IOWN 1.0提供開始

IOWN展開(出展:NTTサイト)
IOWN展開(出展:NTTサイト)

ベストエフォートのインターネットに対し、NTT専用線による品質保証:ギャランティーサービスIOWN(Innovative Optical and Wireless Network:アイオン)1.0が2023年3月16日から開始されました。

個人利用には価格(100Gbps月額料金198万円、初期設備費3万円)が高すぎますが、2030年以降のIOWN4.0では、インターネット並みの料金で利用できるかもしれません。

IOWN対インターネット

インターネットは、多重共用ネットワークです。従って、多重されたトラフィックにより自分のデータ遅延揺らぎは不可避、さらに強固なセキュリティも必須です。

そのセキュリティ対策は、ユーザみずから行う必要があります。対して、専用線は、ネットワーク側が通信品質を保証するなどセキュリティレベルは高く、ユーザのセキュリティ対策は、インターネットに比べると楽になると思います。

問題は、利用価格です。

IOWN専用線では、共用インターネットでは困難な魅力的IOWNサービス(後述)が提供され、かつ、APNと光電融合デバイスにより価格を抑え、かつ、将来の限界を超える特徴、つまり、低遅延、大容量、低消費電力(後述)があります。

ユーザセキュリティ費用、万一のセキュリティリスクも含め、専用線IOWNと共用インターネット、どちらが安全、安心で利用価格が安いのか、費用対効果検討が必要だと思います。

IOWNサービス

IOWNで期待されるサービスの実証記事がコチラです。

ロボットや自動車の遠隔制御、遠隔医療、e-スポーツや遠隔地間を繋ぐ同時演奏会など、大容量で低遅延、揺らぎ無しのIOWNサービスが提供されます。

IOWN特徴=揺らぎ無し低遅延+大容量+低消費電力

NTT技術ジャーナル2023.1によると、IoTによるデータドリブン社会は、膨大なデータ量やデータ処理サーバの膨大な電力消費増大に対して、限界が来るそうです。

この課題にAPN(All Photonic Network)サービスと、光電融合デバイスをボード接続→チップ間→チップ内と融合度を上げ、さらに、このデバイスをサーバへも適用することで、大幅な使用電力削減が可能となります(本稿最初の図参)。

IOWN4.0の目標は、電力効率100倍、伝送容量125倍、エンドエンド遅延1/200です。

IOWN特徴(出展:NTTサイト)
IOWN特徴(出展:NTTサイト)

まとめ

2030年度以降のIOWN4.0とインターネットの利用価格がどの程度になるかは、今のところ不明です。

それでも、IOWN1.0の利用決定会社/組織の記事(2023年3月3日、EE Times)を見ると、既に多くの有力企業が参加しています。

揺らぎ無し低遅延大容量IOWNが、新しいIoTネットワークサービスを生み、メタバースを推進するのは確かだと思います。IoT MCU開発者も注目しておく必要があります。

関連投稿:世界規模の宇宙センシング次世代ネットワークIOWN

次世代ネットワークIOWN(アイオン)

What's IWON(出展:NTTサイト)
What’s IOWN(出展:NTTサイト)

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)は、2030年実現を目指すNTTの次世代ネットワークです。

IOWN技術

大容量、低遅延の光伝送路。ネットワーク遅延や揺らぎ無し。データドリブン将来社会のデータ量や消費電力増加を解決。キーテクノロジが「光電融合デバイス」、などなど実現技術に興味がある方は、コチラの記事で解ります。

IOWNサービス

IOWNが提供するサービスの一例が、コチラの遠隔医療記事です。IOWNは、ネットワーク本来の目的、離れた場所との距離を感じさせない通信を提供します。

既存ネットワークで遅延や揺らぎが生じるのは、電気信号と光信号の変換回数が多いためです。電気に比べ減衰が少ない光伝送と、光と電気を融合した光電融合デバイス、これらにより電気と光の変換回数を減らし、IOWNのオールフォトニックス・ネットワーク(APN)を実現します。

APNは、低消費電力で大容量、高品質、低遅延で揺らぎの無い理想的な伝送サービスを提供します。

さらに、WirelessのIOWNは、宇宙空間や海中でも接続します。低軌道人工衛星を用いた宇宙RAN(Radio Access Network)や、地上IoT端末と衛星を接続する宇宙センシング、さらに、海中での高速無線通信による水中ドローンなども2030年頃のIOWN 4.0で可能になります。

早くもAMDは、宇宙空間でAI処理ができる宇宙グレードSoCの信頼性評価を完了しました。

宇宙統合コンピューティング・ネットワーク(出展:SKY Perfect JSATサイト)
宇宙統合コンピューティング・ネットワーク(出展:SKY Perfect JSATサイト)

TRONプロジェクトリーダ:坂村健氏も注目

2022年11月25日の記事では、TRONプロジェクトリーダ:坂村健氏が、多くのIoTセンサを組込んだスマートホームなどのICTインフラに、電力効率100倍、伝送容量125倍、レイテンシ200分の1のIOWNが大きなインパクトを与えると語ったことが記載されています。

スマートホームでこれほど高速、大容量の公衆ネットワークが安価に使えると、個人のPCストレージは、もはや全てクラウド上に置くことも可能な気もします。

IWON特徴(出展:NTTサイト)
IOWN特徴(出展:NTTサイト)

IOWNと2030年

2030年まであと8年。リモートワークや移動時、遠距離でも低電力、大容量、低遅延、遅延揺らぎ無しの通信ニーズは、今後益々高まります。

IOWNが、これらニーズを満たし現状ネットワークの様々なボトルネックを解消した新たなサービスの実現、開発インフラになりそうです。IoT MCU開発者もまた、IOWNと2030年に向けた進化が必要です。

関連投稿:2030年のエンジニア