広範囲IoT向け無線規格「LPWA」

IoT向け無線規格「LPWA」の全貌の記事2つを紹介します。LPWAとは、Low Power Wide Areaの略で、マイコン:MCUとIoT向けコンピュータ:MPU/SBC間通信ではメジャーなBluetoothなどの近距離無線に対して、より広い範囲のIoT向けの通信規格のことです。

1つ目が、IoT向け通信に価格破壊をもたらす「LPWA」、2つ目が、いよいよ日本上陸、LPWAの最有力候補「LoRaWAN」の実力は?です。通信コストとオープン仕様というキーワードが登場します。

低電力な長距離通信技術:LPWA

BluetoothとLPWAとの違いを示すのが、1つ目記事より抜粋した下図です。3GやLTE技術で問題となる通信コストや初期投資を抑える新技術がLPWAで、低速かつ一回の通信量も数10バイト程度に抑えて、バッテリー消費量を数年または10年以上も可能とするのを目標としています。

Bluetooth(BLE)とLPWAの違い
Bluetooth(BLE)とLPWAの違い(記事より抜粋)

低通信コスト

主なLPWA技術が下表です。SIGFOXは、フランスやスペインなどで、1回線あたり年間1ドルで既にサービス開始済みで、800万回線契約があるそうです。LoRaWANは、韓国SKテレコムが日本円換算月額32円で提供中です。

主なLPWA技術
主なLPWA技術(記事より抜粋)

オープン仕様

これらLPWAは、キャリアの提供サービスです。日本では、LoRaWANが最有力候補だそうです。その理由は、Wi-Fiのように誰もがその技術を利用しサービスを提供できるオープンな仕様と、免許不要帯の利用にあります。

日本国内LoRaWANフィールドテストの結果、 6㎞程度の最大伝送距離と、20~30km/h以下の低速移動体通信が確認できたようです。

オープンイノベーション

デファクトスタンダードやオープン仕様は、マイコン:MCU開発にとっても無視できません。マイコンで産み出す機能実現とその維持のために、低コストや代替デバイスの検討も無視できないからです。

マイコン開発者自身の意識も、このオープン仕様の流れに沿う必要があるのかもしれません。オープンイノベーション白書が無料でダウンロードできますので、意識改革の手始めに目を通すのも良いと思います。

RL78/G1xテンプレートのCコンパイラパッケージリビジョンアップ対応状況

2016年7月16日号RUNESAS TOOL NEWSで、RL78ファミリ用CコンパイラパッケージV1.03.00のリビジョンアップが通知されました。7月21日からCS+アップデートの確認、または、アップデート・マネジャーで更新可能です。

弊社RL78/G1xテンプレートは、2015年7月4日にRL78-S1/S2/S3コア全てに対応のVer5を発売して以降、変更を加えていません。そこで、RL78/G1xテンプレートVer5の上記CコンパイラV1.03.00対応状況を報告します。

CS+出力パネル

アップデート・マネジャーでCコンパイラアップデートを実行後、最初にCS+を起動すると、警告(W0202005)ダイアログが表示されますのでOKをクリックします。この警告は、更新など何らかの変更がCS+に加わった時に注意喚起を促すダイアログで、出力パネルに下記のような詳細内容が表示されます。

CS+出力パネル警告
CS+出力パネル警告

青字が変更箇所です。黒字は、お使いの環境設定により異なりますので、無視してください。

さて、今回のCコンパイラリビジョンアップで、RL78/G1xテンプレートVer5を再コンパイルします。方法は、ビルド(B)>クリーン・プロジェクト(C)を実行後、リビルド・プロジェクト(R)を実行します。出力パネルに下記結果が表示されます。

CS+出力パネル0エラー
CS+出力パネル0エラー

私のCS+は、評価版インストール後かなり経過していますので評価期間切れの警告が表示されますが、無視してください。

0エラーですので、今回のCコンパイラパッケージリビジョンアップに対して、RL78/G1xテンプレート付属の下記6プロジェクトに対して問題なく動作します。動作確認評価ボードは、コチラに一覧写真があります。

