半導体の宿命と対策

今回は技術的な話から離れ、半導体とその製品開発者の宿命と対策を考えます。

Summary:半導体の宿命と対策

半導体と関連開発者の宿命と対策
半導体と関連開発者の宿命と対策

半導体は経済と安全保障に強く関わる戦略物資です。経営・投資家には、巨額が稼げる分野、政治家には権力の見せ所の集票手段となりえます。

先端技術だけでなくこのような様々な側面を持つため、半導体製品開発者は、状況変化への柔軟性と視野を広く保ち、開発デバイスの高騰や入手不能などの状況に備え、常にPlan B対策を持つことをお勧めします。

半導体の成長

日本で「産業のコメ(米)」とも呼ばれる半導体は、自国の国内経済と安全保障に強く関わる戦略物資です。下記ピックアップ記事が物語っています。

世界半導体市場の推移(出典:SIA、データ元:WSTS)
世界半導体市場の推移(出典:SIA、データ元:WSTS)

2024年9月、世界半導体売上高が、前年同月比23.2%増の553億米ドルで過去最高を更新しました(11月7日、EE Times Japan記事)。グロス変化ですが、国別や地域別の増減割合も示されています。

車載ソフトウェア市場規模推移・予測(領域別)出所:矢野経済研究所
車載ソフトウェア市場規模推移・予測(領域別)出所:矢野経済研究所

2024年10月9日、矢野経済研究所は、日本国内車載ソフトウェアの制御系と車載IT系比率とその2030年までの日本市場が、1兆円に迫る規模の拡大予測を発表しました(10月22日、MONOist記事)。

※制御系:車載ADAS(先進運転支援システム)関連。
※車載IT系:CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)関連。

交通事故ゼロ社会イメージ(出典:トヨタ,NTT)
交通事故ゼロ社会イメージ(出典:トヨタ,NTT)

2024年10月31日、トヨタとNTTは、ヒト、モビリティ、インフラが三位一体で協調し、交通事故ゼロ実現に向けたAI・通信基盤構築に向け2030年度までに両社折版で5000億円投資を発表しました(11月1日、MONOist記事)。

これらの記事は、半導体製造・販売の売上高は過去最高に上昇中で、その半導体を大量に使う車載技術なども順調に拡大、2030年頃には、AI活用の新しいサービスへ発展することを示しています。つまり、半導体成長は前途洋々、関連投資や得られる利益も巨額です。

天気予報で言えば快晴です。経営者や投資家にとっては、半導体関連分野は魅力的でしょう。

半導体と政治

前章記事は、いずれも今秋の日米欧政治状況が大きく変わる前に発表されたものです。来年2025年は、この政治状況が大きく変わります。果たしてこれら予測や見込みが、このまま維持・継続されるでしょうか?

選挙によって選ばれる政治家は、自分の選挙区に視野・関心が集中しがちです。半導体産業は、地域経済と結びつきが強く、工場誘致に巨額資金や地域ネゴシエーションなども必要なため、政治の力(権力)の見せ所、恰好な集票手段です。

半導体は、先端技術だけでなくこのような政治側面も持つ産業です。戦略物資半導体の宿命です。

従って、日米欧政治状況変化後の来年2025年以降、各国半導体やサプライチェーンがどう変化するかは不透明で予測しづらいでしょう。100%の快晴確率では無い訳です。

開発者の対策

半導体を使う製品開発者は、快晴確率が100%で無いことを念頭に置く必要があります。例えば、台風の発生により場所により豪雨に変わることもある訳です。

台風やCOVID-19のような緊急事態の結果、開発デバイスの高騰や入手不能などの状況に変わることもあり得ます。これらに備え、代替デバイスを考慮しておくなどPlan Bを持ちましょう。例えば、MCUなら第2第3のMCUを考え、万一のMCU交換に対応できるハードウェア構成、例えば、制御系を標準インタフェースのArduinoで交換可能にするなどです。

また、様々な状況変化に対する柔軟性も必要です。これは、半導体関係者全てに言えることです。

半導体の製品開発者は、日頃から視野を広く持ち柔軟性を鍛えることが必要です。


MCUとMPU二刀流開発#2

Visual Studio Codeを使ったRaspberry Pi Pico 2 MPU開発
Visual Studio Codeを使ったRaspberry Pi Pico 2 MPU開発

TrustZone対応Cortex-M33コアに変わったRaspberry Pi Pico 2のMCU開発者向けPico 2開発の2回目は、Visual Studio Code(VSC)でソフトウェア開発環境を構築し、最初のプロジェクトを作成します(二刀流開発背景やハードウェアは投稿#1参照)。

※MCU開発者向けPico 2開発とは、MCU開発者の視点でRaspberry Pi Pico 2 MPU開発を記述。
※本稿はMCU開発で使うEclipse IDEとVSCを比較。
※MCUは価格追及型、MPU/SBCは機能拡張型。

Visual Studio Code(VSC)

Visual Studio Codeインストール直後
Visual Studio Codeインストール直後

VSCは、Microsoftが開発したマルチプラットフォーム・多言語対応の新しいコードエディタです。上図英語版エディタへ、拡張機能をインストールして使います。

カスタマイズ性が高く人気の開発ツールです。MCU開発デファクトスタンダードのEclipse IDE代替としても普及し始めています。

MCUとMPUの二刀流開発者は、Eclipse IDEとVSCの2つの統合開発環境を使えることが必要です。そこで、Pico 2 MPU開発環境のVSCを構築します。

先に結論を言うと、見た目は違いますがVSCはMCU統合開発環境Eclipse IDEと殆ど同じ操作です。Eclipse IDEコマンドやViewがVSCにもありますので同じ感覚で操作できます。

※本稿のEclipse IDEとは、例えばブログ掲載中のNXP)MCUXpresso、ST)STM32CubeIDE、ルネサス)e2 studioなどのこと。どれもEclipse IDEをベースにAPI生成ツールが実装済みのMCU開発環境。

Pico 2 MPU開発環境のVSC構築

1. PC(Win/Mac/Linux)へVSCインストール(デフォルト設定でOK)
2. 拡張機能:Japanese Language Packのインストール(お好み言語インストール可能)
3. 拡張機能:Raspberry Pi Picoのインストール(Pico 1/2/W全て共通)

拡張機能のJapanese Language PackとRaspberry Pi Picoのインストール
拡張機能のJapanese Language PackとRaspberry Pi Picoのインストール

拡張機能は、左ツールバー上から5番目の拡張機能アイコンをクリックし、検索窓にキーワード、例えばJapaneseやPicoを入力して選びます。様々な拡張機能候補が表示されますので、概要などを見て適す機能を選びます。インストールをクリックすればVSCへのインストール完了です。

VSCは、結構な頻度で更新されます。左ツールバー一番下の歯車アイコンクリックで更新確認ができます。インストール済みの拡張機能も、歯車アイコンで様々な設定ができますが、デフォルト設定で問題は無いと思います。

