Office 2021とLibreOffice 7系

2021年秋は、Windows 11やmacOS MontereyなどPC新OSが登場しました。加えて、Microsoft Office 2021発売やLibreOffice Fresh/Stillが共に7系へ更新するなど、PC文書作成ツールも変化しつつあります。

本稿は、これら文書作成ツールとPCプラットフォームの現状をまとめます。

Microsoft Officeの2025年10月14日

Microsoftの2025年10月14日
Microsoftの2025年10月14日

Microsoft Office 2019と2016のセキィリティ延長サポート終了は、どちらも同じ2025年10月14日で、Windows 10サポート終了と同日です。

つまり、2025年10月14日以降は、Windows 10+Office 2019/2016のローカルPCでの運用は、セキュリティ上、問題です。Microsoftは、Windows 365やOffice 365(=Microsoft 365)などのサブスクリプション型クラウドツールを代替候補として提供します。

新発売の買い切り版ローカルPC向けOffice 2021のサポート終了は、何故かOffice 2019/2016のわずか1年後、2026年10月14日です。日本のみに人気がある買い切り版Officeから、徐々に撤退の兆しを感じるのは筆者だけでしょうか?

新OS Windows 11は、特に企業向けには不評のようです。多くの初期トラブルに加え、Windows 11メリットがビジネスには直結しないため、安定度、完成度の高いWindows 10を使い続けるユーザが多いからです。

さらに、従来Windows 10大型更新の年2回から、Windows 11同様年1回へ変更されたことも朗報、継続プラス材料です。名称もWindows 10 November 2021 Updateへ変わったようですが、大型更新結果は21H2のままでした(21H2更新結果は、来週投稿予定)。

21H2:Windows 10 November 2021 Update結果
21H2大型更新結果

Microsoftのこれら対応は、Windows 11へのアップグレート更新を望まない多くのWindows 10ユーザが、マルチプラットフォーム&クラウドツールのWindows 365へ乗換える可能性を高くします。
※Windows 365とWin 10/11比較は、コチラの関連投稿を参照してください(Win 10大型更新回数は、投稿当時の年2回のままなので注意してください)。

2025年10月14日まで、残り4年です。

この4年間は、「Microsoftが全Windowsユーザへ与えたクラウド提供ツールへの移行検討と猶予期間」とも考えられます。Microsoft戦略を俯瞰した気がします。

クラウド化は、ユーザメリットもある反面、情報漏洩についてコチラの記事を参考に検討が必要です。また、10月発生のNTTドコモ通信障害のように、ネットワーク障害により長時間クラウド利用ができないリスクもあります。

LibreOffice Community 7系

LibreOffice 7系公式資料とContents
LibreOffice 7系公式資料とContents

独)TDF:The Document FoundationのWindows/Mac/Linuxマルチプラットフォーム対応個人向け無償LibreOffice Communityは、Fresh(約1ヶ月更新の最新版)とStill(約3ヶ月更新の安定版)ともにバージョンが7系になりました。
※LibreOffice Communityと企業向けEnterpriseの違いは、コチラの関連投稿を参照してください。

Microsoft Office文書との互換性改善が主な改良点で、従来版との大きな変更はありません。弊社は、Microsoft Office 代替としてLibreOfficeを推薦しており、LibreOfficeの使い方や、Writer/Drawテンプレートなども無料提供しています。

Drawは、Microsoft Office Visio相当の図形描画ツールです。弊社は、超高価なVisio代替にDrawへ移行しつつあります。

初歩的な使い方は、上記テンプレートでカバーしています。英語版ですが、7系の使い方や、Writer/Draw/Clacの詳細な使い方は、PDF公式資料がコチラからダウンロードできます。

残念ながら日本語版(機械翻訳)は、404エラーで使えない状態です。但し、PDF資料の目次(=Contents)が判り易くできているので、不明箇所をピックアップして読めば使用方法が判ります。

注目してほしいのは、ダウンロード資料の出来栄えです。高品質資料が、無償LibreOfficeを使って作成できることが判ります。

文書作成ツールとPCプラットフォーム

ビスネスPCのOSは?
信頼性重視ビスネスPCのOSはWindows、Mac、Unixのどれが良いか?

