マイコン開発ツールの考察

最近のマイコン開発環境の動きと、その効果的な習得方法について考察します。

一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費

一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費
一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費

マイコン本体選定と頻度

最重要は、システムに使うマイコン本体の選定です。私は、入手性、価格、性能、開発のし易さの順に選びます。個人利用可能な電子部品サイトは、秋月通商、マルツ、DigiKey、Mouserなどがあり、1個当たりのマイコン本体価格比較も簡単です。性能と使い易さは、日頃マイコン記事などをチェックして見当をつけます。

使用マイコンが会社で決まっている場合もあるでしょう。しかし、たまには個人で選定することも大切です。会社で決まったまま数年たって気が付くと、浦島太郎状態になるからです。1マイコン精通もアリですが、最近の環境変化対応は必須です。

マイコン本体は、端的に言うとARMマイコン以外は各社各様で、その変化幅と世代の変化量も大きいです。車のポルシェのように、最新版が常に最高!とは言いませんが、半導体の変化スピードもこれに近いものがあります。1件当たりの開発期間を半年~1年と仮定すると、2~3回開発が終わる度に最新状況チェックは必要です。

本内容がこの状況のご参考になれば幸いです。

評価ボード選定の留意点

主要マイコンには、性能や使い方を試す評価ボードが必ずあります。この評価ボードには、マイコン本体と電源、デバッグ回路、スイッチやLEDなどの最低限ハードが実装されたシンプルなCPUボードから、UARTドライバやLCD、ブザーなどの周辺回路が実装された制御系ボードまで様々です。

例えば、ルネサスのRL78/G1xならBB-RL78G13-64が後者:制御系ボードになり、G13スタータキット、G14スタータキット、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBなどが前者:CPUボードです。

初期投資を抑えるならCPUボードです。しかし、アプリ動作テスト時にそのままでは使えません。結局、周辺回路を後付けすることになり、その手間と接続ミスの可能性などを考えると、ある程度の周辺を含んだ制御系ボードがお勧めです。

制御系ボードと被制御対象間のインタフェース

この制御系ボードは、マイコン本体の発売から数年以内に発売されるものが殆どです。このような制御系ボードの種類が多いものが、チマタで(世界的に)流行しているマイコンと考えても良いでしょう。多くの周辺回路を含んで¥2000以内と、驚異的な低価格で販売しているfreescaleのFRDMシリーズボードなどもその1つです。

実アプリ動作には、この制御系ボードに、被制御対象が接続されたものが必要です。被制御対象とは、例えば、モータ、ソレノイド、LED照明本体などです。汎用性がある制御系に対して、被制御対象は、アプリの依存性があるハードです。

制御系と被制御対象間のインタフェースとして、Arduino Unoやmbedなどの業界インタフェースがあります。被制御対象をこれら業界インタフェースで開発すれば、制御系が高性能化しても被制御対象はそのまま対応できるというメリットがあります。

開発環境IDEと業界インタフェース

マイコン開発は、高速開発が要求されます。ソフト的にこれをサポートするために、ルネサスのコード生成や、freescaleのProcessor ExpertなどのRAD: Rapid Application Development ツールがIDEに付属します。また、IDEの慣れの問題を解決する手段として、対象マイコンのコンパイラを変えればいろいろなマイコンに対応できるIARやKEILなどの商用IDEもあります。これらIDEとツールを使えば、素早いソース作成が可能です。

ただし、ソース作成のみではソフト開発では、道なかばです。実機動作テスト、ハードとの結合デバッグが必須だからです。実機テストには、制御系は最低限必要です。被制御対象は、ソフト開発と並行して進められることが多く、経験上、ソフト側へのリリースは遅れます。ソフト開発者は、これに留意したうえで開発スケジュールの立案が要求されます。

この立案の助けになるのが、開発速度を上げることをハード的にサポートする制御系と被制御対象間のインタフェースです。業界標準のArduino Unoやmbedを採用していれば、被制御対象の市販ボード代用も可能です。

マイコン開発環境の狙い

制御系デバッグ効率は、経験やツールが活かされる分野です。Eclipse IDEは、多くのデバッグアドオンツールで、だれもが効率的にデバッグできる環境を提供しています。開発分業(専業)体制にマッチします。

