RL78/G10テンプレート開発 1回目:テンプレート利点

数回に分けて、RL78/G10テンプレート開発の経緯を、「初心者向け」に示します。あえて初心者向けとしたのは、テンプレートを開発・販売してきて、初心者~中級者向けに作ったテンプレート付属資料が、初心者の方には、多少解りにくい箇所があったことの反省に基づいています。

1回目は、RL78/G10とCC-RLコンパイラのC言語ソフト開発で、CS+ for CC設定とユーザ処理を何も追加していない時のソースコード、QB-R5F10Y16-TBボード動作を示します。

テンプレートご購入者様は、ブログを参照済みですから、この初心者内容をご理解頂いた上で、付属資料をご覧になれば、解りにくさが解消されると思います。最終回後には、RL78/G10が加わったRL78/G1xテンプレートを発売しますので、ご検討いただければ幸いです。

中級以上の方々にとってもお役立てばうれしいのですが、蛇足になる可能性が大です…_| ̄|〇。

RL78/G10特徴

RL78/G10は、ルネサススタープロダクトで入手性も良く、低価格高性能な汎用マイコンです。小ROM/RAMで10/16ピン構成、ADCやUARTなど内蔵回路も少ないので把握し易いでしょう。評価ボードも安く、RL78マイコンに興味がある方やIoTセンサマイコンなどに適しています。

開発環境CS+ for CC設定

RL78/G10をCS+のCC-RLコンパイラを使い、QB-R5F10Y16-TBボードとE1使用時のCS+設定を示します。
この組合せが、最も標準的な開発環境です。

RL78/G10開発環境
RL78/G10開発環境
  1. CS+ for CCのスタート(S)を押して、新規R5F10Y(10pin)プロジェクトを作成し、デバッグツールからE1を選択します。最初に、E1のプロパティを矢印に設定します。

    RL78/G10プロジェクト作成とデバッグ・ツール設定
    RL78/G10プロジェクト作成とデバッグ・ツール設定
  2. CC-RL(ビルド・ツール)のプロパティを矢印に設定します。CC-RL V1.01.00時です。改版で変わる可能性もあります。

    RL78/G10ビルド・ツール設定
    RL78/G10ビルド・ツール設定
  3. コード生成の周辺機能>共通/クロックを選択し、端子割当て、クロック設定、オンチップ・デバッグ、リセット要因設定を矢印に設定します。RL78/G10の標準的な設定です。

    RL78/G10共通/クロック設定
    RL78/G10共通/クロック設定
  4. ウオッチドックタイマとセレクタブル・パワーオン・リセットを矢印に設定します。E1でデバッグする時の設定です。

    RL78/G10ウオッチドックとセレクタブル・リセット設定
    RL78/G10ウオッチドックとセレクタブル・リセット設定
  5. 使用QB-R5F10Y16-TBボードに合わせてポート機能を矢印に設定します。

    RL78/G10ポート設定
    RL78/G10ポート設定

ここまでの設定後、「コード生成する」をクリック → ビルド:F7 → ボードダウンロード:F6 → Run:F5してください。
何も処理を追加していませんので、QB-R5F10Y16-TBはPOWER LED(赤)のみが点灯し、ソースコードの無限ループが実行され続けます。

RL78/G10の無限ループ処理
RL78/G10の無限ループ処理

マイコンソフト開発とは、この無限ループに必要な処理を追記することです。ユーザ処理を何も追加していない開発環境を動かすだけで多くの設定が必要なことが判ります。

マイコンテンプレートの利点

マイコンソフト開発には、2つの要素が必要です。1つが、ソフトそのものの開発能力。もう1つが、開発環境IDE:Integrated Development Environmentの設定能力です(RL78/G10の場合は、上記CS+ for CC)。

ソフト開発能力は、アプリ構成や処理手順などを開発するもので、マイコン機種の依存性はありません。一方、開発環境は、マイコン機種やコンパイラ、デバッグツールなどにより様々に異なります。

初心者やマイコン機種変更時に手間取るのは、むしろこの開発環境設定の方です。ソフト開発に早く着手したい時に設定に手間取ると、せっかくのアイデアやひらめきも、スタートでつまずいてしまいます。

環境設定は、デフォルト設定で動くか、またはダイアログなどを使って簡単に設定、できれば自動的に整うのが理想です。しかし現状のIDEは、多くのプロパティ=パラメタで全ての設定に対応する方式のため、簡易ダイアログは使えず、結果、パラメタ設定を1つでも間違うと不具合が生じます。