このようにVSCは、英語版汎用エディタを開発者がカスタマイズして使います。一方、MCU開発は、デファクトスタンダードEclipse IDEをMCUベンダがカスタマイズし専用化したものを使います。一長一短がありますが、Pico 2 MPUだけでなく幅広い開発にも使えるVSCは人気上昇中です。

Pico 2 MPUのVSC開発準備

拡張機能の日本語表示は、VSC再起動後に有効になります。日本語に変わらない時は、View>Command Palletをクリックし、検索窓にJapaneseなどを入力すると、表示切替えコマンドが判りますので手動切替えができます。

Pico拡張機能インストール後、左ツールバーにMPUアイコンが現れます。これをクリックし、New C/C++ Projectをクリックした画面が、下図です。

拡張機能Raspberry Pi Picoインスト後、New C/C++プロジェクトクリック画面
拡張機能Raspberry Pi Picoインスト後、New C/C++プロジェクトクリック画面

MCU開発者にはお馴染みの開発プロジェクト名やデバッガ設定ができます。面白いのが、RISC-Vコアが選択できる点です。実はPico 2は、Cortex-M33とRISC-Vのディアルコア(!) MPUです。しかし、どちらか一方のみが開発に使えます。本稿は、Cortex-M33を使います。

Featuresは、追加ライブラリです。Pico 2は、機能拡張型MPUですので、SPI/I2Cなどのインタフェース経由でボード機能を拡張するためのライブラリです。

Pico 2サンプルプロジェクト作成

前章のNew C/C++ Project画面で、プロジェクト名や標準入出力(printf)の接続先UART0/USBを選択後、Createクリックで新規プロジェクトが作成できます。しかし本稿は、MCU開発者にお馴染みのサンプルコードから最初のプロジェクトを作成します。

New Project From Exampleでblink_simpleを選択
New Project From Exampleでblink_simpleを選択

New C/C++ Projectの3つ下New Project From Exampleをクリックし、Name欄にblink_simple、Board typeはPico 2を選択します。Locationに適当な保存先を入力し、これ以外はデフォルトでCreateをクリックするとサンプルコード:blink_simple.cが作成されます。

※Name右横▼から様々なサンプルコード選択可能。

最初はDownloading SDK and Toolchainなどがあるため、作成時間がかなりかかります。画面右下のステータスで状況が判ります。また、「作成者を信頼しますか」などの質問が来ることもあります。暫く待っていると、下記blink_simple.cが現れます。

Pico2サンプルプロジェクトblink_simple
Pico2サンプルプロジェクトblink_simple

gpio初期設定後に無限ループを実行し、この中でgpio出力のledを点滅します。MCUのLチカサンプルと同じ構成です。

Pico 2サンプルプロジェクトビルド&デバッグ

下段Compileクリックでビルドされ、サンプルなので成功結果がターミナルViewに示されます。Eclipse IDEと同じ画面構成です。

この後、#1投稿で購入したRaspberry Pi Pico 2、DebugProbeを下図のようにPCとUSB接続します。本サンプルは、UART0は使いませんが接続していても問題ありません。

Rapsberry Pi Pico 2とDebugProbeのPC接続
Rapsberry Pi Pico 2とDebugProbeのPC接続

左ツールバー上から4番目の実行とデバッグ(Ctrl+Shift+D)アイコンをクリックすると、オブジェクトがPico 2へダウンロードされ、変数などが確認できるデバッグ画面に変わります。また、Eclipse IDEデバッグでよく使う続行(F5)やステップインなどのデバッグツールバーも表示されます。これらを使ってデバッグします。

blink_simple以外にも、様々なサンプルプロジェクトがあります。これらでPico 2 MPU理解が進みます。

Summary:MCU開発者のPico 2開発#2

最新MPU Cortex-M33コアRaspberry Pi Pico 2を使い、MCU開発者案件をMPUへも広げること、Eclipse IDE代替可能性のあるVisual Studio Code(VSC)習得を狙った投稿2回目は、以下VSC基本操作を示しました。

  • Pico 2 MPU開発環境VSC構築と開発準備
  • Pico 2サンプルプロジェクトビルドとデバッグ

統合開発環境としてのVSC操作やプロジェクト作成手順は、当然ですがMCU開発環境Eclipse IDEと殆ど同じです。但し、コマンド配置やファイル操作は、専用Eclipse IDEに一日の長があると思います。

VSCメリットは、今後期待されるAI活用プログラミングとの連携が良いことです。生成AI牽引GOMAの一角を占めるMicrosoft製だからです。

VSC基本操作を文章で書いたので長文になりました。端的に言えば、VSC操作は、MCU開発で使うEclipse IDEと同じです。Eclipse IDEで使うアイコンやコマンドはVSC画面内にあります。Pico 2サンプルを数個試せば、VSCにも慣れると思います。

Afterword:Pico 2ピン配置

サンプルコード利用時に役立つRaspberry Pi Pico 2:RP2350ピン配置を示します。本稿blink_simpleサンプルledは、GP25と判ります。また、豊富なSPI/I2Cインタフェースを使ってPico 2 MPUの機能拡張を行うのも判ります。

Rapsberry Pi Pico 2(RP2350)のピン配置
Rapsberry Pi Pico 2(RP2350)のピン配置



 

MCUとMPU二刀流開発#1

Rapsberry Pi Pico2開発環境
Rapsberry Pi Pico2開発環境

今年8月9日、英国ラズパイ財団が新しいRaspberry Pi Pico 2(以下Pico 2)を発表しました。Pico 2は、MCU開発者向けMPUです。従来MPU/SBCが採用していたCortex-Aなどの定番MPUコアから、セキュリティTrustZone対応Cortex-M33コアに変わったからです。そこで、MCU開発者向けPico 2開発の連載を始めます。

この連載で筆者を含めたMCU開発者は、最新MPU(Pico 2)のMCU的開発とVisual Studio Code(VSC)習得ができます。狙いは、開発の幅をMCUからMPUへも広げること、Eclipse IDE代替可能性もあるVSC習得の2つです。

※MCU的開発とは、例えばPico 2(RP2350、Cortex-M33 or RISC-V/150MHz、Flash/4MB、RAM/520KB)とMCUでお馴染みの表記をするなど「MCU開発者の視点でMPUを開発」ということです。

Summary:MCU開発者のPico 2開発#1

最新MPU Cortex-M33コアRaspberry Pi Pico 2を使い、MCU開発者案件のMPUへの拡幅、Eclipse IDE代替VSC習得を狙った投稿の1回目を示しました。

投稿#1内容が以下で、投稿背景とPico 2開発ハードウェアを示しています。

・MCU側からみたMPU開発の差
・MCU開発者が最新Raspberry Pi Pico 2 MPUを使うメリット
・Pico 2 MPU開発ハードウェア入手先情報
・TrustZone Cortex-M33 MCU/MPU二刀流開発の勧め

