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販売中のNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートに続いて、STマイクロエレクトロニクス版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想を示します。

IoT MCU開発者にRTOS開発経験とスキルが必須であること、短期で効率的にRTOSスキルを磨けるSTマイクロエレクトロニクス版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想を示し、汎用性、セキュリティ、広い流用性を持つSTM32G4をターゲットMCUにした理由を示します。

IoT MCU開発者スキル

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

IoT MCU開発者は、ベアメタルMCU開発スキルの上に、FreeRTOSやAzure RTOSなど接続するクラウドに応じたRTOSスキルが必要です。クラウド接続後、顧客要求のIoTサービスを実装しますが、実装時には、競合他社より早い開発スピードなどの差別化スキルも要求されます。

更に、IoTセキュリティや、より高性能なデュアルコアMCUへの流用、顧客横展開など、発展性への配慮も必要です。これらは、図示したようにベアメタルMCU開発スキルを基礎とする階層構造です。
※スキルとは、開発経験に基づいた手腕、技量のことです。

RTOS開発経験とスキル

全てのモノをネットワークへ繋ぐ時代は、従来のMCUからIoT MCUへの変革が必要です。IoT MCU開発者にとってRTOS開発経験とスキルは、近い将来必須になります。理由が下記です。

・RTOSライブラリ利用がクラウド接続に必須  👉①IoT MCU急増への備え
・大規模MCU開発にRTOSが便利(≒必須)   👉②開発規模拡大への備え
・ベアメタル開発よりもRTOS開発が効率的   👉③ソフトウェア資産への備え(補足参照)

つまり、過去何度も提言されたMCUソフトウェア資産化・部品化を、RTOSが実現するからです。逆に、IoT MCU開発では、このソフトウェア資産化・部品化(ライブラリ活用)無しには、実現できない規模・技術背景になります。
※例えば、IoTセキュリティだけでも専門家が対応すべき領域・規模・技術背景になりそうです。

IoT MCU開発の成功には、様々な専門家技術が活用できる土台のRTOSは必須です。IoT MCU開発専門家の一員となるには、RTOS開発経験とスキルは必須と言えるでしょう。

効率的RTOSスキル習得

ベアメタル開発経験者の効率的なRTOS基礎固め、スキル取得を弊社STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレートの目的とします。

この目的は、NXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートと同じです。違いは、NXP版がFreeRTOSを用い、STM版は、コード生成ツール:STM32CubeMXが出力するCMSIS-RTOSを用いる点です。

現時点のSTM版CMSIS-RTOS APIは、FreeRTOS APIをラップ(wrapper)したもので、中身はFreeRTOSそのものです。※CMSIS-RTOS詳細は、コチラの関連投稿を参照してください。

ベアメタル開発経験者のRTOS基礎固め・スキル獲得を、短期・効果的に達成するには、

・基本的RTOS待ち手段(タスク同期:セマフォとタスク間通信:Queue)理解
・RTOSプロトタイプ開発にも使える弊社テンプレートプロジェクト活用

が適しています。

既に持っているベアメタル開発経験を活かし、例えば、単独RTOSサンプルプロジェクトでは得られない複数タスク優先順位を変えた時の各タスク挙動や、RTOSセマフォ送受失敗時の挙動などスキルアップに役立つ事柄を、自ら評価・判断できるからです。この評価を助けるために、同じ動作のベアメタルプロジェクトもテンプレートに添付します。

効率的にRTOS開発スキルを習得する方法として、自己のベアメタル開発経験を使ってRTOS習得・スキルアップする本手法は、Betterな方法だと思います。

コチラにFreeRTOS習得に役立つ情報をまとめています。ポイントとなる点をざっと掴んで、実際の開発環境で試し、参考書やマニュアルなどの内容を開発者自ら考える、これにより新技術やスキルを、身に付けることができると思います。

STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート構想

STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレートも、NXP版同様、同一動作のベアメタルプロジェクトを添付します。

RTOS/ベアメタルどちらのプロジェクトも、ADC入力、LCD出力、SWチャタリング対策入力、LED出力、VCOM入出力の動作確認済みで、プロトタイプ開発着手時のスタートプロジェクトとしても利用可能です。

