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FreeRTOSサンプルプロジェクトfreertos_generic詳細

前稿の弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートのベースとなったMCUXpresso SDK付属FreeRTOSサンプルプロジェクトfreertos_genericの詳細、主にソフトウェアタイマ関連とその用途を説明します。

freertos_genericのHook関数とFreeRTOSConfig.h

Step5:FreeRTOS低電力動作

前稿Step5でOSアイドルタスクの「Hook関数」にWFI()を追記し、FreeRTOSに低電力動作を追加しました。ベアメタル開発者には馴染みの少ないHook関数とは、MCU開発者がOSに独自処理を追加する仕組み(Wikipedia)です。ハッカーに悪用される危険性もありますが、元のOSソースはそのままで動作を変更できる便利な機能です。

freertos_genericは、このアイドルタスクの他に、スタックオーバーフロー、マロックエラーと、ソフトウェアタイマの周期割込みに後述のHook関数を用いています。スタックオーバーフローやマロックエラー発生時は、Hook関数内でMCUが動作停止しますので、対策検討の手始めになります。

これらソースコード内に記述したHook関数を有効にするには、FreeRTOSConfig.h内のマクロ設定が必須です。試しに、Step5で追記したWFIへブレークポイントを設定し、FreeRTOSConfig.hのconfigUSE_IDLE_HOOKマクロを1以外に設定するとWFIでブレークしません。configUSE_IDLE_HOOKを1に戻すと、当然ですがブレークします。

このように、ソースファイル記述よりも「FreeRTOSConfig.hのマクロが優先」されます。これが、前稿でFreeRTOSConfig.hを最重要ファイルとした理由です。

万一FreeRTOSConfig.hに記述ミスがあると、開発者が所望処理をソースへ加えても、何も無かったかのようにFreeRTOSは処理します。

そこで前稿新規プロジェクトのStep4で示したfreertos_genericのFreeRTOSConfig.hを上書きコピー後、オリジナルと内容一致を確認するのが良いと思います。但し、MCUXpresso IDEのColors&Fontを、例えばメイリオ11Pへ変えると、インデントやタブ表示なども変わるため見易く修正を加えた場合、Consolas利用のオリジナルと完全一致では無くなります。

Notepad++のCompareプラグイン実行結果。スペースが異なっても内容同じなら黄色、異なれば赤表示。

そんな時に役立つツールが、Notepad++のCompareプラグイン機能です。コード内容が一致していれば挿入スペース数などが異なっても黄色、内容自体が異なれば赤で表示されるので、一目でソースコード内容差が判ります。筆者は、この機能を使ってFreeRTOSConfig.h記述ミスを回避しています。

freertos_genericソフトウェアタイマISRのHook関数

ソフトウェアタイマは、tick間隔2msの周期割込みを発生し、このISRがvExampleTimerCallback関数、このHook関数がvApplicationTickHookです。

vApplicationTickHookで2ms割込み発生を500回カウント後、イベントセマフォをprvEventSemaphoreTaskへ送出、イベントセマフォを取得したprvEventSemaphoreTaskが1秒毎に”Event task is running”をコンソールへ出力します。

freertos_genericソフトウェアタイマ処理の流れ

vExampleTimerCallbackへのコード記述を少なくするのは常套手段で、ベアメタル開発でもFreeRTOSでも同じです。通常は割込みフラグクリアなどを行いますが、リロードタイマですのでvExampleTimerCallbackはカウンタインクリメントのみを行っています。

Hook関数vApplicationTickHookの500回カウント判断を変更すれば、2ms分解能で任意間隔のイベントセマフォ送出が可能です。これは、SWチャタリングやADCノイズ対策などの周期処理同期に最適です。

イベントドリブンが基本のFreeRTOSですが、割込み処理によりSWチャタリング対策を行うよりも、ソフトウェアタイマとそのHook関数を利用した周期ポーリング処理で行う方が簡単なのが判ります。

freertos_genericの原本

freertos_genericは、FreeRTOS DemoのHardware Independent FreeRTOS exampleがその原本です。原本には、より詳しい英文解説が付いています。また、前章のイベントセマフォによるタスク同期に比べ、45%高速でRAM使用量も少ないタスク通知方法など、FreeRTOS機能強化やTipsなど開発者向け情報も満載です。

6E販売開始予定の弊社FreeRTOSアプリケーションテンプレートを入手後、この開発者向け情報を活用し、FreeRTOSの更なる基礎固めと習得をお勧めします。

なお原本とfreertos_genericには、異なる動作箇所もあります。例えば、FRO:Free Run Oscillator=12MHz、System Clock=96MHzなどです。これはHardware Independentな原本を、LPCXpresso54114動作用にポーティングした結果、生じた箇所です。この部分が、freertos_genericに明記されていない場合もありますので、参照時には注意してください。

弊社は、NXP以外のMCUベンダCortex-M4クラス向けFreeRTOSアプリケーションテンプレートにも、このベンダ非依存のHardware Independent FreeRTOS exampleをベースとして使う予定です。

同一アプリケーションによるベアメタルとFreeRTOS比較が出来る特徴に加え、同一ベース利用によりベンダ間(例えば、STマイクロエレクトロニクスやCypressとNXP)のFreeRTOSアプリケーション開発比較も可能となると考えています。

freertos_genericソフトウェアタイマまとめ

開発中のNXP)LPCXpresso54114向けFreeRTOSアプリケーションテンプレートのベース、MCUXpresso SDK付属FreeRTOSサンプルプロジェクトfreertos_genericのソフトウェアタイマを説明しました。

ソフトウェアタイマのISRフック関数により任意周期イベントセマフォ送出が可能で、イベントドリブンが基本のFreeRTOSにおいて、SWチャタリングやADCノイズ対策などの周期ポーリング処理を行うのに適しています。

ソースコードに記述したフック関数は、FreeRTOSConfig.hのマクロ設定で有効になります。設定ミスを避けるため、オリジナルとの設定内容比較にNotepad++のCompareプラグイン機能を使いました。

なお、freertos_genericのQによるデータ送受信機能は、後半部分として別稿で説明する予定です。

あとがき

MCU開発初心者~中級の方が対象の販売中Cortex-M0/M0+/M3コアMCUテンプレートとは異なり、本稿Cortex-M4コア利用FreeRTOSアプリケーションテンプレートは、ベアメタルMCU開発経験を既にお持ちの方を対象としています。
※投稿内容と対象MCUは、コチラの一覧表を参照してください。

そこで本稿は、ベアメタルとFreeRTOS開発の差分などに関する説明は加えますが、ベアメタルは既知の内容として説明を省略しています(筆不精で、すいません😌)。

投稿内容が判りにくい場合やご質問などは、customerservice@happytech.jpへお寄せください。

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