MCU:マイコン,Cortex-M33コアテンプレート,IoTマイコン,TrustZone,超低電力動作,RAファミリ,Cortex-M33,低電力動作,RA4E1 Fast Prototype Board,REファミリ

前稿のRAファミリ評価ボードRA4E1 Fast Prototype Board(以降FPB)を入手、RA/REテンプレート検討に着手しました。

FPB開発に用いるルネサスIDE:e2 studio(以降e2)とAPI生成ツール:Flexible Software Package(以降FSP)は、NXPやSTマイクロなどのEclipseベースIDEの利用者が?に思う箇所があると思います。

ルネサスIDE:CS+ユーザでも、同様にこの?を感じると思いますので、対策と評価ボードFPBの使い方を示します。

RA4E1 Fast Prototype Boardとe2 studio
RA4E1 Fast Prototype Boardとe2 studio

e² studio

Eclipse IDEをベースとしたRAファミリ統合開発環境:IDEが、e2、API生成ツールが、FSPです。

e2は、ARMコアを含む全てのルネサスMCU開発用の新世代IDEで、古くからあるRL78ファミリやRXファミリなどのルネサス独自コア専用統合開発環境CS+の後継IDEとして登場しました。但し、CS+は、現在でもRL78/RXファミリ開発に使えます。

e2は、MCUファミリ毎にコンパイラを切替えることにより、全ルネサスMCUの共通IDEとして動作します。MCUファミリのコンパイラは、普通1種類です。ところが、RAファミリには、GNUとARM Compiler V6の2種類が用意されており、どちらも無償です。

GNUとARM Compiler V6?

e2インストール時、デフォルトでインストールされるコンパイラは、GNUです。ARM Compiler V6は、後から追加インストールが必要です。最初の?は、両コンパイラの“違いは何か”です。

次章で示すFSPやTrustZone利用に差が生じるのであれば、問題です。

ルネサス資料を探しましたが、結局、コンパイラ差は分かりません。最近では殆ど行わないアセンブラデバッグが無ければ、コンパイラはどちらでも構いませんので、デフォルトGNUで当面はOKとします。

Flexible Software Package (FSP)?

RAファミリ専用のAPI生成ツールが、FSPです。動画:Generating Your First RA FSP Project(8:25)で使い方が分かります。

Flexible Software Package構成
Flexible Software Package構成

簡単に説明すると、スタックと呼ぶ開発プロジェクトで使用するHALドライバやRTOSなどのミドルウェアパタメタをGUIで設定後、e2のGenerate Project Contentをクリックすると、Developer Assistance内に全てのAPIが自動生成され、その中から使用するAPIを、ユーザ自身でソースコード任意場所にドラッグ&ドロップする使い方です。

ソースコード任意場所にAPIを配置できるのは、親切とは言えません。NXPやSTマイクロのコード生成ツールでも、API追加箇所にコメント付きのソースコードが生成されます。しかし、FSPは、ソースコード上のどこにでもAPIを設置できます。

API使用順序、設置場所、パラメタの意味が予め解ってないと、適切なコーディングは困難でしょう。後述する多くの公式サンプルコード(スタック利用例)がありますので、これらを参考に習得する必要があります。

hal_entry.c?

e2 studioのra_genとsrcフォルダ
e2 studioのra_genとsrcフォルダ

Generate Project Contentのクリックで生成されるのがAPI本体、つまり、ra_genフォルダ内のmain.cを含むスタックのドライバ関数群です。ra_genフォルダは、FSPが生成するコードの格納場所です。

これらとは別のsrcフォルダ内に見慣れないhal_entry.cファイルがあります。srcフォルダは、ユーザが追加するコードの格納場所です。

FPB出荷時にインストール済みのquickstart_fpb_ra4e1_epプロジェクトを読むと、main.c→hal_entry.c→user_main.cとコールされ、結局、user_main.cに一般的なIDEでユーザが追記する初期設定と無限ループを記述するのが、FSPでのユーザソースコード記述作法のようです。

※一般的なIDEでユーザが追記する初期設定と無限ループについては、基本のキ3章まとめを参照してください。

quickstart_fpb_ra4e1_epのuser_main処理
quickstart_fpb_ra4e1_epのuser_main処理

readme.txt?