PC技術の最新ドレンドは、メタバースやアバターです。コンタクトレス・テクノロジーと呼ばれます。MicrosoftNVIDIAなど多くのIT企業が仮想世界の実現に向けて邁進中です。

COVID-19が影響しているこれらトレンド実現には、Windows 11要件、TPM:Trusted Platform ModuleなどによるPCプラットフォーム、つまりクラウドエンドポイントのセキュリティ強化が必要です。アバター本人確認や、なりすまし防止などが必須だからです。

一方、コンテンツ作成を主機能とする文書作成ツールMicrosoft Officeは、既に完成の域に達しています。LibreOfficeは、Microsoft Office文書互換性向上を目指し改版を続けるでしょうが、価格を除く両者の差は、少なくなってきました。要は、ユーザ操作の慣れの問題で、コンテンツ作成機能差は無いと言っても良いでしょう。

経済的理由や各種リスクから、クラウドサービスよりも、ローカルPC処理が筆者は好みです。本稿の文書作成ツール状況を踏まえ、2025年10月14日までに、弊社に適すPCプラットフォーム整備を進めます。

主要ベンダのIoT MCU開発環境は、既にマルチプラットフォーム対応済みです。良質な開発資料を顧客へ提出するのは、開発者の責務です。コンテンツ資料作成の観点から、文書作成ツールとPCプラットフォームを検討する際に、本稿がお役に立てば幸いです。

LibreOffice 7.1 Communityリリース

LibreOfficeとThe Document Foundation

2021年2月3日、LibreOffice Fresh(最新版)/Still(安定版)ともに7系に更新され、同時にCommunityとEnterpriseという表記が追加されました。本稿は、2021年2月4日のLibreOffice日本語チームBlogを基に、Community/Enterpriseとは何か、これまでのFresh/Stillと何が違うのかを調査しました。

CommunityとEnterpriseの背景

Communityは、これまで同様無償のボランティアサポート版、Enterpriseは、Collabora社などのエコシステムパートナから技術サポートなどが得られる企業版です。

パッケージ   想定ユーザ 2021/02/03版数
Community Fresh(最新版) 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 7.1.0
Community Still(安定版) 家庭、慎重なユーザ向け 7.0.4
Enterprise パートナ提供 ビジネス組織、法人企業向け Collabora版など
LibreOffice (2021年2月10日現在)

Community とEnterpriseに分けられた背景は、LibreOfficeの導入が企業や団体でも増えた結果、ボランティアサポートに負荷が掛かりすぎたためだと推測します。LibreOffice開発元の独)TFD:The Document Foundationは、従来から企業向けには、様々なメリットがあるEnterprise版の利用を推薦してきたようです。

オープンソースソフトウェアは、ユーザシェアが増えると企業と個人向けに分けて配布されるようになるのは、Linuxなどと同様と考えれば良いのかもしれません。つまりそれ程、LibreOfficeのシェアが増えてきた結果とも考えられます。

LibreOffice Community 7.1新機能

個人利用に関しては、これまで通りLibreOffice Community Fresh(最新版)/Still(安定版)を使えます(以下、Community表記省略)。どちらも7系となったLibreOffice 7.1の主要新機能は、2分弱の動画でご覧いただけます。

筆者は、LibreOfficeの図形描画ツール:Drawを、「高価なMicrosoft Office Visioの代わりにWord/Excelなどでも使える高度描画ツール」としてお勧めしてきましたので、Fresh 7.1 Drawの追加機能の一部を説明します。

関連投稿:LibreOffice Fresh更新とDraw使い方のコツ

LibreOffice Fresh 7.1のギャラリー追加拡張機能

Draw 7.1のギャラリーに、新に色々なギャラリーをウェブサイトから追加できる拡張機能が加わりました。

LibreOffice 7.1ギャラリーで追加されたウェブサイトギャラリー追加ボタン
LibreOffice 7.1ギャラリーで追加されたウェブサイトギャラリー追加ボタン

