IoT MCUコア次世代像

PCのCPUは、IntelとAMDの2社が独占状態でした。しかし、AppleがARMベースの新CPU:M1を発表し、そのコストパフォーマンスは、Intel/AMDの3倍(!)とも言われます(記事:「ソフト技術者もうなるApple「M1」の実力、新アプリに道」や、「Apple M1の実力を新世代のIntel/AMD CPUと比較」など)。

本稿は、これらPC CPUコアの現状から、次世代IoT MCUコアの3層構造と筆者希望的観測を示します。

CPUコア:Apple/Intel/AMD

筆者が学生だった頃は、マシン語のPCソフトウェアもありました。CPUコア性能が低いため、ユーザ要求を満たすアプリケーション開発には、ソフトウェア流用性や開発性を無視したマシン語開発もやむを得ない状況でした。

現在のCPUコア性能は、重たいGUIやネットワーク処理を複数こなしても、ユーザ要求を満たし、かつ流用性も高いC/C++などの高級言語でのアプリケーション開発が普通です。Appleは、この状況でIntel/AMDコストパフォーマンス比3倍のM1 CPUを開発しました。

このM1 CPUを使えば、従来CPUのボトルネックが解消できるために、より優れたGUIや新しいアプリケーションの開発が期待できます。

このM1実現の鍵は、5nmルールの製造技術と新しいCPU設計にあるようです。

MCUコア:ARM/Non ARM

MCUはARMコアとNon ARMコアがありますが、Non ARMコアのコストパフォーマンス比は、M1程ではありません。従って、主流はARM Cortex-M系シングルコア採用MCUで、事実上ARMコア独占状態です。開発言語はC言語でベアメタル開発、製造プロセスも数10nmと、いわば、数10年前のIntel独占CPUコアに近い状況です。

RISC-Vという新しいMCUコアも出てきましたが、まだ少数派でその性能も未知数です。Intel/AMD CPUと比較記事の最後に記載された「競争こそユーザの利益」には、MCU世界はなっていません。

ARMはコア設計図のみ提供し、デバイス実装はMCUベンダが担当します。従って、現状のMCU世界が続く場合には、MCU高速化は製造技術進化とマルチコア化が鍵です。

ARMは、エッジAIに向けたNPUを発表しました。独自MCUコアと付随する開発環境を提供でき、かつコストパフォーマンスがARMコアの数倍を実現できるMCUベンダが無い現状では、ARMの頑張りがIoT MCUを牽引すると思います。

NVIDIAによるARM買収が、今後のARM動向に及ぼす影響は気になる状況ではあります。

IoT MCUコア

MCUコアとCPUコアの一番の差は、ユーザ要求コストです。これは、同じコアのMCU製品に、内蔵周辺回路やFlash/RAM容量の異なる多くのデバイスをベンダが提供中であることからも解ります。ユーザは、MCUに対して無駄なコストは払いたくないのです。

つまり、MCUデバイスはアプリケーション専用製品、CPUデバイスは超汎用製品、ここが分岐点です。

IoT MCUには、エッジAI、セキュリティ、無線通信(5GやWi-Fi)などのIoT機能追加が必要です。これら機能を並列動作させる手段として、RTOSも期待されています。この状況対応に、MCUコアも高性能化やマルチコア化に進化しつつあります。

セキュリティや無線通信は、予め決まった仕様があり、これら対応の専用ライブラリがベンダより提供されます。但し、セキュリティは、コストに見合った様々なセキュリティレベルがあるのも特徴です。ソフトウェア技術者は、専用ライブラリのMCU実装には神経を使いますが、ライブラリ本体の変更などは求められません。この仕様が決まった部分を「IoT基本機能」と本稿では呼びます。

MCUソフトウェア開発者が注力すべきは、ユーザ要求に応じて開発するIoTアプリケーション部分です。この部分を、「IoT付加機能」と呼び、「IoT基本機能」と分けて考えます。

ユーザのアプリケーション専用MCU製品意識は、IoT MCUでも変わりません。例えば、IoT基本機能の無線機能は不要や、ユーザがコストに応じて取捨選択できるセキュリティレベルなどのIoT MCU製品構成になると思います。一方、IoT付加機能だけを実装するなら、現状のMCUでも実現可能です。

以上のことから、IoT MCUは3層構造になると思います。

IoT MCUコアの3層構造
IoT MCUコアの3層構造
機能 追記
Back End IoT MCU IoT基本機能+付加機能+分析結果表示 収集データ分析結果ビジュアル表示
IoT MCU IoT基本機能+付加機能 高性能、マルチコア、RTOS利用
Front End IoT MCU センサデータ収集などのIoT付加機能
最小限セキュリティ対策
収集データは上層へ有線送信
コスト最重視

最下層は、ユーザ要求アプリケーションを実装し、主にセンサからのデータを収集するFront End IoT MCUです。ここは、現状のARM/Non ARMコアMCUでも実現できIoT付加機能を実装する層です。デバイスコスト最重視なので、最小限のセキュリティ対策と収集データを有線、または無線モジュールなど経由で上位IoT MCUへ送信します。IoT MCUサブセット版になる可能性もあります。

中間層は、高度なセキュリティと市場に応じた無線通信、エッジAI機能などのIoT基本機能がフル実装できる高性能MCUコアやマルチコア、RTOS利用へ進化した層です。IoT付加機能も同時実装可能で、下層の複数Front End IoT MCUが収集したセンサデータを、まとめて上位Back End IoT MCUまたは、インターネット空間へ直接送信できます。製造技術進化とマルチコア化、ARM新コア(Cortex-M23/33/55など)が寄与し、IoT MCUの中心デバイスです。

最上層は、第2層のIoT MCU機能に加え、インターネット空間で収集データを分析・活用した結果をユーザへビジュアル表示する機能を追加した超高性能MCUコア活用層です。自動車のADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)のおかげでユーザへのビジュアル表示要求はより高度になります。このユーザ要求を満たす次世代の超高性能IoT MCU(またはMPU)が実現します。

最下層のFront End IoT MCUは、現状のCortex-M0+/M4コアで弊社テンプレート適用のMCUが生き残ってほしい、というのが筆者の希望的観測です。
それにしてもAppleのコスパ3倍M1、凄いです。iPhoneもそうですが、抜きん出た技術と経営能力、Jobs精神、健在ですね。

Windows 10 20H2更新方法

年2回のWindows 10大型更新、Windows 10最新バージョン20H2がリリースされました。Windows Updateを待たずにユーザ主体で最新のWindows 10大型更新を実行する方法と、そのメリット/デメリットを示します。

