新しいRL78/I1Dからマイコントレンド抽出

ルネサスの業績が黒字に回復し、「縮小と撤退」から「拡大と攻勢」へ転換したそうです。うれしいです。このルネサスからRL78/I1Dという新しいRL78マイコンが2月に発売されました。方針転換後に厳選した新製品と思われるので、その情報から最新マイコントレンドを考えました。

従来RL78マイコンと新マイコンRL78/I1Dの違い

RL78/I1D説明資料P11より抜粋
RL78/I1D説明資料P11より抜粋

「RL78/I1D」ご紹介資料P11から、従来RL78/G13、G14とRL78/I1Dの差が解ります。RL78/I1Dは、S3コアで、ADC分解能、オペアンプ、RUN動作電流などの機能が強化されています。また、従来RL78では、動作電圧に応じてオペレーションモードが固定であったのが、ソフトで変更できるようになりました。これにより、電源電圧が低下しても機能停止せず、しかもRUN動作電流も激減しましたので、長い期間マイコンが動作可能です。

さらに、非同期タイマも追加され、センサの長時間間欠動作もCPU停止:STOPのまま可能となりました。CPU起動は、「高速wakeup」対応の中速オンチップオシレータを使うと4us程度で可能です。
※RL78/G1xテンプレートは、CPU:HALTで低消費電力対応しているため、0.5us/32MHzで起動します。

ADCの計測データは、DTCで直接RAMへ転送可能です。DTCとは、簡単に言うと、DMAがメモリアクセス専用のCPU代替転送機能なのに対し、より複雑なCPU代替処理にも対応できるものです。

マイコンドレンド:省エネとIoT

2010年発売の汎用マイコンRL78/G13やG14との違いから明らかなように、最新マイコンRL78/I1Dは、オペアンプ内蔵や高速オンチップオシレータ上限が24MHz、48ピンまでの小パッケージサイズなどから、センサアプリに特化したマイコンです。

RL78/G14の高速オンチップオシレータの実質周波数上限は32MHzなので、I1DのS3コア性能は多少劣りますが、低消費電力とより低電圧での動作など、そのトレンドは、「省エネ」追求です。

IoTでは、このRL78/I1Dのような省エネマイコンが数百億個使われと予想され、価格は、使用個数に応じて激減しますので、RL78/I1DもG13やG14と同程度、またはより低価格になるかもしれません。このように、IoTアプリケーション向けの周辺回路を持つ省エネマイコンでのシェア獲得がルネサスの狙いでしょう。汎用マイコンの機能を、IoTに会わせて見直した結果とも考えられます。

RL78/I1D CPUボード入手できず

RL78/I1D CPUボード
RL78/I1D CPUボード

RL78/G1xテンプレートは、このRL78/I1Dへそのまま流用できるハズです。DTCやADCなどの周辺回路制御は、機種毎に異なりますが、テンプレート本体は、マイコンやベンダが異なっても基本的に同一だからです。
※RL78の場合は、ショート・ダイレクト・アドレッシングsreg領域を使ってARMマイコンテンプレートと比べて、少しチューニングしています。

RL78/I1DのCPUボード:RTE5117GC0TGB00000Rでテンプレートを試そうとしましたが、2015年2月現在、個人向け販売サイトには残念ながら見つかりません。入手可能になれば試す予定です。RL78/I1DがIoT汎用マイコンになる可能性が高いからです。

マイコントレンドに合わせたIoTテンプレート

従来テンプレートは、シンプルテンプレート(テンプレート動作理解が目的)と、メニュードリブンテンプレート(所望処理の簡単な取出しが目的)の2本立てでした。

マイコンドレンドが「省エネ」で、DTCやDMAを使った「マイコン内データ転送も、汎用化」しつつあるので、これらに合わせたアプリテンプレート:IoTテンプレート(仮称)も今後検討したいと思います。

ルネサスCPU評価ボードの購入サイト

1月6日の記事でマイコン評価ボードを、CPUボードと制御系ボードの2種に分類し、周辺回路が実装済みの制御系ボードをお勧めしました。しかし、初期投資を抑え、所望の周辺回路のみを追加できるCPUボードも捨てがたい選択肢です。