付属説明資料には、ベアメタル視点からのCMSIS-RTOS説明を加えます。また、テンプレート利用CMSIS-RTOS APIとFreeRTOS APIの対応表も添付する予定です。

CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレートをご購入後、ベアメタル開発経験者が、RTOSプロジェクトとベアメタルプロジェクトの比較・評価がスグに始められる構成です。※比較・評価は、ご購入者ご自身で行ってください。

STM32メインストリームMCU比較(出展:STマイクロエレクトロニクスに加筆)
STM32メインストリームMCU比較(出展:STマイクロエレクトロニクスに加筆)

CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレート動作環境は、メインストリームMCUのSTM32G4評価ボード:NUCLEO-G474RE(Cortex-M4/170MHz、Flash/512KB、RAM/96KB)とHAL APIを用います。

STM32G4は、高性能で汎用性とIoT MCU基本的セキュティ機能を備え、RTOSテンプレートのターゲットIoT MCUとして最適です。

STM32G4のセキュリティ機能を示したのが下図です。

STM32G0とG4のセキュリティ対応(出展:STM32 Security対応表に加筆)
STM32G0とG4のセキュリティ対応(出展:STM32 Security対応表に加筆)

また、STM32G4の汎用性、他MCUへの開発ソフトウェア流用性の広さを示したのが下図です(詳細は、コチラの関連投稿3章を参照してください)。

NUCLEO-G474RE搭載のSTM32G474RETx Compatible MCU List。2021年8月時点で98MCU!
NUCLEO-G474RE搭載のSTM32G474RETx Compatible MCU List。2021年8月時点で98MCU!

NUCLEO-G474RE評価ボードの他には、ArduinoプロトタイプシールドとBaseboardを用います。

つまり、販売中のNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレート評価ボード:LPCXpresso54114が、STマイクロエレクトロニクスNUCLEO-G474REにのみ変化した構成です。

CMSIS-RTOS動作もNXP版と同様、Hardware Independent FreeRTOS Exampleを基としますので、(両テンプレートをご購入頂ければ)STMとNXPのRTOSアプリケーション開発の直接比較なども可能です。

STM版CMSIS-RTOSアプリケーションテンプレートのリリースは、今秋のWindows 10 21H2更新後(Windows 11リリース後かも?)を予定しております。時間的に少し余裕がありますので、Cypress版PSoC 6ディアルコア対応FreeRTOSアプリケーションテンプレートも同時リリースできればBestだと考えています。

補足:③ソフトウェア資産への備え

ベアメタル開発でもソフトウェア規模が大きくなると、開発者が悩む点は、複数処理の待ち合わせ/制御順序です。対策は、処理を細かく分割し、優先度を考慮しつつ順次処理を行うのが常套手段です。

ところが、RTOSを使うと、この面倒な待ち処理や制御順序を、RTOSがタスク優先順位に応じて処理します。しかも、処理分割も、RTOSがTICK_RATE_HZ単位で勝手(!?)に行ってくれます😀。

RTOSにより、タスク数やTICK_RATE_HZ、最大優先順位に応じたスタックを大量に利用しますのでRAM使用量の増加、RTOS自身のオーバーヘッドなど副作用も生じますが、「タスク記述は、超簡単」になります。

初期設定と無限ループ、ループ内のRTOS待ち手段、優先順位を検討すれば、文字通り単一処理タスクを開発し、マルチタスク化はRTOSに任せます。

※ベアメタル開発経験者は、セマフォ、Queue、Mutex、イベントグループなどのRTOS待ち手段を、上記実現のためのAPIと捉えると、RTOS理解が早くなります。
※上記手法を使うと、ベアメタルサンプルプログラムもそのままRTOSへ組込めます。
※最も難しそうなのが優先順位検討ですが、ソース上で簡単に変更できます。
※RTOSマルチタスク処理を100%信頼した上での筆者感想です。

Cortex-M4コアでRTOSが使えMCUのFlash/RAMに余裕があれば、ベアメタル開発よりもRTOS開発の方が効率的に開発できると思います。また、この環境で開発したソフトウェアは、資産として別のRTOS開発へも使えるので個人ソフトウェア資産化も可能です。

