開発ツールのバージョンアップ時は、バックアップ必須

CubeSuite+が、V1.01.00からV1.02.00へバージョンアップされました。オートアップデータや、HEWプロジェクトを、CubeSuite+へ変換する機能などが追加されました。

開発ツールのバージョンアップ時には、障害が付き物です。今回も、旧版では何の問題もなく動作していたターゲットボードへ、新版出力をダウンロードすると、何やら怪しげな致命的エラーが発生しました。原因は調査中です。

この原因を追究して復旧する作業と、開発を続ける作業は、全く別物です。開発が切迫している時などは、割り切りが必要です。この適切な割り切りが冷静にできるが否かが、経験者と初心者の一番の違いでしょう。R8C/25のブログで書いたように、ツールが安定している事は、全ての開発者にとって、精神的にも製品にもプラスに働きます。しばらくは、旧版に戻して開発を続けるつもりです。

開発者のみなさん、バージョンアップの際には、リカバリできるようにくれぐれもバックアップを忘れずに!

RL78/G13のRAMの使い方

R8C/25比、2倍に増えたRL78/G13の4KB RAMの使用方針を示します。RAMは、

  • 関数間のインタフェースRAM
  • 関数/ライブラリの内部変数
  • スタック

として使います。スタックと関数/ライブラリの内部変数は、コンパイラが勝手にRAMへ割り付けます。プログラマは、それらの使用量を知っていれば十分です。関数間のインタフェースRAMとは、自作する関数どうしの入出力変数の入れ物です。

関数は、void main(void)のように、入出力変数が無いものもありますが、一般的には、入力変数を、プログラムで処理し、その結果を出力変数へ変換します。この出力変数が、期待値と異なる場合、プログラムを変えたり、入力変数を変えたりします。この作業が、関数の単体デバッグです。

全ての入出力変数をインタフェースRAMで定義すると、この関数単体デバッグが、格段に簡単になります。RL78/G13の開発ツールCubeSuite+は、RAM値の表示と、その変更がツール上で簡単にできるからです。昔のRAM容量が少ないマイコンを知っているプログラマは、この方法に抵抗があるかもしれません。しかし、今のマイコンには、大容量RAMが内蔵されています。RAMをケチらずに使ってデバッグ効率を上げるのが、最新マイコンに適したRAM使用方法です。

私は、R8C/25(2KB RAM)と開発ツールHEWでもこの方法を使っていますが、これまでRAM容量の不足を感じたことはありません。また、RL78/G13では、アクセス頻度が高い変数を、ショート・ダイレクト・アドレッシング:sreg領域(147バイト)へ配置すると、通常RAMよりもさらに高速動作が可能です。デバッグの容易性と、高速化、この2つを同時にかなえる方法と言えるでしょう。

1関数のソースの長さは、お使いのモニタの縦の長さ以下、が良いでしょう。関数をモニタで表示した時に、初めから終わりまでが、一目で見えるからです。誰かにデザインレビューをお願いする時や、自分でデバッグする時も、この程度のソース長が適当です。プログラムを書いていて、ソースが長くなったら、この目安を守るように、入出力変数を見直して関数化すると良いでしょう。

RL78/G13のソフト構造

ソフト構造は、タイムシェアリングとイベントドリブンの2つに大別できます。

タイムシェアリング構造のメリットは、初級~中級レベルの相手に説明した時の、相手の判りやすさと、デバッグが容易なことです。イベントドリブンは、デバッグ時にイベントを発生させることが困難なことが多いので、初心者向きではありません。RL78の大容量のROM/RAMを効果的に使うと、シンプル機能の関数でタスク作成が可能となります。

タイムシェアリングソフトは、イニシャル処理、電源断処理、起動処理、UART1処理の4処理から構成します。この構成でテンプレートを作成します。このテンプレートに、タスクを組込み、ソフトを作り上げます。

RL78/G13ソフト構造
RL78/G13ソフト構造

タスク組込みの時に検討するのは、タスクの処理時間精度と、どの起動処理で起動するかの2点のみです。 

CubeSuite+「コード生成」の使い方

開発環境CubeSuite+の「コード生成」を使うと、周辺機能変更やマイコン機種変更が生じても追加コードをそのまま使え、しかも、初期設定も自動生成します。そこで、このコード生成の使い方を解説します。

CubeSuite+コード生成出力
CubeSuite+コード生成出力

ポイント1:出力ソースの、/* Start user code… */から/* End user code… */間にのみ、追加コードを記述すること。それ以外は、周辺機能パラメタ変更や機種変更時、「コード生成」が自動生成し、上書きするからです。

ポイント2:5か所ある、/* Start user code… */から/* End user code… */使い方ガイドラインは、

  • ①:#pragama指令を追加するエリア(通常、ほとんど無いでしょう)
  • ②:追加関数のプロトタイプ宣言エリア(コード生成出力の関数プロトタイプは、周辺名.hで宣言済み)
  • ③:定数、グローバル変数、追加関数の記述エリア(このエリア内なら、自由に記述可能です)
  • ④:コード生成出力関数に追加記述するエリア(関数名は自動生成されるので、追加分の中身を記述)
  • ⑤:機能は③と同じ(③と⑤のどちらか一方を使う方が良いでしょう)

どこに何を記述すべきかのガイドラインがあると、ソース解読が判りやすくなります。

RL78/G13の選定理由

RL78/G13は、R8C/2xの後継機であり、価格、性能、開発環境が向上しました(R8C/25の直系後継機は、RL78/G14ですが、より早くリリースされ、低価格のG13をここでは選びました)。

評価項目 解:RL78/G1352ピン、10×10mm0.65ピッチ 従来R8C/25

入手性の良さと低価格

DigiKeyにて¥350前後で販売中

(2012年4月現在)

22%価格改善

高性能で大容量

32MHz動作

ROM/RAM/データフラッシュ=64KB/4KB/4KB

160%性能向上

200%容量増大

無償開発環境の良さ

統合開発環境 CubeSuite+

コード自動生成機能追加

汎用性と拡張性

IOピン数が程ほどで、手実装も容易

同左

特筆すべきは、開発環境のCubeSuite+。初期設定を自動生成するので、アプリ開発にすぐ着手できます。従来は、ハードウエアマニュアルを読み、初期設定を自作していました。ソフト処理や手順を文章で記述すると、簡単な事でも冗長になるので、結構厄介でした。アプリ開発に着手したいのに、前段階でつまずく事もしばしばあり、ここが改善されたのは効果大です。

Tips:サンプルコードのデータベース化

RL78関連の情報は、Runesasサンプルコードで集めます。サイト掲載のサンプルコードを簡単にデータベース化する方法を示します。

  1. コード検索後、検索部分のみをマウスで全部選択
  2. 空のExcelBookへ貼り付け(←Excel2010で動作確認)

これで簡単にExcel化できます。リンクも自動的に張られますので、ダウンロードも簡単です。Excel化してあるので、独自コメントなども追加できます。

サンプルコードは、宝の山です。これらを効果的に活用するには、簡単に作成できる独自データベースも有効手段です。