ニッポン固執Change

“Change before you have to” 、Jack Welch氏(米GE:CEO、1981年から2001年)の名言です。日本スマホメーカ破綻とRapidus記事、グローバル市場必須の日本製造業と技術者の今をJack Welch氏の名言から考えてみました。

Rapidus記事

Rapidusロゴ

2023年6月12日から始まった日経クロステック「半導体立国ニッポンの逆襲」、Rapidus特集記事の昨日までの目次です。

第1回:日本で先端半導体をつくるだって?! 突然の記者会見、6月12日
第2回:20年前にラピダスの原点、小池社長の苦い過去、6月13日
第3回:ラピダス設立に動いた経産省の青写真、6月14日
第4回:ラピダス設立に透ける米国の影、6月15日
第5回:IBMからの電話で始まったラピダスへの道、6月16日
第6回:難関とともに終わったラピダス設立会見、6月19日
第7回:ニッポン半導体再起動へ、3つのラストチャンス、6月20日
第8回:⽇本半導体復活戦略の出発点「熊本」、6月21日
第9回:経産省が⽬指す半導体復活への3ステップ、6月22日

毎日追記され、各2000文字前後の文字数です。気分転換や隙間時間に読むのに適した量ですので、是非ご自身でお読みください。

AI要約ではありませんが、筆者が昨日迄の全記事をまとめたのが下記です。

全体トーンは、経産省主導Beyond 2nmを目指す次世代半導体会社Rapidus成功に懐疑的。2030年市場規模100兆円達成には、人材確保・育成や製造・量産ノウハウなど課題クリア必須。過去の政府主導失敗経験を活かしたのは、半導体ユーザ製造業(トヨタ、NTT、Sonyなど)を加えた点。但し、政府700億円拠出に対し、ユーザ10億円以下で温度差あり。Rapidus成功の道は険しいが、半導体立国ニッポン最後で最大のチャンス。

関連投稿:Rapidus(ラピダス)

日本スマホメーカ破綻

中高年やデジタル弱者に人気のある「らくらくスマホ」(出展:FCNTサイト)
中高年やデジタル弱者に人気のある「らくらくスマホ」(出展:FCNTサイト)

デジタル弱者、特に中高年層に人気があり販売実績数も多い「らくらくスマートフォン」メーカのFCNTが、経営破綻しました。

破綻要因は、半導体不足による調達価格高騰、スマホ不況など色々あると思います。言えるのは、ニッポンに拘った製品は、日本市場Shrinkと共に消える可能性大と言うことです。もはや、日本市場だけで存続できる製造業はあるのでしょうか?

例えば、前章Rapidus出資のトヨタ、Sonyは、グローバル市場でも稼いでいます。NTTもKDDIとタッグを組んでIWON(Innovative Optical and Wireless Network)を研究開発し、狙いはワールドワイド通信キャリア市場です。

関連投稿:世界規模の宇宙センシングIOWN

つまり、日本製造業が生残るには、ニッポン国内の稼ぎだけでは少なすぎる訳です。この対策の1つが、かつてのライバルKDDIと共同で光電融合デバイスを開発するNTTの動きにも現れています。

民間企業だけでなく、人口減少が進む地方自治体でさえ、従来のやり方では破綻危機が予想されています。

Summary:Change Now

Change before you have to

日本製造業は、高性能、高品質、低価格なニッポン製品を世界中へ輸出、販売し稼いできました。この稼ぎ方は、製品性能を左右する高性能半導体や円安が前提です。円安は、逆に海外製半導体の購入には不利です。

※円安=輸出日本製品が、海外で比較的安く買える

Rapidusが、次世代半導体のニッポン製造に拘る理由は、円安・円高の為替相場に依存しない高性能半導体の国内安定・安価提供が目的だからです。

同様の動きは、欧州半導体法米国CHIPS法にも見られます。ローカライゼーション動向に見えますが、これら諸法に後押しされる欧米製造業は、元々グローバル市場が狙いの猛者たちです(←誉め言葉です)。

日本製造業と日本技術者が生残るには、Rapidus成功・失敗にかかわらず、グローバル市場への “Change before you have to” が今必要、と名言は警鐘を鳴らしていると思います。

Afterword:弊社Change

WordPressの本サイトは、多言語対応済みです。しかし、MCUテンプレートサイトは、日本語のみ、ここも多言語化したいと考えています。

それにしても、本稿投稿のきっかけになった、ガラパゴス携帯に続く人口比多数派中高年対応らくらくスマホ破綻、単にスマホ不況だけでは考えられません。日本≠弱者≠ビジネス切捨対象なら良いのですが…。
Change必要です!