まとめ

準備 MediaCreationTool20H2.exeダウンロード 0.5時間
※Pro/64bitは8GBでOK
USB/DVDインストールメディア作成
旧Windows 10バックアップ(更新失敗リカバリ対策) ※環境依存で省略
更新 旧Windows 10起動状態で作成USBのsetup.exe実行 1~3時間(PC依存)
※この間クリック1回
新Windows 10へ引き継ぐもの選択後インストールクリック
新Windows 10の大型更新自動完了

旧Windows 10バージョン2004のアプリケーションとユーザデータの両方を保持したまま、新Windows 10バージョン20H2を上書きインストールする方法です。メリットとデメリットが以下です。

メリット いつ始まるか判らない新Windows 10大型更新をユーザ主体で開始
タイミングの良いバックアップを取るので、良いところからリカバリ
アプリとユーザデータ両方保持で、新Windows 10でも即開発継続
USBは複数PC更新に使え、新Windows 10トラブル回復ツールにもなる
デメリット レジストリはデフォルト値へ戻る。ユーザ変更時は再設定が必要。

Windows 10上書きインストール準備

Windows 10大型更新がリリースされると、同時にMicrosoft公式ツール:MediaCreationTool20H2も発表されます。

MediaCreationTool20H2は、Windows 10新規/再インストールに必要な全ファイルをUSBやDVDへ保存するツールです。Windows ProとHome、64ビット版と32ビット版の各バージョンを保存できますが、Windows Pro/64ビット版のみなら8GB容量のUSBで十分です。

MediaCreationツールでUSBメディア作成の様子
MediaCreationツールでUSBメディア作成の様子

ツールダウンロードとUSBメディア作成時間は、ダウンロードリンク速度に依存しますが、約30分です。

作成したUSBは、複数PCの大型更新に使えます。また、Windows 10起動トラブル、例えばスタートアップ修復やコマンドプロンプト処理などの回復ツールとしても動作します。

MediaCreationツールで作成したUSBメディアの大型更新と回復の2用途
MediaCreationツールで作成したUSBメディアの大型更新と回復の2用途

以上がWindows 10上書きインストール開始前の最低限の準備です。

但し、今回に限らずWindows 10の大型更新には、多くの不具合報告があります。使用中のPCが大型更新で不具合に遭遇しても、不具合前へリカバリできるシステムバックアップも、更新前のユーザ側準備としては必須です。

バックアップツールは、有償/無償含め様々です。バックアップだけでなく、リカバリができる確認もお勧めします。リカバリ本番で失敗する例は、世の中にたくさんあります。バックアップ所要時間は、使うツールやご利用環境に依存しますので、省略しています。

バックアップのもう1つの重要事項は、タイミングです。開発が一段落したなど、バックアップに適し、ユーザや開発者が安心しているタイミングがあります。ユーザの都合が良いタイミングでバックアップを確実にとり、かつ、Windows 10大型更新を迎えれば、たとえトラブルにあっても冷静に対処できます。

Windows 10上書きインストール更新

Windows 10上書きインストールの最重要事項は、旧Windows 10起動状態で作成したUSB/DVDのsetup.exeを実行することです。以下、Windows Pro/64ビット版USBを例に説明します。

旧Windows 10起動後に準備で作成したUSBを装着し、setup.exeをクリックします。すると、最新の更新プログラムダウンロードが始まり、インストール準備完了へ画面が変わります。

Windows 10上書きインストール更新の様子
Windows 10上書きインストール更新の様子

「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」がデフォルトになっています。これが、旧Windows 10アプリケーションとユーザデータの両方を保持のまま、新Windows 10を上書きインストールする設定です。

引き継ぐもの変更をクリックすると、アプリ、または、個人用ファイルのみ、どちらもなしなども選択可能です。どちらもなしの場合が、クリーンインストールに相当します。

上書きインストール中、このインストール準備完了画面のインストールのみがクリック個所です。インストールクリック後は、何の操作も不要です。PCが勝手に何回か再起動し、新Windows 10バージョン20H2の初期画面が表示され大型更新完了です。

Windows10 20H2のバージョン情報
Windows10 20H2のバージョン情報

更新開始から完了までの所要時間は、PC(ネットワーク速度やPC性能)に依存します。おおよそ1時間から3時間程度です。この間のクリックは1回だけです。クリック後は読書や運動などでもして気楽に新Windows 10初期画面を待てば良いでしょう。

Windows 10上書きインストールメリット/デメリット

Windows 10上書きインストールの最大メリットは、ユーザ主体でWindows 10大型更新を開始できること、同時に、更新失敗に備えたシステムバックアップが取れることです。

どちらもWindows任せ、つまりWindows Updateで自動開始にすると、ユーザや開発者が不安定な時や思わぬタイミングで更新を開始し、バックアップを忘れる、適切なバックアップが取れないなど、本来なら起こるはずが無いユーザ起因のトラブルにも遭遇する可能性がでてきます。

新Windows 10バージョン20H2は、旧Windows 10バージョン2002の小変更版と言われます。小変更なら尚更早く更新完了し、Windows 10最新バージョン20H2による安定したPC運用を望みたいと筆者は思います。但しMicrosoftは、Windows 10バージョン20H2のUpdate配布を遅らせるとの2020/10/23情報もあります。

Windows 10のライフサイクルは、わずか1.5年です。この間半年毎に2回大型更新があり、たとえ各回の更新を延期しても、1.5年後には必ず大型更新が必須です(ライフサイクルは、関連投稿:WindowsとLinux Mintの大型更新比較を参照してください)。

Windows 10起因の大型更新トラブル遭遇確率は、ユーザ主体開始でも自動開始でも大差ないと思います。むしろユーザ主体上書きインストールの方が、ユーザ起因トラブルがない分、トータルの大型更新トラブル確率は低くなるかもしれません。

※本稿は、大型更新トラブルの原因を、Windows 10起因とユーザ起因、これら2つに分けて考えています。

上書きインストールのデメリットは、上書きなのでWindows 10レジストリがデフォルト値に戻ることです。デフォルト値は、MicrosoftがWindows 10運用上、最も安全と考える値です。しかし例えば、ネットワークのパスワード保護共有を有効→無効にユーザが変更している場合などは、再設定が必要です。

ご利用中のPCで、メリット/デメリットを天秤にかけ、本方法適用をご自身でご判断ください。

なお弊社は、本稿のWindows 10上書きインストール更新方法で、メインPC/ノートPC/バックアップPC:3台のWindows 10バージョン1909→2002→20H2の過去3回の大型更新を、運よく(?)成功した実績があります。

Firefox Send終了

クラウドファイル共有サービス:Firefox Sendが2020年9月17日終了となりました。弊社テンプレート配布に最適なFirefox Send終了、残念です。代替にGoogle Driveを使いますが、送受双方に手間が1つ増えます。

本稿は、この増えた手間を説明し、セキュリティと利便性が相反することを示します。

Firefox SendからGoogle Driveへクラウドファイル共有サービス変更
Firefox SendからGoogle Driveへクラウドファイル共有サービス変更

