ARMコア利用メリットの評価

ARM Cortex-M0+コア利用のLPC8xxテンプレート発売で開発が一段落したので、Cortex-Mマイコンの現状を俯瞰して、今後の開発方針を検討します。

ARM Cortex-Mシリーズマイコンの特徴

ARM Cortex-M機種 一言で表すと…
Cortex-M0+ 超低消費電力ハイパフォーマンスマイコン
Cortex-M0 低消費電力マイコン
Cortex-M1 FPGA組込み用マイコン
Cortex-M3 汎用マイコン
Cortex-M4 デジタル信号制御アプリケーション用マイコン

 

8/16ビットキラーマイコンのCortex-M0+

M0は、8/16ビットマイコンより高性能、高エネルギー効率、高密度コードを目指して開発された32ビットコア。M0+は、M0よりさらに電力効率を最適化したコア。どちらも8/16ビットマイコンの価格レベルで32ビット性能を提供中。M0+の性能は、0.93 DMIPS/MHzで、M0の0.9 DMIPS/MHzより高性能。M0+は、M0命令セットと互換性あり。ARM Cortex-M開発ツールは、Eclipseベースとすることで、ベンダが異なっても開発環境を統一。ARM提供のCMSISを使うと、Mシリーズコアとベンダハードの差を隠ぺいすることができ、ソフト流用性も高まる。

世界定番ARMマイコンの最初のテンプレート開発にCortex-M0+を選んだ理由が、上記です。

これらCortex-Mシリーズの特徴は、ベンダやマイコン機種が変わると、一から開発環境構築やその習得、コアハードの熟知が必要だった従来マイコン開発に比べ、ベンダ/機種横断的に経験や既存資産を活かしたソフト開発が期待でき、利用者側メリットが大きいことを示しています。ARM社の狙いもココでしょう。

そこで、この「ARMコア利用メリット」を実際に試すことを今後の方針とします。

NXPのCortex-M0+テンプレート → NXPのCortex-M0テンプレートへ移植

発売中のCortex-M0+/LPC8xxテンプレートは、ARMコアベンダとしては老舗のオランダ)NXPのCortex-M0+マイコンLPC820を使ったテンプレートソフトです(写真参照)。NXPは、多くのMシリーズ製品を提供中です。そこで、このM0+テンプレートをM0機種へ移植することで、「同じベンダでCortex-M0+からM0への変更時のARMコア利用メリット」を検証します。

NXPのCortex-M0+テンプレート → フリースケールのCortex-M0+へ移植

ARMコアマイコンベンダとしては後発の米)freescaleのCortex-Mマイコンは、2014年7月現在、後発ゆえに特徴がきわ立つM0+とM4の2機種を提供中です。そこで、Cortex-M0+/LPC8xxテンプレートを、フリースケール製M0+マイコンへ移植することで、「異なるベンダでCortex-M0+ソフト移植時のARMコア利用メリット」を検証します。

どちらの検証も、いろいろなマイコンを開発してきた自身の経験と比較し、「ARMコア利用メリットを享受できるか否かの主観評価」になりますが、ARM社の狙いが絵にかいた餅なのか、本当に役立つのかの参考になると思います。

テンプレート移植
テンプレート移植

なお、別途販売中のルネサスRL78/G1xテンプレートは、コチラを参照して下さい。

RL78/G1x開発役立ち4ドキュメント

2014/6/20ルネサス発行のRL78/G1x開発に役立つ資料を4つお知らせします。このページ一番下、その他に分類されている資料で、NEW!マークが付いた以下4タイトルです。

1.RL78ファミリ用CコンパイラCA78K0R SADDR領域とCALLT命令の使用

SADDR領域とCALLT命令の効果を解りやすく解説しています。

販売中のRL78/G1xテンプレートも、SADDR領域は使っていますが、CALLT命令は、コードサイズは小さくなるものの、速度が遅くなるので使いません。RL78/G1xは比較的大きなROMを持つマイコンなので、コードサイズよりも速度を優先して設計したためです。