これに伴い、右側7.0のギャラリー表示ボタンと新しいテーマボタンが、左側7.1のギャラリー下段へ移動し新しいテーマボタンもNew…へ変わりました。この右端の「Add more galleries via extensionボタン」が、7.1のギャラリー追加機能です。

この拡張機能ボタンをクリックすると、様々なギャラリーをウェブサイトからインストールできることが判ります。前回7.0 での投稿:新しいギャラリー追加方法で示した各種矢印も、Arrows 6.4 Galleryで提供済です。

LibreOffice 7.1のウェブサイトでインストールできるギャラリー例
LibreOffice 7.1のウェブサイトでインストールできるギャラリー例

矢印の他にも、回路図やパズルなどのギャラリーもあります。このギャラリー追加機能は、DrawだけでなくWriterやCalcなど全てのLibreOfficeツールで共通の機能です。

LibreOffice 7.1は、従来の7.0よりも多様な図形描写がより簡単にできます。

まとめ

従来同様に使用できる個人向けLibreOffice Communityは、Fresh 7.1.0、Still 7.0.4に更新、ともに7系になりました。LibreOffice Community Fresh 7.1.0のギャラリーに、新たにウェブサイトギャラリーの追加機能が備わり、7.0.4よりも多様な図形描写が簡単にできます。

TDFは、技術サポートなどがあるエコパートナ提供のLibreOffice Enterprise利用を、企業向けLibreOfficeとして推薦しています。

Linux Mintお勧め理由

PCへインストールするLinuxには、様々なディストリビューションがあります。ディストリビューションとは、Linux 本体とLibreOfficeなどの標準搭載アプリケーションを1パッケージにまとめ、利用者がLinuxインストールとその活用を即座にできるようにした配布形態のことです。

本稿は、これらディストリビューションの中で、筆者がLinux Mint 20 MATEエディション(64ビット)をWindows MCU開発環境トラブル発生時、代替に使えるLinuxディストリビューションとしてお勧めする理由を示します。

Linuxディストリビューション

2020年7月発表のWebサイト向けLinuxディストリビューションシェアを見ると、UbuntuやDebianなどがメジャーなディストリビューションであることが判ります。

様々なLinuxディストリビューション、特にUbuntuやDebian、Raspberry Pi用のRaspbianと本稿のLinux Mint概要は、コチラの情報が参考になります。用途、安定性/情報量/デザイン性などでディストリビューションを評価した結果が示されています。

Linux Mintとメジャーディストリビューションの差

UbuntuとLinux Mintの関係を、まとめました。

  • Ubuntuベースの派生形として、様々なデスクトップPCディストリビューション(Linux Mint)がある
  • Ubuntuは定期的にアップグレートされるが、主にセキュリティ修正のみでアプリケーションの大幅更新をしない5年長期サポート版:LTS版(最新は2020年4月リリース:Ubuntu Desktop 20.04)もあり、このLTS版に準ずる派生ディストリビューション(Linux Mint 20.x)がある
  • Ubuntuアプリケーションリポジトリ(公式アプリケーション保存庫)をそのまま使える派生ディストリビューション(Linux Mint)がある

MCU開発者の方は、EclipseベースIDE(EclipseベースIDE≒Ubuntu)なら、どれもほぼ同じユーザインタフェースで、同じプラグインが使えるのと同様と言えばご理解頂けると思います。

Ubuntuが最もシェアが高いのは、派生ディストリビューションのベースだからです。また、MCUベンダのLinux版IDEなどの説明書も、トップシェアUbuntu利用を前提に提供されます。

Linux Mintは、Ubuntu派生ディストリビューションの1つで、Linux特有のコマンド操作やリポジトリもUbuntuと同じです。また、UbuntuよりもWindowsやMacの操作に近いGUIを持ち、万一の際のシステムバックアップツール(TimeShift)も標準搭載済みです。

