Windows 10と11、365まとめ

結論

現状判っているWindows 10とWindows 11、Windows 365の特性、類似サービスをまとめました。

Windows 10と11、365まとめ
Windows 10と11、365まとめ

Windows 10/11=買い切り型ローカルPC OS、Windows 365=サブスクリプション型マルチプラットフォーム対応クラウドPC OSです。

ハードウェアリスク低下、デバイス非依存の操作性とデータ保存、サイバー攻撃やセキュリティ対策のクラウド自動化など、Windows 365は、個人が従来から行ってきたWindows 10/11の保守・運用処理の殆どをクラウド任せにでき、そのメリットは大きなものがあります。

Windows 365コストは、企業向け300ユーザまでのBusinessプラン、ユーザ数無制限のEnterpriseプランが発表済みです(コチラにBusinessプラン感想記事があります)。

個人向けプランのコスト次第ですが、本来のPC創造へより注力できる環境がクラウドPC OS:Windows 365で提供されると言えそうです。Windows/Mac/Linuxなどのこだわりが不要となり、ローカルPC OSの終焉の始まりを感じます。

Windows 365のMCUクロス開発環境。Mbed開発環境に似ている。
Windows 365のMCUクロス開発環境。Mbed開発環境に似ている。

大好評のためWindows 365無料試用は、1日限りで受付中止となりました。Windows 365で、評価ボードやデバッガを使ったMCUクロス開発環境を実現できるかを受付再開後、試したいと考えています。

買い切り型とサブスクリプション型

PC作業に必須のWord/Excel/PowerPointなどのMicrosoft Officeは、日本だけで主流の買切り型と、欧米で人気のサブスクリプション型の2種類の提供方法があります。

買い切り型は、Windows、Macそれぞれ専用版があり、更新やセキュリティ管理などの運用面は購入者個人が行います。一方、サブスクリプション型は、Windows/Mac共通で、1ユーザ当たり複数異種PCの利用も可能です。運用面は、クラウドが常に最新版へ自動更新します。

現在のWindows 365情報は、企業向けのみで個人向けコストなどは未発表、Windows 11も未知の部分が多いのですが、Windows 10/11=買い切り型ローカルPC OS、Windows 365=サブスクリプション型、かつWindows/Mac/Linux/iOS/AndroidマルチプラットフォームクラウドPC OSと考えて良さそうです。

クラウドPC OSメリット:クラウドPC OS対ローカルPC OS

従来動作していたWindowsアプリケーションは、クラウドPC OS上でも動作します(ゲームアプリを除く筆者予想)。アプリインストは個人が行い、クラウドPCハードウェア構成も金額次第で高性能化可能です。クラウドPCでは、個人によるハードウェア経年変化対応などは不要です。
個人PC環境のハードウェアトラブルリスクは下がると思います。

Mac上でWindowsアプリを動作させるBoot CampやParallels Desktop、Linux上でのwineなどは不要です。クラウドPC OSへインストールしたWindowsアプリを、ブラウザ+RDP(Remote Desktop Protocol)クライアント経由で、手元のローカルPC/スマホ/タブレットで操作でき、アプリ作成データもクラウド内に自動保存されます。
デバイスに依存しない操作性と自動データ保存がもたらすメリットは大きいです。

また、次々に発生するサイバー攻撃やセキュリティ対策を個人が行うのは大変です(Win 10 Cumulative Updatesが例)。OS部分だけでもセキュリティ対策をクラウドが代行すれば、その分、個人は本来の価値創造に注力できます。
個人セキュリティ対策は楽になると期待できます。

最も類似するサービスが、メールです。ローカルメールが、Windows 10/11、クラウドメールがWindows 365に相当します。容量管理やメールアプリ更新の手間が不要、使用場所やデバイス制約もないクラウドメールを使い始めると、ローカルメールは不便で使えなくなります。コスト次第でWindows 365も同様になりそうで、ローカルPC OSもゲーマー以外は終焉かな?と感じました。

速報:IoT MCU RND脆弱性、解決策無し

2021年8月11日、IoT MCU RND脆弱性に解決策なしという記事が掲載されました。脆弱性を指摘したBishop Foxによると、解決策は無くアップデートが提供された場合には迅速に適用することをアドバイスしたそうです。

IoT MCUも、Windows 365のような仮想MCU化を願う記事内容です。

Windows 11ショックとTPM

所有3PCのWindows11要件チェック結果
所有3PCのWindows11要件チェック結果

今秋リリース予定のSun Valleyは、新OSのWindows 11でした。TPM 2.0が障壁になり、所有3PCのうち2PC(Note/Backup)はWindows 10からWindows 11へ無償アップグレードができません。アップグレード要件に変更が無ければ、MainのみWindows 11になり、残りはWindows 10のまま・・・、Windows 11ショックです。

このWindows 11ショック原因のTPM、現状の対処法などをまとめます。

TPM (Trusted Platform Module)

TPMは、MicrosoftがWindows 11(以下Win 11)要件にした専用ハードウェアで、PCを起動するBIOS/UEFIのデバイスです。セキュリティキー、暗号鍵や機密性の高いユーザーデータの保護・保管機能を持ち、最新版Version 2が必要です。

このTPM機能を既に持っているPCでも、Win 10では未使用が多かったのが判っています。弊社Main PCもそうで、設定を変更し最初の図のようにWin11対応チェック結果が全てOKになりました。

テレワークでPC需要が高いこの時期に、敢えてTPMをWin 11アップグレード要件にしたMicrosoftの狙いが、もしも新しいPCへの買換え需要喚起だとしたら、残り2PCは、WindowsからLinux MintへのOS乗換も対処法に入れます。

※2021年7月8日、Linux Mint 20.2 MATEがリリースされました。サポート期間は2025年までです。

弊社テレワーク利用中のMCU開発アプリケーションは、マルチプラットフォーム対応なのでOS乗換に問題はありません。

MCUのTPM相当機能

MCUにも暗号鍵などを保管するTPM相当の外付けチップがあります。例えば、関連投稿のNXP)EdgeLock SE050、Maxim)DS28E38などです。これらは、MCU外付けのセキュリティ強化ハードウェアです。

また、これら外付けハードウェアを使わずに、セキュリティ強化内蔵Flashへ機密情報を保存するCortex-M33コアMCUなどもあります。

これらMCUへTPM相当の機密情報保持機能を実装すると、開発工数が増えることが判っています。

Win 11要件のTPMは、IoT MCUがMicrosoft Azure接続時、上記どちらかの機密情報保持機能を持たないMCUは、例え接続中であっても、将来のセキュリティ脅威を理由に接続拒否することに近いと思います。

MCU開発者は、新たな開発案件が増えて喜びそうですが、Azure利用中の顧客は、納得するでしょうか? Azure以外のAWSやGoogleクラウドへの移行にならないでしょうか?

