
AI PCの要は、CPU/GPU/NPUなのでその性能を示すTOPS値が注目されます。しかし、AI時代の隠れ主役はDRAM(Dynamic Random Access Memory)が解る2記事を紹介、簡単にまとめました。
AI時代の隠れ主役はDRAMが解る2記事
- DRAMの歴史から最先端、そして未来へ、2026/06/15、マイナビニュース
- AI学習モデルでメモリが重要な理由、2026/07/01、マイナビニュース
記事1は、DRAMの変遷とAI時代におけるDRAMの役割について記述しています。記事2は、AI処理の隠れ主役DRAMの3つの壁:容量、速度、帯域と、壁打開の新技術について詳しく説明しています。
著者の白竹 茂氏は、メモリ分野の長い開発経験を持つMicron社DRAM部門責任者の方ですので、記事は読み応えがあります。そこで、DRAMの3つの壁と打開新技術について次章から簡単にまとめます。
AIモデル肥大化と3つのDRAMメモリ壁
生成AIの進化は、人間の脳を模倣した「パラメータ」の数に依存します。このパラメータ数は数千億から数兆に達し、モデル自体が数百ギガバイトの巨大なデータ塊となります。
この巨大モデルを瞬時に展開し、プロセッサ(CPU/GPU/NPU)が超高速アクセスできなければ、AIは「思考」を始めることすらできません。ここで直面するのが、DRAMの「容量」、「速度」、「帯域」という3つの物理的メモリの壁です。
- 容量の壁:AI知識量を決定するワーキングメモリの広さ
AIモデルのパラメータ数が増加するとモデルを単一メモリに収めることが困難になってきます。
例えば、一度に学習するデータ量「バッチサイズ」を大きくすれば、並列処理の効率は上がりますが、その分だけ広大なメモリ容量が必要になります。メモリの容量不足は、モデルを複数メモリに分割配置するなどの高度で複雑な対策を強いることになります。
これらパラメータ調整が、AIの学習プロセスでは絶大な影響を与えます。「広大なワーキングメモリ(=作業机)」があれば、調整が上手くでき最適なAI学習が可能です。
- 速度の壁:プロセサ空き時間をゼロにする
プロセサが計算を行う際、上記DRAMの「作業机」からデータを取り出し、書き戻す作業を絶えず繰り返します。このDRAMアクセスの遅延(レイテンシ)が大きいと、超高速なプロセサであってもデータ待ちによる「空き時間」が生じ、処理能力が著しく低下してしまいます。
- 帯域の壁:AIシステム性能を決めるデータ転送太さ
たとえプロセッサの計算能力が無限であっても、メモリからデータを供給する「通り道」が狭ければ、深刻な渋滞が発生します。これが帯域の壁です。
特に複数プロセサでモデルパラメータをどう修正すべきかという方向性(勾配情報)を同期する際、このプロセサとメモリ間の帯域不足は、AIシステム全体性能の決定要因となります。
DRAMメモリ壁の打開策
DRAM開発現場では、これらのメモリの壁を「ソフトウェアの工夫」で乗り越える試みが続いています。 例えば、メモリ不足(Out Of Memory)でエラーが出る場合は「勾配累積(Gradient Accumulation)」という手法を使います。これは、小さなバッチで計算した結果をメモリ上で足し合わせることで、少ないメモリ容量のまま、実質的に大きなバッチサイズで学習したのと同じ効果を得るテクニックです。
一方、このメモリの壁を「ハードウェア側から打ち破る新技術」:切り札として期待されているのが、HBM(High Bandwidth Memory)とCXL(Compute Express Link)です。
- HBM: DRAMを3次元的に積層し、プロセッサのすぐ隣に配置することで物理的な距離を短縮。最新のHBM4では2TB/sという驚異的なデータ転送を実現しています。
- CXL: CPUやGPUがそれぞれのメモリ空間を共有できるようにする新規格です(ユニファイドメモリアーキテクチャ)。これにより、個別のデバイスに縛られない柔軟な「容量の壁」の突破が可能になります。
Summary:AIの隠れ主役はDRAM:「3つの壁」と新技術
AI時代の隠れ主役DRAM記事を紹介し、AI進化の運命を握る「3つの壁」とこれらを打開する「ハードウェア新技術」を示したのが最初の図です。
DRAMは単なるプロセサの一時記憶装置ではなく、AI思考速度と深さがDRAM性能に直結し、膨大なAIデータをプロセサへ供給する「隠れた主役」です。DRAM性能を理解し、パラメータバランス最適化が、次世代AI開発の成否を分ける鍵となる、とメモリ大手Micronの白竹 茂氏は解説しています。
Afterword:高性能DRAMは引っ張りだこ
メモリ価格高騰の背景は、AIシステムの総合性能を決めるのが容量、速度、帯域の壁を破った高性能DRAMメモリだからです。現在クラウド側は、メモリ高性能化を急速に進めています。エッジ側メモリ価格が落ち着くまでは、暫く時間が必要でしょう。