有効なSADDR領域ですが大きさに限りがあるので、コンパイルオプションのROM/RAM使用量を表示し、上限に近い場合には、配置変数の選択も必要でしょう。

2.RL78ファミリ用CコンパイラCA78K0R データフラッシュへの定数の配置方法

ROM、RAM、データフラッシュの3領域を持つRL78/G1xデバイスで、データフラッシュ領域へconst定数を配置する方法を記載しています。

RL78/G1xテンプレートは、データフラッシュライブラリを使い4KBデータフラッシュ領域をEEPROM的に使っています。このような使い方が不要な場合には、巨大テーブルの定数配置などで解説の方法も使えそうです。

3.スタック領域の変更方法

4.リンク・ディレクティブの説明

どちらの資料もROM、RAMへのセグメント配置に関する基本的な解説です。文章や図にすると、説明が長くなるのが欠点ですが、まとまっているので理解し易いでしょう。

RL78/G1xテンプレートでは、コンパイラ領域がRAM内で連続するように、データフラッシュライブラリの占有領域を決めるリンク・ディレクティブ設定を行っています。また、作成する関数間インタフェースは、基本的に関数引数を使わずRAMを使います。従って、関数単独のデバッグが容易で、スタック使用量も引数利用に比べ少ないのが特徴です。結果として、スタック領域の配置は、コンパイラにお任せでも問題なく動作します。

LPC81x開発・習得にはLPCOpenライブラリが適す

LPC81x開発・習得にあたり、LPCOpenライブラリと従来ライブラリ(LPCCloseと呼ぶ)を比較し、LPCOpenがアプリ開発・習得に適すことを示します。

LPCCloseライブラリの UARTサンプルソフト

UARTサンプルソフト
UARTサンプルソフト

従来ライブラリ:LPCCloseのUARTサンプルソフト、“uarttest.c”の最初の部分を抜粋しました。前記事に示したライブラリ利用の為に、コア制御に”LPC8xx.h”、周辺回路制御に、”lpc8xx_clkconfig.h”と“lpc8xx_uart.h”のヘッダファイルをインクルードした後に、サンプルソースを記述しています。このUARTサンプルは、UART初期設定後、PCへ”Hello world!”とUART送信し、PCからのUART受信文字をエコーバックします。動作中のデバッガ画面とターミナル画面を示します。

システム動作クロック12MHzのUART通信
システム動作クロック12MHzのUART通信

システム動作クロック変更

全てのLPCCloseサンプルソフトは、システム動作クロック(SystemCoreClock)をLPC81x内蔵RCオシレータ12MHzで動作させています。この速度を変えるには、以前の記事に書いたクロックパラメタ算出ツールが便利です。前の記事は、LPCOpenライブラリでの例でしたので、LPCCloseライブラリで24MHzに変える例を示します。

クロックパラメタ算出ツール
クロックパラメタ算出ツール

このツールから、クロック速度を24MHzへ変えるには、SYSPLLCTRL:0x41を0x23へ、MAINCLKSEL:0x0を0x3へ、SYSAHBCLKDIV:0x1を0x2への3変更で良いことが判ります。これらは、CMSIS_CORE_LPC8xxフォルダの”system_LPC8xx.c”に記述されています。

システム動作クロック変更箇所
システム動作クロック変更箇所

これらパラメタを変更し、デバッガプローブ機能でクロックが24MHzに変わったことを確認後、UART通信を行うと、ターミナル側に文字化けが発生します。変更箇所はパラメタのみです。つまり、LPCCloseライブラリのUARTサンプルは、残念ながら24MHzでは正常動作しないことが判ります。

システム動作クロック24MHzのUART通信(文字化け)
システム動作クロック24MHzのUART通信(文字化け)

但し、gpioなどの他ライブラリはどの速度でも問題なく動作します。従来ライブラリUARTに何らかの原因があることは確かです。この原因追究は、スキルアップに繋がります。しかし、「ライブラリが提供するAPIを活用したアプリ開発・習得からは、かなりの回り道」となります。

LPCOpenライブラリのUART動作

一方、LPCOpenライブラリは、システムクロックが12MHz、24MHz、30MHzでもUARTは正常動作します。前記事のLPCOpenとLPCCloseライブラリの使い易さ比較でLPCOpenの方が圧倒的に簡単であることも考慮すると、LPC81xの開発に、敢えて「従来ライブラリLPCCloseを使う意味・理由はない」と思います。