関連投稿:多様化MCU RTOS対策

一方、スマホなどモバイルデバイスのTPM相当:機密情報保持機能も知りたいと思います。今後調査予定です。

TPM効果

  • なぜBIOS/UEFIのTPMハードウェアなのか、OSソフトウェアで代替しない(できない)理由は何か?
  • TPM情報は、PCのバックアップアプリでバックアップ/リカバリできるか?
  • BIOS/UEFI更新時、TPM情報は保持されるのか?
  • TPM不具合発生時、Win 11は起動しないのか?
  • PC廃棄時のTPM情報の完全削除とその確認方法は?
  • TPM搭載Win 11 PCと、非搭載Win 10 PCのサイバー攻撃防衛差は、どの程度か?

など、TPM採用の明確な理由とその効果を示した情報は、今のところ見当たりません。Win 10でTPMをデフォルト未使用としたのも、なんらかの理由や副作用があったからだと思います。

定性的には、セキュリティ対策が重要であることは解ります。しかし、定量的な比較や副作用も知りたいです。

具体的に、TPM無し(未使用)BIOS/UEFI のWin 10 PCと、TPM有効化Win 11 PCで比較し、攻撃防御差が大きいなら費用対効果によりWin 11対応の新PC購入もありえます。

もちろんPCハードウェアも経年劣化します。しかし、パーツ単体交換が容易なのもWin PCのMacやスマホに無い特徴です。最初の図のようにWin 10で快適に動作するハードウェアが、BIOS/UEFI TPMだけでNGになるのは、「足切り」に近いと感じます。

Win 10と同様、Win 11でもユーザ責任でTPM未使用オプションが設定できれば済む話です。Win 11プレビュー版は、TPM無しでも動作します。このオプション相当は既に存在します。

TPM効果、その具体的・数値的な攻撃防御差評価は、必要でしょう。

Windows 11とWindows 10の運用対処法

現在判っているWin 11とWin 10の主な運用面差が下表です。

Windows 11 Windows 10
OSコア 新OS(Cobalt) 旧OS
大型更新 年1回 年2回
サポート期間 大型更新後2年 大型更新後1.5年
サポート終了2025年10月

Win 11の下図のような新GUIに対して、使いなれたWin 10やWin 7に近いGUIへ戻す無償ツールが既にあります。筆者もOSの見た目の新しさは不要です。現行Win 10でさえ、上記ツールを使って効率的なGUIに変えて運用中です。

Windows11の新GUI
Windows11の新GUI

当然ながら新しいOSコア(Cobalt)ですので、旧OS比、見た目以外の性能も改善されるでしょう。

しかし、Win 10の旧OSコアがトラブルなく安定するまで数年を要したことや大型更新回数が年1回に減ったことも考慮すると、最低でもWin 11新OSコア(Cobalt)安定に1年はかかると思います。

従って、次回Win 11大型更新の1年後まで、アップグレードを待つのは、安全策として良さそうです。

Windows 10サポート延長

Win 10のサポート終了は、2025年10月14日となっています。しかし、良い意味で撤回し、「Win 7のようにサポート終了が延長」される可能性は高いと筆者は思います。

その理由は、Win 10 Version 21H1が、20H1からの3世代、2年に渡る同じOSコアの小規模更新をした結果、更新トラブルが減り安定度が増したこと、Win 11へ更新できない多くのWin PCの「最後の受け皿OS」となること、などです。

サポート終了のWin 7、2023年1月10日にサポート終了予定のWin 8.1のPCは、足切りTPMのためWin 11へのアップグレードが不可能です。Win 7/8.1世代のPCは全てWin 10になり、アップグレードしないWin 10を含めて2025年10月までこれらPC群は稼働できます。

4年半後、2025年10月予定のこれらPC群へのWin 10サポート終了は、多くのユーザ反感を買うと同時に、セキュリティ更新無しで稼働するPCを多数生みます。

何らかの方法でWin 10へTPM相当機能を実装するか、または、セキュリティサポートを延長することは、これまで足切りアップグレードを避けることでシェアを伸ばしてきたMicrosoftの宿命だと思います。

まとめ

2025年10月14日のWindows 10サポート終了までは、Windows 11 TPM要件のため、所有3PCをWin11とWin10の2種運用とするか、それとも3PCともWin10運用とするか、今秋のWindows 11リリース後のトラブル状況や、前章までに示した対処法で決める予定です。

ポイントの1つは、TPM未使用のWin 10 PCとTPMを使うWin 11 PCのサイバー攻撃防御差、その費用対効果です。
※ネットカフェのWin PC移行状況でこの評価結果が判ると思います。

ただMCUテンプレートを新たに開発する立場からは、最新PC環境、つまりWin 11で新開発テンプレートの動作確認は必須です。2 OS運用は余分に手間が掛かりますが、Win11とWin10の併用にならざるを得ない、というのがWindows 11ショックの根源です😣。

なおMicrosoftは、Win 11要件の見直しも行っているようです。TPM相当手段や未使用オプションなどに期待しています。また、7月14日発表のWindows 365 Cloud PCも、料金次第ですが気になる存在です。

* * *

速報:Microsoftは、7月15日(米国現地時間)、Windows 11とは別に、次期Windows 10バージョン 21H2 、サポート期間1.5年の提供を発表しました。また、5年サポート期間の Windows 10バージョンLTSC(Long-Term Servicing Channel)も提供するようです。今秋、提供開始予定です。

21H2 Sun Valleyは大規模更新

5月19日に手動更新したWindows 10 21H1は、その後も安定して動作中です。この21H1と次回大型更新で「この10年間で最も重要なWindowsアップデートの1つ」と言われるSun Valleyこと21H2 の2記事を紹介し、今秋21H2大規模更新失敗時の対処案を示します。

秋21H2は大規模更新、春21H1機能追加はわずか

今秋のWindows 10大型更新は、Microsoft CEO) Nadella氏よると「この10年で最も重要なWindowsアップデートの1つ」で、スタートメニュー、アクションセンター、ファイルエクスプローラー、タスクバーなどの見慣れたユーザインタフェース(GUI)が新しいデザインへ変更、新機能追加の可能性もあるそうです(CNET Japan、2021/06/03)。