次回は、Pico 2開発ソフトウェアのVSC構築を投稿予定です。本投稿は、今後不定期に続けます。

※MCU(Micro Controller Unit)とMPU/SBC(Micro Processor Unit/Single Board Computer)の差を極簡単に言うと、MCUは価格追及型、一方、MPU/SBCは機能拡張型です(詳細は関連投稿参照)。

MPUとMCU開発差

同じCortex-M33コアでもMCU開発者とMPU開発者は異なるアプローチ
同じCortex-M33コアでもMCU開発者とMPU開発者は異なるアプローチ

MCU開発者なら当たり前の事でも、MPU側から見ると違う事柄が、コチラの記事前半で良く判ります。記事からピックアップした具体例が下記です。

・MPUは、ネイティブコード以外の開発もある
・サンプルコードは、全MPUペリフェラルをカバーしていない
・オンチップデバッグ無しのMPUボードもありJTAG/SWDの馴染みが薄い

一方、新しいPico 2が、MCU開発者に向いている理由が下記です。

・MCU開発者に馴染みがあるTrustZone対応Cortex-M33コアMPU
・MCU標準開発環境Eclipse IDE代替可能性のあるVSCが開発環境
・Windows/Macで開発できPico 2ボードとDebug Probe価格も低い
・Cortex-M33とRISC-Vのコア切替えもでき発展性に優れる
・Pico 2でオープンソースソフト/ハード開発を体験できる

つまり、MCU開発者の知識や経験を活かし、新しいPico 2 MPU開発ができます。その結果、低い障壁でMPU開発が始められます。

また、業務とは別の自分のキャリアアップにも役立つと思います(二刀流開発の勧め章参)。

Pico 2 MPU開発ハードウェア入手先

最初の図のPico 2とDebugProbeの2つが、購入するハードウェアです。

新しいPico 2は、従来比、1.5~2倍の高性能と省電力性が特徴です。DebugProbeは、専用ケースに入っており接続ケーブルも付属で使い易いです。

秋月電子通商やスイッチサイエンスなどから購入できます。秋月の方が低価格ですが、取扱数量が少ないとサイト記述があります。

・Raspberry Pi Pico 2:秋月電子スイッチサイエンス
・Raspberry Pi DebugProbe:秋月電子スイッチサイエンス

Pico 2開発環境Visual Studio Code

前述の記事後半に、Pico 2開発環境のVSC構築方法と、従来MPUで自作したデバッガー(Picoprobe)を使ったLチカプログラミングが記述されています。

但し、本連載は市販DebugProbeを使います。また、VSC構築は、次回投稿します。先行してPico 2開発環境を構築したい方は、記事を参考にしてください。

Cortex-M33 MCU/MPU二刀流開発の勧め

MCUとMPUの二刀流でTrustZone Cortex-M33を開発
MCUとMPUの二刀流でTrustZone Cortex-M33を開発

今から10年後、2034年の日本とエンジニアの記事は興味深いです。

日本の人口減少と共にエンジニアに求められるスキルも変わり、「高度なスキルに加え、より早く開発業務をこなす能力も求められる」という趣旨です。

本稿のPico 2 MPU開発もこの記事の趣旨がベースになっています。つまり、MCU比、MPU開発は、オープンソースソフト/ハードへの対応が良く、早い業務開発に向いています。

IoTに必須のセキュリティ機能を持つTrustZone Cortex-M33を、高度スキルを活かしたMCU、オープンソースソフト/ハードを活かしたMPU、どちらでも開発できれば、顧客要求を満たすエンジニアになれます。

顧客にとって実現手段はMCUでもMPUでも構わない、開発期間とトータルコストが問題です。この問題を解ける開発者、TrustZone対応Cortex-M33のMCUとMPU二刀流開発者が目標です(ワールドチャンピオンドジャースの大谷翔平氏のように)。

Afterword:Pico 2オープンソースハード/ソフト例

MPU/SBC(小さいコンピュータ)の拡張性を支えるオープンソースハード/ソフトは、市場に数多くあります。これらを上手く使えば、MCU比、早く大規模な開発に役立ちます。ここでは、3例を挙げます。

・AI強化:Raspberry Pi AI Kit、13TOPS NPU追加。
・表示デバイス追加:Tiny2350、カラー液晶追加。
・SSD追加:Raspberry Pi SSD Kit、256GB/512GB追加。

極簡単に言うと、機能を拡張したい時は、これらRaspberry対応のオープンソースハード/ソフトを探し、それをPico 2へ組込めばOKです。正にコンピュータへボード追加のイメージです。多くの機能ボードとボードを動かすソフトが、低コストで入手できますので、MCU比、短期間で簡単に機能拡張できるのが、MPUのPico 2です。


Rufus 4.6でWindows 11 24H2アップグレード成功

2024年10月21日、Rufus 4.6がリリースされました。Rufus 4.5改版の結果、Microsoft公式のCPUリストに掲載が無い古いCPUでもWindows 11 24H2へアップグレードできました。

ダウンロードリンク タイプ プラットフォーム サイズ 日付
rufus-4.6.exe 標準 Windows x64 1.5 MB 2024.10.21
rufus-4.6p.exe Portable Windows x64 1.5 MB 2024.10.21
rufus-4.6_x86.exe 標準 Windows x86 1.6 MB 2024.10.21
rufus-4.6_arm64.exe 標準 Windows ARM64 5.1 MB 2024.10.21

Win11 24H2をWin11 23H2へリカバリし再度Rufus 4.6トライ

CPU要件を回避すべくRufus 4.6が開発中であることは、GitHubに掲載されていました。弊社は、代々Rufusを使ってWin11アップグレードを行ってきたので、今秋の24H2もRufus 4.6でトライします。

そこで、10月11日投稿Afterword章の方法で先行手動Win11 24H2アップグレードしたPCを、元のWin11 23H2へリカバリし、これにRufus 4.6で24H2へ手動アップグレードできるかを試します。

Windows 11 24H2からWindows 11 23H2へリカバリ、Rufus 4.6を試す
Windows 11 24H2からWindows 11 23H2へリカバリ、Rufus 4.6を試す

Rufus 4.6のWin11 24H2アップグレード方法

Rufus 4.6実行ファイルは、リンク先からダウンロードするだけです。PCインストールは不要です。

Rufus 4.6を使ったWin11 24H2アップグレード方法が下表です。Win11 23H2起動状態で24H2インストールUSB setup実行に注意するぐらいで、あとは簡単、ネット速度やPCにも依りますが、準備・更新ともに約1時間で完了します(準備1:23H2バックアップ除く、詳しくは、過去投稿参照)。