残念なのは、開発環境LPCXpressoの付属サンプルソフトが、従来ライブラリLPCCloseであることです。慣れない環境で初心者がLPC81xを検証する時は、サンプルと評価ボードを使います。今回示したシステム動作速度を変えた時、サンプルが正常動作しない問題は、開発や理解に大きな障壁となります。もし、従来ライブラリの代わりに、LPCOpenライブラリのサンプルが初めから付属していれば、この問題は回避できます。

LPCOpenライブラリとLPCOpenテンプレートの薦め

最新版のLPCOpenライブラリのリンクはココです。LPC81xアプリ開発・習得には是非、このLPCOpenサンプルソフトを使うことをお勧めします。

また、「LPCOpenライブラリを使い、そのまま実務にも使えるLPC8xxテンプレート」を活用頂ければ、より効率的にアプリ開発・技術取得が期待できます(LPC8xxテンプレートはコチラを参照ください)。

LPC81xのLPCOpenと従来ライブラリの使い易さ比較

LPC81xソフト開発時に利用するLPC81xライブラリで、ソース記述がどのように変わるかを示します。

利用ライブラリ選定

LPCXpressoは、新プロジェクト作成時、プロジェクトウイザードで2つのライブラリ、LPCOpenまたはLPCClose:従来ライブラリのどちらかを選定する必要があります(各ライブラリは、コチラを参照)。

LPCOpenまたはLPCClose選択
LPCOpenまたはLPCClose選択

その結果、プロジェクトに追加されるライブラリファイルとその制御対象が下表です。LPC81xには、これら選定ライブラリの他にROMライブラリもあります(LPCOpenとROMライブラリが、それぞれ機能補完していることは、コチラを参照)。

選定ライブラリ コア制御 周辺回路制御
LPCOpen lpc_chip_81x_lib nxp_lpcxpresso_812_board_lib
LPCClose CMSIS_CORE_LPC81x lpc800_driver_lib

 

ライブラリの使用宣言

ライブラリ選定後、プログラムソース記述時は、#include “ライブラリヘッダファイル”で使用宣言が必要です。LPCOpen選定の場合は、#include “board.h”のみで、コア制御と全ての周回路制御、さらにROMライブラリも「同時」に使えます。

一方、LPCCloseの場合は、コア制御に#include ” LPC8xx.h “、周辺回路は、制御対象に応じて#include “lpc8xx_制御対象.h”の宣言が「個別」に必要です。また、ROMライブラリ利用の場合は、ROMテーブルやROMライブラリ物理位置の宣言などを「別途追加」する必要があります(詳しくは、LPCユーザマニュアルUM10601のLPC81x Boot ROMセクション参照)。

ROMライブラリ追加宣言(一部抜粋)
ROMライブラリ追加宣言(一部抜粋)

使い易さ比較

つまり、LPCOpenなら#include “board.h”のみ、LPCCloseなら#include ” LPC8xx.h”の他に#include “lpc8xx_gpio.h”、#include “lpc8xx_mrt.h”・・・や、ROMライブラリ追加宣言などのインクルードが、肝心の「ソース記述前」に必要となります。

LPCOpenのboard.hを診てみると、色々なヘッダファイルが、孫引きでインクルードされるのが判ります。プログラミングでは、LPCOpenライブラリ利用の方が、記述が簡単です。結果としてバグ減少が期待できます。LPC8xxテンプレートに関して、LPCOpen版が先に販売開始され、LPCClose版が後になっているのは、この理由もあります。

LPC8xxテンプレートLPCClose版の対策

開発中のLPC8xxテンプレートLPCClose版は、煩雑な記述を避けるため、LPCOpen版と同様、1つのヘッダファイルインクルード追記でLPCCloseライブラリが利用できるように工夫します。

RL78常設セミナテキスト改版

2014年5月30日発行のルネサスサポート情報 vol.197で、ルネサス常設セミナテキストの改版がレポートされました。レポートでは、「新規公開」とありますが、ダウンロードして旧版と比較した結果を示します。