Firefox SendとGoogle Drive比較

Firefox Sendは「ファイル共有」専門サービス。共有ファイル保存期間はアップロード後最大7日、または、ダウンロード1回で共有ファイルがオンライン上から自動的に消去されるなど、「ファイル保存」が主目的のGoogle Driveにない使い勝手がありました。

ファイル共有Firefox Sendとファイル保存Google Drive比較
Firefox Send Google Drive
ファイル共有期間 最大7日 設定不可
受信側ダウンロード回数 1回 設定不可
利用料金 無料(最大2.5GB) 無料(最大15GB)
ダウンロード側ログイン 不要 不要
パスワード保護 可能 可能
特徴 ファイル共有に最適 ファイル保存に最適

共有ファイルダウンロードリンクを送信側から受信側へメール通知、受信側がFirefox/Chrome/Edgeなどのモダンブラウザを使って共有ファイルダウンロードに成功しさえすれば、ファイル共有は終了です。ここまでは、Firefox SendとGoogle Drive全く同じです。Firefox Sendは処理完了です。

違いは、Google Driveがファイルの共有期間やダウンロード回数の制限を設けることができない点です。また、受信側が共有ファイルをダウンロードしたことを、送信側が知る手段もありません。

Google Driveでのダウンロード成功後、受信側に成功通知メールをお願いするのは、Firefox Sendでは自動で行われる共有ファイル削除、または、共有停止を送信側が手動にて行うためです。

Firefox Sendに比べ、Google Driveでは送受双方に処理完了までにこの手間が1つ余分に掛かる訳です。

Firefox Send終了理由

Firefox Sendサービス終了の理由は、マルウェア配布手段として悪用されるケースが増え、開発元Mozillaがサービスラインナップ全体コスト、戦略的焦点を見直した結果と発表されています。

高度な暗号化とファイル自動消去のFirefox Send共有サービスは、Firefoxという誰にでも知られた信頼性の高いダウンロードリンククリックだけで簡単にマルウェアをデバイスへ送れます。一般のユーザだけでなく、ハッカーにとっても便利なツールとして悪用されたのでしょう。

無料一時保存ファイルのマルウェア排除を実施することは、無理だとMozillaがあきらめたのだと思います。ただ、次々に生まれるマルウェア排除は、たとえ有料でも困難かもしれませんが…。

セキュリティと利便性の相反例です。また、セキュリティとその対価:費用対効果を考えさせる例でもあります。

企業が自社クローズドサーバーでのみ社員ファイル共有を許可するのは、費用対効果の実現解なのでしょう。
※同様に、IoT MCU開発でもセキュリティ実現解検討が必須です。

Google Drive代替理由

Firefox Send代替にGoogle Driveを選んだ理由は、ファイルの「ダウンロード前や共有前」に、ウィルススキャンが自動的に行われるからです。ウィルス検出時は、警告表示があります。

※ウィルススキャンは圧縮ファイルでも実施されます。但し、パスワード保護を行うとスキャン不可能になりますのでパスワードは設定しません。Firefox Sendでもこれら処理は実施されていたと思いますが…、ハッカーはパスワード保護でスキャンをかわしたのだと思います😥。

無償、セキュリティ、信頼度の高さ、モダンブラウザで利用できる点、これらからGoogle Driveを代替として弊社は選びました。

全テンプレート継続販売

販売中の弊社テンプレートは、戦略的焦点(???)から販売継続いたします。販売中止のサイト変更手間と消えるリンク対応などを考慮すると、そのまま継続販売する費用対効果が高いからです。

本ブログでは、その時々に応じてテンプレート販売中止・終了予定なども記載しますが、マイコンテンプレート名が購入サイトに掲載している限り販売は継続いたしますので安心(?)してご購入ください😌。

MCUセキュリティ話題

MCU開発中、進捗が詰まることはだれでもあります。そんな時にスタックした気分を変えるMCUセキュリティ関連話題を投稿します。

MCU開発には集中力が必要ですが、その持続は、精々数時間です。人のスタック深さは有限ですので、開発を経過時間で区切るのが1つ、別方法として集中気分を切替て開発詰まりを乗切る時の話題を示します。

気分転換が目的ですので、硬い話ではありません😁。

セキュリティ更新終了

Microsoftが、Office 2010は今年2020年10月13日、Windows 10バージョン1903は2020年12月8日にサポートを終了します。これらソフトウェアご利用中の方は、新ソフトウェアへの入替が必要です。

サポート終了とは、「セキュリティ更新プログラム配布終了」のことです。ソフトウェア自体がPCで使えなくなる訳ではありません。しかし、ハッカーなどによる新たなサイバー攻撃を防ぐ手段が無くなりますので、安全・安心な利用ができなくなります。

ところで、安全・安心の根拠、セキュリティ、セーフティ、セキュア…などの日本語は、あいまいに使われます。しかし、英語の「SecurityとSafetyは別物」です。

オンラインセミナー:STマイクロエレクトロニクスのTrustZone対応マイコンによるIoTセキュリティによると、

  • Security:外部からの危害(攻撃や改竄)から、MCU内部が保護されている状態
  • Safety:MCU誤動作や故障などが原因で、MCU外部へ衝突や爆発などの危害を与えない状態

英語でのSecurityとSafetyの使い分けは、対象がMCU内部ならSecurity、MCU外部ならSafetyと、明確な区別があります。

MCUセキュリティ関連資料を英語で読むときは、対象は単語で解ります。日本語訳資料を読むときは、対象がMCU内部か外部かを区別して理解する必要があります。

IoT機器侵入調査

総務省、IoT機器に侵入を試みる際のIDとパスワードの組み合わせを、従来の100通りから600通りに増やし、侵入できたIoT機器所有ユーザへ対策を呼び掛けた。2020年9月11日、ITmedia。

つまり、ハッカーの代わりに総務省)国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が、NOTICE:National Operation Towards IoT Clean Environmentに参加しているISP 62社のIPアドレスに対して、疑似攻撃をしかけ、問題があったIPアドレスユーザへ注意を促した、ということです。

過去のサイバー攻撃にあったIDとパスワードにたまたまなっていた場合、たとえ厳重な管理であっても安全でない(!Security)訳です。IoT機器のアクセス方式、「IDとパスワード」には、限界があるかもしれません。

多要素承認

金融庁、銀行・決済各社に本人確認の徹底を要請。2020年9月16日、ITmedia。

ハッカーによるドコモ口座の不正利用が、多要素認証で防げるのかについてのセキュリティ専門家解説は、筆者には正直言って判りません。

多要素認証とは、セキュリティ情報アクセス時、スマホなどの本人しか持たないモバイルデバイスへ送った認証コードなどを使ってログインする仕組みです。「パスワードレスログイン」とも言われます。

海外ドラマでは、スマホの乗っ取りも簡単です。モバイルデバイスの2要素認証コード入力で十分なのでしょうか? スマホを持たない人は、決済サービスを利用できない、またはさらに生体認証が必要なのでしょうか?