Rufus 4.6のWindows 11 24H2手動アップグレード方法
準備 1. Win11 23H2バックアップ(更新失敗リカバリ対策)
2. Win11 24H2ディスクイメージダウンロード
3. Rufusを実行しWin 11 24H2インストールUSB作成
更新 1. Win11 23H2起動状態でインストールUSB setup実行
2. Win11セットアップダイアログに従い数回クリック
3. Win11 24H2大型更新完了

準備3のUSB作成中に表示されるダイアログが、アップグレード要件回避チェックボックスです。Rufus 4.5と全く同じダイアログですが、4.6は古いCPU要件も回避します。これによりRufus 4.5ではNGであったWin11 24H2手動アップグレードは、Rufus 4.6で成功、当該PCの正常動作を確認しました。

Rufus 4.6のアップグレード要件回避チェックボックス
Rufus 4.6のアップグレード要件回避チェックボックス

Rufus 4.6により、Microsoftの段階的ロールアウトを待つことなく、ユーザの好きなタイミングでWin11 24H2アップグレードができます。

Rufus 4.6解説

Rufus 4.6の解説が、コチラの記事にあります。Microsoftが今後導入すると予想される厳しい要件に対しRufus将来性などの懸念が示されています。

しかし、Windows存続・活用にRufusは必須ツール、これが弊社認識です。ウイルスとワクチンに似ています。もちろん、Rufusがワクチンです。

Win11 24H2既知の問題

Win11 24H2アップグレードの既知の問題とMicrosoft対処がコチラの記事にまとめられています。要するに、これら問題が解決するまでは、手動アップグレードは避けた方がBetterということです。

但し、これは元々アップグレード要件を満たす普通のWin11 23H2 PCでの話です。

Win10や古いCPUのWin11 PCにとっては、来年2025年10月のWin10/Win11 23H2サービス終了までに、何もしなければ当該PCの廃棄/Lunix Mint載せ替え/新PC購入などの選択に迫られます。

これら切迫PCに対し、Rufus 4.6はWin11 24H2アップグレードを可能にします。その結果、Win11 24H2サービス期間の2026年10月までの2年間Windowsを使い続けられること、これが何よりも大きいと思います。この延命期間に当該PCの今後を検討できるからです。

PCは、単なる筆記具の置換えから、生成AIを使ったAIアシスタント活用のAI PCへの大変革期です。延命期間と大変革期が重なる次期PCの選び方は、コチラの投稿を参照してください。

Summary:Windows 11 24H2 Rufus 4.6アップグレード成功

Rufus 4.6でWindows 11 24H2アップグレード成功
Rufus 4.6でWindows 11 24H2アップグレード成功

Rufus 4.6を使うと、Microsoft公式IntelAMDリストに掲載無しの古いCPUでも、Windows 11 24H2へ簡単にアップグレードでき、その後、安定動作も確認しました。

24H2アップグレードで得た2026年10月までの2年のサービス期間中に、当該PCをAI PCとして使えるかなど次期PC検討ができます。

Afterword:例年比多いWin11 24H2トラブルとARM64

Win11 24H2既知の問題以外にも、多くのアップデートトラブルが散見されます。原因は、OSコア変更でしょうか、少なくとも弊社利用アプリ互換性は問題無しでした。AI PC大変化期の始まりでMicrosoft対応部門は、トラブルが収束するどころか未だに発散気味、大変でしょう。

また、Rufus 4.6ダウンロードリンクのx86/x64とARM64実行ファイルサイズ差も気になります。処理フローチャートは同じハズ、これ程差が生じる原因も知りたいです。


Windows 11 24H2アプリ互換性

Windows 11 24H2は、23H2のNi OSコア(ビルド番号:22000番台)からGe(26000番台)へ変わりました。そこで、前投稿で24H2へ先行手動アップグレードしたPCを使って、主要アプリの動作確認を行いました。結果、主要アプリ以外も含め、特に問題なく正常動作しています。

互換性確認アプリリスト

同一OSコアアップグレードなら、アプリ動作確認は別途行いません。しかし、今秋の24H2アップグレードは、OSコアが変わりました。コア変更により、アプリ互換性リスクが高まります。

そこで、弊社全PCアップグレードの前に念のため、主要アプリ動作確認を行いました。確認主要アプリが下記です。これら以外の通常使うブラウザ等のアプリも、問題なく正常動作しています。

分類 アプリ名 バージョン Win11 24H2動作
MCU開発環境 e2studio 24.4.0 OK
STM32CubeIDE 1.16.0 OK
Visual Studio Code 1.94.0 OK
エディタ Notepad++ 8.7 (64-bit) OK
文書作成 LibreOffice 24.8.2.1(X86_64) OK
アクセサリ PC Manager 3.14.6.0 OK

MCU開発環境は、23H2ビルドのクリーン後、24H2再ビルドの成功で動作OKとしました。注意点は、API生成ツールなども含めベンダ提供最新版を使用することです。旧版のままビルドすると、エラーが発生する場合もあります。

また、ルネサス)e2studioとSTマイクロ)STM32CubeIDEを表記しましたが、他社EclipseベースIDEも正常動作しています。

Eclipse IDE代替可能性のあるMicrosoft)Visual Studio Codeも当然OKです(サイト開発に弊社使用中)。

24H2アップグレード後、リカバリ用のOld Windowsファイルが削除できないなどのトラブルレポートもありますが、従来から使っているPC Managerの詳細クリーンアップを使うと例年どおり削除できました。

Summary:Windows 11 24H2アプリ互換性問題なし

10月1日のWindows 11 24H2リリース後、2週間が経過しました。弊社3/4 PCは、段階的ロールアウト開始を待っていますが、未だ始まりません。例年に比べ、24H2は既知の問題が多く、段階的配布も遅い気がします。

しかし、本稿結果からWindows 11 24H2 OSコア変更に関しては、アプリ互換性問題は無さそうです。

Afterword:Win11 24H2アップグレード後所感

Win 11 24H2アップグレード後、タスクマネージャーを見ると、ディスクパフォーマンスに結構な処理能力を使っています(関連投稿BitLocker中でないことも要確認)。このため、PCによってはこの処理終了までの数時間、動作が遅くなります。

10月9日、Win11 24H2最初の月例更新プログラムが配布されました。アップグレードトラブル対応かと思いましたが、そうでもないようです。Wi-Fi 7など新機能追加も様々ありますが、目新しいUX(ユーザ体験)は無く、24H2アップグレードタイミングと手動かロールアウト待ちかは、悩ましい問題です。


Windows 11 24H2と次期PC選択

Windows 11 24H2がリリースされました。アップグレードCPU条件が23H2より厳しいためRufusを使っても残念ながら24H2へアップグレードができないWin PCも増えました(対策:Afterword参照)。

来年2025年秋までの1年間は、次期PC選びの重要期間と言えるでしょう。Win11 23H2とWin10サービス終了に加え、従来の紙と筆記具を置換えたPCの使い方が、生成AI活用の新しい使い方へ大きく変わるからです。

