次期マイコンテンプレートのターゲット考察

NXPとFreescaleの合併、予想さえしなかったことです。激動するマイコン世界ですが、現在のマイコンテンプレート状況を整理し、次期テンプレートのターゲットとなるマイコンについて考えます。

入手性の良いマイコンとテンプレート販売状況

以前紹介した入手性が良いマイコンが一目で解る、チップワンストップサイトのマイコン/開発ツール検索を今回も利用させていただきます。サイト中央のマイコン/ボードタグをクリックすると、8/16/32bit処理ビットとベンダ毎に分けられたマイコンが表示されます。

一覧表が以下です。緑色がARM仕様のマイコン、青色がベンダ仕様マイコン、赤囲みがテンプレート対応マイコンで、現在4種のテンプレートを1000円(税込)で販売中です。

入手性の良いマイコンとテンプレート提供状況
入手性の良いマイコンとテンプレート提供状況

表中NXPはARM Cortex-M0のみですが、Cortex-M0+のLPC8xxも供給しています。
32bitマイコンの主流は、緑のARMマイコンです。表内のARMコアの特徴をまとめたものが下表です。

ARMコア 名称 概要
Cortex-Mx エンベデッド プロセサ 32bitの高い処理効率を維持し、業界最先端の動作と最小限のスリープ/ダイナミック電力、最小限のダイ面積を目指し設計。以下の4サブ構成。
Cortex-M0:低消費電力マイコン
Cortex-M0+:超低消費電力マイコン
・Cortex-M3:汎用マイコン
・Cortex-M4:デジタル信号制御マイコン
Cortex-Ax アプリケーション プロセサ 高度なオペレーティングシステム:OSが実行可能なメモリ管理ユニットMMU搭載マイコン
ARMx Classic プロセサ ARM11、ARM9、ARM7などコスト効果の高いマイコン

 

32bitマイコンのテンプレート対象は、Cortex-M0/M0+です。
Cortex-M3クラスになると、高価なうえに動作周波数も70MHz以上でControlよりもComputeが得意になります。IoT向けPCのEdisonRaspberry Pi 2(Cortex-A7搭載)と競合する可能性もあります。Cortex-M0/M0+は、16bitマイコン市場の置換えも視野に入れたマイコンですので、今後の普及も期待できます。
16bitマイコンは、ルネサスの超低消費電力マイコンRL78に、RL78/G1xテンプレートを販売中です。

4種テンプレートに付記した動作電圧からみえるのは、そのマイコンの想定アプリケーションです。
FreescaleのKinetis Eは、5V耐性やノイズ耐力を高めたマイコンです。また、NXPのLPC8xxは、バッテリ駆動ができ、小ピンですがスイッチマトリクスによりピン配置の自由度が高く、LPC111xも同じくバッテリ駆動可能で、第3世代でアクティブ消費電流が116uA/MHzまで低下したマイコンです。ルネサスのRL78は、広い動作電圧がセースルポイントのマイコンです。

以上が現状マイコンテンプレートの状況です。「16bitのHigh Performanceマイコンから32bit Entry+alphaのマイコンで、容易に入手できメジャーなもの」へテンプレートを提供し、「対象マイコンの速習と早期アプリ開発」が誰でもできます。テンプレートの詳細は、マイコンテンプレートサイトを参照してください。

IoTアプリケーション向きの超低消費電力マイコンと次期テンプレート

開発アプリケーションに適したマイコンを選ぶこと、これが最も重要です。汎用マイコンでも、想定した応用の範囲内で能力を発揮するように設計されているからです。
次期テンプレートは、よりアプリケーション指向の強いマイコンを選びます。当りハズレはありますが、当たればより多くのテンプレートが売れる可能性があるからです。

プログ記載の2015年1月~2月に集中して最新マイコンドレンドを分析した結果、各ベンダは、巨大マーケットを持つ「IoTアプリと車載アプリ」へのマイコン開発に力点を置きつつあることが解りました。特に車載マイコンでのこの動きの結果、NXPとFreescaleの合併となったとも言えるでしょう。

次期テンプレートもこのドレンド:IoTアプリ向けの超低消費電力マイコンに開発します。例を挙げると、ARM Cortex-M0/M0+コアでは、より低い消費電力、高エネルギー効率と低コストを狙ったFreescaleのKinetis LシリーズやNXPのLPC82x、ルネサスRL78:S3コアでは、RL78/I1Dなどです。

