2014年末発売予定のfreescale Kinetis Eテンプレートソフト、この開発にProcessor Expertを使いこなすことがポイントと考えた理由を示します。
Processor Expert :PEとは
PEは、ルネサスRL78/G1xのCS+コード生成ツールに相当します。使用周辺回路のパラメタをGUIで設定できます。例を示します。Kinetis Eテンプレート開発で使うボード:FRDM-KE02Z40Mと、その赤LEDをPWM点灯する時の設定です。設定ミスがあると、そのパラメタが黄色で表示されるので、すぐに修正や変更ができます。
設定後、コード生成ボタンを押すと、ユーザソース所定か所にPE生成コードが自動挿入されます。ユーザは、PEが生成したAPIを使ってアプリ開発に着手します。PE設定パラメタを変更後、再生成しても、ユーザソースは残ったまま、生成コードが再挿入されます。
つまり、周辺回路APIをPEで生成 → 動作パラメタはAPI内部に隠ぺい → ユーザソースそのものの流用が可能、です。CS+のコード生成ツールと同じ目的です。
PEを使わないサンプルソフト
旧来のマイコンソフト開発は、デバイスドライバ開発担当が、このAPIを自作していました。高性能APIが自作できますが、機種が変わるとAPIも変わることが多く、同じ処理でもアプリ作り直しが必要でした。API自動生成ツールPEは、アプリ作り直しの回避と再利用を可能にするツールです。
もちろん、Kinetis EでもPEを使わずに旧方法のアプリ開発もできます。IDE付属サンプルソフトの多くは、この旧方法で提供中です。サンプルソフトの目的が、1個の周辺回路のシンプルな説明に主眼があり、PEを使うよりはこの目的に適していること、従来からあるサンプルソフトをそのまま流用したこと、などが理由だと思います。
因みに、PEユーザガイドは、約200ページ、CS+のRL78 APIリファレンス編は、400ページ以上のボリュームがあること、などもAPI自動生成ツールがサンプルソフトで使われない原因かもしれません。良いツールには、それなりの解説書が必要です。ただ、背景記述が少ないのと、クイックレファレンスがほしいです。
iPhoneやスマホを使うと、本当に良いツールは、マニュアル無しでも使えるモノかな?とも思いますが、コンシューマ向けと、マイコン開発のようにプロフェショナル向けのモノとでは違って当然ですね。
テンプレート開発ボードのPE
テンプレート開発ボードFRDM-KE02Z40MでPEが自動生成する周辺回路一覧を、アルファベット順に示します。
多くの周辺回路=Componentの設定が可能です。使用頻度が高いタイマ、GPIO、UART関連、また、ボード実装のTSS: Touch Sensing Softwareや、3軸加速度センサ接続のI2CもKinetis Eテンプレートで使う予定です。 Component Levelとは、アプリ流用の容易さを示していて、Logical Device Driver :LDD、High、Lowの順で流用性が高くなります。
例えば、Lowレベルコンポーネント使用時、既に動いているアプリを別機種へ移植した時に、想定外動作をする時は、このLowレベルコンポーネントからデバッグしていくと良いかもしれません。これはCS+コード生成には無かった機能です。
また、これらPEの設定を出力し、別プロジェクトへ移植する機能もあります。これもCS+コード生成にはありません。CS+は日本語操作できる良くできたIDEですが、多くのコード生成パラメタを別プロジェクトへ引継げないのが(唯一の)欠点だと思います。
PE出力は、テンプレート使用中IDEのCode Warrior :CWとKinetis Design Suite :KDSのどちらにも移植でき、CWからKDSへ変更してもそのまま使えます。Kinetisシリーズ開発環境が、今年CWからKDSへ移行中ですので重要です。
つまり、PEを使えば、
1.アプリ流用性が高まる
2.CW←→KDSのIDE変更は問題なし
更にfreescaleマイコンは(おそらく)同じ周辺回路を使っており、それらのAPIがPEで生成ができるので、
3.freescaleマイコン機種変更も問題なし(の可能性あり)
など3拍子揃ったソフト開発が期待できる、これらがAPI生成ツール:PEをfreescale Kinetis Eテンプレート開発に使う理由です。