前記事紹介の国内名称Genuino 101こと「Arduino/Genuino 101マイコンテンプレート」の開発に着手します。Arduino IDEのLチカサンプルの問題点を指摘し、マイコンテンプレートがどのように解決するかを示します。
Arduino/Genuino 101開発ボード
Bluetooth LEに6軸加速度センサも内蔵した32MHz動作インテルCurie、ROM/RAM=192KB/24KBのMCUが実装されたArduino開発ボード、これがArduino/Genuino 101です。
Quark SEコアにSoC: System on a ChipしMCU単体ROM/RAMは、384KB/80KBですが、開発環境Arduino IDEが使う残りがユーザプログラマブル領域で192KB/24KBとなります。実にROM50%、RAM70%をIDEが使う!というものですが、その理由は後で考察します。
データシートやFAQによると、2016年3月にIntel® IQ Softwareというパッケージでサンプルアプリケーションや専用RTOSなども提供するそうですが、現時点でリリースされていません。
Arduino IDE
Intel IQ Softwareリリースまでは、無償のArduino IDEを使います。最新版1.6.9をダウンロードしインストール、さらにArduino/Genuino 101動作のためIntel Curie Boards by IntelをボードマネジャでインストするとArduino IDEが使えます。
Arduino IDEは、スケッチエディタ、コンパイラ、開発ボードへのダウンロード(何故かArduinoではアップロードと呼ぶ)ができますが、デバッグ機能はありません。
Arduino/Genuino 101ボードとPCを接続し、ボードマネジャーでArduino/Genuino101、接続したシリアルポート番号を設定すれば準備完了です。ファイル>スケッチの例>01.Basics>Blinkを選択して➡アイコン: “マイコンボードに書き込む” をクリックすると、緑LEDが1秒毎に点滅の、いわゆるLチカ動作が確認できます。
スケッチ
「スケッチ」とはArduino IDEプログラム言語の名称で、ソフトウェア開発に不慣れなアーティストでも簡単にプログラミングできるように工夫された「簡易/変則? C言語」と個人的には理解しています。
「絵を簡単にスケッチする」からその名が来ているかもしれません。ヘルプ>「このソフトの使い方について」クリックで、スケッチが説明されます。ランゲージレファレンスも参考になります。
スケッチ重要事項をまとめます。
- 2関数、setup();初期設定と、loop();無限ループで全体処理を構成
- IDEでオレンジ表示の既成API関数と、if then else 等の基本的C言語で処理ロジックを作成
Arduino IDEが、使用する開発ボードに応じたAPI関数を全て用意することや、簡易C記述を可能とする仕掛け、これがROM/RAMをIDEが多量に使用する原因だと思います。しかし残りが192KB/24KBならユーザ領域としては、十分で問題はありませんが…。
Lチカサンプル問題点
Lチカサンプル、Blinkのスケッチソースが下記です。delay(1000)を使って1秒毎の点滅処理を行っています。点滅間隔変更は、delayパラメタ1000を変えれば良いことが解ります。但し、delay処理中は、他の動作はできません。マルチタスク処理は困難です。
そこで登場するのが、ファイル>スケッチの例>02.Digital>BlinkWithoutDelayです。
今度は、delayを使いませんので52行の1秒経過を判断してLEDをトグル点滅させます。トグル点滅以外のループ時間は、他動作が可能ですが、これにも問題があります。
Curieなどが活躍するIoTマイコンは、省電力動作が必須です。制御対象のセンサやGPIOデータ処理は、IoTマイコンにとっては遅い処理で、この遅い処理完了を待つ間は、MCUを省電力動作させバッテリや電力消費を抑えるのです。1つ1つのマイコン消費電力は小さくても、数億個のマイコンが動作するIoTの世界では、低電力動作は無視できません。
結局、BlinkWithoutDealyの方法も、無限ループが回りっぱなしで省電力動作向きではありません。
マイコンテンプレート
ユーザ処理を時分割で起動するのがマイコンテンプレートです。
起動したユーザ処理終了後や、起動処理が無い時は、自動的に省電力動作となります。組込みRTOS:Real Time Operating Systemにも同様な機能がありますが、RTOSほど複雑でなく、サイズ自体も小さいのが特徴です。詳しくは、マイコンテンプレートのサイトのテンプレート利用Tipsなどを参照してください。
既に5種のマイコンにテンプレートを販売中です。開発するのは、Arduino/Genuino 101開発ボード対応のマイコンテンプレートです。進捗状況などについて、本ブログに記載するつもりです。
先に示したIntel IQ Softwareがリリースされれば、RTOSも含まれていますので、そちらの方が良いと思う開発者の方も多いと思います。しかし、RTOSを使いこなすのは簡単ではありません(RTOS関連記事も参照)。
また、Windowsがそうであるように、OS自体の動作が不明で、さらにバグがある可能性も否定できません。
個人や小人数で開発するような規模のプログラムには、マイコンテンプレートは中身の動作が全て開発者に見え、カスタマイズも可能なので向いていると思います。
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