これらには、従来テンプレートに添付したシンプル/メニュードリブンテンプレートに加え、IoTアプリ開発の重要なポイントになる省電力テンプレート(仮称)も加える予定です。

 

IntelシニアフェローStephen Pawlowski氏によると、「これからの10年は、エレクトロニクスのイノベーションの歴史で最もエキサイティングな時代になるだろう。」だそうです。弊社マイコンテンプレートが、このエキサイティングな時代に活躍する技術者/開発者の方へ、少しでもお役立てれば幸いです。

NXPがFreescaleを買収

弊社マイコンテンプレート提供中のNXPが2015年下半期までにFreescaleを買収、合併します。これにより、自動車向け、汎用マイコンのシェアが一社(NXP?)にまとまります。

両社提供のARM Cortex-M0/M0+マイコンの見直しや統合、新ブランド発表の可能性もあります。ARMマイコンの世界も集約されつつあるのでしょうか?
結果的として弊社マイコンテンプレートは、全ての上位陣をカバーするので、喜んで良いのかな?

最新マイコンのドレンド考察

IoTに向けて汎用マイコンも変化しつつあります。今回は、この変化について考えます。

ADC分解能12ビット

最近のマイコンADC分解能は、汎用タイプでも12ビットが標準的です。例えば、LPC824(NXP、2014/10発売)、RL78/I1D(ルネサス、2015/02発売)などです。従来10ビットに比べ4倍の分解能です。
接続されるセンサの性能向上や、マイコン向きの分解能として12ビットが選ばれたと思います。これ以上の分解能になると、キャリブレーションや測定誤差への対応が必須となり、ADC専用ICの領域となるからです。

CPU代替データ転送

DMA:Direct Memory Accessや、DTC:Data Transfer Controllerは、CPUに変わってデータを転送する機能です。CPU転送より低電力で動作するため、ADCとペアで使われるのが一般的です。ADC変換データをDMA/DTCを使ってRAMへ転送し、この間はCPUを休ませる、その目的は、消費電力の低減です。

CPU消費電流低下

マイコンCPU本体の消費電力が改善される好例が、LPC1114(NXP)です。トラ技2012年10月掲載のLPC1114評価ボードのCPUは、LPC1114/301でした。LPC1114/xx1 → xx2 → xx3(xx1の数字が世代を示し、現在は第3世代)で180uA/MHz → 140uA/MHz → 116uA/MHzと世代が進む毎にアクティブ消費電流が36%も低下しました。

これらの変化は、5Vレギュレータ動作から、バッテリーなどのより低く、しかも変動する電圧でも長時間動作する省電力マイコンが目的です。

基本動作モードと省電力動作モード

RL78カタログ資料より抜粋したRL78ファミリの動作モードを示します。

RL78ファミリの動作モード
RL78ファミリの動作モード

通常動作(MAIN RUN、ARMマイコンの場合はRUN)と低電力動作(HALT、ARMの場合はSLEEP)、動作停止(STOP)の基本3モードに加え、第4の新しい省電力動作モード(SNOOZE)があります。

SNOOZEは、HALTよりも更に低い電力で動作しますが、以下の点に注意が必要です。

  1. SNOOZE動作するには、STOP動作モードから入る必要あり。
  2. SNOOZE中に動作する周辺回路は機種によりに異なりRL78/G13、G14の場合は、ADC、CSI00スレーブ受信、UART0データ受信の3機能のみ。
  3. HALT → MAIN RUNに復帰する時間に比べ、起動時間がかかる。

これらに注意して、開発アプリでSNOOZEが有効に使えるか否かの判断が必要です。

例えば、RL78/G13でADCデータをDMAでRAM転送する場合には、SNOOZEは使えず、HALTで行う必要があります。あるいは、ADCはSNOOZEで行い、データ転送はCPUで行う方法もあります。
どちらが開発するアプリに適しているか、消費電力はどちらが低いか、SNOOZEからの復帰時間は問題ないかを検証し、決める必要があります。
最新マイコンRL78/I1Dは、RL78/G1xに比べこの制約が緩く、より簡単に広い条件で適用できる工夫も施されています。
また、さらに細かい省電力アプリへ対応すべく、10個もの動作モードを持つKinetis Lシリーズ(Freescale)などもあります。

Kinetis Lシリーズの動作モード
Kinetis Lシリーズの動作モード

ポイントは、各省電力動作モードの制約条件と復帰時間を考慮したうえでモード選択することです。

現行テンプレートの動作モード

販売中のテンプレートは、通常動作:MAIN RUNと低電力動作:HALT(SLEEP)の2動作モードに対応しています。これは、

  • この2動作モードは、全マイコンにあり、機種に依存しないテンプレートとして実現できること
  • 省電力化に最も効果があり、通常動作への復帰も高速なので確実(バグなし)に動作すること