6月24日のオンラインイベントで次世代Windowsの詳細が発表されそうです。開発コード名Sun Valleyこと次期Windows 10バージョン21H2は、大規模更新になりそうです。

一方、今春の“21H1の機能追加はわずか(日経クロステック、2021/05/31)”の記事で、Windows 10大型更新と更新規模、その更新プログラム配布方法について解り易い図が掲載されていますので、抜粋し21H2の予想を追加しました。

Windows 10バージョン 大型更新開始時期 更新規模 更新プログラム配布方法
20H1 2020年上期 大規模? 通常(一括ダウンロード)
20H2 2020年下期 小規模 有効化パッケージ
21H1(今春:現状) 2021年上期 小規模 有効化パッケージ
21H2(今秋予定) 2021年下期 大規模? 通常(一括ダウンロード予想)

更新プログラム配布方法の有効化パッケージとは、大型更新開始前に、更新内容を無効化した状態でPCへ段階的に更新プログラムをパッケージで配布しておき、大型更新時にそれらを有効化する方法です。小規模更新の場合には、更新プログラムダウンロード時間が短くなるなどのユーザメリットがあります。

大規模更新では事前配布パッケージ自体もおそらく大きくなるため、Windows7から8/8.1への更新と同様、事前配布無しに一括して更新プログラムをダウンロードする通常方法になると予想します。

OSクリーンインストール歴史

Windows 10初版リリースが2015年なので、ここ10年の範囲にはWindows 7や8/8.1なども含まれるでしょう。筆者は、Windows 7や8の時代は、新OSリリースに合わせて、または、PCの調子が悪い時は、リカバリよりもOSクリーンインストールを行っていました。

既存アプリケーションの再インストールや再設定も必要で、手間と時間がかかる作業でしたが、リカバリよりも新OSをクリーン環境で使うメリットが大きいと判断したからです。

Windows 10へアップグレート後は、クリーンインストール回数は減り、20H1以降は、全てのPCで問題なく大型更新が成功しています。クリーンインストールの手間を考慮すると、少々のトラブルは、自己修復してきたとも言えますが、それでも旧OSに比べ、安定度や安心感は高いと評価しています。

Windows 21H2大規模更新失敗対策案

今秋21H2は、操作性も含めた大規模更新で、開発中止したWindows 10X機能などを含める噂もあり、共通コアOSに比べ、更新失敗の可能性は高くなります。関連情報を収集分析しますが、所有PCは、最終的には3つの更新結果になると予想しています。

  • 21H2手動更新成功
  • 21H2手動更新失敗➡21H2クリーンインストール
  • 21H2手動更新失敗➡21H1へリカバリし継続使用

更新成功を期待しますが、失敗時は、21H2をクリーンインストールする案と、21H1へリカバリして継続使用する2案があります。

現在使用中の21H1は、20H1から続く共通コアOSのWindows 10です。21H1サポート終了の2022年12月(2022年5月という記事もあり)までは、継続使用でも安心して運用ができます。またGUIも、現状のままでも不満はありません。

最新21H2をクリーンインストールするか否かは、発表される次世代Windowsの内容次第です。

魅力的なOSであれば、手間をかけてもクリーンインストールするでしょう。次世代Windowsの内容は、本ブログでも適宜取上げていきます。

21H1手動更新成功

5月19日、2021年春のWindows 10 21H1手動更新に成功しました。更新方法は、関連投稿:20H2の時と同じです。

Windows 10 Version 21H1
Windows 10 Version 21H1

2日経過した現在、トラブルは無く、Microsoft Office/LibreOfficeやブラウザなどの主要アプリケーション、FreeRTOSアプリケーションテンプレート開発に使用中のMCUXpresso IDEも正常に動作しております。1世代前の20H2と特に変わった点は見当たらず、今回もまた小規模更新でした。本稿も最新21H1で作成しました。

要点と春21H1手動更新用USBメディア作成

前回の20H2との違いは、21H1用のMediaCreationTool21H1.exeをダウンロードし、USB/DVDメディアを作成する点です。どなたでもダウンロードできます。

21H1ビルド番号は、19043.985です。コチラの記事のMicrosoft表明から、既に何回か更新されています。

手動更新の要点は、「旧Windows 10 20H2起動状態」で、作成したUSBのsetup.exeを実行すること、トラブルに備えた「バックアップ&リカバリーができる」ことです。これらを注意すれば、個人用ファイルと既存アプリを引き継いだまま、手動でWindows 10 21H1へ更新できます。

その他の留意事項

手動更新メリットは、ユーザ主体でWindows更新ができることです。デメリットは、Windows 10レジストリがデフォルト値に戻ること、一部の既存アプリ設定が引き継がれない場合があることです。

弊社の場合、今回の手動更新で、Dynamic Theme、EaseUS Todo Backupに引き継がれていない設定がありました。特に、EaseUS Todo Backupは、バックアップアプリで重要です。このように、重要なアプリは、Windows更新完了後、ユーザ自身で動作と設定確認をすることをお勧めします。

※OS更新後の既存アプリ動作と設定確認は、手動更新以外の方法でもユーザ自身で行う必要があると思います。細かい話をすると、ローカルアカウント画像が引き継がれていないPCもありました😅。この程度は、更新トラブルに含めません。

秋21H2:大規模更新リスク対処

年2回のWindows 10大型更新と更新規模
年2回のWindows 10大型更新と更新規模

各種Windows記事によると、次回秋の21H2は、スタートメニューなど操作性も含めて大規模更新になるそうです。

今回春の21H1は、従来OSコアと共通の小規模更新でした。そこで、弊社所有Windows PC 3台全てを19日に手動更新し、2日経過した現在、いずれも安定動作しております。更新に要した時間は、0.5日/3PCでした(バックアップ時間除く)。

大規模更新が見込まれる次回21H2は、更新トラブル有無を1PC当たり2~3日かけて慎重に確認後、段階的に手動更新する予定です。

小規模更新との差は、動作確認を3PC並列に行うか、1PCずつ直列に行うかです。直列確認中に1台でもトラブルが発生した時は、以降のOS更新を止めます。これにより、作業中の業務停止を防ぎ、Windows大規模更新へのリスク対策とします。