新しいPCの使い方と、次期Windows/Apple/Linux PCの選び方を整理します。

新しいAI PCの使い方

従来PCからAI PCへ変わる2025年
従来PCからAI PCへ変わる2025年

生成AI出現によりPCの使い方は変わります。AIをパーソナルで有能な無料アシスタントやコンシェルジュとしても利用できるからです。

現在この生成AI牽引企業は、GOMA(Google、Open AI、Microsoft、Anthropic)です。写真加工や即時翻訳などのAIサービスは、PCよりもGoogle PixelなどのAIスマホが先行しています。AIで出遅れたAppleも、Apple Intelligenceで猛烈に追い上げ中です。Google/AppleのAIスマホが、AIアレルギーやAI一般化に大きく寄与すると思います。つまり、AIサービスが当たり前の機能になる訳です。

従来のPCは、紙と筆記具を置換えたMicrosoft Officeが一般ユーザを獲得してきました。この使い方を根底から変えるのが、AI PCです。ネット情報収集や要約、Office文書下書きや分析などは、AIアシスタントの得意分野です。

PCのAI化により、半分の手間で、より優れたPC資料作成ができるでしょう。さらに、先行するAIスマホとの連携により効果的図表や写真加工なども可能です。

但し、これらローカルPCでのAI処理には、NPUやGPUなどのハードが必要なため、MicrosoftはCopilot+ PCに40 TOPS以上のNPUを要件としています。

AI PCサービスは、AIスマホに比べ発展途上です。それでも、AI PCのハード/ソフト/使い方の大転換期が、2025年秋までの1年間になるでしょう。

MicrosoftはCopilot、AppleはApple IntelligenceでAI PCへ注力中です。OpenソフトウェアLinuxもこれらへ追随すると思います。

次期AI PC選択肢と特徴

新しいAI PCの使い方に対応する次期PC選択肢は、3つあります。

Windows 11 24H2リリースと今後のAI PC選択肢
Windows 11 24H2リリースと今後のAI PC選択肢

Win11 24H2へアップグレード、または、Win11 23H2、Win10を来秋サービス終了まで使う、そして新しいMicrosoft AI Copilot+ PCの購入、これらはWindowsをAI PCとして使い続ける選択肢(青)です。
Windowsから新しいApple Intelligence対応Mac PCへ乗換える選択肢(赤)もあります。
既存WinハードへLinux Mintをインストールし活用するのも選択肢(緑)の1つです。

3選択肢のAIスマホ連携、信頼性、価格面などの特徴が下記です。

選択肢 特徴
Windows Microsoft Officeとの相性は高いが、AIスマホ(Android)連携は模索中。
更新やハード/アプリ相性トラブルが多く、信頼性は3選択中最低。
ユーザ無視更新/設定も多数あるが、トラブル対策やカスタマイズ情報も多い。
Mac Win比、AIスマホ(iPhone)連携に優れる。
Apple1社ハード/ソフト提供のためWin比、トラブル小で高信頼。
3選択肢中価格は一番高いがコスパも高く、クリエイタ/開発者に好評。
Linux(Mint) AIスマホ連携は(デフォルト)少ない。
Win比、低性能ハードでも快適動作、既存Winハード活用メリット大。
Win/Apple比、トラブル情報がプロフェッショナル向けで解り難い。

※筆者が現在Windowsユーザのためこの視点よりの相対評価です。

Summary:Windows 11 24H2と次期PC選択

Win11 24H2の目的は、2025年リリース予定Win12アップグレードCPU選別だと思います。つまり、今秋24H2アップグレードができないPCは、今後Windows PCとして使い続けるのは困難と推測します。

対策は、Linux Mintです。メール送受信や動画再生など主要アプリは、マルチプラットフォームブラウザの上で動作します。OS依存性はありません。また、MintにはLibreOfficeやFirefoxが標準装備(もちろんChrome追加容易)です。MintをOSアプリ専用PCと割り切れば、従来Win同様、問題なく使えます。

但し、AI化やAIスマホ対応がWindows/Apple比、Mintは劣ります。AIから最も離れたOSです。しかし、古いCPUの活かし方としては、追加コスト不要で処理性能も驚くほど高速です。

AI PCが業界趨勢です。AI PCには、使い慣れたWindowsならCopilot+ PC、多くのトラブル回避なら、iPhone連携が良く高信頼でAI化も頑張っているApple Intelligence Macが良いでしょう。

Afterword:Win11 24H2 RufusアップグレードNG対策

Windows 11 24H2情報
Windows 11 24H2情報

過去Rufusを使えば、TPMなどのアップグレード要件を回避しWin11アップグレードができました。しかし、Win11 24H2は、MicrosoftのIntelAMDリストに掲載無しCPUは、24H2アップグレードができません。※23H2リスト表記ですが、24H2で適用を厳格にしたと思います。

対策は、コチラの情報を参照ください。弊社第4世代CPU(Core i7 4800MQ)でも無事Win11 24H2アップグレードができ、正常動作中です。24H2のサービス期間2年、2026年秋まではWin11 24H2が使えると思います。

但し、無理に24H2にする必要は、正直無かったと思っています(設定引継ぎが一部Microsoft推薦に戻るため😠)。この反省が、Summaryに示した古いCPUのWinをAI化と少し距離があるLinux Mintへ変え、OSアプリ専用PCとして活用することです。

Afterword2:従来Intel/AMD 対 新Arm CPU

Rufusから判るx86_x64アプリ対Armアプリ
Rufusから判るx86_x64アプリ対Armアプリ

Rufusダウンロードページで、従来x86/x64アプリと新しいArmアプリ差が判ります。Arm CPU対応Rufusがあるのも面白いのですが、何よりもそのサイズ差が凄いです。Copilot+ PCは、Armネイティブ動作ですが、サイズがこれ程異なるのは、コンパイラや開発環境が従来と異なるからでしょうか?
新しいものやMicrosoft推薦が、全てBetterでは無い一例です。


Windows 11 24H2更新注意点

2024年10月1日、Windows 11 24H2の段階的配布が始まりました。Windows 12配布予定が2025年のため、おそらくWin11最後の大型更新バージョンになると思います。

以前、現行Win11 23H2 OSコアNikelが、24H2ではGermaniumへ変わるなどを投稿しました。しかし、24H2更新に際し、もっと重要な注意点がありますので投稿します。

Summary:Win11 24H2更新注意点:「デバイスの暗号化」確認

デバイスの暗号化(HomeとPro)とドライブの暗号化(Pro以上)の設定(設定>プライバシーとセキュリティ>デバイスの暗号化)
デバイスの暗号化(HomeとPro)とドライブの暗号化(Pro以上)の設定(設定>プライバシーとセキュリティ>デバイスの暗号化)

