情報機器大転換期

情報機器(PC/スマホ/IoTデバイスなど)のハード/ソフト/使い方が、大転換期です。原因は、生成AI革命。インターネット商用解放期に匹敵する気がします。

2024年も半分終わった今、見えてきた情報機器大転換期の現状をまとめました。1章と2章が、ソフトバンクの生成AI革命の考え方、3章以降が、現状という段取りです。

ソフトバンクのAIとAGI、ASI

人類叡智の10000倍能力のArtificial Super Intelligence(出典:記事)
人類叡智の10000倍能力のArtificial Super Intelligence(出典:記事)

ソフトバンク会長兼社長の孫正義氏が、2024年6月21日の定時株主総会で、ソフトバンクは、ASI(Artificial Super Intelligence)を実現するとASCII記事が掲載しました。記事を極簡単にまとめたのが本章と次章です。

AGI(Artificial General Intelligence=汎用人工知能)とは、人間の持つ考え方、知識の「一部を機能化」した現在のAIの親玉に相当し、人間と同じか最大でも10倍程度上回る「汎用の人工知能」。先端AI研究者のテーマがこのAGIで、5年以内、場合によれば3年ぐらいでAGI時代となる。

様々な天才同士が刺激しあい進化した人類と同様、AGI同士が刺激しあい、人類進化を加速するのがASI時代。ASIは10年前後でやってくる。孫氏が決めた指標では、人間の「1万倍程度の英知」。人類20万年史上、初めて圧倒的な人口知能となり、全常識が変わるのがASI時代。

例えば、スマートロボットがASIにつながると、工場生産や道路掃除、買い物や洗濯も代行可能。自動運転も、AIが技能学習し、一度も行ったことが無い場所でもスイスイ自動運転でき、大量生産や加工、物流などはロボットに置き換わる。

ソフトバンク孫正義氏が生まれた理由・使命は、このASI実現

ASI実現手段

ソフトバンクグループ総力でASI推進(出典:記事)
ソフトバンクグループ総力でASI推進(出典:記事)

孫氏は、更にASI時代の基盤技術の1つが、現在様々な情報機器へ半導体IP提供中のArmとしました(Arm株式9割近くをソフトバンクが保有中)。

Armの強みは、設計力と低消費電力稼働で、ASIの広がりに貢献。出荷数量は上がることはあっても、下がることはない。ASI実現のため、ソフトバンクグループ総力でArm AIチップ、AIデータセンタ、AIロボットへ取組む。

Armの将来を孫氏は信じている。

制御系ハードウェア転換

Arm IPコアは、本ブログ掲載Cortex-Mシリーズをはじめ、多くのMCUベンダハードウェアにも採用中です。MCUのエッジAI化に伴い、従来シリーズよりも更に高性能なCortex-Mコア:Cortex-M85搭載MCUも発売開始となりました。

Cortex-M85特性比較(出典:ARM)
Cortex-M85特性比較(出典:ARM)

PCは、Microsoft Copilot+ PCが2024年6月18日にワールドローンチされました。40TOPS以上のNPUが注目され勝ちですが、NPUを制御するCPUにも転換が起こりつつあります。

現在、Copilot+ PC要件を満たすCPUは、QualcommのSnapdragon X Eliteだけです。このCPUも、Arm IPコアを採用中(4章)です。他社に先駆けるArm設計力が表れています。

AI処理でPCよりも先行するAIスマホは、そのCPUの多くがArmライセンスのチップです。6月20日発表のAppleパーソナルAI Intelligenceハードウェア要件は、A17 ProチップとMシリーズです。iPhone 15/15 Plus非対応のため、90%以上のiPhoneユーザは、Apple Intelligenceを使えないそうです。

これら制御系ハードウェアの転換理由は、「AI処理を実用可能なレベルで高速実行するには、ハードウェアが肝心」だからです。

つまり、生成AI革命が、従来制御系の全ハードウェアを転換させつつあるのが、今です。

ソフトウェア転換

NPUなどのAI処理ハードウェアを活かすのは、ソフトウェアです。例えば、Copilot+ PCには、Recall、Cocreator、Live Captions、Windows Studio EffectなどのAI機能が標準で備わっています。