この多要素認証をMCUへ実装する場合、どうすれば良いのでしょうか?

暗号化脆弱性

TLS 1.2とそれ以前に脆弱性、2020年9月16日、マイナビニュース。

ブラウザ経由でクレジットカード番号を送る時、通信データを暗号化し盗聴を防ぐしくみが、TLS:Transport Layer Securityです。このTLS 1.2に脆弱性が見つかり、TLS 1.3を使うなどの対策が示されています。

MCUで以前は問題無かった暗号化技術にこのような対策を実施するには、組込み済みソフトウェア、またはハードウェアの一部更新が必要です。

暗号化部品が壊れた、または脆弱性発見時、対象部品のみ交換できるMCU機器があれば良いのですが…。

デジタル後進国

“デジタル後進国”で検索すると、「日本はデジタル、IT後進国」だという記事概要が多く見つかります。

セキュリティ用語の区別もあいまいなままの日本です。先進国開発済みのMCUセキュリティ技術を、理解不足のまま流用しても当面は良いのでしょうが…、セキュリティとあいまい性、本質的に相反する気がします。
ハッカーの攻撃は、あいまい性で生じるMCUセキュリティのすきまを狙うのですから。

MCUセキュリティに関しては、何事にもあいまい性が好まれ日本不得意な「明確さ」、これが必須だと思います。

*  *  *

MCU開発時、スタック気分を変える時に役立つMCUセキュリティ関連話題を5つ投稿しました。

IDとパスワードで保護するMCUセキュリティ
IDとパスワードで保護するMCUセキュリティ

WindowsとLinux Mintの大型更新比較

春と秋の年2回大型更新するWindows 10のリリース開始からサポート終了までのライフサイクルは、1.5年です。Windows 10最新バージョン2004へ更新済みの場合、2021年12月14日までは、2回目/3回目の大型更新を延期でき、この間の大型更新トラブルも回避できる可能性があります(COVID-19の影響は除いています)。

一方、Linux Mint 20の大型更新は春の年1回、ライフサイクルは5年です。

本稿は、このPC OSの大型更新を比較し、MCU開発用OSの安定性という観点から、Linux Mintが優位であることを示します(関連投稿:Linux Mintお勧め理由の続編という位置づけです)。

WindowsとLinux Mintの大型更新比較結果

Windows 10(Version 2004) Linux Mint 20(Ubuntu 20.04 LTS)
大型更新回数 年2回 年1回
ライフサイクル 1.5年(2021/12/14まで)

※この間2回の大型更新予定

5年(2025年春まで)

※この間4回の大型更新予定

大型更新方法 Windows Update(手動延期可能) ユーザによるクリーンインストール
大型更新間隔 0.5年 1年
通常更新方法 Windows Update アップデートマネジャー(5章参照)

Windows 大型更新(Windows 10)

2020年2回目の大型更新、Windows 10バージョン20H2の内容が判りました。バージョン20H2も、様々な機能追加・更新の発表があり、大型更新トラブルが少ないことを願っています。一方で、コチラの記事によると、現行バージョン2004では旧バージョンから消えた重要機能も少なくないようです。

※Windowsの機能追加・削除によるMCU開発弊害の例が、関連投稿:FRDM評価ボードOpenSDA接続問題の3章にあります。

Windows 10運用に安定性を求める場合は、1.5年のライフサイクル期間中、大型更新を「手動延期」する方法があります。但し、大型更新毎に変わるメニューやタスクバーなどのPC基本操作が、最新版で無くてもかまわない場合です。職場利用のPCなどは、この運用方法でも良いかもしれません。

個人利用のPCは、大型更新が基本です。Windows Updateは「最新版へ更新」するのがデフォルト設定ですし、巷に溢れるWindows 10情報は、どれも最新版の話題で、ユーザに大型更新バイアスをかけ続けるからです。

但し、プリンタや接続機器も多種多様な個人利用PCの場合、大型更新トラブルの発生確率は、職場利用のPCよりも高くなる傾向があります。

この大型更新トラブル確率が増すにも関らず、デフォルトでは最新版へ更新することが、Windows 10の矛盾点だと思います。

Windows Updateは、OS自身の大型更新と、通常のセキュリティ更新の2機能が混在しています。これは、Windows 10が商用であるがゆえに、より早い競合製品(Apple macOSやLinux)差別化もビジネス的には必要なためか(?)と筆者はあきらめています。

Windows Updateで無理やり大型更新も行うのではなく、ユーザ主体で大型更新が開始できる別ボタン、例えばInstall New Windowsを設ければ、少なくとも大型更新起因のトラブルは回避できると思うのですが…。

Linux Mint大型更新(Linux Mint 20)

Windows と最も異なるのは、Windows Updateに相当するLinux Mintアップデートマネジャーに、OS大型更新機能が無い点です。

Linux Mintのアップデートマネジャーは、稼働中OSの主にセキュリティ関連更新を行います(標準搭載のFirefoxブラウザなどは、このアップデートマネジャーで最新版へ更新されます)。つまり、ユーザが主体的に操作しない限りOS大型更新はできない仕様です。

旧版Mint 19からMint20への更新は、基本的にはOSクリーンインストールで行います。旧Mint 19利用中のユーザ追加アプリケーションやユーザフォルダなどを、新Mint 20へ引き継ぐバップアップツールが標準で用意されています。

また、現行Mint 20と旧Mint 19のOS自体を比較しても、差はデスクトップの色や壁紙程度で、本来のOS部分は、(詳細に見れば別ですが)大差は見当たりません。

Linux Mint 20のリリースノートを読み、大型更新の必要性をユーザが感じなければ、そのままLinux Mint 19を使い続けても最長5年間はセキュリティ更新が受けられます。

MCU開発用PC OS安定性評価

MCU開発用のPC OS として、以下の2点からLinux Mintが優れると評価します。

  • Linux Mint大型更新間隔は、Windows 10の0.5年に比べ1年と長い
  • Linux Mint大型更新は、ユーザが主体的に開始する

MCU開発速度が上がり、MCUソフトウェア/ハードウェア生産性が向上しても、プロジェクト開始から終了まで数か月~1年は要するでしょう。EclipseベースIDEなどのMCU開発ツールも、この間に1回程度は更新がありえます。

これらMCU開発ツールの動作土台となるPCのOSは、少なくてもプロジェクト実行中の1年程度は安定的に、かつ大型更新する場合でもユーザ主体で開始してほしいと願う開発者は、筆者だけではないと思います。

アップデートマネジャーの使い方(Linux Mint 20)

