NXPは、Freescaleを買収しARMコアのマイコンラインアップが増えました。昨年発表の新しい統合開発環境MCUXpressoで増加ラインアップに対応中です(MCUXpressoサポート状況Excel表がコチラ)。
IDE、SDK:Software Development Kit、CFG:Config Toolsの3ツールから構成されるMCUXpressoのサポート状況から、新生NXPのARMマイコン開発環境を考察します。
もっと早く気が付いていれば…
このExcel表を見つけたのは、今年1月中。LPC824の最新LPCOpenライブラリv3.02に、昨年から継続するバグ解消が無いことが理由でした。何か変だと思い、NXPサイト検索で発見したのが同表です。
2017年7E目標のLPC824対応マイコンテンプレート開発前にこの表を見つけていれば、対応が変わっていただけに残念です(orz)。LPC800でフィルタリングしたのが下図です。
LPC8xxシリーズは、LPCOpenライブラリはAvailableなものの、NXPはCode BundleがRecommended SDK:推薦Software Development Kitです。推薦環境以外でテンプレート開発したことになります。
Change Logページを見てもいつCode Bundleへ変わったか不明です。しかし、LPC8xxテンプレートV1開発時の2014年5月10日時点では、「LPCOpenがLPC812のSDK」でした(Legacyフォルダはあっても、Code Bundleなどありませんでした)。
LPC8xxシリーズは、IDEのみMCUXpresso IDEでSDK、CFGの計画はありません。つまり、NXP推薦Code BundleかLPCOpenを使いソフト開発が必要です。
Code BundleとLPC8xx
Code Bundleは、C:\nxp\MCUXpressoIDE_10.1.1_606\ide\Examples\CodeBundlesにあります。特徴は、ハードレジスタを直接アクセスするLegacyスタイルなので、従来の8/16ビットマイコン開発者に馴染み易く、これらマイコン置換え狙いのLPC8xxには、このスタイルの方が歓迎される可能性があります。
但し、LPC81x、82x/83x、84xとハードレジスタが微妙に変化していますので制御ソフトも変化します。LPCOpenのようにAPIでハード差を吸収する思想は少ない(無い)ようです。
気になる点が2つあります。最初は、サンプルソフトのヘッダーが簡素なことです。
ベンダ提供のサンプルソフトヘッダーは、細かな注意点などが30行程度記載されているのが普通です(左:Code Bundle、右:LPCOpen)。
Code BundleのHeaderは弊社マイコンテンプレートと同様簡素(上図は9行)で、間に合わせで開発した感があります。また、ソース内コメントも数人のエキスパート:上級者で分担してサンプルソフトを作成したように感じました。
Code Bundleの全サンプルソフトを動作テストした訳ではありませんが、LPCOpenのようなバグは(今のところ)ありません。SDKとしてLegacyスタイルに慣れた8/16ビットマイコンユーザが使うのは問題なさそうです。
2点目は、NXP推薦開発環境でCode Bundleなのが、LPC8xxシリーズのみの点です。
他のARMマイコンは、LPCOpenかまたはMCUXpresso SDKが大半です。旧NXPマイコンは、LPCOpenまたはMCUXpresso SDK、旧FreescaleマイコンはMCUXpresso SDKが主流です。
LPC8xxシリーズのみ今後もCode Bundleにするのか、または、他の旧NXPマイコン同様LPCOpenになるのかは、ハッキリ言って判りません。
LPC8xxマイコンテンプレートの対処
現在LPCOpenライブラリを使いLPC812のみ対応中のLPC8xxマイコンテンプレートV2.1を今後どうするかの案としては、
- LPC812、LPC824ともにLPCOpenライブラリバグ解消を待って改版
- LPC812、LPC824ともにCode Bundleを使い改版
- LPC812は現状LPCOpen維持、LPC824は、Code Bundleを使い改版(中途半端)
いずれにするか、検討中です。決定には、もう少し時間が必要だと思っています。
ミスリード(Mislead)のお詫び
これまで弊社は、LPC8xxシリーズのSDKはLPCOpenと思い投稿してきました。この投稿で、読者の方に誤った開発方向へ導いた場合には、お詫び申し上げます。申し訳ございません。
LPC8xxテンプレートをご購入頂いた方のテンプレート本体は、C言語のみでライブラリは使っておりませんし、マイコンにも依存しません。ご購入者様は、他マイコンも含めて流用/活用はご自由です。
LPCOpenで開発された関数を、Code Bundleへ変えたとしても、テンプレート本体はそのまま使えます。
あとがき
Code Bundleは、ハードレジスタをユーザ開発ソフトで直接いじる20世紀マイコン開発スタイルです。21世紀の現在は、ハードウェアに薄皮を被せAPI経由で開発するスタイルに変わりました。メリットは、ハードが変わってもユーザ開発ソフト側変更が少なく、マイグレーションに有利です。
ARMコアのマイコンは、全てこの21世紀スタイル:ARMスタイルです。ARMがCMSISなどを発表しているのは、ARMコアに依存しないユーザ開発ソフトを、資産として活用することが目的です(CMSISはこちらの投稿を参照)。
マイコンRTOSがWindowsのようにハードアクセスを全面禁止にすることはあり得ませんので、20世紀スタイルでRTOS化しても問題ありません。が、スイッチマトリクスが気に入っているLPC8xxシリーズだけが20世紀スタイルを使い続けるとは思えません。つまり、Code Bundleは、NXPサポート体制が整うまでの暫定措置だと思います。
この混乱の原因が、QUALCOMMによるNXP買収に絡んでないことを祈っています。
QUALCOMMのNXP買収、EUで一歩前進
2018年1月19日、米QUALCOMMの蘭NXPセミコンダクター買収計画がEU(欧州連合)当局で承認の記事が日経電子版に掲載されました。残るのは、中国の独占禁止法当局の承認だけです。遅れていた買収成立が一歩前進しました。