セミナテキスト改版内容

コース名 レポート記事 旧版との比較結果
R8Cマイコンコース テキスト新規公開 2012年3月21日 Rev. 2.20と同じ
RL78マイコンコース テキスト新規公開 2013年12月18日 Rev. 1.30へ改版
RL78コンパイラコース テキスト新規公開 2014年3月13日 Rev. 1.07へ改版
RL78リアルタイムOSコース テキスト新規公開 2014年3月31日 Rev. 1.02へ改版

※R8Cマイコンコーステキストは、改版内容が不明で、公開テキストは前版と同じでした。

テキストの変更履歴がないので、具体的にどこを変更して改版したのかは不明です。しかし、どのテキストも内容が濃く、一読に値します

テキストですので、重要項目を1~10まで記載しています。初心者には、読むだけで大変で、理解にかけられる労力が不足することも多いと思います。そんな時は、各テキストの最重要箇所のみを抽出したコレに先ずザット目を通してください。特に、コンパイラコースのその1~3を理解した後に、テキストに戻ると理解が捗ると思います。

テンプレート活用のマイコン開発

限られた時間で効率的にマイコンを習得するには、手軽に用意できる開発環境と、テンプレートを活用するのも一つの方法です。ワードやパワーポイントには多くのテンプレートが提供されますが、組込みマイコンのテンプレートは少ないようです(サンプルソフトは、あくまでサンプルでテンプレートとは、別物です)。

そんな時は、販売中のRL78/G1xテンプレートを活用下さい。業務に使えて、テキストの重要箇所エッセンスをプログラムへ盛り込んだテンプレートになっています。世界標準のARM 32ビットマイコンLPC8xxテンプレートも販売中です。

LPCXpresso_7.2.0_153リリース

2014年5月20日、最新版LPCXpresso_7.2.0_153がリリースされました。販売中のLPC8xxテンプレートもこの最新版で動作確認済みです。

新旧LPCXpresso比較

このLPCXpresso_7.2.0_153では、新規プロジェクトをウイザードで作成した時に、メイン関数を生成するファイル名が、これまでのmain.cからproject.cへ変更になりました。例を示します。

SimpleTemplateプロジェクトを新規作成の場合 main()の場所
旧LPCXpresso生成ファイル main.cファイル内にmain()あり
LPCXpresso_7.2.0_153生成ファイル SimpleTemplate.cファイル内にmain()あり
新旧LPCXpressoの比較
新旧LPCXpressoの比較

但し、旧LPCXpressoで作成済みプロジェクトを、main.cファイル名のまま最新版でコンパイルしても問題なく動作します。そのため、旧版で作成した販売中テンプレートは、SimpleTemplateもMenuDrivenTemplateも「main.cのまま」にします。

これには、ユーザ追加ファイル名をPascal形式記述にすると、LPCXpresso生成ファイルは全て小文字表記となり、「一目で、LPCXpresso作成したのか自作かを見分けられる」というメリットもあります。左:旧LPCPressoの場合で説明すると、”Launcher.c”、”Led.c”、”Sw.c”、”Userdefine.h”がユーザ追加ファイル、それ以外が自動生成ファイルということが一目で判ります。

LPC8xx使用ライブラリとプログラムサイズ

LPC8xxには、2種類ライブラリがあることは以前記載しました。さらにROMにもI2CやUARTなどのライブラリがあるので全部で3種類ですが、今回は、最初の2種類、LPCOpenライブラリと従来ライブラリ(LPCCloseと呼ぶ)で、どの程度Flashプログラムサイズが変わるかを示します。

新規Cプロジェクトサイズ

LPCXpressoでLPC820新規Cプロジェクト作成直後のDebugビルドでのプログラムサイズが下記です。コンパイル最適化などは行っていません。つまり、ブート処理のみ行い、何もしないCプログラムです。

プログラムサイズ CRP有効 CRP無効
LPCOpenライブラリ使用 1952バイト 1540バイト
LPCCloseライブラリ使用 1140バイト 728バイト

※LPCXpresso_7.1.1_125で実施。2014/05/25現在、最新版は、LPCXpresso_7.2.0_153。

CRP: Code Read Protectionとは、Flashプログラムの読取りに制限やプロテクトをかける機能で、この機能を有効にすると約400バイト必要になることが判ります。製品出荷時には必要になる機能でしょう。