Linux Mintアップデートマネジャーの使い方
Linux Mintアップデートマネジャーの使い方

Linux Mint 20起動時、①アップデートマネジャーを起動しても、「このシステムは最新の状態です」と表示されることがあります。この時は、念のため、②再読込をクリックします。

すると、更新情報を再チェックし、何らかの更新がある場合には、リスト表示されますので、③アップデートインストールをクリックします。

インストール中に「以下のパッケージがインストールされます」と表示される場合は、デフォルトのまま④OKをクリックします。

①~④によりLinux Mint 20へ最新アップデートが適用されます。

※これらの操作はWindows Update「更新プログラムのチェックボタン」を、ユーザ自身で押すことに相当します。

また、ファイアウォールのデフォルトは無効です。「起動する」をクリックし、自宅/会社/パブリック選択後、Statusを変更、有効に変更することをお勧めします。

Linux Mintお勧め理由

PCへインストールするLinuxには、様々なディストリビューションがあります。ディストリビューションとは、Linux 本体とLibreOfficeなどの標準搭載アプリケーションを1パッケージにまとめ、利用者がLinuxインストールとその活用を即座にできるようにした配布形態のことです。

本稿は、これらディストリビューションの中で、筆者がLinux Mint 20 MATEエディション(64ビット)をWindows MCU開発環境トラブル発生時、代替に使えるLinuxディストリビューションとしてお勧めする理由を示します。

Linuxディストリビューション

2020年7月発表のWebサイト向けLinuxディストリビューションシェアを見ると、UbuntuやDebianなどがメジャーなディストリビューションであることが判ります。

様々なLinuxディストリビューション、特にUbuntuやDebian、Raspberry Pi用のRaspbianと本稿のLinux Mint概要は、コチラの情報が参考になります。用途、安定性/情報量/デザイン性などでディストリビューションを評価した結果が示されています。

Linux Mintとメジャーディストリビューションの差

UbuntuとLinux Mintの関係を、まとめました。

  • Ubuntuベースの派生形として、様々なデスクトップPCディストリビューション(Linux Mint)がある
  • Ubuntuは定期的にアップグレートされるが、主にセキュリティ修正のみでアプリケーションの大幅更新をしない5年長期サポート版:LTS版(最新は2020年4月リリース:Ubuntu Desktop 20.04)もあり、このLTS版に準ずる派生ディストリビューション(Linux Mint 20.x)がある
  • Ubuntuアプリケーションリポジトリ(公式アプリケーション保存庫)をそのまま使える派生ディストリビューション(Linux Mint)がある

MCU開発者の方は、EclipseベースIDE(EclipseベースIDE≒Ubuntu)なら、どれもほぼ同じユーザインタフェースで、同じプラグインが使えるのと同様と言えばご理解頂けると思います。

Ubuntuが最もシェアが高いのは、派生ディストリビューションのベースだからです。また、MCUベンダのLinux版IDEなどの説明書も、トップシェアUbuntu利用を前提に提供されます。

Linux Mintは、Ubuntu派生ディストリビューションの1つで、Linux特有のコマンド操作やリポジトリもUbuntuと同じです。また、UbuntuよりもWindowsやMacの操作に近いGUIを持ち、万一の際のシステムバックアップツール(TimeShift)も標準搭載済みです。

つまり、「Windows/Macユーザが、Linux Mintインストール後、Linux本体のカスタマイズは不要で、即MCU開発アプリケーションが利用できる点」が、Linux Mintをお勧めする最大の理由です。

※MCU開発アプリケーション(例えばNXPのMCUXpresso IDE、STMのSTM32CubeIDE)は、非搭載ですので、別途インストールは必要です。

Linux MintとメジャーディストリビューションUbuntuの主な差は、GUI、少し遅れるリリース時期と考えて頂ければ良いと思います。

Linux Mintの3エディション

Windows Home/Proと同様、Linux Mintにも、3種類のエディションがあります。

GUI処理の軽い方から、Xfce/MATE/Cinnamonエディションと呼ばれます。少し古い版ですが、Linux Mint 17 ユーザズガイドによると、どのエディションを使えば良いかわからない時は、METAエディションを使ってください、とあります。

筆者は3種類とも試しましたが、処理の軽さとメニューの解りやすさ、使いやすさからMETAエディションをお勧めします。

GUIは、好みの問題がありますので、3エディションをインストールして試すと良いでしょう。クリーンインストール所要時間は、せいぜい30分程度です。インストール方法は、まとめに記載しております。

まとめ:お勧めLinux MCU開発環境Linux Mint 20 MATEエディション(64ビット)

最新Ubuntu Desktop 20.04ベースで、Windows MCU開発環境トラブル発生時、代替に使えるLinuxディストリビューションとして、Linux Mint 20 METAエディション(64ビット)をお勧めする理由を示しました。

多発するWindows起因のトラブル発生時、Windows MCU開発に慣れた開発者が、MCU開発を中断することなくLinux環境で継続するには、Windows操作に近いGUI、LTS版のOS安定性、Linux特有コマンドへの情報量多さなどが必要で、これらを満たすのがLinux Mintです。

Linux Mint 20 METAエディション(64ビット)のPCインストール方法は、ユーザズガイドにも記載されていますが、コチラなどを参考にすると素早くインストールができます。

Linux Mint 20と旧版Mintシェアは、Mint公式ブログのMonthly News – July 2020によると、投稿時点では、32ビットPCにも対応した前版Mint 19.xのほうが高いのですが、いずれ逆転すると思います。全ての32ビットOS新規開発は、完了しました。

Mint 20標準搭載のLibreOfficeは、安定性重視のStill版v6.4.5です。カスタマイズ不要と書きましたが、Fresh版v7.0.0へ変更したい方は、コチラに方法が記載されています。



FRDM評価ボードOpenSDA接続問題整理

Kinetis E(Cortex-M0+/40MHz、5V Robust)テンプレートv2開発障害となっている評価ボード:FRDM-KE02Z40MのOpenSDAとMCUXpresso IDEデバッガ間の接続問題は、残念ながら未解決です。今回は、このOpenSDA問題を簡単に整理します。また、Linuxによる第2のMCU開発環境構築の新設カテゴリも示します。

Kinetis OpenSDA

OpenSDA Block Diagram(出典:OpenSDA Users Guideに加筆)
OpenSDA Block Diagram(出典:OpenSDA Users Guideに加筆)

Figure 1は、MCUXpresso IDEとKineties MCU間のブロック図です。旧Freescaleは、Kinetis Design Studio:KDSというFreescale製IDEとKinetis MCU評価マイコンボード間の接続は、OpenSDAというインタフェースで接続していました。

このOpenSDAは、KDS直接接続だけでなく、PC(Windows 7)との接続時、File System(USBメモリ)として動作し、クラウド開発環境:mbed開発にも利用できる2種類のプログラミング機能を持ちます。

