AIの隠れ主役はDRAM:「3つの壁」と新技術

AI進化を支えるDRAMの3つの壁と新技術
AI進化を支えるDRAMの3つの壁と新技術

AI PCの要は、CPU/GPU/NPUなのでその性能を示すTOPS値が注目されます。しかし、AI時代の隠れ主役はDRAMDynamic Random Access Memory)が解る2記事を紹介、簡単にまとめました。

AI時代の隠れ主役はDRAMが解る2記事

  1. DRAMの歴史から最先端、そして未来へ2026/06/15、マイナビニュース
  2. AI学習モデルでメモリが重要な理由2026/07/01、マイナビニュース

記事1は、DRAMの変遷とAI時代におけるDRAMの役割について記述しています。記事2は、AI処理の隠れ主役DRAM3つの壁:容量、速度、帯域と、壁打開の新技術について詳しく説明しています。

著者の白竹 茂氏は、メモリ分野の長い開発経験を持つMicronDRAM部門責任者の方ですので、記事は読み応えがあります。そこで、DRAM3つの壁と打開新技術について次章から簡単にまとめます。

AIモデル肥大化と3つのDRAMメモリ壁

生成AIの進化は、人間の脳を模倣した「パラメータ」の数に依存します。このパラメータ数は数千億から数兆に達し、モデル自体が数百ギガバイトの巨大なデータ塊となります。

この巨大モデルを瞬時に展開し、プロセッサ(CPU/GPU/NPU)が超高速アクセスできなければ、AIは「思考」を始めることすらできません。ここで直面するのが、DRAMの「容量」、「速度」、「帯域」という3つの物理的メモリの壁です。

  1. 容量の壁:AI知識量を決定するワーキングメモリの広さ

AIモデルのパラメータ数が増加するとモデルを単一メモリに収めることが困難になってきます。

例えば、一度に学習するデータ量「バッチサイズ」を大きくすれば、並列処理の効率は上がりますが、その分だけ広大なメモリ容量が必要になります。メモリの容量不足は、モデルを複数メモリに分割配置するなどの高度で複雑な対策を強いることになります。

これらパラメータ調整が、AIの学習プロセスでは絶大な影響を与えます。「広大なワーキングメモリ(=作業机)」があれば、調整が上手くでき最適なAI学習が可能です。

  1. 速度の壁:プロセサ空き時間をゼロにする

プロセサが計算を行う際、上記DRAMの「作業机」からデータを取り出し、書き戻す作業を絶えず繰り返します。このDRAMアクセスの遅延(レイテンシ)が大きいと、超高速なプロセサであってもデータ待ちによる「空き時間」が生じ、処理能力が著しく低下してしまいます。

  1. 帯域の壁:AIシステム性能を決めるデータ転送太さ

たとえプロセッサの計算能力が無限であっても、メモリからデータを供給する「通り道」が狭ければ、深刻な渋滞が発生します。これが帯域の壁です。

特に複数プロセサでモデルパラメータをどう修正すべきかという方向性(勾配情報)を同期する際、このプロセサとメモリ間の帯域不足は、AIシステム全体性能の決定要因となります。

DRAMメモリ壁の打開策

DRAM開発現場では、これらのメモリの壁を「ソフトウェアの工夫」で乗り越える試みが続いています。 例えば、メモリ不足(Out Of Memory)でエラーが出る場合は「勾配累積(Gradient Accumulation」という手法を使います。これは、小さなバッチで計算した結果をメモリ上で足し合わせることで、少ないメモリ容量のまま、実質的に大きなバッチサイズで学習したのと同じ効果を得るテクニックです。

一方、このメモリの壁を「ハードウェア側から打ち破る新技術」:切り札として期待されているのが、HBMHigh Bandwidth Memory)とCXLCompute Express Linkです。

  • HBM: DRAM3次元的に積層し、プロセッサのすぐ隣に配置することで物理的な距離を短縮。最新のHBM4では2TB/sという驚異的なデータ転送を実現しています。
  • CXL: CPUGPUがそれぞれのメモリ空間を共有できるようにする新規格です(ユニファイドメモリアーキテクチャ)。これにより、個別のデバイスに縛られない柔軟な「容量の壁」の突破が可能になります。

SummaryAIの隠れ主役はDRAM:「3つの壁」と新技術

AI時代の隠れ主役DRAM記事を紹介し、AI進化の運命を握る「3つの壁」とこれらを打開する「ハードウェア新技術」を示したのが最初の図です。

DRAMは単なるプロセサの一時記憶装置ではなく、AI思考速度と深さがDRAM性能に直結し、膨大なAIデータをプロセサへ供給する「隠れた主役」です。DRAM性能を理解し、パラメータバランス最適化が、次世代AI開発の成否を分ける鍵となる、とメモリ大手Micronの白竹 茂氏は解説しています。

Afterword:高性能DRAMは引っ張りだこ

メモリ価格高騰の背景は、AIシステムの総合性能を決めるのが容量、速度、帯域の壁を破った高性能DRAMメモリだからです。現在クラウド側は、メモリ高性能化を急速に進めています。エッジ側メモリ価格が落ち着くまでは、暫く時間が必要でしょう。



EVO-T2S対EVO-X2比較

Intel EVO-T2S対AMD EVO-X2
Intel EVO-T2S対AMD EVO-X2

Intel最新Core Ultraシリーズ3搭載ミニAI PCの「EVO-T2S」詳細レビュー記事に、AMD Ryzen AI Max+ 395搭載機とのベンチマークがあります。記事を元に、ミニAI PCとして33万円を投資するならCore Ultraシリーズ3EVO-T2SRyzen AI Max+ 395EVO-X2どちらが適すか比較・評価しました。

