Azure RTOSはEclipse ThreadXへ

Azure RTOSはEclipse ThreadXへ
Azure RTOSはEclipse ThreadXへ

Microsoftが、Azure RTOSをEclipse Foundationへ提供しました。Azure RTOSからEclipse ThreadXへ名前を変え、ベンダーニュートラルなオープンソースRTOSへ変わりました(2024年1月9日、MONOist)。

上記記事に筆者は驚きました。Microsoft発表は、昨年11月21日です。発表から約2か月たった現在の業界動向をまとめました。

Microsoft動向

MicrosoftがAzure RTOSを手放した経緯は、前述MONOist記事が詳しく説明しています。ごく簡単にまとめます。

Microsoftは、2019年ExpressLogic社買収で入手したThreadXを、自社クラウドサービス接続用RTOS、Azure RTOSとして育ててきた。しかし、2022年Azure RTOS開発責任者がMicrosoftを退社。結局、2023年Microsoftは、Azure RTOSをEclipse Foundationへ提供。今後、Microsoftは機能安全コストも負担しない。

※機能安全コストとは、厳格な安全やセキュリティ規格を満たすソフトウェアのメンテやサポートコスト。

Eclipse財団動向

MCU統合開発環境のデファクトスタンダード:Eclipse IDEの非営利運営団体がEclipse Foundation。

Eclipse財団は、提供Azure RTOSをEclipse ThreadXと改名。ベンダーニュートラルなオープンソースRTOSとし、一般的に有償の機能安全版も、2024年1月末目途にMIT Licenseで提供準備中。

Eclipse財団は現在Eclipse ThreadX開発者募集中で、Eclipse ThreadXの全コンポーネント(IoT MCUベンダ動向図のTCP/IPスタック等)無償配布になる可能性あり。

MCU RTOS動向

MCU RTOS動向
MCU RTOS動向

Eclipse ThreadX競合ライバルのFreeRTOS、 μT-Kernel状況が下記。特段の対応は現在無し。

FreeRTOS:機能安全版は商用ライセンスSAFERTOSで提供中。FreeRTOSは無償提供中。
μT-Kernel: IEEE標準規格:IEEE2050-2018完全準拠版μT-Kernel 3.0を無償提供中。

IoT MCUベンダ動向

本ブログ掲載IoT MCUベンダで言えば、STマイクロ>ルネサス>NXPの順に、Azure RTOSに積極的でした(FreeRTOSなら真逆)。

そのSTマイクロが、Eclipse ThreadXは、重要な開発環境の一部、とMicrosoft発表内でコメントしています。つまり、STマイクロは、これまでのAzure RTOS同様、Eclipse ThreadXをミドルウェアとして提供すると思います。

現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)
現代的ユーザMCU開発の例(出展:The ST blog)

米市場動向

MicrosoftがAzure RTOSを手放したのは、育成済みAzure RTOSを、今さら保守・運用しなくても、自社クラウドサービスへの影響は少ない、と判断したからかもしれません。

一方、一般向けAI PCに関しては、Windows 11シェア伸び悩む、Windows 12方向性などの記事から、Microsoftは次期Windows+Copilotに注力すると思います。AI Copilotキー追加モバイルCopilotなど、最近は生成AI関連のCopilot発表一色です。

これらCopilot群は、次期AI Windows(Afterword2参照)で使い易く統合されるでしょう。

2024年1月12日、米株式市場も⽣成AI⾰命からより多くの恩恵を受けるMicrosoft時価総額を、アップルを抜き首位復活させました。

Summary:IoT MCU開発者対応

Microsoftが、Azure RTOSを手放し、Eclipse財団が、Eclipse ThreadXと改名、ベンダーニュートラルオープンソースRTOSとしたことを、業界は、冷静かつ好意的に受け止めているようです。

むしろ、AWSならFreeRTOS、AzureならAzure RTOSと2本立てIoT MCU RTOS開発が、Eclipse ThreadXで一本化、機能安全パッケージも無償提供期待の方が大きいのかもしれません。

IoT MCU開発者は、Eclipse ThreadXを含むRTOS動向に注意する必要があります。

Afterword:RTOSチェックポイント

RTOS動向チェックポイント
RTOS動向チェックポイント

MCUにRTOSを使う理由は、クラウド接続ライブラリが必要だからです。

しかし、ライブラリは関数の集合に過ぎないので、ライブラリ利用例、つまりサンプルコードが無いと使えません。ベンダーニュートラルEclipse ThreadXが、AzureとAWS両方の接続サンプルコードを提供するかがチェックポイントです。

また、サンプルコードがあっても、接続の容易さや安定性も確認したいです。評価ボードでのテストやクラウド接続ユーザ数変化、SNSなどで判るでしょう。

Eclipse ThreadXが他RTOSへ与える影響は、少なくないと思います。この辺りは、調査を続けます。

Afterword2:AI Windows12決め手

Win11敗因の1つは、TPM 2.0などのPCハードウェアとWin11アップグレード条件を、100%結び付けたことだと思います。条件を満たさないPCは、Win11アップグレートができずWin10のままです。Win10でも、PC生産性に大差はありませんが…😓。

ハードウェアとアップグレート条件の結び付きを緩くし、例えば、NPU(Neural Processing Unit)搭載最新Core Ultraプロセッサなら、自然言語入力にも対応するAI機能満載Win12、古いCPUなら、従来CUI/GUI 入力のAI Win12など、アップグレード機能/能力差を付けます。

これに近いことは、 既に昨年のWin11 23H2アップデートの段階的機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout、CFR)で実施中です。

AI機能は、PC生産性に直結します。PC買換え需要も喚起できるでしょう。不振Win11と2025年秋Win10サポート終了前に、AI Win12リリースをMicrosoftが急ぐ理由です。

つまり、2024年内にPCハードウェアに応じたAI Win12アップグレートをMicrosoftが提供することが、低下しつつあるWindowsシェア復活の決め手になると思います。


FSPベアメタルサンプルのRTOSスレッド化

前投稿FSPベアメタルサンプルコード:sci_uart_fpb_ra6e1_epを、RTOSスレッド化する方法を示します。

多くのルネサスRA公式サンプルコードを活用した効率的なRTOSスレッド開発が本方法で可能です。FreeRTOS、Azure RTOS両方に使えます。

サンプルコードベースRTOSスレッド開発

RTOS開発は、複数スレッドを組合せ全体を動作させます。ベアメタルコードに比べ、個々のスレッドは、独立性や移植性が高い特徴があります。スレッド優先度やセマフォなどのRTOSオブジェクトを適切に設定すると、複数スレッド全体処理としてユーザ所望のシステム動作をします。

スレッドは、勝手に回る歯車、優先度やRTOSオブジェクトは、各歯車をシステム全体で上手く動作させる手段と考えると解りやすいと思います。

スレッドとRTOSの役目
スレッドとRTOSの役目

スレッド設計法は、機能別や処理手順別など様々あり、唯一の方法は無さそうです。しかし、先ずは、歯車となるスレッドを開発し、次に、開発スレッド優先度やRTOSオブジェクトを調整しながら、システム全体動作を仕上げるのがRTOS開発の方法です。

本稿は、スレッド単体開発の1方法として、ルネサスRAファミリ公式FSPベアメタルサンプルコードを活用したサンプルコードベースのRTOSスレッド開発法を示します。複数スレッドを組合せたRTOSオブジェクトの適切な調整や設定に関する内容は、含みません。

公式ベアメタルサンプルコードは、各ベンダエキスパートが開発し、評価ボードで動作確認済みの高信頼ソフトウェアです。また、MCU周辺機能毎に多くのサンプルコードが提供中です。

これらベアメタルコードを活用する本方法は、FreeRTOS/Azure RTOSどちらのRTOSスレッド開発へも使えます。

RTOSスレッド化方法

詳細は、後で説明しますが、先ず、ベアメタルサンプルをスレッド化する手順を簡単に示します。方法全体像が判っていると把握しやすいからです。

  1. スレッド無しで空の新規RTOSプロジェクト作成
  2. g_ioport以外のベアメタルサンプルFSPスタックを、RTOS FSPスタックへImport
  3. hal_entry.c以外のベアメタルサンプルsrcファイルを、RTOSプロジェクトsrcフォルダへコピー
  4. 新しいスレッド:MyThreadをRTOSプロジェクトへ追加後、Gegerare Project Contentクリック
  5. MyThread_entry.cへ、初期設定と無限ループ処理を追記

1で新規作成した空のRTOSプロジェクトへ、2と3で対象ベアメタルサンプルから内容を追加、4でベアメタルmain()相当の新しいMyThreadを追加後、FSPを使ってRTOSプロジェクトを自動生成します。

生成後、5でRTOSプロジェクトのMyThread_entry.c初期設定と無限ループを追記します。追記内容は、ベアメタルサンプルの初期設定と無限ループ処理です。

つまり、1~5手順全てFSPベアメタルサンプルからの単純コピーでRTOSスレッド化が可能です。

次章から、前投稿で用いたベアメタルサンプルコード:sci_uart_fpb_ra6e1_epを、FreeRTOSスレッド化する具体例を使って、各詳細手順を示します。

1. 空の新規FSP freertos_uartプロジェクト作成

スレッド無しで空の新規FreeRTOSプロジェクト作成
スレッド無しで空の新規FreeRTOSプロジェクト作成

スレッド無し空FreeRTOSプロジェクトを新規作成します。新規RTOSプロジェクト名は、freertos_uartとでもしてください。

2. sci_uart_fpb_ra6e1_epのFSPスタックImport

sci_uart_fpb_ra6e1_epのFSPスタックImport
sci_uart_fpb_ra6e1_epのFSPスタックImport

freertos_uartプロジェクトのFSPスタックへ、sci_uart_fpb_ra6e1_epのg_ioport以外のFSPスタックを全てImportします。Importした各スタックプロパティは、オリジナルプロパティと同じに手動で設定してください。