RL78/G1xテンプレートVer5のプロジェクトとRL78コア、評価ボード
CS+プロジェクト名 RL78対応コア 動作確認評価ボード
BB-RL78G13-64(プロジェクト) RL78-S2コア BlueBoard-RL78G13-64
RL78G13-PB(サブプロジェクト) RL78-S2コア G13スタータキット:RL78G13-Stick
RL78G14-PB(サブプロジェクト) RL78-S3コア G14スタータキット:RL78G14-Stick
QB-R5F100LE-TB(サブプロジェクト) RL78-S2コア QB-R5F100LE-TB
QB-R5F104LE-TB(サブプロジェクト) RL78-S3コア QB-R5F104LE-TB
QB-R5F10Y16-TB(サブプロジェクト) RL78-S1コア QB-R5F10Y16-TB

プロジェクト内容やマイコンテンプレート概要等は、マイコンテンプレートサイトからPDFダウンロードができますので参照ください。

ソフトバンク、ARM買収を発表

ソフトバンクは、IoT戦略の加速を目的に、英ARM株式100%取得し買収することを発表しました。

9月30日までに買収完了予定です。IoTデバイス開発の関係者にとってはサプライズニュースです。

テクノロジーのパラダイムシフト

ソフトバンク発表資料(免責事項にふれる可能性があるため非掲載)によると、現在のモバイルインターネットの次のパラダイムシフトはIoTです。また、ARMベースSoC:System on Chipの出荷台数は、148億個(2015年)で、未だに発展段階の成長を続けていることが解ります。

ARM Cortex-M0/M0+を用いる本ブログ対象の組込用途マイコン:MCUや、IoTコンピュータ:MPU/SBCなどの2020年市場予測も掲載されています。今後Cortex-M0/M0+の採用を検討されている開発者の方々にも有用な情報です。

SoftBank+ARM

組込の世界では、実質ルネサスのみであった日本プレーヤーに、株主とはいえソフトバンクが参加することは、日本人として少し嬉しい気がします。
しかし、孫社長の後継者問題、英国EU離脱のARM陣営への財務基盤強化などが、今後IoT、特にMCU分野にどう影響するかは、要注意でしょう。

SoftBank携帯で、IoT MCUソフトウエア開発を行う状況が来るかもしれません。

新WordPressテーマ

WordPressテーマ変更が完了しました。従来テーマに慣れていた方のために、簡単に使い方を説明いたします。

マイコンテンプレートサイトとブログメニューの分離

本ブログは、「日々変動するIoTデバイス関連の内容を中心」に、時系列で記載、整理し、まとめます。

このまとめた結果を、各社マイコンのソフトウエア作りに反映し、各社毎のマイコンテンプレートとして開発、各¥1000で販売します。この「まとめた結果とマイコンテンプレート」を説明するのがマイコンテンプレートサイトです。

以前のWordPressテーマは、マイコンテンプレートサイトとブログを一体化してメニューにしておりました。

新しいテーマでは、ブログのメニューとマイコンテンプレートサイトのメニューが、下図のように2つに分かれています。

新テーマの2メニュー
新テーマメニューは、マイコンテンプレートとブログでメニュー分離

ブログを読んで弊社マイコンテンプレートに興味を持って頂いた方は、マイコンテンプレートサイトのメニューを活用してテンプレートへもアクセスしてください。

※新テーマは、レスポンシブ対応ですので、ブログのメニュー表示は、表示画面サイズに応じて変わります。一方、マイコンテンプレートサイトのQuick Linksメニューは、常時画面最上位に表示されます。

IoT無線規格「Z-Wave」

欧米のホームセキュリティと室内温度コントロール、ホテルなどで実績があり普及が進むIoT無線規格が「Z-Wave」です。Z-Waveの国内動向記事によると、2015年のZ-Wave認証製品の累計出荷台数は6000万デバイス超、2016年には1億デバイス出荷が確実だそうです。

日本では未知な部分が多いIoTを、実サービスへ適用した例と、その出荷台数がインパクトある内容ですので、記事要旨を示します。

BLEの課題とZ-Waveの対策

  1. Wi-Fi環境下での干渉
  2. 石造りの家庭が多い欧州では、減衰が多い
  3. 通信距離が最大7~10m程度と短い
  4. 端末の増設に弱い

スマホ等で普及しているIoT無線通信の1つBLE:Bluetooth Low Energyの上記4課題に対して、Z-Waveは、これら課題を解決する下記特徴を備えているそうです。

  1. Wi-Fiとの干渉に強い
  2. 150m四方の通信距離
  3. 最大232個の端末増設が容易
  4. 低消費電力でバッテリー駆動の完全互換センサに数多く採用中

記事より抜粋したZ-Waveと他のIoT無線規格の比較を示します。

Z-Waveと他IoT無線規格の比較
Z-Waveと他IoT無線規格の比較(記事より抜粋)