今秋のMCU開発業務が一段落付いた頃を見計らって、21H2大規模更新に1週間/3PCを費やす予定です。

半導体とMCU開発者

3月19日発生のルネサスエレクトロニクス半導体工場火災により、半導体不足が更に深刻になりつつあります。MCU開発者向け弊社ブログの2月記事は、半導体に関するものを4件投稿しましたので、半導体とMCU開発者の関係を整理してみました。

半導体の歴史

半導体の歴史(出典:日立ハイテクサイト)
半導体の歴史(出典:日立ハイテクサイト)

日立ハイテクサイト掲載の半導体の歴史を見ると、半導体が人々の生活を実質的に変え始めたのは、1980年以降、今から僅か40~50年前に始まったのが判ります。テレビゲームなどがMCU開発者数を急増させ、同時に開発環境の高速・高度化も必要となりPCやRAMも発展しました。

数学、物理学、化学などに比べると半導体の歴史は浅いのですが、これら学問を基礎として急激に発展します。そして、その原動力は、顧客ニーズの実現です。

半導体集積チップ製造とルネサス工場火事

顧客ニーズをかなえる第一歩が、より集積度を向上した半導体集積チップの製造です。より小さく低消費電力で高速な最先端半導体チップが求められ、これを製造できる最先端ファウンドリーが世界で数社しなないため半導体不足が発生します(関連投稿:2月5日、開発者向けMCU生産技術の現状)。

火災発生のルネサス工場は最先端半導体ではないものの、自動車MCU関連が多く「1か月以内の再生産開始を目指す」発表も危惧されています。

ルネサス火災の影響を受ける半導体製品(出典:ルネサス発表)
ルネサス火災の影響を受ける半導体製品(出典:ルネサス発表)

自動車を運転する半導体

数年毎にモデルチェンジする自動車は、半導体のショールームです。例えば、新車で目立つデイライトとウインカーを兼ねるライト制御やサイドブラインドモニターなどの運転支援機能は、半導体の機能高度化により実現されます。他社差別化に、半導体が提供する機能が大きく寄与する訳です。

自動運転が実現すると、自動車を運転するのは人ではなく半導体です。つまり、顧客シェアを決めるのは、半導体だとも言えます。

最先端半導体の供給が滞れば、現状の半導体に機能を押込んででもシェアアップを目指すのはどの会社も同じです。需要(ニーズ)と供給(製造)、調達価格が、市場に出回る半導体チップを決めます。自動車半導体の供給不足は、自動車産業だけに留まらず産業・インフラ・IoTなど全てに影響を与えるのは自明の理です。

半導体とMCU開発者

あくなき顧客ニーズを、ソフトウェアやハードウェアに変換し半導体に実装するのが、我々開発者です。実装には時間が必要ですので、顧客ニーズと製品提供機能にタイムラグが生じます。このタイムラグを少なくするために、製品化サイクルはどんどん短くなります。

ニーズを満たす製品提供タイミングは、重要です。僅か1か月のターゲットMCU供給遅れでも、製品化は1ヶ月遅れでは済まず、売れない製品となります。

一旦高機能化した半導体を使うと、たとえ価格を下げても元に戻ることを顧客は好みません。常に最新製品を求めるのが顧客です。開発者が高速・高性能なPCを使った開発環境を味わうと、従来PC環境に戻れないのと同じです。

歴史が示すように「半導体ビジネスは、顧客ニーズを満たす半導体が、タイミング良く供給されて初めて成り立ち、短い製品化サイクルに苦労するMCU開発者が報われる」ものです。

世界的半導体不足や今回の火災が、我々MCU開発者に与える影響が少ないことを祈るのみです。

LibreOffice 7.1 Communityリリース

LibreOfficeとThe Document Foundation

2021年2月3日、LibreOffice Fresh(最新版)/Still(安定版)ともに7系に更新され、同時にCommunityとEnterpriseという表記が追加されました。本稿は、2021年2月4日のLibreOffice日本語チームBlogを基に、Community/Enterpriseとは何か、これまでのFresh/Stillと何が違うのかを調査しました。

CommunityとEnterpriseの背景

Communityは、これまで同様無償のボランティアサポート版、Enterpriseは、Collabora社などのエコシステムパートナから技術サポートなどが得られる企業版です。

パッケージ   想定ユーザ 2021/02/03版数
Community Fresh(最新版) 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 7.1.0
Community Still(安定版) 家庭、慎重なユーザ向け 7.0.4
Enterprise パートナ提供 ビジネス組織、法人企業向け Collabora版など
LibreOffice (2021年2月10日現在)

Community とEnterpriseに分けられた背景は、LibreOfficeの導入が企業や団体でも増えた結果、ボランティアサポートに負荷が掛かりすぎたためだと推測します。LibreOffice開発元の独)TFD:The Document Foundationは、従来から企業向けには、様々なメリットがあるEnterprise版の利用を推薦してきたようです。

オープンソースソフトウェアは、ユーザシェアが増えると企業と個人向けに分けて配布されるようになるのは、Linuxなどと同様と考えれば良いのかもしれません。つまりそれ程、LibreOfficeのシェアが増えてきた結果とも考えられます。

LibreOffice Community 7.1新機能

個人利用に関しては、これまで通りLibreOffice Community Fresh(最新版)/Still(安定版)を使えます(以下、Community表記省略)。どちらも7系となったLibreOffice 7.1の主要新機能は、2分弱の動画でご覧いただけます。

筆者は、LibreOfficeの図形描画ツール:Drawを、「高価なMicrosoft Office Visioの代わりにWord/Excelなどでも使える高度描画ツール」としてお勧めしてきましたので、Fresh 7.1 Drawの追加機能の一部を説明します。

関連投稿:LibreOffice Fresh更新とDraw使い方のコツ

LibreOffice Fresh 7.1のギャラリー追加拡張機能

Draw 7.1のギャラリーに、新に色々なギャラリーをウェブサイトから追加できる拡張機能が加わりました。

LibreOffice 7.1ギャラリーで追加されたウェブサイトギャラリー追加ボタン
LibreOffice 7.1ギャラリーで追加されたウェブサイトギャラリー追加ボタン

これに伴い、右側7.0のギャラリー表示ボタンと新しいテーマボタンが、左側7.1のギャラリー下段へ移動し新しいテーマボタンもNew…へ変わりました。この右端の「Add more galleries via extensionボタン」が、7.1のギャラリー追加機能です。

この拡張機能ボタンをクリックすると、様々なギャラリーをウェブサイトからインストールできることが判ります。前回7.0 での投稿:新しいギャラリー追加方法で示した各種矢印も、Arrows 6.4 Galleryで提供済です。