3. sci_uart_fpb_ra6e1_epのsrcファイルコピー

sci_uart_fpb_ra6e1_epのsrcフォルダファイルコピー
sci_uart_fpb_ra6e1_epのsrcフォルダファイルコピー

sci_uart_fpb_ra6e1_epのhal_entry.c以外のsrcファイルを全て、freertos_uartのsrcへコピーします。

4. freertos_uartプロジェクトへ新しいUart Thread追加後、Generate Project

新しいUart_Thread追加
新しいUart_Thread追加

新しいスレッドのSymbolは、Uart_threadとしてください。先頭を大文字にする目的は、FSPが自動生成したファイルやスレッドが使う全小文字表記とユーザ追加のそれらを、大小文字で区別するためです。

Tips:大文字利用は、好みの問題です。RTOS開発は、多数のスレッドやオブジェクトソースが、プロジェクト・エクスプローラのsrcフォルダに表示されます。自分が追加したソース(バグ有り?)と純FSP生成ソースを、一目で区別できるメリットがあります。

最後にGenerate Project Contentをクリックし、FSPによりRTOSプロジェクトを自動生成します。

5. Uart_Thread_entry.cへ初期設定と無限ループ処理追記

RTOSプロジェクトのsrcフォルダ内に、Uart_thread_entry.cが生成されます。

先頭の#include “Uart_thread.h”に、sci_uart_fpb_ra6e1_epのsrcファイルにある#include “common_utils.h”、 #include “uart_ep.h”、 #include “timer_pwm.h”を追記します。
これら4個の#include文は、freertos_uartの全srcファイルに手動で追記します。

Uart_thread_entry.cの初期設定
Uart_thread_entry.cの初期設定

RTOS初期設定は、Uart_thread_entry.c のTODO: add your own code here以下へ、sci_uart_fpb_ra6e1_epの初期設定:hal_entry.cのL41からL93までをコピーします。

sci_uart_fpb_ra6e1_epの無限ループ処理は、コピーした初期設定の後方にあるuart_ep_demo()です。

RTOS無限ループ内には、上図でコメントアウトしたコンテキストスイッチが必要です。そこで今回は、RTOSプロジェクトuart_ep.cのuart_ep_demo()内へ、直接コメントアウトしたFreeRTOSコンテキストスイッチ:vTaskDeley(1)を追記します。

uart_ep.cのuart_ep_demo()へ追記するコンテキストスイッチ
uart_ep.cのuart_ep_demo()へ追記するコンテキストスイッチ

Tips:#include “Uart_thread.h”が、FreeRTOS関連API:コンテキストスイッチ追記を可能にします。

sci_uart_fpb_ra6e1_epとfreertos_uartスレッド同一動作確認

RTOSプロジェクトをビルドし、評価ボードへダウンロード後、実行してください。前稿のベアメタルサンプルコードと全く同じ処理が、開発したfreertos_uartスレッドで確認できます。

FreeRTOS/Azure RTOSスレッド化差

本稿で示したFreeRTOSスレッド化とAzure RTOSスレッド化の差は、コンテキストスイッチのみです。FreeRTOSならvTaskDelay(1)、Azure RTOSならtx_thread_sleep(1)が、コンテキストスイッチです。

Tips:コンテキストスイッチは、FreeRTOS/Azure RTOS開発手法のRTOS処理フローなどを参照してください。

ベアメタルサンプルコードをAzure RTOSスレッド化する時は、手順1で、新規Azure RTOSプロジェクトを作成し、手順5のvTaskDelay(1)の代わりに、tx_thread_sleep(1)を使えばOKです。

Tips:FSP生成スレッドMyThread_entry.cの無限ループ内には、作成RTOSプロジェクトに応じて初めからvTaskDelay(1)、またはtx_thread_sleep(1)が実装済みです。

本方法が、FreeRTOS/Azure RTOSどちらのRTOSスレッド開発へも使えることが分かります。

補足

2023年1月16日、e2 stidioは2022-10のまま、RAファミリFSPがv4.2.0へ更新されました。本稿は、FSP v4.2.0/4.1.0両方で動作確認済みです。



FSP利用FreeRTOSアプリ起動動作

ルネサスFSPの役目、RTOSアプリ起動動作
ルネサスFSPの役目、RTOSアプリ起動動作

前回FSP利用FreeRTOSアプリの作り方で、ルネサス公式サンプルコードを流用・活用した実践的RTOSアプリ開発方法を示しました。今回は、前回開発したアプリを使ってFSPの役目、RTOSアプリがどのように動作開始するかを説明します。

これからRTOS開発を始めるベアメタル開発経験者に役立つと思います。

前回のおさらい

FPB-RA6E1評価ボードのLED1点滅速度を、SW1プッシュ割込みで変える1スレッドのみを持つRTOSアプリの開発方法を、新規FreeRTOS Blinkyプロジェクトへ評価ボード実装済みベアメタルサンプルコードを移植することで説明したのが、前回のfreertos_blinkyプロジェクトでした。

※12月9日投稿時、FSP Importした割込みコントローラ初期化の記述を忘れていました。翌日10日に追記済みです。お詫びします<(_ _)>。

本稿の目的

ルネサスFSP(Flexible Software Package)は、ベアメタル、FreeRTOSとAzure RTOS、これら3者に対応した周辺回路API とMCU起動ファイルを自動生成するツールです。

※MCU起動ファイルは本稿ではstartup.c、main.c、ユーザファイルの3つを指します。

従って、初めてFSPを利用する時は、戸惑う部分もあります。例えば、ベアメタル開発には無関係のスレッドやオブジェクト設定エリアがあること、FreeRTOS開発時でもタスクではなくスレッドへ統一された説明やパラメタ設定があるなどです。

つまり、1つのFSPでベアメタル、FreeRTOS、Azure RTOSの3者に同時対応したため、FSPパラメタ設定や説明に解りにくい点があります。

※本稿も、FSPに習ってタスクではなくスレッドを用います。

また、当然ですが、ベアメタルとRTOSでは、FSP生成のMCU起動コードも異なります。何度か開発すれば、ベアメタルとRTOSでどこが違うかが判ります。しかし、初めからハッキリ区別した説明があるとFSPとRTOS理解が早くなります。

そこで本稿は、FSP生成MCU起動ファイルとベアメタル/RTOSユーザファイルまでの動作差を説明します。

FSP自動生成MCU起動ファイル(startup.cとmain.c)

startup.c:リセット後のMCU動作開始には、動作クロック設定やRAMゼロクリアなど、様々な前処理が必要です。これら前処理を行うのが、startup.cです。startup.cは、ベアメタル/RTOSともに同じ処理です。

main.c:ベアメタルでは、startup.c→main.c→user_main.cと処理が進みます。RTOSは、startup.c→main.cだけです。main.cの処理内容がベアメタルとRTOSで異なります(次章の図参)。

ベアメタルのmain.cは、実質のメイン関数であるuser_main.cへの橋渡しファイルで処理はありません。なぜ橋渡しファイルを使うかは、後で説明します。

RTOSのmain.cには、ユーザがFSP Configurationで追加したスレッドやオブジェクトの生成関数が、FSPにより自動追加されます。例えば、前回のfreertos_blinkyプロジェクトのmain.cなら、下線部分です。

freertos_blinkyプロジェクトのmain.cファイル
freertos_blinkyプロジェクトのmain.cファイル

FSP生成のmain.cは、スレッドやオブジェクトを生成し、最後に橙色で囲ったRTOSタスクスケジューラを起動してリターン(終了)します。

つまり、RTOSのmain.cは、「全てのRTOS処理を開始するための前処理、準備」を行います。

因みに、FSP生成startup.cやmain.cは、ユーザが勝手に変更を加えにくいようプロジェクトファイル階層の深い部分や、ユーザフォルダ:srcとは別フォルダ内にあります。

FSP生成ベアメタルまたはRTOSユーザファイル(user_main.cまたはuser_thread_entry.c)

ベアメタル(左)とRTOS(右)のユーザファイル:srcフォルダ内容
ベアメタル(左)とRTOS(右)のユーザファイル:srcフォルダ内容

逆にユーザファイルは、変更を加え易いよう最上位のユーザフォルダ:srcの中にFSPが生成します。ベアメタルならuser_main.c、RTOSならuser_thread_entry.cです。

ベアメタルでは、実質のメイン関数:user_main.cがmain.cから起動します。user_main.cは、周辺回路の初期設定と、無限ループの2構成から成るごく普通のメイン関数です(関連投稿:組込み開発 基本のキ 組込み処理)。

一方、RTOSは、main.c内でFSPが追加した生成関数user_thread_createによりuser_thread_entry.cが起動します。前章のfreertos_blinkyプロジェクトで示すと、blinky_thread_createとblinky_thread_entry.cです。

ユーザが複数スレッドを追加した場合は、各スレッドが下図のようにmain.c内で生成され、RTOSによる複数スレッド並列動作となります。

ルネサスFSP生成のベアメタル起動動作(右)とRTOSアプリ起動動作(左)
ルネサスFSP生成のベアメタル起動動作(右)とRTOSアプリ起動動作(左)