何もしないプログラムのFLASH専有率

CRP有無と使用ライブラリで4つの組合せを示しました。LPC8xxデバイスのFlash容量に対するこれらの占有率を示します。

何もしないプログラムのFLASH専有率(%)  専有率
LPCOpen CRP有効 48% 24% 12%
CRP無効 38% 19% 9%
LPCClose CRP有効 28% 14% 7%
CRP無効 18% 9% 4%

 

8ピンのLPC810はFlash容量が4Kバイトですので、LPCOpenライブラリでCRP有効にすると1952/4096=48%のサイズを「何もしないプログラム」で専有します。Cortex-M0+マイコンは、同一処理では他マイコンよりも小さいコードを生成しますが、それでも少ない残り量です。追加開発する処理量にもよりますが、30%以下を一応の目安とすると、LPC810にはLPCCloseライブラリを使う方が良さそうです。

一方、LPC810以外は、LPCOpenライブラリが使えそうです。LPCOpenライブラリは、評価ボード別やマイコン別の層構成になっていますので、LPCCloseに比べオーバーヘッドがある分、サイズが大きくなります。しかし個人的には、標準Cライブラリに近く洗練された感じがして好きなライブラリです。また、オープンな場で、使い方やバグ情報があるのも良い点です。勿論、層構成ですので、別マイコンやボードへの移植性も高いです。今後は、このLPCOpenライブラリが主流になると思います。

LPC8xxテンプレートをLPCOpenライブラリで開発したのは、このような経緯がありました。

LPC8xxテンプレート(LPCOpen+ROMライブラリ版)発売

LPC8xxテンプレート(LPCOpen+ROMライブラリ版)を¥1000(税込)で販売します。テンプレート概要と仕様は下記です。

LPC8xxテンプレート概要(もくじP1)
LPC8xxテンプレート概要(もくじP1)
LPC8xxテンプレート仕様(もくじP2)
LPC8xxテンプレート仕様(もくじP2)

テンプレートは、LED出力とSW入力のみを組込んだ「シンプルテンプレート」と、組込み必要機能をほぼ全て盛込んだ「メニュードリブンテンプレート」の2つをセットにし、もくじ内容のPDF資料添付で¥1000です。

購入ご希望の方は、メール(宛先:info@happytech.jp)にてお知らせください。銀行振込口座を返信いたしますので、税込代金¥1000円を振込でください。入金確認後、全解説ページとテンプレートプロジェクトをメールにてお送りします。後は、ご自由にテンプレートへ変更や修正を加えて頂いて、LPC8xxの習得、本来のアプリ開発に役立てて頂ければ幸いです。

「シンプルテンプレート」は、LPCXpressoプロジェクトファイルで、LED出力とSW入力のみの機能をプログラム済みで、LPCXpressoLPC820評価ボード単独での動作が可能です。

「メニュードリブンテンプレート」は、LPC820評価ボードにBaseBoardを接続し、I2C EEPROM、LCD、UARTなどの組込みマイコンに必要な機能をほぼ全て実装したテンプレートです。PC接続のメニュードリブン方式で作成したため、関数単位で移植性が高いソフトです(もくじP1動作中の写真、P5ファイル一覧、P10ハードウエア構成などを参照)。

テンプレートは、NPX/ARM社提供のLPCOpenライブラリ(V2.01)とマイコンROMライブラリを使っています。LPC8xxには、上記の他に、従来版ライブラリもありますが、本テンプレートは使っていません(もくじP8に詳細記載)。従来版ライブラリ使用のテンプレートも、近日中に開発、別売(予価¥1000)予定です。従来版ライブラリのテンプレートをご希望の方は、しばらくお待ちください。

Cortex M0+マイコンのLPC8xxは、8/16ビットマイコンの置換えを狙った、従来品より高性能な割込み専用回路や低消費電力、低価格が売りの、世界定番ARM32ビットマイコンです。本テンプレートと確実に動作する市販評価ボードを使えば、LPC8xx習得、早期アプリ開発や評価に最適な環境が得られます。