Win11 24H2更新前に、デバイス暗号化とドライブ暗号化の2機能を行うBitLockerを確認し、必要に応じて設定変更。

確認無しでWin11 24H2更新・運用の場合、OSによるデバイスの暗号化自動設定によりユーザ起動不可能となりクリーンインストールの可能性が高まる。BitLocker On時は、回復キーのユーザ保存必須。

お勧めのWin11 24H2セキュリティレベル設定は下記。

デスクトップPC:BitLockerデバイス暗号化、ドライブ暗号化共にOff設定。
ノートPC:モバイル時、BitLocker On設定。暗号化On/Off変更処理に数時間掛かることも考慮。BitLocker回復キーは、別途保存。

BitLockerの2機能

BitLockerは、2つの対象の暗号化を行います。

  1. デバイスの暗号化:システムデバイスの暗号化(Home/Pro共に自動暗号化あり)
  2. ドライブの暗号化:Dドライブなどシステム以外のドライブ暗号化(Pro以上で手動設定のみ)

暗号化済みの場合は、1/2共に鍵などのパスワード、BitLockerなら48桁の数字回復キーを入力しない限り、OS・ユーザ本人でも中身の読出しができません。ハッカー攻撃やPC紛失などへのセキュリティ対策が目的です。

左:デバイス暗号化回復キーと右:ドライブ暗号化回復キー入力例
左:デバイス暗号化回復キーと右:ドライブ暗号化回復キー入力例

Win11 24H2の新機能

Win11 24H2新機能は、Microsoft公式サイトにあります。英文ですので、ブラウザの日本語翻訳を使ってお読みください。中程にある動画字幕も日本語表示で解り易いです。

BitLockerに加え、ファイル単位ロックなどWin23 H2よりもセキュリティレベルが強化されています。また、NPU(Nural Processing Unit)活用のAI Copilot機能、同時翻訳なども紹介されています。

BitLocker概要サイト中頃のデバイスの暗号化「重要」文章を抜粋します。

重要

Windows 11 バージョン 24H2 以降では、DMA と HSTI/モダン スタンバイの前提条件は削除されます。 その結果、自動および手動のデバイス暗号化の対象となるデバイスが増えます。“

つまり、Win11 23H2までのBitLocker条件が緩和され、Win11 24H2以降は、OSが自動でBitLocker暗号化するデバイスが増える訳です。もっと言うと、Win11 Home/ProシステムCドライブは、ユーザが明示的に設定しない限りデフォルトでデバイスの暗号化はOnになります。

AI Copilot Win12の布石:Win11 24H2セキュリティ強化

AI Copilot Win12は、ノートPCをメインターゲットとするAI PC向けOSです。ユーザのすぐ横で1日中エッジAI PCを使っても、バッテリーが持つ低消費電力と、PCの軽さ・薄さがデバイスの特徴です。モバイル性とAI処理の向上が、セースルポイントです。

このWin12は、万一のPC紛失やハッカー攻撃、AI学習情報漏洩に対し、従来比、より強いセキュリティを与えます。

前章のWin11 24H2新機能で、システムデバイスBitLocker条件緩和と自動暗号化拡大などのセキュリティレベル強化は、Win12への布石だと思います。

「デバイスの暗号化」の功罪

ユーザのWindows 11 24H2セキュリティレベル設定必須
ユーザのWindows 11 24H2セキュリティレベル設定必須

デバイスの暗号化をOnにすると、通常のOS処理前でもデータ複合化、処理後にデータ再暗号化保存が必要です。この暗号化オーバーヘッドは、暗号化無しの場合と比べ3~5%、別情報によると45%ものドライブパフォーマンス低下を招きます。

※PCバックアップソフトとの相性は、間違いなく悪いでしょう。

デバイス紛失対策が暗号化でできるのは大切です。しかし、デスクトップPCや家庭内運用のノートPCならば、ユーザの紛失対策は殆ど不要です。

BitLockerに限らずセキュリティ対策は、OSが安全側動作に自動的に設定することがあります。また、その設定タイミングもユーザには分かりません。

セキュリティの功罪とPC安全性を評価し、OS任せでは無くユーザ自らがセキュリティレベルを設定することが、今後のWindows運用に必須です。

Afterword:暗号化と鍵と生体認証

暗号化に鍵は必須です。Windowsは、この鍵をWin11アップグレード要件TPMへ保存します。TPMには、クレジットカード情報なども保存しますので、セキュリティ上、超重要デバイスです。

このTPMアクセスに、指紋などユーザ本人の生体認証が必要です。面倒ですがセキュリティは、複数対策の重ね合わせでセキュリティレベルを上げます。次世代TPMと言われるMicrosoft Pluton Securityプロセッサは、この面倒さ・判り難さを軽減する仕組みであることを期待します。

本稿は、下記資料を参考に作成しました。詳細は、各資料を参照ください。
Win11 24H2新機能:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1627854.html
Copilot+ PC AI機能:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2409/28/news081.html
BitLocker:https://www.youtube.com/watch?v=XE4KFfRGtWw


低消費電力トレンド

MCU開発者は、消費電力に気を配りソフトウェア/ハードウェアを開発します。最近は、顧客の低電力指向が強くなり、全業界で電力不足対策がトレンドとなっています。

ドイツ、米国、日本、有力企業の電力不足対策記事を示し、低消費電力トレンドを活かしMCU開発すれば、顧客に好印象を与え他社差別化に寄与することを示します。

ドイツ)Volkswagen国内工場閉鎖示唆

ドイツ)フォルクスワーゲンの電力消費対策
ドイツ)フォルクスワーゲンの電力消費対策

2024年9月5日、ドイツ最大手の自動車企業Volkswagenが、国内工場閉鎖を検討しているニュースが発表されました。その主要因は、国内調達エネルギーコスト、つまり、電力コストの高騰です。

製造業の製品は、コストパフォーマンスで評価されます。同じパフォーマンスならより安い製品が顧客に売れるのは、当然です。

脱原発方針やロシアのウクライナ侵攻、中東情勢のため、ドイツ国内電力コストが従来比急上昇し、もはやドイツ製造では高いコスパ維持ができないのです。

ドイツ工場を閉鎖、代わりに電力コストの安い国外製造がドイツ)Volkswagenの取組みです。

米国)Microsoft向けスリーマイル原発再稼働

米国)Microsoftの電力対策
米国)Microsoftの電力対策

2024年9月21日、米大手電力コンステレーション・エナジーが、スリーマイル島原発1号機の再稼働を発表しました。Microsoft AIデータセンタへ、20年間電力安定供給のためです。

AIデータセンタ向け電力は、今後急増が予想されます。再生エネルギーやシェール天然ガス発電だけではAI電力需要にまね合わないため、米国各地で原発再稼働の検討が始まっています。