が理由です。

省電力動作モードの注意点と裏ワザ

省電力動作モードには、多くの制約条件があります。言い換えると「動作するアプリや環境を想定した動作モード」とも言えます。この省電力動作モードの注意点をまとめます。

  • 想定したアプリや動作環境を見極め、それに沿って開発しないと徒労になる
  • 通常動作への復帰時間を吟味した上で使わなければ、取れにくいバグを生むリスクがある
  • 苦労して省電力動作モードを実装しても、そのモードの全体動作に対する相対時間が少なければ、得られる効果も少ない

実は、前述のLPC1114進化のように、マイコンそのものを初めから低消費電力版へ変えることが一番簡単で確実だったりします(裏ワザ?)。

省電力テンプレートの方針

テンプレートとしても新しい省電力動作モードへの対応が必要です。以下の方針で開発予定です。

  • 省電力アプリを特定し、その上で、応用範囲の広い適用例で開発
  • 省電力アプリの有効性を確実に示せるマイコンに実装(そもそも省電力動作モードそれ自身に、想定動作があるので機種依存性が生じるのも仕方がないかも…)

シンプル/メニュードリブンテンプレートに続く第3のテンプレート:省電力テンプレート(仮称)とは、
「通常時は現行テンプレートと同様MAIN RUNとHALT(SLEEP)で処理を行い、一定時間入力が無い場合は、STOPまたはSNOOZEになり、何らかの外部入力で通常動作へ戻る」
などでしょうか?

方針提案に対する、ご意見、ご希望など何なりとお気軽に、info@happytech.jpへお寄せください。参考にさせていただきます。

無償mbed OS 10月15日リリース予定

mbed OSリリーススケジュール(記事より抜粋)
mbed OSリリーススケジュール(記事より抜粋)

弊社ブログ記載のARM無償提供mbed OSのリリーススケジュールが、“ARM 「mbed OS」とは何か?その詳細と動向”記事にあります。本年2015年10月15日以降には、mbed OSを試せそうです。

mbed OS層構造

mbed OSの構造(記事より抜粋し加筆)
mbed OSの構造(記事より抜粋し加筆)

ARM Cortex-M0/M0+のマイコンに無償で使えるmbed OSは、図のように各種標準通信プロトロルを提供します。ROM容量の少ないマイコンは、この中の一部を選択して実装できるそうです。

CMSISとIPv4、IPv6実装済み無償OSがC++ APIで使える10月15日が待ち遠しいです。弊社テンプレート提供中のARMマイコン、LPC812、LPC1114/5、Kinetis Eにも適用できそうです。

実物を診ないと断言はできませんが、テンプレートもこのmbed OSの上(Applicationsの層)に配置できる気がします。超うすいテンプレートだからです。勝手にライバル視してきましたが、実は、CMSISと同じ感覚でネット接続APIが使える可能性もあり、ますます待ち遠しいです。
一方、IoT向けPC:Raspberry Pi 2に無償提供されるWindows 10にとっては、強力ライバルソフトになりそうです。Raspberry Pi 2は、ARM搭載ですので、当然このmbed OSが実装できると思うからです。

マイコン技術者必読情報

PC Watchサイトの2015年1月1か月集中講座:「IoTの波に乗るマイコン事情」という記事を紹介します。PC用のCPUからスマホ、マイコンまで、全てのプロセサ事情が網羅され、まとめられた記事です。マイコン開発の技術者は、必読です。

マイコン技術者は第4回から読むと良いかも?

8ビット、16ビット、32ビットと変わってきたマイコンの歴史や、位置づけ、現状入手可能なマイコン開発で押さえておくべき特徴などが解りやすく解説されています。この第4回に自分が担当するマイコン記載がない場合には、第2回のARM Cortex記事にくわしく解説されています。

ベンダによるCortex特徴記事は、他社と差別化点のみを強調する傾向があります。Cortexの変遷や特徴などを、ベンダを跨いで解説したARMコア特集の第2回記事を読めば、よりARMコアの理解が深まります。