RL78/G1xテンプレートは、これらCPUボードへも対応済みです。今回は、このルネサスCPUボードを購入する際に役立つサイトを紹介します。

ルネサスCPUボード

RL78ファミリ14種、V850ファミリ12種、78Kファミリ17種のルネサスCPUボードは、内藤電誠のサイトから個人でも購入可能です。テンプレート動作のRL78/G13のQB-R5F100LE-TBとRL78/G14のQB-R5F104LE-TBも、ここから購入しました。

RL78ファミリCPUボードの例
RL78ファミリCPUボードの例

人気のCPUボードは品薄ですが、納期などのメール問合せなどにも、とても親切に対応してくれます。

もちろん、有名なマルツオンラインなどでも購入できます。
※ルネサスは、RSK:ルネサス スタータ キット、CPUボードの他に、RSSK:ルネサス ソリューション スタータ キットの開発販売を開始しましたが、個人購入には結構ムリな高値ですね!。

ボードアートワーク設計の見本

マイコンのCPU周りのアートワークは、クロック線や、パスコン位置、エミュレータとの配線、GND/VDDのベタ作成など多くの注意点があります。これらをおろそかにすると、ハード、ソフト両方に重大なトラブルを招きます。販売CPUボードは、2層なのでこれらの実務ノウハウの参考にも役立ちます。

マイコン消費電力低減の検証

2015年2月号のトラ技特集4章、5章にマイコン消費電力の低減手段が列記されています。良く整理された記事で、No1~No10までの消費電力低減手段と、マイコン仕様の例が示されています。

弊社のマイコン消費電力を減らすアプローチは、2014年3月1日弊社ブログの“システム最大動作設定の目的”の項に書きました。今回は、このマイコンテンプレートに実装済みの電力低減方法とアプローチを、上記トラ技の内容で検証します。

マイコンテンプレート消費電力低減の仕組み

最も簡単かつ効果的な消費電力低減方法は、トラ技No5手段の低消費電力モード:スリープの導入です。無処理時のCPUクロック供給を停止し、周辺回路はクロック供給を継続します。問題は、具体的にどのようにプログラムすれば、この手段がソフトウエアで実現できるかです。

弊社マイコンテンプレートは、対象マイコンのアクティブ最大速度で、アプリを時分割起動します。そして、処理終了時と処理が無い時間は、スリープする仕組みをテンプレート自身にプログラム済みです。また、未使用の周辺回路には、クロック供給をしません(トラ技No7手段適用済み)。

従って、素のテンプレートは、時分割の最大周波数動作です。3月1日の再掲になりますが、先ずこの状態で目的のアプリを開発します。

電力低減へのアプローチ

電力低減のために動作周波数を下げる(トラ技No1手段)のは、テンプレートを使ったアプリ完成後です。これは、アプリが出来ていないうちに、周波数を下げるのは、自分で自分の首を絞めるのと同じだからです。

アプリ完成後なら、周波数を下げられます。但し、設定できる周波数は、限られています。同様に、供給電圧を下げるのも(トラ技No2手段)、5V/3.3V/1.8Vなどに選択肢が限定されます。これらの周波数/電圧の選択肢のうち、どれが効果的かを比較し決定するアプローチをテンプレートは想定しています。これら決定に、動作アプリ自身も反映する必要があるかもしれないからです。

また、テンプレートは、250us/1ms/10ms/100ms/1s起動の計9か所の起動箇所と、スリープ起動箇所が明確に別れた時分割起動なので、どの部分の処理に時間が掛っているか、時分割動作が出来ないのかが解析しやすいのもの特徴です。従って、問題部分の処理分割や見直しも可能です。これは、トラ技No5手段の動作プロファイル最適化を、実際に検討する際に役立ちます。

例を示します。RL78/G13やG14スタータキットは、マイコンの平均消費電流をテスタで簡単に計測できます。RL78/G1xテンプレートのHALT()(スリープ相当)処理をコメントアウトすると、消費電流が倍になることが確認できます。

HALT有無で電力消費変化を検証
HALT有無で電力消費変化を検証

ハードウエア関連の留意点

トラ技No3、No4、No6、No7手段は、マイコン機種選定時に考慮すべき内容です。また、No8、No9、No10手段は、マイコン周辺回路設計・動作時の留意点です。ソフトウエアのマイコンテンプレートとは切り離して考えます。