上記は、RTOSの筆者感想です。弊社RTOSアプリケーションテンプレートをご購入頂き、各開発者でRTOSに対する独自感想を抱き、短期で効率的にRTOS開発経験とスキルを磨いて頂ければ幸いです。

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STM32MCUでRTOS開発を行う時の3注意点、前編のSTM32CubeMX、HALに続き、本稿後編でCMSIS-RTOS関連を示します。

※木曜からの東京オリンピック4連休のため、通常金曜を本日水曜日に先行して投稿します。

前編は、STM32RTOS開発実例として、NUCLEO-G474RE FreeRTOS_QueuesサンプルプロジェクトのSTM32CubeMX(以下CubeMX)コード出力を使い、HALタイムベース変更の必要性を示しました。後編は、前編と同じ実例を使ってCMSIS-RTOSの注意点を示します。

FreeRTOS_Queues STM32CubeMXファイルのTasks and Queues

NUCLEO-G474RE FreeRTOS_QueuesサンプルプロジェクトのCubeMX構成ファイル:FreeRTOS_Queues.icoを開き、Middleware>FREERTOSのTasks and Queuesタブをクリックしたのが下図です。

FreeRTOS_QueuesのSTM32CubeMXファイルTasks and Queues
FreeRTOS_QueuesのSTM32CubeMXファイルTasks and Queues

2つのタスク:MessageQueuePro(Qプロデューサ:送信タスク)とMessageQueueCon(Qコンシューマ:受信タスク)と、1つのQ:osQueue(深さ1:ワード)を、CubeMXで自動生成するパラメタが設定済みです。関連投稿:NXP版FreeRTOSのQueueデータ送受信と同じです。

全て黒文字パラメタですので、変更も可能ですが、このままソースコードを自動生成(Alt+K)してください。

CMSIS-RTOS APIからFreeRTOS API変換(wrapper)

CMSIS-RTOS APIからFreeRTOS API変換
CMSIS-RTOS APIからFreeRTOS API変換

main.cのL125に、osQueueを生成するAPI:osMessageCreateが自動生成済みです。また、L134とL138に、MessageQueueProとMessageQueueConのタスク(Thread)を生成するAPI:osThreadCreateも自動生成済みなのが判ります。

ここで、API先頭にosが付くのは、CMSIS-RTOSのAPIだからです(L145のosKernelStartも同様)。詳細は、次章で説明します。

さて、L125のosMessageCreateへカーソル移動し、F3をクリックすると、cmsis-os.cのL1040へジャンプし、CMSIS-RTOS APIのosMessageCreateの中身が見えます。その中身が、L1055のxQueueCreateで、これはFreeRTOSのAPIです。

つまり、CubeMXが自動生成したのは、CMSIS-RTOS APIですが、その実体は、FreeRTOS APIであることが判ります。
この例のように、CubeMXが生成したCMSIS-RTOS APIは、cmsis_os.cで全てFreeRTOS APIへ変換されます。

CMSIS-RTOS

CMSIS-RTOSは、Cortex-Mコア開発元ARM社が定めたRTOS APIの規格です。
※CMSIS:Cortex Microcontroller Software Interface Standard

Cortex-Mコアには、FreeRTOS/Azure RTOS/mbed OSなど様々なRTOSが使えます。下層のRTOSが変わるとAPIも変わりますが、そのAPIを変換し、上層アプリケーションへ共通なRTOS APIを提供する、これにより、

  1. RTOSが異なっても、同じ開発アプリケーションが使えること
  2. Cortex-Mコアが異なっても、開発アプリケーション移植を容易にすること

これらがCMSIS-RTOSの目的です。

これをラップ(wrap=…を包む)と呼ぶことがあります。ラップ関数(wrapper)とは、下層API差を隠蔽し、上層アプリケーションへ同一APIを提供する関数のことです。STM32RTOS開発でのCubeMXの役目の1つは、使用するRTOSに応じたwrapperを提供することです。

現在、STM32RTOS開発のCubeMXがラップしているのは、FreeRTOSだけです。今後、FreeRTOSがAzure RTOSなどへ変わっても、開発アプリケーションをそのまま活用するために、今の時点からCMSIS-RTOS APIを使っている訳です。

