Raspberry Pi Pico 2 W発表

Raspberry Pi Pico 2 WとPico 2
Raspberry Pi Pico 2 WとPico 2

2024年11月25日、英国ラズパイ財団は8月9日発表のRaspberry Pi Pico 2(5$)へ、2.4GHz Wi-FiとBluetooth 5.2無線モジュールを追加したRaspberry Pi Pico 2 W(7$)を発表しました。 

弊社は、MCU開発者向けMPUにPico 2が適すと考え、その背景やハードウェアソフトウェア開発環境を投稿しました。EE Times記事によると今回の無線機能追加Pico 2 Wに加え、2025年には更に機能追加したPico 2シリーズへと展開されるそうです。

Raspberry Pi Pico 2 WとPico 2

Pico 2 Wは、Cortex-AなどのMPU/SBC定番MPUコアを、セキュリティ強化Cortex-M33コアへ変えたPico 2へ無線モジュールを加え、僅か7米ドルで発売されます(日本国内発売、価格未定)。

Cortex-M33は、セキュアブートTrustZoneなど既に多くのセキュリティ強化MCUに採用中です。Pico 2 W/Pico 2はMPUですが、MCUで実績のあるCortex-M33を搭載し、僅か7$/5$です。

つまり、価格面でもMCUに十分対抗でき、しかも、機能拡張性も備えた新世代MPU製品が、Raspberry Pi Pico 2 WとPico 2です。

MPU:Raspberry Pi Pico 2 W/Pico 2とMCU比較

MPUのRaspberry Pi Pico 2とCortex-M33 MCUの特徴的な仕様比較が下表です。MCUは、Pico 2と同じコアを使うルネサス)RA6E1を用いました。

Raspberry Pi Pico 2 ルネサスRA6E1
制御コア  Cortex-M33 (150MHz) Cortex-M33 (200MHz)
内蔵Flash 4MB  ≦1MB
内蔵RAM 520KB 256KB
内蔵周辺回路 2xUART、2xSPI、2xI2C、24xPWM、USB 1.1、12xPIO 6xSCI、12bit ADC/DAC、2xSPI、2xI2C、24xPWM、USB 2.0…etc.

MPUのRaspberry Pi Pico 2は、その機能追加に主としてオープンソースソフト/ハードを用います。このため十分なFlash/RAM容量を内蔵しています。内蔵周辺回路はMCU比、少数です。

一方、MCUのRA6E1は、ADC/DACなどMPUに比べ豊富な周辺回路を内蔵していますがFlash/RAM容量はMPU比小さく、機能追加はユーザ開発専用ソフトウェアが主です。

つまり、機能拡張性に優れるMPUと、価格重視MCUの特徴が仕様に現れています。

従来MPUは、MCUに比べかなり高価でした。しかし、Raspberry Pi Pico 2 W/Pico 2は、同クラスのMCUと同じ低価格にもかかわらず機能拡張性にも富んでいます。

Raspberry Pi Pico 2 Wは、Pico 2と同じ基本構成で、IoT向き無線モジュールを追加した新世代MPUです。

顧客はMPUでもMCUでも構わない

開発依頼元の顧客は、Cortex-M33のセキュアブートやTrustZoneなどのセキュリティ機能さえ持てば、制御系がMPUでもMCUでも構いません。ポイントは、トータルコストとその開発期間です。

最終的な顧客要求の実現に対し、オープンソースソフト/ハードの購入/活用で開発期間短縮も狙えるMPU Raspberry Pi Pico 2 W/Pico 2でアプローチするか、それとも、始めから豊富な周辺回路を持つMCUの専用ソフトウェアでアプローチするか、どちらを選ぶかは、我々開発者に任されています。

MPU/MCU、どちらのアプローチでもコストと期間を見積もれる二刀流開発者が求められます。

Summary:機能拡張低価格MPUと価格重視MCUの二刀流開発者

セキュリティ強化Cortex-M33コア搭載のRaspberry Pi Pico 2(5$)へ、無線モジュール追加Raspberry Pi Pico 2 W(7$)が発表されました。

IoT制御系は、Raspberry Pi Pico 2/Pico 2 Wのような機能拡張に優れ低価格な新世代MPUを使ったオープンソースハード/ソフト開発か、または、価格重視の従来MCU専用ソフトウェア開発か、両アプローチコストと開発期間を見積もれる二刀流開発者が求められます。

Afterword:プレタポルテのMPUとオーダーメイドのMCU

プレタポルテのMPU開発とオーダーメイドのMCU開発
プレタポルテのMPU開発とオーダーメイドのMCU開発

MPUはプレタポルテ、MCUはオーダーメイドに例えると解り易いと思います。

既製オープンソースハード/ソフトに少し手を加え顧客要求に合わせるのがMPU、専用ソフトウェアで顧客要求を満たすのがMCUだからです。どちらのアプローチを選択するか顧客と相談するには、MPU/MCUの二刀流開発が必要です。

英国ラズパイ財団は、Cortex-M33コアPico 2のシリーズ展開を狙っています。IoTにセキュアブートやTrustZoneが必須と考えているからです。Cortex-M33が今後のIoT開発ねらい目になりそうです。



MCUとMPU二刀流開発#1

Rapsberry Pi Pico2開発環境
Rapsberry Pi Pico2開発環境

今年8月9日、英国ラズパイ財団が新しいRaspberry Pi Pico 2(以下Pico 2)を発表しました。Pico 2は、MCU開発者向けMPUです。従来MPU/SBCが採用していたCortex-Aなどの定番MPUコアから、セキュリティTrustZone対応Cortex-M33コアに変わったからです。そこで、MCU開発者向けPico 2開発の連載を始めます。