トラ技内容をあまり記述すると“ネタばらし”になるので、No1~No10の詳細は、トラ技を購入して参照して下さい。

 マイコンテンプレートの検証結果

今回は、トラ技の内容で、弊社マイコンテンプレートにインプリメントされている消費電力低減方法と、アプローチ方法を示しました。結論は、主だった低減手段は、テンプレートに組込み済みです。テンプレートを使ってアプリ完成後、さらなる電力消費低減アプローチも示しました。販売中の4種のマイコンテンプレートは、全てこの低減方法を実装済みです。

マイコン開発ツールの考察

最近のマイコン開発環境の動きと、その効果的な習得方法について考察します。

一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費

一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費
一人でできる最新マイコン開発環境習得の経費

マイコン本体選定と頻度

最重要は、システムに使うマイコン本体の選定です。私は、入手性、価格、性能、開発のし易さの順に選びます。個人利用可能な電子部品サイトは、秋月通商、マルツ、DigiKey、Mouserなどがあり、1個当たりのマイコン本体価格比較も簡単です。性能と使い易さは、日頃マイコン記事などをチェックして見当をつけます。

使用マイコンが会社で決まっている場合もあるでしょう。しかし、たまには個人で選定することも大切です。会社で決まったまま数年たって気が付くと、浦島太郎状態になるからです。1マイコン精通もアリですが、最近の環境変化対応は必須です。

マイコン本体は、端的に言うとARMマイコン以外は各社各様で、その変化幅と世代の変化量も大きいです。車のポルシェのように、最新版が常に最高!とは言いませんが、半導体の変化スピードもこれに近いものがあります。1件当たりの開発期間を半年~1年と仮定すると、2~3回開発が終わる度に最新状況チェックは必要です。

本内容がこの状況のご参考になれば幸いです。

評価ボード選定の留意点

主要マイコンには、性能や使い方を試す評価ボードが必ずあります。この評価ボードには、マイコン本体と電源、デバッグ回路、スイッチやLEDなどの最低限ハードが実装されたシンプルなCPUボードから、UARTドライバやLCD、ブザーなどの周辺回路が実装された制御系ボードまで様々です。

例えば、ルネサスのRL78/G1xならBB-RL78G13-64が後者:制御系ボードになり、G13スタータキット、G14スタータキット、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBなどが前者:CPUボードです。

初期投資を抑えるならCPUボードです。しかし、アプリ動作テスト時にそのままでは使えません。結局、周辺回路を後付けすることになり、その手間と接続ミスの可能性などを考えると、ある程度の周辺を含んだ制御系ボードがお勧めです。

制御系ボードと被制御対象間のインタフェース

この制御系ボードは、マイコン本体の発売から数年以内に発売されるものが殆どです。このような制御系ボードの種類が多いものが、チマタで(世界的に)流行しているマイコンと考えても良いでしょう。多くの周辺回路を含んで¥2000以内と、驚異的な低価格で販売しているfreescaleのFRDMシリーズボードなどもその1つです。

実アプリ動作には、この制御系ボードに、被制御対象が接続されたものが必要です。被制御対象とは、例えば、モータ、ソレノイド、LED照明本体などです。汎用性がある制御系に対して、被制御対象は、アプリの依存性があるハードです。

制御系と被制御対象間のインタフェースとして、Arduino Unoやmbedなどの業界インタフェースがあります。被制御対象をこれら業界インタフェースで開発すれば、制御系が高性能化しても被制御対象はそのまま対応できるというメリットがあります。

開発環境IDEと業界インタフェース

マイコン開発は、高速開発が要求されます。ソフト的にこれをサポートするために、ルネサスのコード生成や、freescaleのProcessor ExpertなどのRAD: Rapid Application Development ツールがIDEに付属します。また、IDEの慣れの問題を解決する手段として、対象マイコンのコンパイラを変えればいろいろなマイコンに対応できるIARやKEILなどの商用IDEもあります。これらIDEとツールを使えば、素早いソース作成が可能です。

