2019年6月3日)、独)Infineonは、米)Cypress買収で合意と発表しました(出典:EE Times記事、InfineonがCypress買収へ、約1.1兆円で)
Infineon+Cypressが成立すると、車載半導体ではオランダ)NXPを超え世界シェア1位となります。但し、QualcommのNXP買収断念のように、米国当局の承認が成立のガキとなります(出典:EE Times記事、”InfineonのCypress買収は“弱点の克服”を狙う一手“)。
Infineon+Cypressは補完関係
本ブログ対象のCypress MCUは、IoTエッジMCUで優れた製品を持ち、現在パワー半導体シェア1位、車載シェア2位のInfineon製品との重複が極めて少ない補完関係です。買収が成立すれば、車載シェアは、現在首位NXPを抜きトップになるそうです。
記事中に、本ブログ掲載MCU各社の製品特徴を表す図があります。
MCUコアが同じでも、MCU単体でシステム動作はできません。自動車会社は、周辺部品も含めたトータルでの接続性や、システム構築能力をMCU各社に求めます。Infineon+Cypressはこの点で他社比、優れているというのがこの表の意味です。
買収成立後の車載と32ビットMCUの半導体シェア変動を示すのが下図です。
車載は1位へ、32ビットMCUは4位へと、それぞれ上位ビッグ5に入ります。シェア確保は、半導体会社が生き残るには必須で、Infineon、Cypress双方に買収メリットがあります。
買収完了は、2019年末から2020年初めを予定しています。但し、米国当局が買収を認めるかがカギだと記事は解説しています。
Cypress特許取得PSoC 4100S CapSenseで他社差別化
ADAS(Advanced driver-assistance systems)など高度化する自動車制御に限らず、IoT端末でもMCU単体でのシステム構築は困難です。しかし、一方で、他社とのアナログ差別化技術を用いてMCUシェア拡大と確保を狙う動きも出てきました。
STマイクロエレクトロニクスは、汎用MCUでありながら、より多くのセンサとユーザ機能を実現する先進的アナログ・ペリフェラル搭載のSTM32G4シリーズを発表しました。また、ルネサスエレクトロニクスも、高精度アナログフロントエンド搭載32ビットマイコンRX23E-Aを発表しました。
本件のCypressも、他社アナログ差別化技術という点では長けていると思います。
例えば、前投稿のトラ技記載PSoC 4100Sは、低価格であっても、他社MCUに無いOPアンプや論理演算ブロックが実装済みです。特に、特許取得済みで多くのスマホで採用実績のある検出精度の高い静電容量式タッチ・センス・コントローラ内蔵は特筆すべき点です。
項目 | 内容 | |
CPUコア | Cortex-M0+、48MHz | |
メモリ | フラッシュ:ROM | 64KB |
SRAM | 8KB | |
シリアル通信ブロック | 3個(I2S/SPI/UART/LINに対応) | |
ADC | 逐次比較型 | 12ビット分解能、1Msps |
シングル・スロープ型 | 10ビット分解能、11.6ksps | |
DAC | 電流出力型 | 7ビット分解能×2 |
その他アナログ・ブロック | OPアンプ | 2個、6MHzGB積、6V/usスルーレート |
コンパレータ | 3個、内2個はスリープ・モード時も動作 | |
静電容量式タッチ・センサ(CapSense) | 自動調節機能付き(特許取得済み) | |
論理演算ブロック | スマートI/O | 3入力1出力のLUT×8 |
タッチユーザインタフェーステンプレート構想
スマホの普及で、あらゆるユーザインタフェース(UI)がボタンから、タッチ・ベースへと変わりました。IoT端末でも同様です。
このタッチUIへPSoC 4シリーズ特許技術CapSenceを応用し入力処理をテンプレート化、その他の新規開発や複雑な制御は別MCUへ分離した2MCU構成でプロトタイプ開発すると、開発速度が上がり、かつタッチUIも備えたユーザフレンドリーなIoT端末が期待できると思います(勿論、このタッチUIテンプレートにはトラ技付属基板も利用するつもりです)。