マイコン理解が深まると、環境設定も自然にできるようになります。これは、卵と鶏の関係と同じです。どちらも必要ですが、理解に手間取って開発が遅れるよりは、早く成果物ソフトを得たいと思うのは当然です。
CS+ for CC設定の多くは決まり文句ですが、マニュアルをリードして初心者がこれを一発で設定できるかは疑問です。多くの場合は、つまずいてしまうでしょう。

サンプルソフトを使うと、最初のつまずきが多少解消されますが、複数の処理を組合せる実務ソフトには、サンプルソフトはそのままでは使えません。これが、第2のつまずきの原因です。

マイコンテンプレートは、これらの対策に、開発環境設定のパラメタが済みで、複数処理が並列実行できる実務ソフトの骨組を提供します。この骨組に、サンプルソフト流用や自作ソフトを肉付けすれば、成果物が出来上がります。テンプレートには、複数の肉付けを簡単に追加できる工夫が初めから備わっています。従って、つまずくことなく、ソフトそのものの開発に労力を割くことができる、これがテンプレートの利点です。

* * *

誤解を恐れずに言うと、「ソフト開発に必要な理解項目 開発環境のパラメタ設定に必要な理解項目」、です。ソフト開発をしていけば、自然に理解項目が増えていきますが、最初は少ないでしょう。
ボードも含めた開発環境があるのなら、ボードを使ってデバッグしながら徐々に理解項目を増やせば良いのです。ところが、開発環境を初めて動かすのに結構な理解項目が必要なこと、これが、マイコン開発の敷居を高くしている原因です。

ソフトの開発能力と、開発環境の設定能力は、(多少は関係しますが)別です。開発環境は、慣れの問題です。EclipseベースIDEは、この問題を解決する1方法です。弊社マイコンテンプレートは、RL78/G1x以外にも3種のマイコン対応テンプレートを提供中です。ご検討ください。

RL78/G10でCC-RL使用時のTips

RL78-S1コアのRL78/G10をRL78/G1xテンプレートに追加すべく開発中です。CC-RLとRL78/G10開発時にのみ発生する問題の対処方法を示します。

デバッグ・モニタ領域設定

RL78/G10開発時のデバッグ・モニタ領域設定
RL78/G10開発時のデバッグ・モニタ領域設定

CC-RLコンパイラを使ったRL78/G10開発時のみ、デバッグ・モニタ領域設定をハイにする必要があります。これをデフォルトのイイエとすると、ダウンロード時、下記エラーが発生します。

エラー(E0204001) : ダウンロードに失敗しました。
オンチップ・デバッグで使用する予約領域への書き込みはできません。

CA78K0Rの場合や、RL78/G13やRL78/G14でCC-RLを使う場合は、デフォルトのイイエのままでビルド&デバッグ・ツールへダウンロード(B) F6が可能です。

RL78-S3コアにアナログ機能強化RL78/G1F追加

モータ制御をFeatureとするRL78-S3コアに、RL78/G14上位互換でアナログ機能を強化したRL78/G1Fが追加されました。

RL78/G1Gとの差

DCブラシレスモータ制御に最適なマイコンとして先に登場したS3コアRL78/G1Gとの周辺回路差が、赤囲みで示されています。

RL78/G1FとG1Gの機能差(G1F資料より抜粋)
RL78/G1FとG1Gの機能差(G1F資料より抜粋)

強化アナログ機能

RL78/G1F強化アナログ機能(G1F資料より抜粋)
RL78/G1F強化アナログ機能(G1F資料より抜粋)

増幅率をソフト制御できる3.0V/μs以上の高スルーレートPGA: Programmable Gain Amplifierや、RL78/G14ではROM96kB以上でしか搭載されなかった8ビットD/Aコンバータに加え、0.07us高速コンパレータも内蔵しています。

RL78/G1Fパッケージ
RL78/G1Fパッケージ

パッケージは、64ピン以下で64/32kBのROMです。前回掲載のスタープロダクトG14は、比較的大きなROMのものでしたが、このサイズならCS+無償版で開発可能です。従って、RL78/G1xテンプレートも使えます。

モータ制御マイコン選択チャート

RL78/G1Fが登場した結果、ルネサスのモータ制御マイコン選択チャートは下図になりました。G1Gとの価格差が気になります。

モータ制御マイコン選択チャート(G1F資料より抜粋)
モータ制御マイコン選択チャート(G1F資料より抜粋)