日本国内でZ-Wave普及が遅れる理由

利用できる周波数解禁が海外比10年以上遅れていること、スマホによる家電や照明操作が電気用品安全法により規制されていること、火災警報器の厳しい基準などが原因だそうです。

また、欧米スマートホームのスタイルをそのまま導入できない日本の治安の良さも一因だそうです。

メッシュ網

技術解説記事によると、端末識別のためにMACヘッダにユニークなIDを付与することで232個までノードに対してメッシュ網を構成するそうです。

Z-Wave Singlecast
Z-Wave Singlecast(記事より抜粋)
Z-Wave Multicast
Z-Wave Multicast(記事より抜粋)

Z-Waveデバイスと評価キット

Z-Waveを制御するデバイス開発元の米Sigma-Design製評価キットは、欧州、米国、日本向けに用意されています。

日本でも医療/介護の分野で普及する可能性があるので要注意のIoT無線規格だと思います。MCUとMPU/SCB間の無線規格一覧ページへZ-Waveを追加し、今後も注視します。

WordPressテーマ変更

使用中のWordPressテーマが、テーマディレクトリから削除されました。削除理由は、私には良く解りませんが、テーマ作者が管理者との交渉の末の決定ですので、尊重いたします。

現行版は、殆どのカスタマイズがGUIででき、気に入っていただけにとても残念です。

そこで、現行版と違和感が少ない代替テーマを探しています。
個人的には、レスポンシブレイアウトなどは好まないのですが、今はほぼ全てのテーマがレスポンシブ対応です。また、私がカスタマイズしたい内容に対して、直接ソースコードを変えなければならないなど結構手間暇がかかります。

近日中に本ブログにアクセスされた時に、異なるフォームが表示されるかもしれませんが、より良く分かりやすいブログを心掛けて代替テーマへ変更しますので、ご安心ください。

IoTマイコン無線規格

6月の本ブログは、ThreadやBluetooth 5など、マイコン:MCUとIoTコンピュータ:MPU/SCB間の無線通信規格に関する記載が多くなりました。モノをインターネットへ接続するIoTの要となる無線インタフェースが、今変動中であることが解ります。

私は、コスト重視のMCUは、最終的にはどれか1つの規格(Threadが良いと思います)になり、カバー範囲重視のMPU/SBCは、複数規格(Wi-Fiは必須で、BluetoothやThread…)を実装すると思います。

このMCUとMPU/SCB間の無線規格の現状を考えた面白い記事を見つけたので紹介します。

IPアドレスとの親和性

記事によると、無線規格の要件として、よく言われる低消費電力動作の必要性以外にも、既に出来上がったWi-Fi世界との親和性が重要だとしています。IEEEでもこの線に沿った「Wi-Fi Halow」と「Passive Wi-Fi」規格検討が進んでいるそうです。

かつて私も有線通信:ATMの研究開発にたずさわったので多少解りますが、IEEE(アイトリプルイー)の規格化が済むと、直ぐに商用製品が発売され、Businessに裏打ちされた規格が開発される場、それがIEEEです。そして、MCUとMPU/SCB間の無線技術を含む多くの通信課題が解決される場でもあります。

確かに、IPアドレスとの親和性が高いと、NIC: Network Interface Cardのハードやソフトが流用でき、これらを実装したMCUでのパケット化処理(UART over IP)も簡単になるかもしれません。

MCUとMPU/SCB間の無線技術

UART、つまりSCIを実装しないMCUはありません。
SCI入出力を簡単に無線化できるソフト/ハード技術、これがIoT MCU無線規格の本命になると思います。今日時点の内容は以下ですが、この技術の一覧表を固定ページに追加しました。固定ページは、適宜、内容を更新します。

IoT MCU Wireless Specifications
無線規格 特徴 備考
Bluetooth 4.2 128ビットAES対応など従来比セキュア機能拡張 スマホへ普及中
Bluetooth 5 4.2比通信速度、通信距離、ブロードキャスト容量拡大 2017年初めリリース予定
Thread メッシュ網構成
Wi-Fi Halow Wi-Fiとの親和性高く、室内外40m、屋外1㎞通信 IEEE 802.11ah
Passive Wi-Fi IEEE 802.bベース、超低消費電力(電池駆動10年)目標

 