LibreOffice 7.1のウェブサイトでインストールできるギャラリー例
LibreOffice 7.1のウェブサイトでインストールできるギャラリー例

矢印の他にも、回路図やパズルなどのギャラリーもあります。このギャラリー追加機能は、DrawだけでなくWriterやCalcなど全てのLibreOfficeツールで共通の機能です。

LibreOffice 7.1は、従来の7.0よりも多様な図形描写がより簡単にできます。

まとめ

従来同様に使用できる個人向けLibreOffice Communityは、Fresh 7.1.0、Still 7.0.4に更新、ともに7系になりました。LibreOffice Community Fresh 7.1.0のギャラリーに、新たにウェブサイトギャラリーの追加機能が備わり、7.0.4よりも多様な図形描写が簡単にできます。

TDFは、技術サポートなどがあるエコパートナ提供のLibreOffice Enterprise利用を、企業向けLibreOfficeとして推薦しています。

LibreOfficeギャラリーの新しいテーマ追加方法

1月22日現在、LibreOffice Fresh(最新版)は7.0.4、Still(安定版)は、6.4.7です。LibreOffice6系は、この6.4.7が最後で、以降はStill(安定版)も7系が提供されます。本稿は、6系ギャラリーを7系でも使う方法を示します。

LibreOffice版数(2021年1月22日現在)
パッケージ 想定ユーザ 2020/12/17版数
Fresh(最新版) 技術マニア、新しいもの好き、パワーユーザ向け 7.0.4
Still(安定版) ビジネス組織、法人企業、慎重なユーザ向け 6.4.7(6系最終)

6系と7系のギャラリー差

LibreOffice6系(左)と7系ギャラリー(右)の差
LibreOffice6系(左)と7系ギャラリー(右)の差

6系と7系の矢印ギャラリーです。筆者が6系でしばしば用いた赤上昇、緑降下を示す矢印は、7系ではありません。LibreOfficeのメジャー更新では、「学校と大学」ギャラリーのように提供テーマが消えるだけでなく、「矢印」のような同じテーマでも提供される図が変わることがあります。

旧版で使い慣れたギャラリーの図は、メジャー更新後もそのまま同じように使いたいと思います。そこで、6系の矢印ギャラリーを例に、7系の新しいテーマへ旧系の図を追加する方法を示します。

LibreOfficeギャラリーの新しいテーマ追加方法

LibreOffice更新は、オプションなどのユーザ追加設定は引き継がれますが、ギャラリーなどのプログラムは完全に消去され新版へ変わります。このような更新の一部機能引き継ぎは、1:手動エクスポート、2:LibreOffice更新、3:手動インポートの3手順で行います。

Step 1:手動エクスポート

新版でも使いたい旧系の図を、例えばデスクトップ上などの別フォルダへコピーします。

6系矢印ギャラリーの場合は、C:\Program Files\LibreOffice\share\gallery内に各種の図があり、最初の図の赤上昇はA42-TrendArrow-Red-GoUp.svg、緑降下はA43-TrendArrow-Green-GoDown.svgです。

Step 2:LibreOffice更新

LibreOfficeは、勝手に更新を始めません。

新版通知は、LibreOffice使用中にダイアログで表示されます。更新方法は、コチラの関連投稿を参照して頂くか、またはダイアログに従って操作すれば、ユーザ主体で問題なく更新できます。

Setp 3:手動インポート

新版へLibreOffice更新後、最初の図の新しいテーマをクリックします。

新しいテーマプロパティのファイルタブを開き、ファイルの検索(F)でエクスポートしたフォルダを選びます。すると、エクスポートフォルダ内の図ファイルがリスト表示されます。A42-TrendArrow-Red-GoUp.svgとA43-TrendArrow-Green-GoDown.svg を選択し、追加(A)>OKクリックで新版の新しいテーマへ旧版の図が追加されます。

LibreOfficeの新しいテーマの手動インポート方法
LibreOfficeの新しいテーマの手動インポート方法

追加後、新しいテーマのファイル名を、例えばMyPictureなどへ変更すると手動インポートギャラリーが判り易くなります。

エクスポートした図のすべて追加(D)や、プレビュー(E)を見ながらの選択も可能です。手っ取り早く、旧版ギャラリー図を全て手動エクスポートし、個々の必要性をプレビューで検討しながらインポートすることもできます。

PCインストール版Microsoft Officeライフサイクル

バージョン メインストリームサポート終了日 延長サポート終了日
Office 2013(SP1) 2018-04-10(終了) 2023-04-11
Office 2016 2020-10-13(終了) 2025-10-14
Office 2019 2023-10-10 2025-10-14

PCインストール版Microsoft Officeのライフサイクルが上表です(Windows/Officeライフサイクルを再確認の記事から抜粋)。

つまり、Office 2019以外は、既にメインストリームサポートが終了しています。COVID-19の影響でこの終了日が延期される可能性もありますが、いずれにしても今後2~4年でPCへインストール済みOfficeの安心・安全性は低下します。

Microsoftは、Office 365でWeb版有償Officeサービスを継続して提供します。もちろんWeb版無償Officeも提供中ですが、Microsoft Officeは結局デスクトップ版が必要になる理由からも判るように、無償版の目的は、有償版へユーザを誘導することです。営利目的ビジネスなので当然です。

カテゴリ:LibreOfficeの目的

文書作成ソフトウェアは、PCには必須のツールです。

マルチプラットフォーム(Windows/Mac/Linux)動作で無償オープンソースLibreOfficeの習得は、追加コストなしでPCインストール版Officeの代替対策になります。Officeライフサイクルから、あと数年でOfficeと同レベルでLibreOfficeが使えるようになれば十分でしょう。

※図形描画ツール:LibreOffice Drawだけの習得でも効果があることは、コチラの関連投稿をご覧ください。

本ブログは、Windows環境に慣れたMCU開発者が、Windows起因のトラブル遭遇時、受諾中のMCU開発を中断なく継続する手段として、バックアップMCU開発環境:Linux Mint/LibreOffice/IDEの活用を想定しています。

ブログカテゴリ:LibreOfficeは、バックアップMCU開発環境上で文書作成するためのお役立ち情報です。もちろんWindows上でも動作しますので、もしもの時に備えてLibreOfficeを使ってみてはいかがでしょう?