ただし、ソース作成のみではソフト開発では、道なかばです。実機動作テスト、ハードとの結合デバッグが必須だからです。実機テストには、制御系は最低限必要です。被制御対象は、ソフト開発と並行して進められることが多く、経験上、ソフト側へのリリースは遅れます。ソフト開発者は、これに留意したうえで開発スケジュールの立案が要求されます。

この立案の助けになるのが、開発速度を上げることをハード的にサポートする制御系と被制御対象間のインタフェースです。業界標準のArduino Unoやmbedを採用していれば、被制御対象の市販ボード代用も可能です。

マイコン開発環境の狙い

制御系デバッグ効率は、経験やツールが活かされる分野です。Eclipse IDEは、多くのデバッグアドオンツールで、だれもが効率的にデバッグできる環境を提供しています。開発分業(専業)体制にマッチします。

開発規模が大きくなると分業は必要です。人間、一度に集中できるエリアは、そんなに広くないからです。各種IDE付属ツール(コード生成、Processor Expert)や業界標準IDE(Eclipse)、インタフェース(Arduino Uno、mbed)が生まれる背景、目的はこの高速分業体制です。

個人レベルの技術習得

個人レベルでこれらの高速分業マイコン開発環境への慣れや備えは、必要です。例えれば、数学を解くには、ツールとして算数や暗算、時には電卓を使うと役に立つのと同じです。

限られた時間とお金に余裕がない個人レベルで、これら最近のマイコン開発全体を俯瞰し、効率的に速習するには、評価ボードで実動作する弊社マイコンテンプレートを使うのも1つの方法です。必要経費を、最初の表に示しました。この程度の金額であれば個人でチャレンジすることも容易だと思うのです。

データフラッシュライブラリ Type04 V1.05 リリースノートのリビジョンアップ

2014年12月16日のRunesas Toolニュースで、弊社RL78/G1xテンプレート使用中のデータフラッシュライブラリType04リビジョンアップのお知らせがきましたので、解説します。

データフラッシュライブラリ本体変更なし

変更箇所は、ユーザーズマニュアルとリリースノートの部分で、「ライブラリ本体は変更なし」です。従って、「RL78/G1xテンプレートも変更なし」です。

QB-R5F100LE-TBのサンプルプログラム添付

ユーザマニュアルにも変更があるようですが、重要なのは、リリースノート8章のRL78/G13 QB-R5F100LE-TB ボードのサンプルプログラムです。

この8章に、簡潔にデータフラッシュライブラリのCS+での使い方と、リンク・ディレクティブ設定が書かれています。ライブラリ使用をご検討の方は、先ずこれを読んで、理解不足箇所をユーザーズマニュアルで補足すればポイント理解が早まると思います。

データフラッシュライブラリ理解は進むが…

添付サンプルプログラムは、CS+のプロジェクトファイルではありません。リリースノート記述がCS+対応なだけに、個人的には、不親切で残念な気がします。ストレージ容量削減のためでしょうか? データフラッシュライブラリを使うレベルの技術者なら、Cソースとリンクディレクティブファイルのみで十分と判断したためでしょうか? 疑問です。

これらファイルをCS+のプロジェクトへ組込む時の留意点は、リリースノート記載の高速オンチップ・オシレータを32MHzへ設定する以外にも多々あると思いますが、これらをいちいち細かく説明すると説明が長くなります。最も効率的な方法が、実際のCS+のプロジェクトを提供する事だと思います。せっかくのサンプルが、何らかの問題で動作しなければ徒労に終わるからです(「何らかの問題」は、マイコン開発では頻繁に発生します)。

弊社テンプレートファイルは、対象マイコンの標準的な無償開発環境と評価ボードで動作します。RL78/G1xテンプレートでは、CS+プロジェクトでQB-R5F100LE-TBを含む4種類の評価ボードをサポートしており、そのままボードにダウンロードすれば動作確認ができます。このテンプレートへ、リリースノート添付サンプルを組込むと、CS+設定不足やミスなどを避けて確認ができると思います。

弊社テンプレートは、このようにお手元にあるサンプルプログラムをそのまま流用/組込み可能なことも特徴の1つです。テンプレートの活用方法として、この組込み容易性にも留意して頂けると嬉しいです。