但し更に重要な点は、これら標準AI機能の基となるWindows Copilot Runtimeを活用し、新なAIソフトウェアが開発できること、しかもArmネイティブであることです。

※Armネイティブとは、汎用RuntimeがArm専用ライブラリのように無駄無く高速動作すること。

MacOSは、Arm化が進んでいます。Windowsソフトウェア開発も、下図が示す従来x86からArmネイティブソフトウェア転換を迎えているようです(詳細はコチラの記事参照)。

ArmはレガシーのPC(x86など)を大きく上回っているとアピール(出典:記事)
ArmはレガシーのPC(x86など)を大きく上回っているとアピール(出典:記事)

情報機器使い方転換

インターネット商用解放は、IT革命をもたらしました。ユーザは、PCやスマホなどの機器を使って、ネット上を検索し、情報を得るようになりました。ネットに溢れる情報の検索装置が、IT機器でした。

生成AI革命は、PCやスマホの使い方を、単なる検索装置からアシスタント代行へと転換させつつあります。つまり、より高度な情報解析や解析に基づいた提案ができる個人アシスタントとしての使い方です。

従来の情報機器を、人間的で簡単に使えるAIアシスタント化しつつあるのが、今です。

Summary:情報機器大転換期

クラウド・エッジ全基盤を提供するArm IP(出典:記事)
クラウド・エッジ全基盤を提供するArm IP(出典:記事)

生成AI革命でPC/スマホ/IoTデバイスなどの情報機器ハードウェア/ソフトウェア/使い方が、大きく転換しつつある2024年半分終了の今をまとめました。

制御系IP提供のArm株式9割保有中ソフトバンクの生成AI革命に対する考え方と、AI実用はハードウェアが肝心、ソフトウェアのArmネイティブ化、情報機器AIアシスタント化などの転換現状を示しました。

AI進化スピードは驚異的です。人間開発者も進化が必要です。現状マクロ把握のため本稿を作成しました。

Afterword:オープンソースハードウェアコア、RISC-V

Cortex-M代替として急浮上のRISC-V
Cortex-M代替として急浮上のRISC-V

ライセンス料が必要なArm IPコアの対極にあるのが、オープンソースハードウェアコアです。例えば、RISC-V。採用例は、ルネサスのRISC-V MCU/MPUや、EsperantoのAIチップに見られます。

RISC-V採用理由は、少数命令による低消費電力動作です。Arm同様、低電力動作ハードウェアの重要性が解ります。RISC-VかArmかのコア選択は、製品売上見込みとその投資額で決まると思います。

※MCU製品は、IPハードウェア以外にコンパイラ、デバッガなどソフトウェア開発ツールも必要。Armコアならツール入手も容易だが、オープンソースハードウェアコアはこれらもベンダ準備必要(関連投稿はコチラ)。

日本政府マイナンバーカード施策に、上記のような費用対効果検討が全く無いのは、原資が税金のため?😢


生成AI革命インパクト

生成AI革命は、GAFAMと呼ばれる現在のIT企業勢力図を変えそうです。米)The Atlantic分析では、新勢力は、GOMA。2024年2月16日のプレジデント オンライン記事が、「Google+Anthropic」対「Microsoft+OpenAI」と解説しています。

生成AI革命によるIT企業、半導体産業、MCUベンダへのインパクト記事をまとめました(生成AI革命はAfterword1参照)。

※2月23日金曜が天皇誕生日で休日のため、木曜先行投稿します。

Summary:生成AI革命インパクト

生成AI革命は、企業、産業、生活など全てにインパクトを与えそうです。例えば、人々のネット利用は、従来の検索型からChatGPTと生成AIによる会話型へ変わるでしょう。会話型に慣れると、検索型へは戻れないからです(検索/会話型はAfterword2参照)。

