解析機能チュートリアルのすすめ

CubeSuite+は、APIやテンプレートの生成、エディタなど、IDEとして優れた基本機能以外に、“解析機能”を持ちます。この解析機能理解のため、CubeSuite+付属のチュートリアル一読をすすめます。

解析機能チュートリアル
解析機能チュートリアル

 

Officeソフトのように、ヘルプを理解するためにヘルプが必要な場合もありますが、このCubeSuite+のチュートリアルヘルプは、中級者であれば理解必須です。以下に、チュートリアルの注意点と記載重要事項を示します。

注意点:

チュートリアルでは、「リセット&実行ボタン」で結果を出力しています。しかし、同じ結果となるハズの「リセットボタン」+「実行ボタン」を押した場合と、結果が異なることがあります。チュートリアル実行中に記載と異なる結果の場合には、後者(リセットボタン+実行ボタン)を試してください

チュートリアル記載の重要事項:

・静的情報とは、ビルド完了後に表示できる項目。動的情報とは、デバッグ・ツール接続後,プログラム実行後に表示できる項目。

・実行性能の解析目的は,関数単位のCPU使用率を把握し,CPU負荷を軽減する関数を探すこと。

・解析対象の実行時間に対して,トレース取得期間が十分かどうかを判断する事が必要。デバッグ・ツールのプロパティで「トレース・メモリを使い切った後の動作」の設定を「停止する」設定もその一つ。

・解析範囲に対して,解析データ(デバッグ・ツールのトレース・メモリ)が適切か確認することが重要。 

・解析対象に対して,トレース取得期間と実行回数が十分でない場合,解析結果を正しく判断できないことがある。対策として、対象関数が何回実行されたかを関数パネルで把握する事。

・性能解析は、解析対象に応じて,適切な手段を選択する必要がある。解析グラフは,便利なツールだが、使用方法を誤ると適切な判断ができない。

・動的情報が表示できるかは,デバッグ・ツールに依存。RL78/G1xE1の組合せでは、トレースとパフォーマンス測定はできない。対策は、シミュレータを使うこと

・パフォーマンス解析目的は、システム性能を満足するために,特定の処理速度が十分かどうかを判断すること。

いかかですか? 中級者は、これらを理解して、作成プログラムの性能改善に活用しましょう。ちなみに、このヘルプファイルは、下記にあります。

C:\Program Files (x86)\Renesas Electronics\CubeSuite+\Help\Tutorial-Analysis.chm

ターゲット・ボードのE1インタフェース

CPUFPGAボード開発の最初の山場が、プログラミングインタフェースです。これらソフト必須のハードは、プログラミングして初めて動作するので、ここで躓くと先へ進めません。RL78/G1xならE1インタフェースです。ルネサス資料“E1/E20エミュレータユーザーズマニュアル別冊”に、RL78接続時の注意事項が記載されていますが、実際の動作ボードで理解する方が良さそうです。

E1インタフェース理解に最も適した動作ボードは、ルネサスのターゲット・ボード(以下TBと略す)でしょう。TBは、最もシンプルで、最も早い時期に提供されるボードで、最重要ハードの把握が容易などの特徴があります。201212月現在、RL78/G1x関連は、下記8種のボードがリリースされています。

ターゲット・ボード一覧
ターゲット・ボード一覧

本ブログ対象のRL78/G13G14は、2種類のTBがあり、これらのE1インタフェース部分のみを抜き出しました。TOOL0端子経由(図ではP40と記載)で、フィラッシュ・メモリ・プログラミングとオンチップ・デバッグの両方に対応します。これらの図から、T_RESETは、ボード内で不使用でも、E1インタフェースには必須そうだということが判ります。

RL78ーG13、G14のE1インタフェース
RL78ーG13、G14のE1インタフェース

 

RL78/G1xボード開発チェックリスト

RL78/G13ボード開発のチェックリストを作成中です(本リストは、適宜更新予定)。

項番 内容 備考
1 RL78/G1x0.1uFパスコン配線長:Vss/Vdd端子とパスコン間の配線長は、最短で、等長とする。  
2 RL78/G1xの電源配線は、パスコン経由。  
3 REGC0.47uF~1uf配線は、極力短くする。REGCコンデンサは、特性が良いものを使用。但し、パスコン配線が優先。

パスコン配線とREGC配線の優先順位
パスコン配線とREGC配線の優先順位

 

 
4 入力専用で、内臓プルアップ抵抗無しのピン(64ピンの場合、P121/122/123/124/137)は、外部でプルアップ/ダウン抵抗で固定。

入力専用で内臓プルアップ抵抗無しのピン
入力専用で内臓プルアップ抵抗無しのピン

 

 
5 未使用ピンは、出力に設定。入力ピンは、内臓プルアップ抵抗使用。  

RL78/G14は、RL78/G13と差替えできるか?