過去、現在、そして将来

マイコンの機種選定は、難しいものです。現在の価格、入手性は簡単に評価できますが、一旦開発すると納入先での長い運用が始まり、将来の拡張性や動向などを考慮することは、不可能な気もします。しかし、本記事記載の過去の経緯や変遷から、ご自分が開発したマイコンとその開発技術が、将来どうなるか、そして何が本質的に重要な要素かを考えてみるのも良いと思います。

IoTへのヒント

私は、この記事から多くのヒントを得ました。その中の1つを示し、今後のマイコン開発に役立てたいと思います。

第1回より:IoTやセンサーにはMCUが必須で、切っても切れない関係にある。理由はコストと効率性である。MPUは「何でもできる」が「何をさせるのにも適している」わけではない。用途によってはMCU:マイコンを外付けにして、ここに作業をオフロードした方が賢明というケースは少なくない

マイコン消費電力低減の検証

2015年2月号のトラ技特集4章、5章にマイコン消費電力の低減手段が列記されています。良く整理された記事で、No1~No10までの消費電力低減手段と、マイコン仕様の例が示されています。

弊社のマイコン消費電力を減らすアプローチは、2014年3月1日弊社ブログの“システム最大動作設定の目的”の項に書きました。今回は、このマイコンテンプレートに実装済みの電力低減方法とアプローチを、上記トラ技の内容で検証します。

マイコンテンプレート消費電力低減の仕組み

最も簡単かつ効果的な消費電力低減方法は、トラ技No5手段の低消費電力モード:スリープの導入です。無処理時のCPUクロック供給を停止し、周辺回路はクロック供給を継続します。問題は、具体的にどのようにプログラムすれば、この手段がソフトウエアで実現できるかです。

弊社マイコンテンプレートは、対象マイコンのアクティブ最大速度で、アプリを時分割起動します。そして、処理終了時と処理が無い時間は、スリープする仕組みをテンプレート自身にプログラム済みです。また、未使用の周辺回路には、クロック供給をしません(トラ技No7手段適用済み)。

従って、素のテンプレートは、時分割の最大周波数動作です。3月1日の再掲になりますが、先ずこの状態で目的のアプリを開発します。

電力低減へのアプローチ

電力低減のために動作周波数を下げる(トラ技No1手段)のは、テンプレートを使ったアプリ完成後です。これは、アプリが出来ていないうちに、周波数を下げるのは、自分で自分の首を絞めるのと同じだからです。

アプリ完成後なら、周波数を下げられます。但し、設定できる周波数は、限られています。同様に、供給電圧を下げるのも(トラ技No2手段)、5V/3.3V/1.8Vなどに選択肢が限定されます。これらの周波数/電圧の選択肢のうち、どれが効果的かを比較し決定するアプローチをテンプレートは想定しています。これら決定に、動作アプリ自身も反映する必要があるかもしれないからです。

また、テンプレートは、250us/1ms/10ms/100ms/1s起動の計9か所の起動箇所と、スリープ起動箇所が明確に別れた時分割起動なので、どの部分の処理に時間が掛っているか、時分割動作が出来ないのかが解析しやすいのもの特徴です。従って、問題部分の処理分割や見直しも可能です。これは、トラ技No5手段の動作プロファイル最適化を、実際に検討する際に役立ちます。

例を示します。RL78/G13やG14スタータキットは、マイコンの平均消費電流をテスタで簡単に計測できます。RL78/G1xテンプレートのHALT()(スリープ相当)処理をコメントアウトすると、消費電流が倍になることが確認できます。

HALT有無で電力消費変化を検証
HALT有無で電力消費変化を検証

ハードウエア関連の留意点

トラ技No3、No4、No6、No7手段は、マイコン機種選定時に考慮すべき内容です。また、No8、No9、No10手段は、マイコン周辺回路設計・動作時の留意点です。ソフトウエアのマイコンテンプレートとは切り離して考えます。

トラ技内容をあまり記述すると“ネタばらし”になるので、No1~No10の詳細は、トラ技を購入して参照して下さい。

 マイコンテンプレートの検証結果

今回は、トラ技の内容で、弊社マイコンテンプレートにインプリメントされている消費電力低減方法と、アプローチ方法を示しました。結論は、主だった低減手段は、テンプレートに組込み済みです。テンプレートを使ってアプリ完成後、さらなる電力消費低減アプローチも示しました。販売中の4種のマイコンテンプレートは、全てこの低減方法を実装済みです。

LPC8xx用LPCOpen v2.15へ1年3か月ぶりに更新

LPC8xxテンプレートに使用中の、NXP LPC8xx用LPCOpenライブラリが、v2.01(2013/10/04リリース)からv2.15(2015/01/08リリース)へバージョンアップされました。変更箇所(原文)を抜粋します。