それぞれのスレッドは、優先度やセマフォなどのRTOSオブジェクトに従って、つまりRTOS環境で制御されます。

FSP利用のRTOS開発は、main.cまでがベアメタル動作、これ以降はRTOS動作環境になります。

ベアメタルのmain.cがuser_main.cへの橋渡しファイルなのは、右側のRTOS動作環境の形に無理やり(?)合わせたためだと思います。FSPは、Azure RTOS>FreeRTOS>ベアメタルの順位で設計されたからでしょう。

まとめ:FSP利用FreeRTOSアプリ起動動作

ユーザ設定のFSP Configurationを基にFSPは、周辺回路APIを生成し、同時に、MCU起動ファイル(startup.cとmain.c)とユーザファイルを分離して生成します。

FSP自動生成ファイルやAPIには、ユーザが手動変更しないようわざわざ下記注意コメントが先頭に付いています。

/* generated XYZ source file – do not edit */

また、FSP生成ユーザファイルにも下記コメントが付いています。

/* TODO: add your own code here */

これらFSPコメントに従って、ユーザがコメントの後へユーザコードを追加すればアプリが開発できます。ただ、開発にはFSPが生成するファイル内容や、FSPが想定しているベアメタル/RTOSアプリ動作の理解が必須です。

そこで本稿は、FPB-RA6E1 FreeRTOSアプリ(freertos_blinky)を使ってFSPが生成したMCU起動ファイルとRTOSユーザファイル動作を説明しました。

その結果、ベアメタルでは橋渡し役のmain.cが、RTOSでは全てのRTOS動作開始の前処理、準備を行うことを示しました。

ルネサスMCU開発は、FSP理解が鍵です。FSPが自動生成するベアメタルとRTOSユーザファイルまでの起動動作が判ると、FSP理解とベアメタル開発経験者のRTOS開発が容易になります。



FSP利用FreeRTOSアプリの作り方

ルネサスFSP(Flexible Software Package)とサンプルコード利用の「実践的FreeRTOSアプリの作り方」を示します。下記の最新開発環境を用いました。古い環境や別評価ボードでも同じ結果が得られると思います。

 全体流れ説明

先ず本FreeRTOSアプリ開発の全体の流れを説明します。というのは、組込み開発で良くあるサンプルコード付属説明:readme.txtとソースコード動作が不一致など、少々込み入った内容を含むからです。

  1. FPB-RA6E1購入時インストール済みサンプルコード:qiuckstart_fpb_ra6e1_epは、ベアメタルソフト。readme.txt記載のSW1プッシュでLED1/2点滅速度変化とは不一致。
  2. SW1プッシュでLED1/2点滅速度変化へFSP改造(1と2は、ベアメタル開発)。
  3. FPB-RA6E1で、新規LED1/2点滅FreeRTOSアプリ作成(3以降は、FreeRTOS開発)。
  4. 作成FreeRTOSアプリのLEDスレッドへ、2.のベアメタルのSW1プッシュLED1/2点滅速度変化改造FSPと、ソースコード移植。
  5. LED2は、FreeRTOSアプリエラー表示用とするため、点滅処理から削除。

本稿の背景

ベアメタル開発者は1と2、RTOS開発者は3以降が実行できれば、SW1プッシュでLED1点滅速度変更の1スレッドのみを持つFreeRTOSアプリを開発できます。

「実践的FreeRTOSアプリ開発」としたのは、0からアプリを開発するのではなく、豊富に提供される公式サンプルコードを流用・活用し、所望アプリを早く効果的に開発する例を示したかったからです。

RTOSのメリットを説明した資料は多く見かけます。しかし、具体的なRTOSアプリ開発方法を示す資料が少ないことも背景にあります。

以下、1~5の説明を加えます。細かい説明は後回しにし、まとめ章を先に読むとより全体が解り易いと思います。従って、まとめ章を先に記述します。また、最後の章に、RTOS開発の基盤となるRAベアメタルテンプレート宣伝(?)もあります。

まとめ:実践的RTOSアプリ開発方法

評価ボード実装済みLED1とSW1は、いわば開発アプリ正常動作中を示すインジケータです。開発したFreeRTOSアプリをテンプレートとし、所望機能のスレッドを追加していけば、最終的に様々なFreeRTOSアプリを早期に開発できます。

FreeRTOSをRAファミリFSP利用例としましたが、Azure RTOSでも同様です。

つまり、本稿のアプリは、RTOSテンプレート骨格で説明した内容を、より具体化したものです。

もちろん複数スレッド追加時は、スレッド優先度やスレッド間制御(セマフォ/キュー/ミューティックスなど)の検討も必要になります。これらは、追加スレッドがほぼ完成した後の検討項目です。

先ずは、必要な個々のスレッドを単体・単独で開発し、その後、複数スレッド結合へと段階的に進める方法がRTOS開発には適していると考えます(関連投稿:FreeRTOS/Azure RTOSソフトウェア開発手法)。

複数スレッドの検討方法は、文章量が増えるため割愛しました。別途改めて、投稿する予定です。

1:qiuckstart_fpb_ra6e1_ep動作とreadme.txt

サンプルコードzip内のqiuckstart_fpb_ra6e1_ep
サンプルコードzip内のqiuckstart_fpb_ra6e1_ep

評価ボードに初めからインストール済みのサンプルコードが、quickstart_fpb_ra6e1_epです。zip内に収められています。e2 studioは、zip内にあるサンプルコード説明書:readme.txtをIDE内にインポートしません。

Tips:zip解凍後のreadme.txtを、サンプルコードプロジェクト内へ手動でコピーしておくと、いろいろ便利。
Tips:quickstart _fpb_ra6e1_epのfpb_ra6e1が評価ボード名、epはexample projectの略。別評価ボード利用時は、fpb_ra6e1部分が異なる。

quickstart_fpb_ra6e1_epのreadme.txtが下記です。

quickstart動作とreadme.txtの不一致箇所
quickstart動作とreadme.txtの不一致箇所

下線部:評価ボードSW1でユーザLED1/2点滅制御とありますが、この動作はFPB-RA6E1にはありません。しかし、quickstart_fpb_ra6e1_epソースコードには、SW1割込み処理:callback_irq1ds_buttonでLED1/2点滅delay変更処理が記述済みです。

これは、RAファミリのソースコードがHAL(Hardware Abstraction Layer)記述で、MCUが変わっても同じソースコードを使えるからです。別評価ボードのソースコードとreadme.txtを、そのままFPB-RA6E1へコピー流用している訳です。

組込み開発ではMCUの種類が多いため、このように既存資産をコピーして当該MCUコードや資料を作ることは良くあります。その結果、今回のようにreadme記述内容とサンプルコード動作が不一致なことも多々あります。

Tips:逆に上記は、MCUソフトウェア開発の本質が「サンプルコードやFSPなどの既存資産を上手くコピー活用すること」を示しているとも言えます!

2:SW1プッシュ割込みでLED1/2点滅速度変化へFSP改造

readme.txt記述とサンプルコード動作不一致の原因が、FSPです。

そのままコピーできるreadmeやサンプルコードと異なり、FSPは、当該MCU毎に設定が必要です。不一致の原因は、FPB-RA6E1のFSP設定にミス(忘れ)があるからです。

動作一致のためには、外部割込みコントローラ(External IRQ)とFPB-RA6E1のSW1(P205)の接続が必要です。下記のようにP205ピン設定を変更後、Generate Project Contentをクリックします。

quickstart_fpb_ra6e1_epを再ビルドし、評価ボードへダウンロードすれば、readme内容と同じSW1プッシュでLED1/2点滅速度が変わります。

外部割込みコントローラ(External IRQ)とS1(P205)を接続するピン設定
外部割込みコントローラ(External IRQ)とS1(P205)を接続するピン設定

3:LED1/2点滅新規FreeRTOSアプリ作成

新規FreeRTOSアプリ作成は、ベアメタルアプリ作成と同じ方法です。そこで、本稿は、ベアメタル作成との差分のみを示します。

LED点滅の新規FreeRTOSアプリ作成(ベアメタル作成との差分)
LED点滅の新規FreeRTOSアプリ作成(ベアメタル作成との差分)

新規作成FreeRTOSプロジェクト名は、freertos_blinkyとでもしてください。FSP Summaryが下記です。

FSP Summary
FSP Summary

このfreertos_blinkyを評価ボードへダウンロードすると、LED1/2が1秒毎に点滅します。生成したLEDスレッド:blinky_thread_entry.cのvTaskDelay(configTICK_RATE_HZ)が、1秒点滅の仕組みです。

4:LEDスレッドへ、2:SW1プッシュLED1/2点滅速度変化改造FSP移植

2:で改造したSW1割込みでLED1/2点滅速度を変える機能を、3の新規FreeRTOSアプリへ移植します。

freertos_blinkyのFSP Stacksタブを選び、画面上で左クリックしImportを選択します。From fileにquickstart_fpb_ra6e1_epを選び、configuration.xmlを開きます。Stack ImportでExternal IRQを選ぶとquickstart_fpb_ra6e1_epの割込みコントローラ設定がfreertos_blinkyへ移植できます。

Tips:移植するFSPスタック数が多い時は、Import機能が便利。

FSP Import
FSP Import

しかし、割込みコントローラとSW1(P205)間の接続はImportできません。そこで、1:と同様にP205ピン設定を割込みコントローラと接続し、Generate Project ContentクリックでFSP移植は完了です。

Tips:FSP Importは簡単便利だが、上記のように同一MCUであっても、ピン設定はImportされない。また、ピン設定が無くてもエラー表示もない。代替方法に、New Stackクリックでスタック群から追加機能を選ぶ方が、ピン設定忘れが少ないかもしれない。