開発規模が大きくなると分業は必要です。人間、一度に集中できるエリアは、そんなに広くないからです。各種IDE付属ツール(コード生成、Processor Expert)や業界標準IDE(Eclipse)、インタフェース(Arduino Uno、mbed)が生まれる背景、目的はこの高速分業体制です。

個人レベルの技術習得

個人レベルでこれらの高速分業マイコン開発環境への慣れや備えは、必要です。例えれば、数学を解くには、ツールとして算数や暗算、時には電卓を使うと役に立つのと同じです。

限られた時間とお金に余裕がない個人レベルで、これら最近のマイコン開発全体を俯瞰し、効率的に速習するには、評価ボードで実動作する弊社マイコンテンプレートを使うのも1つの方法です。必要経費を、最初の表に示しました。この程度の金額であれば個人でチャレンジすることも容易だと思うのです。

データフラッシュライブラリ Type04 V1.05 リリースノートのリビジョンアップ

2014年12月16日のRunesas Toolニュースで、弊社RL78/G1xテンプレート使用中のデータフラッシュライブラリType04リビジョンアップのお知らせがきましたので、解説します。

データフラッシュライブラリ本体変更なし

変更箇所は、ユーザーズマニュアルとリリースノートの部分で、「ライブラリ本体は変更なし」です。従って、「RL78/G1xテンプレートも変更なし」です。

QB-R5F100LE-TBのサンプルプログラム添付

ユーザマニュアルにも変更があるようですが、重要なのは、リリースノート8章のRL78/G13 QB-R5F100LE-TB ボードのサンプルプログラムです。

この8章に、簡潔にデータフラッシュライブラリのCS+での使い方と、リンク・ディレクティブ設定が書かれています。ライブラリ使用をご検討の方は、先ずこれを読んで、理解不足箇所をユーザーズマニュアルで補足すればポイント理解が早まると思います。

データフラッシュライブラリ理解は進むが…

添付サンプルプログラムは、CS+のプロジェクトファイルではありません。リリースノート記述がCS+対応なだけに、個人的には、不親切で残念な気がします。ストレージ容量削減のためでしょうか? データフラッシュライブラリを使うレベルの技術者なら、Cソースとリンクディレクティブファイルのみで十分と判断したためでしょうか? 疑問です。

これらファイルをCS+のプロジェクトへ組込む時の留意点は、リリースノート記載の高速オンチップ・オシレータを32MHzへ設定する以外にも多々あると思いますが、これらをいちいち細かく説明すると説明が長くなります。最も効率的な方法が、実際のCS+のプロジェクトを提供する事だと思います。せっかくのサンプルが、何らかの問題で動作しなければ徒労に終わるからです(「何らかの問題」は、マイコン開発では頻繁に発生します)。

弊社テンプレートファイルは、対象マイコンの標準的な無償開発環境と評価ボードで動作します。RL78/G1xテンプレートでは、CS+プロジェクトでQB-R5F100LE-TBを含む4種類の評価ボードをサポートしており、そのままボードにダウンロードすれば動作確認ができます。このテンプレートへ、リリースノート添付サンプルを組込むと、CS+設定不足やミスなどを避けて確認ができると思います。

弊社テンプレートは、このようにお手元にあるサンプルプログラムをそのまま流用/組込み可能なことも特徴の1つです。テンプレートの活用方法として、この組込み容易性にも留意して頂けると嬉しいです。

サンプルプログラム説明の重要性

動作プログラムは、いろいろなパラメタが設定済みで、その結果、動作するものです。パラメタ設定がデフォルトなら問題なしですが、変更した箇所は、だれもが判るような工夫、解説は必要と考えます。どの程度説明するかが悩ましいトコロですが、弊社テンプレート説明資料は、極力この方針で作成しております。ご購入者様のご質問や、お問い合わせ内容などは、テンプレート改版時に反映させますので、お気軽にcustomerservice@happytech.jpへお問い合わせください。

Kinetis Eソフト開発のポイント:Processor Expert

2014年末発売予定のfreescale Kinetis Eテンプレートソフト、この開発にProcessor Expertを使いこなすことがポイントと考えた理由を示します。

