5G、Wi-Fi6、NXP、STマイクロエレクトロニクス

公衆網の5G、無線LANのWi-Fi6、どちらもIoT MCUに必須となる無線通信技術です。本稿は、5GとWi-Fi6、MCU主要ベンダのNXPとSTマイクロエレクトロニクス2社の無線対応状況を簡単にまとめます。

5GとWi-Fi6

5GやWi-Fi6、Bluetoothは、無線通信技術です。違いは、5GがNTTやau、SBが提供する公衆網サービス、Wi-Fi6やBluetoothは、LANを無線化したプライベート網サービスだということです。

これら公衆網とプライベート網、両方の無線技術やサービスを積極的に活用するデバイスが、毎年新製品が発表されるスマートフォンです。搭載カメラやスマホ操作性だけでなく、5GやWi-Fi6実現のためにスマホプロセッサの性能向上は必須です。

5GやWi-Fi6の市場は急増中です。これら市場に対応するため、スマホは常に最新無線技術、高性能プロセサへと変わらなければならない運命です。開発担当者は大変でしょう。

5G、Wi-Fi6技術牽引はスマホと自動車

自動車業界のADAS:Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システムの開発速度もスマホ同様高速です。数年でモデルチェンジする新車に搭載する様々な新しい支援機能が、売上げを左右するからです。

これら新搭載機能にバグはつきものです。例えば、制限速度標識の車載カメラ認識はかなりの精度ですが、一般道で認識速度が110 km/hと表示された経験があります。メータ表示だけなので、車速が自動で上がることはありませんが…、バグです。

一般道で110km/h表示:フェールセーフでなくバグ
一般道で110km/h表示:フェールセーフでなくバグ

このようなバグに対して、2022年7月以降の新車は、スマホのようにOTA:Over-The-Airで車載ソフトウェアのアップデートを行う国際基準が発表されました。サイバーセキュリティ対策や走行安全性にも絡むので、かなりの処理が開発担当者に要求されると思います。

ついに自動車もスマホ同様、ソフトウェアOTA必須になります。インダストリアル業界も、当然ながら自動車業界OTAと同様の仕組みとなるでしょう。

無線技術やセキュリティ、AIなどの先端技術は、一般消費者の旺盛な購買力の対象となるスマホと自動車が牽引することは間違いありません。競争が激しく開発成果も解り易いのですが、開発者担当は最新技術習得の余裕も少なく、実装期限が限られるためセルフマネジメントが大変です。

NXP対応

NXPは、2020年9月に5G無線システム向け製造工場の稼働開始を発表し、2021年初頭までにフル稼働、5Gや次の6G向け無線チップを自社製造できる見通しです。また、NXP本社副社長でもあるNXPジャパン新社長の和島正幸氏の就任も発表されました。

せっかく開発した量産電気自動車(Electric Vehicle)の販売予約中止の原因は、車載バッテリーの供給が追付かないからだそうです。無線システムのかなめ、RFチップ供給が同じ状況になるのを避けるためのNXPの措置だと思います。

STマイクロエレクトロニクス対応

STマイクロエレクトロニクスは、2020年10月7日、無線LANのBluetooth LE 5.2対応Cortex-M0+ベースMCUとその評価ボードを発表しました。Arduinoコネクタ付属で、使い勝手も良さそうな気がします。

STEVAL-IDB011V1 Evaluation Board and Updated BlueNRG Software(出展:STマイクロ)
STEVAL-IDB011V1 Evaluation Board and Updated BlueNRG Software(出展:STマイクロ)

IoT MCUの爆発的な需要増加に対して、MCU主要ベンダのNXPやSTマイクロエレクトロニクスは、着々と準備を進めています。

インダストリアル業界IoT端境期

スマホや自動車業界のように競合他社より少しでも早く最新技術を導入し製品化する動きに対し、インダストリアル業界は、COVID-19の影響でIoT技術導入の端境期のようです。つまり、積極的にIoTを進めるデンソーのようなグループと、暫く様子見をして徐々にIoTを進めるグループの2つに分離しつつあるということです。

インダストリアル業界対応の開発者は、この端境期を逆に利用し、IoT最新技術を学習しつつ、来るべきIoT開発案件をこなす力を備えるチャンスです。

具体的には、自動車やスマホで先行した無線/セキュリティ/AI技術を、効率的にIoT MCUへ流用・応用できる開発力です。または、MCUベンダ提供の無線/セキュリティ/AI最新技術サンプルプロジェクトを理解し、評価ボードを上手く活用できる開発力とも言えます。

インダストリアル業界の顧客出力となるソフトウェア/ハードウェアを、要求期限内に開発成果として提出できるベストエフォート技術、この比重が増すと思います。開発成果の不完全さやセキュリティ追加、変更はOTAで対応します。