サンプルプログラム説明の重要性

動作プログラムは、いろいろなパラメタが設定済みで、その結果、動作するものです。パラメタ設定がデフォルトなら問題なしですが、変更した箇所は、だれもが判るような工夫、解説は必要と考えます。どの程度説明するかが悩ましいトコロですが、弊社テンプレート説明資料は、極力この方針で作成しております。ご購入者様のご質問や、お問い合わせ内容などは、テンプレート改版時に反映させますので、お気軽にcustomerservice@happytech.jpへお問い合わせください。

Kinetis Eソフト開発のポイント:Processor Expert

2014年末発売予定のfreescale Kinetis Eテンプレートソフト、この開発にProcessor Expertを使いこなすことがポイントと考えた理由を示します。

Processor Expert :PEとは

PEは、ルネサスRL78/G1xのCS+コード生成ツールに相当します。使用周辺回路のパラメタをGUIで設定できます。例を示します。Kinetis Eテンプレート開発で使うボード:FRDM-KE02Z40Mと、その赤LEDをPWM点灯する時の設定です。設定ミスがあると、そのパラメタが黄色で表示されるので、すぐに修正や変更ができます。

FRDM-KE02Z40MとProcessor Expert設定画面
FRDM-KE02Z40MとProcessor Expert設定画面

設定後、コード生成ボタンを押すと、ユーザソース所定か所にPE生成コードが自動挿入されます。ユーザは、PEが生成したAPIを使ってアプリ開発に着手します。PE設定パラメタを変更後、再生成しても、ユーザソースは残ったまま、生成コードが再挿入されます。

つまり、周辺回路APIをPEで生成 → 動作パラメタはAPI内部に隠ぺい → ユーザソースそのものの流用が可能、です。CS+のコード生成ツールと同じ目的です。

PEを使わないサンプルソフト

旧来のマイコンソフト開発は、デバイスドライバ開発担当が、このAPIを自作していました。高性能APIが自作できますが、機種が変わるとAPIも変わることが多く、同じ処理でもアプリ作り直しが必要でした。API自動生成ツールPEは、アプリ作り直しの回避と再利用を可能にするツールです。

もちろん、Kinetis EでもPEを使わずに旧方法のアプリ開発もできます。IDE付属サンプルソフトの多くは、この旧方法で提供中です。サンプルソフトの目的が、1個の周辺回路のシンプルな説明に主眼があり、PEを使うよりはこの目的に適していること、従来からあるサンプルソフトをそのまま流用したこと、などが理由だと思います。

因みに、PEユーザガイドは、約200ページ、CS+のRL78 APIリファレンス編は、400ページ以上のボリュームがあること、などもAPI自動生成ツールがサンプルソフトで使われない原因かもしれません。良いツールには、それなりの解説書が必要です。ただ、背景記述が少ないのと、クイックレファレンスがほしいです。

iPhoneやスマホを使うと、本当に良いツールは、マニュアル無しでも使えるモノかな?とも思いますが、コンシューマ向けと、マイコン開発のようにプロフェショナル向けのモノとでは違って当然ですね。

テンプレート開発ボードのPE

テンプレート開発ボードFRDM-KE02Z40MでPEが自動生成する周辺回路一覧を、アルファベット順に示します。

テンプレート開発ボードのコンポーネントリスト
テンプレート開発ボードのコンポーネントリスト

多くの周辺回路=Componentの設定が可能です。使用頻度が高いタイマ、GPIO、UART関連、また、ボード実装のTSS: Touch Sensing Softwareや、3軸加速度センサ接続のI2CもKinetis Eテンプレートで使う予定です。 Component Levelとは、アプリ流用の容易さを示していて、Logical Device Driver :LDD、High、Lowの順で流用性が高くなります。

例えば、Lowレベルコンポーネント使用時、既に動いているアプリを別機種へ移植した時に、想定外動作をする時は、このLowレベルコンポーネントからデバッグしていくと良いかもしれません。これはCS+コード生成には無かった機能です。

また、これらPEの設定を出力し、別プロジェクトへ移植する機能もあります。これもCS+コード生成にはありません。CS+は日本語操作できる良くできたIDEですが、多くのコード生成パラメタを別プロジェクトへ引継げないのが(唯一の)欠点だと思います。