公式サンプルコードをe2へインポート後、readme.txtでサンプル動作内容やFPB追加配線の必要性が分かります。バグだと思いますがe2(2021-07)は、サンプルコード付属readme.txtがプロジェクト内へインポートされません。

筆者は、手動でインポートしました。例えば、sci_uart_fpb_ra4e1_epプロジェクトは、追加配線無しではTera Term動作確認ができませんので、readme.txtを読み、追加配線が必須です。

RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)の使い方

IoT MCUの機能と消費電力を最適化したRAファミリのRA4E1グループ評価ボード:RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)の特徴は、以下2点です。

  • TrustZone
  • 低電力動作(Sleep > Snooze > Software Standby > Deep Software Standby)
RA4E1ブロック図
RA4E1ブロック図

TrustZoneの使い方は、RAファミリビギナーズガイドの11章が参考になります。

FreeRTOS利用を含むサンプルコードはコチラ、低電力動作サンプルコードはコチラからダウンロードできます。前章のquickstart_fpb_ra4e1_epやsci_uart_fpb_ra4e1_epプロジェクトは、初めのサンプルコード内にあります。

RTOSは、IoT接続先クラウドに応じてFreeRTOSかAzure RTOSの2種から選択可能です。また、通常の低電力動作:Sleepに加え、SnoozeやDeep Software Standbyなど超低電力動作モードも備えています。

プロジェクトは、ベアメタルまたはRTOS、TrustZone利用または非利用、の各選択肢がありますので4種類、FreeRTOSかAzureの選択を加えると、合計6種類の新規プロジェクト作成方法が可能です。

つまり、IoT MCUエッジ開発で必要となる様々なプロジェクト開発に、FPBだけで対応可能です。応用範囲の広い評価ボードで、IoTプロトタイプ開発に適しています。サンプルコード内容も豊富です。

まとめ

ユーザ視点からのベンダ各社がEclipse IDEをベースIDEに使うメリットは、IDEインタフェースがEclipseに似てくるので、ベンダが変わっても同じIDE操作性が得られることです。各社IDEで異なる部分は、周辺回路設定やAPI/コード自動生成の部分に限られるのが一般的です。

これら部分に加え、RAファミリ開発に使うe2 studioとFlexible Software Package は、無償コンパイラ選択、生成APIのソース追加方法、hal_entry.cなど、一般的なEclipseベースIDE利用者にとって?が生じる箇所が多数ありました。

ルネサス資料は多いのですが、肝心の?ポイントが解りにくいとも感じました。RAファミリ開発着手時は、これらに対し慣れが必要かもしれません。そこで、備忘録として本稿を作成しました。

なお、同じく前稿で示したREファミリについては、非常に良くまとまったREマイコンの使い方がルネサスサイトより入手できます。

RA4E1 Fast Prototype Board(Cortex-M33/100MHz、Flash/512KB、RAM/128KB)は、低価格で入手性もよくTrustZoneやRTOS、低電力動作など、幅広い知識や技術が要求されるIoT MCU開発の素材として優れています

現状RAファミリ資料の纏まりは、REファミリと比べると今一歩ですが、改善されると思います。開発に必要となる技術レベルが少し高いのですが、e2 studioとFlexible Software Package (FSP)、RA4E1 Fast Prototype Board(FPB)と豊富なサンプルコードを使ったIoT MCU開発は、好奇心を満たすIoT MCU習得へ向けたお勧めの開発環境と評価ボードと言えるでしょう。

弊社ブログは、RA/REテンプレート開発を目指し、継続して関連情報を投稿します。

Windows 11アップグレード可能通知:FYI

Windows 11を実行できます
Windows 11を実行できます

10月5日リリースWindows 11アップグレード可能通知が弊社PCへ届きました。今月リリースWindows 10 21H2で運用し、1年程度の11評価結果を見てアップグレードを予定しております。ご参考まで。

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デバイスが多く選択に迷う方も多いマイコン:MCU。周辺ハードウェアも異なるので、最初のMCUコア選択を誤ると、最悪の場合、開発のし直しなどに繋がることもあります。