Core Ultraシリーズ3とは

Core Ultraシリーズ3は、Intel20261月に発表した最先端「Intel 18A」プロセス採用の最新プロセサです。シリーズ2よりもAI処理能力と電力効率を高め、トータル180TOPS能力を価格重視のメインストリームプロセサへも展開します。本稿のEVO-T2Sは、Core Ultra X7 358H搭載マシンです。

Intel Core Ultraシリーズ3ラインナップ(出典:Intel-CES2026-Core-Ultra-Series-3-Press-Deck.pdf)
Intel Core Ultraシリーズ3ラインナップ(出典:Intel-CES2026-Core-Ultra-Series-3-Press-Deck.pdf)

EVO-T2Sレビュー記事概要

EVO-T2Sは、Core Ultra X7 358H64GB LPDDR5X 8533MT/sPCIe 4.0 1TB SSD搭載で本体重量950g、セール価格323,999円です。2.5G/10GLANポート2本、OCuLinkが特徴のインタフェースです。

Intel EVO-T2インタフェース(出典:GMKtec)
Intel EVO-T2インタフェース(出典:GMKtec)

記事中盤からEVO-T2SRyzen AI Max+ 395搭載MS-S1 MAXのベンチマークが比較されています。

各種ベンチマーク結果から、16コア/16シングルスレッドのCore Ultra X7 358H16コア/32マルチスレッドのRyzen AI Max+ 395、内蔵GPUIntel ArcRadeon 8060S、メモリバンド幅などIntelAMDのローカルAIプロセサ性能差が明確に表れています。

つまり、Core Ultraシリーズ3は、シリーズ2より高性能・効率化しましたが、AI処理能力ではRyzen AI Max+ 395に及ばないことが判ります。

記事後半は、EVO-T2Sに中規模LLM64GBオンボード用で大規模LLMではない点に注意)利用の専用ソフトが付属しているため、マシン購入後直ぐにローカルAI PC活用が可能なことも判ります。

対抗機Ryzen AI Max+ 395搭載EVO-X2選定理由

Ryzen AI Max+ 395搭載ミニAI PCは、記事掲載のMS-S1 MAX 以外にも多くの製品があります。これらの中でEVO-T2S対抗機として、同じGMKtec社のEVO-X2を選びました。64GB/1TB SSDと製品仕様が同じで価格も324,990円と非常に近いからです。

Ryzen AI MAX+ 395搭載ミニPC(出典:GMKtecメール)
Ryzen AI MAX+ 395搭載ミニPC(出典:GMKtecメール)

AMD AI CPU 

Cores /
Threads 

Boost2 / Base
Frequency 

Cache 

Graphics Model 

TDP 

NPU
TOPS 

Ryzen AI Max+ 395 

16C/32T

Up to 5.1 / 3.0 GHz

80MB

Radeon 8060S

45-120W

50 

SummaryEVO-T2SEVO-X2比較

同額33万円のEVO-T2SEVO-X2の比較評価をまとめます。

製品
APU

EVO-T2S
(Intel Core Ultra X7 358H)

EVO-X2
(AMD Ryzen AI max+ 395)

CPU動作

16コア/16スレッド

16コア/32スレッド

メモリ容量

64GB(オンボード)

64GB(オンボード)

メモリ仕様

LPDDR5X-8533MT/s

LPDDR5X-8000MHz

メモリ帯域

128bit(一般的)

NPU/GPUユニファイドメモリ
AMD Strix Halo

APU総合TOPS

180 TOPS

126 TOPS

消費電力

最大54W

最大120W

AI PC導入

対応ソフトプリインスト済み
GMKtec Claw, herdsman

ローカルAIユーザ構築必須

価格 (64GB)

323,999(セール時)

324,990円(アマゾン)

ローカルAI PCLLM処理は、CPU/GPU/NPU動作ボトルネックを生まないメモリ帯域が最重要です。

Intel Core Ultraシリーズ3Core Ultra X7 358Hは、上表に示すAMD Ryzen AI Max+ 395よりも一部で優れた仕様があるものの、様々なAIアシスタント開発を試すAIエンジニアには、Strix Halo採用でメモリ帯域の広いEVO-X2が適すと思います。

一方、一般ユーザやビジネスマンには、EVO-X2よりも低消費電力でLLM環境構築が付属ソフトウェアで容易、ローカルAI PC動作を直ぐに試せるEVO-T2Sが適します。

ローカルAI PC同期の課題

取っ手付きミニAI PCが増えてきました。また、Snapdragon X2シリーズ搭載Surface LaptopRyzen AI 400搭載ノートAI PCなど、最新・高性能ローカルAI PC選択肢も増えつつあります。複数のローカルAI PC同期、そしてAI PC運用形態の今後について考察しました。

取っ手付き高性能ミニAI PC

取っ手付き高性能ミニAI PC:MINIX ER939-AI Pro(左)とASrock AI BOX-A395(右)
取っ手付き高性能ミニAI PC:MINIX ER939-AI Pro(左)とASrock AI BOX-A395(右)

近年、デスクトップ級の処理能力を持ちながら、筐体に「取っ手(ハンドル)」が備わった高性能ミニPCが増えてきました。

これらはAMD Ryzen AI Max+ 395などの強力なAPUや、80TOPSの高性能NPUを搭載しており、単独のローカルAI環境で大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIなどの高度ローカルAI処理を十分に実行できる性能を持っています。

最大のメリットは、ローカルAI PCの可搬性です。

80TOPS NPUを持つSurface ProとLaptop(出典:Microsoft)
80TOPS NPUを持つSurface ProとLaptop(出典:Microsoft)