現在問題発生中のFRDM-KE02Z40MのOpenSDAも、Windows 7当時は問題なく動作していました。その結果、Kinetis Eテンプレートv1発売ができました。

MCUXpresso IDE接続問題(Windows 10)

Freescaleを買収したNXPは、自社LPCと新旧Freescale Kinetis両マイコンに新しい統合開発環境:MCUXpresso IDEを用意しました。このMCUXpresso IDEの評価ボード接続インタフェース一覧(一部抜粋)が下図です。

MCUXpresso SDK support platform(出典:Getting Started with MCUXpresso)
MCUXpresso SDK support platform(出典:Getting Started with MCUXpresso)

簡単に説明すると、MCUXpresso IDEは、NXP純正評価ボードEVKやLPCXpresso54xxx接続インタフェース:CMSIS-DAPと、新旧FRDM評価ボード接続インタフェース:OpenSDA v1系/v2系とmbedの3種類全てをサポートします。

接続問題が発生するのは、OpenSDAの一部です(表内にFRDM-KE02Z40Mが無いのは不安ですが、記載漏れだと思います)。FRDM-KL25Z(Cortex-M0+/48MHz、General Purpose)のOpenSDAは、MCUXpresso IDEと問題なく接続できています。

接続問題解決には、Figure 1のMSB Bootloaderを、MCUXpresso IDE対応済みの最新版へUpdateすることが必要です。

MSB Bootloader更新注意点(Windows 10)

MSB Bootloader更新方法は、評価ボードのリセットボタンを押しながらPC(Windows 10)とUSB接続し、エクスプローラーに現れるBootloaderフォルダへ、最新版:BOOTUPDATEAPP_Pemicro_v118.SDAをドラッグ&ドロップするだけです(FRDM-KE02Z40Mの最新Bootloaderは、コチラから取得できます)。

この操作後、再度評価ボードとPCを接続すると、今度はエクスプローラーに通常モードのFRDM-KE02Z40Mフォルダが現れ、更新完了となるハズです。ところが、筆者の評価ボードは、Bootloaderモードから通常モードへ復帰しません。

従って、MCUXpresso IDEとFRDM-KE02Z40MをUSB接続しても、IDEは評価ボード無しに認識します。

簡単に説明しましたが、実際はWindows 10でのBootloader 更新時、「Windows 7では不要であったストレージサービスの一時停止が必須」です(詳細は、コチラのNXP情報のStep 2を参照してください)。

調べると、Windows 8以降に一般的なユーザには知らせずに追加したWindows PCのUSBメモリへの隠しフォルダ書込み機能(これが上記一時停止するストレージサービス)が、諸悪の根源のようです。

FRDM評価ボードOpenSDA接続問題整理と対策(Windows 10)

以上を整理し、対策をまとめます。

・旧Freescale製FRDM評価ボードが、新しいNXP MCUXpresso IDEと接続できない原因は、評価ボードOpenSDAのMSB Bootloaderにあり、対策は、MCUXpresso IDE対応版Bootloaderへの更新を、Windows 10ストレージサービスを停止させた状態で行うことが必要。

旧Freescale製(つまりWindow 7対応)のまま入手したFRDM評価ボードは、FRDM-KE02Z40M以外でもIDE接続問題が発生することがありますので、上記まとめを参考に対策してください。

このまとめと対策にたどり着く前に、Windows 10でストレージサービスを停止せずにFRDM-KE02Z40MのOpenSDA MSB Bootloader更新を何度か繰返しました。評価ボードが、Bootloaderモードから通常モードへ復帰しない理由は、これかもしれません😥。

筆者は、Windows 7時代からFRDM評価ボードを活用してきました。まさか、Bootloaderモード時にWindows 10ではサービス一時停止が必須だとは思いもしませんでした。しかも、このサービスは隠しフォルダ対応なので、通常ではWindows 7と同様にBootloader更新が正常終了したように見えます。

事前に調査しなかった筆者が悪いのですが、旧Freescale評価ボード記載Windows 7対応マニュアル通りに対処すれば、筆者と同じトラブルに出会う人は多いハズです。

また、OpenSDAユーザズガイドにも上記トラブルからの復帰方法の記載はありません。ネット検索か、NXP communityが解決手段でしょう😥。解決方法が見つかれば、本ブログでお知らせします。

エンドユーザを無視したかのようなWindows 10の度重なる変更に起因するトラブルは、今後も増える可能性があると思います。次章は、その対策です。

Windows MCU開発者向けLinuxカテゴリ新設

筆者は、昨年からLinux MintでのMCUXpresso IDE開発環境もWindows 10のバックアップ用に構築しています。このLinux環境でも、残念ながら今回のトラブル回復はできていません。

今回はLinux/Windows両方NGでしたが、Windows以外の第2のMCU開発環境があると、何かと便利です。

そこで、本ブログで、Windows MCU開発に慣れた開発者が、簡単にLinuxを使うための情報も発信したいと思います。このための新設カテゴリが、PC:パソコン>Linuxです。
※親カテゴリPC:パソコンへ、LibreOfficeとWindowsも移設しました。

Windows 10、Linuxともに単なるPC OSです。Linux上でMCU開発アプリケーション、本ブログではNXP MCUXpresso IDEやSTM STM32CubeIDEを利用するために、最低限必要な情報に絞って説明する予定です。

Linux情報量もまたWindows同様多いのですが、Windowsに慣れたMCU開発者としては、当面不要な情報も多く、Windowsの代わりにLinuxを短期間で効率的に活用するMCU開発環境構築が目標・目的です。今回のようなWindows PCでのトラブル発生時、Linux PCへ移ってMCU開発を停止することなく継続するのが狙いです。

MCU Devopments Windows and Linux 2 Routes
MCU Devopments Windows and Linux 2 Routes

Linuxのシステム動作要件は下記で、Windows 10よりも低いので、古いPCでも快適に動作します。ただし新しいOS利用なら「64ビットCPUは必須」ですが…😅。32ビットPC OSの新規開発は、終了しました。

  • 1GB RAM (2GB recommended for a comfortable usage)
  • 15GB of disk space (20GB recommended)
  • 1024×768 resolution

COVID-19の影響で、市場に中古PCが安価で数多く出回っていますので、これら活用も一案かと思います。

モダンPCとPINコード

本稿が2019年最後の投稿です。

前稿Windows 10 2PCトラブルにもめげず、2020年1月6日発売のCypress PSoC CapSenseテンプレートに向けて急ピッチで開発を進めてます。本稿は、Windows 10トラブルで気になったモダンPCと、公開鍵暗号方式PINコードを紹介します。

モダンPC

創造性と生産性を上げるのがモダンPCで、Windows 10とOffice 365がその要素のようです。

Windows 7サポート終了2020年1月14日を前に、MicrosoftはモダンPCへの移行を呼びかけています(Windows 7稼働予測グラフ有り)。今でもネットカフェで稼働中の多くのWindows 7 PCは、果たして安定性・メンテナンス性に問題あるモダンPCへ移行するのでしょうか?