AI新電力需要に対し、既存(休止)設備の再利用で対処するのが米国)Microsoftの取組みです。

日本)NTT光電融合新デバイス開発

日本)光電融合デバイスによる電力対策(出典:NTT R&D Forum 2023)
日本)光電融合デバイスによる電力対策(出典:NTT R&D Forum 2023)

2024年9月20日、NTTは、AIデータセンタ消費電力増大の解決策として光回路と電気回路を組み合わせた、新しい光電融合デバイスの現在到達点と今後の展望公演を発表しました。

光電融合デバイスは、次世代ネットワーク:IOWNだけでなく、コンピューティングへも使えるとNTTは考えています。

AI新電力需要に対し、光電融合新技術で対処するのが日本)NTTの取組みです。

Summary:低消費電力トレンドとMCU開発

ドイツ、米国、日本、有力企業の電力不足の取組みを、最新記事からまとめました。

  • ドイツ)Volkswagen:ドイツ工場閉鎖、電力コストの安い国外拠点で代替
  • 米国)Microsoft:既存(休止)原発再稼働でAI新電力需要を補う
  • 日本)NTT:光電融合の新技術でネットワークとコンピューティング両方の電力不足解消を狙う

これら低消費電力トレンドは、MCU開発やその顧客へも影響を与えます。MCU単体の消費電力は僅かでも、IoT時代は数十億個ものMCUが稼働するからです。

開発MCU消費電力の少なさは、顧客に好印象を与え、他社差別化に大きく寄与します。

Afterword:低消費電力MCU開発

MCU IDEには、電力消費シミュレーションツールが付属しています。従来は、確認程度に使っていました。シミュレーションとはいえ、今後は顧客へのMCU低電力動作例を示すのに使えます。

また、新しい製造デバイスは、従来デバイスよりも高性能で低電力動作です。例えば、40nmプロセスのSTM32G0は、STM32F0/F1の半分以下の電力で高速動作します(弊社STM32G0xテンプレートP2参照)。MCU単体とシステム全体ハードコスト検討も必要ですが、評価価値はあります。

40nm汎用STM32G0シリーズとSTM32F0/F1シリーズの動作電力比較
40nm汎用STM32G0シリーズとSTM32F0/F1シリーズの動作電力比較

全ての弊社マイコンテンプレートは、低消費電力対策にSleep処理を組込み済みです。Sleep有無で消費電力がどの程度変わるか、コメント修正のみで実ハード確認ができます。

MCUプロトタイプ開発に最適、顧客への低電力動作アピールにも適すマイコンテンプレート、ご活用ください。


生成AI未来予測

AIが人間よりも賢くなるシンギュラリティ、2045年問題
AIが人間よりも賢くなるシンギュラリティ、2045年問題

生成AIの未来予測が良く判る記事を紹介します。弊社は、AIをMCUセキュリティコンサルタントへ活用したいと考えています。この記事のAI自動化が、活用できる確信を与えました。

2つの未来予測

AI未来予測は、2つあります。1つが、今の生成AIはバブルで幻滅期へ入る。もう1つが、生成AIはこのまま加速し、社会を激変、シンギュラリティへ入る。この2つを、発表レポートに基づいて論点整理したのが紹介記事です。

弊社は、後者予測のAI加速、シンギュラリティ実現を信じますので、以下この予測要点をまとめます。

生成AI知能レベルと2027年シンギュラリティ実現

生成AI知能レベル、シンギュラリティ、AI自動化
生成AI知能レベル、シンギュラリティ、AI自動化

記事内の今年6月発表Situation Awarenessレポートが、生成AI知能レベルをまとめています。

2019年:未就学児童
2020年:小学生
2023年:優秀な高校生
2024年:大学生(現在AI知能レベル)
2025か26年:大学院生
2027年:汎用人工知能(AGI)レベルとなりシンギュラリティ実現

※AGI(Artificial General Intelligence)は、人間の考え方、知識の「一部を機能化」した現在のAIの親玉に相当し、人間と同等か最大でも10倍程度の知能レベル。

この予測は、レポート著者Leopold Aschenbrenner⽒個⼈の⾒解ではなくAI研究者、業界の主流意⾒だそうです。今年5月の関連投稿、2045年予測よりもかなり早いです!

この予測の前提は、電力やAI半導体、AI研究者、つまりAI資源が十分に揃うことで、GOMAなどの大手AIプレーヤもAI進化へ注力中のため、Aschenbrenner⽒は2027年末AGI誕生に自信を持っています。

さらに、ソフトバンクはコチラの関連投稿で、AGIの10年後に更に高度なASI:Artificial Super Intelligenceへレベルアップすると予測しています。

AI自動化の仕組み

AGI実現を待つまでもなくAI自身が自分を改良・進化させるAI自動化は、今のAI技術でも可能だというレポートをSakana AI発表しました。そのAI自動化の仕組み(実現ステップ)です。

AI自動化の仕組み(実現ステップ)
AI自動化の仕組み(実現ステップ)
  1. アイデア⽣成:与えられたコードとタスク説明に基づいて、新しい研究アイデアを⽣成。
    ※アイデア⽣成は、⽣成AIの得意分野。
  2. 新規性チェック:そのアイデアに新規性があるかをAIが検索機能を使って調査。
  3. 実験実⾏:他に同様の論⽂が⾒当たらない場合は、そのアイデアを使った実験計画を立案。計画通りにコードを書いて、結果を確認。このような実験を繰返す。
  4. 結果の可視化と論⽂執筆:図表を作り論⽂⽣成。
  5. 論⽂レビューと改善:AIが書いた論⽂をAIが読み返し改善点提案、それを基にAIが論⽂を書き直す。

凄い仕組みです。このAI自動化による論文が既にあるそうです。現在は論文中の図表をAIが正確に読めない課題もありますが、この課題は確実に克服されるそうです。

弊社は、AI自動化によりAIをMCUセキュリティコンサルタントへ利用できると確信しました。セキュリティ全般知識とMCUセキュリティ開発の費用対効果、必要な開発レベル、開発期間などを問い合わせると、自動化AI MCUコンサルタントが、上記ステップを使って回答を出力します。

各ステップの結果を参照することで、AI回答ハルシネーション対策や信憑性確認もできると思います。

Summary:生成AI未来予測

ビジネスのAI利用は賛否あります。生成AI未来予測記事は、賛否両論の主張を整理しています。弊社は、AI進化予測の内容をまとめました。

  • 生成AI知能レベルは、電力、AI半導体、AI研究者が十分に揃い、GOMAなどAIプレーヤのおかげで進化し、2027年にAGIとなり人間知能を超えるシンギュラリティになる。
  • AIが自分自身を改良・進化させるAI自動化は、現在のAI知能レベルでも可能で、既に自動化により数件の論文を生成済み。図表の正確な読取りに課題もあるが、克服される。