IoT MCUコア次世代像

PCのCPUは、IntelとAMDの2社が独占状態でした。しかし、AppleがARMベースの新CPU:M1を発表し、そのコストパフォーマンスは、Intel/AMDの3倍(!)とも言われます(記事:「ソフト技術者もうなるApple「M1」の実力、新アプリに道」や、「Apple M1の実力を新世代のIntel/AMD CPUと比較」など)。

本稿は、これらPC CPUコアの現状から、次世代IoT MCUコアの3層構造と筆者希望的観測を示します。

CPUコア:Apple/Intel/AMD

筆者が学生だった頃は、マシン語のPCソフトウェアもありました。CPUコア性能が低いため、ユーザ要求を満たすアプリケーション開発には、ソフトウェア流用性や開発性を無視したマシン語開発もやむを得ない状況でした。

現在のCPUコア性能は、重たいGUIやネットワーク処理を複数こなしても、ユーザ要求を満たし、かつ流用性も高いC/C++などの高級言語でのアプリケーション開発が普通です。Appleは、この状況でIntel/AMDコストパフォーマンス比3倍のM1 CPUを開発しました。

このM1 CPUを使えば、従来CPUのボトルネックが解消できるために、より優れたGUIや新しいアプリケーションの開発が期待できます。

このM1実現の鍵は、5nmルールの製造技術と新しいCPU設計にあるようです。

MCUコア:ARM/Non ARM

MCUはARMコアとNon ARMコアがありますが、Non ARMコアのコストパフォーマンス比は、M1程ではありません。従って、主流はARM Cortex-M系シングルコア採用MCUで、事実上ARMコア独占状態です。開発言語はC言語でベアメタル開発、製造プロセスも数10nmと、いわば、数10年前のIntel独占CPUコアに近い状況です。

RISC-Vという新しいMCUコアも出てきましたが、まだ少数派でその性能も未知数です。Intel/AMD CPUと比較記事の最後に記載された「競争こそユーザの利益」には、MCU世界はなっていません。

ARMはコア設計図のみ提供し、デバイス実装はMCUベンダが担当します。従って、現状のMCU世界が続く場合には、MCU高速化は製造技術進化とマルチコア化が鍵です。

ARMは、エッジAIに向けたNPUを発表しました。独自MCUコアと付随する開発環境を提供でき、かつコストパフォーマンスがARMコアの数倍を実現できるMCUベンダが無い現状では、ARMの頑張りがIoT MCUを牽引すると思います。

NVIDIAによるARM買収が、今後のARM動向に及ぼす影響は気になる状況ではあります。

IoT MCUコア

MCUコアとCPUコアの一番の差は、ユーザ要求コストです。これは、同じコアのMCU製品に、内蔵周辺回路やFlash/RAM容量の異なる多くのデバイスをベンダが提供中であることからも解ります。ユーザは、MCUに対して無駄なコストは払いたくないのです。

つまり、MCUデバイスはアプリケーション専用製品、CPUデバイスは超汎用製品、ここが分岐点です。

IoT MCUには、エッジAI、セキュリティ、無線通信(5GやWi-Fi)などのIoT機能追加が必要です。これら機能を並列動作させる手段として、RTOSも期待されています。この状況対応に、MCUコアも高性能化やマルチコア化に進化しつつあります。

セキュリティや無線通信は、予め決まった仕様があり、これら対応の専用ライブラリがベンダより提供されます。但し、セキュリティは、コストに見合った様々なセキュリティレベルがあるのも特徴です。ソフトウェア技術者は、専用ライブラリのMCU実装には神経を使いますが、ライブラリ本体の変更などは求められません。この仕様が決まった部分を「IoT基本機能」と本稿では呼びます。

MCUソフトウェア開発者が注力すべきは、ユーザ要求に応じて開発するIoTアプリケーション部分です。この部分を、「IoT付加機能」と呼び、「IoT基本機能」と分けて考えます。

ユーザのアプリケーション専用MCU製品意識は、IoT MCUでも変わりません。例えば、IoT基本機能の無線機能は不要や、ユーザがコストに応じて取捨選択できるセキュリティレベルなどのIoT MCU製品構成になると思います。一方、IoT付加機能だけを実装するなら、現状のMCUでも実現可能です。

以上のことから、IoT MCUは3層構造になると思います。

IoT MCUコアの3層構造
IoT MCUコアの3層構造

機能 追記
Back End IoT MCU IoT基本機能+付加機能+分析結果表示 収集データ分析結果ビジュアル表示
IoT MCU IoT基本機能+付加機能 高性能、マルチコア、RTOS利用
Front End IoT MCU センサデータ収集などのIoT付加機能
最小限セキュリティ対策
収集データは上層へ有線送信
コスト最重視

最下層は、ユーザ要求アプリケーションを実装し、主にセンサからのデータを収集するFront End IoT MCUです。ここは、現状のARM/Non ARMコアMCUでも実現できIoT付加機能を実装する層です。デバイスコスト最重視なので、最小限のセキュリティ対策と収集データを有線、または無線モジュールなど経由で上位IoT MCUへ送信します。IoT MCUサブセット版になる可能性もあります。

中間層は、高度なセキュリティと市場に応じた無線通信、エッジAI機能などのIoT基本機能がフル実装できる高性能MCUコアやマルチコア、RTOS利用へ進化した層です。IoT付加機能も同時実装可能で、下層の複数Front End IoT MCUが収集したセンサデータを、まとめて上位Back End IoT MCUまたは、インターネット空間へ直接送信できます。製造技術進化とマルチコア化、ARM新コア(Cortex-M23/33/55など)が寄与し、IoT MCUの中心デバイスです。

最上層は、第2層のIoT MCU機能に加え、インターネット空間で収集データを分析・活用した結果をユーザへビジュアル表示する機能を追加した超高性能MCUコア活用層です。自動車のADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)のおかげでユーザへのビジュアル表示要求はより高度になります。このユーザ要求を満たす次世代の超高性能IoT MCU(またはMPU)が実現します。

最下層のFront End IoT MCUは、現状のCortex-M0+/M4コアで弊社テンプレート適用のMCUが生き残ってほしい、というのが筆者の希望的観測です。
それにしてもAppleのコスパ3倍M1、凄いです。iPhoneもそうですが、抜きん出た技術と経営能力、Jobs精神、健在ですね。