Cortex-M0/M0+/M3/M4/M7コア向けの共通RTOS APIがCMSIS V1、Cortex-A5/A7/A9と全Cortex-Mコア向けの共通RTOS APIがCMSIS V2です。STM32RTOS開発では、CMSIS V1を用います。

CMSIS-RTOS とFreeRTOSのAPI

UM1722にCMSIS-RTOS APIとFreeRTOS APIの一覧が示されています。抜粋したのが下表です。

FreeRTOSとCMSIS-RTOSのAPI
FreeRTOSとCMSIS-RTOSのAPI

接頭語にx/vなどが付くのがFreeRTOS API、osが付くのがCMSIS-RTOS APIです。

CubeMXが生成するコードは、常にCMSIS-RTOS APIですが、実体はFreeRTOS APIです。FreeRTOSが別のRTOSへ変わっても、CMSIS-RTOS APIは同じです。CMSIS-RTOS APIとFreeRTOS APIのwrapper分のオーバーヘッドは生じますが、下層RTOSに依存しない点は、先進的で優れています。

なおUM1722 Rev3には、単にAPI列記とwrapper、RTOSサンプルプロジェクトの簡単な説明が記載されているだけです。

まとめ

STM32MCUでRTOS開発を行う時の3注意点(前編:STM32CubeMX、HAL)に続き、本稿後編で3つ目のCMSIS-RTOSを示しました。

STM32RTOS開発のSTM32CubeMXが扱うRTOSは、現在FreeRTOSだけです。FreeRTOSが別のRTOSへ変わっても、CubeMXは、開発アプリケーション流用性を高めるためにFreeRTOS APIの代わりにRTOS共通CMSIS-RTOS APIを出力します。

CMSIS-RTOS APIには、Cortex-M0/M0+/M3/M4/M7コア間で開発アプリケーション移植性が高いCMSIS V1を使います。

CMSIS-RTOS API変換オーバーヘッドがありますが、流用性、移植性に優れたRTOSアプリケーション開発ができる点は、優れています。

あとがき

残念ながらCMSIS-RTOS情報は、シェア1位AWSのFreeRTOSに比べ少なく、この少ない情報を使ってSTM32RTOS開発を行うのは、大変です。
※2位がAzureのAzure RTOS、3位がGCP(Google Cloud Platform)のmbed OS。関連投稿はコチラ

例えば、最初の図:CubeMXのTasks and QueuesのGUI設定パラメタが多いにもかかわらず、UM1722サンプルプロジェクト説明が少ない点などです。

RTOSは、複数タスク(CMSIS-RTOSではThread)間の優先順位差とRTOS自身の動作により、開発タスク処理状態が変わります。ベアメタル視点に加え、RTOS視点でのタスク開発と経験が求められます。QueueなどRTOS単独手段理解が目的のサンプルプロジェクトだけでは、RTOS開発経験は積めません。

弊社はこれらの対策として、効率的なRTOS基礎固め、STM32RTOSアプリケーションのプロトタイプ開発早期着手を目的としたSTM版RTOSアプリケーションテンプレート(仮名)を検討中です。その構想は、固まり次第、別稿にて示す予定です。

なお、NXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、コチラで販売中です。

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STマイクロエレクトロニクス)STM32MCUを使ってRTOS開発時のSTM32CubeMX、HAL、CMSIS RTOSの3注意点について示します。前編が、STM32CubeMXとHALについてです。CMSIS RTOSは、別途後編で示します。

STM32CubeMXとHAL の注意点を解説した後、サンプルプロジェクトで実例を示すという順番で説明します。

ソースコード生成ツール:STM32CubeMX

STマイクロのソースコード生成ツール:STM32CubeMX(以下CubeMX)は、MCU内蔵周辺回路の初期設定やAPIを、GUIベースで自動生成する非常に便利なツールです。

※MCUベンダのAPI生成ツールを比較した関連投稿は、コチラをご覧ください。

CubeMX生成APIは、ハードウェアを抽象化し、STM32MCU間で最大限の高いソフトウェア移植性を狙ったHAL (Hardware Abstraction Layer)と、よりハードウェアに近くHALよりも高速・軽量なエキスパート向けLL(Low-layer)の2種類から選択可能です。