Processor Expert :PEとは

PEは、ルネサスRL78/G1xのCS+コード生成ツールに相当します。使用周辺回路のパラメタをGUIで設定できます。例を示します。Kinetis Eテンプレート開発で使うボード:FRDM-KE02Z40Mと、その赤LEDをPWM点灯する時の設定です。設定ミスがあると、そのパラメタが黄色で表示されるので、すぐに修正や変更ができます。

FRDM-KE02Z40MとProcessor Expert設定画面
FRDM-KE02Z40MとProcessor Expert設定画面

設定後、コード生成ボタンを押すと、ユーザソース所定か所にPE生成コードが自動挿入されます。ユーザは、PEが生成したAPIを使ってアプリ開発に着手します。PE設定パラメタを変更後、再生成しても、ユーザソースは残ったまま、生成コードが再挿入されます。

つまり、周辺回路APIをPEで生成 → 動作パラメタはAPI内部に隠ぺい → ユーザソースそのものの流用が可能、です。CS+のコード生成ツールと同じ目的です。

PEを使わないサンプルソフト

旧来のマイコンソフト開発は、デバイスドライバ開発担当が、このAPIを自作していました。高性能APIが自作できますが、機種が変わるとAPIも変わることが多く、同じ処理でもアプリ作り直しが必要でした。API自動生成ツールPEは、アプリ作り直しの回避と再利用を可能にするツールです。

もちろん、Kinetis EでもPEを使わずに旧方法のアプリ開発もできます。IDE付属サンプルソフトの多くは、この旧方法で提供中です。サンプルソフトの目的が、1個の周辺回路のシンプルな説明に主眼があり、PEを使うよりはこの目的に適していること、従来からあるサンプルソフトをそのまま流用したこと、などが理由だと思います。

因みに、PEユーザガイドは、約200ページ、CS+のRL78 APIリファレンス編は、400ページ以上のボリュームがあること、などもAPI自動生成ツールがサンプルソフトで使われない原因かもしれません。良いツールには、それなりの解説書が必要です。ただ、背景記述が少ないのと、クイックレファレンスがほしいです。

iPhoneやスマホを使うと、本当に良いツールは、マニュアル無しでも使えるモノかな?とも思いますが、コンシューマ向けと、マイコン開発のようにプロフェショナル向けのモノとでは違って当然ですね。

テンプレート開発ボードのPE

テンプレート開発ボードFRDM-KE02Z40MでPEが自動生成する周辺回路一覧を、アルファベット順に示します。

テンプレート開発ボードのコンポーネントリスト
テンプレート開発ボードのコンポーネントリスト

多くの周辺回路=Componentの設定が可能です。使用頻度が高いタイマ、GPIO、UART関連、また、ボード実装のTSS: Touch Sensing Softwareや、3軸加速度センサ接続のI2CもKinetis Eテンプレートで使う予定です。 Component Levelとは、アプリ流用の容易さを示していて、Logical Device Driver :LDD、High、Lowの順で流用性が高くなります。

例えば、Lowレベルコンポーネント使用時、既に動いているアプリを別機種へ移植した時に、想定外動作をする時は、このLowレベルコンポーネントからデバッグしていくと良いかもしれません。これはCS+コード生成には無かった機能です。

また、これらPEの設定を出力し、別プロジェクトへ移植する機能もあります。これもCS+コード生成にはありません。CS+は日本語操作できる良くできたIDEですが、多くのコード生成パラメタを別プロジェクトへ引継げないのが(唯一の)欠点だと思います。

PE出力は、テンプレート使用中IDEのCode Warrior :CWとKinetis Design Suite :KDSのどちらにも移植でき、CWからKDSへ変更してもそのまま使えます。Kinetisシリーズ開発環境が、今年CWからKDSへ移行中ですので重要です。

つまり、PEを使えば、

1.アプリ流用性が高まる
2.CW←→KDSのIDE変更は問題なし
更にfreescaleマイコンは(おそらく)同じ周辺回路を使っており、それらのAPIがPEで生成ができるので、
3.freescaleマイコン機種変更も問題なし(の可能性あり)
など3拍子揃ったソフト開発が期待できる、これらがAPI生成ツール:PEをfreescale Kinetis Eテンプレート開発に使う理由です。