LibreOffice Fresh更新とDraw使い方のコツ

2020年10月29日、無償でWindows/Mac/Linux全てのPCに使えるLibreOffice Fresh(最新版)がv7.0.3に更新されました(Still(安定版)はv6.4.7)。LibreOffice Drawを使った、実践的で簡単・短時間作図方法を、本ブログのカテゴリ図を例に説明します。

LibreOffice Draw作成のカテゴリ関係図
LibreOffice Draw作成のカテゴリ関係図

文章を読んでもらうには、読者の目を引付ける図が必要です。問題は、この図を簡単・短時間で作図できるか?です。この実現のため、Draw作図のコツを説明します。作成した図は、Word/Excel/PowerPoint などのOfficeツールへの挿入も簡単です。Draw応用範囲は広いと言えます。

Draw(Visio)とImpress(PowerPoint)

LibreOffice Drawは図形描画ツール、Impressはプレゼンツールです。これらに相当するOfficeツールが、VisioとPowerPointです。プレゼンツールのImpressやPowerPointは、1スライド3分、数行の文章記述がプレゼン中の基本です。従って、その描画能力もこれに準じた簡易なものです。

一方DrawやVisioは、図形専用のためより細かく高度な描画が可能です。

Drawで作成した図は、Officeツールへも挿入ができます。Draw相当のOffice Visioは、Word/Excel/PowerPointとは別パッケージで、しかも高価です。つまり、Drawが使えると、「WordなどのOfficeへも広範囲に適用できる高度な無償図形描画ツールを得た」ことになります。

Drawの基本的使い方は、関連投稿:LibreOfficeの使い方(総集編)をご覧頂くか、または、カテゴリのLibreOfficeをクリックすると、LibreOffice関連投稿だけが選抜されますので参照してください。

本稿では、基本的使い方の次の段階、実践的で簡単・短時間のDraw作図方法を示します。

LibreOffice Draw簡単・短時間作図方法

具体例が無いと解りにくいので、本ブログのカテゴリ関係図を例に作図します。

本ブログは、MCU:マイコン開発に関する投稿が主、このMCU開発の土台であるPC:パソコンと、MCU開発の比較対象としてMPU/SBC:IoTプロセサに関する投稿が従の関係です。文章で書くと簡単ですが、このカテゴリ関係を図示したのが最初の図です。

作図の流れ

最初にDraw作図の流れを示し、簡単・短時間で作図するポイントやコツを示します。これ以降は、ギャラリーのダイアグラムを例に説明します。

  1. 図のイメージを持つ(大まかで良い)
  2. ギャラリーからイメージに近いダイアグラムを選択し、作図ページへ配置
  3. 配置ダイアグラムを、イメージに合わせ修正し、最後に基本図形で修飾

(1)描きたい図を大まかにイメージすること、(2)そのイメージに近いダイアグラムを右側ギャラリーから選び、(3)そのダイアグラムを修正後、左側基本図形で細かい修飾を加えるなどのイメージ具体化をすること、の3段階です。つまり、イメージ主体で作図することです。

※ギャラリーと基本図形の位置は、LibreOffice標準ツールバーのデフォルト位置で説明します。

ポイント:ギャラリー利用

イメージに近いギャラリーパーツを選択すること、これが簡単・短時間Draw作図最初のポイントです。

ギャラリーのダイアグラムパーツ
ギャラリーのダイアグラムパーツ

基本図形は、図形同士の関係や、注釈を加える時に便利なパーツを集めたものです。ギャラリーは、利用頻度が高く半分完成したパーツを集めたもので、ダイアグラムやフローチャートなど多くの既成パーツがあります。

このダイアグラムの中にイメージに近いパーツがあるハズです。無ければ基本図形を使って0から作図することも可能ですが、手間暇がかかります。イメージがあれば、パーツ選択は早く簡単です。

ギャラリーパーツ修正のコツ

よりイメージに近いパーツへ修正するコツは、ページにダイアグラム配置後、直に左クリックすることです。ギャラリーパーツ修正メニューが表示されます。

この修正とは、ギャラリーパーツの「形を保持したまま」各種変更を加えることです。

ギャラリーパーツ配置後、左クリックで現れる修正メニュー
ギャラリーパーツ配置後、左クリックで現れる修正メニュー

領域(R)や線(I)選択で、ダイアグラム配色や境界線の色が変更できます。グループ解除(U)とグループに入る(E)は、1つのダイアグラムを構成しているパーツが複数ある時に、それぞれ別々に修正する時に使います。

図形変形加工のコツ

ダイアグラムそのものの形を加工するコツは、標準ツールバーの、変形ボタンをクリックすることです。

ギャラリーパーツの変形加工時に使う標準ツールバー変形ボタン
ギャラリーパーツの変形加工時に使う標準ツールバー変形ボタン

ダイアグラムは、半分完成のパーツです。大小サイズ変更は簡単ですが、半完成の形そのものの変更には、標準ツールバーにある「変形ボタン」をクリックします。カーソルが「⇋」など通常カーソルから変わり変形モードになったことが解ります。

変形モードには、ダイアグラムを傾斜させる、ゆがめるなどの選択肢があります。文章での説明は難しいので(アプリケーション付属ヘルプを読んでも、役立たないのと同じ現象が懸念されますので😅)、実際に一度試してください。

ダイアグラムの形そのものを、簡単に変えられることが解ります。

まとめ

LibreOffice Draw作図のポイント、コツを説明しました。動画があれば別ですが、文章や図だけでの説明は、なかなか難しく解り難かったと思います。しかし、くどい説明より、後は操作の慣れの問題です。

実際にLibreOffice Drawを使いながら本稿を読んで頂ければ、直に解り、操作にも慣れます。

思い描くイメージをすばやく具体化するには、作図途中でイメージと関係ない余分な操作は無い方が効果的です。そこで、ギャラリーからイメージに近い図を選び、これを修正・加工するイメージ主体Draw作図方法を示しました。

Drawで作成した図は、WordやPowerPointへもコピー&ペーストで簡単に挿入でき、繊細で高度な図も描写できます。本稿で示した簡単・短時間で作図するポイントやコツを使って、是非Drawをご活用ください。


Windows 10 20H2更新方法

年2回のWindows 10大型更新、Windows 10最新バージョン20H2がリリースされました。Windows Updateを待たずにユーザ主体で最新のWindows 10大型更新を実行する方法と、そのメリット/デメリットを示します。