自宅やオフィス、あるいは出張先やイベント会場などへ高性能ミニAI PCやノートAI PCを持ち込めば、高速でプライベートなAI環境を場所に依存せず使え、クリエイターやエンジニアに理想的な選択肢となります。

ローカルAI PC同期

このような高性能ローカルAI PCを複数所有する場合、あるいは既存デスクトップPCやノートPCと併用する場合は、「ローカルAI環境の同期をどうするか」という問題が生じます。

ローカルAI PCの同期には、単なるファイルのバックアップを超えたいくつかの要素があります。

  1. チャット履歴・設定の同期AIアシスタント対話ログや、プロンプト、AIシステム設定の同期。
  2. ナレッジデータベースの同期ユーザドキュメントなど固有ナレッジデータベースの同期。
  3. モデル重み付けの同期微調整(Fine-tuning)などカスタマイズAIモデル重み付けデータの同期。

これらの同期には、GitGoogleドライブ、OneDriveなどの各種クラウドストレージ経由が一般的です。しかし、ナレッジデータベースや重み付けAIモデルは、容量が大きくなる傾向があるため、ネットワークでの高速なP2P同期ツールなどを活用し、差分データのみを効率的にバックグラウンドで同期させるなどの仕組みが運用の鍵となります。

AIアシスタントはローカル/クラウドどちらが便利か

AI PC同期環境を考えるにあたり、そもそもAIアシスタントは「ローカル」と「クラウド」のどちらで運用するのが便利か、それぞれの特性を比較します。

  • ローカルAIアシスタント(AI PC
    • メリット機密情報や個人情報をクラウドへ送信しないプライバシー保護、オフライン動作、通信環境に左右されない低レイテンシ、AI利用料不要。
    • デメリットAI PCハードウェアの初期高額投資、ユニファイドメモリ容量制限、最新クラウド情報を利用しないリスク。
  • クラウドAIアシスタント(OpenAI, Anthropic等)
    • メリット常に最新モデル(GPT-4Claudeなど)を利用可能、スマホや低スペックPCでも最新モデルアクセス可能、アカウント1つでローカルAI PC同期・バックアップ可能。
    • デメリットクラウドサーバーの機密データ漏洩リスク、インターネット必須、API利用料やAI利用料の継続的な発生。

つまり、通常の機密情報処理、特定業務のカスタマイズ処理、さらに通信環境に依存しないAI処理を行う場合は「ローカル」が圧倒的に有利です。一方、リソース無視の超高度推論、ローカルAI環境同期、バックアップの観点からは「クラウド」が便利です。

Summary:ローカルAI PC同期の課題

AI PC ローカル・クラウドハイブリッド運用イメージ
AI PC ローカル・クラウドハイブリッド運用イメージ

取っ手付き高性能ミニAI PCや高性能ノートAI PCなどのローカルAI PC運用は「ローカルAI PC同期」が、非常に重要な課題と考えます。

大容量モデルデータやナレッジデータベース同期は、ネットワーク帯域やストレージ容量制限が伴うものの、差分同期ツールや環境コンテナ化によってクラウド同期・バックアップに期待し、AI PC可搬時の「同一クラウドAIアシスタント利用」も実現できると思います。

今後のAI PCは、「高いプライバシーと機密性を保持するローカルAI PCをメインの思考・作業エンジン」としつつ、必要に応じて「超高度AI処理をクラウド」へアウトソーシングする「ローカル・クラウドのハイブリッド運用」が、先進的エンジニアやクリエイターのスタンダードになっていくと考えます。

Afterword:下記関連投稿も参照ください

  1. ローカルAIとメモリ量相関(2026年版)2026/06/05
  2. AI PCメモリ要件2026/05/15
  3. x64コア電力効率改善2026/05/08

古いブート信頼構成PCのその後

古いセキュアブート証明書の有効期限が切れる6月にWindows PCが起動しない可能性がある、と騒がれたのは今年4月でした。新しいAI PC購入を前投稿の理由で暫く待つ弊社には、既存PC不起動は大問題です。

この既存PCセキュアブート4月状況と対策が下図に示したコチラの投稿でした。本稿は、不起動懸念PCの続報です。

4PCセキュアブート状況
4PCセキュアブート状況

更新する必要がある古いブート信頼構成のPC

上図2番目のセキュアブートオンで更新する必要がある古いブート信頼構成Win11 25H2 PCは、5Windows Updateで古い証明書が更新され、610Updateも無事成功、OSビルドは最新26200.8655になりました。

つまり、手動での古い証明書更新は不要で、最新Win11 25H2 PCとなりました。

RufusアップグレードのPC

上図3番目のRufus手動アップグレードPCも、同様に何の問題も無く最新Win11 25H2 PCになりました。

Summary:古いブート信頼構成PCのその後

セキュアブート起動懸念のあったWindows PCのその後は?
セキュアブート起動懸念のあったWindows PCのその後は?