IoT向けの無償ARMマイコンOS

弊社、販売中のLPC8xxテンプレートLPC111xテンプレートのライバルが、ARMから無償提供されます。ARM mbedの組込みOS「mbed OS」がそれです。

mbed OSとは

mbed OSに関する記事、「ARMがIoT向けにOSを無償提供開始」と、「ARMは「mbed」フラットフォームでIoT時代を実現させる」によると、ARM社が提供し(つまり、CMSISのOS版になるかも…)、

Cortex-M0/M0+向け、モジュラー構成で必要に応じて選択組込み可能、セキュリティ機能あり、イベントドリブン型OS、mbed Device Server(こちらは有償)との通信によりクラウドサービス利用可能、現在はα版で2015年10月に正式版の予定、NXP/freescaleなどのmbedベンダも参加、オープンソース開発、などなどIoTデバイス開発コスト低減化に効果あり。

かなり強力ライバルです(勝手にライバル視しましたが、ARM社様、ご容赦を…)。今後、ウオッチを続けたいと思います。

組込みマイコンのマルチタスク化

確かに組込みマイコンに多くの機能を実装する時、OSがあれば楽だと思うことがしばしばあります。Windowsデスクトップアプリ開発などを経験すると、より一層感じられることで、IoT時代のマイコンにはmbed OSなどの組込みOSが、必須プラットフォームになるでしょう。

ただ、OSを利用しようとすると、それなりの基礎知識が必要になります。有名な組込みマイコンOS:FreeRTOSなども、使い始めのステップが結構高く、大規模/多人数ソフト開発なら便利でしょうが、普段使いには躊躇します。

さらに、ベンダや機種毎に異なる基礎知識、商用Windowsの例では、OS更新時の手間など、実アプリ開発着手の前段階、メンテで労力を使い果たしてしまいます。これらに関しては、mbed OSで統一されれば、明るい見通しはあります。

マイコンテンプレートの市場

そんな背景で開発したのが、マイコンテンプレートです。簡易マルチタスク化、デバッグ容易、サンプルソフト流用得意、などの特徴があります。イメージ的には、以下の範囲での適用が市場です。

テンプレート市場と対応マイコン
テンプレート市場と対応マイコン

先の記事に、ARM mbedとIntel市場の違いをKris Flautner氏が説明されていましたが、(勝手に無断)引用させて頂くと「mbed OSは非常にハイエンドのモノで、それに対して弊社テンプレートがフォーカスするのは、無償IDEで開発できるプログラムサイズの低価格な組込みマイコンの市場。両者は全く異なる。」と言えます。

販売中のテンプレートの骨格説明と、一覧はコチラをご覧ください。

RL78/G1xテンプレートVersion3販売

RL78/G13とRL78/G14の習得、アプリ早期開発に使えるテンプレートがVersion3に進化しました。販売価格は、従来版と同じ1000円(税込)です。

RL78/G1xテンプレートVer3(第3版)の特徴

Ver3は、テンプレート動作環境を、「4種CPUボードとRL78/G1x開発推薦ボードの2種類」とし、CPUボードには、「シンプルテンプレート」を、推薦開発ボードには、「メニュードリブンテンプレート」を適用したものをセットで販売します。

テンプレート適用例を、CPUボード実装ハードのみを動作させるシンプルなテンプレート適用例と、RL78/G1x開発推薦ボードへ、組込み機能をほぼ全て盛込み、UARTメニューで処理選択できるメニュードリブンテンプレートの2例を示すことで、Ver2に比べ、よりテンプレート動作が解りやすくなり、テンプレート機能の応用、流用が簡単になりました。

RL78/G1xテンプレート対応ボード一覧

Ver3対応ボード 名称 ボード実装制御ハード
CPUボード RL78/G13 Promotion Board LED
RL78/G14 Promotion Board LED x2, SW
QB-R5F100LE-TB LED x2, SW
QB-R5F104LE-TB LED x2, SW
推薦開発ボード BlueBoard-RL78/G13_64 LED, トリマ, SW, ブザー, LCD, UART, など