PE出力は、テンプレート使用中IDEのCode Warrior :CWとKinetis Design Suite :KDSのどちらにも移植でき、CWからKDSへ変更してもそのまま使えます。Kinetisシリーズ開発環境が、今年CWからKDSへ移行中ですので重要です。

つまり、PEを使えば、

1.アプリ流用性が高まる
2.CW←→KDSのIDE変更は問題なし
更にfreescaleマイコンは(おそらく)同じ周辺回路を使っており、それらのAPIがPEで生成ができるので、
3.freescaleマイコン機種変更も問題なし(の可能性あり)
など3拍子揃ったソフト開発が期待できる、これらがAPI生成ツール:PEをfreescale Kinetis Eテンプレート開発に使う理由です。

IoT向けの無償ARMマイコンOS

弊社、販売中のLPC8xxテンプレートLPC111xテンプレートのライバルが、ARMから無償提供されます。ARM mbedの組込みOS「mbed OS」がそれです。

mbed OSとは

mbed OSに関する記事、「ARMがIoT向けにOSを無償提供開始」と、「ARMは「mbed」フラットフォームでIoT時代を実現させる」によると、ARM社が提供し(つまり、CMSISのOS版になるかも…)、

Cortex-M0/M0+向け、モジュラー構成で必要に応じて選択組込み可能、セキュリティ機能あり、イベントドリブン型OS、mbed Device Server(こちらは有償)との通信によりクラウドサービス利用可能、現在はα版で2015年10月に正式版の予定、NXP/freescaleなどのmbedベンダも参加、オープンソース開発、などなどIoTデバイス開発コスト低減化に効果あり。

かなり強力ライバルです(勝手にライバル視しましたが、ARM社様、ご容赦を…)。今後、ウオッチを続けたいと思います。

組込みマイコンのマルチタスク化

確かに組込みマイコンに多くの機能を実装する時、OSがあれば楽だと思うことがしばしばあります。Windowsデスクトップアプリ開発などを経験すると、より一層感じられることで、IoT時代のマイコンにはmbed OSなどの組込みOSが、必須プラットフォームになるでしょう。

ただ、OSを利用しようとすると、それなりの基礎知識が必要になります。有名な組込みマイコンOS:FreeRTOSなども、使い始めのステップが結構高く、大規模/多人数ソフト開発なら便利でしょうが、普段使いには躊躇します。

さらに、ベンダや機種毎に異なる基礎知識、商用Windowsの例では、OS更新時の手間など、実アプリ開発着手の前段階、メンテで労力を使い果たしてしまいます。これらに関しては、mbed OSで統一されれば、明るい見通しはあります。

マイコンテンプレートの市場

そんな背景で開発したのが、マイコンテンプレートです。簡易マルチタスク化、デバッグ容易、サンプルソフト流用得意、などの特徴があります。イメージ的には、以下の範囲での適用が市場です。

テンプレート市場と対応マイコン
テンプレート市場と対応マイコン

先の記事に、ARM mbedとIntel市場の違いをKris Flautner氏が説明されていましたが、(勝手に無断)引用させて頂くと「mbed OSは非常にハイエンドのモノで、それに対して弊社テンプレートがフォーカスするのは、無償IDEで開発できるプログラムサイズの低価格な組込みマイコンの市場。両者は全く異なる。」と言えます。

販売中のテンプレートの骨格説明と、一覧はコチラをご覧ください。

RL78/G1xテンプレートVersion3販売

RL78/G13とRL78/G14の習得、アプリ早期開発に使えるテンプレートがVersion3に進化しました。販売価格は、従来版と同じ1000円(税込)です。

RL78/G1xテンプレートVer3(第3版)の特徴

Ver3は、テンプレート動作環境を、「4種CPUボードとRL78/G1x開発推薦ボードの2種類」とし、CPUボードには、「シンプルテンプレート」を、推薦開発ボードには、「メニュードリブンテンプレート」を適用したものをセットで販売します。

テンプレート適用例を、CPUボード実装ハードのみを動作させるシンプルなテンプレート適用例と、RL78/G1x開発推薦ボードへ、組込み機能をほぼ全て盛込み、UARTメニューで処理選択できるメニュードリブンテンプレートの2例を示すことで、Ver2に比べ、よりテンプレート動作が解りやすくなり、テンプレート機能の応用、流用が簡単になりました。