セキュアブート証明書の有効期限が切れる6PC不起動懸念のあった古いブート信頼構成、および、Rufus手動アップグレードPCの全てが、6Windows Updateの最新OSビルド26200.8655更新に成功し、今日現在、正常に起動・運用中です。

もちろんWindows PCの運用にセキュアブートは要件です。しかし、様々な事情で最新PCが入手できないユーザには、要件を満たさない既存PCを継続利用するRufusのような便利ツールが多いのもWindows PCの特徴です。AI PC購入までは、各種ツールを利用し既存PCを運用したいと思います。

ローカルAIとメモリ量相関(2026年版)

AI PCのローカルAI処理とメモリ量相関(2026年版)
AI PCのローカルAI処理とメモリ量相関(2026年版)

現時点(2026年春)のローカルAI処理とPCメモリ量の相関図です。メモリ高騰の今、新しくAI PCを購入しローカルAI処理を始めるか、それとも、暫く待つかの判断に役立つ2記事があります。筆者は、暫くAI PC購入を待とうと考えています。本稿は、その理由を説明します。

AI PC現状と将来予測

  1. AI PCハードウェアとモデルの現実的な選び方(2026年春)2026/05/22、@IT
  2. 「赤いザリガニ」を飼える時代来る2026/05/25PC Watch

記事1は、現時点のAI PC処理能力・用途を決める最大要因は、ユニファイドメモリ容量であること、様々な量子化LLMモデルとメモリ容量、その最適AI用途対応を示しています。この記事を元に筆者が4bit LLMでのメモリ容量とAI用途の相関関係を示したのが最初の図です(NotebookLM生成図を修正)。

記事2は、AI PC将来予測です。低コストローカルAIエージェントの実現には、ローカルAIモデル軽量化とクラウドAIとの役割分担、つまり、ハイブリッド実装が現実的アプローチを示しています。最初の図で言えば、メモリ容量が下がる方向にシフトすると予測しています。

つまり、AI PCは高速大容量メモリがCPU/GPU/NPUボトルネックを生まないために必須だが、昨今のメモリ高騰対策には、ローカルAIメモリを軽量化し、クラウドAIとのハイブリッド処理が解決策の1つと予測しています。

2026年春のAI PC高騰価格

昨年2025年春は、GMKtec社のEVO-X2 128GBモデルが、(稟議不要の)30万円以下の売価でした。現在は、64GBモデルでも37万円を超えます。メモリ高騰が主因だとしても僅か1年で驚くべき価格上昇です。この価格上昇が、ハイブリッド実装記事2の背景です。

ちなみにMinisforumMS-S1 MAX 128GBモデル(8ch x 16GB551,999円)と64GBモデル (8ch x 8GB463,999円)の価格差から、現在のAI PC向けメモリは、64GB88,000円と高価です。

Minisforum MS-S1 MAX 128GBモデルと64GBモデルの価格
Minisforum MS-S1 MAX 128GBモデルと64GBモデルの価格

本格AI開発を2026年春に行うには、128GBメモリ(17万円前後)を実装したAI PC、またはそれ以上が必要という訳です(前投稿も参照してください)。

2026年春、ローカルAI開発着手リスク

AI PCは、最初の図で示したように必要ハードウェアがユーザの使い方や用途で異なります。仮に「今」最強ハードウェアを入手すれば、様々な使い方やソフトウェア、例えば、色々なLLMや量子化レベルを試し自分に適すAIエージョント開発も可能でしょう。但し、それには50万円以上のハードウェア投資が必要です。

この投資に見合うリターンが問題です。過渡期のローカルAI開発着手に適すタイミングを、先行するクラウドAIを使って推定するのも1つの方法だと思います。

但し、筆者の結論は明快です。現時点で過渡期ローカルAI開発に50万円を投じるのはリスクが大き過ぎます。

Summary:ローカルAIとメモリ量相関(2026年版)

ローカルAI開発環境、特にAI PCハードウェアを、いつ/いくらで入手するか検討のため、2026年春時点のローカルAI処理・用途に必要なユニファイドメモリ量の相関図を作成し、本格AI開発に128GB17万円)メモリ実装の50万円程度のAI PCハードウェアが必要であると分析しました。

PCハードウェア高騰原因は、高速大容量メモリの供給不足です。少なくともメモリ価格が2025年レベルへ落着くまでAI PCハードウェア購入を筆者が待つ理由を説明しました。

Afterword2026年春、高速進化のAIハードウェア

価格高騰同様、ローカルAI関連ハードウェア進化速度はとにかく早い! 次世代DDR5規格EVO-X230%向上EVO-X3Snapdragon X2 EliteミニPC。過渡期の証です。

MINIX ER939-AIとMS-S1 MAX

AMD Ryzen AI Max+ 395128GBメモリ搭載ミニPC2機種を比較しました。55万円前後でミニAI PCを選ぶ場合、軽さと写真加工も行うならMINIX ER939-AI、高速・拡張重視ならMS-S1 MAXです。

MINIX ER939-AIとMS-S1 Max正面
MINIX ER939-AIとMS-S1 Max正面

2026530日、リンクスインターナショナルが549800円で発売する新しいミニPCが、左側MINIX ER939-AIです。右側はMinisforum551999円で販売中のMS-S1 MAXです。