Changes

  • Fixed system clock frequency calculation function
  • Fixed IAR/Keil build warnings
  • Added support to run from IRC without using PLL
  • Keil Projects updated to Keil uVision v5.xx
  • IAR Projects updated to IAR version 7.xx
  • Updated ADC and ACMP examples [Directly connects to POT in EA Base board]
  • Examples updated, so that it won’t depend on EA Motor control board
  • Glitch Filter APIs updated
  • Board library UART Fractional generator configuration updated
  • Fixed low power mode API Chip_PMU_SleepState()
  • readme files updated
  • Updated SCT Examples
  • Fixed a stack overwrite problem in IAP code
  • PININT interrupt names made consistent

LPC8xxテンプレート改版予定

これに伴って、LPC8xxテンプレートも、この新しいLPCOpenライブラリを使い、近いうちに改版予定です。先ずは、NXPのLPCOpenライブラリ改版速報をお知らせしました。

ちなみに、LPC111xテンプレートのLPCLPC11xx用のLPCOpenライブラリは、2015/01/10現在v2.00a(2013/09/13リリース)のまま不変です。

マイコンと自動車

年末に公表された2つの記事から、マイコン半導体ベンダと自動車会社の共通性について考えます。

車載マイコンの世界シェア

図1 車載マイコンシェア(記事の図より一部抜粋)
図1 車載マイコンシェア(記事の図より一部抜粋)

図1は、車載半導体シェアの記事から、マイコン部分のみを、私が抽出したものです。記事は、昨今の車電動化に伴って、車載半導体とドイツInfineonの伸びが著しいことを記載しています。弊社マイコンテンプレートのルネサス、Freescale、NXPは、図の上位にあります。

ARMコアマイコン提供数

図2 ARMコア供給数(FTF2014 FTF-IND-F0738より一部抜粋)
図2 ARMコア供給数(FTF2014 FTF-IND-F0738より一部抜粋)

図2は、2014年12月4日に開催されたFreescale Technology Form 2014、FTF-IND-F0738の4ページ記載ARMコアマイコン提供数上位のみを、私が抜き出したものです。M0+マイコンでは、FreescaleとNXPは図では同数ぐらいに見えます。オリジナルは、ルネサスもありましたが、少数なので割愛しました。

半導体ベンダと自動車会社の境遇

「超巨大な市場+市場の継続的な伸び」が必須という意味で、半導体ベンダと自動車会社は、同じ環境です。車載半導体が増えれば、制御マイコンも増えます。ただ、マイコン特有問題として、ソフトがあります。半導体ハードの接続インタフェースは統一されていて、複数社の選択/置換えが可能ですが、マイコンはそうはいきません。

同一ベンダでも機種が変わるとソフト、特にアプリケーションの移植は困難です。マイコンがARMコアで、IDE開発環境がEclipseで統一されつつあるのは、このソフトの流用可能性が高まることが背景にあります。1社独占、しかもガラパゴス環境では、採用リスクが大きくなるからです。

選択と集中、そして業界標準

「選択と集中」、この経済判断が、次々に産まれては消えていく自動車です。20年もすれば愛車も廃車、但し自動車なら新車に乗り換えても、普通に運転できます。しかし、マイコンはそうはいきません。

長い目で見ると、我々、技術者/開発者にとってIDE開発環境やマイコンAPIが同じになることは、必要なのかもしれません。自動車は、業界標準が確立後に、各社バラエティーがあります。マイコンは逆に、各社バラエティーが先で、徐々に業界標準化されつつあるのかもしれません。

実動作のマイコンテンプレート

弊社マイコンテンプレートは、低価格な評価ボードと無償IDEで動作確認済みです。マイコン立ち上げ時の「つまづき」がなく、1人でも手軽に、使った経験が無いマイコンやIDEを動作させて試すことができます。

動作できることは、絶対に必要です。現在のマイコン環境は、各社ハラバラです。新マイコン乗換えは、既成マイコンの概念がジャマして、つまづき、動作できないことが良くあります。新車を運転できて初めて、愛車とのクセや違いが判るのです。つまり、使用中マイコンの良さに改めて気が付くこともできます

シンプル/メニュードリブンテンプレートは、全てのテンプレートに付属しますので、その差分/共通部分の比較も容易です。

とかくしわ寄せが集まる技術者/開発者の、マイコン機種が変わった時の(心の)シミュレーションや、移植の参考にもなります。このシミュレーションを、一度でも経験したことが有るのと無いのとでは、実体験時、かなりの差になると、経験者の私は思います。