次に、SW1割込み処理:callback_irq1ds_buttonを移植します。

callback_irq1ds_button処理は、e2studioのDeveloper Assistanceを開き、callback_function_definitionをクリックし、blinky_thread_entryの後へペーストで追記します。今回は、TODO:add your own code hereコメント後へ、quickstart_fpb_ra6e1_epのSW1割込み処理をコピー&ペーストし移植します。

コピー後エラーが表示される箇所は、全て定数未定義部分ですので、quickstart_fpb_ra6e1_ep定数部分もコピー&ペーストします。

Tips:e2 studioは、デフォルトではソースコード変更後、このように即コンパイルエラーを表示。

最後に、vTaskDelay(configTICK_RATE_HZ)のconfigTICK_RATE_HZ を、割込み処理で作成したg_delayへ変更します。

以上で、割込み処理の移植完了です。ビルドし、SW1でLED1/2点滅速度が変わることが確認できます。

SW1割込み処理:callback_irq1ds_buttonの移植
SW1割込み処理:callback_irq1ds_buttonの移植

12月10日追記:FSP Importした割込みコントローラ初期化の移植記述を忘れていました。追記します。

Importした割込みコントローラの初期化:icu_initializeも、下図のようにblinky_thread_entry.cへ移植します。

割込みコントローラの初期化処理の移植
割込みコントローラの初期化処理の移植

5:LED2点滅処理削除

LED2は、FreeRTOSアプリのエラー表示に使います。例えば、追加したスレッド初期設定に失敗した時のインジケータなどです。そこで、下記のようにLED2をLEDスレッドの点滅処理から外します。

LED2点滅処理削除
LED2点滅処理削除

以上で、SW1プッシュでLED1点滅速度変更の1スレッドのみを持つFreeRTOSアプリ完成です。

このFreeRTOSアプリへRTOSテンプレート骨格で投稿した7メニュー形式表示、LED2エラー表示などの機能を更に追加しFreeRTOSテンプレートとします。

FreeRTOSテンプレートは、全てのFreeRTOSアプリ開発の出発点となり、所望スレッド機能を追加していけば、効率的に様々なRTOSアプリ開発が可能です。

Tips:本稿はFreeRTOSテンプレート開発方法に重点を置き投稿。実FreeRTOSテンプレートは、もっと解り易い構造とソースコードで提供。

RTOS開発はベアメタル開発スキル必須

前章1~5から「RTOS開発には、ベアメタル開発スキルが必須」であることがお解り頂けたと思います。

組込み開発は、説明不足の事柄が非常に多いです。また、サンプルソフトとreadme.txtなどの説明不一致も多々あります。説明対象を初心者/中級者の誰にするか、どこまで説明するか、などなど読者を絞り難いこと、説明側にとっては、自明の理の内容が多いことがその理由です。

本稿で追記したTipsや背景となる技術スキルが無いと効率的に先へ進めないと思います。ベアメタルを補う目的のRTOS開発ではなおさらです。

RAファミリで、FSP利用の効率的なベアメタル開発スキルを身に付けるには、弊社RAベアメタルテンプレートがお勧めです。ソースコードに豊富な日本語コメントを付加し、付属説明資料にはTipsやFSPノウハウなども記載しています。RAベアメタルテンプレート説明サイトは、コチラをご覧ください。

ルネサス以外のベアメタル用テンプレートも多数ご用意しております。また、NXPのFreeRTOSアプリケーションテンプレートも販売中です。



RTOSテンプレートの骨格

IoT MCU RTOSは、FreeRTOSとAzure RTOSの2種類。接続クラウドAmazon AWSやMicrosoft Azureに応じて選択する必要があります。各RTOSそれぞれにRTOSアプリケーションを開発するのは非効率です。

そこで、アプリケーション開発の基になるRTOSテンプレートの骨格を検討しました。APIはFreeRTOSとAzure RTOSで異なるものの、同一の骨格から開発するとメリットがあるからです。

結論は、単体タスク/スレッド試験も容易なメニュー表示形式RTOSテンプレート骨格とします。

RTOSアプリケーション例

Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB’S Blogに加筆)
Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB’S Blogに加筆)

RTOSアプリケーション例が上図です。複数のタスク/スレッドと各タスク/スレッドを制御するアプリケーション本体から構成されます。

アプリケーション本体とタスク間は、同期(S:セマフォ)/排他(M:ミューテッスク)/メッセージキュー(Q)などのRTOS処理待ちに応じたRTOS APIが用いられます。

FreeRTOSとAzure RTOSで処理待ちRTOS API記述が異なるものの、どちらも機能的には同じです。

また、センサやタッチスクリーン、Wi-FiなどMCU内蔵/外部回路間の制御API、いわゆるドライバ部分は、各MCUベンダ提供のAPI生成ツールで開発します。このAPI生成ツールは、ベアメタル開発で使うものと同じです。RTOS開発だからと言って別のドライバAPI生成ツールがある訳ではありません。

ベアメタル開発とRTOSとの差分は、灰色部分です。1無限ループ内で全ての処理を行うのがベアメタル、RTOSアプリケーション本体と複数のRTOS処理待ちタスク/スレッドで並列多重を行うのがRTOS、ここだけです。

ベアメタル処理とFreeRTOSタスク処理並列多重
ベアメタル処理とFreeRTOSタスク処理並列多重

メニュー形式アプリケーション特徴

メニュー 1-5 を選択してください。
(1) Process Input処理
(2) Network Manager処理
(3) 出力処理
(4) メモリ処理
(5) 印刷
(6) 処理自動実行

最初の図のような複雑な処理をベアメタル開発する時は、例えば上のようなメニュー表示形式アプリケーションがしばしば用いられます。メニューの表示は、USART接続のPC、Tera Term利用が一般的です。

このメニュー表示形式アプリの特徴は、(1)から(5)の各処理を単体デバッグできることです。

また、単体デバッグ後、(1)から(5)の処理を自動で結合する処理(6)を開発すれば、開発が完成する点も優れています。

(6)完成後は、メニュー表示をスキップし、PCを使わずにMCU単体で(6)を実行すれば、ベアメタル組込み完了です。

メニュー形式RTOSテンプレート骨格と開発手順

RTOSアプリケーション開発でもメニュー表示形式を採用します。

メリットは、単体タスク/スレッド開発、デバッグが容易な点です。RTOS開発は、タスク/スレッドの独立性がベアメタルよりも高いため、メニュー形式で開発したタスク/スレッド流用性も高く、開発ソフトウェア資産化も可能です。

弊社RTOSテンプレートは、FreeRTOSでもAzure RTOSでもメニュー形式のテンプレート骨格とします。テンプレートが用意するデフォルトメニュー数は7個、タスク/スレッド優先度もデフォルト7レベル(1から7)設定とします。優先度初期値は、どれも同一優先度(真ん中の4)とします。

※FreeRTOSは値が大きいと高優先、Azure RTOSは値が小さいと高優先で真逆に注意

RTOSテンプレートを使って、単体のタスク/スレッドを開発し、単体タスク/スレッド完成後、並列多重の結合動作へステップアップします。多重時、各タスク/スレッドの高/低優先度変更や、タスク合併などを検討します。

メニュー形式RTOSテンプレートのデバッグ方法
メニュー形式RTOSテンプレートのデバッグ方法

もちろん、メニュー数や優先度数の増加も容易です。しかし、弊社がお勧めするIoT MCUは、低価格評価ボード搭載の汎用IoT MCUです。RTOSオーバーヘッドが少ない7程度が適当だと思います。

RTOSテンプレートを使って、第1段階ではタスク/スレッド分割と単体タスク/スレッド開発に集中し、第2段階でタスク/スレッド並列多重に関連する優先度などのRTOSパラメタ調整に集中します。段階を踏んだ集中開発ができるため、複雑なRTOSアプリケーションの早期開発に役立ちます。

弊社RTOSテンプレートは、FreeRTOSまたはAzure RTOS個別対応済みのバージョンを販売予定です。但し、RTOSテンプレートの骨格がFreeRTOS/Azure RTOSで同じことをご購入者がご理解済みなら、FreeRTOS APIとAzure RTOS API変換も、比較的容易だと思います。

ベアメタルテンプレートとの違い

弊社ベアメタルテンプレートは、主に開発初心者から中級者が対象です。メニュー表示形式など、複雑な構成のテンプレートを提供するよりも、シンプルで解り易いソースコードの方が適しています。

一方、RTOSテンプレートは、ベアメタル開発経験者、つまり中級以上の開発者が対象です。

テンプレート付属説明資料も異なります。ベアメタルテンプレート付属説明資料は、各ベンダのIDEやAPI開発ツールの基本的使い方、開発つまずき回避のTipsなどを記述しています。具体例は、RAベアメタルテンプレート説明資料をご覧ください。

RTOSテンプレート付属説明資料は、既知のベアメタル関連説明は省き、ベアメタルとRTOSの差分や、実践的なRTOS Tipsの説明を加えます。具体例は、NXP版FreeRTOSテンプレート説明資料をご覧ください。

まとめ

FreeRTOSとAzure RTOS同一のメニュー形式RTOSテンプレート骨格構想を示しました。

弊社RTOSテンプレートを使えば、単体タスク/スレッド開発に集中でき、効率的、段階的なRTOSアプリケーション開発が可能です。開発単体タスク/スレッドは、独立性が高いので、ソフトウェア資産化も容易です。

また、接続クラウド変更に伴うFreeRTOSとAzure RTOSのAPI変更も、同じテンプレート骨格利用のため容易です。

本構想に基づいたAzure RTOSテンプレート、FreeRTOSテンプレートは、本年度末発売予定です。現在販売中のNXP版FreeRTOSテンプレートも、本構想用に改版を予定しております。