 

テンプレート説明資料

テンプレート説明資料のP1とP2を示します。

テンプレート説明資料P1
テンプレート説明資料P1
テンプレート説明資料P2
テンプレート説明資料P2

説明資料には、もくじの内容を記載しております。これもVer1/2のご購入者様のご意見、ご質問などの内容から、解りにくい箇所を加筆修正し、より解りやすくブラッシュアップいたしました。

本テンプレートが、皆様のRL78/G1xマイコン習得、アプリケーションの早期開発や評価のお役に立てれば幸いです。

購⼊ご希望の⽅は、メール(宛先:info@happytech.jp)にてお知らせください。銀⾏振込⼝座を返信いたしますので、この⼝座へ代⾦の1000円(税込)を振込でください。振込確認後、本テンプレートVer3⼀式(4種CPUボード別のシンプルテンプレート + 推薦開発ボードのメニュードリブンテンプレート + テンプレート解説全ページ、ZIP圧縮合計約3MB)をメールにてお送りします。

CubeSuite+が2つのCS+へ分離

10月1日発行のRunesas Tool Newsによると、CubeSuite+が、新しい製品名CS+になり、バージョンがV3.00.00となりました。同時に各種ツールもバージョンアップされましたので、マイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジ相当の変更です。

この新CS+で販売中のRL78/G1xテンプレート動作の確認を行い、問題なく動作しました。また、これを機にテンプレートの動作環境を見直し、従来の「市販CPUボード4種+ブレッドボードに外付けハード」から、「推薦評価ボードと市販CPUボード4種」の構成に変更します。

新CS+の構成

CS+は、78K、RL78、V850開発用の「CS+ for CA, CX」と、RX、RH850開発用の「CS+ for CC」の2つのIDEに分割されました。アップデートは、旧CubeSuite+のアップデート・マネジャで行えますが、RL78開発をする方は、「CS+ for CA, CX」のみをUp対象にし、使わないRXやRH850用のツールは、統合アンインストーラで削除すると、より少ないディスク容量で環境構築ができます。

ニュースには様々な変更内容が記載されていますが、私はCS+ for CA, CXが、旧CubeSuite+と同じに見えました。IDEの2分割と既知の問題修正で、新バージョンの3にしたと思います。対応マイコン種類が増えたので小回りが利くように分割し、今後は、各IDEで個々にUpする方針だと推測します。

新CS+での動作確認

前回Up時に発生したコード生成パラメタが新環境へ引継がれないという不具合もなく、Win7/8.1ともに、あっさりと新CS+ for CA, CXを使ってコード生成→プロジェクト再ビルド→ダウンロード→実行確認に成功しました。

但し、CS+起動時、セキュリティソフト(Avast)が無用なファイル解析をしてCS+の起動が遅くなるのは、私の環境だけの問題でしょうが…。

RL78/G1xテンプレートの動作環境

これまでは評価ボード:RL78/G13 Promotion Board(RL78/G13スタータキット)にLEDやSW、LCDなどをブレッドボードで外付けし、動作環境を作っていました。この方法は、テンプレート購入者様がブレッドボードにハードを追加する手間が必要で、結線ミスなどが発生することがありました。

この手間を省くため、LPC111xやLPC8xxテンプレートでは、評価ボードとLCD等が実装済みのBaseBoardを使い、極力配線なしでテンプレート動作環境を構築しました。

RL78/G1xテンプレートでもRL78/G13推薦評価ボードをテンプレートの主動作環境とします。そして、RL78/G13 Promotion Board、RL78/G14 Promotion Board、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBの4種CPUボードは、ボード実装のLEDを1秒毎に点滅させるシンプル動作のテンプレートを実装します。

つまり、RL78/G13推薦評価ボード:BlueBoard-RL78/G13_64に色々な機能を追加したメニュードリブンテンプレートを、それ以外のCPUボードはシンプルテンプレートを適用したものをパッケージ化し、これをRL78/G1xテンプレートVersion 3(第3版)とします。