Windows 7並みの信頼性が無ければ、宣伝文句は良くてもPCのOSとしては、どうかな?と個人的には思います。
2023年までのWindows 7有償再延長サポートも選択肢としてあるので、7を使い続け、開発者よりも一般エンドユーザを重視する次期Windows Xに期待する声も少なくないかもしれません。

筆者は最新OSの最重要機能は、セキュリティだと思います。

OS最重要機能はセキュリティ(出典:Pixabay)
OS最重要機能はセキュリティ(出典:Pixabay)

Windows 10付属セキュリティツールだけで安心しているエンドユーザが、どれ程いるかは解りません。しかし、多くのネットカフェが設定するWindows 7+市販セキュリティソフトとのOSセキュリティ能力差が、どれ程あるかも不明です。

2020年以降のWindows 7稼働予測と、モダンPCへの移行状況が、Microsoftの思惑通りになるか気になります。

PINコード

Windows 10インストールで新たに要求されるPIN(Personal Identification Number)コードは、個人識別番号のことです。普通、数字4桁です。

PINコードは、IDとパスワードの代わりに登場してきたセキュリティ用語で、筆者の理解では、PINコードが公開鍵暗号方式、パスワードは秘密鍵暗号方式です。PINコードとパスワードの解り易い違いは、コチラのP1図です。

通信中の鍵が公開鍵なので、秘密鍵パスワードよりも安全で、公開鍵とペアの秘密鍵は、デバイス(Windows 10/MCUなど)内部保存、開発コストや運用コストが低く、強固なセキュリティが実現できるそうです。ペア秘密鍵がデバイス内なので、なりすまし対策にもなります。

PIN、FIDO(ファイドと読む)で検索すると様々な情報が得られます。iPhoneは少し違うようですが、AndroidスマホではPINコードが標準になりつつあるようです。

筆者のWindows 10は、前投稿トラブル回復直後のため、テンプレート開発以外は、今のところあまり手出し(調査)したくない心境です。簡単、安心、低コスト、セキュリティ強固なPINコードなら、MCUへも実装できるかもしれません。

…以上のように今年最後の本稿は、あいまいな推量となりました。
安心してPCが使えるまでは、最高プライオリティ:CapSenseテンプレート開発を優先したいからです。すいません😌。

本年も本ブログをご覧いただき、まことにありがとうございました。
皆さま、よいお年をお迎えください(Ladies and gentlemen, I wish you a happy New Year)。

Windows 10 1909トラブル回復録

年末年始の忙しい時に限って自作Windows PCにトラブルが発生するのは、日頃の行い、またはマーフィーの法則?

Backup PC(Windows 10 1903)のWindows 10 1909アップデートトラブルに続き、Main PC(Windows 10 1909)にもWindows起動トラブルが発生しました。Backup PCトラブルは、暫く様子見でも良いと考えていましたが、Main PC起動トラブルは、即回復が必要です。

Windows 10トラブル内容

Backup PCは、Windows 10 1903から1909への更新プログラムインストールに失敗するトラブルです(0x800F0922)。1903からの新機能追加も少ない1909への更新は、Backup PCのため急ぐ必要はありません。この更新失敗トラブルは少なくないようで、ネットに多くのトラブル対策があります。更新プログラム直接インストール、クリーンブードも既に試しましたが回復しません。

Main PCは、突然起動NGになりました。きっかけは、複数アプリケーション更新と更新履歴消去です。Boot起因ですので、自動修復やコマンドプロンプト手動修復も試しましたが回復しません。唯一の救いは、1909更新成功直後のシステムバックアップがあることです。

トラブル回復策

Main PCは、11月14日の1909更新直後のシステムリカバリで回復しました。但し、今回の起動トラブル発生までの約1か月間のユーザデータ更新とアプリケーションソフト更新が必要で、このために半日がつぶれます。また、Backup PCは、その症状から「最後の切り札」:1909クリーンインストールが必要かな?と感じていました。

そこで、Main PCでつぶれる半日で並列にBackup PCをクリーンインストールしようと決心した訳です。Main PCのアプリケーション更新時、Backup PCへのインストール必須アプリケーションも明確になります。退屈な回復作業ですが、PCの前から離れる訳にもいきません。2PC同時に回復することで、効率向上も狙えるかなと考えました。

トラブル回復作業と時間

ネットに溢れる回復作業内容よりも、作業に要した時間を示します。

もちろんPC性能やネットワーク環境で分単位精度は変わるでしょう。半年毎に繰返されるWindows 10更新トラブル対応の目安と考えてください。作業時間は、2PC回復トータルで丸1日程度です。が、精神的ダメージはかなりあります。Windows10更新トラブルがこのまま続くなら、Mac PCへの乗換を検討する程のダメージです。

Backup PC Windows 10 1909クリーンインストール作業時間

  1. Windows 1909クリーンインストール:10分(Microsoftアカウントに加え、新たにPINコード入力要求)
  2. クリーンインストール後のセットアップ:5分(OSセキュリティ内容などを設定)
  3. セットアップ後の更新プログラム適用:40分

最新Windows 10 1909クリーンインストール自体は、上記1時間程で完了します。これなら、毎回クリーンインストールしても良いと思える程簡単です。が、この後のアプリケーションインストール、ユーザデータ復活に時間が掛かります。

  1. セキュリティソフト、ブラウザ、FFFTP、圧縮解凍などOS必須ツールインストール:1時間
  2. Officeアプリケーションインストールと更新プログラム適用:3時間
  3. ベンダMCU開発ツールインストール:1時間
  4. ユーザデータ復活:1時間(クラウドストレージ経由ではなく回復Main PCより直接コピー)

合計で7時間~8時間(=丸一日)は、モニタ前で待たされます。並列で行ったMain PC回復作業も、システムリカバリと1か月間のユーザデータ復活で3時間程度です。Office(2010)アプリケーションインストールと更新は、LibreOfficeに比べ時間が掛かります。新しいOffice 2019/2016でも、同様に時間が掛かると思います。

※アプリケーションとユーザデータを引継いだままWindows 10 1909上書きインストールも可能です。しかし、Backup PCは、この上書きインストール(1.5時間)も失敗しました。更新プログラム直接インストール、クリーンブードと同様、「最後の切り札」より前の回復手段は、経験上あてになりません😫。

いろいろある回復手段を試して消費する合計時間と、「最後の切り札」で一発回復する上記8時間のどちらを選ぶかは、トラブル種類と回復作業内容・処理時間、個人の性格に依存します。本稿が参考になれば幸いです。

ビジネスPC要件

今回のトラブルで、筆者のWindows PCには、Mac PCへの乗換を妨げる利用アプリケーションは無いことが明確になりました。利用アプリケーション全てMac OS対応、または同等アプリケーションが有ります。

ビスネスPCのOSは?
信頼性重視ビスネスPCのOSはWindows、Mac、Unixのどれが良いか?