弊社RTOSテンプレート骨格について、皆様のご意見などを現在募集中です。お気軽にinfo@happytech.jpへお寄せください。

関連投稿リンク

FreeRTOS/Azure RTOSソフトウェア開発手法

ルネサス公式センササンプルコードを使って、ベアメタル処理を起点とするRTOS(FreeRTOS/Azure RTOS)ソフトウェア開発手法を説明します。

筆者にしては、長い投稿です。要旨は、「ベアメタル処理+RTOS処理待ち=RTOS処理」です。

ベアメタル処理とFreeRTOSタスク処理並列多重
ベアメタル処理とFreeRTOSタスク処理並列多重

センササンプルコード

  1. FS2012 Sample application – Sample Code
  2. HS300x Sample application – Sample Code
  3. ZMOD4xxx Sample application – Sample Code

説明に用いたセンササンプルコードが、上記3種類です。ダウンロードには、ルネサスのログインが必要です。同一動作のベアメタル/FreeRTOS/Azure RTOS、3個のe2studioプロジェクトが同胞されています。動作MCUは、ルネサス)RA/RX/RE/RL78ファミリです。

サンプルコードマニュアルだけは、下記からログイン不要でダウンロードできます。本稿は、これらマニュアル情報だけで読める工夫をしました。

  1. FS2012 Sample application
  2. HS300x Sample application
  3. ZMOD4xxx Sample application

FS2012がガスフローセンサ、HS300xが湿度・温度センサ、ZMOD4xxxが高性能ガスセンサです。この順番で、サンプルコードが複雑になります。

そこで、焦点を、一番簡単なFS2012サンプルコード、動作MCUをRA6M4(Cortex-M33/200MHz/1MB Flash/256KB RAM)に絞って説明します。他サンプル/MCUでも同様の結果が得られます。

なお、3サンプルコードは、ベアメタルからRTOS開発へステップアップする時にも適したコードです。

センサとMCU間接続:I2C

PMODインタフェースによるセンサボードとMCU接続
PMODインタフェースによるセンサボードとMCU接続

センサとMCU間は、サンプルコード全てPMOD経由のI2C接続です。従って、I2C接続センサのIoT MCU制御例としても応用可能です。FreeRTOSとAzure RTOS、両方に対応した点が便利です。

PMODとは、米Digilent社規定のオープンインタフェース規格です。図示のように、複数センサボードを、レゴブロックのようにMCUへ追加接続できる特徴があります。

ベアメタルとFreeRTOS/Azure RTOSメモリ量

FS2012サンプルコードマニュアルより抜粋した使用メモリ量比較です。

ベアメタル FreeRTOS Azure RTOS
Flash 1065 bytes 1374 bytes 1342 bytes
RAM 73 bytes 249 bytes 246 bytes

RTOSは、ベアメタル比1.3倍のFlash使用量、3.4倍のRAM使用量です。但し、上表にRTOSタスク/スレッドのスタックメモリ量は含みません。

Flash/RAM使用量が増加しますが、RTOS開発ソフトウェア流用性が高まるメリットがあります。これら増加分は、ベアメタル単体処理からRTOSマルチタスク/スレッド処理のオーバーヘッドに相当すると考えて良いでしょう。

マルチタスク/スレッド以外にも、RTOS開発には、クラウド接続/セキュリティ/OTA(Over The Air)処理などのオーバーヘッドが別途必要です。

これら処理のため、IoT MCUは、ベアメタル比、Flash/RAM量の十分な余裕と高速動作が必要になります。

FS2012センサAPI使用方法

FS2012フローセンサの使用APIとその利用手順です。一般的なセンサでも同様で、特に変わった点はありません。

FS2012 APIと利用手順
FS2012 APIと利用手順

ベアメタル処理フロー

RTOS開発の起点となるベアメタル開発の処理フローです。

FS2012のベアメタル処理フロー
FS2012のベアメタル処理フロー

初期設定で、I2Cとセンサを初期化し、無限ループ内で、センサデータ取得と取得データの演算を繰返します。センサデータの連続取得に409.6ms遅延時間が必要であることも判ります。センサデータ取得完了は、センサ割込みを使って検出しています。

このベアメタル処理フローも、特に変わった点はありません。

RTOS処理フロー

ベアメタルと異なる処理だけを橙色抜粋したFreeRTOS処理フローです。

ベアメタル処理とRTOS処理のフロー差分
ベアメタル処理とRTOS処理のフロー差分

差分は、RTOS遅延:vTaskDealy()/tx_thread_sleep()で409.6msと1msが加わる点、vTaskDelete()/tx_thread_delete()でタスク削除する点です。

また、センサ制御本体は、タスク/スレッド記述へ変更し、セマフォにより別タスク/スレッドとの排他制御を行います。

1ms遅延は、別タスク/スレッド切替えに必要です(関連投稿のコチラ、6章コンテキストスイッチ参照)。FS2012サンプルは、タスク/スレッド数が1個なので切替え不要です。

しかし、例えば、HS300xセンサボードを、FS2012センサボードへレゴブロック様式で追加した時は、FS2012センサとHS300xセンサの2タスク/スレッドを、この1msスリープでRTOSが切替えます。

FS2012センサは、ベアメタル処理フローで示したデータ取得間隔に409.6ms遅延処理が必要です。この遅延中に、HS300xセンサのデータ取得を行えば、両タスク/スレッドの効率的な並列多重ができ、これにセマフォ排他制御を用います。

※RTOS遅延処理は、本稿最後の補足説明参照。RTOSメリットが具体的に判ります。

この切替え処理が、本稿最初の図で示したRTOS処理待ちに相当します。その他のRTOS処理フローは、ベアメタル処理と同じです。

つまり、RTOS処理とは、単体のベアメタル処理へ、RTOS処理待ちを加え、複数のベアメタル処理を並列処理化したものです。

数式的に表すと、「ベアメタル処理+RTOS処理待ち=RTOS処理」です。

RTOS(FreeRTOS/Azure RTOS)ソフトウェア開発手法

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

ベアメタル処理を、効率的に複数並列動作させるのがRTOSの目的です。

この目的のため、優先制御や排他、同期制御などの多くの機能がRTOSに備わっています。RTOSの対象は、個々のベアメタル処理です。つまり、ベアメタル開発スキルを起点・基盤としてその上層にRTOS機能がある訳です。

RTOS習得時、多くの機能に目移りします。しかし、本稿最初の図に示したように、RTOSは、複数ベアメタル処理(タスク/スレッド)を、優先度や排他・同期条件に応じて切替え並列多重化します。

逆に、ベアメタル側からRTOSを観ると、セマフォ/Queueなど「RTOSによる処理待ち」がベアメタル無限ループ内に入っただけに見えます。「待ち/解除の制御は、RTOS」が行います。待ち処理の種類が、セマフォ/Queue/イベントフラグ……など様々でも、「ベアメタル側からは単なる待ち」です。

筆者が、RTOS開発の起点はベアメタル処理、とした理由が上記です。

つまり、ベアメタル起点RTOSソフトウェア開発手順は、

1:単体ベアメタル処理開発。単体デバッグ後、タスク/スレッド化。
2:タスク/スレッド無限ループ内へ、RTOS処理待ち挿入。
3:複数タスク/スレッド優先度を検討し、RTOS結合デバッグ。

以上で、RTOSソフトウェア開発ができます。

処理自体は、1でデバッグ済みです。2以降は、効率的RTOS処理待ち挿入と、複数タスク/スレッド間の優先度検討が、主なデバッグ内容です。複数タスク/スレッドが想定通り並列動作すれば、第1段階のRTOSソフトウェア開発は完了です。

スタックメモリ調整やより効率的な待ち処理などのチューニングは、3以降で行います。

RTOS待ち処理は、セマフォやQueueの利用頻度が高いため、RTOS習得もセマフォ/Queueを手始めに、より高度な待ち処理機能(イベントフラグなど)へと順次ステップアップしていけば良いでしょう。

ベアメタル開発経験者が感じるRTOS障壁

ベアメタルは、開発者自身が全ての制御を行います。ところが、RTOS開発では、ソースコード内に、自分以外の第3者:RTOSが制御する部分が混在します。ここが、ベアメタル開発経験者の最初のRTOS違和感、RTOS障壁です。

前章の手法は、1でベアメタル処理を完成すれば、2以降は、RTOS処理のデバッグに集中できます。つまり、既に持っているベアメタルスキルと新しいRTOSスキルを分離できます。これで、最初に感じたRTOS障壁は小さくなります。

また、RTOS障壁は、IoT MCUクラウド接続時の通信処理やセキュリティ処理時に、MCUベアメタル開発経験者に大きく見えます。しかし、これらの処理は、決まった手順で当該ライブラリやAPIを順番に利用すれば良く、一度手順を理解すれば、本当のRTOS障壁にはなりません。

クラウド接続やセキュリティ処理サンプルコードを入手し、各API利用手順の理解後は、これら該当処理の丸ごと流用でも十分に役立ちます。

まとめ:RTOSソフトウェア開発手法

IoT MCU RTOSソフトウェア開発の3分野
IoT MCU RTOSソフトウェア開発の3分野

IoT MCUは、クラウド接続のためRTOS開発になります。IoT MCU RTOS開発は、データ収集、クラウド接続、エッジAIやIoTセキュリティなど、大別すると3分野に及びます(関連投稿:世界最大情報通信技術(ICT)サービス輸出国、アイルランドIoT事情)。