このテンプレート対象者は、初級~中級のソフト開発者です。上級者は、これに似たテンプレートを既に持っているからです。本来は、上級者がテクニックを含む自分のテンプレートを初級~中級者へ教え、教えられた側でさらに、テンプレートに修正を加えれば、技術継承も容易です。しかし、この継承は、習得済みの者にとっては、オーバーヘッドで、未習得の者にとっては、理解困難な面が多いものです。販売テンプレートには、詳細な資料が付いていますので、だれにでもその内容が理解できます。また、テンプレートソースには、「判りにくい英語ではなく、日本語コメント」を豊富につけていますので可読性も高いと思います。

PS:ルネサスのRL78/G1xマイコンのテンプレートもコチラで販売中です。

LPC820 vs. RL78/G13 割込みコントローラ比較

NVICとRL78/G1xの割込みコントローラ比較

LPC820やCortex M0/M0+マイコンは、割込み処理性能を強化した新しいNVIC: Nested Vectored Interrupt Controllerを持っています。RL78/G1xは、4バンク構成の従来型割込みコントローラです。NVICは、これまでソフトで行っていた割込み 処理を、殆どNVICハードで行います。頻繁な割込みに対する効率化(テール・チェイン)などにより、割込み応答時間が均一になり、高速処理が可能です。

CPU LPC820 RL78/G13、RL78/G14
割込み回路 NVIC: Nested Vectored Interrupt Controller Interrupt Controller
レジスタバンク なし 4バンク(RB0/1/2/3)
レジスタ待避場所 スタック バンク
バンク使用時はスタック
PUSH/POP動作 ハード:NVIC処理(ソフト比、応答時間が均一で高速 ソフト処理
多重割込み受付 デフォルト許可 デフォルト禁止(受付はソフトでEI設定要)
テール・チェイン機能 あり なし
割込み優先レベル 4(高0/1/2/3低)、デフォルトレベル0 4(高0/1/2/3低)、デフォルトレベル3
ISR記述 規定ISR名でCソース記述(オーバーライド可能) __interruptを付加し、規定ISR名記述(オーバーライド不可)

 

割込み起因のバグは、再現性が低く、デバッグが厄介なものです。定量的な評価はできませんが、NVICの謳い文句やこの比較表以上に、割込み処理に対して、有効になると思います。

LPC820 vs. RL78/G13 I2C API比較

マイコンによるI2C APIの差

API比較
API比較

マイコンのI2CにEEPROMを接続する例でAPIを比較します。RL78/G13、RL78/G14、LPC820のI2C関連APIの関数名だけを抜き出して列挙しました。太字は初期化関数です。

RL78/G13とRL78/G14は、CubeSuite+のコード生成を使うと、両マイコンとも同じAPI関数でEEPROM制御ができますが、ここでは、あえて出典のアプリケーションノートを使った場合を示しました。これらアプリノートは、最近リリースされたものです。

この表からマイコン、メーカでAPIとアプリの切り口が、かなり異なることが判ります。例えば、RL78/G13の場合は、SCLのHigh/Low出力など、プリミティブなAPIがあります。RL78/G14は、上位/下位の2階層構成(_EepMdl_と_Drv_で分離、各層に初期化があるので太字関数は2つ)で、マルチスレーブが容易です。LPC820は、3つの中では最もシンプルなAPIでCubeSuiteのコード生成出力に近いものです。

一方、最もアプリに近いAPIは、似ています。例えば、R_EEPROM_R、R_IIC_EepMdl_Read、I2C_MstReceiveやR_EEPROM_W、R_IIC_EepMdl_Write、I2C_MstSendなど。

このように比較的よく使われるEEPROM接続でも、APIは様々です。従って、APIを利用するアプリケーションも、残念ながら異なるものとなります。マイコン選定に当たって、デファクトスタンダートや、開発者の経験で選ばれる理由がここにあります。

テンプレートは、市販の入手容易なボードと無償ツールを使って、結局はオーダーメードになるマイコンアプリの初期立ち上がりを加速するためのものです。人気のあるマイコン機種と使い方を厳選し、トリッキーな手法なしに、素のマイコン性能を引出せるテンプレートを目指します。テンプレートに対するご意見、ご希望などは、info@happytech.jp へお寄せください。