つまり、「Windows/Macユーザが、Linux Mintインストール後、Linux本体のカスタマイズは不要で、即MCU開発アプリケーションが利用できる点」が、Linux Mintをお勧めする最大の理由です。

※MCU開発アプリケーション(例えばNXPのMCUXpresso IDE、STMのSTM32CubeIDE)は、非搭載ですので、別途インストールは必要です。

Linux MintとメジャーディストリビューションUbuntuの主な差は、GUI、少し遅れるリリース時期と考えて頂ければ良いと思います。

Linux Mintの3エディション

Windows Home/Proと同様、Linux Mintにも、3種類のエディションがあります。

GUI処理の軽い方から、Xfce/MATE/Cinnamonエディションと呼ばれます。少し古い版ですが、Linux Mint 17 ユーザズガイドによると、どのエディションを使えば良いかわからない時は、METAエディションを使ってください、とあります。

筆者は3種類とも試しましたが、処理の軽さとメニューの解りやすさ、使いやすさからMETAエディションをお勧めします。

GUIは、好みの問題がありますので、3エディションをインストールして試すと良いでしょう。クリーンインストール所要時間は、せいぜい30分程度です。インストール方法は、まとめに記載しております。

まとめ:お勧めLinux MCU開発環境Linux Mint 20 MATEエディション(64ビット)

最新Ubuntu Desktop 20.04ベースで、Windows MCU開発環境トラブル発生時、代替に使えるLinuxディストリビューションとして、Linux Mint 20 METAエディション(64ビット)をお勧めする理由を示しました。

多発するWindows起因のトラブル発生時、Windows MCU開発に慣れた開発者が、MCU開発を中断することなくLinux環境で継続するには、Windows操作に近いGUI、LTS版のOS安定性、Linux特有コマンドへの情報量多さなどが必要で、これらを満たすのがLinux Mintです。

Linux Mint 20 METAエディション(64ビット)のPCインストール方法は、ユーザズガイドにも記載されていますが、コチラなどを参考にすると素早くインストールができます。

Linux Mint 20と旧版Mintシェアは、Mint公式ブログのMonthly News – July 2020によると、投稿時点では、32ビットPCにも対応した前版Mint 19.xのほうが高いのですが、いずれ逆転すると思います。全ての32ビットOS新規開発は、完了しました。

Mint 20標準搭載のLibreOfficeは、安定性重視のStill版v6.4.5です。カスタマイズ不要と書きましたが、Fresh版v7.0.0へ変更したい方は、コチラに方法が記載されています。



LibreOffice Fresh 6.3.2更新

LibreOffice最新版/安定版と呼んでいたパッケージ名を、Fresh/Stillへ変更しました。“Fresh/still”は、公式ブログでは以前から使われていた名称で、今後は本ブログもこのFresh/Stillを使います。

9月26日、LibreOffice Fresh版が6.3.2へ更新されました。Still版は、6.2.7のままです。

LibreOffice版数(2019年9月29日現在)
パッケージ 想定ユーザ 2019/9/26版数
Fresh 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 6.3.1 → 6.3.2
Still ビジネス組織、法人企業、慎重なユーザ向け 6.2.7 (更新なし)

更新方法

LibreOffice Fresh版は、ヘルプ(H)>更新の確認(C)…の自動更新ができません。公式ダウンロードサイトから、32/64ビットを選択後6.3.2をダウンロードし、PCで実行すれば旧版に上書きインストールされます。

LibreOffice Fresh 6.3.2更新方法
LibreOffice Fresh 6.3.2更新方法

関連投稿

LibreOfficeに関する弊社関連投稿がありますのでご覧ください。また、右側カテゴリで、LibreOfficeをクリックすると、LibreOfficeに関する全投稿がご覧いただけます。

LibreOffice Fresh 6.3系とStill 6.2系の機能差
LibreOffice FreshとMicrosoft Office 2019/365の機能差
LibreOffice Writerの無料テンプレートの4章(テンプレートは、版数が変わっても使えます)
LibreOffice Drawの無料テンプレートの4章(テンプレートは、版数が変わっても使えます)