
Microsoft Surface搭載Snapdragon X Elite (45TOPS NPU)の後継製品、Snapdragon X2 Eliteは、80TOPS NPU、CPU/GPUも50%以上の大幅性能向上が発表されました(日経XTECH、2025年9月23日)。
GoogleクラウドAIのGeminiを使ってこのSnapdragon X2 EliteのCPU/GPU/NPU総合TOPSを推定したところ、現在最強のRyzen AI Max+ 395の126 TOPSと同等かそれ以上と評価しました。
Snapdragon X2 EliteとSnapdragon X Elite性能比較
Snapdragon X2 Elite大進化理由(PC Watch、2025年9月26日)によると、Snapdragon X2 Eliteは、前世代Snapdragon X Eliteより以下の点で大きな進化を遂げています。
- NPU性能:Snapdragon X Eliteの45TOPSをSnapdragon X2 Eliteは80TOPSへ強化
- 全性能向上:Snapdragon X2 EliteのCPU/GPU/NPUどれも50%を超える性能向上実現
- 製造プロセス:3nmプロセス移行により同一消費電力での性能向上を実現
- CPUアーキテクチャ:前最大12コア均質構成から、最大18コアヘテロジニアス(不均一)構成(Oryon Primeコア含む)へ刷新
- メモリアクセス帯域:帯域幅を拡張しAI処理実効性能向上に寄与
これら大幅性能向上は、SurfaceなどのARM64コアCopilot+ PC性能を飛躍的に向上させることが目的です。
Snapdragon X2 Elite総合TOPS推定
Qualcomm社は、Snapdragon CPUやGPUのAI処理能力をTOPS値で公式発表はしていません。そこで、クラウドAIのGemini(2.5 Flash)を使って推定した結果が下表です。
コンポーネント | 公開値 / 推定値 |
NPU (Hexagon NPU) | 80 TOPS |
GPU (Adreno GPU) | 20∼40 TOPS (推定) |
CPU (Oryon CPU) | 5∼10 TOPS (推定) |
総合 TOPS (推定) | 約 105∼130 TOPS |
各コンポーネントのGemini推定根拠が下記です。
GPU(Adreno GPU):GPUはNPUに次いでAI演算能力が高いコンポーネントです。高性能なiGPUは数10TOPSのAI性能を持つことが知られています。Snapdragon X2 EliteのAdreno GPUは大幅に強化されており、性能効率が2.3倍向上していることから、20 TOPS〜40 TOPS程度のAI演算能力を持つと推定します。
CPU (Oryon CPU):CPUもAI演算に使用できますが、NPUと比較するとTOPS値は低めです。競合AMDや高性能x86 CPU傾向を参考にすると、Snapdragon X2 EliteのCPU性能は、数TOPSから10数TOPS程度と推定します。
Snapdragon X2 Eliteの総合TOPSを、現在最強のRyzen AI Max+ 395のそれと比較したのが下表です。
製品名 | 総合TOPS (公開値) | NPU TOPS (公開値) |
Snapdragon X2 Elite | 約 105∼130 TOPS (推定) | 80 TOPS |
Ryzen AI Max+ 395 | 126 TOPS | 50 TOPS |
Qualcomm社Snapdragon X2 Eliteの総合TOPSは、AI演算を効率処理するNPU性能や総合に占める割合が80 TOPSと高いため、競合AMD社Ryzen AI Max+ 395の126 TOPSと同等か、それ以上のAI処理能力になるとGeminiは推定しています。
AI処理性能 vs. 消費電力
AMD/Intel社の従来x64コアから、スマホで有名なQualcomm社の新しいSnapdragon ARM64コアにMicrosoftが変えた理由は、電力効率の良さでした。これは、現行Surfaceの軽量・長時間バッテリー駆動に大きく貢献しています。
Gemini推定どおりSnapdragon X2 Eliteが126TOPS程度のAI処理性能を持ち、かつ、前世代Snapdragon X Elite同様、同じAI処理能力x64比、電力効率が優れれば、ノートPC型Copilot+ PCのARM64コア比率を一気に挽回できる可能性はあると思います。
一方で気になるのは、ARM64コアCopilot+ PCの販売価格です。ARM64コアCopilot+ PCへ、Microsoftはx64コアCopilot+ PCよりも先行してWin11 AI機能を提供し優遇しています。従来ビジネスアプリのコア依存性は薄まりつつありますが、新Snapdragon採用Copilot+ PC販売価格が、ARM64コア普及の決め手になるでしょう。
Summary:新Snapdragon NPUは80TOPS、CPU/GPUも50%以上性能向上
Microsoft Surface搭載中のARM64コアSnapdragon X Elite後継製品であるSnapdragon X2 Eliteが、80TOPS NPUでCPU/GPUも50%以上の大幅性能向上であることをQualcomm社が発表しました。
このSnapdragon X2 Eliteの総合TOPSをGeminiで推定したところ、現在最強のAMD社Ryzen AI Max+ 395の126 TOPS同等かそれ以上と評価しました。
ノートPC Copilot+ PCの低迷ARM64コア比率を、優れたAI処理性能と消費電力で挽回できる可能性を秘めた新製品がSnapdragon X2 Eliteです。
Afterword:NPU 80TOPSの意味
AMD/Intel/QualcommによるエッジAI SoC CPU提供、第二幕が始まりました。CPU/GPUよりもNPU性能向上が大きいです。これは、関連投稿:America’s AI Action Planで予測した100TOPS以上NPUやメモリ強化とも合致します。AI時代には、エッジAI(NPU)急成長も必要であることが解ります。
AI開発用ミニPCで、Snapdragon X2 EliteとRyzen AI Max+ 395を比べたいです。