RL78/G14とピンコンパチなので、G1Fの入手性が良ければ、汎用G14スタープロダクトR5F104BCAFPの代わり、またはQB-R5F104LEーTBに載せ替えて使いたいです。IoT向けの少ピンマイコンとしても有用と思うからです。

RL78/G1x名称

G1Fが加わり、ルネサスRL78汎用G1xマイコンも10/12/13/14/1A/1C/1D/1E/1F/1Gとラインアップが増えています。名称とFeatureが一致しないのが悩ましいところです。汎用ベースで少しASSP的な色付けありと考えれば良いのでしょうか?
今後G2x、G3xと開発されるでしょうから、ますます判りにくくなりそうです。

RL78マイコンテンプレートの今後

CC-RLコンパイラを使ったRL78マイコンサンプルソフトの公開が始まりました。そこで、RL78マイコンの現状を俯瞰し、今後のRL78テンプレートの方向性を検討します。

スタープロダクト

2015年5月のルネサススタープロダクトからRL78マイコンのみを取出し、CPUコア分類を追加したのが下表です。

Group P/N Package ROM RAM Flash Feature CPUコア
RL78/G10 R5F10Y16ASP 10-LSSOP 225mil 0.65p 2KB 256B Low-Pin Count S1
RL78/G12 R5F1026AASP 20-LSSOP 225mil 0.65p 16KB 2KB 1.5KB Low-Pin Count S2
R5F1027AANA 24-HWQFN 4mm 0.50p 16KB 2KB 1.5KB Low-pin Count
RL78/G13 R5F100ACASP 30-LSSOP 300mil 0.65p 32KB 4KB 2KB General
R5F100GEAFB 48-LFQFP 7mm 0.50p 64KB 4KB 4KB General
R5F100LEAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 64KB 4KB 4KB General
R5F100LGAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 128KB 8KB 12KB General
R5F100MJAFB 80-LFQFP 12mm 0.50p 256KB 8KB 20KB General
R5F100PJAFB 100-LFQFP 14mm 0.50p 256KB 8KB 20KB General
RL78/G14 R5F104BCAFP 32-LFQFP 7mm 0.80p 32KB 4KB 4KB Motor Control S3
R5F104FFAFP 44-LFQFP 10mm 0.80p 96KB 8KB 12KB Motor Control
R5F104LGAFA 64-LFQFP 12mm 0.65p 128KB 8KB 16KB Motor Control
R5F104PJAFB 100-LQFP 14mm 0.50p 256KB 8KB 24KB Motor Control
RL78/L13 R5F10WLGAFB 64-LFQFP 10mm 0.50p 128KB 4KB 8KB LCD S2
R5F10WMGAFB 80-LFQFP 12mm 0.50p 128KB 4KB 8KB LCD

RL78マイコンロードマップ

RL78マイコンロードマップに、スタープロダクトGroupと、S1コア、S3コアを追記しました。これら以外は、全てS2コアです。CPUコア差は、表1-1です。

RL78マイコンロードマップとCPUコア差
RL78マイコンロードマップとCPUコア差

これらから、RL78マイコン状況を俯瞰した結果が下記です。

  • スタープロダクト:☆は、汎用G1xに集中。小ピン小ROMのG10は、発売後すぐにスター化。
  • RL78マイコンは、殆どS2コア。S1コアは、G10のみ。S3コアは、G14とG1Gの2Groupのみだが、G14がスター化。
  • 業績回復の2015年は、ASSPマイコンを発売。アプリ機能内蔵がスター化のポイントか?

RL78/G1xテンプレートのカバー範囲拡大

現状RL78/G1xテンプレートは、汎用S2/S3コアをカバーしています。が、S1が外れています。

いまさら8ビット?と思うかもしれませんが、CC-RLコンパイラでS1コアも性能向上します。さらにS1コアのRL78/G10は、低価格で入手性も良い(秋月電子で☆R5F10Y16ASPが60円、R5F10Y47ASPが100円)ので、IoTマイコンセンサにも向いています。

このRL78/G10のような小ピンマイコンは、ROM/RAM容量も小さいので、今後RL78/G1xテンプレートにもこれら対応に工夫を加え、カバーしたいと考えています。

