先したためでしょう。


業界激震:Microsoft 365顧客にAmazon

買い切り型Officeは2026年全サービス終了、サブスクリプション型Office 365(=Microsoft 365)移行が必要と先日投稿しました。これ関連のAmazonがMicrosoft 365顧客になるというクラウド業界激震ニュースが、Business Insiderで10月19日報じられました。

クラウド業界激震:AmazonがMicrosoft 365を巨額契約
クラウド業界激震:AmazonがMicrosoft 365を巨額契約

契約規模

AmazonのMicrosoft 365購入は、100万ライセンス以上、5年間で10億ドル(=1490憶円)を超える規模です。Amazon社員、顧客実務担当者の両方が、このMicrosoft 365を使います。巨額契約です。

契約要因は生成AI

詳細記事は、ImpressクラウドWatchに掲載されています。概要が以下です。

クラウド版Microsoft 365は、Amazon社員のPCへWord/Excel/PowerPoint/Outlookなどの最新Officeツール、Teamsなどの会議ツール、大容量クラウドストレージOneDriveを提供します。Microsoftは、これらツールへ生成AIを活かした機能追加を頻繁に行っています。最新例は、Microsoft EdgeのAI画像生成です。

Amazonが自社会議ツール:Chime、オンラインストレージ:WorkDocsから、競合他社Microsoft 365への変更要因の1つが、生成AIです。AI活用で、更なる生産性向上が見込まれるからだと思います。

AmazonのMicrosoft 365移行は、2024年前半完了の予定です。

CUI、GUIに次ぐPCインタフェース:AI Copilot

PC生産性を下げるのは、CUI/GUI(キャラクタ/グラフィカル ユーザインタフェース)の煩わしい操作です。これを自然言語対応のAI Copilotで代用すれば、生産性は向上します。AI Copilotが、CUI/GUIの次の新しいPCインタフェースと言われるゆえんです。

CUI/GUIベースのPCヘルプは、使い物になりません。これがAIベースヘルプに変れば、最終目的への最短操作や処理を、自動的に行う事も可能になるでしょう。

例えば、会議議事録生成や、長い文書の要約・校正などです。既に一部AIが使われているこれら機能を、もっと手軽に、しかも高精度に活用できれば、ユーザ能力をより高度な処理へ使えます。

Summary:AmazonのMicrosoft 365移行が当然と考えるユーザ進化

AI激震を受ける側か、AI起因テクノロジ変化に追随できる側か
AI激震を受ける側か、AI起因テクノロジ変化に追随できる側か

高精度なAI訓練は、一国の消費電力を超える可能性もあるという記事があります。対策に、電力効率100倍の次世代ネットワークIWONや、生成AI対応済みCPUなども発表されています。

AIは、現在のテクノロジ全てに影響を与え、変化を起こす可能性があります。クラウド業界激震ニュースAmazonのMicrosoft 365移行は、AIによるテクノロジ変化の1つと言えます。

エンドユーザは、今後現れるAI起因テクノロジ激変を注意深く観察し、今回のAmazon Microsoft 365移行が当然と考える側への進化が必要です。

さもないと、AI時代遅れとなり、激震を常に受ける側になりかねません。

Afterword:AI苦手意識薄れる

AIのFuzzyさや、勝手にデータを利用されるのは嫌だ、という感覚がありました。

しかし、最近の技術資料にAI記述の無いものはありません。MCUとAI投稿で書いたように、仕組みよりその効果を活かせれば良い、と思うようになりつつあります。

また、目的取得手段として最初にAIを使うのも時短効果があります。短縮時間をより高度な思考へ繋げれば良いからです。

AIに洗脳された訳ではありません。しかし、筆者のAI苦手意識がだんだん薄れていくこの頃です。