Afterword:AI利用で激変するPC作業

生成AI革命がGAFAMからGOMAへ変える
生成AI革命がGAFAMからGOMAへ変える

GOMAの一角Microsoftは、AI(Copilot)のビジネスOffice文書作成にも積極的です。例えば、コチラの記事です。紹介されたCopilot機能は、文書生産性や共同作業性の向上に直結します。もはや文書作成時のCopilot利用は、当たり前で、それをいかに上手く使うかが焦点です。

AIに対する一種のアレルギーは、GeminiのGoogleサービス拡張機能やApple IntelligenceなどのAIスマホ普及により減少し、ユーザは、PCへも更なるAI機能追加を要求すると思います。

AIは、もはやInternetと同レベルの情報機器必須機能へ変化・進化しつつあるのです。


2つのTrustZone開発方法

セキュアマネジャ利用対2領域開発
セキュアマネジャ利用対2領域開発

STマイクロ)STM32H5とSTM32U5は、どちらもTrustZone対応Cortex-M33マイコンです。しかし、そのTrustZone開発方法は、STM32H5がSecure Manager利用、STM32U5がSecure/Non Secureの2領域開発など大きく異なります。

本稿は、これら2つのTrustZone開発方法の概要と特質を説明します。どちらが一般のMCU開発者向けかも示します。詳細は、STM32H5はコチラ、STM32U5はコチラのウェビナー資料を参照ください。

STM32H5とSTM32U5

STM32 TrustZome対応MCUポートフォリオ(STM32H5ウェビナー資料P3を編集)
STM32 TrustZome対応MCUポートフォリオ(STM32H5ウェビナー資料P3を編集)

STマイクロのTrustZone対応Cortex-M33コアマイコンファミリは、現在上図の4種類あります。最高動作周波数や内蔵周辺回路が想定アプリケーションにより異なりますが、どれもTrustZone対応のセキュアマイコンです。

※TrustZone基本は、コチラの投稿参照。

Cortex-M33マイコンのセキュリティ機能

STM32 Cortex-M33ハードウェアセキュリティ機能一覧(STM32U5ウェビナー資料P36を編集)
STM32 Cortex-M33ハードウェアセキュリティ機能一覧(STM32U5ウェビナー資料P36を編集)

4種セキュアマイコンのハードウェアセキュリティ機能一覧が上図です。基本機能のTrustZoneやSecure Memory利用セキュアブートは、4種マイコン共に持っています。

これらセキュリティ機能一覧から、必要性に応じて開発ユーザアプリへセキュリティ機能を追加することをセキュリティ開発、その中心がTrustZoneなのでTrustZone開発と言います。

※Secure Memory利用セキュアブートは、コチラの投稿参照。

STM32U5セキュリティ開発方法

マイコンセキュリティの目的は、ハッカー攻撃などによる開発ソフトウェアの改ざん防御です。従って、想定アプリにより多少の違いがあっても、基本となるセキュリティの開発方法は、マイコンにかかわらず同じと考えるのが普通です。

事実、STM32U5やSTM32L5、STM32WBAは、以下の同じセキュリティ開発方法です。

STM32U5セキュリティ開発方法(STM32U5ウェビナー資料P52を編集)
STM32U5セキュリティ開発方法(STM32U5ウェビナー資料P52を編集)

つまり、TrustZone基本投稿で示したように、マイコンハードウェアをSecure領域とNon Secure(Normalと図示)領域に分離、Non Secureソフトウェア(Firmwareと図示)のSecure領域直接アクセス禁止により改ざん防御を行います。

この方法は、Secure領域とNon Secure領域の2プロジェクト開発が必須です。

具体的な2領域分割や領域間アクセス方法などは、STM32U5ウェビナー資料3章に記載されています。

筆者は、開発当初からの2プロジェクト開発は、困難と考えています。最初は領域を分けず一般的な1プロジェクトアプリを開発し、動作確認後にSecure/Non Secureの2プロジェクトへ分離する手順になると思います。

STM32H5セキュリティ開発方法

STM32H5のセキュリティ開発方法は、前章とかなり異なります。

STM32H5セキュリティ機能は、STマイクロがバイナリ形式でIPを提供し、これをセキュア領域へ保存します。MCU開発者は、このIPセキュリティ機能を、Arm PSA API互換のAPI経由で、Non Secure領域のユーザアプリから利用します。

STM32H5セキュリティ開発方法(STM32H5ウェビナー資料P9を編集)
STM32H5セキュリティ開発方法(STM32H5ウェビナー資料P9を編集)

簡単に言うと、Non Secure領域の動作アプリに、必要に応じてセキュリティ機能APIを追加すればセキュリティ開発ができます。セキュア領域のセキュリティ機能は、ST提供IPのためユーザ開発不要です。

このSTM32Trust TEE Secure Managerが使えるのは、現在STM32H5のみです。しかし、今後増えるそうです。

具体的なSecure Manager利用方法や評価ボードなどが、STM32H5ウェビナー資料3章に記載されています。

筆者は、このSecure Manager利用の方が、前章の2プロジェクト開発方法よりもシンプル、かつ、セキュリティ本体コーディングも不要なため優れていると思います。PSA API利用ソフトのSTマイコン横展開が、現在STM32H5に限られるのは残念です。逆に、他ベンダマイコンへの流用は、Arm PAS API互換のため容易かもしれません。

Summary:2つのTrustZone開発方法

セキュアマネジャ利用対2領域開発
セキュアマネジャ利用対2領域開発

STマイクロのTrustZone対応Cortex-M33マイコンSTM32H5とSTM32U5の2セキュリティ開発方法と特質を示しました。

セキュリティ開発は、その用語や費用対効果などが、一般のMCU開発者に判り難い領域です。また、Cortex-M33のTrustZone理解も必要です。

このTrustZoneに対し正攻法のセキュリティ開発方法は、STM32U5ウェビナー資料方法です。STM32L5やSTM32WBAへの開発セキュリティソフト横展開も可能です。

STM32H5ウェビナー資料方法は、Arm PAS API互換APIを利用し、かつ、セキュリティソフト開発を簡素化できるなど、正攻法比、優れた方法だと思います。

Afterword:どちらが一般MCU開発者向けか?

Secure Managerは、無償利用できます。また、RTOS以外のベアメタル開発にも使えます。さらに、STM32H5ウェビナー資料P6右側の暗号化エンジンなど全12セキュリティ機能も提供します。左側が、このセキュリティ開発方法の優位性を示しています。

最適STM32セキュリティ開発を実現するセキュアマネジャ(STM32H5ウェビナー資料P6を編集)
最適STM32セキュリティ開発を実現するセキュアマネジャ(STM32H5ウェビナー資料P6を編集)

STマイクロ以外のベンダでも、無償IPとArm PAS API互換のセキュリティ開発が多くなるかもしれません。一般のMCU開発者にとって、正攻法のセキュリティ開発は、障壁がかなり高いからです。