BlueBoard-RL78/G13_64は3800円ですので、CPUボードにLCDやSW、UARTドライブなどをブレッドボードで追加するよりも安価にテンプレート動作環境が構築できます。

既にRL78/G1xテンプレート第2版をご購入済みの皆様は、第2版のBlueBoard-RL78/G13_64サブプロジェクトは、第3版と同じです。その他CPUボード対応のサブプロジェクトが、LEDの1秒点滅のみに変更(簡易化、単にLEDドライバのみ実装に変更)されたと考えて頂ければ間違いありません。近日中に、RL78/G1xテンプレート第3版発売を発表する予定です。

マイコンと無線モジュールの接続速度

トラ技2014年3月号の特集で、マイコンとスマホを接続する2つの方法が解説されています。USBで直接接続する方法と、無線モジュールで接続する方法です。今回は、この無線モジュールでスマホと接続する時の「マイコンシリアルポートの接続速度」について考察します。但し、スマホ側は、既に対応アプリが完成していると仮定します。

マイコンとスマホの接続2方法比較

Android端末とマイコンをUSB経由で接続する時には、マイコン側にアンドロイド・アクセサリ通信プロトコルを実装する必要があります。ルネサスのアプリケーションノートR01AN1965JJ0100にも詳細な解説がありますが、大変そうです。

一方、無線接続は、Wi-Fi/Bluetoothモジュールを、UARTのTXD/RXDと3.3V/GNDの4本を接続すればマイコン基板が動作するので、USB経由よりは簡単です。大変なスマホとの通信処理は、無線モジュールが代行するので、マイコンは、この無線モジュールとのUART送受信処理をすれば済むからです。

マイコンと無線モジュールの接続
マイコンと無線モジュールの接続

そこで、この無線モジュールを使ったスマホ接続を検討します。

Wi-FiとBluetooth比較

Wi-FiとBluetoothを比較します(トラ技掲載表に加筆修正、価格は、秋月電子HPから抜粋)。

モジュール メリット デメリット 代表的モジュール価格
Wi-Fi ・ネット経由で通信距離制約なし
・通信セキュリティ高
・通信速度≦数10Mbps
・直接通信形態対応のスマホは少ない
・無線LAN設定が必要
XBee Wi-Fi(S6B):3680円
Bluetooth ・初期設定不要で使用可
・周波数ホッピング機能でWi-Fiよりも正確なデータ通信
・通信距離:10~30m程度
・通信速度≦240kbps
RN42XVP-I/RM:2200円

 

注目すべきは、Bluetooth無線モジュールが、特別な初期設定なしでスマホと接続できる点です。Wi-Fi無線モジュールのXBeeは、http://www.tunnelsup.com/videoなどで接続方法が紹介されていますが、Bluetoothの方が簡単です。但し、その分、通信速度がスレーブモード最大240kbps、通信距離も30m程度となりますが、マイコンUARTに接続して使うには丁度良い通信速度です。

というのは、マイコンUARTの速度は、任意に設定できる訳ではなく、CPU動作クロック速度を決めるとUARTに利用できる速度は限られた選択肢になるからです。その中で、Bluetooth通信速度をなるべく活かせる速度を選ぶことが効果的です。例えば、RL78/G1xテンプレート/32MHzの場合には、38.4kbps、LPC8xxテンプレート/30MHzの場合は、115.2kbpsなどです。テンプレート対象のマイコンでは、Wi-Fi速度を活かせないのです。

コード生成で選択できるUART速度
コード生成で選択できるUART速度

マイコンと無線モジュールの接続速度

マイコンUARTは、これまで主にPCとの接続に使ってきました。その速度は、9600bpsや19200bpsが多かったと思います。しかし、今後は、Bluetooth無線モジュールとの接続を考慮し、115.2kbps程度のより高速なUART接続が望まれます。

マイコンテンプレートの骨格

Wordには、名刺、カレンダー、パンフレットなどアプリ毎のテンプレートが用意されています。マイコンテンプレート開発時に悩むのが、どのようなアプリを意識してテンプレートを作るかです。できるだけオールマイティなテンプレートが目標です。