Rapidus(ラピダス)

Rapidusロゴ2022年11月11日、経産省キモ入りの日本国内8社(キオクシア、ソニー、ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NEC、NTT、三菱UFJ銀行)から成る次世代半導体(Beyond 2nm)製造会社:Rapidus設立(ITmedia)の記事は、世界と国内の半導体製造「10年遅れ、先端ロジック分野後進国」を取り戻すには、「異次元の取組みが必要」と報じています。

RapidusとLSTC体制で2030年までに市場規模100兆円目指す

次世代半導体プロジェクトはRapidusとLSTCの2本立て(出展:経産省サイト)
次世代半導体プロジェクトはRapidusとLSTCの2本立て(出展:経産省サイト)

年内に半導体技術の研究開発拠点:LSTC(Leading-edge Semiconductor Technology Center)も立上げ、研究開発はLSTC、製造はRapidusの2社体制で2030年までに市場規模100兆円を目指すそうです。

過去との差分

Rapidusが過去の半導体ファウンドリー設立と異なる点は、半導体ユーザ企業(ソフトバンク、デンソー、トヨタ自動車、NTT)が各10億円出資して参加している点と、Rapidus経営陣メンバーの本気度が高いことだそうです(2022年11月11日、日経xTECH)。

上記記事は、新会社への期待と不安も示しています。弊社も、RapidusとLSTCに注目していきたいと思います。

周回遅れの日本国内ワクチン産業との類似性

変異型COVID19と対応ワクチン
変異型COVID19と対応ワクチン

世界と国内の「10年遅れ」と類似する事象に、COVID-19国内ワクチン開発が「周回以上の遅れ」と指摘している記事があります。この記事も、対策には「抜本改革が必要」としています。

先端半導体研究開発とCOVID-19国内ワクチン開発、全く別分野ですが、両者の日本状況は良く似ています。

ワクチン不足から類推する先端半導体不足

ワクチン接種は、現在無料です。これは、政府が海外メーカからワクチンを買上げ、無料で国民に接種しているからです。

仮に、変異型ウイルス対応ワクチンが不足し、入手困難ならどうなるでしょう? 旧型ワクチンでは変異型に対して効果が期待できない場合などは、国内パニックになるでしょう。

これと同じことが、先端半導体不足でも生じます。多くの製品や車は、半導体が性能、製品差の決め手です。先端半導体を使えないことは、日本製の新製品や新車の魅力が無いのと同等になるでしょう。

この事態を避けるためRapidusとLSTCの異次元取組みに期待し、日本の10年遅れを挽回してほしいです。

海外最新半導体製造ニュース

  • TSMC米国アリゾナ工場、3nm製造の可能性(2022年11月15日、EE Times)
  • 独)Infineon、アナログ/ミックスドシグナル/パワー半導体を新工場で製造計画(2022年11月15日、EE Times)

海外半導体製造の最新ニュースを2件示します。この分野は、Rapidusの強力ライバルが着実に進出中です。

先端IoT MCUはRTOS開発

IoT MCU開発者スキルの階層構造
IoT MCU開発者スキルの階層構造

個人レベル開発スキルもまた、Rapidusや国内ワクチン産業と同様、異次元の取組みや抜本改革無しの方法では、海外との開発競争にすらなりません。

景気後退が懸念される今、個人の開発スキルを磨き、先端技術人材になりましょう!

IoT MCU分野では、RTOS開発が先端技術だと筆者は思います。JACOB’S BLOGの5 RTOS Design Best Practicesが、とても参考になります。

関連投稿:RTOSテンプレート骨格クリエイタ的エンジニア

本稿主旨は、「危機感は大切だが、あせりは禁物。お互い切磋琢磨しましょう」です。