HALとLL比較(出典:STM32 Embedded Software Overvire)
HALとLL比較(※説明のため着色しています。出典:STM32 Embedded Software Overvire)

一般的に、HAL APIが好まれます。というのは、このLL APIを利用し開発した2019年6月発売のSTM32G0xテンプレートV1の売上げはゼロでした。対策に、LL APIからHAL APIに変更し再開発した2020年6月発売のSTM32G0xテンプレートV2は、人気があるからです。

これらCubeMXの各種GUI設定や選択APIは、CubeMXファイル(.ico)に構成ファイルとして纏められます。

STM32MCU新規プロジェクト開発時に、この既成CubeMXファイル(.ico)を利用すると、ゼロから着手するのに比べ、効率的かつ間違いなく周辺回路や初期設定ができるため、利用価値の高いファイルです。

特に、ベアメタル比、さらに多くのCubeMX設定が必要となるRTOS開発では、既成CubeMXファイルを再利用するメリットがより高まります。同時に、生成コードの意味も理解しておく必要があります。

HALタイムベース

HALには、他ベンダにない便利なAPI:HAL_Delayがあります。

例えば、10msの待ち処理を行う場合、他ベンダなら、MCUコア速度に応じて適当にループ回数を調整したループ処理で10ms相当の遅延を自作します。しかし、HAL APIならば、HAL_Delay(10)の記述だけで、MCUコア速度に依存しない正確な10ms遅延が実現できます。

これは、HAL自身が、MCU内蔵タイマ:SysTickの利用を前提に設計されているからです。遅延処理を例に説明しましたが、STM32のHAL APIsは、SysTickと強く結びついています。

もちろん、HAL APIをベアメタル開発で利用する場合は、この結びつきに何ら問題はありません。

RTOSタイムベース

FreeRTOSも、タスク(スレッド)状態遷移タイムベースに、SysTickを使います。

これは、FreeRTOSだけでなく他のRTOSでも同じです。SysTickは、その名称が示すようにMCUシステムレベルのタイムベース専用タイマです。

従って、STM32MCUでRTOS開発を行い、かつHAL APIを利用する場合には、RTOS側でSysTickを使うのが、名称に基づいた本来の使い方です。

HALタイムベース変更

そこで、STM32RTOS開発でHAL利用の場合は、HALのタイムベースを、デフォルト使用のSysTickから別のタイマへ変更する必要が生じます。この変更に伴う手動設定も当然必要となります。

*  *  *

ここまでが、STM32RTOS開発におけるSTM32CubeMXとHALに関する注意点です。
これらの注意点が解っていると、次章で示すRTOSサンプルプロジェクトのCubeMXファイルの意味と生成コードが理解できます。

STM32RTOS開発実例

STM32RTOS開発実例に、評価ボード:NUCLEO-G474RE(Cortex-M4/170MHz、Flash/512KB、RAM/96KB)でRTOS開発する場合を示します。

NUCLEO-G071RB(Cortex-M0+/64MHz、Flash/128KB、RAM/32KB)でRTOS開発する時でも同様です。しかも、RTOSサンプルプロジェクトは、STM32G071RBの方が(発売が古いためか?)多いので、NUCLEO-G071RBをお持ちの方は、是非ご自身で試してみてください。

FreeRTOS Example Selector

STM32CubeIDEのFile>STM32 Projectで、新規プロジェクト作成パネルを表示します(最新情報更新のため、表示に少し時間がかかる場合があります)。Example Selectorタブを選択、Middleware>FreeRTOSにチェックを入れ、NUCLEO-G474REのFreeRTOS_Queuesを選択したのが下図です。

NUCLEO-G474REのFreeRTOS_Queues
NUCLEO-G474REのFreeRTOS_Queues

右上欄、Noteの内容が、前半までに示した注意点のことです。参照先UM1722 Rev3は、CMSIS RTOSとFreeRTOSの関係があるのみです。このCMSIS RTOSについては、別途後編で説明します。

Nextをクリックし、FreeRTOS_Queuesサンプルプロジェクトを新規作成します。

さて、FreeRTOS Examples Listが318アイテム(STM32CubeIDE v1.6.1時)もあるので、Exportをクリックし、出力されたExcelファイルをBoardでフィルタリング、NUCLEO-G071RBとNUCLEO-G474REを抽出したのが下図です。