まとめ

準備 MediaCreationTool20H2.exeダウンロード 0.5時間
※Pro/64bitは8GBでOK
USB/DVDインストールメディア作成
旧Windows 10バックアップ(更新失敗リカバリ対策) ※環境依存で省略
更新 旧Windows 10起動状態で作成USBのsetup.exe実行 1~3時間(PC依存)
※この間クリック1回
新Windows 10へ引き継ぐもの選択後インストールクリック
新Windows 10の大型更新自動完了

旧Windows 10バージョン2004のアプリケーションとユーザデータの両方を保持したまま、新Windows 10バージョン20H2を上書きインストールする方法です。メリットとデメリットが以下です。

メリット いつ始まるか判らない新Windows 10大型更新をユーザ主体で開始
タイミングの良いバックアップを取るので、良いところからリカバリ
アプリとユーザデータ両方保持で、新Windows 10でも即開発継続
USBは複数PC更新に使え、新Windows 10トラブル回復ツールにもなる
デメリット レジストリはデフォルト値へ戻る。ユーザ変更時は再設定が必要。

Windows 10上書きインストール準備

Windows 10大型更新がリリースされると、同時にMicrosoft公式ツール:MediaCreationTool20H2も発表されます。

MediaCreationTool20H2は、Windows 10新規/再インストールに必要な全ファイルをUSBやDVDへ保存するツールです。Windows ProとHome、64ビット版と32ビット版の各バージョンを保存できますが、Windows Pro/64ビット版のみなら8GB容量のUSBで十分です。

MediaCreationツールでUSBメディア作成の様子
MediaCreationツールでUSBメディア作成の様子

ツールダウンロードとUSBメディア作成時間は、ダウンロードリンク速度に依存しますが、約30分です。

作成したUSBは、複数PCの大型更新に使えます。また、Windows 10起動トラブル、例えばスタートアップ修復やコマンドプロンプト処理などの回復ツールとしても動作します。

MediaCreationツールで作成したUSBメディアの大型更新と回復の2用途
MediaCreationツールで作成したUSBメディアの大型更新と回復の2用途

以上がWindows 10上書きインストール開始前の最低限の準備です。

但し、今回に限らずWindows 10の大型更新には、多くの不具合報告があります。使用中のPCが大型更新で不具合に遭遇しても、不具合前へリカバリできるシステムバックアップも、更新前のユーザ側準備としては必須です。

バックアップツールは、有償/無償含め様々です。バックアップだけでなく、リカバリができる確認もお勧めします。リカバリ本番で失敗する例は、世の中にたくさんあります。バックアップ所要時間は、使うツールやご利用環境に依存しますので、省略しています。

バックアップのもう1つの重要事項は、タイミングです。開発が一段落したなど、バックアップに適し、ユーザや開発者が安心しているタイミングがあります。ユーザの都合が良いタイミングでバックアップを確実にとり、かつ、Windows 10大型更新を迎えれば、たとえトラブルにあっても冷静に対処できます。

Windows 10上書きインストール更新

Windows 10上書きインストールの最重要事項は、旧Windows 10起動状態で作成したUSB/DVDのsetup.exeを実行することです。以下、Windows Pro/64ビット版USBを例に説明します。

旧Windows 10起動後に準備で作成したUSBを装着し、setup.exeをクリックします。すると、最新の更新プログラムダウンロードが始まり、インストール準備完了へ画面が変わります。

Windows 10上書きインストール更新の様子
Windows 10上書きインストール更新の様子

「個人用ファイルとアプリを引き継ぐ」がデフォルトになっています。これが、旧Windows 10アプリケーションとユーザデータの両方を保持のまま、新Windows 10を上書きインストールする設定です。

引き継ぐもの変更をクリックすると、アプリ、または、個人用ファイルのみ、どちらもなしなども選択可能です。どちらもなしの場合が、クリーンインストールに相当します。

上書きインストール中、このインストール準備完了画面のインストールのみがクリック個所です。インストールクリック後は、何の操作も不要です。PCが勝手に何回か再起動し、新Windows 10バージョン20H2の初期画面が表示され大型更新完了です。

Windows10 20H2のバージョン情報
Windows10 20H2のバージョン情報

更新開始から完了までの所要時間は、PC(ネットワーク速度やPC性能)に依存します。おおよそ1時間から3時間程度です。この間のクリックは1回だけです。クリック後は読書や運動などでもして気楽に新Windows 10初期画面を待てば良いでしょう。

Windows 10上書きインストールメリット/デメリット

Windows 10上書きインストールの最大メリットは、ユーザ主体でWindows 10大型更新を開始できること、同時に、更新失敗に備えたシステムバックアップが取れることです。

どちらもWindows任せ、つまりWindows Updateで自動開始にすると、ユーザや開発者が不安定な時や思わぬタイミングで更新を開始し、バックアップを忘れる、適切なバックアップが取れないなど、本来なら起こるはずが無いユーザ起因のトラブルにも遭遇する可能性がでてきます。

新Windows 10バージョン20H2は、旧Windows 10バージョン2002の小変更版と言われます。小変更なら尚更早く更新完了し、Windows 10最新バージョン20H2による安定したPC運用を望みたいと筆者は思います。但しMicrosoftは、Windows 10バージョン20H2のUpdate配布を遅らせるとの2020/10/23情報もあります。

Windows 10のライフサイクルは、わずか1.5年です。この間半年毎に2回大型更新があり、たとえ各回の更新を延期しても、1.5年後には必ず大型更新が必須です(ライフサイクルは、関連投稿:WindowsとLinux Mintの大型更新比較を参照してください)。

Windows 10起因の大型更新トラブル遭遇確率は、ユーザ主体開始でも自動開始でも大差ないと思います。むしろユーザ主体上書きインストールの方が、ユーザ起因トラブルがない分、トータルの大型更新トラブル確率は低くなるかもしれません。

※本稿は、大型更新トラブルの原因を、Windows 10起因とユーザ起因、これら2つに分けて考えています。

上書きインストールのデメリットは、上書きなのでWindows 10レジストリがデフォルト値に戻ることです。デフォルト値は、MicrosoftがWindows 10運用上、最も安全と考える値です。しかし例えば、ネットワークのパスワード保護共有を有効→無効にユーザが変更している場合などは、再設定が必要です。

ご利用中のPCで、メリット/デメリットを天秤にかけ、本方法適用をご自身でご判断ください。

なお弊社は、本稿のWindows 10上書きインストール更新方法で、メインPC/ノートPC/バックアップPC:3台のWindows 10バージョン1909→2002→20H2の過去3回の大型更新を、運よく(?)成功した実績があります。