RL78/G1xテンプレート対応ボード一覧

Ver3対応ボード 名称 ボード実装制御ハード
CPUボード RL78/G13 Promotion Board LED
RL78/G14 Promotion Board LED x2, SW
QB-R5F100LE-TB LED x2, SW
QB-R5F104LE-TB LED x2, SW
推薦開発ボード BlueBoard-RL78/G13_64 LED, トリマ, SW, ブザー, LCD, UART, など

 

テンプレート説明資料

テンプレート説明資料のP1とP2を示します。

テンプレート説明資料P1
テンプレート説明資料P1
テンプレート説明資料P2
テンプレート説明資料P2

説明資料には、もくじの内容を記載しております。これもVer1/2のご購入者様のご意見、ご質問などの内容から、解りにくい箇所を加筆修正し、より解りやすくブラッシュアップいたしました。

本テンプレートが、皆様のRL78/G1xマイコン習得、アプリケーションの早期開発や評価のお役に立てれば幸いです。

購⼊ご希望の⽅は、メール(宛先:info@happytech.jp)にてお知らせください。銀⾏振込⼝座を返信いたしますので、この⼝座へ代⾦の1000円(税込)を振込でください。振込確認後、本テンプレートVer3⼀式(4種CPUボード別のシンプルテンプレート + 推薦開発ボードのメニュードリブンテンプレート + テンプレート解説全ページ、ZIP圧縮合計約3MB)をメールにてお送りします。

CubeSuite+が2つのCS+へ分離

10月1日発行のRunesas Tool Newsによると、CubeSuite+が、新しい製品名CS+になり、バージョンがV3.00.00となりました。同時に各種ツールもバージョンアップされましたので、マイナーチェンジではなく、フルモデルチェンジ相当の変更です。

この新CS+で販売中のRL78/G1xテンプレート動作の確認を行い、問題なく動作しました。また、これを機にテンプレートの動作環境を見直し、従来の「市販CPUボード4種+ブレッドボードに外付けハード」から、「推薦評価ボードと市販CPUボード4種」の構成に変更します。

新CS+の構成

CS+は、78K、RL78、V850開発用の「CS+ for CA, CX」と、RX、RH850開発用の「CS+ for CC」の2つのIDEに分割されました。アップデートは、旧CubeSuite+のアップデート・マネジャで行えますが、RL78開発をする方は、「CS+ for CA, CX」のみをUp対象にし、使わないRXやRH850用のツールは、統合アンインストーラで削除すると、より少ないディスク容量で環境構築ができます。

ニュースには様々な変更内容が記載されていますが、私はCS+ for CA, CXが、旧CubeSuite+と同じに見えました。IDEの2分割と既知の問題修正で、新バージョンの3にしたと思います。対応マイコン種類が増えたので小回りが利くように分割し、今後は、各IDEで個々にUpする方針だと推測します。

新CS+での動作確認

前回Up時に発生したコード生成パラメタが新環境へ引継がれないという不具合もなく、Win7/8.1ともに、あっさりと新CS+ for CA, CXを使ってコード生成→プロジェクト再ビルド→ダウンロード→実行確認に成功しました。

但し、CS+起動時、セキュリティソフト(Avast)が無用なファイル解析をしてCS+の起動が遅くなるのは、私の環境だけの問題でしょうが…。

RL78/G1xテンプレートの動作環境

これまでは評価ボード:RL78/G13 Promotion Board(RL78/G13スタータキット)にLEDやSW、LCDなどをブレッドボードで外付けし、動作環境を作っていました。この方法は、テンプレート購入者様がブレッドボードにハードを追加する手間が必要で、結線ミスなどが発生することがありました。

この手間を省くため、LPC111xやLPC8xxテンプレートでは、評価ボードとLCD等が実装済みのBaseBoardを使い、極力配線なしでテンプレート動作環境を構築しました。

RL78/G1xテンプレートでもRL78/G13推薦評価ボードをテンプレートの主動作環境とします。そして、RL78/G13 Promotion Board、RL78/G14 Promotion Board、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBの4種CPUボードは、ボード実装のLEDを1秒毎に点滅させるシンプル動作のテンプレートを実装します。