本稿は、STマイクロエレクトロニクスのSTM32マイコンマンスリー・アップデート10月号P8のトレーニング資料、STM32L0(Cortex-M0+)掲載のARM Cortex-M0/M0+/M3の比較資料を使ってMCUコア選択方法についての私案を示します。

STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料

各種STM32MCU(Cortex-Mx)毎の非常に良くできた日本語のテクニカルスライド資料が入手できます。例えばSTM32L0(Cortex-M0+)は194ページあり、1ページ3分で説明したとしても、約10時間かかる量です。他のMCU(Cortex-Mx)資料も同様です。

開発に使うMCUが決まっている場合には、当該資料に目を通しておくと、データシート読むよりも解りやすいと思います。しかし、Cortex-Mxコア差を理解していない場合や、開発機器の将来的な機能拡張や横展開等を考慮すると、どのMCU(Cortex-Mx)を現状開発に使うかは重要検討項目です。

ここで紹介するSTM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料には、Cortex-M0+特徴説明のため、通常データシートには記載が無いCortex-M0やCortex-M3との違いも記載されています。

そこで、STMマイコンのみでなく一般的なARMコアのMCU選択に重要な情報としても使えるこの重要情報ページを資料から抜き出しました。

Cortex-M0/M0+/M3比較

バイナリ上位互換性

Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-Mxのバイナリ互換性(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

先ず、P22のCortex-Mプロセッサのバイナリ互換性です。この図は、Cortex-Mxコアの命令セットが、xが大きくなる方向には、上位互換であることを示しています(ただし再コンパイル推薦)。逆に、xが小さくなる方向は、再コーディングが必要です。

つまり、Cortex-M0ソースコードは、M0+/M3/M4へも使えるのです。Cortex-Mxで拡張された命令セットの特徴を一言で示したのが、四角で囲まれた文章です(Cortex-M3なら、“高度なデータ処理、ビットフィールドマニピュレーション”)。
さらに、STM32MCU内臓周辺ハードウェアは、各シリーズで完全互換なので、同じ周辺ハードウェア制御ソースコードはそのまま使えます。

もちろんxが大きくなるにつれコア性能も向上します。しかし、よりCortex-Mx(x=+/3/4)らしい性能を引き出するなら、この四角文章のコーディングに力点を置けば、それに即した命令が用意されているので筋が良い性能向上が期待できる訳です。

超低電力動作Cortex-M0+、39%高性能Cortex-M3

P22ではCortex-M0とM0+の違いが解りません。そこで、P19のCortex-M0/0+/3機能セット比較を見るとCortex-M0+が、Cortex-M0とCortex-M3の良いとこ取り、中間的なことが解ります。また、Cortex-M3が、M0比39%高性能だということも解ります。

Cortex-M0_M0+_M3セット比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0_M0+_M3セット比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

具体的なCortex-M0+とCortex-M0との差は、P20が解りやすいです。Cortex-M0+は、性能向上より30%もの低消費動作を重視しています。また、1サイクルの高速GPIOも特徴です。Cortex-M0+は、M0の性能を活かしつつより既存8/16ビットMCU市場の置換えにチューニングしたからです。

Cortex-M0とCortex-M0+の比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+の比較(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

さらにP21には、低電力化に寄与した2段になったパイプラインも示されています。Cortex-M0/M0+は、今年初めから話題になっている投機的実行機能の脆弱性もありません。

Cortex-M0とCortex-M0+のブランチ動作(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+のブランチ動作(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

関連投稿:Cortex-Mシリーズは、投機的実行機能の脆弱性はセーフ

共通動作モード:Sleep

Cortex-M0とCortex-M0+の低消費電力モード(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0とCortex-M0+の低消費電力モード(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

低電力化は、Cortex-M0+で追加された様々な動作モードで実現します。この一覧がP70です。つまり、Cortex-M0+らしさは、M0にない動作モード、LP RUNやLP sleep (Regulator in LP mode)で実現できるのです。

逆に、SleepやSTANBYの動作モードは、Cortex-M0/M0+で共通です。さらに、Cortex-M3でも、アーキテクチャが異なるので数値は異なりますが、SleepとSTANBY動作モードはM0/M0+と共通です。