MINIX ER939-AIMS-S1 MAXの仕様比較

ミニAI PC MINIX ER939-AI MS-S1 MAX
価格 549,800円(前後) 551,999
OS Windows 11 Pro 64 bit
プロセッサ プロセッサ AMD Ryzen™ AI Max+ 395
コア数/スレッド数 16 コア 32 スレッド
ブースト動作周波数 5.1 GHz
総合TOPS 最大126 TOPS
NPU TOPS 最大50 TOPS
グラフィックス AMD Radeon 8060S
メモリ 規格 LPDDR5-8000 MHz
搭載容量 128 GB (8×16 GB) (オンボード)
空きスロット なし(追加不可)
内蔵ストレージ 規格 2×M.2 2280 NVMe Slot (PCIe 4.0)
容量 2 TB (NVMe PCIe 4.0) 
増設スロット M.2 2280 PCIe 4.0 (x4)(空き1スロット)
映像出力 1×HDMI 2.1 (最大 8K@60 Hz) 1×HDMI 2.1 (最大 8K@60 Hz)
2×USB4 (最大 8K@60 Hz) 2×USB4 (最大 8K@60 Hz)
1×DisplayPort 1.4 (最大 8K@60 Hz) 2×USB4 V2(最大 8K@60 Hz)
有線LAN 1×2.5Gb LAN 2×10Gb LAN
無線LAN Wi-Fi 7
Bluetooth Bluetooth 5.4
インタフェース 背面ポート 2 × USB 2.0 2 × USB 2.0
1 × HDMI 2.1 1 × HDMI 2.1
1 × DisplayPort 1.4
1 × USB4 2 × USB4 V2
1 × USB 3.2 Gen2 (Type-A) 2 × USB 3.2 Gen2 (10Gbps)
1 × 2.5G LAN 2 × 10G LAN
1 × オーディオ端子
1 × DC入力 1 × AC入力
1 × ケンジントンロックスロット 1 × ケンジントンロックスロット
前面ポート 1 × 電源ボタン(指紋認証) 1 × 電源ボタン
1 × SDカードスロット 1 × USB3.2 Gen2
1 × USB4 2 × USB4
2 × USB 3.2 Gen2 (Type-A) 2 x DMIC
1 × オーディオ端子 1 × オーディオ端子
冷却方式 ファン&ヒートシンク
電源供給 外付けACアダプタ 内蔵電源
付属品 1×ACアダプタ、1×ACコード、1×HDMIケーブル 1×ACコード
本体サイズ 205 × 192 × 70 mm D×W×H 222 × 206 × 77 mm D×W×H
本体重量 1.4 kg 2.8 kg

APURyzen AI Max+ 395で高速・大容量128GBメモリ実装は、本格的ローカルAI開発も可能な高性能AI PCの要件です。MINIX ER939-AIMS-S1 MAXは、これら要件をみたします。

両モデルのAI性能は同じでも設計思想は異なります。

本体サイズは、MINIX ER939-AI205 × 192 × 70 mmMS-S1 MAX222 × 206 × 77 mmで若干MS-S1 MAXが大きいもののほぼ同じです。一方、重量は、MINIX ER939-AI1.4Kg に対しMS-S1 MAX2.8Kgです。これは、MINIX ER939-AIACアダプタによる電源供給のためで、MS-S1 MAXは電源を内蔵する分、重量が増します。

インタフェースは、MINIX ER939-AIDisplayPort SDカードスロットを持つのに対し、MS-S1 MAXはこれらがありません。その代わり2本の10G LANUSB4 V2DMIC(ダイナミックマイク)MS-S1 MAXにはあります。

つまり、MINIX ER939-AIは軽量化と汎用性、MS-S1 MAXは高速ネットワークと拡張性を重視した設計です。

MINIX ER939-AIとMS-S1 Maxインタフェース
MINIX ER939-AIとMS-S1 Maxインタフェース

MINIX ER939-AIMS-S1 MAX吸気口比較

外観から気になるのは、MINIX ER939-AIが左右両側面に吸気口があるのに対し、MS-S1 MAXは、吸気口が左側面のみにある点です(どちらも排気は背面で搭載ファン数は3)。

MINIX ER939-AIとMS-S1 Max吸気口
MINIX ER939-AIとMS-S1 Max吸気口

これは、MS-S1 MAX本体を横置きで重ねて増設するためです。MS-S1 MAXを同時に2台以上持てるユーザ以外は、MINIX ER939-AI同様、吸気口は両側面にある方が放熱に有利です(代替に正面吸気かも?)。

また、どちらもゴム足を下にした縦置きが基本的な本体設置方法であることも判ります。

SummaryMINIX ER939-AIMS-S1 Max

Ryzen AI Max+ 395128GBメモリ搭載でAI性能は同じ高性能ミニAI PCMINIX ER939-AIMS-S1 Maxを比較しました。

価格は、どちらも55万円前後、本体サイズもほぼ同じです。ACアダプタ給電のMINIX ER939-AI1.4Kg、電源内蔵のMS-S1 Max2.8Kgです。本体を縦置きにすれば、設置スペースも小さく本格的なローカルAI開発に適す両モデルです。

MINIX ER939-AIは、SDカードスロットがあることから写真AI加工などにも用途を広げた汎用設計、MS-S1 Maxは、2台重ね拡張重視のため、下面(縦置き時右側面)の吸気口が無い設計です。放熱性はMINIX ER939-AIが有利でしょう。

持ち運びや汎用性を取るか、10Gb LAN高速性や2台重ね拡張性を取るか、これが両モデル選択の分かれ目です。


AMDとIntelのAPU比較

AMDIntelCopilot+ PC準拠40TOPS以上NPU搭載CPUAPU現状ラインナップを調査しました。AMDは、Ryzen AI Max/400/300シリーズという名称で判りますが、Intelは名称からは判り難いためです。