本稿は、センササンプルコードを使い、ベアメタルスキル起点・基盤としたデータ収集分野のRTOSソフトウェア開発手法を説明しました。

1:単体ベアメタル処理開発。単体デバッグ後、タスク/スレッド化。
2:タスク/スレッド無限ループ内へ、RTOS処理待ち挿入。
3:複数タスク/スレッド優先度を検討し、RTOS結合デバッグ。

数式的に示すと、「ベアメタル処理+RTOS処理待ち=RTOS処理」です。

クラウド接続とエッジAI/IoTセキュリティ分野は、決まった手順のRTOSライブラリ活用などが主な開発内容です。従って、この分野は、差別化の努力は不要です。

IoT MCU RTOS開発で、他社差別化できるデータ収集RTOSソフトウェア開発の手法を説明しました。

RAベアメタルテンプレート発売中

RAベアメタルテンプレート概要
RAベアメタルテンプレート概要

2022年5月にRAベアメタルテンプレート(1000円税込)を発売しました。本稿説明のRTOS(FreeRTOS/Azure RTOS)ソフトウェア開発には、ベアメタルスキルが必須です。

RAベアメタルテンプレートにより、開発ツール:FSP(Flexible Software Package)やe2studioの使い方、豊富なベアメタルサンプルコードを活用したベアメタル開発スキルが効率的に得られます。ご購入は、コチラから。

RA版RTOSテンプレート(仮名)は、検討中です。

NXP版FreeRTOSテンプレート発売中

NXP版FreeRTOSテンプレートも発売中です。また、本年度中には、ST版Azure RTOSテンプレートも、開発・発売予定です。

弊社ブログは、RTOS関連も多数掲載済みです。ブログ検索窓に、FreeRTOSやAzure RTOSなどのキーワードを入力すると、関連投稿がピックアップされます。

補足説明:RTOS遅延処理

RTOS遅延処理のvTaskDealy(409.6ms)/tx_thread_sleep(409.6ms)は、他タスク/スレッドの処理有無に関わらず409.6msの遅延時間を生成します。これは、ベアメタル開発者にとっては、夢のようなRTOS APIです。

このようにRTOSは、開発ソフトウェアの独立性・流用性を高めるマルチタスク/スレッド動作を実現し、ベアメタルの補完機能を提供します。

つまり、ベアメタル開発中に、他処理の影響を受けるので開発が難しいと思う部分(例えば、上記遅延処理など)があれば、RTOSのAPI中に解が見つかる可能性があります。

あとがき

長い投稿にお付き合いいただき、ありがとうございました。

ベアメタル開発経験者がRTOS習得・開発を目指す時、サンプルコード以外の情報が多すぎ、途中でくじけそうになります。本稿は、サンプルコードとベアメタルスキルを活かしRTOS開発へステップアップする手法を示しました。RTOSでも、基本はベアメタルスキルです。

RTOSサンプルコードが豊富にあれば、必要情報の絞り込み、RTOSスキル向上も容易です。掲載RTOSサンプルコードは、非常に貴重だと思いましたので、RTOSソフトウェア開発手法としてまとめました。

1GHz 64ビットMPU量産開始

1GHz/64ビットMPU:RZ/A3UL評価ボード構成
1GHz/64ビットMPU:RZ/A3UL評価ボード構成

2022年8月ルネサスは、最大動作周波数1GHz 64ビットMPU、RZ/A3ULの量産を始めました。本プログメインカテゴリのMCU(マイコン)では無く、比較対称のMPU(マイクロプロセッサ)のことです。

より高度なHMI(Human Machine Interface)を実現するためRTOS(FreeRTOS/Azure RTOS)採用、RISC-Vコア搭載機RZ/Fiveとも互換性を持たせる作りです。肥大化するソフトウェア資産流用、活用に重点を置いています。

ところで、2022年8月9日ITmediaのPCとは何だったのか記事の最初のページには、PC(CPU)が16→32→64ビットへと変わった41年の歴史が、23回連載記事タイトルからも判ります(詳細は、連載記事参照)。

本稿で言いたいのは、MCU(マイコン)も近い将来GHzクラス高速化へ向かうだろうと言うことです。

MCU → IoT MCU

未だに8/16ビット機も現役のMCUは、CPU程の紆余曲折や派手さはありませんが、着実に高速・大容量化が進行中です。制御規模が小さく、スタンドアロン処理も可能なMCUなので8/16ビット機でも現役です。

しかし、時代はIoT、全ての制御対象がネットワークに繋がります。OTA(Over The Air)によりセキュリティ更新や、制御ソフトウェア変更もIoT MCUでは可能です。これら処理は、セキュリティライブラリや決まった更新手順で実施されます。

つまり、プリミティブなMCU制御から、よりアプリケーション寄り、場合によってはRTOS前提のIoT MCU制御へ変わらざるを得ない状況になりつつあります。自力でこれらを開発する猛者もいるでしょう。しかし、これらは、本来注力すべき開発差別化部分ではありません。

MCUハードウェア/ソフトウェアともに、市場獲得に向けて他社差別化を狙う部分と、IoTクラウド接続達成部分を、コストパフォーマンス高く共立する、これがIoT MCUの要件です。

CPU/MPU製造技術やソフトウェアのMCU転用は、過去、上記要件の解となってきました。大容量Flash内蔵が前提MCUと、外付けRAM前提CPU/MPUのハードウェア差はありますが、その転用速度は、今後更に早まると思います。

高度なHMIを体験すると元に戻れないように、MCU+クラウド→IoT MCUを顧客が体験すると、元のスタンドアロンMCUには戻れません。

ドライバ → 個別API → HAL API → マルチタスク

IoT MCUソフトウェア開発の変遷
IoT MCUソフトウェア開発の変遷

MCUソフトウェアも、40年前のドライバ開発、20年前のMCU個別API開発、10年前からはMCU共通HAL(Hardware Abstraction Layer) API開発へと変わりました。MCUソフトウェア資産化も、もはや夢ではありません。

開発部分がアプリケーション層に近づけば近づくほど、オーバーヘッドは増えます。オーバーヘッド増大や各種セキュリティライブラリなどの有効活用、RTOS利用によるマルチタスク開発には、IoT MCUの64ビット化、GHzクラス高速化も必然だと思います。

ビット幅増大は、各種巨大ライブラリ流用のためです。ここは32ビットでも十分かもしれません。しかし、高速化は、オーバーヘッド対策や、場合によってはMPU同程度の高度HMI処理、クラウドエッジでのAI処理など、IoT MCU機能実現には必須です。

製造業経済規模 → 縮小中の日本

我々開発者は、前章のIoT MCUソフトウェア開発の変遷を見ただけでもかなりの大変さ、自助努力が開発に必要であることを実感できます。

しかし、日本は、世界の先進国とは異なります。大変さや努力に対し報われることが期待できません。

日本が先進国で唯一、製造業の経済規模が縮小している国という記事や、労働者不足が、COVID-19のせいではないという記事を読むと、その理由と現状が判ります。

世界第2位から降下中の日本
世界第2位から降下中の日本

諸外国の真似をせよという気はありません。が、このままでは気が付けば、後進国になりかねないのが、今の日本です。

今こそ、日本開発者「個人」で変化に対応すべきです。少しずつでも、IoT MCUへ準備を始めませんか?

弊社NXP版FreeRTOSテンプレートは、FreeRTOSプロジェクトと同じ動作のベアメタルプロジェクトも添付済みです。アプリケーションレベルでRTOSとベアメタルを比較しながら技術習得が可能です。是非、ご活用ください。また、ST版Azure RTOSテンプレートも本年度中には開発予定です。

最後は、宣伝となってしまいました。すいません。

Azure RTOS習得(1):習得方針

Microsoft公式Azure RTOS ThreadXサイト
Microsoft公式Azure RTOS ThreadXサイト

Microsoft公式、Azure RTOS ThreadXサイトを紹介します。

前稿最後で示したSTM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコード付属readme.html理解には、Azure RTOS ThreadX基礎知識が必要です。基礎知識獲得には、Microsoft公式サイトが最適です。

本稿は、公式サイトを簡単に説明し、今後のAzure RTOS習得方針を示します。

Azure RTOS習得方針

筆者は、物事を効率的に理解する時、初めはあまり細部に拘らず全体を俯瞰的に捉え、次の段階で不明な点を明らかにする、既に知っている事柄と比較する、などの方法を好みます。

Azure RTOS習得も、この方法でアプローチしたいと思います。

これは、FreeRTOS習得(2020年版)と同じ方法です。その結果、開発したのがNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートです。

最終的には、STM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコード付属readme.html理解とST版Azure RTOSアプリケーションテンプレート開発、2022年版Azure RTOS習得サイト作成が目標です。

Azure RTOS ThreadX公式ユーザガイド

公式サイトトップページには、Azure RTOS概要と、ユーザガイドのショートカットが掲載されています。概要は、疲れた時や気分転換時に読むとして、肝心のAzure RTOS ThreadXユーザガイドをクリックします。

現れるのが、Azure RTOS ThreadXユーザガイド目次です。

第 1 章:Azure RTOS ThreadX 概要とリアルタイム組込み開発
第 2 章:Azure RTOS ThreadX インストール
第 3 章:Azure RTOS ThreadX 機能動作
第 4 章:Azure RTOS ThreadX API
第 5 章:Azure RTOS ThreadX アプリケーションドライバー作成
第 6 章:Azure RTOS ThreadX デモアプリケーション