ここまでのまとめ:Cortex-M0/M0+/M3の特徴

Cortex-M0/M0+/M3の特徴・違いを一言で示したのが、下表です(関連投稿より抜粋)。

各コアの特徴は、MCUアーキテクチャや命令セットから生じます。但し、M0/M0+/M3でバイナリ上位互換性があるので、全コアで共通の動作モードがあることも理解できたと思います。

ARM Cortex-Mx機種 一言で表すと…
Cortex-M0+

超低消費電力ハイパフォーマンスマイコン

Cortex-M0

低消費電力マイコン

Cortex-M3

汎用マイコン

Cortex-M4

デジタル信号制御アプリケーション用マイコン

関連投稿:ARMコア利用メリットの評価

MCUコア選択方法

  1. Cortex-M0またはCortex-M0+コアでプロトタイプ開発を行い、性能不足が懸念されるならCortex-M3コア、さらなる消費電力低下を狙うならCortex-M0+コアを実開発で選択。
    プロトタイプ開発に用いるソースコードは、そのまま実開発にも使えるように、全コアで共通の動作モードで開発。
  2. 早期にプロトタイプ開発を実開発に近い形で作成するために、弊社マイコンテンプレートを利用。

1.は、本稿で示した内容を基に示したMCUコア選択指針です。低消費電力がトレンドですので、プロトタイプ開発の段階から超低消費電力のCortex-M0+を使うのも良いと思います。しかし、初めから超低消費動作モードを使うのでなく、全コアで共通動作モードでの開発をお勧めします。

理由は、万一Cortex-M0+で性能不足が懸念される時にCortex-M3へも使えるソースコードにするためです。プロトタイプ開発の段階では、ソースコードの実開発流用性と実開発の評価を目的にすべきです。チューニングは、実開発段階で行えばリクスも少なくなるでしょう。

2.は、プロトタイプ開発実現手段の提案です。マイコンテンプレートは、複数のサンプルソフトを結合して1つにできます。実開発に使える(近い)サンプルソフトさえ見つけられれば、それらをバラック的にまとめて動作確認できるのです。これにより、当該コアのプロトタイプ評価が早期にできます。

また、マイコンテンプレートで使用したSTM32評価ボードは、ボードレベルでピンコンパチなのでCortex-M0/M0+/M3への変更も簡単です。

関連投稿:マイコンテンプレートを使ったアプリケーション開発手順

MCUコア選択の注意事項:重要度評価

ARMコア向けの弊社マイコンテンプレートは、全てCortex-M0/M0+/M3共通の動作モードで開発しています。
その理由は、テンプレートという性質・性格もありますが、本稿で示した他のARMコアへのソースコード流用性が高いからです。試しに開発したソースコードであっても、無駄にはならないのです。

最後に、P184、P185に示されたCortex-M0(STM32F0)とCortex-M3(STM32L1)、Cortex-M0+(STM32L0)のADCの差分を示します。

Cortex-M0/M0+/M3のADC比較1(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較1(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較2(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)
Cortex-M0/M0+/M3のADC比較2(出典:STM32L0(Cortex-M0+)トレーニング資料)

STM32MCU内臓周辺ハードウェアは、各シリーズで完全互換と先に言いましたが、スペックを細かく見るとこのように異なります。

このハードウェア差を吸収するのが、STM32CubeMXで提供されるHAL(Hardware Abstraction Layer)です。つまり、STMマイコンを使うには、コア選択も重要ですが、STM32CubeMX活用も同じように重要だということです。もちろん、STM32FxマイコンテンプレートもSTM32CubeMXを使っています。

ARMコアは、バイナリ上位互換ができる優れたMCUコアです。MCUベンダーは、同じARMコアを採用していますが、自社のMCU周辺ハードウェアレベルにまで上位互換やその高性能を発揮できるような様々な工夫・ツールを提供しています。

開発MCUを選択する時には、コア選択以外にも多くの選択肢があり迷うこともあるでしょう。多くの場合、Core-M0/M0+/M3などの汎用MCUコアでプロトタイプ開発を行えば、各選択肢の重要度評価もできます。スペックだけで闇雲に選択するよりも、実務的・工学的な方法だと思います。