CC-RLコンパイラテキストから得るRL78開発指針

CC-RLコンパイラコーステキストの要約を作成するつもりでしたが、要約は自ずと得られるものですし、条件により要点箇所も異なります。効率的に知るには、索引ページからの逆引きもお勧めです。

そこで、CC-RLテキストとCA78K0Rテキストの差分から、主催者ルネサスがセミナーでCC-RLコンパイラのために補強した箇所を明らかにします。

RL78コンパイラセミナーテキスト差分

CC-RLコンパイラコーステキスト2015年5月19日 Rev.1.00と、これまで使われたCA78K0Rテキスト2014年6月24日 Rev.1.08の目次を比べたのが下表です。

RL78コンパイラコーステキスト比較
RL78コンパイラコーステキスト比較

RL78/G14 (256kB ROM、24kB RAM、8kB データフラッシュ)のトレーニングボードMT-RL78を使うCC-RLセミナーは、CA78K0Rと同じ1.5日間です。同じ期間で、テキスト内容が増えています(空欄は記述なし)。

新CC-RLが、CA78K0Rなどの既存記述(CPU)からの移植に関して多くの分量が割かれているのは当然として、ルネサスがCC-RL向けに変更した箇所が判ります。

CC-RLテキストで唯一削除された節が、リンク・ディレクティブです。CC-RLでは、このリンク・ディレクティブの代わりに、セクション関連の説明が増えており、セクション理解がより重要性を増したようです。

また、最適化も、最適化抑止やモジュール間最適化の節が追加されており、使いこなしのポイントと言えるでしょう。

RL78開発指針

RL78コンパイラコースがCC-RL対応へ代ったことは、RL78開発の今後を見極める上で重要な出来事です。

提供側のルネサス、使用側の開発者、双方ともに2つのコンパイラへリソースを割くより、1つの方が効率的なのは明らかです。過渡期の問題を除くと、CC-RLの方がCPUパフォーマンスを引き出せるのです。

Windows10リリースの今年は、ベース環境も変わります。サービスを得る側は、Win10やワード、エクセル、パワーポイント等のツールの使い方を詳しく知っているよりも、ワード、エクセル、パワーポントでどんな内容の資料が作れるかが大切です。マイコン開発も全く同じです。

開発ソフトのサービス内容を、素早く、手軽に、より深く検討するには、両コンパイラで動作確認済みのCS+プロジェクトで提供されるRL78/G1xテンプレートが役立ちます。

CC-RL対応コンパイラコースの新テキストリリース

ルネサス主催マイコンセミナーのRL78コンパイラコースで使うCC-RLコンパイラ対応テキストがリリースされました。

CA78K0Rコンパイラのテキスト要約と同様、新テキストについても要約版を作成する予定です。セミナーに参加できると一番ですが、大阪か東京の2日間セミナーなので、弊社の場合、費用が悩みです。

CC-RLに関しては、5月18日時点で多くのFAQも追加掲載されています。つまづいている方が多そうです。
CC-RL対応済みのRL78/G1xテンプレート活用も、これらつまづきからの1解決策として有効です。
テンプレートは、CS+で実際に動作するプロジェクトで提供します。FAQの回答より具体的につまづきを解決できます

CC-RLコンパイラ対応RL78/G1xテンプレートv4.0

RL78/G1xの習得、アプリ早期開発に使えるRL78/G1xテンプレートv3.1を、CC-RLコンパイラとCR78K0Rコンパイラの両方に対応したRL78/G1xテンプレートv4.0(税込1000円)に更新しました。

コンパイラ別テンプレート提供

RL78/G1xテンプレートv4.0は、新しいCC-RLコンパイラと従来のCA78K0Rコンパイラ、それぞれにテンプレートを提供します。テンプレート全体像を説明資料P3に示します(マイコンテンプレートサイトより説明資料P1~P3ダウンロード可能)。

RL78/G1xテンプレート説明資料P3より抜粋
RL78/G1xテンプレート説明資料P3より

テンプレートを使ったアプリ例として、推薦開発ボード:BlueBoard-RL78/G13_64で動作確認済みのメニュードリブンテンプレート、4種CPUボード:RL78/G13-Stick、RL78/G14-Stick、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBで動作確認済みのシンプルテンプレートを添付しております。RL78/G1x習得やアプリ開発が、ゼロから始めるよりも早くスムースに、しかもボードで実際に動作を確認しながら可能です。

