FreeMASTERは、NXP組込みMCUのアプリケーションのリアルタイム変数モニタと、モニタデータの可視化ツールです。関連投稿:STマイクロエレクトロニクスのSTM32CubeMoniterとほぼ同じ機能を提供します。
NXP資料FreeMASTER Run-Time Debugging Tool – Overview を使ってFreeMASTERの特徴を示します。
FreeMASTERとIDEデバッガ機能差
FreeMASTERと、開発者が普段使うIDEデバッガとの差が一目で解る図がP13にあります。
両者の機能境界が、ソースコードのデバッグ機能です。IDE(MCUXpresso IDE)でも変数ロギングやグラフ化機能はありますが、プログラム開発者向けの最低機能に絞ったものです(limited functionality)。
これに対し、FreeMASTERは、msec分解能のグラフ化と、μsec分解能のデータ取得が可能です。更に取得データを利用し、Field-tune parametersやRemote controlなど多くの機能を持つツールです。データの取得は、MCU実装のUARTやUSB、SWD経由です。
FreeMASTERを使うと、外付け制御パネルの代替やGUIアプリケーションとしても活用できます。例えば、下図のようなモータ制御パネルが、PC上でFreeMASTERソフトウェアのみで実現できる訳です。
FreeMASTER構成
Windows PCにおけるFreeMASTER構成がP20です。詳細は、P21~25に示されています。Linux PCでの構成は、P26に示したFreeMASTER Liteが使われます。
MCU開発トレンド:ビジュアル化と脱Windows
組込みアプリケーションのビジュアル化は、最近のMCU開発トレンドです。
MCU本体の性能を使わずに変数データを取出し、そのデータを高性能PCとプラグイン機能を利用し、データ可視化やリモート制御を実現します。本稿で紹介したNXPのFreeMASTERやSTのSTM32CubeMoniterがこのトレンドをけん引する技術です。
また、オープンソースLinux PCへのMCU開発環境移行や各社IDEマルチプラットフォーム化、つまり脱Windowsもトレンドの1つです。
上級開発者向けというイメージが強かったLinux PCですが、一般ユーザへも普及し始めました(Wikipediaより)。筆者も昨年から、MCU開発Main-PCのWindows 10とは別に、Backup-PCにLinux Mintを新規インストールし試用中です。
半年間の試用では、OSインストール、大型/定期更新、セキュリティに関してもLinux Mintの方が、Windows 10より安定感があります。
もはや現状のWindows 10では、信頼性があったWindows 7のレベルにはならない気がします。
既存Windows 10に手を加えるよりも、新OSを開発するほうが、早道で、安心してPCを利用したい一般ユーザ要求も同時に満たせるのではないでしょうか? 商業的理由は、セキュリティ対応強化とすれば、内容不明ながら大多数の納得も得られるでしょう。※あくまで、ソフトウェア開発経験者個人の見解です。
NXP新CEO Kurt Sievers氏
2020年5月28日、蘭)NXPのCEOがリチャード・L・クレマー(Richard L. Clemmer)氏から、カート・シーヴァーズ(Kurt Sievers)氏への交代発表がありました。こちらのEE Times記事に新CEOカート・シーヴァーズ氏の経歴や、米中貿易摩擦下でのNXP中国分析などが示されています。
欧州MCUベンダNXPのアフターCOVID-19への布石、さすがに早いです。