FreeRTOS Example List
FreeRTOS Example List

緑に色付けしたNUCLEO-G071RBの方が、FreeRTOSサンプルプロジェクト数が多いことが判ります。開発予定のSTM版FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、Cortex-M4コアが対象ですので、本稿ではNUCLEO-G474REのFreeRTOS_Queuesを実例として使いました。

FreeRTOS_QueuesのSTM32CubeMXファイル

FreeRTOS_QueuesサンプルプロジェクトのCubeMX構成ファイル:FreeRTOS_Queues.icoが下図です。グレー文字は変更不可、黒文字は変更可能を示します。

FreeRTOS_Queues.ico
FreeRTOS_Queues.ico

TIM6がグレーなのは、HALタイムベース変更先がTIM6だからです。Kernel settings CPU CLOCK HZのSystemCoreClockがグレーなのは、RTOSタイムベースがSysTickだからです。つまり、本来の名称に基づいたSysTickがRTOS側で使われ、HALの新タイムベースにTIM6が割当済みであることが解ります。

FreeRTOS APIは、変更不可のグレーCMSIS V1です。ここは、後編で説明します。

デフォルトDisabledのUSE IDEL HOOKを、Enabledに変更し、ソースコード自動生成のGenerate Code(Alt+K)を実行してください。

HALタイムベースTIM6変更結果

FreeRTOS_QueseのTIM6とHook関数
FreeRTOS_QueseのTIM6とHook関数

app_freertos.cのL62に、Hook関数:vApplicationIdleHoolのひな型が自動生成済みです。ここへWFIを追記すれば、FreeRTOSアイドル時に低電力動作ができます。コチラのNXP版関連投稿Step5: FreeRTOS低電力動作追記と同じです。

main.cのL289は、TIM6満了時動作です。HAL_IncTick()が自動生成済みです。ベアメタル開発のSysTickからTIM6へHALタイムベースが変更されたことが解ります。

そのTIM6は、stm32g4xx_hal_timebase_tim.cで、1MHz=1ms満了に初期設定済みです。

つまり、STM32RTOS開発でHAL利用時に必要となる変更が、「全てCubeMXで自動生成済み」なのが解ります。

※上図は、USE_TICK_HOOKもEnabledへ変更した例です。Disabledへ戻すなどして、CubeMX自動生成ファイルが変化することを確かめてください。

この実例のように、CubeMX付属RTOSサンプルプロジェクトのCubeMXファイル(*.ico)を再利用すれば、周辺回路や初期設定ミスを防ぎ、RTOS新規アプリケーション開発が容易になることが解ります。

まとめ

STM32MCUでRTOS開発を行う時の3注意点、STM32CubeMX、HAL、CMSIS RTOSのうち、前編としてSTM32CubeMX、HALの2注意点とサンプルプロジェクトを使ってその実例を示しました。

RTOS開発では、既成STM32CubeMXファイル再利用価値が高まること、HALタイムベース変更の必要性がご理解頂けたと思います。3つ目のCMSIS RTOS関連は後編で示します。

あとがき

ベアメタル開発経験者であっても、STM32RTOS開発時、CubeMXのNoteを読むだけで、ベアメタル開発では何の問題も無かったHAL タイムベース変更理由が解り、その結果生じるCubeMXファイルや自動生成ソースコードの中身が理解できる方は、少ないと思います。本稿は、この変更理由と生成コードに説明を加えました。

STM32CubeMXは、STM32MCU開発に必須で強力なAPI生成ツールです。が、時々、説明不足を感じます。問題は、どのレベル読者を相手にするかです。エキスパートなら説明不要ですが、初心者ならゼロから説明しても解らないかもしれません。文章による組込み技術説明が、難しいのが根本原因でしょう😂。

そんな組込み開発ですが、文章だけでなく、「実際に評価ボードと手足を使って慣れてくると、案外すんなり簡単に理解、習得できる方が多いのも組込み開発」です。

販売中のNXP版FreeRTOSアプリケーションテンプレートにも、本稿同様、詳しいFreeRTOS解説を付けています(一部ダウンロード可能)。FreeRTOS開発を手軽に試せ、習得を支援するツールです。