Mac PCの方が高性能なのでWindows PCより高価です。従って、このMac PC対Windows PC差額を払う分だけの信頼性が得られるか、費用対効果が乗換課題です(もちろん、経済的余裕と自作PCの楽しさが消えるのもありますが…)。

Backup PC、Main PCともに自作Windows PCですが、今回のようなOS起因トラブル無しで何年も動作し続けたPCです。ネットを見ると、Backup PCと同じ更新トラブルは、2019年最新WindowsノートPCでも発生しているようです。

以前のOS、特にWindows 7に比べ世間を騒がせるWindows 10更新トラブルは、Windows 10完成度・信頼性が低いとエンドユーザに感じさせるだけでなく、Microsoftの狙いは、OS更新毎に毎回Windowsをクリーンインストールさせ、アプリケーション本体は、Office 365のようにクラウド提供することが目的なのでは、という疑いを生じさせます。
OSクリーンインストールが短時間で簡単に終わり、OfficeアプリケーションのローカルPCインストールと更新にやたら時間が掛かることが根拠です。

ビジネスで使うPCは、Mac PC(Unixも含む)への乗換を考えるべき時期かもしれません。今後、Mac PC/OSのトラブルや回復方法も調べたいです。

ユーザ目線Windows 10 1903更新方法

Windows 10サポート期限は、年2回の大型更新後、1年と半年です。つまり、1809なら2019年末まで。2020年1月14日のWindows 7に比べ超短期です。Windows 10ユーザは、大型更新1903 May Update(19H1)への対応は必須なのです。

前回の1809更新トラブルをまぬかれた筆者を含むラッキーなWin10ユーザが、今回の1903更新をどのように乗り切るかについて私案を示します。

3つの1903更新方法

Microsoftは、前回1809更新一斉配布→トラブル頻発の反省から、今回1903は、段階的配布に変えたそうです。それでも、前回同様、1903も重大な更新トラブルの記事、情報が多くあります。

関連投稿:LibreOffice最新版6.2.4更新のWindows 10 May Update章

この段階的配布により、いつ始まるか判らない自分のPCの1903更新への対応法は、3つあります。

  1. 主体的に1903更新開始:例えば開発が一段落したなどユーザの都合が良い時に、ユーザ自身で1903更新を開始
  2. 受動的に1903更新受付:1903更新開始は、PCにお任せ、ユーザもそれに従う。多くの記事で推薦。
  3. 受動的に1903更新受付、更新延長の場合あり:1903更新の開始は、PCにお任せ。但し、ユーザの都合が悪い場合は、一時的に1903更新を延長

1:主体的に1903更新開始

1903段階的配布の目的は、徐々に明らかになる更新トラブルに対する策を、Microsoftが通常のUpdateで大型更新前に実施し、トラブル発生頻度を少なくすることです。多くの記事が、1903更新をひたすら待てというのは、Microsoftのこの意図を汲んだ結果です。

従って、主体的に1903更新の開始をする時は、更新トラブルの覚悟が必要です。方法は、「何回か更新プログラムのチェック」を押すことです。これにより主体的更新をMicrosoftが検知し更新が始まります。

ユーザメリットは、当然事前にシステムバックアップをしており、万一のトラブルが発生しても自己責任なので精神的に安定して回復できることです。トラブル発生時には回復し、2または3の選択肢となります。

2:受動的に1903更新受付

朗報です。1903からは、Homeユーザでも最大35日の大型更新延長が可能になったそうです。この機能は、次の大型更新後にその効果が明らかになるでしょう。

しかし、現行の1809 Windows Homeユーザには、大型更新延長機能がありません。例えユーザ都合が悪くても、開始した1903更新を受入れる以外に手はありません。

段階的配布で自分のPCの順番が来るのを待ち、トラブルが無い1903更新完了を祈りましょう。

3:受動的に1903更新受付、更新延長の場合あり

1809 Windows Pro以上のユーザが取りえる現在最も大型更新のトラブルリクスが少ない可能性がある方法です。

大型更新を延長する方法は、「更新開始前」に、Windows Updateの下記詳細オプションを設定します。

大型更新の延長設定
大型更新の延長設定(1809 ProのWindows Update詳細オプションデフォルト状態)

赤枠、これは更新インストールの制御であって、更新プログラムはPCへダウンロードされます。一方、橙枠の一時停止は、更新プログラムも再度ダウンロードする必要があります。どちらも、自分のPCに段階的配布順番が回ってきたのは同じですが、橙枠は、再び更新プログラムの配布を待たねばなりません。

いずれも、PCの通知アイコンや、いつもと違う大型更新プログラムダウンロード中の挙動にユーザが気づく必要があります。忙しくてこの挙動に気が付かずにいると、何らかのトラブルが発生する可能性もあります。

その理由は、上記更新延長機能を確かめた記事、情報が見当たらないからです。これらユーザに嬉しい機能はあっても、本当に機能するかは確かめようがありません。

1903大型更新リスクとまとめ

対応案 更新トラブル発生確率 トラブル時のユーザ精神安定度
1. 主体的に1903更新開始 +++ +++
2. 受動的に1903更新受付
3. 受動的に1903更新受付+延長 ++ ++

色々な記事、情報が言うように、受動的に1903更新開始を待つのが大型更新トラブル回避としては、得策なようです。次回、秋の大型更新よりも前までに1903更新完了を待てる方は、リスクが少ない2の対応が良いでしょう。

ちなみに、1903更新でユーザが得られる新機能として筆者が良いなと思うのは、マウスポインタの大きさが大きくなるくらいですが…。

但し、ベンダ純正PCであっても事前にあらゆる組合せに対するトラブル回避策を施すことは不可能です。例えば、自作組込みPCや後付けパーツを組み込んだ純正PCなどに対しては、2や3の対応でもトラブル発生の可能性は、1と大差なしと言えるかもしれません。

更新開始を待ったのに運悪く2や3の対策でも更新トラブルになった時、回復できるバックアップがどの時点のものかが重要です。最悪イニシャルに回復するしかない場合、インストールしたアプリケーションやそれまでのユーザデータは無になります。時間的、精神的にも、かなりの負担です。

更新開始タイミングが主体的な1の対応のみが、最悪イニシャルを避ける策でしょう。

結局、頻繁なシステムとユーザデータバックアップのみが、大型更新トラブル回避策だと筆者は思います。更新開始を主体的にするか、受動的にするのかは、トラブル発生時の精神的な影響に差を生むのみだと思います。

1903 May Updateをどのように乗り切るかについて私案を示しました。筆者自身、どの策にするか未定ですが、ご参考になれば幸いです。