テンプレート応用例 動作確認ボード 動作概要
メニュードリブン BlueBoard-RL78/G13_64 LED, SW, ADC, LCD, データフラッシュ, UART処理等
シンプル RL78/G13-Stick LED D2を1秒毎に点滅
RL78/G14-Stick SW1押下げでLED D2トグル点滅、または
1秒毎に点滅
QB-R5F100LE-TB LED1を1秒毎に点滅、SW1押下げでLED2トグル点滅
QB-R5F104LE-TB

テンプレートですので、ボードのIO割付けを変更すれば、お好きなボードへの移植も簡単です。また、両コンパイラ版ともにボード動作は同じです。
※ルネサス提供のデータフラッシュライブラリは、各コンパイラ専用ですので注意してください。

コンパイラCA78K0RからCC-RLへの移行リスク評価

新CコンパイラCC-RLは、CA78K0Rに比べ、「3倍の処理性能、割込み応答時間1/6、コードサイズ1割減」など、良い事ばかりです。今後のRL78開発にCA78K0Rを使い続けるメリットは少なそうです。

但し、これら数値は、最高値です。処理によっては、高速化の程度やコードサイズ削減効果はまちまちです。既に開発済みのアプリケーションの一部、または全部をテンプレートへ組込むことで、コンパイラ差が実際どの程度かが判ります。コンパイラ移行のリクス評価にも本テンプレートが使えます。

CA78K0RコンパイラからCC-RLコンパイラへのプロジェクト移行方法については、コチラの記事を参照ください。

マイコンテンプレートサイトに詳細記載

RL78/G1xテンプレート詳細情報は、マイコンテンプレートサイトにまとめております。もくじ説明資料P1~P3は、無料でダウンロードできますので、是非ご検討ください。このサイトには、RL78/G1xテンプレート以外にも、3種類のマイコンテンプレートを掲載中です。

ご購入方法

RL78/G1xテンプレートv4.0ご希望の方は、メール(info@happytech.jp)にてお知らせください。銀行振込口座を返信いたしますので、この口座へ代金1000円(税込)を振込んでください。
ご入金確認後、RL78/G1xテンプレートv4.0一式(CC-RL版テンプレート+CA78K0R版テンプレート+説明資料全ページ)ZIP圧縮、合計約4MBをメールにてお送りします。

保証期間の対応

旧RL78/G1xテンプレートご購入後、1年以内の無償バージョンアップ期間内の方は、弊社よりRL78/G1xテンプレートv4.0を、1週間以内に送付致しますのでお待ちください。

1年以上経過された方は、customerservice@happytech.jpへメールを頂ければ、50%OFFの500円(税込)で提供致します。よろしくお願い致します。

CC-RL移行支援機能オプションのRAM/ROMサイズ検証

RL78開発に使っていたCA89K0Rコンパイラから、新登場のCC-RLコンパイラへの移行に関して、コンパイラ表記混在が可能で、多くの既存ルネサスサンプルソフトや、将来のCC-RLサンプルソフトも使える「CS+移行支援機能を使った方法2が適している」ことを前回示しました

方法2では、移行のために多くのオプションを設定しました。これらを設定しないCC-RLネイティブオプションとRAM/ROMサイズを比較し、移行オプションの設定が、サイズや処理速度に影響を与えないことを検証しました。

CC-RLネイティブオプションプロジェクト

最も基本的なオプションのみを設定したネイティブオプションのプロジェクトとして、CS+ for CC付属のサンプル・プロジェクトRL78_G13_Tutorial_Basic_Operation_CCを使います。

RL78_G13_Tutorial_Basic_Operation_CCプロジェクト作成
RL78_G13_Tutorial_Basic_Operation_CCプロジェクト作成

これは、CPUボードQB-R5F100LE-TBで動作可能なプロジェクトです。GOボタンを押すと、指定フォルダにRL78_G13_Tutorial_Basic_Operation_CC プロジェクトが作成されます。ネイティブのままでは、RAM/ROMサイズ出力がありませんので、合計セクション・サイズ表示のみを追加設定します。

ネイティブオプションへの追加設定
ネイティブオプションへの追加設定

リビルト・プロジェクト実行で、ネイティブオプションでのRAM/ROMサイズが出力されます。

RAMDATA SECTION:  00000002 Byte(s)

ROMDATA SECTION:  00000298 Byte(s)

PROGRAM SECTION:  000001b4 Byte(s)