RL78/G1444DMIS@32MHzG13は、41DMIPS@32MHzRL78ファミリカタログより)。そこで、RL78/G13で開発中に、マイコン性能が足りなくなった時、RL78/G14へ差替えができれば良いと漠然と考えていた。ここで、この可能性について64ピンパッケージで考察する。

RL78/G13G14PIORフォーマットを示す。PIORは、特定ピンを、別の位置へ再配置することができる便利な機能で、基板設計を容易にするために設けられている。G13では、初期値設定を含めて6つの選択肢、G14では10選択肢がある。

PIORフォーマットの違い
PIORフォーマットの違い

PIORフォーマットを眺めると、青で囲ったPIOR5からPIOR1SCK20までは、G13G14は、ほぼ同じだが、TxD0からPIOR0再配置できる機能は、全く異なることが判る。64ピンパッケージの場合、初期値設定でも、ピン位置の異なる機能がある。つまり、これら位置が異なる機能を使ったG13ソフト、基板に、そのままG14は使えない事を示している。例えば、G13TI02/TO02を使って開発したソフトと基板に、G14を差替えても動作しない。

PIOR初期値設定の違い
PIOR初期値設定の違い

残念ながら、RL78/G13でマイコン性能が足りない場合は、ソフトを工夫した方が良さそうだ。“G13G14で同じピン配置の機能のみを使えば、差替えも可能”だが、このような制約はなしでG13開発するのが“筋の良い設計”と言える。

PIORは、G13、またはG14同一機種でパッケージを変えた時に、活用すべき機能で、パソコンのようにCore i3Core i7へ交換して性能を上げることは出来ないと認識した次第です。

CubeSuite+ V1.03.00へバージョンアップ

CubeSuite+が、V1.03.00へバージョンアップしました(ルネサスサポート情報vol.122 2012/11/15より)。今回様々な機能追加/変更がありますが、ここでは、2点紹介します。

端子配置表/図追加

RL78/G13G14の設計ツールに端子配置表と図が追加されました。配置図で、コード生成ツールの結果がGUIで確認できます。マイコンボード設計時、PIORで再配置ピンの配置を検討する際などに有効です。また、配置表には、ピン未使用時の処置方法もあるので参考になります。

端子配置図
端子配置図

コード生成出力の変更

CubeSuite+のポイントは、コード生成ツールの活用です。今回、このコード生成の自動生成ファイルに変更がありました。

新旧コード生成ツール比較
新旧コード生成ツール比較

hdwinit()の割込み許可EI()の前に、R_MAIN_UserInit()が追加されました。困るのは、従来プロジェクトを新バージョンで再コード生成したら、main()に関しては、旧バージョンの/* Start User code… から /* End User code…のソースがコピーされないことです。要となるコード生成ツール自体もバージョンアップしますので、このような不具合があることも念頭に置く必要があります。リリースノートに記載はありますが、多くの変更の中に、サラリと紛れ込んで記載されますので、注意が必要です。

RL78/G1xピン配置の指針

RL78ファミリカタログ記載のRL78/G1xI/Oポート配置例から、IOピン配置の指針を考察します。

System Pinsは、全てのパッケージで動作に必要となるピンで、64ピン構成の場合、RESETTOOL0VddVssREGC EVdd0EVss07本です(ピン数により、EVdd0が無いなど必須本数は異なる)。従って、このSystem Pins側には、バイパスコンデンサやE1インタフェースなどの実装が必須です。

RL78/G1x IOポート利用指針
RL78/G1x IOポートの利用指針

一方、P1P2P7は、System Pinsとは別サイドにあるため、部品実装が容易で、しかも、使用するRL78/G1xのパッケージ変更があっても、部品の配置変更が少ないポートと言えます。従って、P1P2P7の順に使用するIOピン配置をすると、スケーラビリティに優れたピン配置と言えるでしょう。

RL78/G1xI/Oポート配置でもう一つ便利な機能が、周辺IOリダイレクション・レジスタ:PIORによるIOピンの再配置です。3064ピン構成の場合、Timer_ IOピンやI2C_A0の配置が変更できます。64ピンを基準にピン数を減らす場合などに効果的です。

CubeSuite+コード生成機能の目的

CubeSuite+のコード生成(以下Cg)は、有用で効果的なツールです。今回は、このCgの目的を整理します。

図は、あるプロジェクトのCubeSuite+画面です。プロジェクトツリーのファイルに、コード生成カテゴリがあり、Cg出力のヘッダファイルとソースファイルは、ここに配置されます。ファイルには、新たなカテゴリを追加し、Cg出力ファイルと区別できるようにしています。

CubeSuite+画面
CubeSuite+画面

Cgの目的は、API生成とテンプレート作成の2つです。それゆえ、Cgの出力ファイルには、2つ様式があります。1つがAPI関連のヘッダとソース分離様式、もう1つがテンプレート関連のヘッダ、ソース一体様式です。