第3章が、Azure RTOS ThreadX理解ポイントのようです。

Azure RTOSとFreeRTOS比較:状態遷移図、優先度

Azure RTOS(左)とFreeRTOS(右)状態遷移比較
Azure RTOS(左)とFreeRTOS(右)状態遷移比較

RTOS理解に必須なのが、スレッド/タスクの状態遷移です。左が第3章:記載のAzure RTOS、右が弊社FreeRTOS習得記載のFreeRTOS状態遷移です。Azure RTOSは、全5状態ありFreeRTOS比+1、スレッド登録後、即Suspendedになる遷移もあります。

RTOS処理対象を、Azure RTOSはスレッド、FreeRTOSはタスクと呼びます。

優先度は、Azure RTOSは数値が小さい方が高く、FreeRTOSは大きい方が高い、つまり真逆です。

などのAzure RTOSとFreeRTOSの違いが第3章から判ります。

Azure RTOS ThreadXサンプルコードキーワード

・ThreadX、Thread、Event flags、Preemption threshold

前稿最後で示したSTM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコード付属readme.html記載のキーワードです。サンプルコード理解には、これらが重要であることを示しています。

公式ユーザガイド第3章日本語訳によると、Preemption thresholdとは、プリエンプション閾値のこと。Azure RTOS独特の高度機能です。この部分の要旨を抜粋すると、

・プリエンプション閾値利用で、プリエンプションを無効にする優先度の “上限” を指定可能。上限より高い優先度スレッドは、引き続きプリエンプト可能だが、上限より低いスレッドは、プリエンプト不可。
・優先度20スレッドが、15~20優先スレッドグループやり取りで説明。優先度20スレッドは、セクション処理中、プリエンプション閾値を15 に設定すると、他の全スレッドのプリエンプションを防止。
・これにより、非常に重要なスレッド (優先度 0 から 14 まで)は、クリティカルセクション処理中でもスレッドをプリエンプトでき、応答性が大幅に向上。
・スレッドでプリエンプション閾値を0に設定し、全プリエンプションを無効にすることも可能。また、プリエンプション閾値は実行時に変更可能。

英語原本の機械翻訳だと思いますので、解り難い箇所もありますが、今はOKとしましょう😂。

プリエンプション:Preemptionとは

プリエンプションとは何かを、IT用語辞典から抜粋しました。

・RTOSが、実行中のスレッド/タスクを強制的に一時中断し、他のスレッド/タスク実行に切り替えること。
・このRTOS切り替えを「コンテキストスイッチ」(context switching)と呼び、プリエンプションで停止していたスレッド/タスクを再開させる操作を「ディスパッチ」(dispatch)と呼ぶ。
・殆どの現代RTOSは、「プリエンプションを利用」し処理を時分割多重。
・歴史的には、スレッド/タスク側が自ら決めたタイミングで自発的にRTOSへ制御を返却するノンプリエンプティブマルチタスク、あるいは、協調的マルチタスクもあった。

Azure RTOS/FreeRTOS、どちらもプリエンプションを利用します(FreeRTOSは本稿:状態遷移参照)。違いは、Azure RTOSが、スレッド毎にプリエンプション閾値を持つこと。RTOS任せにせずスレッドが、明示的に優先度制御を行う点です。

STM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコードは、このスレッドによる優先度変更とイベントフラグが解れば解析できそうです(次回解析予定)。

まとめ

Microsoft公式Azure RTOS ThreadXサイトを利用したAzure RTOS習得方針を示しました。

STM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコード付属readme.html理解に、Azure RTOS ThreadXユーザガイド第3章から、

・Azure RTOSとFreeRTOS状態遷移は異なる
・Azure RTOS優先度は0が最高位、FreeRTOSは値が大きい程優先度が高く、両者は真逆
・Azure RTOSスレッド応答性を向上させるPreemption threshold:プリエンプション閾値機能がある

などが判りました。この方針に則って、Azure RTOS習得を続けます。

STM32 Azure RTOS開発ツール拡充

2022年4月20日、STマイクロエレクトロニクス(以下ST)は、Azure RTOS開発ツールを拡充し、より幅広いSTM32MCU対応を発表しました。拡充したSTM32MCUリストが下記です。

List of STM32 with X-Cube-AZRTOS Package(出典:The ST blog)
List of STM32 with X-Cube-AZRTOS Package(出典:The ST blog)

弊社販売中STM32G0xテンプレートで使ったSTM32G0や、テンプレート開発中のSTM32G4も、Azure RTOS開発が容易になりました。

CMSIS RTOSからAzure RTOSへ

今回の発表前までは、販売中のNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートに続き、STM32G4を使ってST版“CMSIS-RTOS”アプリケーションテンプレートを構想していました。

しかし、今回のAzure RTOS開発ツール充実発表を受け、“CMSIS-RTOS”から“Azure RTOS”対応へ変更することにしました。STのAzure RTOSサンプルコードが活用でき、また、Microsoft公式Azure RTOS情報もあるからです。

※ARM社規定のCMSIS RTOSは、FreeRTOSやAzure RTOSをラップ(wrapper)するRTOSです。同じCMSIS RTOS APIでFreeRTOSまたはAzure RTOSが使え、開発アプリケーション流用性は高まります。但し、ラップ関数分のオーバーヘッドが生じます。詳しくは、構想投稿の4章を参照してください。

STがAzure RTOS開発ツールMCUを拡充した背景は、Microsoft Azureクラウド接続IoT MCUの急増だと思います。リストアップした9種のSTM32MCUが、IoT MCU有力候補と言えます。

Azure RTOS開発ツールインストール方法

STM32G4を例に、Azure RTOS開発ツールインストール方法を示します。現在のSTM32G4開発ツールが、下記版数です。

・STM32CubeIDE v1.9.0               (以下CubeIDE)
・STM32CubeMX v6.5.0               (以下CubeMX)
・STM32Cube FW_G4 v1.5.0        (以下FW_G4)
・X_CUBE_AZRTOS_G4 v1.0.0    (以下AZRTOS_G4)

X-CUBE-AZRTOS-G4が、今回発表したSTM32G4のAzure RTOS開発ツールです。

FreeRTOSは、CubeMXのMiddlewareに実装済みです。一方、Azure RTOS は、ExpansionsパッケージのAZRTOS_G4によりCubeMXへ機能追加します。Expansionsパッケージ追加のため、少し手間がかかります。

① CubeIDEのHelp>Manage Embedded Software Packagesクリック
② Embedded Software Packages ManagerのSTMicroelectronicsタブ選択
③ X_CUBE_AZRTOS_G4のAvailable Version 1.0.0を選択し、Installクリック

X-CUBE AZRTOS-G4のインストール
X-CUBE AZRTOS-G4のインストール

AZRTOS_G4インストール後、使用コンポーネントの選択が必要です。

④ CubeMXのPinout & Configurationタブ内Software Packsをクリック
⑤ Select Components(Alt+O)を開き、Software Packs Component Selectorで追加Azure RTOSコンポーネント:RTOS ThreadX/File system FileX/USB LevelX…などを選択し、OKクリック

STM32G4評価ボード:NUCLEO-G474REを使う場合は、RTOS ThreadXを選択し、Core/Low Power supportを選択すれば十分です。但し、念のため、Performance InfoやTraceX supportも選択しておきます。

インストールしたAzure RTOS ThreadX版数が、6.1.8であることも判ります。

Software Packs Component Selector
Software Packs Component Selector

Azure RTOS ThreadXサンプルコードインポートと動作確認

インストールしたAZRTOS_G4が正常動作するかをAzure RTOS ThreadXサンプルコードと評価ボード:NUCLEO-G474REで確かめます。確認方法が下記です。

① CubeIDEのInformation CenterからImport STM32Cube exampleをクリック
② STM32 Project from STM32Cube ExamplesのExample Selectorタブで、BoardのName:NUCLEO-G474RE、Middleware:ThreadXを選択

STM32G4評価ボード:NUCLEO-G474REのAzure RTOSサンプルコード
STM32G4評価ボード:NUCLEO-G474REのAzure RTOSサンプルコード

STM32G4 Azure RTOS ThreadXサンプルコードは、現在3個です。最も基本的な、

③ Tx_Thread_Creationを選択し、Finishクリック。CubeIDEへTx_ThreadX_Creationサンプルコードがインポート。
④ CubeIDEのTx_Thread_Creation.iocをクリックし、CubeMXで、Generate Code(Alt+K)を実行
⑤ CubeIDEでTx_Thread_Creationをビルドし、評価ボードへダウンロード
⑥ 評価ボードのLED2が、500ms点滅と200ms点滅を3回繰返し、その後1秒点滅に変わる

以上で、STM32G4 Azure RTOS開発ツールのX_CUBE_AZRTOS_G4インストールを、ThreadXサンプルコードで動作確認しました。

使用したTx_ThreadX_Creationサンプルコードの説明は、次週以降に行う予定です。直ぐ知りたい方は、Tx_ThreadX_Creationフォルダ内readme.htmlを参照してください。

まとめ

STが、STM32G0やSTM32G4、STM32U5などのIoT MCUに対し、Azure RTOS開発ツール拡充を発表しました。

STM32G4を例に、CubeMXへExpansionsパッケージのX_CUBE_AZRTOS_G4でAzure RTOS機能の追加方法、Azure RTOS ThreadXサンプルコードインポート、NUCLEO-G474REでThreadXサンプルコードの動作確認をしました。

STM32G0(Cortex-M0+/64MHz)、STM32G4(Cortex-M4/170MHz)、STM32U5(Cortex-M33/160MHz)は、弊社IoT MCUテンプレートの開発対象です。