移行支援機能オプションのプロジェクト

ネイティブオプションプロジェクト作成時と別フォルダを指定しGOボタンを押し、もう1つ別のRL78_G13_Tutorial_Basic_Operation_CC プロジェクトを作成後、下記移行支援機能オプションと、前回プログ設定のオプションを追加設定します。

  • コンパイラの移行支援機能:-convert_ccオプション
  • アセンブラの移行支援機能:-convert_asmオプション
  • セクションの自動配置:いいえ
  • メモリモデル:スモール・モデル
  • 合計セクション・サイズ表示:はい

コンパイラ表記の混在可能を試すため、CC-RL表記をCA78K0R表記へ変更します。

コンパイラ表記混在テストソース
コンパイラ表記混在テストソース

リビルト・プロジェクト実行で、移行オプションでのRAM/ROMサイズが出力されます。

RAMDATA SECTION:  00000002 Byte(s)

ROMDATA SECTION:  00000298 Byte(s)

PROGRAM SECTION:  00000 1af Byte(s)

PROGRAM SECSIONに5バイト差分、減少が生じますが、これは、セクション自動割付けを行わなかったためです。
コンパイラ表記が混在してもビルドできますし、移行オプションを追加設定しても、RAM/ROMデータサイズは変わりません。ネイティブ1b4=436バイトに対して、5バイト程度の増減であれば、処理速度への影響もないことが確認できます。もちろん、CPUボードQB-R5F100LE-TBで正常動作します。

CA78K0RからCC-RLへのプロジェクト移行

新CコンパイラCC-RLは、処理スピード重視でRXやRHマイコンなどのコンパイラノウハウを応用した結果、従来のCA78K0Rコンパイラに比べ、

  • 処理性能…………..3倍高速化
  • 割込み応答性能…..6倍高速化
  • コードサイズ……..1割削減 → 低消費電力化

を実現しています。従って、今後RL78開発にCA78K0Rを使い続けるメリットは少なさそうです。弊社RL78/G1xテンプレートもCA78K0RプロジェクトからCC-RLを使ったプロジェクトへ移行を行います。

ルネサス提供資料

CA78K0RからCC-RLへの移行方法については、ルネサスから4月20日時点で4移行資料が示されています(リンクページ一番下の4資料)。資料内容は、詳細ですが解りにくいので、弊社RL78/G1xテンプレートを例に、その移行手順やTipsなどを記載します。

移行方法の比較結果

移行方法は、2つあります。
1つが、新規にCS+でプロジェクトを作成し、これに、旧CA78K0Rで作成したソースを手動で移植する方法1。もう1つが、CS+の移行支援機能を使う方法2です。両者比較結果を示します。

CA78K0RからCC-RLへの移行方法比較
CA78K0RからCC-RLへの移行方法比較

方法2が、コンパイラ表記混在でもビルト成功し、多くのルネサス既存サンプルソフトと、将来のCC-RLコンパイラサンプルソフトを活用、流用できることから優れています

移行方法具体例

2つの方法をRL78/G1xテンプレートへ適用した例とTipsを示します。

方法1:CA78K0R環境の手動移行

方法1で、CA78K0Rで作成したRL78/G1xテンプレート移行を行った例です。そのデメリットが明らかになります。

手順1:CC-RL環境のファイル構成

5月1日時点の、ルネサスFAQを「RL78 CC-RL」で検索しました。よくある質問に対して回答が示されるので、参考にします。
この中で、メモリ・モデルをスモール・モデルにすると、生成コードサイズが小さくなることが示されています。RL78/G1xテンプレートは、無償評価版CS+で動作するので、ROM≦64KBのスモール・モデルで適合します。そこで、新規プロジェクト作成後、CC-RLのコンパイル・オプションでスモール・モデルを選択します。

CC-RLコンパイラ・オプション設定
CC-RLコンパイラ・オプション設定

その他は全てデフォルトとし、コード生成(設計ツール)>クロック発生回路>端子割当て設定も、デフォルトのまま確定ボタンを押します。
これで、コード生成ツールが使えますので、コード生成(G)ボタンを押すと、プロジェクト・ツリーに緑囲いファイルが生成されます。これが、新コンパイラCC-RLネイティブの出力ファイルとファイル構成です。

この状態で、ビルドをすると、当然ですがエラーなしでビルド成功します。ここへ、CA78K0Rで作成したファイルを手動で移植し、エラーフリーの状態までもっていけばプロジェクト移行完了です。