AMD APUラインナップ

AMD社は、コチラで製品ラインナップが分かります。このうちAPUは、「名称にAIが付いたタイプです。APUを抜粋したのが下表です。

Ryzen AI Maxシリーズ GPUモデル CPU コア スレッド Maxブースト ベース NPU TOPS CGコア cTDP
Ryzen AI Max+ 395 Radeon 8060S Graphics 16 32 5.1 GHz 3 GHz 50 TOPS 40 55W
Ryzen AI Max+ 392 Radeon 8060S Graphics 12 24 5 GHz 3.2 GHz 50 TOPS 40 55W
Ryzen AI Max 390 Radeon 8050S Graphics 12 24 5 GHz 3.2 GHz 50 TOPS 32 55W
Ryzen AI Max+ 388 Radeon 8060S Graphics 8 16 5 GHz 3.6 GHz 50 TOPS 40 55W
Ryzen AI Max 385 Radeon 8050S Graphics 8 16 5 GHz 3.6 GHz 50 TOPS 32 55W
Ryzen AI 400シリーズ GPUモデル CPU コア スレッド Maxブースト ベース NPU TOPS CGコア cTDP
Ryzen AI 9 HX 475 AMD Radeon 890M 12 24 5.2 GHz 2 GHz 60 TOPS 16 28W
Ryzen AI 9 HX 470 AMD Radeon 890M 12 24 5.2 GHz 2 GHz 55 TOPS 16 28W
Ryzen AI 9 465 AMD Radeon 880M 10 20 5 GHz 2 GHz 50 TOPS 12 28W
Ryzen AI 7 450 AMD Radeon 860M 8 16 5.1 GHz 2 GHz 50 TOPS 8 28W
Ryzen AI 7 445 AMD Radeon 840M 6 12 4.6 GHz 2 GHz 50 TOPS 4 28W
Ryzen AI 5 435 AMD Radeon 840M 6 12 4.5 GHz 2 GHz 50 TOPS 4 28W
Ryzen AI 5 430 AMD Radeon 840M 4 8 4.5 GHz 2 GHz 50 TOPS 4 28W
Ryzen AI 300シリーズ GPUモデル CPU コア スレッド Maxブースト ベース NPU TOPS CGコア cTDP
Ryzen AI 9 HX 375 AMD Radeon 890M 12 24 5.1 GHz 2 GHz 55 TOPS 16 28W
Ryzen AI 9 HX 370 AMD Radeon 890M 12 24 5.1 GHz 2 GHz 50 TOPS 16 28W
Ryzen AI 9 365 AMD Radeon 880M 10 20 5 GHz 2 GHz 50 TOPS 12 28W
Ryzen AI 7 350 AMD Radeon 860M 8 16 5 GHz 2 GHz 50 TOPS 8 28W
Ryzen AI 5 340 AMD Radeon 840M 6 12 4.8 GHz 2 GHz 50 TOPS 4 28W
Ryzen AI 5 330 AMD Radeon 820M 4 8 4.5 GHz 2 GHz 50 TOPS 2 28W
Ryzen AI 7 345 AMD Radeon 840M 6 12 4.6 GHz 2 GHz 50 TOPS 4 28W

現状は、総合AI性能順にAI Max/AI 400/AI 300シリーズの3種があります。AI 400は、AI 300のマイナーチェンジ版、AI 300GPU高性能版がAI Maxです。NPUはそれぞれ50TOPS程度です。

CPUが処理内容に応じてNPUGPUAI処理を振分けるためGPU性能も重要です。AMDラインナップは、総合的なAI性能順に示されています。AI Max+ 395搭載PCが、高性能AIユーザへ人気なのもこれが理由です。

Intel APIラインナップ

AMDに比べAI性能が判り難いのがIntel APUです。そこで、NotebookLMを使って上記AMDラインナップと同じ項目でIntel APUを性能順に示したのが下表です。

Core Ultra シリーズ 2 GPUモデル CPU コア スレッド Maxブースト ベース NPU TOPS CGコア cTDP
Core Ultra 9 288V Intel Arc Graphics 140V 8 8 5.1 GHz 3.3 GHz 48 TOPS 8 (Xe) 30W
Core Ultra 7 268V Intel Arc Graphics 140V 8 8 5.0 GHz 2.2 GHz 48 TOPS 8 (Xe) 17W
Core Ultra 7 266V Intel Arc Graphics 140V 8 8 5.0 GHz 2.2 GHz 48 TOPS 8 (Xe) 17W
Core Ultra 7 258V Intel Arc Graphics 140V 8 8 4.8 GHz 2.2 GHz 47 TOPS 8 (Xe) 17W
Core Ultra 7 256V Intel Arc Graphics 140V 8 8 4.8 GHz 2.2 GHz 47 TOPS 8 (Xe) 17W
Core Ultra 5 238V Intel Arc Graphics 130V 8 8 4.7 GHz 2.1 GHz 40 TOPS 7 (Xe) 17W
Core Ultra 5 236V Intel Arc Graphics 130V 8 8 4.7 GHz 2.1 GHz 40 TOPS 7 (Xe) 17W
Core Ultra 5 228V Intel Arc Graphics 130V 8 8 4.5 GHz 2.1 GHz 40 TOPS 7 (Xe) 17W
Core Ultra 5 226V Intel Arc Graphics 130V 8 8 4.5 GHz 2.1 GHz 40 TOPS 7 (Xe) 17W

現在のIntel APUは、Core Ultra 9/7/5シリーズ2 (Lunar Lake)」です。つまり、名称に「Core Ultra X 200番台で最後がV」がCopilot+ PC準拠タイプです。

Intel Core UltraNPU TOPS値は、AMD AI Max/AI 400/AI 300とほぼ同じ、GPUAMD Radeon 800Mシリーズとほぼ同性能です。特徴は、デフォルトTDPcTDPが低い点とシリーズ名最後の数値、例えば、Core Ultra 7 268V8Core Ultra 7 266V6が、MoPMemory on Package)容量を示す点です。

名称最後の832MB616MBを示します。Intelは、AMDよりもAPU出荷が出遅れたため、対抗策にMoP技術を使ったTDPが低い製品開発を行いました(MoP詳細は前投稿を参照ください)。

但し、32GB搭載APUでも全てのAI処理、例えばLLM処理が実行できるかは疑問です。軽度なAI処理向きのラインナップと言えそうです。

x64陣営APU特徴

x64陣営のAMD/Intel APUラインナップを比較します。

AMD APUは、ノートPCやデスクトップPCなどCopilot+ PC用途に分けず従来のCPU/GPU/NPU個別性能強化による「全方位APU設計」です。AI 400シリーズでは、デスクトップPC向けにAM5ソケットへも対応しました。