今回の発表を受け、STM32G4のRTOSを、CMSIS-RTOSからAzure RTOSへ変更し、ST版Azure RTOSアプリケーションテンプレート開発を計画中です。

組込み開発 基本のキ:RTOS vs. ベアメタル

RTOS vs. BareMetal
RTOS vs. BareMetal

2022年最初の投稿は、RTOSとベアメタルを比較します。RTOSを使わないベアメタルMCU開発者が多いと思いますので、RTOS開発メリット/デメリットをベアメタル側から評価、RTOSデバッグツール紹介とベアメタル開発の意味を考えました。

RTOS目的

Flexible Software Package構成
Flexible Software Package構成

ルネサスRAファミリのFlexible Software Package構成です。左上Azure RTOSやFreeRTOSの中に、ConnectivityやUSBがあります。これらMCU共有資源を管理するシステムソフトウェアがOSで、PCのWindowsやMac、Linuxと機能的には同じです。

Real-Time性が必要な組込み用OSをRTOSと呼び、FreeRTOSやAzure RTOSが代表的です。これは、IoT MCU接続先が、Amazon Web Services(AWS)クラウドならばFreeRTOSライブラリ、Microsoft AzureクラウドならAzure RTOSライブラリ(図のConnectivity)利用が前提だからです。

※2021年のIoTクラウドシェアは、コチラの関連投稿からAWS>Azure>GCPの順です。

RAファミリに限らず、クラウド接続のIoT MCUは、これらRTOSライブラリを使ったRTOS開発になります。

RTOSメリット/デメリット

例えば、ベアメタルでUSB制御を自作する場合は、USB 2.0/3.0などの種類や速度に応じた作り分けが必要です。ライブラリがあるRTOSなら、USBポートへの入出力記述だけで利用可能です。RTOSが共有資源ハードウェア差を吸収し、アプリケーションが使い易いAPIを提供するからです。

RTOSの資源管理とは、MCUコア/Flash/RAM/周辺回路/セキュリティなどの共有資源を、アプリケーション側から隠蔽(≒ブラックボックス化)すること、とも言えます。

RTOSアプリケーションは、複数タスク(スレッドと呼ぶ場合もあり)から構成され、タスク間の優先制御もRTOSが行います。開発者は、単体処理タスクを複数開発し、それらを組み合わせてアプリケーションを構成します。RTOSアプリケーション例が下図、灰色が開発部分、コチラが関連投稿です。

Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB'S Blog)
Data flow diagram for a smart thermostat(出展:JACOB’S Blog)

RTOS利用メリット/デメリットをまとめます。

メリットは、

・RTOSライブラリ利用により共有資源活用タスク開発が容易
・移植性の高いタスク、RTOSアプリケーション開発が可能
・多人数開発に向いている

デメリットは、

・複数タスク分割や優先順位設定など、ベアメタルと異なる作り方が必要
・共有資源、特にRAM使用量がタスク数に応じて増える
・RTOS自身にもバグの可能性がある

簡単に言うと、RTOSとベアメタルは、「開発作法が異なり」ます。

ソフトウェア開発者は、RTOS利用と引換えに、自己流ベアメタル作法を、RTOS作法へ変えることが求められます。RTOS作法は、標準的なので多人数での共同開発が可能です。もちろん、ベアメタルよりもオーバーヘッドは増えます。このため、RTOS利用に相応しい十分なMCUコア能力も必要です。

RTOSタスク開発 vs. ベアメタルアプリケーション開発

最も効果的なRTOS作法の習得は、評価ボードを使って実際にRTOSタスク開発をすることです。弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、この例です。

それでも、RTOSタスク開発作法を文章で記述すると、以下のようになります。

開発対象がアプリケーションからタスク(スレッド)へ変わることが、ベアメタルとの一番の違いです。Windowsタスクバーにあるフィルダ表示や、ペイントなどと同様、タスクは、単機能の小さいアプリケーションとも言えます。

このタスクを複数開発し、複数タスクを使ってRTOSアプリケーションを開発します。タスクには、それぞれ優先順位があり、他のタスクとの相対順位で実行タスクがRTOSにより決まります。タスクの状態遷移が、RTOSへの備え:第2回、タスク管理で示した下図です。

FreeRTOS Task States
FreeRTOS Task States

ベアメタルアプリケーションとは異なり、優先順位に応じてタスクが実行(Running)され、その実行も、定期的に実行可能状態(Ready)や待ち状態(Suspended)、停止状態(Blocked)へRTOSが変えます。これは、リアルタイムかつマルチタスク処理が、RTOSの役目だからです。遷移間隔などは、RTOS動作パラメタが決めます。

ベアメタル開発は、開発者が記述した通りに処理が実行されますが、RTOS開発のタスク実行は、RTOS任せです。RTOS開発難易度の上がる点が、ここです。

一般的なIoT MCUは、シングルコアですので、実行タスク数は1個、多くの他タスクは、Not Running(super state)状態です。RTOSがタスクを実行/停止/復活させるため、スタックやRAM使用量が急増します。

これら文章を、頭の中だけで理解できる開発者は、天才でしょう。やはり、実際にRTOSタスクを開発し、頭の中と実動作の一致/不一致、タスク優先順位やRTOS動作パラメタ変更結果の評価を繰返すことで、RTOS理解ができると凡人筆者は思います。

ベアメタル開発者が手早くRTOSを理解するには、既にデバッグ済みの複数RTOSタスク活用が便利で、FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、この要求を満たしています。概要は、リンク先から無料ダウンロードできます。

文章でまとめたFreeRTOS解説が、コチラの弊社専用ページにあります。また、本ブログ検索窓にFreeRTOSと入力すると、タスク開発例などが参照できます。

RTOSデバッグツール

percepio tracealyzer
percepio tracealyzer

さて、RTOS作法に則ってタスク開発し、RTOS動作パラメタも適切に設定しても、思ったように開発タスクが動作しない時は、ブラックボックスRTOS自身のバグを疑う開発者も多いでしょう。RTOSのバグ可能性もありえます。

この疑問に対して強力にRTOS動作を解析できるFreeRTOSデバッグツールがあります。資料が無料でダウンロードできますので、紹介します。

※このツールを使うまでもなく、弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、正常動作を確認済みです。

まとめ:RTOS vs. ベアメタル

IoT MCUのクラウド接続 → 接続クラウド先のRTOSライブラリ必要 → RTOSライブラリ利用のRTOS開発が必要、という関係です。

RTOS開発は、ベアメタルと開発作法が異なる複数タスク開発です。タスクは、優先順位に応じてRTOSがMCU処理を割当てます。また、MCU共有資源がRTOSアプリケーションから隠蔽されるため、移植性が高く多人数での大規模開発にも向いています。

一方で、RTOSオーバーヘッドのため、ベアメタルよりも高いMCU能力が必要です。

シングルコアMCUでは、RTOSとベアメタルのハイブリッド開発は困難です。開発者がRTOSを利用するなら、慣れたベアメタル開発から、RTOSタスク開発への移行が必要です。

ベアメタル開発経験者が、効果的にRTOSタスク開発を習得するには、評価ボードと複数RTOSタスクが実装済みの弊社RTOSアプリケーションテンプレートの活用をお勧めします。

ベアメタル開発意味

RTOSのタスク処理待ち(セマフォ/Queue)を使うと、ベアメタルよりも排他/同期制御が簡単に記述できます。それでも、全てのMCU開発がRTOSへ移行することは無いと思います。様々なセンサデータをAD変換するエッジMCUは、ベアメタル開発、エッジMCUを複数個束ねクラウドへ接続するIoT MCUは、RTOS開発などがその例です。

MCU開発の基本は、やはりRTOS無しの「ベアメタル開発」です。

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

ベアメタル開発スキルを基にRTOSを利用してこそ、RTOSメリットを活かしたタスクやアプリケーション開発ができます。共有資源ブラックボック化、多人数開発のReal-Time OSは、「ベアメタル開発の補完」が起源です。

PC OSとは全く逆のこの生い立ちを理解していないと、効果的なRTOS利用はできません。近年MCU性能向上は著しいのですが、向上分をRTOSだけに振り分けられる程余裕はなく、IoTセキュリティなどへも配分する必要があります。

この難しい配分やRTOS起因トラブルを解決するのが、ベアメタル開発スキルです。弊社マイコンテンプレートは、主要ベンダのベアメタル開発テンプレートも販売中、概要ダウンロード可能です。

組込み開発 基本のキ:バックナンバー

2022年最初の投稿に、筆者にしては長文すぎる(!?)のRTOS vs. ベアメタルを投稿したのは、今年以降、RTOS開発が急速に普及する可能性があるからです。

クラウド接続からRTOS必要性を示しましたが、セキュリティなど高度化・大規模化するIoT MCU開発には、移植性の高さや多人数開発のRTOSメリットが効いてきます。

また、半導体不足が落ち着けば、RTOS向き高性能MCUの新しいデバイスが、各ベンダから一気に発売される可能性もあります。スマホ → 車載 → IoT MCUが、半導体製造トレンドです。

※現状のMCUコア関連投稿が下記です。
Cortex-M33とCortex-M0+/M4の差分
Cortex-M0からCortex-M0+変化
Cortex-M0/M0+/M3比較とコア選択

IoT MCU開発が複雑化、高度化すればする程、前章のベアメタル開発や、組込み開発の基礎技術:基本のキの把握が、開発者にとって益々重要になります。

組込み開発、基本のキ:バックナンバーを示します。年頭、基本を再確認するのはいかがでしょう?
組込み開発 基本のキ:組込み処理
組込み開発 基本のキ:IoT MCUセキュリティ