手順2:コード生成設定

コード生成は、周辺回路をGUIで設定し、ソースコードと端子配置へその結果を出力します。しかし、逆のソースコードから周辺回路の設定を出力するツールはありません。仮に、このリバースツールがあれば、プロジェクト移行が簡単になるだけに残念です。

しかたありませんので、CS+ for CA,CXとCS+ for CCの両方を起動し、CS+ for CA, CXのRL78/G1xテンプレートのコード生成のパラメタを、CS+ for CC側へ手動で移設します。
方法2の移行支援機能を使うと、コード生成パラメタが新しいプロジェクトへそのまま移植されます。方法2のメリットです。

シンプルテンプレートのコード生成パラメタをCS+ for CCへ手動で移設し、コード生成(G)実行結果が下図です。CPUボードは、RL78/G14 Promotion Board(RL78G14-Stickとも言う)を使いました。

CC-RLコンパイラのコード生成結果
CC-RLコンパイラのコード生成結果

チャタリング対応済みのSW入力とLED出力を実装し、テンプレート動作理解と、ユーザ処理追加時のスタートプロジェクト提供を目的としたシンプルテンプレートは、WDTを停止させています。

※この他に、3種のCPUボード、RL78G13-Stick=RL78/G13 Promotion Board、QB-R5F100LE-TB、QB-R5F104LE-TBでRL78/G1xシンプルテンプレートは動作確認済みです。また、メニュードリブンテンプレートは、弊社推薦評価ボードBB-RL78G13_64で動作確認済みです。テンプレートですので、他ボードでもポート定義などの変更のみで動作します。

手順3:ソースファイル登録

シンプルテンプレートで必要となるソースファイルは、SW入力処理、LED出力処理、ユーザ追加マクロ、テンプレート本体main.cの4つです。「ユーザ追加」カテゴリを作成し、これらCA78K0Rのソースファイルをコピーした後、登録した結果が下図です。

CC-RLコンパイラのソースファイル登録
CC-RLコンパイラのソースファイル登録

手順4:ソース修正

ビルド時、シンプルテンプレートでソース修正が必要となった内容とその箇所(一部抜粋)を示します。

内容 修正前(上:CA78K0R表記)と修正後(下:CC-RL表記)の実例(一部抜粋)
割込み関数宣言 #pragma interrupt INTTM02 r_tau0_channel2_interrupt RB3
#pragma interrupt r_tau0_channel2_interrupt(vect=INTTM02, bank=RB3)
sreg使用宣言 sreg ubyte_t              SwRedReg;
__saddr ubyte_t         SwRedReg;
ポート定義 #define SW_SW1        P7.6
#define SW_SW1        P7_bit.no6

これら修正後、コンパイルエラー無しになりましたので、プロジェクト移設完了です。

手順5:セクション配置設定

CC-RLコンパイラのセクション自動配置を「いいえ」にする必要があります。

CC-RLコンパイラのセクション設定
CC-RLコンパイラのセクション設定

手順6:RL78/G14 Promotion Board動作テスト

CC-RLでコンパイルしたソースを、RL78 EZ Emulatorへダウンロードする際に、下記エラーが発生します。

  • オンチップ・デバッグで使用する予約領域への書き込みはできません。

対策に、EZ Emulatorプロパティの上書きチェックを「いいえ」にします。

デバッグ・ツール予約領域の設定
デバッグ・ツール予約領域の設定

これでRL78/G14 Promotion Boardにダウンロードでき、シンプルテンプレートの正常動作を確認しました。

以上が、方法1:新規プロジェクトを作成し、手動にてCA78K0R環境を移植した例です。

方法2:移行支援機能を使った移植

CS+の移行支援機能を使うと、手順2のコード生成設定と手順4のソース修正を省けます。また手順3のソースファイル登録もmain.cを除いて自動化できます。自動生成のmain.cは、内容なしのスケルトンファイルですので、CA78K0R側からmain.cを手動コピーして上書きが必要です。
方法2では、CC-RLを使っていても、ソースコードはCC-RL表記とCA78K0R表記の両方が使えます。

但し、今後CC-RLを使う時には、移行支援機能が設定したオプションを、毎回必ず設定する必要が生じます。この目的のため「現在のビルト・オプションをプロジェクトの標準に設定する(S)」があります。