つまり、RL78/G13推薦評価ボード:BlueBoard-RL78/G13_64に色々な機能を追加したメニュードリブンテンプレートを、それ以外のCPUボードはシンプルテンプレートを適用したものをパッケージ化し、これをRL78/G1xテンプレートVersion 3(第3版)とします。

BlueBoard-RL78/G13_64は3800円ですので、CPUボードにLCDやSW、UARTドライブなどをブレッドボードで追加するよりも安価にテンプレート動作環境が構築できます。

既にRL78/G1xテンプレート第2版をご購入済みの皆様は、第2版のBlueBoard-RL78/G13_64サブプロジェクトは、第3版と同じです。その他CPUボード対応のサブプロジェクトが、LEDの1秒点滅のみに変更(簡易化、単にLEDドライバのみ実装に変更)されたと考えて頂ければ間違いありません。近日中に、RL78/G1xテンプレート第3版発売を発表する予定です。

マイコンと無線モジュールの接続速度

トラ技2014年3月号の特集で、マイコンとスマホを接続する2つの方法が解説されています。USBで直接接続する方法と、無線モジュールで接続する方法です。今回は、この無線モジュールでスマホと接続する時の「マイコンシリアルポートの接続速度」について考察します。但し、スマホ側は、既に対応アプリが完成していると仮定します。

マイコンとスマホの接続2方法比較

Android端末とマイコンをUSB経由で接続する時には、マイコン側にアンドロイド・アクセサリ通信プロトコルを実装する必要があります。ルネサスのアプリケーションノートR01AN1965JJ0100にも詳細な解説がありますが、大変そうです。

一方、無線接続は、Wi-Fi/Bluetoothモジュールを、UARTのTXD/RXDと3.3V/GNDの4本を接続すればマイコン基板が動作するので、USB経由よりは簡単です。大変なスマホとの通信処理は、無線モジュールが代行するので、マイコンは、この無線モジュールとのUART送受信処理をすれば済むからです。

マイコンと無線モジュールの接続
マイコンと無線モジュールの接続

そこで、この無線モジュールを使ったスマホ接続を検討します。

Wi-FiとBluetooth比較

Wi-FiとBluetoothを比較します(トラ技掲載表に加筆修正、価格は、秋月電子HPから抜粋)。

モジュール メリット デメリット 代表的モジュール価格
Wi-Fi ・ネット経由で通信距離制約なし
・通信セキュリティ高
・通信速度≦数10Mbps
・直接通信形態対応のスマホは少ない
・無線LAN設定が必要
XBee Wi-Fi(S6B):3680円
Bluetooth ・初期設定不要で使用可
・周波数ホッピング機能でWi-Fiよりも正確なデータ通信
・通信距離:10~30m程度
・通信速度≦240kbps
RN42XVP-I/RM:2200円

 

注目すべきは、Bluetooth無線モジュールが、特別な初期設定なしでスマホと接続できる点です。Wi-Fi無線モジュールのXBeeは、http://www.tunnelsup.com/videoなどで接続方法が紹介されていますが、Bluetoothの方が簡単です。但し、その分、通信速度がスレーブモード最大240kbps、通信距離も30m程度となりますが、マイコンUARTに接続して使うには丁度良い通信速度です。

というのは、マイコンUARTの速度は、任意に設定できる訳ではなく、CPU動作クロック速度を決めるとUARTに利用できる速度は限られた選択肢になるからです。その中で、Bluetooth通信速度をなるべく活かせる速度を選ぶことが効果的です。例えば、RL78/G1xテンプレート/32MHzの場合には、38.4kbps、LPC8xxテンプレート/30MHzの場合は、115.2kbpsなどです。テンプレート対象のマイコンでは、Wi-Fi速度を活かせないのです。

コード生成で選択できるUART速度
コード生成で選択できるUART速度

マイコンと無線モジュールの接続速度

マイコンUARTは、これまで主にPCとの接続に使ってきました。その速度は、9600bpsや19200bpsが多かったと思います。しかし、今後は、Bluetooth無線モジュールとの接続を考慮し、115.2kbps程度のより高速なUART接続が望まれます。