デイビッド・ウォン著、⾼橋 聡 訳、⽇経クロステックの4記事:暗号技術の要旨をまとめました。
組込み開発と暗号技術
暗号技術は、数学が基礎です。暗号を使えば、秘密が守られることを科学的に立証する必要があるからです。しかし、暗号を使う立場の組込み開発者は、数式よりも、暗号の仕組み理解の方が重要です。
仕組み中心の暗号技術解説記事が、下記⽇経クロステック4記事です。組込み開発 基本のキ、暗号仕組み理解に丁度良いと思います。各記事の要旨を抜粋します。
内容 | 発行日 |
秘密鍵の仕組み | 2022年7月7日 |
ケルクホフスの原理 | 2022年7月8日 |
公開鍵暗号の仕組み | 2022年7月12日 |
RSAデジタル署名 | 2022年7月13日 |
秘密鍵の仕組み
誰にでも読める平文を、暗号文へ変換する時に使う鍵が、秘密鍵。暗号文を元の平文へ復号する時も「同じ秘密鍵」を使う。
この送受双方の同じ秘密鍵利用が、対称秘密鍵暗号方式。送受参加者が多いと、鍵が漏洩するなど実用性低下の欠点もあるが、古代より使われてきた。
ケルクホフス原理
暗号/複合時に用いるアルゴリズムは、一般に公開しても良い。例えば、ウェブページ閲覧時のAES(Advanced Encryption Standard:⾼度暗号化標準)など。
公開アルゴリズムのセキュリティを保証する手段が、秘密鍵。
公開鍵暗号の仕組み
送受それぞれ「別の秘密鍵」と、「公開できる鍵」の2種類を使うと、送信側の秘密鍵が受信側で計算可能。これが、「非対称」の公開鍵暗号方式で、対称秘密鍵暗号方式の欠点を解消。
記事の公開図形と秘密鍵の計算例が解りやすい。
但し非対称公開鍵暗号方式は、第3者による公開鍵すり替えが可能なので、信頼性の問題は解決されない。
RSAデジタル署名
信頼性問題を解決するのが、デジタル署名。公開鍵を使って、送信者の署名が本物か偽物が検証可能。RSA以外にもデジタル署名方式あり。
このデジタル署名と非対称公開鍵暗号方式の両方を使うのが、現代の暗号化アルゴリズム全体像。
まとめ:仕組み理解でセキュリティ進化へ順応
インターネットに接続するIoT MCUには、通信セキュリティ対策は不可欠です。MCU開発側からすれば、当該セキュリティライブラリを、開発ソフトウェア/ハードウェアへ組込めば完了と思いがちです。
しかしながら、セキュリティ対策には、終わりがありません。新攻撃に対し、新たな暗号方式が登場します。MCU開発者が、複雑・高度化する暗号技術へ対応し、セキュリティ進化に追随するには、その仕組み理解は欠かせません。
本稿は、現代暗号化アルゴリズム、非対称公開鍵暗号方式とデジタル署名を説明しました。古代からの暗号技術は、インターネット出現により高度で複雑化しました。要旨の抜粋で判り難い箇所は、元記事も参照してください。
組込み開発 基本のキ:暗号技術の仕組みを理解し、IoT MCUセキュリティ進化へ順応しましょう。
組込み開発 基本のキ 過去投稿
組込み開発 基本のキ:組込み処理
組込み開発 基本のキ:RTOS vs. ベアメタル