ビルト・オプションのプロジェクト標準設定
ビルト・オプションのプロジェクト標準設定

ルネサス提供のRL/G1xサンプルコードも、今は全てCA78K0R表記です。今後追加されるサンプルコードがCC-RL表記になるとサンプル流用時に、コンパイラ表記の混在問題が生じます。この問題を回避するためにも、このビルド・オプションの設定は必要でしょう。

CA78K0RからCC-RL移行方法のまとめ

CA78K0Rコンパイラ環境から、CC-RLコンパイラ環境へ移行するには、CS+移行支援機能を使う方法2が良いことを示しました。この方法2をまとめると、以下になります。

  1. CS+ for CCで、CA78K0R既存プロジェクトのファイルを流用(S)&構成ファイルをコピーして流用(O)でプロジェクト作成(作成時、メッセージ表示のコピー失敗ファイルは手動コピー必要)。
  2. ビルド・ツールプロパティ>コンパイル・オプション>メモリ・モデルを「スモール・モデル」へ設定
  3. ビルド・ツールプロパティ>リンク・オプション>セクション>セクション自動配置を「いいえ」へ設定
  4. 「現在のビルド・オプションをプロジェクトの標準に設定する(S)」を実行
  5. ファイル>すべてを保存(L)で一旦CS+終了し、CS+を再起動
  6. コード生成>コード生成(G)実行
  7. CA78K0R環境のmain.cをCC-RL環境のmain.cへ上書きコピー
  8. 既存ファイルを追加(F)でコピーしたmain.cをソースファイル登録
  9. 使用するデバッグ・ツール選択後、ダウンロード・ファイル設定>予約領域の上書きチェックに「いいえ」を設定
  10. ビルド&デバッグ・ツールへダウンロード(B)を実行し、デバッガと実ボードで正常動作を確認

※一旦CS+を終了するのは、無用なコード生成カテゴリの生成を防ぐ目的です。これをしないと、2つコード生成カテゴリが生じます。

CC-RL対応RL78/G1xテンプレートv4.0発売予定

販売中のRL78/G1xテンプレートv3.1は、CA78K0Rコンパイラ版です。方法2を使って新CC-RLコンパイラに対応したRL78/G1xテンプレートv4.0は、近日中に販売予定です。
テンプレートのご購入方法は、RL78G1xテンプレート購入方法を参照してください。

RL78新Cコンパイラ 「CC-RL」リリース

新CコンパイラCC-RLの特徴
新CコンパイラCC-RLの特徴

2015年4月16日、処理性能3倍、コードサイズ1割減が可能な、新コンパイラ「CC-RL」がリリースされました。今回は、この新コンパイラの速報を示します。

コンパイラ別にCS+も2本立てへ

注意が必要なのは、CS+もコンパイラ毎に変わる点です。
CS+ for CA,CXをお使いの方が、UpdateしてもCC-RLは取得できません。新しいCC-RL取得には、これまでRX、RH850開発用だったCS+ for CCを起動し、Updateすることが必要です。これにより、CC-RLがインストールされ、CS+ for CCでもRL78開発ができるようになります。

マイコン コンパイラ Windowsスタートメニュー
RL78 CA78K0R CS+ for CA, CX  (78K、RL78V850)
CC-RL CS+ for CC  (RL78RX、RH850)

結局CS+を最新版へ更新すると、WindowsスタートメニューのCS+両方にRL78が表示されます。

CC-RLの特徴

リリース資料は、特徴を3つ記載しており、また掲載図から「割込み応答時間1/6へ向上」が解ります。

  1. 処理性能が従来比3倍
  2. コードサイズが従来比1割削減、消費電力も削減
  3. MISRA-Cガイドラインチェック機能搭載(Professional版のみ)

従来比とは、CA78K0R作成のコードです。MISRA: Motor Industry Software Reliability Association Cチェックとは、主として車載用ソフトのC言語コーティングガイド確認機能です。

RL78/G1xテンプレートのCC-RL対応

普通は、良いことがあると、反面、悪いこともあるハズです。しかし、特徴からすると今後RL78開発に、従来CA78K0Rコンパイラを使うメリットは、無さそうです。また、スタンバイモードが長くなることから、弊社RL78/G1xテンプレート動作にも好適です。

開発環境が、CS+ for CA, CXからCS+ for CCへ変わるなど、面倒ですが、CC-RLへの移行ガイドなどの資料を取得し、弊社RL78/G1xテンプレートもCC-RLへ対応していく予定です。
移行スケジュールや詳細情報、コンパイラ移行のメリット/デメリットなどは、今後記載予定です。