今回は、弊社マイコンテンプレートの骨格について説明します。

テンプレートの骨格

弊社マイコンテンプレートは、

(1)無償IDEのプログラムサイズ

(2)時分割の処理起動

(3)RAMでの関数間パラメタ渡し

(4)UARTメニュードリブン

の4つの骨格を持ちます。

(1)無償IDEのプログラムサイズ:弊社テンプレートは、IDE無償版で開発できるプログラムサイズを対象とします。これは、この程度が個人や少人数で開発/デバッグできる限界と考えるからです。これ以上大きくなると、開発/デバッグが指数的に困難となり、開発を収束させるために、例えばリアルタイムOSなどの別手段が必要になります。

最近は、無償版でも256KB程度の十分大きなサイズも開発できるようになりました。これは、IDEツールが高機能になり、API関数の自動生成や、既存ライブラリを簡単に使えるためです。これらIDE生成関数は、バグなしの完成品ですが、個人でカスタムメイドできるサイズは、今も昔もあまり変わらないと思います。経験的に無償IDEで開発できるサイズがこの上限サイズです。

(2)時分割の処理起動:マイコンは、CPUと周辺回路が「ハード的に並列動作」します。従ってCPUソフトを、周辺回路起動と処理完了確認の2つで関数化すると、複数の周辺回路を簡単に並列動作させることができます。起動から処理完了までの処理時間は、周辺回路毎に予想できますので、その間に別処理、例えばSleepをすれば電力効率もアップします。これらの処理を時分割で起動するのが弊社テンプレートです。

(3)RAMでの関数間パラメタ渡し:カスタムメイド関数のパラメタは、内蔵RAMを使って外部と入出力します。これで関数単体デバッグが簡単になります。RAM値をデバッガで確認/修正すれば、関数動作が把握できるからです。さらに、関数の中身が未完成の時でも、入出力値をRAMに設定しさえすれば、結合デバッグができるメリットもあります。

(4)UARTメニュードリブン:シリアルポートUARTを持たないマイコンはありません。Wi-FiやBluetoothモジュールをこのUARTへ接続すれば、ワイヤレス制御もできます。シリアル-USB変換ケーブルでマイコンとPCを接続し、メニュー形式で処理を選択するメニュードリブンをテンプレートに採用する理由は、2つあります。1つが、この「UARTが必ずあり、応用範囲が広い点」です。

もう1つが、メニュードリブンで開発すると「処理の移植が容易な点」です。テンプレート利用者は、メニューで示された処理のうち、必要な処理のみを簡単にテンプレートソースから見つけることができます。所望処理がUART受信コマンド解析関数から始まるからです。

そして、発見した関数(または関連関数)を、丸ごとご自身のソースへコピーすれば、動作させることができます。テンプレートは、多くの場合、この処理単位でファイル化していますので、ファイルを丸ごとコピーしさえすれば、必要な処理をテンプレートから抜き出すことも可能です。

評価ボードで実動作確認

入手性が良く低価格な評価ボードで、これらの骨格をもつテンプレートをボードへ実装し、動作確認を行い、詳細な説明資料付きで販売します。説明資料付きのテンプレートと評価ボードの組合せは、効率的に対象マイコンを習得でき、新規アプリ開発と評価に役立ちます。

販売テンプレートと開発テンプレート

現在、2種のテンプレートを販売中で、2種を年末までに開発、発売予定です。開発経過などを本ブログに記載しますので、ご参照ください。価格は、各1000円(税込)/1コピーです。

テンプレート名 ベンダ マイコン 動作確認評価ボード
RL78/G1xテンプレート Ver3 ルネサス RL78/G1x
(32MHz)
・RL78/G13 Stick
・RL78/G14 Stick
・QB-R5F100LE-TB
・QB-R5F104LE-TB
BB-RL78G13-64 (弊社推薦ボード)
LPC8xxテンプレート NXP LPC81x
Cortex-M0+
(30MHz)
・LPCXpresso LPC812  +  mX-BaseBoard
LPC1114テンプレート NXP LPC1114/5
Cortex-M0
(50MHz)
・LPCXpresso LPC1114  +  mX-BaseBoard
Kinetis/Eテンプレート(開発中) freescale Kinetis Eシリーズ
Cortex-M0+
(40MHz)
・FRDM-KE02Z40M  +  mX-BaseBoard