この連載で筆者を含めたMCU開発者は、最新MPU(Pico 2)のMCU的開発とVisual Studio Code(VSC)習得ができます。狙いは、開発の幅をMCUからMPUへも広げること、Eclipse IDE代替可能性もあるVSC習得の2つです。

※MCU的開発とは、例えばPico 2(RP2350、Cortex-M33 or RISC-V/150MHz、Flash/4MB、RAM/520KB)とMCUでお馴染みの表記をするなど「MCU開発者の視点でMPUを開発」ということです。

Summary:MCU開発者のPico 2開発#1

最新MPU Cortex-M33コアRaspberry Pi Pico 2を使い、MCU開発者案件のMPUへの拡幅、Eclipse IDE代替VSC習得を狙った投稿の1回目を示しました。

投稿#1内容が以下で、投稿背景とPico 2開発ハードウェアを示しています。

・MCU側からみたMPU開発の差
・MCU開発者が最新Raspberry Pi Pico 2 MPUを使うメリット
・Pico 2 MPU開発ハードウェア入手先情報
・TrustZone Cortex-M33 MCU/MPU二刀流開発の勧め

次回は、Pico 2開発ソフトウェアのVSC構築を投稿予定です。本投稿は、今後不定期に続けます。

※MCU(Micro Controller Unit)とMPU/SBC(Micro Processor Unit/Single Board Computer)の差を極簡単に言うと、MCUは価格追及型、一方、MPU/SBCは機能拡張型です(詳細は関連投稿参照)。

MPUとMCU開発差

同じCortex-M33コアでもMCU開発者とMPU開発者は異なるアプローチ
同じCortex-M33コアでもMCU開発者とMPU開発者は異なるアプローチ

MCU開発者なら当たり前の事でも、MPU側から見ると違う事柄が、コチラの記事前半で良く判ります。記事からピックアップした具体例が下記です。

・MPUは、ネイティブコード以外の開発もある
・サンプルコードは、全MPUペリフェラルをカバーしていない
・オンチップデバッグ無しのMPUボードもありJTAG/SWDの馴染みが薄い

一方、新しいPico 2が、MCU開発者に向いている理由が下記です。

・MCU開発者に馴染みがあるTrustZone対応Cortex-M33コアMPU
・MCU標準開発環境Eclipse IDE代替可能性のあるVSCが開発環境
・Windows/Macで開発できPico 2ボードとDebug Probe価格も低い
・Cortex-M33とRISC-Vのコア切替えもでき発展性に優れる
・Pico 2でオープンソースソフト/ハード開発を体験できる

つまり、MCU開発者の知識や経験を活かし、新しいPico 2 MPU開発ができます。その結果、低い障壁でMPU開発が始められます。

また、業務とは別の自分のキャリアアップにも役立つと思います(二刀流開発の勧め章参)。

Pico 2 MPU開発ハードウェア入手先

最初の図のPico 2とDebugProbeの2つが、購入するハードウェアです。

新しいPico 2は、従来比、1.5~2倍の高性能と省電力性が特徴です。DebugProbeは、専用ケースに入っており接続ケーブルも付属で使い易いです。

秋月電子通商やスイッチサイエンスなどから購入できます。秋月の方が低価格ですが、取扱数量が少ないとサイト記述があります。

・Raspberry Pi Pico 2:秋月電子スイッチサイエンス
・Raspberry Pi DebugProbe:秋月電子スイッチサイエンス

Pico 2開発環境Visual Studio Code

前述の記事後半に、Pico 2開発環境のVSC構築方法と、従来MPUで自作したデバッガー(Picoprobe)を使ったLチカプログラミングが記述されています。

但し、本連載は市販DebugProbeを使います。また、VSC構築は、次回投稿します。先行してPico 2開発環境を構築したい方は、記事を参考にしてください。

Cortex-M33 MCU/MPU二刀流開発の勧め

MCUとMPUの二刀流でTrustZone Cortex-M33を開発
MCUとMPUの二刀流でTrustZone Cortex-M33を開発

今から10年後、2034年の日本とエンジニアの記事は興味深いです。

日本の人口減少と共にエンジニアに求められるスキルも変わり、「高度なスキルに加え、より早く開発業務をこなす能力も求められる」という趣旨です。

本稿のPico 2 MPU開発もこの記事の趣旨がベースになっています。つまり、MCU比、MPU開発は、オープンソースソフト/ハードへの対応が良く、早い業務開発に向いています。

IoTに必須のセキュリティ機能を持つTrustZone Cortex-M33を、高度スキルを活かしたMCU、オープンソースソフト/ハードを活かしたMPU、どちらでも開発できれば、顧客要求を満たすエンジニアになれます。

顧客にとって実現手段はMCUでもMPUでも構わない、開発期間とトータルコストが問題です。この問題を解ける開発者、TrustZone対応Cortex-M33のMCUとMPU二刀流開発者が目標です(ワールドチャンピオンドジャースの大谷翔平氏のように)。

Afterword:Pico 2オープンソースハード/ソフト例

MPU/SBC(小さいコンピュータ)の拡張性を支えるオープンソースハード/ソフトは、市場に数多くあります。これらを上手く使えば、MCU比、早く大規模な開発に役立ちます。ここでは、3例を挙げます。

・AI強化:Raspberry Pi AI Kit、13TOPS NPU追加。
・表示デバイス追加:Tiny2350、カラー液晶追加。
・SSD追加:Raspberry Pi SSD Kit、256GB/512GB追加。

極簡単に言うと、機能を拡張したい時は、これらRaspberry対応のオープンソースハード/ソフトを探し、それをPico 2へ組込めばOKです。正にコンピュータへボード追加のイメージです。多くの機能ボードとボードを動かすソフトが、低コストで入手できますので、MCU比、短期間で簡単に機能拡張できるのが、MPUのPico 2です。