FreeRTOSデバッグは、ベアメタルソフトウェアデバッグと異なる準備が必要です。
幸いなことに、前稿で示したMCUXpresso54114評価ボードとSDK付属FreeRTOSサンプルコードを使ってMCUXpresso IDEでFreeRTOSデバッグを行う場合は、この準備がサンプルコードやIDEデバッガに予め設定済みです。何もせずに直にデバッグができます。
FreeRTOSデバッグ準備
但し、LPCOpenライブラリFreeRTOSサンプルコードを利用する場合や、FreeRTOSソフトウェアを自作する場合には、この事前準備を知らないとFreeRTOSデバッグができません。
※LPCOpenライブラリと下記MCUXpresso IDE FreeRTOS Debug Guideも前稿参照。
MCUXpresso IDE FreeRTOS Debug Guideの2章に、準備理由や追加設定個所が詳細に記載されています。
- デバッグリンクサーバー(CMSIS-DAP)のAll-Stopモードへ切り替え ※デフォルトはNon-Stopモード
- FreeRTOSカーネルソースコード修正 ※SDK付属サンプルコードは修正済み
- メモリ使用法の設定
上2つは、IDEでFreeRTOS本体動作確認のための設定、メモリ設定は、限られたMCUメモリの活用方法でheap_1~5まで5種類あります。
これらは、ベアメタル開発とは異なるFreeRTOS利用オーバーヘッドで、メモリ使用法は、動作するMCU毎に異なりノウハウが必要になると思います。MCUXpresso54114評価ボードSDK付属FreeRTOSサンプルコードのメモリ使用法は、調査します。
FreeRTOSサンプルコード:タスク数=1
MCUXpresso54114 SDK v2.7.0の11個あるFreeRTOSサンプルコードを、タスク数で並び換えたのが下表です。本稿は、タスク数=1のFreeRTOSプロジェクトを調査します。
FreeRTOSソフトウェア開発は、タスク数が少ない方が理解し易くタスクプライオリティ設定も不要です。この中では、freertos_swtimerが一番簡単、下方につれて複雑なプロジェクトになります。
Project | Tasks | heap_ | Additional FreeRTOS APIs (Bold) | Additional Comments |
freertos_swtimer | 1 | 4 |
xTaskCreate |
IDE Console出力 |
freertos_hello | 1 | 4 |
xTaskCreate |
IDE Console出力 |
freertos_usart | 1 | 4 |
xTaskCreate |
Usart 115200bps 8-Non-1送受信 |
※heap_4:断片化を避けるため、隣接する空きブロックを結合。絶対アドレス配置オプション含む。
※FreeRTOS API接頭語x/v:API戻り値型を示し「v」がvoidを、「x」が結果コードまたはハンドルを返す。
サンプルコード利用FreeRTOS APIと、Doc>readme.txtのProject説明へ付け加える内容をAdditional Commentsに記載しました。太字以外のFreeRTOS APIは、マイコンRTOS習得2017で説明済みのため、本稿では省略します。
xTimerStartは、ユーザ作成ソフトウェアタイマの動作開始FreeRTOS APIです。
IDE Consoleは、ソースコード内へマクロ:PRINTFを挿入すると、IDE下段Console窓へ数値や文字列などの入出力が簡単にできる機能です。
FreeRTOS Project:main()
ベアメタルmain()と同様、初期設定+無限ループの構造です。
差分は、タスク登録とスケジューラー起動から成るFreeRTOS初期設定が、評価ボード初期設定後に加わることです。
FreeRTOS Project:freertos_swtimer
ユーザ作成の1秒ソフトウェアタイマ割込み(SwTimerCallback)を使って、Console窓にTick文字を出力します。タスク登録直後、xTimerStartでユーザタイマをスタートしています。
例えば、ユーザ入力待ちの開始時にxTimerStartし、ユーザ反応が何もない時のタイムアップ処理などに使うと便利です。
FreeRTOS Project:freertos_hello
タイトル出力など1回限りのConsole窓出力に便利です。hello_taskは、出力後、vTaskSuspendで待ち状態になります。タスク正常終了後は、vTaskSuspend処理が一般的なようです。
FreeRTOS Project:freertos_usart
UART0の115200bps 8-Non-1を使ったVirtual COMポート送受信タスクです。受信リングバッファ利用で4B受信後に受信文字をエコーバックします。4Bまとめてのエコーバックは、1B毎よりも効率的です。
例えば、処理途中で割込みなどの他処理が入っても、受信リングバッファ利用で取りこぼしデータがなく、かつ、RTOSが処理中断/再開を行うので、このような記述がFreeRTOSマルチタスク動作に好都合かもしれません。
ベアメタル開発にはないRTOSソフトウェア開発ノウハウの可能性があります。
※筆者自身RTOSは初心者です。本調査結果は、FreeRTOS APIレファレンス等も参照して記述しておりますが、多分に上記のような推測の域があることはご容赦ください。
FreeRTOSサンプルコード:タスク数=1の調査結果
- FreeRTOS初期設定(タスク登録とスケジューラー起動)が、評価ボード初期設定後に追加
- PRINTFを活用したFreeRTOSタスク単体デバッグの手本
- タスク正常終了後は、vTaskSuspend処理
- UART0利用VCOM送受信タスク(uart_task)は、移植性が高く、流用・応用が容易
- メモリ使用法は、heap_4を利用
ここで示したFreeRTOSサンプルコードは、MCUXpresso54114評価ボードがあると動作確認が可能ですが、無くてもMCUXpresso IDEをPCへインストールすれば、どなたでもコストがかからず参照頂けます(インストール方法は、関連投稿:NXPマイコン開発環境更新を参照)。
普段NXPマイコンをお使いでない方も、MCUXpresso IDEをインストールしFreeRTOSサンプルコードをご覧ください。不要になった後は、IDEアンインストールも簡単です。
以降のFreeRTOSサンプルコード関連投稿は、お手元に上記開発環境があるものとして説明いたしますので、よろしくお願いいたします。