このようにChatGPTと生成AIは、人間へ優れたAIとのインタフェースを与えます。しかも、AI進化・学習スピードは、人間の比ではありません。

企業サービス利用者は、このAIを上手く使えるか否か、つまり、AI活用性が重要な選択肢になるでしょう。

一方、サービス提供企業は、利用者のAI活用欲求を満たさないと、企業衰退の可能性があることを本稿の各記事は示しています。

GAFAMからGOMAへ

生成AI革命がGAFAMからGOMAへ変える
生成AI革命がGAFAMからGOMAへ変える

GOMAは、Google、OpenAI、Microsoft、Anthropicの頭文字です。

米)Anthropicは、2021年設立のAIスタートアップ企業で、当時OpenAI研究担当副社長ダリオ・アモディ氏らが、MicrosoftとOpenAI協業方向の違いから退き設立した会社です。そして、Anthropicの協業先は、Googleです。

GAFAMからGOMAへ変わる理由は、AIの開発・運営費用が、従来の検索型コストの10倍かかるからです。このコストを賄いつつも、AIがどの程度利益を生み出すかは、現状不透明です。

このリスクを承知の上でAIを牽引できるのは、検索大手2社、GoogleとMicrosoftだけです。その結果、The Atlanticは、GAFAMからGOMAへ変わると分析しています。

ChatGPTに無償/有償版があり、生成AIのGPTモデルもGPT-3.5/GPT-4など選択肢が出てきたのは、10倍コストが背景にあります。

Microsoft)Copilot対Google)GeminiのAI活用コストパフォーマンス競争が始まりました。

半導体産業インパクト

半導体産業を根本から変える規模のAI半導体開発計画
半導体産業を根本から変える規模のAI半導体開発計画

米)OpenAI CEO解任/復帰劇があったSam Altman氏は、2024年2月12日~14日、アラブ首長国連邦)ドバイのThe World Governments Summit 2024で、GPT-4の次世代モデルGPT-5に言及しました。

さらにSam Altman氏は、日本GDPの約2倍、最大7兆ドル規模の「AI半導体開発計画」を画策中だそうです。

これは、半導体産業を根本から変える規模の計画です。

IntelやAMDもAI専用プロセサ:NPU内蔵CPUを相次いで新発売し、GAFAM各社も、独自AI向けプロセサを開発中です。生成AI革命には、大量のAI半導体が必要になるのでしょう。

2023年売上が約5270億ドル、2030年には、約1兆ドル見込みの世界半導体売上は、AI関連で占められるかもしれません。

MCUベンダインパクト

自動運転(出典:政府広報オンライン)
自動運転(出典:政府広報オンライン)

半導体生産を担うMCUベンダも、最近、組織再編ニュースが多いです。例えば、STマイクロルネサスなどです。その背景を推測しました。

産業向けMCUに比べ好調な車載向けMCUは、制御系と車載IT系の大きく2に分かれSDV(Software Defined Vehicle)を進化させつつあります。車載IT系は、AIとの親和性が高く、自動運転などのAI化は、MCUベンダ製品系列を大きく変える可能性があります。

MCUベンダの組織再編は、生成AI革命による変化の前兆かもしれません。

Afterword1:生成AI革命とは?

ChatGPTと生成AIの出現は、生成AI革命と呼ばれます。それは、ブラウザ経由(CopilotまたはGemini)で、人間対人間のように会話でAIへ質問し、結果(回答)を引出すことができ、しかも、全分野でAIが回答できるからです。まさに革命的です!

関連投稿:生成AI活用スキル

Microsoft Copilot対Google Gemini
Microsoft Copilot対Google Gemini

Afterword2:検索型から会話型へ

ネット利用は、従来、検索が大部分でした。Google)ChromeやMicrosoft)Edgeなどのブラウザは、「キーワード」入力に対する検索出力の正確さ・速さを競いました。

しかし、利用者が本当に知りたいのは、ブラウザ検索出力では無く、検索出力を分析した結果です。この分析は、利用者自身が行いました。つまり、検索型で「結果」を得る方法は、下記でした。

キーワード入力→検索出力の利用者分析→結果

ところが、ChatGPTと生成AIは、初めから利用者が知りたいことを「質問」としてネットへ入力できます。ネットで会話しながら追加質問もできます。会話型で「結果」を得る方法は、下記です。

質問入力→結果

検索型よりも知りたい結果が、直接得られます。ネット利用が検索型から会話型へ進化し、AIとの会話に慣れると検索型へ戻れない理由です。