Bluetooth 5仕様

6月18日記載のBluetooth 5の仕様が記事になり、内容を一覧表にしてみました。

Bluetooth 5 Specification
項目 Bluetooth 5仕様 備考
通信モード 2Mbps 最大100m(100mW出力) 従来バージョンと後方互換、2Mbpsを追加
1Mbps
125Kbps 最大400m(100mW出力) 従来比4倍の通信距離
通信範囲 メッシュ機能リリース予定 従来Bluetooth 4.2などもメッシュ利用可
消費電力 従来と同等 2Mbpsなら従来比短時間通信のため低消費電力
ブロードキャスト機能 最大255文字 URL送信可能(従来31文字)

 

Threadと同様、一軒の家の範囲をくまなくカバーする「メッシュ網」と、2020年に450億台と予想されるIoT機器のうち、3分の1の140億台のIoT機器への搭載を目標にしているそうです。

Atom新規開発中止とPSoCアナログ特化製品追加

IntelがAtomプロセサの新規開発を中止すると発表しました。
Cypressは、アナログ制御に特化したPSoC 4ベース新製品投入を発表しました。
所感を記載します。

Atom新規開発中止

Surface 3やEdisonなどの既存Atomを使った製品の今後も怪しくなってきますね。Galileoは Pentiumを使ったSoC: System on Chipなのでとりあえず安心ですが…。

少品種大量生産が 半導体メーカーのビジネスモデルなので、マッチしない製品群は、開発停止というユーザにとっては避けてほしいオプションが常に付きまといます。

マイコン開発者にとって、「代替品が可能なデバイス」に魅力を感じるのは、この最悪オプションのためです。

これはIntelの話でしたが、日本メーカー競争力と継続性強化のための方策についてコチラに興味深い記事があります。

PSoCアナログ特化新製品追加

一方Cypressは、Spansion買収で得たCortex-M0+ライセンスを使ったPSoC 4に、オペアンプやコンパレータ、アナログ・マルチプレクサなどのアナログに特化したプログラマブルアナログブロックを統合したPSoC Analog Coprocessor(Cy8C4Axx)新製品を追加しました。

コプロセサ化により、センサの変更を、ホストプロセサソフトへ及ぼさずに短時間でプロトタイピング開発できるメリットがあります。

PSoC Analog Coprocessor Merit
PSoC Analog Coprocessor Merit(記事より抜粋)

モーション、照度、湿度、近接センサ、サーミスタなど搭載の評価ボードCY8CKIT-048を使うと、アナログ・フロント・エンド(AFE)がPSoC Creatorで開発できるので、一般的に40時間かかる方法と比べ4時間で開発できるそうです。「1週間のスケジュールを、半日でできる!」、夢のようです。

無線通信規格の変更容易なコプロセサ化

評価ボードにはArduinoシールドコネクタも実装済みなので、Raspberry Pi 3などのIoTコンピュータ:MPU/SBCに直接搭載も可能でしょう。

また、対ホストプロセサ通信には、UARTが使えます。ここにUART over BLEやUART over Threadの適用が予想できます。

MCUとMPU/SBC間の無線通信規格が流動的な現状では、このアナログコプロセサ機能配分も適していると思います。CY8CKIT-042搭載のBLE 4.1がBLE 4.2に簡単に変更できたように、無線規格変更に対して柔軟に対応できるからです。

Bluetooth 5 2017年初頭リリース予定

住宅全体、ビル全体、屋外での利用も可能なBluetooth 5が2016年末~2017年初頭にリリースされる予定だそうです。

前回のThread記事で書いたように、現行版Bluetoothがスマホとウエラブルデバイス間に適しているのを、通信到達距離を4倍、通信速度を2倍にし、しかも現行版と同じ低消費電力で実現するのがBluetooth 5です。

メッシュのThreadと、スターのBluetoothの違いがありますが、どちらも狙いはIoTエンドポイントのマイコンへの普及です。

より軽く「UART over Bluetooth」または「UART over Thread」を実装できる方が望まれると思います。マイコン:MCUにとって、デバッグの容易さから、UARTは消えゆくレガシー周辺回路ではなく必須回路と考えるからです。

一方、現在のIoTコンピュータ:MPU/SBC側の対MCU通信インタフェースはBluetoothです。こちらにその理由と、ネットワーク構成を示します。
ThreadとBluetooth 5の普及状況に応じてMPU/SBCでは、両サポートになりえます。