LPCXpresso_7.5.0へ更新

10月29日、LPCXpressoが7.4.0からv7.5.0_254へUpdateされました。販売中のLPC8xxテンプレートLPC111xテンプレートともにこの最新版7.5.0での正常動作を確認しました。今回は、LPCXpressoのUpdate方法を説明します。

Update間隔

2014年のLPCXpressoのUpdateは、4月(7.2.0)→7月(7.3.0)→9月(7.4.0)→11月(7.5.0)など約2か月毎と結構頻繁にありました。時々、Welcome画面のLPCXpresso Downloadsリンクを開いて最新版を確認したほうが良いでしょう。私はあまり気にしませんが、意味不明なWarningなどが改善されることもあります。また、テンプレート使用中のLPCOpenライブラリ版数確認も下記リンクで可能です。

Welcome画面
Welcome画面

ちなみに、テンプレートのLPCOpenライブラリは、最新版の使用を確認しました。

Update方法

Update方法は下記です。ライセンスは、バブリックフォルダに保存されているので維持されます。

  1. 旧版を付属UninstallerまたはWindowsのプログラムと機能で削除
  2. 新版をインストール

新版は、旧版とは別フォルダへインストールされます。もし、この旧版インストールフォルダ内に手直ししたサンプルソフトなどを保存している場合には、削除前に別の場所へ保存する必要があります。

ライセンスは、パブリックフォルダ内のNXPLPCXpressoフォルダに記録されています。このフォルダは勝手に作成されますが、消去しないようにしてください。ライセンス保持のままUpdate完了すると、Welcome画面でfully activatedが確認できます。

ライセンス保持でUpdate完了の確認方法
ライセンス保持でUpdate完了の確認方法

IoT向けの無償ARMマイコンOS

弊社、販売中のLPC8xxテンプレートLPC111xテンプレートのライバルが、ARMから無償提供されます。ARM mbedの組込みOS「mbed OS」がそれです。

mbed OSとは

mbed OSに関する記事、「ARMがIoT向けにOSを無償提供開始」と、「ARMは「mbed」フラットフォームでIoT時代を実現させる」によると、ARM社が提供し(つまり、CMSISのOS版になるかも…)、

Cortex-M0/M0+向け、モジュラー構成で必要に応じて選択組込み可能、セキュリティ機能あり、イベントドリブン型OS、mbed Device Server(こちらは有償)との通信によりクラウドサービス利用可能、現在はα版で2015年10月に正式版の予定、NXP/freescaleなどのmbedベンダも参加、オープンソース開発、などなどIoTデバイス開発コスト低減化に効果あり。

かなり強力ライバルです(勝手にライバル視しましたが、ARM社様、ご容赦を…)。今後、ウオッチを続けたいと思います。

組込みマイコンのマルチタスク化

確かに組込みマイコンに多くの機能を実装する時、OSがあれば楽だと思うことがしばしばあります。Windowsデスクトップアプリ開発などを経験すると、より一層感じられることで、IoT時代のマイコンにはmbed OSなどの組込みOSが、必須プラットフォームになるでしょう。

ただ、OSを利用しようとすると、それなりの基礎知識が必要になります。有名な組込みマイコンOS:FreeRTOSなども、使い始めのステップが結構高く、大規模/多人数ソフト開発なら便利でしょうが、普段使いには躊躇します。

さらに、ベンダや機種毎に異なる基礎知識、商用Windowsの例では、OS更新時の手間など、実アプリ開発着手の前段階、メンテで労力を使い果たしてしまいます。これらに関しては、mbed OSで統一されれば、明るい見通しはあります。

マイコンテンプレートの市場

そんな背景で開発したのが、マイコンテンプレートです。簡易マルチタスク化、デバッグ容易、サンプルソフト流用得意、などの特徴があります。イメージ的には、以下の範囲での適用が市場です。

テンプレート市場と対応マイコン
テンプレート市場と対応マイコン

先の記事に、ARM mbedとIntel市場の違いをKris Flautner氏が説明されていましたが、(勝手に無断)引用させて頂くと「mbed OSは非常にハイエンドのモノで、それに対して弊社テンプレートがフォーカスするのは、無償IDEで開発できるプログラムサイズの低価格な組込みマイコンの市場。両者は全く異なる。」と言えます。

販売中のテンプレートの骨格説明と、一覧はコチラをご覧ください。