マイコンテンプレート利用のコツやTips:その3

マイコンテンプレートを利用するコツ/Tipsの第3回目は「時分割処理のタイミングとインタフェースRAM」について示します。
販売中のテンプレート処理起動の間隔は、250us/1ms/10ms/100ms/1s/無限ループの6種類です。この6種類の使い方を示します。

処理起動タイミング

マイコンの処理は、電源投入後、「1回のみ実行する」スタート処理と、無限ループで「繰り返し実行する処理」の2つに大別できます(ROM/RAMを初期化するなどのスタートアップ処理は、除いています)。

ここでは無限ループに代わってテンプレートが実行する、繰り返し実行する処理の間隔:「タイミング」を考察します。

テンプレートは、起動する処理が無い無限ループ:空き時間で起動するのは、Sleepなどの低消費電力処理であることは、第2回で示しました。

100msと1sの起動間隔は、マイコンにとっては「遅い処理」、例えば、LED点滅や、LCD初期設定、SWチャタリング対策の起動に適しています。
※LCD初期設定は、無限ループ前のスタート処理で実行することも可能です。

1msと10msの起動間隔は、「早い処理」、例えば、割込みの応答処理などの起動に適しています。

250us起動間隔は、「最も早い処理が必要」な、例えば、UART/I2Cなどのデータ受信処理を起動することを想定しています。

つまり、早いレスポンスが必要な処理ほど処理間隔が短く、起動される処理のソース記述位置も上側になるのです。これがテンプレート時分割起動の「基本的な使い方」です。

実例が下図です。赤/緑/青LEDを、0.5/1/2秒毎にトグル点滅する場合です。赤囲みが、テンプレートへ追加されたLEDトグル処理を表します。それ以外が、テンプレートに初めから記述済みの起動処理です。

LED点滅処理での優先順位の例
LED点滅処理での優先順位の例

起動間隔

起動の間隔は、第2回で示したtick interruptの発生間隔です。
1ms>10ms>100ms>1sの順にレスポンスが早くなりますが、250usだけ特別に超高速応答です。これは、UART受信などの主として「いつ発生するか判らない応答に早く即応する」ためです。

販売中のテンプレートは、全てこの250usを起動間隔として開発しておりますが、実は「250usである必要性は無い」のです。因みに、FreeRTOSなどの組込OSでもtick interruptは1msです。

250usは、経験的にこの最高速でこれまで利用に問題が無かったからです。
この起動間隔を1msにし、UART受信処理を1ms起動に変更しても、メニュードリブンテンプレート動作などには問題ありません。
メニュードリブンテンプレートは、当該マイコンのUART受信バッファが1バイトでも、UARTコマンド長も1バイトなので、受信完了確認後ゆっくりバッファからデータを取り出しても間に合うからです。

起動間隔の設定は、テンプレート購入者様が「独自判断で設定して頂いても構いません」。

但し、250usよりも高速:短くすることは無いと思います。これよりも短いと、処理分割をより細かくする必要があり、開発がより厳しくなるからです。逆に、250usよりも長くすると、処理分割は楽になります。

テンプレートは、マイコン「コア動作速度を最高速」に設定し、起動間隔も「最高速と思われる250us」でデフォルトは設定しております。これは、「最初」にマイコンの最大能力で動作するアプリケーション開発後、「次の段階」としてコア周波数を下げるなどで、低消費電力化するアプローチを想定しているからです。

インタフェースRAM

処理間のデータやり取りにインタフェースRAMを使うことは、第1回で示しました。ルネサスのRL78/G1xは、通常RAMよりも高速アクセス可能なSADDRを持つなど特殊な例もありますが、低価格マイコンではRAMが貴重なリソースであることに変わりはありません。

この貴重なRAMを使う時に、ビット単位構造体を使い、ビット単位フラグでデータをやり取りすると、1バイトRAMで最大8個のフラグを使えるので効率的です。

テンプレートでは、このビット単位アクセスを容易にするため、userdefine.hにユーザ型定義を追記しております。処理間にブラグを多用する場合などにご活用ください。

マイコンテンプレートとは?

第1~3回で示したテンプレートは、「ISRは、サンプルプログラムを一部またはそのまま流用し、その他全処理をポーリング起動するマルチタスク処理の骨組み」と説明すると理解が早いかもしれません。

割込み処理は、ISRで割込みフラグ処理のみを行い、ISR発生をポーリングし割込み実処理を起動する。
サンプルプログラムの無限ループポーリングとの差は、処理に応じた時分割ポーリングである。
骨組みのテンプレートへ、サンプルプログラム流用の処理を組込んでプロトタイピング開発をする。
この理解で良いと思います。

ポイントのまとめ

  • 処理起動間隔は、250usとしているが、変更は可能、かつ任意
  • 高速な応答が必要な処理は、短い起動間隔へ配置
  • インタフェースRAMの効率的な利用に、ビット単位構造体も有効

* * *

3回に分けてマイコンテンプレート利用のコツ/Tipsを示しました。これらは、ソフトウエア開発では当然の事柄とダブる部分も多くありますが、数値では表せないのであえてコツ/Tipsとして記載しました。

組込OSを使うよりも簡単で、サンプル流用も可能なマルチタスク実現テンプレートが、お判り頂けたと思います。

販売中のマイコンテンプレートを活用し、アプリケーションの早期開発を成功させてください。

コメントを残す