RL78/G1x開発役立ち4ドキュメント

2014/6/20ルネサス発行のRL78/G1x開発に役立つ資料を4つお知らせします。このページ一番下、その他に分類されている資料で、NEW!マークが付いた以下4タイトルです。

1.RL78ファミリ用CコンパイラCA78K0R SADDR領域とCALLT命令の使用

SADDR領域とCALLT命令の効果を解りやすく解説しています。

販売中のRL78/G1xテンプレートも、SADDR領域は使っていますが、CALLT命令は、コードサイズは小さくなるものの、速度が遅くなるので使いません。RL78/G1xは比較的大きなROMを持つマイコンなので、コードサイズよりも速度を優先して設計したためです。

有効なSADDR領域ですが大きさに限りがあるので、コンパイルオプションのROM/RAM使用量を表示し、上限に近い場合には、配置変数の選択も必要でしょう。

2.RL78ファミリ用CコンパイラCA78K0R データフラッシュへの定数の配置方法

ROM、RAM、データフラッシュの3領域を持つRL78/G1xデバイスで、データフラッシュ領域へconst定数を配置する方法を記載しています。

RL78/G1xテンプレートは、データフラッシュライブラリを使い4KBデータフラッシュ領域をEEPROM的に使っています。このような使い方が不要な場合には、巨大テーブルの定数配置などで解説の方法も使えそうです。

3.スタック領域の変更方法

4.リンク・ディレクティブの説明

どちらの資料もROM、RAMへのセグメント配置に関する基本的な解説です。文章や図にすると、説明が長くなるのが欠点ですが、まとまっているので理解し易いでしょう。

RL78/G1xテンプレートでは、コンパイラ領域がRAM内で連続するように、データフラッシュライブラリの占有領域を決めるリンク・ディレクティブ設定を行っています。また、作成する関数間インタフェースは、基本的に関数引数を使わずRAMを使います。従って、関数単独のデバッグが容易で、スタック使用量も引数利用に比べ少ないのが特徴です。結果として、スタック領域の配置は、コンパイラにお任せでも問題なく動作します。

RL78常設セミナテキスト改版

2014年5月30日発行のルネサスサポート情報 vol.197で、ルネサス常設セミナテキストの改版がレポートされました。レポートでは、「新規公開」とありますが、ダウンロードして旧版と比較した結果を示します。

セミナテキスト改版内容

コース名 レポート記事 旧版との比較結果
R8Cマイコンコース テキスト新規公開 2012年3月21日 Rev. 2.20と同じ
RL78マイコンコース テキスト新規公開 2013年12月18日 Rev. 1.30へ改版
RL78コンパイラコース テキスト新規公開 2014年3月13日 Rev. 1.07へ改版
RL78リアルタイムOSコース テキスト新規公開 2014年3月31日 Rev. 1.02へ改版

※R8Cマイコンコーステキストは、改版内容が不明で、公開テキストは前版と同じでした。

テキストの変更履歴がないので、具体的にどこを変更して改版したのかは不明です。しかし、どのテキストも内容が濃く、一読に値します

テキストですので、重要項目を1~10まで記載しています。初心者には、読むだけで大変で、理解にかけられる労力が不足することも多いと思います。そんな時は、各テキストの最重要箇所のみを抽出したコレに先ずザット目を通してください。特に、コンパイラコースのその1~3を理解した後に、テキストに戻ると理解が捗ると思います。

テンプレート活用のマイコン開発

限られた時間で効率的にマイコンを習得するには、手軽に用意できる開発環境と、テンプレートを活用するのも一つの方法です。ワードやパワーポイントには多くのテンプレートが提供されますが、組込みマイコンのテンプレートは少ないようです(サンプルソフトは、あくまでサンプルでテンプレートとは、別物です)。

そんな時は、販売中のRL78/G1xテンプレートを活用下さい。業務に使えて、テキストの重要箇所エッセンスをプログラムへ盛り込んだテンプレートになっています。世界標準のARM 32ビットマイコンLPC8xxテンプレートも販売中です。