一方、Intel APUは、ARM64陣営のSnapdragon APUにも見られるMoPによる低消費電力化など処理に応じた「最適APU設計」です。これは、IntelとApple接近の先駆けかもしれません。

AI PC性能は、ハードウェアのCPU/GPU/NPU (APU)だけでなく搭載メモリ量にも依存します。ユーザがAI PCに何を求めるかがCopilot+ PCの重要な選択基準となるでしょう。

SummaryAMDIntelAPU比較

40TOPS以上NPU搭載がCopilot+ PCの条件です。この条件を満たすx64陣営のAMD/Intel現状APUラインナップを調査しました。AMDAI全方位設計、Intelは軽量AI最適設計です。ちなみにARM64陣営のSnapdragonは、Intelよりも重いAI最適設計だと思います(理由は前投稿参照)。

メモリ高騰などPCハードウェア環境が激変する状況下、各社APU現状とユーザが今後どのようにAICopilot+ PC)を利用するかは、AI PC選択に重要です。しかし、先行きは年単位で不透明です。

AI性能がCPU/GPU/NPU(=APU)と搭載メモリハードウェアに大きく依存するため、ローカルAIサービス依存のAPU選択となるでしょう。

Afterword:AMD Ryzen AI Max PRO 400シリーズ発表

AMD Ryzen AI Max 400シリーズ(記事より)
AMD Ryzen AI Max 400シリーズ(記事より)

AMD2026521日、総合126TOPS Ryzen AI Max+ 395より更に上位のCopilot+ PC準拠Ryzen AI Max PRO 400シリーズを発表しました。総合192TOPS、メモリ最大192GB、最大160GBVRAMへ割り当てられるユニファイドメモリ、cTDP 45120Wです。搭載ミニPCが期待できます。

AI PCメモリ要件

次章2記事からNPU処理ボトルネックを生まないAI PCメモリ要件を整理しました。メモリ速度、広いメモリバス幅、大容量メモリ、MoPMemory on Package)が注目点です。PC原価の35%を高騰メモリが占めると言われるAI PC選択指針の1つになります。

参照した2つの記事

  1. Snapdragon X2 Elite Extreme 80TOPS NPUテスト、2026/05/08、窓の森
  2. Snapdragon X2 Elite⼤進化の理由、2025/09/26、PC Watch

x64コア陣営のARMRyzen AI 400シリーズNPU50TOPSAI 300シリーズと同じなのに対し、ARM64コア陣営Qualcomm社の最新Snapdragon X2シリーズNPU80TOPSと従来45TOPS1.78倍に高性能化しました。

本稿は、NPU利用のローカルAI PC処理に、実装メモリがどのように影響するかという観点で両記事を参照しました。

最新Snapdragon X2 Elite Extremeと従来Snapdragon X PlusAI画像生成速度

項目 最新Snapdragon X2 Elite Extreme 従来Snapdragon X Plus
NPU性能 80 TOPS 45 TOPS
メモリ仕様 LPDDR5x-9523 LPDDR5x-8533
メモリバス幅 64bit x 3チャネル = 192bit 64bit x 2チャネル = 128bit
理論メモリ帯域幅 9523 x 192 / 8 = 228.6 GB/s 8533 x 128 / 8 = 136.5 GB/s
MoP容量 16GB x 3個 = 48GB 8GB x 2個 = 16GB
20AI画像生成速度 17 32

資料1ではNPU性能差80/45=1.78倍に対し、AI画像生成速度は32/17=1.88倍、生成処理動画の見た目は2倍近い高速化が示されています。

これは、メモリ仕様の高速化、メモリバス幅の3チャネル化、メモリ(MoP)大容量化が、80TOPS NPUAI処理高速化へ寄与しているからです。また、画像生成中のNPU使用率は、最新/従来ともに8割以上と同一のため、新旧NPU性能に見合ったメモリを実装していることも解ります。

つまり、AI PCで比較されがちなTOPS値だけでなく、「TOPS値を活かすメモリ実装方法もローカルAI処理の重要指針」であることが判ります。

MoPと外部メモリ増設の考察

3DRAMとCPUを封止したSnapdragon X2 Elite ExtremeのMoP(記事2より)
3DRAMとCPUを封止したSnapdragon X2 Elite ExtremeのMoP(記事2より)

MoPMemory on Package)は、DRAMメモリチップをCPUと同一パッケージ内に直接配置・封止する技術です。CPUとメモリ間距離が、従来マザーボードのメモリ装着に比べ近いため、より高速処理が可能で省電力性にも優れています。拡張性は劣りますがノートAI PCやミニAI PCに適した技術です。

資料2から、技術的にはMoPでも外部メモリ増設は可能で、容量増加もできそうです。但し、筆者の自作PC経験から、MoPと外部メモリとの相性などで不安定動作や速度低下の懸念があります。

AI PCの外部メモリ追加は、できれば避けたい事象だと思います。

SummaryAI PCメモリ要件

80TOPSと大幅にNPU性能が向上したSnapdragon X2 Elite Extreme AI PCAI処理性能を活かすメモリ要件は、MoPによるメモリ高速化、広いメモリバス幅(チャネル数増加)、十分なメモリ容量です。

MoPでもメモリ容量増設は可能ですが、増設外部メモリとの相性などに懸念があり、初めから想定AI処理に十分な容量のメモリ実装が望ましいと思います。

PCメモリ高騰中ですが、高性能TOPSや想定AI処理に見合うメモリ実装がAI PC選定に重要です。

x64コア電力効率改善

既存ソフト互換性の高いAMD/Intelx64コア、電力効率の高いQualcommARM64コア、この認識が変わる可能性があります。x64コア汎用レジスタを16個から32個へ増やし、新拡張命令セット:APXが加わるからです。