目的 様式 生成内容
API生成 分離様式 r_cg_周辺.h 周辺APIプトロタイプ宣言、型定義など
r_cg_周辺.c 周辺APIソース
r_cg_周辺_user.c r_cg_周辺.h r_cg_macrodriver.huserdefine.hは追加済みの空ソースファイル
テンプレート生成 一体様式 r_main.c r_cg_周辺.h r_cg_macrodriver.huserdefine.hは追加済みのメインループ付き空ソースファイル
r_systeminit.c r_cg_周辺.h r_cg_macrodriver.huserdefine.hは追加済みの周辺初期化API付き初期化ソースファイル

userdefine.hは、Cg生成時、空ヘッダファイル。

APIのプトロタイプ宣言や型定義が記述されたヘッダファイルは、r_main.cに自動追加され、Cgが生成したAPIをファイル内で宣言なしに使えます。分離様式は、このように使用側で明示的な宣言が不要になる利点があります。APIやライブラリのように、ソースにバグが無く品質が良い関数を使うのに適した方法です。一方、ユーザが作成した関数は、(バグがあるかもしれませんので)使用側で明示的に宣言した方が良いでしょう。

通常は、Cg出力のコード生成カテゴリのファイルの中身に、ユーザがソースを書き加えることでプログラムが完成します(どこに書き加えるかは、2012/8/13記事参照)。具体的には、r_cg_周辺.cr_main.cの空ソース部分、userdefine.hが対象です。r_cg_周辺.cでユーザが追加した関数は、r_main.cなどの使用側で明示的に使用宣言します。userdefine.hは、ユーザ追加ソースで必要となるマクロや型定義などを記述します。

Cgが指定する場所へソースを書き加えれば、後に構成が変わってCg再生成をしても、ユーザが追加したソースはそのまま引き継がれます。Cgの目的が2つあり、生成ファイルとその内容を俯瞰的に理解していないと、有用性が判りづらい点もあるので、整理しました。

RL78/G13 秋月電子通商で販売中

RL78/G13 Promotional Board使用中のマイコンを含め、4品種マイコンを秋月で販売中です。

型式

R5F100LCAFB

R5F100LEAFB

R5F100LGAFB

R5F100LJAFB

価格(円/税込)

250

290

340

400

ROMKB

32

64

128

256

RAMKB

2

4

12

20

Data FlashKB

4

8

Temperature

-40 to 85

Package

P-LFQFP64-10×10-0.50 

P-LFQFP64-10x10-0.50
P-LFQFP64-10×10-0.50

備考

RL78/G13 Stick スタータキット使用品 ROM64KB制限のため無償版CubeSuite+では開発不可

 

2012年10月31日現在、AAA商品なので入手性は良く、価格も安い。0.5mmピッチなので、同じく販売中の変換基板を使えば試作などでの実装も容易でしょう。 

ピッチ変換基板
ピッチ変換基板

RL78/G13のパッケージは300品種以上ありますが、同じ品種で、実装面積が小さく拡張性が優れた品種を選ぶとしたら、64-LQFP 10x10mm、ピッチ0.5mmなのでしょう。RL78/G13 Stickスタータキットもこの品種:R5F100LEAFBを使っています。

実装面積のパッケージ差
実装面積のパッケージ差

豊富な周辺機能を備えたマイコンをこの価格で入手できるのが、あらゆる機器にマイコンを使う理由です。RL78/G13ならCubeSuite+のコード生成で、簡単に周辺APIの自動生成ができるし、ソフト開発速度もアップします。

特徴を活かしたメイン関数の効果

前回紹介した、最新マイコンの特徴を活かすメイン関数の効果を示します。

測定は、RL78/G13 Stickスタータキットの、低消費電力動作デモンストレーション用J3コネクタを使います。このコネクタは、通常動作、HALTSTOPSNOOZEの各モードでの消費電流を測るものです。このキットに、適当なプログラムを書き込んで、メイン関数内に低消費電力モードのHALTがある場合とない場合で、どの程度差があるかを実測しました。

測定条件

消費電流

メイン無限ループ内にHALT()がある時

1.95mA

HALT()無しの時

5.70mA
測定結果と測定方法
低消費電力モードの効果と測定方法

メイン関数の無限ループ内でHALTの時間割合が多ければ多い程、消費電流を下げることができるので、ここで示した値は、目安で、平均消費電流です。しかし、HALTがメイン無限ループ内にあるだけで、マイコン消費電力が半分以下になることが判ります。

特徴を活かしたメイン関数の効果

前回紹介した、最新マイコンの特徴を活かすメイン関数の効果を示します。

測定は、RL78/G13 Stickスタータキットの、低消費電力動作デモンストレーション用J3コネクタを使います。このコネクタは、通常動作、HALTSTOPSNOOZEの各モードでの消費電流を測るものです。このキットに、適当なプログラムを書き込んで、メイン関数内に低消費電力モードのHALTがある場合とない場合で、どの程度差があるかを実測しました。

測定条件

消費電流

メイン無限ループ内にHALT()がある時

1.95mA

HALT()無しの時

5.70mA
測定結果と測定方法
低消費電力モードの効果と測定方法

メイン関数の無限ループ内でHALTの時間割合が多ければ多い程、消費電流を下げることができるので、ここで示した値は、目安で、平均消費電流です。しかし、HALTがメイン無限ループ内にあるだけで、マイコン消費電力が半分以下になることが判ります。