汎用レジスタ32個メリット

レジスタは、演算情報を一時的に出し入れする極めて高速なCPU内臓メモリです。これには予め役割が決まっているプログラムカウンタやスタックポインタの他に、コンパイラやマシン語プログラマが自由に使うことができる汎用のレジスタもあります。

CPUレジスタ構成(NotebookLM作成)
CPUレジスタ構成(NotebookLM作成)

x64コアの汎用レジスタ数は、従来16個でした。今回、これを32個へ倍増します。

汎用レジスタ倍増により、AIなどの膨大なデータ処理の効率化が可能です。従来比、頻繁なレジスタへのロード/ストア命令を削減でき、その結果、処理の電力効率向上に大きく寄与するからです。

新拡張命令セット:APX

64コア陣営のAMD/Intel社は、共同で上記32個汎用レジスタを活用する新命令セット:APX Advanced Performance Extensions)を公開しました(次世代APX公開202654日、Finance BigGo)。

APXは、単にレジスタ増加対応だけでなく、近代的RISCコア命令セットの利点も取り入れています。

例えば、整数演算命令の3オペランド命令化や条件付き実行命令の拡大化などです(参考記事:x86アーキテクチャに64ビット以来の革命202652日、XenoSpectrum)。これらにより、コンパイラはより高性能で近代的マシン語を生成できます。

x86/x64下位互換維持しAI時代へ対処

今回の汎用レジスタ32個化と新命令セットAPXは、省電力性に優れたARM64RISC-Vコアに対するx86/x64コア陣営からのハード/ソフト両方の対抗策です。

しかも、この対策は既存ソフトウェアの大規模改修が不要です。APX対応コンパイラを利用すれば、既存ソフトウェア再コンパイルのみでネイティブ対応となるからです。ARM64コア陣営が、エミュレータ(Prizm)によるx86/x64ソフトウェア対応と根本的に異なる点です。

つまり、膨大なx86/x64アプリケーションの下位互換性を維持したまま、AI時代の省電力性やデータセンタへも対応でき、AMD/Intel両社共同のx64コア生き残り策と言えます。

Summaryx64コア電力効率改善

x64陣営とARM64陣営のAI CPU覇権争い
x64陣営とARM64陣営のAI CPU覇権争い

AMDIntelは、両社共同で汎用レジスタ32個化や新拡張命令セットAPXにより、AI時代の省電力性やデータセンタへ適した新しいx64アーキテクチャを公開しました。市場もこの動きに反映し、両社の株価は急騰しています。

新しいx64コアは、x86/x64ソフトウェア下位互換性を維持したまま電力効率が高いARM64RISC-Vコアに十分対抗できます。クラウドAI側だけでなくエッジAI側コアへのインパクトも非常に大きいと思います。


Word/Writerレイアウト崩れ対策

Microsoft WordLibreOffice Writerの両方を使って文書編集時、レイアウト崩れを防ぐ方法を示します。会社はWord、自宅はWriterで同一文書を編集する時に役立ちます。

レイアウト崩れ

Word作成文書をWriterで編集する場合、オリジナルWordの図形位置や文書折り返し等が、Writer編集時に異なることをレイアウト崩れと言います。

図形レイアウト崩れと文書レイアウト崩れ、それぞれを防ぐ2対策を示します。

Writerは無償最新版LibreOffice 26.2.2WordMicrosoft 365を使用します。

図形レイアウト崩れを防ぐ対策

図形をWordで文書内挿入の場合、デフォルトレイアウトは「行内」です。

このデフォルトレイアウトのままWriterで編集すると、Word図形があらぬ場所へ表示されレイアウト崩れが生じます。

図形レイアウト崩れ対策:レイアウトオプションを文字列の折り返しで上下、文字列と一緒に移動設定
図形レイアウト崩れ対策:レイアウトオプションを文字列の折り返しで上下、文字列と一緒に移動設定

対策は、Word図形のデフォルトレイアウトを、上図右側のように「文字列の折り返し」で「上下」、「文字列と一緒に移動する」へ変更することです。

文字レイアウト崩れを防ぐ対策

Word文書をWriter編集する時に文字レイアウトが崩れる原因は、1ページの余白、行数、文字数、間隔がWord/Writerで異なるためです。WordWriterでこれらを同一にすれば文字レイアウト崩れは防げます。

Wordのページ設定ユーザインタフェース
Wordのページ設定ユーザインタフェース
Writerのページ設定ユーザインタフェース
Writerのページ設定ユーザインタフェース

但し、上図のようにページ設定ユーザインタフェースは、Word/Writerで異なるため、これらを同一にするのは面倒です。

筆者は、WordWriter共に余白は最小、その他行数や文字数等はデフォルトのまま利用しています。

SummaryWord/Writerレイアウト崩れ対策

筆者の場合、Word文書をWriter編集する時に一番気になるレイアウト崩れは、図形位置です。そこで、この図形位置レイアウト崩れを防ぐWord側の追加設定:「文字列の折り返し」で「上下」、「文字列と一緒に移動する」を示しました。文字に関しては、デフォルトのままでも気になるレイアウト崩れは生じません。

編集中のWriterとWord文書
編集中のWriterとWord文書

この対策で編集中のWriter文書(左)と、オリジナルWord文書(右)が上図です。

Afterword:先行文書作成、最終版図形挿入

文書のみを先行作成し、最終版文書へ図形挿入すれば、最も簡単にWord/Writer編集が可能です。但し、説明するための文書は、図形有無が本文にも影響を与えるため最終版の見極めも大切ですが・・・。